平成三十一年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 三十八番伊藤こういち君。
〔三十八番伊藤こういち君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○三十八番(伊藤こういち君) 初めに、災害発生時の対応力強化と、事前に備える防災対策の強化について質問します。
 間もなく、平成から新たな時代への幕あけを迎えます。平成の三十年間を災害という観点で振り返れば、大地震、火山噴火、甚大な風水害や土砂災害など、数え切れないほど多くの災害が発生した時代でした。
 こうした災害によって被災された方々、いまだ避難生活を余儀なくされている方々に改めてお見舞いを申し上げます。
 一方、平成時代の災害から、ボランティアなどの社会貢献活動が活発になり、日本人の他者を思いやる心と行動が形となって発揮された時代でもありました。
 私自身も、平成七年の阪神・淡路大震災発生の翌日、現地へ救援に駆けつけた経験と教訓を原点として、都議会議員となって、緊急地震速報の普及改善や、災害時の悪路や狭隘な道路などではバイクの活用が有効であること、また、障害者等が必要な支援を求められるヘルプカードの創設、普及などを提案し、推進してきました。
 また、都議会公明党は、阪神・淡路大震災の直後には、消防救助機動部隊、現在のハイパーレスキュー隊の創設を都に求めるなど、一貫して災害発生時の対応力強化を要請し、拡充されてきました。
 一方、近年は異常気象災害などがかつてないほど激甚化しており、こうした傾向は、今後ますます深刻なものになることが迫っています。
 そこで、これまでの既存の部隊が対応困難な場合でも、迅速に災害現場に進入し、活動できる新たな災害対応体制を構築すべきです。東京消防庁の取り組みについて見解を求めます。
 昨日の本会議代表質問において、都議会公明党は、一人一人の住民と地域が我が事として自然災害に備える重要性を訴えました。これに対し都は、東京都版マイタイムラインや、スマートフォンアプリを活用した浸水の深さを視覚的に確認できる仕組みの導入を、ことしの梅雨に入る前の六月に開始することを明らかにしました。
 そこでまず、スマートフォンアプリについてですが、都が発信する防災情報や知識を身につけるツールとしての東京都防災アプリのさらなる普及が必要です。
 都は、これまで以上に、その活用を広く都民などに働きかけるべきです。見解を求めます。
 次に、東京都版マイタイムラインの配布について、昨日、知事は、都内の全ての児童生徒に配布し、子供から家庭へ、そして地域全体へ普及推進していくと答弁しました。
 そこで、児童生徒が、マイタイムラインを作成することの必要性と方法を理解できる取り組みを進めるべきです。都の見解を求めます。
 また、防災上、日常の地域コミュニティが最も重要ですが、高齢者など地域の活動に参加できない方や、学校での配布を受け取る世代の子供がいない方々も、マイタイムラインの作成は必要です。
 こうした方々が自分一人でも作成することができるよう、わかりやすいガイドブックを用意することが必要です。加えて、マイタイムラインに要配慮者の視点も盛り込むことで、誰もが防災意識を高められる取り組みとすべきです。見解を求めます。
 また、本年行われる防災訓練等において、東京都版マイタイムラインと新たなアプリを早速活用し、その成果を広く普及していくべきです。見解を求めます。
 次に、海ごみ対策について質問します。
 海ごみは、川や海へ直接捨てられるもののほか、まち中でのポイ捨てなどが雨や風により河川や水路等に入り込み、やがて海ごみとなっていくものも多く、とりわけプラスチック製品は、海の自然環境の中で破砕、細分化され、微細な五ミリ以下のマイクロプラスチックとなり、生態系に大きな影響を与えていることが、世界的な問題となっています。
 プラスチック製品は、私たちの生活の中で欠かせないものであり、決して悪者なのではありません。
 しかし、こうした現状を直視し、課題解決へと向かうために、リサイクルなどの適正な処理を進めるとともに、私たちは、自分の生活にとって身近な問題であり、海ごみの発生を抑制するために何ができるのかを考えることが、第一歩であります。
 そして、限りある石油由来のプラスチック製品を当たり前のように使い捨てる習慣について、意識改革をしなければなりません。
 小池知事は、昨年十月、品川区立第三日野小学校において、小学四年生三十人の前で、スペシャルティーチャーとして、海ごみについて考えようという特別授業を行い、海ごみ問題や3R、風呂敷の活用などを子供たちにわかりやすく伝えておられました。そして、プラスチックストローにかわるアイデアを子供たちに宿題として、意識改革を呼びかけました。
