平成三十年東京都議会会議録第十七号

○副議長(長橋桂一君) 四十九番やながせ裕文君。
〔四十九番やながせ裕文君登壇〕

○四十九番(やながせ裕文君) 明治維新以来百五十年、我が国は、中央政府に税源を集中させ、全国の自治体への再分配を権力の源泉として、地方を支配する体制を築いてきました。偏在是正措置は、その手段の一つにほかなりません。ですから、根本的な解決のためには、この中央集権体制のあり方そのものを変革する必要があります。
 そこで、偏在是正措置の撤廃に向けて、税制の抜本改革のみならず、より広域で偏在是正に資する道州制を導入するなど、真の地方分権に向けた統治機構改革を訴えることが必要だと考えますけれども、小池知事の見解を伺います。
 知事との面談を経て、国政政党日本維新の会は、分権改革を目指す政党として、この偏在是正措置に反対することを党の方針として決定しております。今後とも、都民の利益を取り戻すために尽力してまいる所存であります。
 この間、偏在是正措置について、国会議員や官僚、学識者と意見を交換してきましたが、特に指摘されたのは、天下りをやりたい放題している東京都が、税金を持っていくなといっても説得力がないだろうとの論です。これは象徴的な言葉で、都庁は内部改革もせず、利権を温存し、税金を浪費している。だから困難な状況にある自治体に回すのは当然だというものです。
 昨年度、国家公務員一般職の管理職職員による外郭団体への再就職は四・五%、東京都における課長級以上の職員による外郭団体への再就職は約一九%、つまり、都は国の四倍近くとなっている。現在の都の状況は、国における公務員改革以前の状況だとの厳しい意見も頂戴しました。
 また、天下り団体への特命随意契約も、小池知事が就任してからも金額は伸び続け、昨年度は千三百五十九億円に及びます。
 今回、議案でも出ていますけれども、天下り団体であるJKKとの特命随意契約に関していえば、住宅管理という民間の得意分野であり、なぜ特命にしなければならないのか、これはさっぱりわかりません。こういう案件はごろごろしているんですね。
 改革をしていない、だから、税を収奪してよいというのは暴論です。
 しかし、東京都は無駄遣いしているという意見は広く蔓延しており、収奪を是とする雰囲気が、都民の間ですら醸成されているのです。
 偏在是正措置がおかしいと訴えるだけでなく、都は足元を固め、改革を進めること、これが国民世論を形成していく上で極めて重要だと考えます。
 知事は、選挙時にアンケートで、天下りと出資法人などを含め、利権構造を抜本的に見直すと回答し、また、利権を一掃する旨を発言されてきましたので、確認しておきたいと思いますけれども、知事のいってきた利権とは一体何を指すのか。この二年間で利権を見直すことができたと認識をされているのか、今後どのように見直しに取り組んでいくのか、認識を伺います。
 また、利権を一掃する装置として期待をしていた二〇二〇改革プランは、明らかに変質し、改革は後退しているといわざるを得ません。
 昨年度末に発表された二〇二〇改革プランが画期的だったのは、都の各事業のあり方そのものを検証し、工業用水道の廃止、発電や下水道事業のコンセッションなど、大胆に経営形態の変更にまで踏み込んだ提案がなされ、手をつけることができずに先送りしてきた課題に真正面から挑んできたことであります。
 しかし、その後どうなのか。残された事業について、見える化の報告書が次々とアップされていますが、どの事業もそのあり方を厳しく精査された様子もなく、見える化の肝である目標転換、再構築、競争性テストはスルーされ、従前の方向性をなぞったものばかりです。
 なぜ、このようになったのかといえば、それは簡単で、外部顧問がいなくなったからであります。改革は内部ではできない、だから外部の目を入れた。しかし、外部顧問を解雇した。内部のみでやったから、改革ではなく改善運動になってしまった。
 知事も、都政改革本部会議に出席し、見える化改革の報告を受けていると思いますが、内容をどのように評価し、二〇二〇改革プランのバージョンアップをどのように行おうとしているのか。また、改革プランに魂を取り戻すために、行革に精通した外部人材の活用が必要だと考えますけれども、見解を伺います。
 小池知事は熱狂の中で誕生しました。都民は知事に何を期待したのか。あえて申し上げれば、オリンピック成功のためでもなく、受動喫煙防止のためでもなく、東京を大改革してほしい、この大きな期待によって知事は選ばれたんです。
 汗水流して納めた税金が何だかよくわからないところに使われている。特定の企業や団体や、政治家や政党や職員のために不正に使われているのではないか。こういう思いに対し、情報公開によって透明化し、構造的に無駄なシステムをなくし、公正に効率的に税が投入されていると実感できるようにする。将来世代の利益のために、現在の利権を一掃する。これが、東京大改革が目指す姿ではなかったでしょうか。
 この間の知事の姿勢を見ていると、厳しい政治状況にあるのはわかりますけれども、改革を妥協し過ぎているのではないかと感じます。
 向こう傷は問わずという言葉がありますけれども、敵に向かっていってできた傷は誉れ、しかし、敵に背を向けてできた傷は切腹であります。熱狂し、支持をした都民は許さないでしょう。
