平成三十一年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 十七番うすい浩一君。
〔十七番うすい浩一君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十七番(うすい浩一君) 初めに、中小企業の事業承継支援について質問します。
 公明党は昨年、全国会議員、地方議員が、中小企業者の声など百万人訪問アンケート調査を全国で展開しました。
 アンケートの分析の結果、国や都の中小企業支援策を利用した経験がある割合が六割に近い一方、利用したことがないと答えた半数以上が、そもそも制度を知らなかったと答えており、制度の周知徹底が大きな課題であることが浮き彫りになりました。
 同時に、六十代以上の方々の七割で後継者が決まっていないとの調査結果も出ており、このまま放置すれば、廃業が急増し、地域産業の活力が大きくそがれてしまいます。
 まさに、円滑な事業承継は待ったなしの課題であり、事業承継を必要とする中小企業の皆さんにしっかりと情報が届かなければ、支援策は利用されることはありません。特に、情報が届きにくい小規模、零細企業向けの周知、広報が重要であります。
 そこで、具体的な承継の事例をわかりやすく紹介するなど、経営者の心を動かすような広報内容の工夫と、あるいは、これまでに活用してこなかった新たなメディアの活用など、さらに一歩踏み込んだ取り組みが必要と考えますが、都の見解を求めます。
 また、周知広報の取り組みに加えて、中小企業からのアクセシビリティーの確保が重要であります。中小企業のアンケート調査で私が訪問した足立区内のある会社の経営者からは、都が開設している相談窓口へ行くことは、そもそも公的機関というのは気軽に相談しにくい場所だとか、多忙な中、時間を割くことが難しいなどの声が聞かれました。
 承継に向けて本格的な取り組みにつなげていくフォローアップが重要です。確実に承継の実現に結びつけるには、一つ一つの課題をクリアしていく、きめの細かい対応を取り組むべきです。都の見解を求めます。
 また、後継者を選定する際に、親族はもちろんのこと、従業員など親族以外に対象を広げたとしても、候補者を見出すことが難しいという現実があります。
 こうした中、いわゆるMアンドAによる他社との合併や事業譲渡など、事業を継いでくれる企業とのマッチングを望む声もあります。
 都は、MアンドAを活用した事業承継への支援を実施していますが、こうした事例をさらに広げていくためにも、支援策のさらなる拡充をすべきです。都の見解を求めます。
 次に、木密地域対策について質問します。
 いつ発生してもおかしくない首都直下地震から都民の生命と財産を守るためには、不燃化対策のさらなる加速が必要であります。
 私の地元足立区では木造密集地域を抱えていることから、私は、昨年の予算特別委員会で、木密地域の不燃化を加速するためには、木密地域の権利者や借家人等の移転先の確保が重要であり、その受け皿づくりのために、民間の力を生かし、魅力的な計画をつくることが必要であると指摘しました。
 新たな取り組みとして、足立区内の江北地区と関原地区の都有地を活用しての移転先整備事業を都が開始したことは高く評価いたしますが、住みなれた地域で住み続けたいという住民や、高齢化により移転する意欲が低下しているなどの課題もあります。
 こうした方々がコミュニティを維持しながら移転できれば、木密地域は確実に安心・安全なまちに生まれ変わっていくものと考えます。
 事業を着実に進めるためには、特に移転が必要となる住民がコミュニティを失うことなく安心して移り住める対策を講じるべきです。都の見解を求めます。
 本事業は、木密改善につながる実効的な事業であると大いに期待しており、今後の都内全体への事業展開に大きな影響を与えると考えます。
 足立区には依然として危険度の高い木密地域が存在しており、改善を加速するには、ほかの地域でも都有地を活用して本事業をさらに進めることが重要です。
 先行実施となる江北地区で確実な成果を上げ、今後、足立区はもとより、東京の他の地域でも事業展開を検討すべきと考えますが、あわせて都の見解を求めます。
 次に、認知症対策について質問します。
 私は、一昨年の第三回定例会において、認知症の検診を推進すべきと主張しました。これを受けて、都が来年度予算に認知症検診に取り組む区市町村への支援を盛り込んだことを高く評価します。
 認知症は、早く気づいて早期に診断を受け、対応を行うことが重要であり、そのためには、本人や家族が認知症について正しい知識を身につけておく必要があります。
