平成三十一年東京都議会会議録第五号

   午後一時開議

○議長(尾崎大介君) これより本日の会議を開きます。

○議長(尾崎大介君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(尾崎大介君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第一号、東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例外条例二件、知事より、東京都固定資産評価審査委員会委員の選任の同意について外人事案件十八件がそれぞれ提出をされました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(尾崎大介君) 昨日に引き続き質問を行います。
 四番鈴木邦和君。
〔四番鈴木邦和君登壇〕

○四番(鈴木邦和君) 昨年、世界経済フォーラムは、サンフランシスコに次いで世界で二番目の拠点となる第四次産業革命センターを、ここ東京に開設しました。世界経済フォーラムによると、日本が将来的に世界をリードするポテンシャルの高い分野は、ヘルスケアとモビリティーとされています。
 ヘルスケア産業は、二〇三〇年に世界全体で五百二十五兆円、日本国内だけでも三十七兆円の市場規模に至り、二〇三〇年にはヘルスケアが日本最大の産業になることは確実です。特に、日本の国民皆保険のデータには世界が注目しており、このデータを分析すると、誰がどんな理由で幾ら医療費を使っているのか、地域ごとに可視化でき、自治体による保健事業の効果測定も可能となります。
 今年度、都は、国民健康保険のデータ解析を目的としたヘルスアップ事業を実施しました。今後、ヘルスアップ事業の結果を受けて、都として区市町村のデータヘルス計画に基づく保健事業の具体的な取り組みの企画立案を支援していくべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 二〇一八年の日本の医療、介護費の合計は年間五十兆円ですが、二〇四〇年には年間九十二兆円に上ります。今後の社会保障費抑制のためには、データを分析して問題の絞り込みを行った上で、テクノロジーの活用こそが鍵となります。
 例えば、患者の喉の撮影データをAIで自動解析して、インフルエンザの検査薬のかわりとなるアイリスや、患者の排せつを予測して通知するウエアラブルデバイス機器、ディーフリーなどは、従来の医療、介護コストを大きく下げ、業界の人手不足を解消できるスタートアップのテクノロジーです。
 しかし、こうした先進的なテクノロジーを持つスタートアップは、人材や資金はあるものの、参入障壁の高い業界内での販路や信用獲得に苦心している実情があります。そこがクリアできれば、スタートアップは急成長を遂げるとともに、東京のみならず日本全体の社会課題の解決にも大きく貢献できます。
 来年度、都は、キングサーモンプロジェクトと称したスタートアップの新しい普及モデル推進事業を実施予定です。
 そこで、キングサーモンプロジェクトの中では、予算を出すだけではなく、都知事によるトップセールスや、区市町村の巻き込みなど総合的なバックアップを検討するとともに、スタートアップに精通した事務局を選定すべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 ヘルスケアとともに期待されているモビリティーは、世界有数の自動車業界と公共交通機関を擁する日本にとっては、既に強みとなっている領域です。そして、将来的な自動運転やMaaSの実現を見据えると、モビリティー分野のデータ開放は不可欠です。
 例えば、バス事業のデータをオープンデータで公開すると、バス停の位置情報やバスの遅延情報がグーグルマップの経路検索に反映されるようになるなど、外国人旅行客を中心に、ユーザーの利便性は大きく向上します。ロンドンでは、二〇一二年の大会を契機に、交通事業のオープンデータ化が進み、高い経済効果が認められました。
 現在、都の交通局は、多くの交通事業者が会員である公共交通オープンデータ協議会が実施するアプリコンテストにデータを提供していますが、コンテストの参加者のみがデータ利用可能な状況であり、民間へのデータ開放はいまだ限定的です。
 そこで、公共交通オープンデータ協議会を通じて、アプリコンテスト参加者以外にも広くデータを提供するなど、交通局が今まで以上に、より積極的にデータを公開することを検討すべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 今、自動車業界は、百年に一度の変革期にあります。その背景の一つはMaaSです。MaaSとは、あらゆる交通手段を統合し、その最適化を図った上で、マイカー以上に快適な移動サービスを提供する新しい概念です。
 MaaSの先進都市であるフィンランドの首都ヘルシンキでは、アプリで行き先を選ぶと鉄道、バス、タクシー、自動車のシェアリングサービスなど、複数の移動手段の組み合わせによる最適な経路が提示され、予約や支払いを一括して決済できます。ヘルシンキでは、MaaSアプリを通じて、定額五百ユーロであらゆる交通サービスが乗り放題となっており、将来的には、マイカーがなくても、ドア・ツー・ドアの移動が容易になります。
 こうしたMaaSの実現のためには、行政が交通に関するビジョンを持ち、地域の特性や課題を起点に地域ごとのモデルを示していくことが重要です。
 そこで、来年度、都が実施予定のMaaSの実証実験では、東京の各エリアの移動ニーズを踏まえ、地域タイプごとにMaaSが解決し得る課題とソリューションの方向性をしっかりと定めた上で実験を行い、将来的に、MaaSの社会実装モデルを構築していくべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 東京のモビリティー分野最大の課題は、毎日五百万人の通勤客が苦しむ満員電車です。この満員電車の需要分散に効果的な時間差料金制は、ニューヨーク、シンガポールなど海外の主要都市で導入されています。国内でも、航空や電気は時間帯別に料金が変わるようになっており、首都高のロードプライシングの議論も進んでいます。
 日本の鉄道の特徴は、朝のピーク時間帯における乗客の大半が定期利用者であり、特に通勤定期は正規料金の四〇%近く割引されているという点にあります。日本で時間差料金制を導入する際には、例えば、ピーク時も使える定期は正規料金の一〇%引きまで上げるかわりに、オフピーク時に使える定期は正規料金の七〇%引きにすることで、正規料金は変えずとも、朝のピーク時の需要を分散させることが可能です。
