平成三十一年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 六十八番鳥居こうすけ君。
〔六十八番鳥居こうすけ君登壇〕

○六十八番(鳥居こうすけ君) まず、我が会派が代表質問で行いましたフレイル予防について、特に人材活用に着目し質問を始めます。
 私の住む杉並区の高齢化率は、二〇一六年二一・一%に対し、二〇二五年に二五・七%へ増加、それに伴い一日当たりの在宅医療サービスの必要者数は、二〇二五年に一・五倍以上に増加します。都全体でも二〇三五年に四人に一人が高齢者になり、それに伴い福祉保健局の予算も、来年度一兆二千八十四億円と十年前の約一・五倍に上昇します。高齢化が進む社会で増加し続ける社会保障費用の課題対策は、対症療法による一時的対応ではなく、予防及び根本的な治療に向けた取り組みを行うことが重要です。
 予防医療として注目されているのが、フレイル予防です。フレイル予防の第一人者である飯島勝矢東大教授の講義を通して、基礎自治体での活動を実感することができました。フレイル事業の本質は、啓発にとどまるのではなく、現場で活躍するフレイルトレーナーやサポーターの活動を促す、いわゆるアクションオリエンテッド、すなわち成果につなげる行動の取り組みであると実感します。
 超高齢社会を見据え、アクションオリエンテッドの視点から、介護予防、フレイル予防の取り組みを進めるためには、フレイルトレーナーやサポーターの育成など、区市町村の取り組み拡大が望ましいと考えます。
 そこで、来年度、どのように区市町村のフレイル対策を支援するのか見解を伺います。
 超高齢社会に対する取り組みの一つとして、都はさらに、Tokyoヘルスケアサポーター養成講座制度を実施しました。都立病院の人材やノウハウを活用し、高齢化に伴いリスクが高まる、がん、認知症、生活習慣病の理解促進や、フレイル予防など五項目の講義を行い、一定の知識を習得した受講者を修了者として認定する制度です。
 本取り組みは、健康の大切さに気づき、健康寿命延伸に向けた自助の機会を提供するほか、家族や友人に伝え広める共助の役割を担う、すばらしい取り組みとして応援したいと思います。
 第一回目の養成講座が本年実施され、定員二百名に対し、実に千百二十四名が応募し、八百名以上が受講されたと伺いました。都民の健康への関心の高まりのあらわれであり、この機運を大いに活用することが肝要と感じます。
 そして、健康づくりは、啓発よりも実践が重要です。都民の健康づくりを支援する多くの関係機関との連携を進め、サポーターに実践の機会を提供する、いわゆるアクションオリエンテッドの取り組みが不可欠と考えます。
 そこで、都は、認定したサポーターの健康づくりの活動を促すためにどのような取り組みを行うのか伺います。あわせて、都民の高い健康意識から、今後の事業展開について伺います。
 超高齢社会のさまざまな課題に対し、セーフティーネットを提供することは必要である一方、予防を視座に予防医療を充実させる取り組みは、増大する医療費を抑制する上でも必須と考えます。
 さらに、健康長寿に向けた課題に対して、その解決策を生み出す新価値創造は、成長戦略の重要な要素と考えます。
 私が会社員時代には、官民、そして学の連携で化粧品や食品を対象としたヘルスケア産業に対し、法改正に伴い機能価値を有する商品の創造が促進されました。その目的は、国民の健康寿命延伸と増大する医療費削減の実現です。
 都においても、健康長寿社会を持続的に実現させる取り組みは重要です。
 都が有する東京都立産業技術研究センターには、バイオ基盤技術が蓄積されており、この技術を活用してヘルスケア産業にかかわる中小企業支援が可能と考えます。産業支援の観点から健康長寿社会実現へ向けた都の取り組みとして、産業技術研究センターの活用について伺います。
 病気にかかった際に、都民の支えとなるのが都立病院の存在です。
 都立三病院が一カ所に集まる多摩メディカルキャンパスは、老朽化した神経病院の改築を軸に再整備を行い、キャンパス全体の医療機能を強化するため、昨年度はキャンパス整備基本構想を策定、本年度は基本計画の策定へと進み、まさに都の難病医療拠点として、難病医療センター(仮称)の整備が動き出そうとしております。
