平成三十一年東京都議会会議録第四号

   午後三時二十五分開議

○議長(尾崎大介君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十五番白戸太朗君。
〔四十五番白戸太朗君登壇〕

○四十五番(白戸太朗君) 都市の交通網は、人間でいえば血管でございます。これがスムーズであれば健康な状態で、逆にここが詰まると不健康、最悪は命にかかわってきます。つまり、交通網が悪化すれば、都市の健康状態は低下し、都市機能や経済の停滞を招くことはいうまでもありません。
 近年、発展と変化を遂げる臨海部。有明地域では、平成二十年には千三百三十人だった人口が現在では九千三百三十二人。たった十年間で七倍の人口増加。さらに、この後の二年で千五百戸を超える大型マンションが二棟、三百戸程度の中型マンションが一棟建設され、二年後には人口一万五千人を超える勢いです。
 このまちに住む方は、有明方面から都心方面に通勤したいのですが、現状の交通手段は路線バス、もしくは「ゆりかもめ」に頼らざるを得ないのが実情。環状二号線など道路環境がよくなっても、公共交通機関による通勤通学の足は改善していません。この課題に対応するため、現在、都は、都心と臨海地域を結ぶBRTを計画しています。
 臨海部に住む方の交通事情が早期に改善されるよう、一日も早いBRTの整備が必要と考えますが、今後の運行予定はどのようになっているのか伺います。
 先日、豊洲市場で関係者にお話を伺うと、豊洲市場から築地への公共交通アクセスが悪過ぎる、買い付けに来るお客さんのためにも、観光客のためにも、そして市場関係者のためにも巡回バスを走らせてほしいという声を数多く聞きました。
 一方で、さきに述べたような状況や晴海選手村跡の一万二千人規模の集合住宅のことを考慮すると、長期的な視点では、BRTだけではふえ続ける需要に対応できなくなる可能性が高いと思われます。
 そのような中で、国の交通政策審議会答申において、都心部・臨海地域地下鉄構想が提案されていますが、この構想路線を都としてどのように具体化していくのか伺います。
 臨海地下鉄構想は、開発が進む有明、豊洲、晴海などと都心を結ぶ路線であり、将来の発展に直結するものではあるが、このうち、豊洲については、先ほど述べたBRT、臨海地下鉄構想のほかに、東京メトロ有楽町線を分岐させ、住吉と結ぶ八号線の延伸計画も国の答申で示されています。
 この延伸計画は、千葉方面から都内に向かう路線で乗車率ナンバーワンという東西線、京葉線の混雑緩和のために検討が始まりました。これは、その二つの路線利用者や豊洲周辺の住民への効果は非常に大きいと思われます。さらに、豊洲市場とスカイツリーという二つの大きな拠点を結び、観光にも資する路線であり、私の地元である江東区にも大きな期待が寄せられています。
 今回の予算案において、鉄道ネットワークの整備促進というのが盛り込まれており、これには、地下鉄八号線の延伸も含まれています。都として前向きに取り組んでいただいていることは評価するが、このような人口拡大スピードに現状は追いついていきません。
 事業主体者の調整など、協議事項があるのは承知しておりますが、八号線の延伸は早急に行うべきであります。現状の取り組み状況について伺います。
 また、臨海地下鉄構想及び八号線の延伸などの首都圏鉄道網の拡充については、一月に発足しました国と東京都の実務者協議会の中での協議事項となっていますが、どのように国と連携して協議を進めていくのかもあわせて伺います。
 一方、臨海部の交通インフラについては、海に囲まれたこの地域だからこそできることがあると考えます。例えば、舟運活用。竹芝桟橋や築地などと距離も近く、水路でも結ばれているという立地を生かすべきです。海外では、シドニーやニューヨークのように船を生活のインフラとして使っている大都市は珍しくありません。海と隣接したまちだからこそできるインフラがあるのではないでしょうか。地上交通網が発達しているところでは需要は見込めませんが、ここはそれが不足している路線でもあり、臨海地下鉄構想ができるまでは大変有効であると考えます。
 臨海部の利便性向上のために、生活路線としての舟運活用を検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 続いて、環境的なインパクトも少なく、経済的で利便性も高く、渋滞緩和や通勤環境改善にも、さらには都民の健康増進にも資する自転車の活用について伺います。
 昨年、生活文化局の調査によりますと、都内で週一回以上自転車を利用する人の割合は六割程度、また、家庭での保有率は七五%、人口の六割が使用し、八割近い家庭で保有する、まさに車よりも使用率の高い交通手段であることがわかり、いかに都民の生活に深く浸透しているかをあらわしています。