 東京大改革の心臓部である二〇二〇改革プランをどうか妥協することなく、最後までつくり上げ実現していただきたい、このことを申し上げ、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) やながせ裕文議員の一般質問にお答えいたします。
 地方分権についてでございますが、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現するためには、地域の実情に応じまして、地方自治体がみずからの判断、そして責任において自主的、自立的な行財政運営を行う地方分権の確立が重要でございます。そのためには、地方の役割と権限に見合った自主財源の確保、それが不可欠だということでございます。
 今般の税制改正でございますが、いわゆる偏在是正措置が新たに講じられようとしておりますが、こうした対症療法的な手法は、地方分権の実現に逆行するものでございます。
 お話のありました道州制でございますが、地方分権のあり方を考える上での方法論の一つでございます。地方がそれぞれ経営能力を競い合う、そのような状況にまで持っていくためにはどうすべきかということなど、中長期的に幅広い議論を重ねていくことが必要と考えております。
 いずれにいたしましても、我が国の力強い成長のためには、首都東京が牽引役としての役割を果たすとともに、地方がそれぞれの強みを生かしながら地域を活性化させ、まさに東京と地方の相乗効果で、日本全体を活性化させるという視点が不可欠でございます。
 こうした観点に立ちまして、国、地方間の税財源の配分の見直しなど、真の地方分権の実現に資する地方税財政制度の抜本改革に本腰を入れて取り組むように、国に対してしっかりと訴えてまいりたいと考えております。
 次に、利権についてのお話もございました。
 利権とは何かというようなご質問だったかと思いますが、私が申し上げてきた利権というのは、不透明な意思決定過程から生まれかねない都民にとりましての不利益のことを指しております。だからこそ、今もお話の中にございましたように、情報公開一丁目一番地としております都政改革を進め、この間の公文書の閲覧手数料を廃止いたしました。ICTを活用した公文書データは無料で提供いたしております。そして、公金支出情報を七十万件公開をいたしております。都政の見える化、着実に進んできたところでございます。
 また、監理団体に対しましても、各団体が策定した経営改革プランに基づいて、取り組みについて都が毎年度、外部有識者の意見も踏まえて評価を行うなど、各団体の自律的な経営改革、そして経営情報のさらなる見える化を促進しているところでございます。
 今後とも、都民ファーストの視点で、情報公開を初めとする都政改革を推し進めてまいります。都民に見える都政、信頼される都政の実現に向けまして、邁進していく所存でございます。
 それから、一つ飛びまして、二〇二〇改革における外部人材の活用についてでございますが、常々、改革の担い手というのは、つまるところ一人一人の職員でございます。都政改革の柱は、これは最初から自律改革だということは申し上げてまいりました。
 昨年度までの取り組みを通じまして、職員に改革の手法、そしてマインドが高まりつつある。このことから、ことしの四月、これまで以上に職員が主体となって、自律的な取り組みを不断に進める体制を整備したところでございます。
 一方で、改革のPDCAサイクルを着実に運用する、そのためには、幅広い観点から意見や助言を取り入れていくことも効果的でございます。
 そこで、本年六月、企業の経営改革や行政改革、法律などの各分野の専門家、例えば、座長を務めていただいております松本晃氏などから構成されます都政改革アドバイザリー会議を設置したところでございます。
 また、来年度から導入する政策評価の実施に当たりましては、この会議に分科会を設置いたしまして、評価制度の検証を行うとともに、各局が設定する成果の目標、そして自己評価の妥当性につきましても、客観的な見地から、意見そして助言をいただく予定といたしております。
 今後とも、都政改革アドバイザリー会議の外部有識者の知見も活用しながら、各局が主体となりました改革のPDCAサイクルを有効に機能させまして、実効性を高めていく所存でございます。
 以上でございます。──加えさせていただきます。見える化改革についてもご質問があったようでございます。
 本年四月、都政改革本部で、職員主体の自律的な改革を不断に進めるという観点から、各副知事をトップに推進部会を設置いたしまして、その部会において、各局と副知事の間で議論を重ね、主要事業の総点検を行っていただきました。
 そして、十一月までに、私を本部長とする都政改革本部会議におきまして、四回にわたって報告を受け、おおむね全ての局の報告を完了させております。
 そして、各局が作成いたしました報告書において、職員にこれまで培われた改革マインドが発揮され、民間活力の導入、事業の運営形態の見直しなど、これまで以上に踏み込んだ検討が行われているものと考えております。
 今後、各局からの報告を反映させて、二〇二〇改革プランのバージョンアップを図るとともに、引き続き都政改革本部を司令塔として、手綱を緩めることなく、改革を推し進めていくということでございます。
 若干前後いたしましたこと、おわび申し上げます。

○副議長(長橋桂一君) 以上をもって質問は終わりました。

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