平成三十一年東京都議会会議録第四号

   午後五時四十五分開議

○議長(尾崎大介君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 三十三番原田あきら君。
〔三十三番原田あきら君登壇〕

○三十三番(原田あきら君) 最初に、昨日の代表質問を受けてもなお不明朗な市場移転問題について、一問お尋ねします。
 先週二十二日の定例会見で、市場をめぐる方針転換及び方針変更という指摘は当たるのか、あるいはそうではないのかと質問され、知事は、食文化を大切にしたいということについては全く考え方は変わっていませんと答えました。
 すりかえ、ごまかしはやめるべきです。知事が一昨年六月の基本方針で表明したのは、食文化を大切にしたいという一般論ではありません。知事は、築地は守ると明言し、市場としての機能を確保すると発言していたんです。方針は変わっていないというなら、築地に市場としての機能をどのように確保するのか、明確にお答えしていただきたいと思います。
 小中学校の特別支援教育について伺います。
 今から五十三年前、日本初の情緒障害学級が杉並区に設置されました。ADHDや自閉症スペクトラムなど、集団学習や集団生活に困難を抱える子供たちが週に一度通級して、特別な指導を受けることで困難を克服していきました。
 注目すべきは、発達診断と指導の技術です。眼球運動の訓練で黒板からノートがとりやすくなる子、骨盤にゆがみのある子は、バランスボール等で補正すると衝動性や集中力が改善します。東京都が育てた宝のような教育です。
 東京都は、発達障害という言葉がなかった時代から、情緒障害の通級学級による指導を行い、教員の専門性を磨き、教育内容を充実させてきました。情緒障害学級で培われた教育技術を継承、発展させていくことの重要性についての認識を伺います。
 都では三年前から、この小学校の通級学級を、拠点校の先生が各学校を巡回する特別支援教室に制度変更しました。在籍校での指導のため、支援を受ける子供がふえたのは改善です。しかし、都教委は教員の配置基準を大幅に引き下げてしまったため、深刻な問題が生じています。
 杉並区の今年度初めの児童数は三百四十二人で、通級学級のときの基準であれば先生は四十六人になりますが、現在は三十五人しか配置されていません。保護者からは、本当は週に四時間指導してほしいが二時間に減らされてしまった、プレールームがなく体を使う指導がなくなったなどの声が上がっています。
 また、巡回では、新採や経験の浅い先生も一人で回ることもあり、教員集団での専門性の高め合いも困難になっています。複数の教員で巡回するなど工夫をしていますが、その分、時間的、体力的負担が増しています。
 教員配置基準が引き下げられたことにより、保護者や教員などからは、必ずしも子供に必要な授業時間数や教育内容が確保されていない、教員の専門性や技術の継承が難しくなっているなどの声が上がっていることをどのように認識していますか。
 来年度から特別支援教室が本格実施される中学校については、生徒十人につき先生一人の教員の配置基準について検証を行い、三十三年度に見直すことになっています。小学校についても本当に十対一の配置でよいのかどうかに着目し、改善の検討を行うことを求めますが、いかがですか。
 年度途中の入級の対応にも課題があります。杉並区では、年度当初に三百四十二人だった児童数が九月一日には四百五十九人、百人以上もふえたのに、教員の数が変わりません。
 制度として年度途中での入級を想定しているのですから、年度途中での子供の増加に対応できる教員配置をしなければ、教育の質を保つことはできません。
 そのためにも教員の配置基準を改善することを求めます。少なくとも講師を配置すべきと考えますが、見解を伺います。
 教室の設備や教材などが整っていない、巡回校に教員用の机やパソコンがないという学校や、雨の日も雪の日も、時として妊娠初期の先生まで、自転車で一日二校も三校も巡回している実態があります。
 備品を充実する、希望があれば自動車での巡回を認めるなど、教育条件や教員の勤務環境の改善が必要ですが、いかがですか。
 来年度から本格実施される中学校の特別支援教室についても、不登校ぎみの子供が通えなくなるのではないか、思春期になると在籍校での取り出しに抵抗を感じる生徒がふえるのではないかと懸念されています。
 教員配置を十分に行うとともに、状況を把握し、柔軟な対応や制度改善につなげていただくことを要望します。
 知的障害などの子供が通う特別支援学級についても伺います。
 私は二十代のころ、小学校の障害児学級で講師をしていました。ある日、自閉症を持つ四年生の我が子を迎えに来たお母さんに、きょう初めて風呂敷を結びましたよと伝えると、涙をこぼして喜んでくれたことがありました。
