平成三十一年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 九十一番桐山ひとみさん。
〔九十一番桐山ひとみ君登壇〕

○九十一番(桐山ひとみ君) 私は、これまで議員として二十年、体操指導者の立場からも、介護保険が導入される以前より、高齢者が寝たきりにならないための予防が大事であり、虚弱高齢者と元気高齢者の支援としての健康づくりと予防対策は自治体の責務であると申してきました。
 そして昨今、人生百年時代といわれ、長い人生をいかに元気に過ごすかが大きな課題とされており、その鍵こそフレイルの予防だと確信しています。
 さて、昨日の会派代表質問でも取り上げた、東大の飯島教授が考案した住民による住民のためのフレイル予防、フレイルチェック事業の仕組みは、西東京市及び東京都内、全国的な広がりの中、小池都知事及び根本厚労大臣、公明党山口代表も、西東京市のフレイルチェック事業の視察をされ、住民参加のフレイル予防として高い評価をいただきました。
 国は、保健事業と介護予防の一体的な議論の中で、介護予防の通いの場に、低栄養や運動機能など、高齢者のフレイル状態をチェックする保健指導を行う専門家を派遣するなど、方策が検討されていることから、都としても、先進的な区市町村へスピード感を持って支援していくべきです。
 財政支援している健康長寿医療センターでは、東京都の高齢者医療を研究分野でも支えています。現在はフレイル研究もしているとのことですが、活動が見えにくいのが残念です。研究の成果物を都の施策に反映できるよう活用していただきたいと思います。
 そこで、フレイル予防を進めるには、区市町村において、住民主体の活動を推進し、集いの場を気づきの場としていくことが重要であります。今後は、健康長寿医療センターのエビデンスを生かしながら、積極的にフレイル予防の普及啓発に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、AYA世代のがんについて。
 AYA世代は、成人と比べて患者数も少ないのですが、特にAYA世代は、抗がん剤や放射線治療でがん細胞の増殖を抑えるのに効果がある一方、卵巣や卵子にダメージを与え、治療後に生理がとまり、排卵が起こらなくなったりと、将来子供を持つことが難しくなる不妊の可能性があり、医療機関で治療の前に生殖機能を温存する選択肢があることを伝える必要があります。これらを妊孕性温存といいます。
 がんになったAYA世代の多くは、病気の告知と治療の副作用とともに、将来不妊についても限られた時間の中で考えなければなりません。その上、妊孕性温存を選択したくても、費用面で諦めざるを得ない方も少なくありません。
 生殖機能の温存治療に係る費用は医療機関によって異なりますが、男性の場合は、精子の凍結保存が約五万から十万、女性の場合は、卵子の凍結保存が約四十万、卵巣凍結保存が約六十万円で、その他、治療期間中の管理料が年間約二万円から六万円かかるところが多いようです。
 現在、京都府、滋賀県、広島県、千葉県の一部の市で、がん治療に入る前の妊孕性温存治療費に対する助成を出しています。東京都も助成の導入を前向きに検討すべきです。
 そこで、生殖機能温存も含め、AYA世代のがん患者に対する支援を充実すべきと考えますが、答弁を求めます。
 体罰によらない子育てについて。
 一九七九年、スウェーデンで世界に先駆けて体罰禁止の法律が生まれました。今では世界の約五十四カ国が子供の体罰を禁止しており、この動きは世界的に広がりつつあります。
 さて、日本では痛ましい虐待死事案が相次ぐ中で、虐待防止は、スピード感を持って支援、対応強化に向け、党派を超えて進めていかなければならない急務な課題です。
 二月十九日、記者会見で根本厚生労働大臣が、体罰禁止の法制化について、民法の懲戒権との整理なども含め、法務省と協議し検討していきたいと述べております。ようやく児童虐待防止法の改正に動きがありそうです。
 子供のしつけには体罰が必要という誤った認識、風潮を社会から一掃することを目的として作成された、子どもを健やかに育むために─愛の鞭ゼロ作戦を啓発資材として用い、取り組まれておりますが、意識改革までには至らず、体罰は学校での教師の暴力というイメージと、手を上げていないので体罰との認識すらない現実があろうかと思います。