 しかし、自転車には免許制度がないため、ルールをよく把握しないで乗っているケースもあり、さまざまなトラブルが起こっているのも現状です。
 解決には、まず、自転車利用者の交通ルール、マナーの向上が必須。現状では、交通規則やマナーの認識は非常に個人差が大きい。小学校には、警視庁が巡回指導されているのですが、成人層へも指導、啓発が必要で、社会全体に自転車安全利用に向けたルール、マナーを浸透させていくべきと考えます。見解を伺います。
 事故の際、自転車が加害者となる場合は、自転車に賠償責任が生じることから、賠償保険の加入促進が必須。近年、賠償金額が高騰する中で、条例により加入を義務づける自治体もふえています。先日、足立区が都内で初めて義務づけ条例を制定すると発表したことも記憶に新しいところで、努力義務から義務化への移行期間になっているのではないかと考えます。
 現在、国では、加入促進に向けた検討会議を開催していますが、都では、自転車賠償責任保険の加入拡大に向け、どのような取り組みを行っていくのか伺います。
 また、ルール、マナー講習受講者は保険加入割引をするなど、保険と講習を組み合わせにすると、より受講も促進されるのではないかと考えます。
 近年、都内でもナビライン、ナビマークがふえ、自転車の車道走行が少しずつ浸透してきました。これはすばらしいことですが、まだ、車道を走ると答えているのは全体の三割。歩道を走る方に伺うと、車道は怖いという声がほとんどです。
 さらに、歩道を走る自転車が歩行者の安全を脅かしているというケースも少なくありません。
 自転車の歩道走行の大きな原因は、自転車はもちろん、併走する車にも、道路は自転車と車がシェアするものだという意識がまだ欠如しているからだと考えます。つまり、サイクリスト、ドライバー、双方の意識変化がなければ、状況が変わることもありません。
 自転車との共存について、ドライバーへも啓発が大変重要と考えますが、現状の取り組みと今後の対応について見解を伺います。
 さきに述べたとおり、自転車はモビリティーとしての役目だけではなく、健康増進や精神的な高揚感が得られる道具でもあります。視覚障害者や体力の落ちてきた高齢者は、外出の機会も少なくなり、体力面、精神力の低下でフレイルなどを招きやすくなります。
 その点、二輪タンデム車は前席に健常者が運転して乗ることで、視覚障害者や体力差のある高齢者から子供まで利用できます。来年開催される東京パラリンピックにおいても、視覚障害者がタンデム車に乗り、競技する姿を見ることができるでしょう。
 しかし、現状、東京都では、タンデム車を一般公道では乗れません。障害者のレクリエーションや健康増進としてのニーズが高まり、移動機会や運動機会のバリアフリーを望む声が高まっています。
 その結果、平成二十七年には十三道府県のみがタンデム車の一般走行を認めていましたが、この三月には、二十五道府県になる見込みです。この中には、大阪や愛知、京都などの大都市圏も含まれていますが、現状、否定的な意見やニュースが出ていないことも、その安全性をあらわしていると考えます。
 そんな中、先日、自転車普及協会、盲人福祉協会など国内十四の自転車関連団体や福祉団体から、警視庁に対し、タンデム車の一般走行を求める要望書が提出されました。これだけの団体がまとまって一つの要望を出すということは前例がなく、それだけニーズが高まっているということをあらわしています。
 パラリンピックを開催する東京都が視覚障害者のスポーツ参加のハードルを下げ、運動機会を提供すべきだと考えます。
 そのためには、まず、比較的安全であると思われる一般道に限定しての試験的運用や、運転者、パイロットの講習会を開くなど、利用者の技術と意識の向上を図ることも必要です。
 ぜひ東京都でもタンデム車の一般公道走行に向けての検討を進めていただくよう強く要望いたします。
 イベントの温度感はボランティアが決める。これは、私自身、スポーツイベントの運営にかかわったときに痛感しておりました。どれだけ運営者が頑張っても、参加者や観客に最も接するのはボランティアです。彼らがどんな思いで、どんな表情で大会を彩ることができるかというのは大変重要です。だからこそ、今回のボランティア募集や研修は、大会成功の大きな鍵であるとも考えます。
 シティキャストには、お互いに連携し、強みを生かし合って、チームとして質の高いおもてなしができるようになっていただき、さらに、この仕事に誇りを持ってもらうことが大切です。