 品川区によれば、区立小中学校の学校給食において、プラスチックストローは毎日約二万二千本、年間で約四百三十万本も使用されており、ワンウエー、一度限りの使用で廃棄されています。これを東京全域で換算すれば、とてつもない数のプラスチックストローが教育現場である学校から排出されていることになります。
 私の地元品川区では、迫り来る環境問題を学び、何ができるのかを考え、それを家庭で実践し、社会全体へ広げていこうと、母親グループが活動を開始しています。
 このグループは、こうした当たり前について、次代を担う子供たちとともに考え直していくきっかけにしたいと、昨年十一月に、学校給食におけるプラスチックストローの使用を見直し、代替方法を導入してほしいとの請願を品川区議会に提起し、全会一致で採択されました。その請願内容は品川区から都教育委員会にも伝えられており、私は、大いに意義のあることと考えます。
 そこで、学校給食で使用され、使い捨てされるプラスチックストロー改革に向けて、産業界等と連携した取り組みを都が率先して開始すべきです。見解を求めます。
 環境局では、海ごみの発生抑制に向けて、環境学習用教材として、海ごみを減らすために私たちができることと題したショートムービーを作成し、普及啓発に活用しています。
 このムービーは、海ごみについて、東京とニューヨークの子供たちがともに学び、考え、インターネットを通じて、国境を越えて意見交換を行った記録であり、私たちにできることから実践していこうという、子供たちから社会へ向けたメッセージが込められており、高く評価します。
 都は、このムービーを子供から大人まで幅広く活用しながら、海ごみの発生抑制について都民にわかりやすい解説を作成するなど、取り組みを拡充、発展させるべきです。都の見解を求めます。
 このムービーにあるように、東京と世界の子供たちが地球的課題の解決に向けてともに学び行動を広げていくことは、まさにSDGsを実践する重要な取り組みであります。
 そこで、世界に開かれた環境先進都市を目指す東京が、世界の都市と連携し、地球環境を守る取り組みをリードしていくべきと考えます。知事の見解を求めます。
 次に、児童虐待防止と子育て支援について質問します。
 連日のように痛ましい児童虐待事件が報道される中、しつけと称して虐待が繰り返されております。
 今定例会に提出された東京都子供への虐待防止に関する条例案には、保護者の責務として、法的には国内初となる体罰の禁止が規定されております。
 しかし、体罰の禁止といっても、各家庭内においては、それをいかに捉え、どう改め、どのように実践すればいいのか戸惑うことも想定されます。
 児童虐待については、早期発見、早期安全確認、的確な対処が重要な対策ですが、その手前で、体罰や虐待に至ることを未然に防止することが何より重要であります。
 こうしたことから、私は、体罰によらない子育てについて、都の責務として、広報啓発活動を積極的に行うよう求めてきました。
 そこで、保護者が子供の発達段階の特徴や行動を理解し、受けとめ、我が子とともに成長していけるよう、子育てのヒントなどをわかりやすくまとめ、都として広く都民に発信していくべきです。知事の見解を求めます。
 待機児童問題の解消を目指し、取り組みを加速する中、ゼロから二歳児の乳幼児がいる家庭のうち、保育を利用しているのは約四割。残りの六割は、在宅で子育てをしています。
 在宅子育て家庭の多くは、主に区市町村が展開する子育て広場などを利用していますが、一方で、我が子がほかの子と違うのではないかといった子供の発達に不安を抱えていたり、障害がある子供は受け入れてもらえないのではと、外に出ることをちゅうちょしてしまう母親も少なくありません。
 こうした親子が社会から取り残されることがないよう、安心して誰もが参加でき、相談できる子育て広場を充実できるよう、都は、専門的人材を配置する区市町村を支援すべきです。見解を求めます。
 私は、品川区で児童センター指導員を十九年間務めてきました。その中で、母親自身が他人とのつき合いが苦手という人や、どこにも属したくないと考え、子育てに行き詰まってしまう在宅子育て家庭の存在に気づきました。
 そこで、私は、児童センターに集う子育て広場だけではなく、まち中の公園などに出向いていって、入会登録や所属を求めない出張児童センター、青空子育て広場を展開してきました。
 そこには、孤立寸前の親子が顔を見せることもあり、はしゃいで遊ぶ子供の笑顔を見て、母親も笑顔を取り戻すといったことがありました。
 そこで、都は、孤立しがちな在宅子育て家庭に直接支援が届くよう、アウトリーチ型の支援事業も充実し、社会全体で支えていける取り組みが必要です。見解を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 伊藤こういち議員の一般質問にお答えをいたします。二問ございます。
 世界の都市と連携した地球環境問題への取り組みについてのご質問からお答えいたします。
 海ごみの問題をきっかけといたしまして、プラスチックの削減が世界的な課題となる中で、使い捨て型の大量消費社会から持続可能な資源利用への大胆な移行が必要となっております。