 私は昨年、国際NGOとして活動されているセーブ・ザ・チルドレンのシンポジウム、子どもに対する体罰等の禁止に向けてに出席し、たたかない、どならない子育ての推進、体罰や暴言などが子供の脳の発達に与える影響についてお話を伺いました。
 その中で、子供との不適切なかかわり、不適切な養育のことをマルトリートメントといい、幼いころにこのマルトリートメントを受けると、トラウマや心の傷が病気になり、PTSDなどが発症し、体罰が脳の発達に及ぼす影響があるということが研究結果としても示されているところです。
 自分自身の子育てを振り返り、反省です。私も三人の子育てをしていると、自分が疲れたり、いらいらしたとき、または、子供に教えるために必要と信じているときに、どなったり、たたいたり、子供を傷つけるようないい方をしたこともありました。
 そう感じたときに、愛着の再形成は十分可能なので、絶対に悲観しないでほしいとの言葉がけに少しほっとしたのを覚えています。やり直せるなら、このことを知った上で子育てを楽しくしたい、そう思った参加者の声はたくさんあったと記憶をしています。
 さて、第四回定例会の厚生委員会にて、我が会派の質疑で、条例骨子案に対し、保護者への禁止規定だけでなく、啓発規定も重要であり、都の責務として、体罰等によらない子育ての推進を盛り込むべきだと提案し、そのことで本条例案に規定されたと評価をしています。
 今後も、たたかない、どならない子育てを推進していくためには、母子手帳の配布時や両親学級、出産後には子育て広場や就学前の説明会など、あらゆる機会を通して、当たり前のように、切れ目なく、わかりやすく啓発をしていく必要があると考えます。
 そこで、今回提案された東京都子供への虐待の防止等に関する条例案では、都として体罰等によらない子育てを推進するため、啓発活動を行うことが盛り込まれています。その考え方について、知事の見解をお伺いいたします。
 次に、踏切対策について。
 西武新宿線には、いまだ数多くの踏切が残されており、渋滞や踏切事故をなくすためにも、一日も早く踏切を除却する必要があります。西東京市の東伏見駅周辺地域は、鉄道立体化への強い意向があり、昨年七月には、西東京市長や市議会議長、商店会長などに同行し、連続立体交差化事業の早期実現を東京都に要望したところです。
 こうした中、先日の二月十三日から十六日まで、西武新宿線井荻駅から西武柳沢駅間の都市計画素案の説明会が沿線区市で開催をされ、私も最終日の説明会に参加をいたしました。四日間で約千六百人の住民が参加され、関心の高さを感じています。
 説明会では、鉄道の構造形式は、地形的、計画的、事業的条件から総合的に判断し、高架方式を選定したこと、各駅周辺の駅前広場等の計画についての説明がありました。
 参加者の質疑では、事業着手までの流れ、完了後の高架下の利用方法、地元区市のまちづくりなどさまざまな質問があり、中でも鉄道の構造形式の選定プロセスについての質問が多い印象を受けております。
 地域を分断する危険な踏切の早期除却を目指すことはとても大事ですが、この事業は多額の費用と多くの年月を要し、その延長の長さから地域に与える影響が非常に大きいものです。このため、いろいろな疑問を持つ都民に対して、引き続き丁寧な説明を重ねていくことが重要だと考えます。
 そこで、西武新宿線井荻駅から西武柳沢駅間の鉄道立体化について、今後住民に対してどのように対応していくのか伺います。
 都市計画道路について。
 西武池袋線ひばりヶ丘駅北口においては、長年の懸案として北口のまちづくりを進めてきました。西東京三・四・一三号線と道路ネットワークが形成される市施行の西東京三・四・二一号線は、平成二十年に事業着手し、ひばりヶ丘駅北口駅前広場の整備とあわせ、本年三月に事業を完了し、供用開始される予定であります。
 また、隣接する埼玉県新座市においても、これにつながる都市計画道路について地元説明会を開催するなど、事業化への熟度が高まっています。この道路に隣接する西東京三・四・一三号線を都が整備することで、ひばりヶ丘駅北口の利便性がさらに強化をされ、多くの市民が待ち望んでいます。
 そこで、西東京三・四・一三号線の取り組み状況について伺います。
 多摩地域の南北主要五路線の一つである調布保谷線、西東京三・二・六号線は、平成二十七年八月に埼玉県境まで全面開放されました。