 そのため、大会前から大会中までを通して専用の交流スペースをつくり、シティキャストへの誇りを育て、自主的に活動していただく仕掛けが必要だと考えます。さらに、バーチャル上でも、特設のSNSのようなものをつくり、ボランティア同士のコミュニケーションの円滑化も図るべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 今回のボランティアは合計十一万人。この規模のスポーツボランティア活動というのは前例になく、事前の準備、研修などが重要です。そのためにも、ことし開催されるラグビーワールドカップでのボランティア経験をしっかり活用していくべきと考えます。
 例えば、組織委員会の中では、ラグビーワールドカップに組織委員会からボランティア派遣を行い、現場経験を積んでいこうという機運もあるやに聞いております。この経験は二〇二〇大会時に生きてくるでしょう。
 このような背景を踏まえ、都としても、ラグビーワールドカップの成功を東京二〇二〇大会につなげていくため、その経験やノウハウを生かしていくべきだと考えますが、見解を伺います。
 二〇二〇大会は、大会の成功だけではなく、大会によって何を残せるかが重要です。交通インフラなどのハードはもちろん、そのノウハウや、ボランティアマインドなど心に残るレガシーをつくるべく、これからの五百日余りを走り抜けていくことをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 白戸太朗議員の一般質問にお答えいたします。
 船の運航、舟運の生活路線としての活用についてのお尋ねがございました。
 かつて、江戸は、舟運が経済や人々の生活を支え、水の都として栄えてきた。つい先日、そのようなテレビを見たところであります。今もなお、東京には、川、海、運河などすばらしい水辺の空間がございます。その資源を生かしまして、多くの人々でにぎわう水の都を再生していくため、舟運を活性化することは重要であります。
 このため、都といたしまして、平成二十八年度から二年間、舟運の活性化に向けた社会実験として、民間事業者と連携いたしまして、臨海部と都心を結ぶルートなどで運航を実施したところでございます。
 そして、今年度ですが、舟運の利便性の向上に向けまして、さまざまな航路やそのダイヤ等の情報を船旅のポータルサイトによりまして一元的に発信をしております。
 また、観光に加えて、通勤などの日常生活における船の活用も重要であります。このため、船着き場の整備状況や周辺の公共交通網、開発動向を踏まえまして、利用者のニーズや利便性などの課題を整理し、実現可能性のある航路について検討を行っております。
 今後、新たな航路の創出に向けまして、事業性などについての検証を進め、舟運の認知度向上のため、PRに努めてまいります。舟運が身近な観光、交通手段として定着するように取り組んでまいります。
 その他のご質問につきましては、警視総監、関係局長よりのご答弁とさせていただきます。
〔警視総監三浦正充君登壇〕

○警視総監(三浦正充君) 車道における自転車と自動車の共存についてでありますが、まず、自転車利用者に対する啓発といたしまして、自転車教室や各種広報媒体を活用し、自転車安全利用五則を周知するなどの交通安全教育を推進しております。
 次に、自動車ドライバーに対しては、運転免許更新時講習に、自転車の保護についての内容を盛り込んでいるほか、自転車の保護のための基本的なルールとマナーを内容とする自転車思いやり五則を周知するなど、意識の醸成を図っているところであります。
 今後も、これらの取り組みを継続していくほか、自転車の走行空間の整備の観点から、幹線道路や駅周辺の自転車が多い道路を中心に、自転車ナビマークの設置を推進するなど、自転車の車道走行の安全確保に努めてまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、都心と臨海地域を結ぶBRTについてでございますが、東京二〇二〇大会前に、虎ノ門から新橋を経て晴海に至るルートにおいて、ピーク時に一時間当たり六便、四百五十人程度の輸送力で運行を開始いたしまして、大会後に有明や豊洲などへ運行系統を拡大する予定でございます。
 さらに、環状第二号線本線開通後には、運賃収受方式などの工夫などにより、速達性、定時性を確保するとともに、運行便数や系統数をふやした本格運行を実施し、選手村地区の再開発などにも対応してまいります。
 これにより、東京の新たな輸送システムとして、開発が進む臨海地域での交通需要に速やかに対応してまいります。
 次に、都心部・臨海地域地下鉄構想についてでございますが、この路線は、銀座、東京などの都心部と臨海地域とを結ぶことで、臨海地域の拠点機能を一層強化し、さらに、ネットワークの面からも、東京全体の公共交通のさらなる利便性向上に寄与することが見込まれております。
 一方、国の答申では、この路線は事業性に課題があり、検討熟度が低く、関係者間において、事業主体を含めた事業計画について十分な検討が必要とされております。