 都は来年度に、快適通勤の実現に向けた混雑緩和策等の検討調査を実施予定です。調査に当たっては、時間差料金制を初めとする混雑緩和に資するさまざまな対策を検討し、その実現につなげていく必要があります。混雑緩和の対策の促進に向けた今後の都の取り組みについて伺います。
 第四次産業革命を担う新しいテクノロジーは、行政分野にも大きな変革をもたらします。この分野で世界一先進的なエストニアでは、既に公的サービスの九九%がオンラインで二十四時間利用できるようになっています。私も昨年、エストニアの電子市民に登録しましたが、会社の起業手続ですら、二十分で完了するなど、画期的なサービスに感銘を受けました。
 また、オープンガバメント政策で注目されるモスクワでは、市長が市民にアプリを通じて毎週質問を実施し、質問に対する市民の回答を政策に直接反映させています。モスクワでは、市の人口の二〇%に達する利用者がおり、特に若い世代の政治参加に大きく貢献しています。
 都では来年度、ソサエティー五・〇実現加速のための調査検討を行う予定です。この中で、民間の技術革新を支援する政策展開のあり方だけでなく、都の行政サービスのさらなるICT化促進についても検討すべきだと考えますが、知事の見解を伺います。
 小池知事は、昨年のIWA世界会議において、水道スマートメーターの大規模な実証実験の構想を発表しました。水道局の検針業務にかかる年間六十三億円の多くは人件費であり、スマートメーターの導入によって自動化が可能です。
 スマートメーターが導入されると、時間帯別、曜日別、地域別の水道の使用状況というビッグデータを迅速に把握できます。そして、このデータを活用すれば、より精緻に水道需要の動向を捉えられ、将来予測の幅が大きく広がります。ビッグデータを活用して、よりきめ細やかな需要予測を行い、その結果を施設更新時に活用すれば、償却資産にして二兆円以上の施設を有する水道事業にとって、そのインパクトははるかに大きいものになります。
 そこで、スマートメーターの各戸への設置による自動検針のみならず、将来的には、道路下の水道管への展開などにより、水道事業全体の運営にも活用していくべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 二〇二一年度以降、都財政は、新たに年間三千八百億円の減収が見込まれ、二〇二〇大会後の景気後退も予測される中、都の行財政改革は不可欠です。その中でも事業評価の取り組みはさらなる強化が必要だと考えています。
 私は、前職で、地方自治体の事業評価を何度か担当してきましたが、都の事業評価は、毎年の評価件数が全事業の二五%にとどまっており、評価項目もまだ少なく情報公開も限定的です。
 国では、都の全事業数と同じ約五千の全ての事業について、行政事業レビューを毎年実施しており、一事業につき八ページにわたる詳細なレビューシートを作成、公表しています。その中には、定量的な成果目標、成果指標、単位コスト、KPIなど多くの項目があり、都の事業評価にも導入することは可能です。
 また、現在、財務局が実施している事業評価は、総務局の政策評価、政策企画局の実行プランなどとの連携を強化し、将来的には、情報とプロセスの一元化を目指すべきです。これは、事業実施部署の負担軽減にもつながります。
 そこで、事業評価の効力を今後さらに高めていくためには、評価内容、公表内容を充実するとともに、各局との連携強化を図るべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 以上で私の質疑を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鈴木邦和議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、先端技術活用と行政サービスの向上についてのご質問でございます。
 AIやビッグデータなどの第四次産業革命がもたらしますさまざまな技術革新は今後人々の生活を画期的に変えていくものでありまして、経済の発展、そして少子高齢化などの社会的課題の解決を同時に進めることを可能といたします。
 議員お詳しいところですが、国が目指すべき未来社会の姿として提唱しているソサエティー五・〇は、第四次産業革命がもたらしますさまざまな技術革新をあらゆる産業や人々の生活に取り入れていく社会モデルであって、ビジネス領域だけでなく、オープンガバメントを含めた行政施策やサービスをも抱合いたしております。
 こうした先端技術は、実地で試されてこそ磨き上げられるものであります。さまざまな現場を持ちます東京都といたしまして、行政サービスに先端技術を積極的に活用していく意義は、ご指摘のとおり大きいと考えております。
 現在、都におきましては、都民の皆様方の疑問点に迅速、そして的確な回答を提供するために、AIを活用したチャットボットによる問い合わせ対応を開始いたしております。
 また、インフラの老朽化という課題に対しましては、ドローンやロボットの活用で調査検討を行っております。
 来年度でございますが、ソサエティー五・〇の実現に向けました有識者による検討会をまず立ち上げます。そして、東京の将来のあるべき姿、先端技術を活用した行政サービスの提供、そして都民の皆様方からのご意見の施策への効率的な反映などについて議論を行いまして、今後の施策展開の方向性をしっかり検討してまいります。
 残余のご質問については、関係局長よりご答弁させていただきます。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 国民健康保険データヘルスに関するご質問にお答えいたします。
 被保険者の健康を保持増進し、医療費適正化を図るためには、医療費データ等を分析し、地域の健康課題を明確にした上で保健事業を展開する必要がございます。
 このため、都は現在、国保のレセプトデータや健診データを活用して、区市町村ごとの現状分析を行っているところでございます。
 具体的には、腎不全や心筋梗塞などの重篤な疾病を予防する観点から、被保険者一人当たりの疾病別医療費や喫煙、飲酒などの生活習慣の状況、血圧や血糖値などの健診結果を、性別、年齢階層別に分析しており、今後、区市町村ごとに結果を取りまとめて情報提供いたします。
 来年度は、本分析結果の活用方法等を解説する担当者向け研修会を開催し、区市町村がターゲットを絞り、効果的に保健事業を実施できるよう支援してまいります。
〔政策企画局長梶原洋君登壇〕