 資源利用量の増大が気候変動や生物多様性の損失を地球規模で引き起こしておりまして、SDGsやパリ協定を実現するためにも、資源エネルギーを大量消費する大都市東京は、大きな責務を担っているものでございます。
 昨年の五月に都が主催いたしました環境国際会議でも、クリーンシティーをキーワードといたしまして、プラスチック対策を初めとする持続可能な資源利用に向けた課題について議論をいたしました。そして、今後のビジョンと取り組みを参加都市とともに世界に発信をいたしております。
 また、本年五月には、私が議長を務めるU20メイヤーズ・サミット、これを東京で開催する予定といたしております。気候変動を初めとするグローバルな課題解決に向けまして、世界の主要都市のリーダーの皆さんとともに、G20に対して意欲的なメッセージを発信していきたいと考えております。
 次に、体罰などによらない子育ての推進についてのご質問でございます。
 体罰などは、医学的に、子供の脳の発達に深刻な影響を及ぼすこともあるとされております。体罰によらない子育てを推進することは重要でございます。
 今回提案いたしました条例案では、子供の権利利益の擁護、そして、健やかな成長を図ることを目的といたしまして、保護者による体罰等の禁止を明記いたしました。
 また、都といたしまして、体罰などによらない子育てを推進することといたしております。
 都といたしまして、これまで、両親学級や育児相談等の機会を捉まえまして、体罰などによらない子育てについて啓発を行うとともに、育児不安の軽減を図る親支援プログラムなどを実施する区市町村を支援してまいりましたが、都民の中には体罰によらない子育てがまだ十分には定着していない方々もおられるようでございます。
 今後、都民に対しまして、条例の趣旨を広く周知をいたしまして、お話の体罰などによらない子育てに関して、わかりやすい啓発方法がどういうものがあるのか、早急に検討してまいりたいと考えております。
 残余のご質問は教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 学校給食のプラスチックストローについてでございますが、都内公立小中学校等の学校給食においては、七割以上の学校に紙パックの牛乳が供給され、プラスチックストローが使用されております。
 使用後のストローは廃棄されているのが現状でございまして、コストや利便性等の面から、これにかわる有力な素材のストローが供給されている状況にはございません。
 しかしながら、学校給食のプラスチックストローの問題を解決することは、地球環境問題に対する取り組みや、児童生徒への環境教育の観点からも重要と考えております。
 こうしたことから、コップに牛乳を移しかえる取り組みなどの試行のほか、乳業メーカーや区市町村等とも連携しながら、プラスチックストローにかわる方法について検討をしてまいります。
〔消防総監村上研一君登壇〕

○消防総監(村上研一君) 新たな災害対応体制の構築についてでございますが、東京消防庁では、近年激甚化する災害に備えるため、平成三十年七月豪雨や北海道胆振東部地震などにおいて現地調査を行い、消防本部の活動状況等を参考に、必要な車両、資器材や体制等について検討してまいりました。
 来年度は、これらの検討結果を踏まえ、被災地の情報収集に有効なドローン、急斜面や浸水地への進入が可能な全地形活動車、プロペラを推進力とした水陸両用のエアボート及び酷暑時の救援活動にも効果的な高機能指揮支援車等を配備し、既存の消防部隊では対応が難しい災害においても迅速な活動が展開できる即応対処部隊を創設する予定でございます。
 今後とも、大規模な自然災害やテロ災害などの発生に備え、災害対応体制の充実強化に努めてまいります。
〔総務局長遠藤雅彦君登壇〕

○総務局長(遠藤雅彦君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京都防災アプリの普及拡大についてでございますが、東京都防災アプリは、発災時に必要な情報を盛り込み、多くの都民が楽しみながら学べるものとして昨年三月に配信を開始いたしました。配信に当たっては、広報用動画をSNSで発信するとともに、ポスターやリーフレットの配布等を行い、現在のダウンロード数は約二十万件となっております。
 今後、水災時の早期避難に向け、洪水、高潮による浸水リスクなどを視覚的に表示できる機能を新たに加えるほか、防災マップについてオフライン時でも避難ルートを確認できるようにするなど、アプリの充実を図ってまいります。
 こうした機能の拡充などを行い、防災アプリの魅力の向上を図り、積極的な広報活動とともに、都や区市町村が実施する訓練やワークショップ等でアプリに触れる機会をふやすことなどにより、その普及拡大を図ってまいります。