 そこで、都は、認知症に関する知識の普及啓発を強化するとともに、早期診断を推進すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 認知症になっても住みなれた地域で安心して生活をしていくためには、認知症の人のケアを困難にする大きな要因の一つである行動心理症状、BPSDに対して適切に対応していくことが重要です。
 私は、こうした対策の充実を昨年の予算特別委員会で指摘しました。
 都は、認知症の方の暴言、介護拒否等の行動心理症状の改善が期待される日本版BPSDケアプログラムを開発し、二〇二五年度末までに都内全域に普及することとしています。このケアプログラムを事業者が導入しやすいように、また導入した事業者が利用者から選ばれやすいような支援が重要です。
 また、ケアプログラムを導入した事業者と事業所での実践者であるアドミニストレーター研修の修了者が誇りを持って取り組める対策を講じて、ケアプログラムの普及を図るべきです。都の見解を求めます。
 次に、がん対策について質問します。
 今や二人に一人が一生のうちにがんに罹患すると推計されており、がん患者に対する支援体制の強化は大変に重要です。
 都は、がん対策基本法に基づき、総合的ながん対策計画である東京都がん対策推進計画を昨年三月に改定したところであります。
 そこで、がん対策の現状に対し、評価、検証、改善のプロセスを明確にして推進していくべきです。知事の所見を求めます。
 がんを予防するためには、生活習慣の改善とともに、検診率の向上が極めて重要です。
 そこで、受診率向上のためには、さまざまな手法を組み合わせることが効果的と考えます。
 例えば、東久留米市では、大腸がん検診を特定健診と同時実施したことにより、大幅に受診率が向上しました。また、中央区では、断らない限りは特定健診と同時にがん検診がセットで受診することになるオプトアウト方式の導入で、大幅に受診率を向上させた実績もあります。
 そこで、検診の受診率向上に向けた区市町村に対するさらなる支援とともに、多くの都民が集まる場所等で受診率向上の機運醸成に取り組むべきと考えますが、あわせて都の見解を求めます。
 白血病を初め、がん治療の医療技術は日進月歩で進んでおり、手術、薬物、放射線のいわゆる三大療法のほかにも、ゲノム治療や重粒子線治療なども次々と実用化されています。こうした先進医療は、一部高額な治療費を要するものもあるため、患者が利用しやすくなるような取り組みが必要です。
 こうした先進医療のための費用を借り入れた際の利子補給を行っている自治体が大阪府など含め、複数であると聞いています。
 都においても、こうした他の自治体の取り組みを参考にしながら、支援の充実に取り組むべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、足立区小台付近の補助一一八号線の整備について質問します。
 私の地元である足立区の小台一丁目を通行する車両は、主に荒川堤防上の都道四四九号線を通行しています。足立区のコミュニティバスも、この堤防道路を経路として運行していますが、特に休日などは、扇大橋付近で渋滞が発生し、円滑な運行に支障を来しています。
 堤防道路と並行する補助第一一八号線が開通すれば、渋滞が緩和されるとともに、通過交通の生活道路への流入が減少するものと考えられ、地域住民の生活利便性や安全性の向上が期待されます。
 そこで、補助第一一八号線小台の早期開通に向け、進捗を図るべきと考えますが、都の見解を求めます。
 次に、隅田川テラスの整備について質問します。
 東京二〇二〇大会に向けて、水害に対する安全性の向上とともに、魅力ある水辺環境づくりが重要であります。
 東京の顔である隅田川においては、河口から中流域の千住汐入大橋付近にかけて、水辺沿いのテラスの修景整備がおおむね完成しており、多くの人々が水辺を楽しむ姿が見受けられ、水辺空間として大切な財産となっています。上流区間における未整備区間の修景整備をさらに推し進め、全区間の完成を地域住民は待ち望んでいます。
 そこで、千住汐入大橋付近より上流区間における隅田川テラスの修景整備の取り組みについて、都の見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) うすい浩一議員の一般質問にお答えいたします。
 がん対策の推進でございますが、都におきましては、都民ががんになっても自分らしく生活を送ることができるように、東京都がん対策推進計画に基づきまして、総合的な対策を展開いたしております。
 計画におきましては、科学的根拠に基づくがん予防、患者本位のがん医療の実現、尊厳を持って安心して暮らせる地域共生社会の構築、この三つを全体目標として掲げております。
 この目標を達成するために、がんの早期発見に向けた取り組み、患者及び家族が安心できる医療提供体制の整備、ライフステージに応じたがん対策の取り組みなどさまざまな施策を推進しております。