○政策企画局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、先端事業普及モデル創出事業、いわゆるキングサーモンプロジェクトについてでございますが、この事業は、起業から海外展開等による事業拡大までの成功モデルをつくり、これを展開することで、後に続く起業家を輩出するサイクルを確立し、東京の成長と社会課題解決の両立を図ることを目的としております。
 まず来年度は、都が抱える社会課題のテーマについて設定した上で、課題解決に資する先端技術やサービスを有する企業を選定いたします。その後、都政の現場を活用した実証実験や、トップセールス等による支援、事例のモデル化を行い、後続の起業の輩出につなげてまいります。
 実施に当たりましては、起業支援に実績のあるコンサルタントからの意見も聞きながら、シーズとニーズを的確に把握し、事業をより効果的なものとしてまいります。
 次に、MaaSの社会実装モデルの構築についてでありますが、お話のように複数の交通サービスを一体的に提供するMaaSの社会実装に当たりましては、それぞれの地域の移動ニーズに応じた交通サービスを組み合わせていくことが重要でございます。
 そのため、都が来年度実施するMaaSの実証実験では、関連の事業を実施する意欲のある交通事業者等にヒアリングを行うなど、地域ごとのニーズを調査し、都内で先行的に導入する移動サービスのあり方などを検証する予定でございます。
 こうした実証実験を通じて、都独自のMaaSの社会実装モデルの構築を目指してまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) オープンデータ化の取り組みについてでございますが、交通局では、公共交通オープンデータ協議会が主催するアプリコンテストを通じて、開発事業者等の参加者に都営交通の時刻表や運賃等の基本情報のほか、バスの位置情報などを提供してございます。
 加えて、システム改修を実施し、セキュリティー対策をさらに強化しました上で、今年度末より地下鉄の列車位置情報を新たに提供いたします。
 また、同協議会では、民間の自由な発想に基づくアプリ開発を促進するため、来年度からアプリコンテスト参加者に限らず、データを広く公開する予定であり、こうした取り組みを通じて、お客様の利便性がより一層向上することが期待されます。
 今後とも、関係機関と連携を図りまして、公営交通事業者として、オープンデータ化の取り組みを着実に推進してまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 鉄道の混雑緩和対策の促進についてでございますが、都は、通勤時の混雑を回避するため、オフピーク通勤を促進する時差ビズを展開してまいりました。
 今後は、テレワークや交通需要マネジメントの取り組みとともに、スムーズビズとして一体的に推し進めてまいりますが、あわせて輸送力の強化や通勤時の利用者のさらなる分散の観点から、鉄道事業者によるさまざまな対策を推進し、スムーズビズの効果を高めていくことが重要でございます。
 来年度、先端技術を活用した運行システムの改良や時間差料金制など、最新の技術動向や国内外の事例も踏まえた対策の効果、課題について、有識者、鉄道事業者などと意見交換し、実現の可能性などを検討してまいります。
 このような取り組みも踏まえ、鉄道の混雑緩和対策をさらに促進してまいります。
〔水道局長中嶋正宏君登壇〕