 国では、難病医療提供体制のあり方の報告書が取りまとめられ、早期に正しい診断ができる体制の整備、身近な医療機関で適切な医療を受けられる体制の確保が、各都道府県に対し求められています。
 都では、神経病院を含め専門の十一病院を拠点病院に指定し、難病医療ネットワークを構築することとしております。
 私は、難病患者様にとって治癒への望みが生きる希望へつながることを感じてきました。そのためにも、正しい診断が早期にできる最新技術の提供が重要です。
 難病医療センターが難病医療の中心的な役割を果たせるように整備するため、神経病院の難病医療機能を今後どのように強化していくのかを伺います。
 東京二〇二〇大会開幕式まで一年半を切りました。杉並区では、機運醸成に向け、昨年九月に整備した永福体育館の国際規格ビーチバレーコートを事前キャンプ地として誘致しようと取り組んでおります。
 都もこれまで、さまざまな機運醸成に取り組まれ、特にパラスポーツにおいては、チームビヨンドを立ち上げ、パラスポーツを通じて、みんなが個性を発揮できる未来を目指す活動を展開しております。
 都は、パラリンピック大会の成功に向け、さまざまな障害者スポーツの普及啓発事業を展開していますが、大会の前年度となる来年度は、大会の成功につながる具体的な行動を促進することが必要です。
 多くの方々が大会に参画し、ともに盛り上げていくことは、アクションオリエンテッドの観点からも重要です。そうした観点から、来年度は、より多くの方に障害者スポーツを観戦していただくよう、どのように取り組むのかを伺います。
 知事はこれまで、パラリンピックの成功なくして東京二〇二〇大会の成功はあり得ないと、パラリンピックの成功に力を入れてこられました。私もそのお考えに共感を持ち、複数のパラリンピアンの方々と交流を深め、大会成功に向けて知見を深めてまいりました。杉並区に在住のゴールボール競技者の方より、パラリンピアンの実情を理解する貴重な機会も得ました。パラリンピックの成功には、会場に多くの方が訪れていただくことも大切ですが、優勝者のみが注目される強者至上主義にとらわれず、多くの個性を持った方々に注目が集まり、共生できる社会の創造が重要と考えます。
 杉並区は、小中学校で助け合いの教育を進め、区のボランティア様と連携して、大会後もパラスポーツの振興やスペシャルニーズの方々への支援を促し、共生社会、ダイバーシティーの実現に尽力するとしております。
 都は今後、パラリンピックの成功に向けて一層の取り組みが必要となると思います。
 そこで、パラリンピック後も見据えて、どのようなレガシーを残すための取り組みを進められるのか、知事にお伺いいたします。
 東京二〇二〇大会には、多くの都民、国民のボランティアが参加されます。大会ボランティアは募集人員八万人に対し約二十万人が、都市ボランティアは募集人員二万人に対し約三・六万人が集まり、大会への参加機運が高まりを見せております。既に面談、研修が行われ始め、さらなる大会参画機運が醸成されていくことと期待します。この機運の高まりを大会のレガシーとして維持、継続させ、さまざまな活動への参加につなげていくことが非常に重要です。
 そのためにも、都市ボランティアの方々が、今からボランティア活動に積極的に参加できるようにするとともに、大会後も活動を継続できるようにするべきと考えますが、取り組みを伺います。
 日本ファンドレイジング協会がまとめた寄付白書二〇一七によると、ボランティア活動経験者の寄附経験率は七五・六%と、非経験者の三四・六%を大きく上回ります。
 一方、日米英韓の個人寄附総額の名目GDPに占める割合は、日本の〇・一四%に対し、韓国〇・五、イギリス〇・五四、アメリカ一・四四%と、日本は他国と比較して低く、また、二十歳代の若年層の寄附経験率はおおむね二〇%台で、他国に比べ一〇ポイント程度低いことが示されています。
 国の税制改正により、巨額の都税が失われること、世界経済が安定しないことを熟慮し、税収を得るのに楽観視できない時代においては、寄附や社会的投資市場の拡大策の重要性は高まると考えます。
 ボランティア活動経験者に寄附経験者が多く、東京二〇二〇大会に向けてボランティア機運が醸成されていること、都税収入が上がりにくい環境下にあり、寄附文化が他国よりもおくれていることを熟慮すると、自発的な寄附を促進するためには、学校教育におけるボランティア活動を推進していくことが重要と考えます。