 また、目標の達成状況につきましては、がん医療の専門家や患者団体などから成ります東京都がん対策推進協議会におきまして、各委員のさまざまな視点からの評価、検証を行い、PDCAサイクルで施策の質を高めております。
 今後とも、都民、医療機関、事業者等と連携を図りながら、総合的な施策を進めまして、都民の皆様一人一人が、がんを知り、がんの克服を目指す、そのような社会を実現してまいります。
 残余のご質問は、東京都技監、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都市計画道路補助第一一八号線についてでございますが、本路線は、足立区小台一丁目から同区柳原二丁目に至る延長約五・五キロメートルの都市計画道路でございまして、荒川と隅田川に挟まれた地域におけます交通の円滑化や地域の安全性の向上などに資する重要な路線でございます。
 このうち、足立区小台一丁目地内の都道第四五八号線に接続する延長約〇・二キロメートルの区間では、既に用地が確保されておりまして、来年度は排水管工事に着手いたします。
 また、本路線は、国が進めるスーパー堤防の整備計画区間と重なることから、この計画が具体化している区間につきまして、国と道路構造や整備時期の調整を行っております。
 今後とも、国や地元区と連携しながら、開通に向け着実に整備に取り組んでまいります。
 次に、隅田川テラスの修景整備についてでございますが、隅田川では、河川整備計画に基づきまして、堤防の耐震性と親水性の向上を目的といたしまして、河川沿いの土地利用や川へのアクセス等の状況を考慮の上、テラス整備を進めておりまして、完成した区間は、ジョギングや散策、イベント等に利用されております。
 千住汐入大橋付近から上流区間におけるテラスの修景整備は、足立区宮城、新田付近の豊島橋から新豊橋の両岸や、スーパー堤防とあわせて整備いたしました千住桜木地区など、平成二十九年度までに約五割が完成しております。
 現在、千住大橋下流で工事を行っておりまして、三十一年度には新たに約六百メートルの区間でテラスが通行可能となります。
 今後とも、植栽やブロック舗装等、テラスの修景整備を積極的に進めまして、親しみやすい水辺空間の創出に取り組んでまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、事業承継の促進に向けた普及啓発についてでございますが、中小企業の事業承継は喫緊の課題でございまして、経営者がその必要性を身近な問題として理解できるよう情報発信を行うことが重要でございます。
 都は、特に小規模企業向けに各地域に設けた支援拠点を通じ、承継をサポートする事業の案内等を行っております。また、中小企業振興公社のセミナーや広報誌により、事業承継税制の改正内容や支援施策の紹介を実施しております。
 新年度からは、具体的事例により、経営者が承継の意義を実感できるようなわかりやすい動画を作成し、ウエブサイトで発信いたしますとともに、鉄道の車内でも放映をしてまいります。また、同公社の支援により承継を実現した実例等を広報誌に連載し、効果的に紹介してまいります。
 こうした工夫を重ね、中小企業の事業承継を後押ししてまいります。
 次に、事業承継に向けた効果的な支援についてでございますが、都は、中小企業振興公社の巡回相談や、各地域に設けた拠点における窓口や会社への専門家派遣により、事業承継で必要となる知識やノウハウの提供を行っているところでございます。
 これに加え、新年度からは、同公社において、承継の相談を専門家が電話で対応するための専用ダイヤルを導入いたします。
 また、事業承継の支援事業を紹介するウエブサイトの中で、経営者からの具体的な相談を電子メールで受け付けて対応する仕組みも構築をしてまいります。
 さらに、公社に事業承継に関する専門の窓口を設け、中小企業からの相談対応や、その後のサポートの充実を図ってまいります。
 最後に、会社合併等による事業承継の支援についてでございますが、東京の中小企業の存続と発展を図る上で、その経営を親族や社内の人材に引き継ぐことができない場合、会社合併や事業譲渡等の手法を活用することは有効でございます。
 都は現在、中小企業が合併等の相手先を決定し、会社登記等のさまざまな手続に必要な経費への助成を行っているところでございます。
 新年度からは、会社合併等の相手先を探すために必要なコストを軽減するための助成を開始いたします。また、制度融資におきましては、合併等に係る相談や、法的手続に要する経費などの短期的な資金繰りを支援する特例を設けることといたしております。