 これにより甲州街道から埼玉県境まで所要時間が七十分から四十分に短縮され、移動の利便性が飛躍的に図られました。
 一方で、調布保谷線の西武池袋線以北は暫定二車線の整備となっており、埼玉県側の都市計画道路が未整備であるため、接続先が埼玉県境を東西に走る二車線のみであり、交差部付近で渋滞が発生しています。
 近い将来、放射七号線が整備され、西東京三・二・六号線とのネットワークが組まれると、関越自動車道の大泉インターチェンジを利用する車の交通量が増加し、さらなる交通混雑に伴う住環境の悪化が懸念されます。都県間のネットワークを形成する道路は不可欠であります。
 そこで、調布保谷線と埼玉県内の都市計画道路との接続についての都の取り組みを伺います。
 東京における都市計画道路の在り方に関する基本方針について。
 中間まとめを見ると、その都市計画道路を広域的な道路と地域的な道路と分けて検証を行っていますが、広域的な道路は、都が主な都道として整備、管理が必要と考える道路と記述がある一方で、地域的な道路は、広域的な道路以外としか記述がありません。
 つまり、検証の結果、計画が存続する未着手の都市計画道路を今後整備する際に、地域的な道路は広域的道路以外であるため、区市が整備主体、管理主体になるべきものという主張が東京都からなされる懸念があります。
 今後、東京における都市計画道路の在り方に関する基本方針を東京都と特別区及び二十六市二町が協働で検討を進めて策定する予定です。
 そこで、この検討の中で広域的道路と地域的な道路と分けて検証を行う上で、未着手の都市計画道路の整備主体、管理主体まで含めた議論が進むことになるのか伺います。
 あわせて、基本方針の今後の進め方と、いつ方針を出すのかお伺いをいたします。
 以上で私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 桐山ひとみ議員の一般質問にお答えいたします。
 体罰等によらない子育ての推進についてのお尋ねでございました。
 体罰等は、恐怖で子供をコントロールしているだけであります。そして、医学的にも、子供の脳の発達に深刻な影響を及ぼすこともあるとされております。
 しかしながら、日本ではしつけとしての体罰を容認する風潮もありまして、子供が独立した人格と尊厳を持つ存在であるという考え方が必ずしも浸透しているとはいえない状況かと存じます。
 子供は、あらゆる場面におきまして権利の主体として尊重されるべきで、かけがえのない存在でございます。
 今回提案いたしました条例案では、子供の権利利益の擁護、健やかな成長を図るということを目的といたしまして、保護者によります体罰等の禁止を明記したところであります。また、都として、体罰等によらない子育てを推進することといたしております。
 今後、都民に対しまして条例の趣旨を広く周知し、子供のしつけには体罰が必要という認識を社会からなくしていく、体罰等によらない子育てが社会全体に浸透するように、一層の啓発に努めてまいります。
 その他のご質問は、東京都技監、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、西武新宿線の井荻駅から西武柳沢駅間の鉄道立体化における住民等への対応についてでございますが、本区間には、あかずの踏切が十二カ所ございまして、地域分断の解消等が課題となっていることから、今月、連続立体交差化に向け、都市計画素案の地元説明会を開催いたしました。
 本説明会では、スライドなどを用いまして計画内容を説明いたしまして、参加者から、鉄道の構造形式や環境への影響、今後のスケジュール等につきまして質問や意見を伺いました。
 引き続き、都市計画や環境影響評価の手続を進める中で意見を伺い、都の考え方を説明いたしますとともに、個別の問い合わせに対しましても丁寧に対応してまいります。
 今後とも、地元区市や鉄道事業者と連携いたしまして、早期事業化に向け、積極的に取り組んでまいります。
 次に、西東京市内の都市計画道路についてでございますが、西東京三・四・一三号線は、交通を円滑化しますとともに、生活道路や通学路への通過交通を抑制いたしまして、地域の安全性の向上に資する重要な路線でございます。
 このうち、主要地方道保谷志木線から埼玉県新座市までの延長約百九十メートルの区間は、第四次事業化計画の優先整備路線に位置づけられております。本区間の整備により、地元市が整備を進めております都市計画道路とのネットワークが形成されるとともに、西武池袋線ひばりヶ丘駅へのアクセス性が向上いたします。