 一人一人の子の課題や困難を見詰め、その子の成長を一つ一つ教師や親たちが喜び合う、障害児教育は教育の原点といわれます。この教育に多くの人手が必要であることはいうまでもありません。
 そこでお伺いします。
 小学校の固定の特別支援学級には、音楽や図工など専門教育の充実のための講師が一校当たり週六時間配置できることになっていますが、どの程度の学校に配置されていますか。特に三学級以上の学校では、一、二学級校に比べ、六時間未満の配置しかされない例が多くなっています。希望に応じ、少なくとも六時間の配置を求めます。
 知事は、一月に策定した三つのシティーの実行プランで、障害のある子供たちの多様なニーズに応える教育の実現とし、さらなる教育環境の整備が必要としています。特別支援学級や特別支援教室を取り巻く状況は、制度変更にふさわしい条件整備が不十分であり、改善が求められています。
 ダイバーシティー東京の理念に基づいて、小中学校の特別支援教育への抜本的な支援が必要と考えますが、知事の見解を伺います。
 外かく環状道路工事について質問します。
 本格的な掘進が開始される中、最大の問題となっているのが、シールド工法によって酸欠空気が発生する問題です。
 昨年五月、シールド工事現場の横を流れる野川から、ぶくぶくとジャグジーのように酸欠空気が噴き出しました。大気の酸素濃度は二一%ですが、国の調べで、野川から発生した酸欠空気は酸素濃度わずか一・五%から六・四%。吸引すれば即昏倒し、数分で死に至るレベルだったことが発覚しました。
 酸欠空気の恐ろしさは、それがわずか一回の呼吸であっても、体を流れる血から酸素が奪われ、数秒で活動低下または活動停止という危険な状態に陥ることです。
 国は、大気にまじれば大丈夫といいますが、酸欠空気が閉じられた空間、あるいは半閉塞空間にたまると大変危険な状態となります。外環の沿線は古井戸が多く残り、また地下室のある住宅も少なからずあります。酸欠空気の発生は見過ごすことができません。
 国は、完全に発生させない工法を示せず、安全な掘進方法を確認しながら掘進すると説明しています。安全性を確保してからではなく、現場で方法を確認しながら進めるという見切り発車のやり方に、地域の住民からは、私たちの土地を実験台にするなと声が上がっています。
 十分な安全対策をとっているとしながら、想定外の酸欠空気の発生を引き起こし、今後の工事で発生する可能性を否定できない異常事態を知事はどのように受けとめていますか。このような状況で都民の安全と安心を約束できると考えているのか、お答えください。
 一呼吸でも大変危険な状態に陥る酸欠空気が発生し、地下室などの空間にたまれば重大な事故を起こしかねないのですから、直ちに周辺の住民に知らせるのが当然です。
 ところが、実際はどうだったでしょうか。
 国と事業者は、酸欠空気の発生と濃度を五月十八日には確認し、都に速報値を伝える六月二十九日までに延べ三十一日間も調査し、全ての日で危険な濃度を観測していたにもかかわらず、その事実を公表しませんでした。
 その間、都や住民に対し酸素濃度が低いことは伝えたものの、濃度は明らかにせず、一貫して、地域の皆さんにご迷惑をかけるような影響はないといい続けました。東京都や住民に数値を明らかにしたのは、三カ月以上も後の八月二十四日になってからです。
 ここまで自治体や住民への数値の報告をおくらせた国の情報提供は明らかに不適切だと考えますが、いかがですか。
 酸欠空気発生のメカニズムと防止策の検討、地盤沈下の防止策と発生した場合の避難計画を一手に担っているのが、国や道路会社、有識者によるトンネル施工等検討委員会です。
 関係自治体から唯一参加しているのが東京都ですが、そこでの報告、提出資料、質疑は原則非公開とされ、どんな問題が発生しているのか、トラブルに対してどういう対策がとられているのか、専門家の立場や住民の命を守る立場から有識者や都がどういう意見を出しているのか、十分な情報が得られないため、住民の不安は高まるばかりです。
 知事は、情報公開は一丁目一番地だと繰り返し発言してきましたが、住民の不安に応える立場から、トンネル施工等検討委員会の情報公開を求めるべきではありませんか。
 我が党は、一兆六千億円もかかり、今後幾らふえるかもわからない不要不急の外環道建設はそもそも中止すべきとの立場ですが、工事の安全の保障がない、住民への説明責任が果たされていない、問題が起こっても会議は公開しないなどと、工事を進める条件も整っていないのが現状です。
 このような状況では工事を進めるべきでなく、本格掘進を今すぐとめるべきだと訴えて、最後に、都立和田堀公園についてお尋ねします。
 和田堀公園は、善福寺川がつくり出した崖や森で覆われた緑豊かな都立公園です。現在、河川改修によってそうした環境が壊されてしまうのではないかと心配の声が上がっているため、お聞きします。
