平成三十一年東京都議会会議録第五号

○議長(尾崎大介君) 二十三番龍円あいりさん。
〔二十三番龍円あいり君登壇〕

○二十三番(龍円あいり君) 私は、インクルーシブな社会を実現したいと考えています。インクルーシブというと、みんな一緒だよ、仲間だよというようなイメージを持つ方も多いと思います。しかし、それはただ一緒にいるだけでありまして、違いがある人は肩身が狭かったり、力が十分に発揮できなかったり、違いが不協和音となってしまうことがあります。それを調和がとれた協和音に変えていくための支援や工夫があるのがインクルーシブな社会です。
 去年の一般質問で、スペシャルニーズのある子とない子が安全に一緒に楽しく遊べる公園、インクルーシブ公園を提案し、整備に向け検討に着手すると答弁がありました。こういうコンセプトの公園は、日本ではまだなじみがない中で、本当に安全に楽しく一緒に遊べる環境を整備するには、スペシャルニーズ児の保護者や有識者の意見を聞くことが重要だと考えます。
 インクルーシブな公園整備におけるこれまでの進捗状況と、今後の取り組みについて、知事の所見を伺います。
 インクルーシブ公園は、完成した後の活用方法も重要です。スペシャルニーズ児やその家族だけでなく、支援する専門家や団体、地域の大人や子供がまじり合って意図的に活用するなどして、インクルーシブ拠点として愛される場所にしていくべきです。理想をいえば、各地域にインクルーシブ公園があってほしいと思います。
 そこで、ほかの自治体が同様の公園を整備する際の手助けとなるように、都の得たノウハウをほかの自治体に情報提供し、技術を共有化していただきたいと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、インクルーシブ教育についてです。
 九四年、特別なニーズ教育に関する世界会議において、サラマンカ宣言が採択され、インクルーシブ校の基本原則として、全ての子供は、何らかの困難さ、もしくは相違を持っていようと、可能な際はいつもともに学習すべきである、特殊学校、もしくは学校内に常設の特殊学級やセクションに子供を措置することは、まれなケースだけに勧められる、例外であるべきであると示されました。
 つまり、スペシャルニーズ児は、地域の公立学校の普通学級で学ぶべきだということです。なぜその必要があるのでしょうか。
 それは、人格や考え方を形成していく子供時代に、いろんな違いがある人がいる社会の縮図ともいえるようなクラスの中で育つことで、話し合い、助け合い、相互理解を深め、違いを協和音にする心とスキルを養えるからです。子供時代に分けて育てておきながら、大人になって急に手を取り合ってインクルージョンを実践しなさいというのは、やや無理があります。
 しかし、教職員の負担過剰の問題が叫ばれる中、区市町村の努力だけで普通学級のインクルーシブを進めるのは現実的ではありません。また、発達障害のあるお子さんへの特別支援を公立学校でするようになったこともあり、それ以外のスペシャルニーズ児は、都立特別支援学校へ行くよう勧められるケースがふえ、最新の整備計画では、六校の特別支援学校の新設が予定されています。これは、都が意図した流れではないものの、結果として、分けて教育する方向へ加速しているようにもとれます。
 だからこそ、普通学級でともに学ぶための新たな支援策が必要です。
 そこで、新規事業である共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムに関する調査研究事業について伺います。
 この事業では、公立学校の普通学級において、スペシャルニーズ児が一般の児童生徒と一緒に学ぶために、どのような支援が必要なのか、どうしたらより多くのスペシャルニーズ児を受け入れることが可能になるのか、具体的な政策提案をするところまでを、調査研究の対象とすべきだと考えますが、見解を伺います。
 さて、医療的ケア児の中には、通学できず自宅で特別支援学校による訪問教育を受けているお子さんもいます。繰り返しになりますが、教室の中でともに育つことは全ての子にとって重要です。
 そこで、訪問教育籍の子が分身ロボットで学校の授業に参加するモデル事業が始まることは、一歩前進だと評価いたします。どのような取り組みになるのか伺います。
 なお、分身ロボットは、インクルーシブな社会づくりに非常に有益だと思いますので、東京二〇二〇大会においても、積極的に活用することを強く要望させていただきます。
 話は戻りますが、そもそも医ケア児であっても、希望すれば、必要なサービスを受けながら、地域の公立学校で学べるのが理想的です。それを実現するための前提として、医ケア児の住む地域の教育、医療、福祉等の連携を強めていく必要があります。
 地域において、これらの機関等をつないで調整し、医療的ケア児に必要な支援に結びつけるための福祉保健局の取り組みを伺います。