 そこで、東京都オリンピック・パラリンピック教育におけるボランティアマインドを醸成するための取り組みの現状と成果について伺い、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鳥居こうすけ議員の一般質問にお答えいたします。
 東京パラリンピックのレガシーについてでございますが、一九六四年の東京大会は、東海道新幹線や首都高速道路というレガシーを残しました。東京二〇二〇大会では、特にパラリンピックの価値を社会に根づかせてダイバーシティーを実現させたい、その思いでいっぱいでございます。
 そのために、まず、多くの都民に障害者スポーツや選手の魅力、迫力を知っていただき、実際に観戦していただくことを重ねて、パラリンピックの会場を満員の観客で盛り上げてまいりたいと考えております。
 そして、これまでスポーツにかかわりのなかった障害者の方々も含めまして、誰もが身近な地域でスポーツに親しめる環境を築いてまいります。
 また、今後のさらなる高齢化も見据えまして、宿泊施設のバリアフリー化を加速させるとともに、歩道の段差の解消や鉄道駅でのホームドア、エレベーターの設置等、誰もが快適に滞在をして、スムーズに移動できる都市を実現して、東京という都市の成熟、そして品格を世界に示していきたいと考えております。
 さらに、ハード面はもとより、情報バリアフリーや心のバリアフリーなどのソフト面のバリアフリー化を一層促進をいたしまして、障害者や外国人等、さまざまな方の社会参加を後押ししてまいります。
 パラリンピックの成功を機に、障害の有無、年齢、性別等にかかわらず、全ての人が互いに尊重し、誰もが生き生きと生活して活躍できる共生社会をつくり上げてまいります。
 残余のご質問につきましては、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) ボランティアマインドの醸成についてでございますが、共生社会の担い手となる子供たちにとって、社会に貢献しようとする意欲や他者を思いやる心といったボランティアマインドを醸成することは、極めて重要でございます。
 そのため、都教育委員会は、オリンピック・パラリンピック教育の一環として、東京ユースボランティア・バンクを開設し、都内公立学校にボランティアの募集情報を発信するとともに、ボランティア活動推進校六校を指定いたしました。推進校では、生徒会役員や有志の生徒が中心となって推進役を担うサポートチームを編成し、ボランティア活動を学校全体に広げてきております。
 今後、このサポートチームを全都立高校で展開することなどにより、各学校におけるボランティア活動を一層推進し、生徒の社会貢献意識の向上を図ってまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) フレイル予防についてお答えいたします。
 フレイルを予防するためには、地域における健康づくりや介護予防の取り組みが欠かせないものと認識しております。
 そのため、都は、健康教育やリハビリテーション専門職等を活用した介護予防、高齢者の通いの場づくりなどに取り組む区市町村を包括補助等で支援しております。
 来年度は、地域で健康づくり対策を担う人材を対象に、フレイルの正しい知識や予防の重要性等に関する研修を実施いたします。
 また、各地域の介護予防体操の動画や高齢者の通いの場等の情報につきまして、ホームページなどさまざまな媒体を活用し、広く都民に普及啓発してまいります。
 今後とも、区市町村と連携し、身近な通いの場等におけるフレイル予防の取り組みを推進してまいります。
〔病院経営本部長堤雅史君登壇〕

○病院経営本部長(堤雅史君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、Tokyoヘルスケアサポーターについてでございますが、都民が健康意識を高め、生涯現役で活躍できるよう、本年一月、Tokyoヘルスケアサポーター養成講座を開催し、受講者八百二十七名をサポーターに認定いたしました。
 認定したサポーターには、健康に関する知識の習得にとどまらず、身近な地域で日常から積極的に健康づくりに取り組んでもらうことが重要であると考えております。