 和田堀公園内の善福寺川河川改修において、カワセミが生息しているといわれる崖や樹木を保護するために、工法など工夫が必要ですが、今後の整備についてお示しください。
 水害対策と環境保全との両立を図る努力を最後に求めまして、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 原田あきら議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、市場機能について、基本方針でお示しをいたしました築地の市場に関する内容でございますが、市場業者を初め、東京の食文化を担う多くの方々の努力によって、長い歴史の中で育まれてきた築地ブランドをさらに発展させていきたいとの思いで述べたものでございます。
 この基本方針をベースにいたしまして都として検討を行い、一昨年七月、市場移転に関する関係局長会議におきまして、築地につきましては民間主導で再開発を進めていくということといたしまして、その後、有識者の意見もいただきながら検討を重ねてきたものでございます。
 市場機能につきましては、かねて申し上げてきたとおり、都が中央卸売市場として運営するのは豊洲市場であります。豊洲市場への移転後の築地再開発でございますが、都が改めて卸売市場を整備することはないと考えております。
 一方で、築地にとりまして食文化は重要な要素の一つと考えておりまして、まちづくり方針の素案におきましても、こうした歴史的、文化的なストックも十分に生かすことを示しております。
 民間のさまざまな知恵も活用しながら、築地を先進性、国際性、両方を兼ね備えた東京の顔として育て、築地に期待を寄せる人々に応えていきたいと考えております。
 次に、小中学校におけます発達障害教育についてのご質問がございました。
 従来の通級指導学級から特別支援教室への制度変更は、他校通級に要する移動時間の解消や、時間割り調整の円滑化によりまして、発達障害に起因する困難さを抱えております児童生徒への支援をよりきめ細かく行えるようにするものでございます。
 これによって、公立小学校から中学校まで、発達障害のある子供たちへの支援が広がって、多くの子供たちが従来よりも、それぞれの障害の状況に応じた教育を受けられるようになってきております。
 今後、都教育委員会とともに、特別支援教室の拡大と適切な運営に一層努めてまいります。
 次に、外環の工事における安全・安心の取り組みについてのご質問がございました。
 国と高速道路会社が整備を進めている外環でございます。経済の血液ともいうべき人と物の流れをスムーズにして国際競争力の強化を図るとともに、首都直下地震など災害時の避難、救急活動のルートを確保するなど、極めて重要な道路でございます。
 工事の安全・安心の確保につきましては、国など事業者が進めてきているところでございます。シールドトンネル工事に伴って野川で発生した気泡につきましては、気体の成分を調査して、気泡自体の酸素濃度は低いものの、大気に比しては微量であって、周辺環境に影響がないことを有識者に確認していると聞いております。
 また、今後は、地上への漏出を抑制しながら工事を進めるとともに、安心確保のため、周辺環境への影響のモニタリングも行っていくと聞いております。
 都といたしましては、引き続き安全を最優先に工事を進めて、外環の一日も早い開通を国に求めるとともに、国から受託しております用地の取得を推進するなど、積極的に支援をしてまいります。
 次に、外環トンネル施工等検討委員会についてのご質問がございました。
 学識経験者等で構成をいたします東京外環トンネル施工等検討委員会でございますが、トンネル構造、施工技術等に関します技術的な検討を行うことを目的に、国など事業者が設置しているものでございます。
 この委員会の審議内容を含めて、外環事業に係ります情報公開をどのように行うかは、まずは事業者が適切に判断するものと考えます。
 そして、なお、本委員会につきましては、規約で非公開とされておりますけれども、議事録については、議事概要として取りまとめられて公開をされているものでございます。
 残余のご質問は、教育長、東京都技監からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 小中学校の特別支援教育に関する七点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別支援教室における教育技術の継承、発展についてでございますが、情緒障害学級で培われたものを含め、発達障害のある子供たちに応じた多様な指導方法を教員間で共有、継承することは重要でございます。
 このため、都教育委員会はこれまでも、OJTを効果的に取り入れた巡回指導体制の例を特別支援教室の導入ガイドラインにおいて示したほか、特別支援教育を担当する教員向けの研修や、指導方法習得用ビデオ教材の開発等を行ってまいりました。