 去年の一般質問で、地域のさまざまな関係者をつないで包括的にスペシャルニーズ児を支援するかなめとして、児童発達支援センターの期待を話しました。
 都は、平成三十二年度末までに、全区市町村に一カ所以上のセンター整備を目標としていて、実際に少しずつふえているのをこれまで確認してまいりました。しかし、ただセンターがふえればいいのではなく、地域を支援する機能が充実してほしいのです。理学療法士などの専門的な人材が、子供がふだん生活している場所で支援することで、よりインクルーシブな環境が実現します。
 そこで、都で、専門的人材をふやすような後押しをしてほしいとこれまで訴えてきましたが、このたび児童発達支援センター地域支援体制確保事業が新設され、大いに期待しております。事業の内容について伺います。
 話は学校に戻りますが、学校は、性的マイノリティーである児童生徒にとっては、さまざまな困り事や悩みを感じる場所だと聞きます。しかし、子供がみずから訴え出るのは容易ではなく、実際に何に困っているのかは見えにくいという特徴があります。
 四月に、差別的取り扱いを禁止する東京都人権条例が施行されますので、これを機に、先進的なよい配慮の取り組みや、当事者からの話を聞いて、校内での配慮事例集を作成し、教育現場に共有するような取り組みが必要だと思います。性的マイノリティーのお子さんにとって、学校が安心して通える場所になってほしいと切に願います。
 人権条例の施行に当たり、性自認や性的指向に関して困り事や悩みがある児童生徒に、学校が適切に対応できるようにするための都教育委員会の取り組みについて伺います。
 続いて、子供を守るという観点で質問を続けます。
 千葉県野田市の児童虐待死事件では、児童相談所や自治体、学校は、子供と親双方に対応するため、そのはざまで立場の弱い子供の声がおろそかになることがあることが明らかになりました。国が都道府県に策定を求めている社会的養育推進計画の要領には、子供から意見を酌み取る方策と子供の権利を代弁するアドボカシーを進めることが示されています。
 都でも中立的な第三者が要保護児童や社会的養護のもとにある子供など、支援を必要とする子供に寄り添って、意見を尊重していくべきだと考えますが、都の取り組みについて伺います。
 なお、都の推進計画には、子供の意見を代弁できるアドボカシー体制の確立を検討していただくよう要望いたします。
 また、この事件では、虐待をする親と対峙する難しさも明らかになりました。職員を急激にふやしている都の児相では、二年以下の職務経験の児童福祉司がおよそ五割に上り、法的対応力の向上が課題です。国の要領には、弁護士配置については、任期つき職員の活用なども含め、常勤職員の配置を進めると示されました。都についても、常勤弁護士の配置の検討を強く要望いたします。
 続いて、電車内の子供の安全についてです。
 車内で子供は圧倒的な弱者です。子供の安全な移動実現を求める市民団体が行ったアンケートには、千五十七人の両親らが回答し、車内が子供に危険だと感じることがあるかとの問いに、九割以上があると答え、五割の人が子供の安全が守れないという理由で利用を諦めたことがありました。また、四割の人が、車内の安全な環境が整ったら通学、通園で電車を利用したいと答えています。女性が働くための支援としてもニーズがあることが確認できました。
 なお、およそ八五%が子供優先車両について必要だと答えています。
 他に先駆けて、都営地下鉄に子育て応援スペースを設置することを高く評価いたします。スペース導入に合わせて、乗客が子供が乗っているかもしれないことを意識して配慮してもらえる工夫や啓発もしていくべきだと考えますが、都の取り組みを伺います。
 最後に、こどもの城についてです。
 都から旧こどもの城活用の基本的考え方が示され、二〇二〇大会後は、都民の城として活用することが示されました。愛される施設になるよう、より多くの方の声を都政に届けたいと、独自にアンケート調査をしまして、千五百七十三人から回答をいただきました。
 基本的考え方のもとに、子供、学習、福祉、産業、芸術文化、スポーツ健康の六つの視点から、進めてほしい一番目と二番目の取り組みをそれぞれ聞きました。
 一番目としては、芸術文化が六三%、子供が三三%と二つ合わせて九六%となり、旧こどもの城の機能が最も求められています。二番目としては、学習八・八%、福祉五・五%で、新しい機能についても一定程度のニーズがあることがわかりました。八百七十八のコメントもいただきましたが、青山円形劇場の復活、そして、シニア世代も含めて、子供機能に期待していることがわかりました。
 こどもの城は、子供の健全育成を目的とした非常にすぐれた取り組みを通して親しまれましたが、今後の東京都の発展という意味でも、将来を担う子供を育て成長を促すことは不可欠です。