 こうした取り組みによりまして、中小企業の円滑な事業の承継に向けた支援を着実に進めてまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、魅力的な移転先の整備についてでございますが、木密地域の不燃化を加速するには、権利者が安心して生活再建できるよう、コミュニティを維持しながら入居できる魅力的な移転先を確保することが効果的でございます。
 このため、その第一歩として、足立区江北地区の都有地で民間活力による整備に取り組んでおり、昨年十一月に賃貸集合住宅の整備を内容とする実施方針を公表いたしました。
 この方針では、コミュニティの維持に配慮した共用スペースの整備や、周辺環境、景観に配慮した緑化、さらには、魅力を維持し続けられるような管理運営などを求めており、今後、民間事業者の創意工夫ある提案を促してまいります。
 来月下旬には、公募型プロポーザル方式による事業者募集を開始し、秋ごろに事業予定者を決定する予定でございます。
 次に、魅力的な移転先の他の地域での整備についてでございますが、木密地域の改善を加速するには、多くの地区で魅力的な移転先を確保し、権利者などの移転を促進していくことが重要でございます。
 江北地区に続き、足立区関原地区の都有地で、多世代にわたる居住者同士で活発な交流が図られるような移転先の整備を目指して、年度内を目途に実施方針を策定する予定でございます。
 来年度以降は、このほかの木密地域、もしくはその周辺地域からも候補地を選定し、先行する二地区で得られたノウハウを生かしながら、地域の特性に応じた整備内容を検討してまいります。
 燃えない、燃え広がらないまちの実現に向け、今後も工夫を加え、不燃化を強力に推進してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、認知症に関する取り組みについてでありますが、都は、認知症の疑いを家庭で簡単に確認できるチェックリストや、相談窓口などを掲載したパンフレット、知って安心認知症を作成し、認知症に関する正しい知識の普及啓発を推進しており、来年度からこれを活用いたしまして、認知症の疑いのある方を専門機関等につなげる区市町村の取り組みを支援いたします。
 この取り組みでは、まず、高齢者にパンフレットをお届け、お渡しし、セルフチェックをしていただき、その結果、認知機能や社会生活に支障が出ている可能性があり、検診を希望する方に認知症検診を無償で実施いたします。ここで認知症の疑いがあるとされた方を専門医療機関や地域包括支援センター等につないでいくというものでございます。
 今後、早期診断、早期対応を推進し、認知症施策の充実を図ってまいります。
 次に、日本版BPSDケアプログラムの普及でありますが、都は、介護拒否や抑鬱など、認知症の行動心理症状の改善が期待できるケアプログラムを独自に開発し、今年度、介護事業所へのプログラム普及に取り組む区市町村への支援を開始いたしました。
 また、プログラムの実践に必要な知識を習得するための研修を修了したアドミニストレーターに修了証を交付する仕組みとし、支援力向上への意欲を高めるとともに、研修を受講しやすくするため、来年度からeラーニングシステムを構築いたします。
 さらに、本人や家族がプログラムを実践する事業所を選択できるよう、認知症のポータルサイト、とうきょう認知症ナビで検索できるようにするほか、事業所の窓口等に掲示できる都の認定証を交付するなど、ケアプログラムの普及を一層推進してまいります。
 次に、がん検診の受診率向上についてでありますが、都は、がん対策推進計画に、がん検診受診率五〇%を目標として掲げ、啓発イベントやホームページ等を通じまして、検診の重要性を都民に周知するとともに、検診の実施主体である区市町村に対しまして、個別勧奨、再勧奨等の取り組みを包括補助で支援しております。
 また、区市町村の担当者向けに説明会を実施しており、来年度は特定健診との同時実施など、がん検診受診率向上に向けた取り組み事例を紹介してまいります。
 また、がん検診受診に向けた機運を高めていくため、大学と連携した子宮頸がん検診に関する講演会や、働き盛り世代を対象とした親子参加型啓発イベントを実施する予定であり、今後も、さらなる受診率向上に努めてまいります。
 最後に、がん先進医療についてでありますが、陽子線治療や重粒子線治療などの先進医療は保険外併用療養費制度の対象の一つとして、保険診療との併用が認められている医療であり、患者は、保険適用部分を除いた先進医療に係る費用を全額自己負担とすることとなっております。
 こうした患者の自己負担分を本人や家族が金融機関から借り入れを行った際の利子補給や、重粒子線治療の費用助成などを行っている自治体があることは承知しております。
 今後、こうした自治体の取り組みの実績や課題を調査するなど、がん先進医療の実態を把握してまいります。

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