○水道局長(中嶋正宏君) スマートメーターの水道事業への活用についてでございますが、水道事業を将来とも強靱かつ持続可能なものとするためには、水道システムをより高度化、効率化する必要があり、その構築には、最新のICTの活用が不可欠でございます。
 スマートメーターの導入はその大きな鍵であり、当局ではこのたび、将来の本格導入をにらんだトライアルプロジェクトを始めることといたしました。
 具体的には、二〇二五年を目途に、都内複数のエリアにおいて、各住戸や水道管路に、合わせて十万個のスマートメーターを設置し、そのデータを水道施設の効率的な維持管理や迅速な事故対応など、局事業全般に活用する実証実験を行ってまいります。
 今後、産学官の連携を図りつつ、スマートメーターの経済性、安全性なども考慮しながら検討を進め、来年度中にこのトライアルプロジェクトの実施プランを策定いたします。
〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 事業評価についてでございますが、都は、予算編成の一環として事業評価を実施しており、平成三十一年度予算編成では、新たにコストベネフィットの視点を踏まえた評価を導入し、千二百八件の評価結果を公表するなど、着実に実績を積み重ねております。
 また、二〇二〇年に向けた実行プランや二〇二〇改革プランに関する取り組みを迅速かつ的確に予算に反映をしております。
 今後、評価内容の充実や公表様式の改善、関係部署との連携など、事業評価のさらなる深化に向けて検討を進め、エビデンスに基づく事業検証の徹底や、PDCAサイクルのさらなる機能強化を図り、各事業の効率性や実効性の向上につなげてまいります。

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