 基本的考え方では、従前の旧こどもの城が担ってきた子供機能にも留意するという言及がありましたが、都民の城に子供のための機能を明確に取り入れていくべきだと考えます。知事の見解を伺います。
 都は、都民の城に寄せられる都民や地元区などの期待に応えるよう、今後の計画をしっかりと進めていただけますよう要望いたします。
 この世は違いだらけです。違う一人一人がひとしく尊重され、違う一人一人の笑顔が輝く社会を目指して、私は、人生をかけて頑張っていくことをお約束して、一般質問を終えます。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 龍円あいり議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、インクルーシブな公園整備についてのお尋ねでございます。
 誰もが自分らしく輝くことのできるダイバーシティーの実現に向けまして、都立公園において、障害の有無にかかわらず全ての子供たちが安全に楽しむことができる遊び場、これを整備することは重要でございます。
 都といたしまして、今年度、障害児の保護者、そして障害者団体、障害児保育の現場、ユニバーサルデザインの有識者など、さまざまな方々にヒアリングを行ってまいりました。
 その中で、体を支える力が弱い子供さんたちが揺れる感覚を楽しめるそんな遊具や直射日光を避けることのできる休憩場所の設置など、さまざまなご意見をいただいたところでございます。
 こうしたご意見を踏まえまして、現在、砧公園と府中の森公園を対象に、具体的な設計を行っておりまして、平成三十一年度末の完成を目指し整備を進めてまいります。
 今後とも、都立公園でこうした取り組みを進めていくことで、障害の有無にかかわらず、全ての子供たちがともに遊び、また、学ぶ機会を積極的に提供してまいります。
 次に、旧こどもの城についてのご質問でございます。
 かつて、多彩な遊びのプログラムを実践するなど、次代を担う子供たちが心身ともに健やかに成長していくための重要な役割を担ってきたものと認識をいたしております。
 こうした旧こどもの城のレガシーを踏まえまして、都民の城におきましても、子供のための機能を大事にして、そして子供の遊び、表現、学びの場などを提供していく必要があると考えております。
 例えば、かつてこどもの城で親しまれてまいりましたプレーホールなどは、子供たちが遊びを通じて人と触れ合って、自主性や思いやる心などを育むことのできる貴重な空間であったと聞いております。そして、こうした既存の施設は有効活用してまいりたいと考えております。
 具体の内容でございますが、来年度立ち上げます全庁横断的な検討組織の中で、詳細の検討を進めてまいります。
 いずれにしましても、子供さんを初め、誰もが利用できる場といたしまして、都民の皆様にとって有益な施設としてまいりたく考えております。
 残余のご質問は、教育長、東京都技監、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、インクルーシブ教育システムに関する調査研究事業の具体的な展開についてでございますが、都はこれまで、国や区市町村と連携しながら、個々の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整えるとともに、施設の整備や適切な教材の提供など、障害のある子供に対応した教育環境の整備に努めてまいりました。
 また、就学先の決定に当たっては、必ず保護者の了解を得ることとし、就学後も、本人の学びの状況に応じて転学を認めるなど、保護者の意向に沿って制度を運用しております。
 今回の調査研究では、海外事例とその背後にある教育制度や国内の状況等を調査するとともに、公立学校におけるよりよい教育環境の整備に必要な支援策を、ソフト、ハード両面から検討してまいります。
 次に、訪問教育への分身ロボットの活用についてでございますが、特別支援学校への通学が困難な児童生徒に対しては、現在、在宅訪問により、個々の児童生徒の状態に合わせた教育を行っております。
 こうした中、対象の児童生徒からは、教室で学ぶ機会を求める声が寄せられており、昨今の情報通信技術の進歩を踏まえ、ICT機器活用による遠隔教育の実施が期待されております。
 このため、都教育委員会は、肢体不自由特別支援学校二校において、児童生徒が自宅にいながら、分身ロボットを通じて教室での授業や学校行事等に参加できる環境を整備し、活用場面や端末の操作性等について検証を行うなど、分身ロボットの活用による遠隔教育の実用化に向けた検討を進めてまいります。
 最後に、性自認等に悩みを抱える子供への対応でございますが、学校が性自認や性的指向に悩む児童生徒を適切に支援するためには、教員が性自認等について正しい知識を持ち、個に応じた対応を行うことが重要でございます。