 今後も、新制度に基づくきめ細かな支援を行い、特別支援教室における教育スキルの継承と向上に努めてまいります。
 次に、授業時間数の設定等についてでございますが、従来の通級指導学級から特別支援教室への制度変更により、各校の校内委員会や区市町村教育委員会は、児童の障害の状態等の的確な把握に基づき、より適切な指導時間と指導内容を設定することが可能となっております。
 ご指摘のような声が一部にあることは承知しておりますが、昨年九月から都内公立小学校の約一割に当たる小学校で特別支援教室の運営実態を調査したところでは、従来より短時間で児童への支援を行えるようになり、在籍級において、より多くの時間、学習することができるようになった事例が出てきております。
 都教育委員会は、引き続き、区市町村教育委員会と連携し、特別支援教室の適切な運営を促してまいります。
 次に、教員配置基準についてでございますが、特別支援教室導入開始後三年を経過することから、現在、各学校現場において、導入後の実態把握を行っております。
 都教育委員会は、その結果などを踏まえ、適切な巡回指導体制を検討してまいります。
 次に、年度途中の教員等の配置についてでございますが、通常の学級編制に伴う教員配置と同様に、特別支援教室で指導を受ける年度当初の児童数を区市町村ごとに算定し、児童十人につき一人の教員を配置しており、年度途中の増員は困難でございます。
 また、特別支援教室の業務内容から、教科の授業等を職務とする講師にはなじまないため、講師を配置する考えはございません。
 次に、教育条件等についてでございますが、都教育委員会は、特別支援教室の導入に係る工事費等について、一校当たり百万円を上限とする全額を区市町村教育委員会に補助してきております。
 また、巡回指導教員の出張等については、他の教職員と同様に、最も経済的な通常の経路及び方法によることを原則としており、各学校において出張を命じているところでございます。
 特別支援教室の教育条件及び教員の勤務環境については、設置者である区市町村教育委員会が学校の実情等を踏まえて運営しており、都教育委員会は、引き続き各教育委員会と連携してまいります。
 次に、中学校への特別支援教室の導入についてでございますが、中学生の複雑化する人間関係など、中学校特有の課題に配慮し、生徒本人の事情や指導上の必要により、在籍校以外で指導を受ける方が効果的な生徒は、例外的に他校に設置されている特別支援教室で指導を受けられることとしております。
 各中学校において、生徒の障害の状態等の的確な把握に基づく各校の校内委員会や区市町村教育委員会の判断により、適切な指導時間と指導内容が設定されるよう、都教育委員会は、引き続き区市町村教育委員会と連携してまいります。
 最後に、特別支援学級の講師の配置時間についてでございますが、都教育委員会では、知的障害等の児童を対象に、区市町村が設置する特別支援学級のいわゆる固定学級について、国の標準で算出した教員数に一人を加えた教員配置を行った上で、音楽や図工等の指導に必要な場合は、非常勤の講師を配置しております。
 平成三十年度は、区市町村が設置した三百五十六校のうち三百三十四校に講師を配置しており、教員数等、学校の実態を考慮し、原則として週当たり六時間までの範囲で配置時間を決定しております。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、外環の気泡等における調査結果についてでございますが、国からは、必要な調査、確認が取りまとまったものから順次公表していると聞いております。
 国など事業者は、平成三十年五月十八日に気泡発生について、六月二十九日には気泡の酸素濃度は低いものの、水中の溶存酸素量は高いと公表してございます。
 気体の成分調査の測定値につきましては、八月二十四日に公表し、気泡自体の酸素濃度は低いものの、大気に比して微量でありまして、周辺環境に影響がないことを有識者に確認しております。
 このように、国など事業者は、適切に対応しているものと考えております。
 次に、和田堀公園内の善福寺川の整備についてでございますが、激甚化する豪雨から都民の命と暮らしを守るには、着実に河川整備を進めることが重要でございます。整備に当たりましては、治水対策に万全を期した上で、環境への配慮も行っております。
 和田堀公園内では、川沿いに緑豊かな崖地があることから、平成二十七年度より、護岸の設置位置を工夫いたしまして、崖地を可能な限り保全するなど、周辺環境に配慮した整備を実施しております。
 今後とも、公園内の良好な環境に配慮しながら、河川整備を進めてまいります。

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