 今後は、答申を踏まえるとともに、臨海地域における開発動向などを勘案しながら、構想をより具体化するため、国や地元区など関係者間で連携して取り組んでまいります。
 次に、地下鉄八号線の延伸についてでございますが、本路線は、臨海部と区部東部の観光拠点とのアクセス利便性の向上や、東西線の混雑緩和に寄与する重要な路線でございます。
 国の答申では、費用負担のあり方や事業主体の選定などの課題が示されており、都は今年度、国が立ち上げた検討会に参画し、新たな需要予測を行うとともに、事業スキームの構築に向けて、国や鉄道事業者などと検討を進めております。
 引き続き、関係者との協議、調整を加速し、本路線の実現に向けて取り組んでまいります。
 最後に、鉄道ネットワークの充実についてでございますが、人や物の交流を促し、持続的な成長を実現するには、東京の強みである鉄道を生かし、これを充実させていくことが重要でございます。
 現在都は、国の答申において、事業化に向けて検討などを進めるべきとされた六路線を中心に、鉄道事業者等の関係者と連携し、需要や採算性の検証などを実施しております。
 国と東京都の実務者協議会では、六路線等の整備促進に向けて、事業スキームの早期構築や、補助制度の積極的な活用、財源の確保などについて協議してまいります。
 こうした場も活用しながら、関係者との協議、調整を加速し、鉄道ネットワークの充実に向けて取り組んでまいります。
〔青少年・治安対策本部長大澤裕之君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(大澤裕之君) 成人層への自転車利用のルール、マナーの普及啓発についてでありますが、都はこれまでも、子供だけでなく、大人にも広く普及啓発を図るため、自転車安全利用指導員による交差点などでの街頭指導や、年間二百回に及ぶ自転車シミュレーターを活用した交通安全教室等を実施するとともに、今年度からは、新たに高齢者向けの自転車安全利用教室を開始いたしました。
 さらに、自転車を業務で利用する事業者等を対象とした自転車安全利用TOKYOセミナーを、参加者の利便性の向上を図るため、来年度は日中に加え、夜間にも開催し、成人層への普及啓発を充実させてまいります。
 こうした取り組みにより、社会全体での自転車安全利用をより一層推進してまいります。
 次に、自転車賠償責任保険等への加入促進についてでありますが、自転車が関与する交通事故の被害者等を守る上で、自転車利用者等が自転車賠償責任保険等に加入しておくことは重要であります。
 都は、自転車安全利用条例で、自転車賠償責任保険等への加入を努力義務としており、加入促進のため、自転車安全利用教室に参加する子供を通じた保護者へのリーフレットの配布などの取り組みを行ってまいりました。
 また、保険加入の重要性等を記載したルール・マナー確認書を、自転車販売店を通じ、購入者に交付するなど、さまざまな機会を捉え、加入促進に向けた普及活動に努めております。
 現在、国において開催されている検討会の状況も踏まえ、さらなる加入促進に向けた取り組みを進めてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、シティキャスト同士の連携の促進についてでありますが、参加する方々が自主的に連携してノウハウを共有し、一体感を醸成することは、ボランティア活動の円滑化はもとより、活動への機運を高める上で重要であります。
 面談会場である有楽町の東京スポーツスクエアには、観光、交通など、活動に役立つ資料を備え、仲間と情報交換を行える交流スペースを設置するよう、現在準備を進めております。
 また、シティキャストの運営を行うシステムには、画像を含め、情報交換を行える掲示板機能を搭載しており、今後、その活用などにより、利用者同士が交流を深めることができるよう検討を行ってまいります。
 これらの運営に当たりましては、参加者からのご意見も伺いながら、大会前から、大会中を通して、シティキャストの皆さんが主体的に楽しく活動できる環境づくりに努めてまいります。
 次に、ボランティアの経験の活用についてでありますが、ラグビーワールドカップのボランティア運営で得た経験、ノウハウを翌年の東京二〇二〇大会に効果的に生かしていくことは重要であります。
 具体的には、多言語による観客の案内や、地域の魅力発信、都からボランティアへの情報連絡などは、両大会で共通して取り組むべき課題であります。
 このため、二〇一九年大会で活動したボランティアには、その経験を生かし、東京二〇二〇大会のシティキャストとして、引き続きご活躍いただけるよう働きかけております。
 また、その運営について、両大会の準備を一体のものとして進めるとともに、活動経験者の意見も取り入れるなど、ラグビーのボランティア運営の経験、ノウハウを東京二〇二〇大会に生かしてまいります。

ページ先頭に戻る