 このため、サポーターの自主的な活動に資するよう、地域の健康づくりの推進役である区市町村の取り組みを情報発信するなど、フォローアップに努めてまいります。
 さらに、来年度、新たに多摩地区でも講座を開催し、都民の受講機会を拡大するとともに、区市町村や健康づくりに取り組む団体を初め多様な主体との連携を検討するなど、さらなる充実を図ってまいります。
 次に、神経病院の難病医療機能の強化についてでございますが、神経病院は多摩総合医療センターと一括で東京都難病診療連携拠点病院の指定を受けておりまして、早期の正確な診断、治療に加えて、患者等への難病医療に関する情報提供や、関係機関との診療ネットワークの構築、地域での治療継続支援といった役割が求められます。
 このため、遺伝子解析をもとにした高度な診断の導入やロボットスーツによるリハビリの本格実施とともに、患者支援センターにおける相談支援機能の充実などを図ります。
 また、連携医や訪問看護ステーション等の関係機関との連携強化や、地域の医療従事者への研修など、人材育成支援を推進いたします。
 このように、着実に難病医療機能の強化を進め、その実績を難病医療センター(仮称)の整備につなげてまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) ヘルスケア産業に係る中小企業支援についてでございますが、高齢者人口が増加し、健康への関心が高まる中、成長の見込まれるヘルスケア産業において、中小企業が力を発揮できるよう技術面から支援することは重要でございます。
 このため、産業技術研究センターでは、バイオ技術分野における製品開発を支援する部門を設置いたしまして、再生医療に使用する素材等に関する基盤研究を実施しております。
 新年度からは、同センターで培った技術を活用し、スキンケアに役立つ化粧品等の安全性を評価する手法の開発に着手をいたします。また、ヘルスケアの機能を持つ化粧品や食品等を開発する中小企業に対し、先端的な実験機器で製品化に必要な試験のサポートを行うための体制の整備を進めてまいります。
 こうした取り組みによりまして、すぐれた技術を持つ中小企業がヘルスケア産業の分野でも活躍できるようサポートしてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、障害者スポーツの観戦促進の取り組みについてでありますが、都が進めてきた障害者スポーツの応援プロジェクト、チームビヨンドの登録メンバー数は、現在、百二十五万人を超えております。世論調査の結果では、障害者スポーツに関心がある人は約六割となり、都民の関心は高まりつつあると感じております。この関心の高まりを会場観戦者の増加につなげていきたいと考えております。
 そこで、来年度は、国際大会の観戦機会をさらにふやすとともに、ルール解説リーフレットの配布や応援グッズを活用した楽しい観戦の実施など、質、量ともに観戦機会を充実させてまいります。また、多くの企業、団体が観戦を含めた障害者スポーツの支援活動を展開できるよう後押ししてまいります。
 大会本番の会場が満員の観客で盛り上がるよう、さまざまな取り組みを精力的に進めてまいります。
 次に、ボランティア参加機運の拡大、継続についてでありますが、東京二〇二〇大会に向け、ボランティア参加機運を高めるとともに、これを一過性のものとせず、大会後も着実に維持発展させていくことが重要であります。
 シティキャストの皆さんには、面談、研修の機会や、メール等を通じ、短時間で気軽に活動できるボランティアを初め、大会以外でも行われているさまざまな活動情報を提供し、参加のきっかけとしていただけるよう取り組んでおります。
 また、大会後に向け、ご本人に関心のある分野やその後の活動継続の意思を確認し、ご希望に合った情報を提供するなど活動継続への仕組みを検討してまいります。
 大会に向けたボランティア活動の機運を高め、大会後も引き続き活躍いただける環境を整え、国内におけるボランティア文化の定着に向け取り組んでまいります。

○議長(尾崎大介君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後五時二十五分休憩

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