 次に、児童生徒のマイタイムラインへの理解促進についてでございますが、マイタイムライン作成セットが有効に活用されるためには、児童生徒や保護者にマイタイムラインの意義を理解してもらうことが重要でございます。
 そのため、児童生徒にセットを配布する学校関係者に対しまして、マイタイムラインの必要性や作成の要点を教員への講習会等を通じて丁寧に説明し、児童生徒や保護者への積極的な取り組みを促してまいります。
 また、セットに同封するガイドブックには、水害リスクを実感できる写真や図版を多く取り込むなど、マイタイムライン作成の意識が高まるような工夫を凝らしてまいります。
 こうした取り組みを進めることで、児童生徒のマイタイムラインに対する理解を促進してまいります。
 次に、マイタイムラインの普及を通じた防災意識の向上についてでございますが、洪水等による被害を軽減するには、できるだけ多くの都民がマイタイムラインを作成し、避難に関する事前の準備を進めていくことが重要でございます。
 そのために、マイタイムラインの作成セットでは、水害や避難について理解を深めながら、誰もが一人で容易にマイタイムラインを作成できるガイドブックを同封いたします。
 また、セットにつきましては、高齢者等を意識しまして、文字の大きさや色覚の個人差にも配慮したものといたします。
 さらに、マイタイムラインの作成過程において、近隣の要配慮者への声かけや、避難行動における要配慮者への援助を実施することなどについても盛り込むよう促していくなど、地域全体での防災力の強化を図ってまいります。
 最後に、防災訓練等におけるマイタイムラインやアプリの活用についてでございますが、水害発生時に確実に避難するためには、平時において、みずからの地域の状況を踏まえたマイタイムラインの作成を行うとともに、その定期的な見直しが重要となってまいります。
 そこで、都や区市町村の防災訓練等において、防災アプリを活用して水害時の浸水の深さを手元で確認しながら訓練を実施するなど、避難経路の安全性や住民同士の連携等につきまして、より実践的にマイタイムラインの検証を行ってまいります。
 また、これらの訓練で得られた成果を住民参加型ワークショップや防災イベント等の機会を通じて、広く普及してまいります。
 このような取り組みを推進し、都民が水害から確実に身を守れるよう支援をしてまいります。
〔環境局長和賀井克夫君登壇〕

○環境局長(和賀井克夫君) 海ごみの発生抑制のための普及啓発についてでございますが、都は、平成二十九年に作成したショートムービーを自治体やNGO、学校などの教育機関に配布するとともに、インターネットを通じて広く情報発信をしております。
 このムービーを環境学習などの場でさらに効果的に活用するためには、海ごみに関する情報を小学生や一般の方にもわかりやすく解説していくことが必要でございます。
 このため、都は今年度、河川でのごみ拾い体験や海ごみに関するモデル授業を小学校において実施し、教諭との意見交換を行いました。
 今後は、こうした現場教諭の意見を踏まえるとともに、海ごみに関する知見を持つ大学等との連携により、広く都民を対象としたガイドブックを作成し、学習効果を高め、海ごみ発生抑制対策の普及啓発を推進してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、子育て広場についてでありますが、都はこれまで、子育て親子が気軽に集い、相互に相談や交流を行う子育て広場を設置する区市町村への整備費の補助や、職員の支援力を高めるための研修などを実施してまいりました。
 来年度は、障害の有無にかかわらず、就学前の子を持つ全ての親子がより気軽に子育て広場を利用できるよう、心理士や保健師などの専門職を配置するふらっと広場事業をモデル実施するとともに、子育て広場の職員を対象に、障害児支援の基本的な知識を習得するための研修を実施いたします。
 今後とも、こうした取り組みを通じまして、子育て広場の充実を図る区市町村を支援してまいります。
 次に、在宅子育て家庭へのアウトリーチ型支援についてでありますが、都は、保健師等による家庭訪問、育児支援ヘルパーの派遣など、在宅子育て家庭を支える区市町村の取り組みを支援しております。
 今年度からは、一歳未満の子供を在宅で育てる家庭を対象に、区市町村を通じて家事支援サービスの利用を支援する在宅子育てサポート事業を実施しているところでございます。
 来年度は、本事業の年齢要件を三歳未満に引き上げるとともに、一定の研修を受講したベビーシッターと一緒に育児を行う共同保育も支援の対象に加えてまいります。
 また、未就園児のいる家庭等を対象に、食事の調理を行うヘルパーを派遣する取り組みへの支援も開始するなど、在宅子育て家庭が孤立することなく、適切な支援を受けられるよう、区市町村の取り組みを積極的に支援してまいります。

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