 平成三十一年度の事業化に向け、現在、用地測量を行っており、引き続き、道路構造等の検討を進めてまいります。
 今後とも、地元市と連携しながら、早期事業化に向け、着実に取り組んでまいります。
 最後に、調布保谷線と埼玉県内の都市計画道路との接続についてでございますが、都県境を越えた道路ネットワークの形成は、都市間連携の強化や広域的な防災性を向上させるとともに、地域の生活や産業を支える上で重要でございます。
 東京都と埼玉県との都県境の道路整備につきましては、整備の促進を目的に東京都・埼玉県道路橋梁調整会議を設置いたしまして、個別路線の情報を共有するとともに、事業化に向けた課題やスケジュール等の調整を行っております。
 現在、埼玉県では、調布保谷線と接続する保谷朝霞線につきまして、地元説明会を開催するなど都市計画変更に向けた準備を進めていると聞いております。
 今後とも、埼玉県と連携しながら、都県境の道路ネットワークの形成に積極的に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、フレイル予防の普及啓発についてでありますが、都は、区市町村の介護予防事業を専門的な観点から支援するため、東京都健康長寿医療センターに介護予防推進支援センターを設置し、科学的根拠に基づく体操を行う住民主体の通いの場づくりの研修等を実施しております。
 また、区市町村の介護予防担当者等が参加する会議におきまして、健康長寿医療センターでのフレイル予防の研究成果や、高齢者の社会参加につながる自治体における先進的な実践事例等につきまして共有を図っております。
 来年度は、健康長寿医療センターの専門的知見を生かし、運動や社会参加など、高齢期の健康管理のポイント等を掲載したホームページを開設するほか、企業と連携いたしまして、退職前の方を対象とした出前講座を実施し、フレイル予防の普及啓発を推進してまいります。
 次に、AYA世代のがん患者に対する支援についてでありますが、思春期から若年成人のいわゆるAYA世代のがん患者は、治療の影響による生育不良、不妊といった晩期合併症の発症や、進学や就職の機会の減少など、世代特有の課題がございます。
 そのため、都は新たに、小児科と成人の診療科の連携強化や相談支援体制の充実等を図るモデル事業を実施し、治療により生じる影響や生殖機能の温存の選択肢があることなど、患者が、必要な情報を十分に得た上で希望に沿った治療を選択できるよう支援してまいります。
 こうした取り組みを進めるとともに、他の自治体での支援の取り組みを調査するなど実態の把握に努め、AYA世代のがん患者が必要な治療と支援が受けられる体制の構築を図ってまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都市計画道路の在り方に関する基本方針における道路の区分についてでございますが、広域的な道路とは、交通や防災等の面から広域的な役割を果たす幹線道路でございまして、現時点において、都が主な都道として整備、管理が必要と考えているものでございます。
 広域的な道路以外を地域的な道路と区分しております。この区分に伴い、例えば、概成道路における拡幅整備の有効性の検証では、それぞれ求められる役割が異なるため、車道部や歩道部の幅員構成についての考え方を変えております。
 なお、本検討においては、未着手の都市計画道路の整備主体や管理主体について、議論の対象としているものではございません。
 次に、基本方針の策定に向けた今後の進め方についてでございますが、昨年七月に中間のまとめを公表し、パブリックコメントを行い、その結果と対応を今月ホームページに示しました。
 現在、区市町とともに、概成道路における拡幅整備の有効性や立体交差計画の必要性などについて、個々の路線を対象とした検証を実施しております。
 今後、区市町との協議を重ね、計画変更等の方針を取りまとめ、本年夏ごろに基本方針案として公表する予定でございます。その後、改めてパブリックコメントを実施し、年内を目途に基本方針を策定してまいります。

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