 これまで都教育委員会は、都内公立学校の全教員に毎年配布している人権教育プログラムに、性自認や性的指向に関する文部科学省の通知等の資料を掲載し、人権教育の研修会などで、教員等が正しい理解と認識を深めることができるよう取り組んでまいりました。
 今後、条例の趣旨も踏まえ、トイレ、更衣室の使用や健康診断の実施等についての配慮事例をまとめた指導資料を研修会で活用するなどして、教員の対応力の向上を図り、全ての子供たちが自分らしさを発揮し、生き生きと学校生活を送ることができるよう支援してまいります。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 公園整備に関する情報提供や技術の共有化についてでございますが、より多くの方々に、障害の有無にかかわらず、全ての子供たちが楽しむことができる公園づくりを知っていただき、他の自治体に取り組みを広げていくことは重要でございます。
 このため、区市町村に対しましては、利用者ニーズや、障害児が安全に使用できる遊具等に関しまして、公園に携わる担当者の連絡会で情報提供するとともに、区市町村職員も参加できる研修を開催し、技術の共有化を図ってまいります。
 さらに、遊び場の整備状況や完成後の利用者からの反響などにつきましても、ホームページやツイッター等を活用して広く発信してまいります。
 今後とも、こうした都が行う先進的な取り組みを積極的に情報発信してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、医療的ケアが必要な障害児の支援についてでありますが、医療的ケア児が、地域で適切な支援を受けながら生活できるようにするためには、保健、医療、福祉、教育等の連携を強化する必要がございます。
 このため、都は、地域で医療的ケア児の支援にかかわる保健所や障害児通所施設など、関係機関の連絡会を設置するとともに、それらの職員を対象に、医療的ケア児に関する基本的知識や支援の手法等を学ぶ研修を実施しております。
 さらに、今年度からは、医療機関や保健所等と連携いたしまして、相談支援専門員等を対象に、医療的ケア児の支援を総合的に調整するコーディネーターの養成研修を実施しているところでございます。
 こうした取り組みを通じまして、地域の関係機関の連携を強化し、医療的ケア児への支援の充実を図ってまいります。
 次に、児童発達支援センターの地域支援についてでありますが、センターが、身近な地域の障害児支援の中核的施設として、通所支援のみならず、地域の障害児やその家族、関係機関に対する支援や、関係機関との連携構築等を行うためには、その専門性を高める必要がございます。
 そのため、都は来年度から、センターがこうした支援や連携を行うため、理学療法士や作業療法士等の専門職を配置する場合や、センターのノウハウを活用し、障害児を預かる保育所等の職員や障害児の保護者等に対して、障害特性に応じた療育の方法等の研修を実施する場合、こうした場合への支援を開始いたします。
 今後とも、障害児やそのご家族が地域で安心して生活できるよう、児童発達支援センターの地域支援の取り組みを支援してまいります。
 最後に、子供が意見表明できる取り組みについてでありますが、児童相談所の相談対応に当たりましては、子供や保護者等の人権に十分配慮しながら、常に子供の最善の利益を図ることを最優先に行っており、子供や保護者の意向、意見を十分に傾聴し、尊重するよう配慮しているところでございます。
 また、一時保護所では、児童の権利擁護と施設運営の質の向上を図るため、外部評価を受審しているほか、第三者委員を設置し、児童からの相談に対応するとともに、保護所の運営等に関して助言を受けているところでございます。
 さらに、都は、子供や保護者からの悩みや訴えを専門の相談員がフリーダイヤルで直接受けるとともに、深刻な相談には弁護士などの専門員が対応するなど、迅速かつ適切な支援を行っており、今後とも、子供の権利擁護の取り組みを推進してまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 子育て応援スペースについてでございますが、都営地下鉄では、小さなお子様連れのお客様に安心して気兼ねなく電車をご利用いただけるよう、大江戸線で子育て応援スペースを試験的に設置することとしており、設置に当たりましては、お子様連れのお客様に対する周囲の理解を深めていくことが重要と考えてございます。
 このため、子育て応援スペースを設置していることが容易にわかるよう、付近の壁や手すり等にお子様が親しみやすい装飾を施すとともに、車両の外側にも子育て応援スペースを示すステッカーを張りつけます。
 加えて、駅構内における案内放送や局独自に作成するポスター等を通じまして、普及啓発に努めてまいります。
 今後、お客様からのご意見等を踏まえつつ、都営交通として、子育て支援に貢献をしてまいります。

ページ先頭に戻る