平成三十年東京都議会会議録第十七号

○副議長(長橋桂一君) 二十五番あかねがくぼかよ子さん。
〔二十五番あかねがくぼかよ子君登壇〕

○二十五番(あかねがくぼかよ子君) 第四次産業革命に向けて、ロボット、IoT、人工知能などの先端技術を持つトップノッチ企業の誘致合戦が世界中で始まっています。シンガポールは、政府主導のスタートアップ支援策で特定技術の技術開発に百九十億ドルを投じるなど、東南アジアで最先端を走っています。
 生産年齢人口の減少が深刻な我が国だからこそ、マンパワーに依存した産業、働き方をいち早く脱却し、画期的に生産性を高めていかなければ、超高齢化社会を支えることはできません。
 第四次産業革命の恩恵を取り入れることができれば、医療や介護、農業など、従来のやり方では立ち行かなくなってしまう分野でも、成長産業に生まれ変わりイノベーションを起こすことが十分に可能です。
 都は、アジアヘッドクオーター特区計画に基づき、ロボット、IoT、人工知能などの先端的技術を持つ外国企業八十社の誘致に近年取り組んできました。
 激化する都市間競争に打ち勝つためには、第四次産業革命を牽引できる企業を、スタートアップも含め数多く誘致する必要があり、そのためには、より大規模な資金投資も必要です。
 都を中心とした新産業エコシステムを構築することで、今後の成長戦略につなげるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 イスラエルは、世界のイノベーションを牽引するスタートアップのエコシステムを持ち、毎年千社近くものベンチャー企業が誕生する中東のシリコンバレーといわれています。
 東京は、スタートアップ環境のおくれが指摘をされていますが、昨年にはTOKYO創業ステーションを開設し、また、若手や女性のベンチャー経営者を発掘して育成するプログラムや海外の有力企業とのマッチングなど、さまざまな創業やベンチャーに対する支援メニューを提供し、よい成果につながってきています。
 一方、昨年度の都内開業率は六%程度にとどまっており、今後、一〇%台に引き上げる目標に向けたさらなる取り組みが必要です。
 開業率一〇%の達成に向けて、より多くの起業家を生み出すための裾野を広げるとともに、グローバル市場でも活躍できるような起業家を育てていく必要があると考えますが、所見を伺います。
 ソーシャルインクルージョンの考え方に基づき、就労困難を抱える人でも就労しやすい東京を目指して、有識者との議論を開始したと知事の所信表明で紹介されました。
 就労は、経済的なメリットだけでなく、人生の充実感にもつながります。一方で、地元の杉並区で障害をお持ちになり、懸命に企業で働いておられる方のお話を伺いますと、企業側の環境整備はもとより、一緒に働く人々の受容力を高める抜本的な取り組みが必要であると痛感いたしました。
 都は、障害者雇用について優良な取り組みを行う企業を表彰するなど、環境を整備するためのさまざまな取り組みを行っていますが、好事例として紹介される企業は大企業の特例子会社であることが多く、中小企業での障害者雇用率は一%程度にとどまっているのが現状です。
 就労困難な人の雇用を促進しながらも、独立採算で経営を成り立たせることができる起業家の存在が、これから一層必要とされると考えます。
 都としても、そのような起業家を数多く生み出し、育成していけるような仕組みを検討することが有意義であると考えますが、知事の見解をお伺いします。
 次に、教育政策について伺います。
 日本人は、英語学習に相当の時間とコストをかけているにもかかわらず、TOEFLスコアランキングでは、アジア圏三十カ国中二十六位です。
 そこで、より実践的に英語に触れる機会を提供するため、都は民間企業と協力をして海外留学の疑似体験ができる施設である東京英語村をことし秋に開設しました。
 英語村はオールイングリッシュの環境ですが、失敗を恐れず、楽しみながら英語を実践することができ、日々の英語学習や将来グローバルで活躍する意欲の向上につながると考えます。
 開設後の利用状況及び利用促進についての都の取り組み状況をお伺いします。
 都教育委員会では、次世代リーダーを育成することを目的として、都立校生向けに一年間の海外留学プログラムを提供しています。毎年二百名程度の生徒が留学にチャレンジし、大変貴重な経験を積んで帰国しているとのことです。
 本プログラムの対象は都立校生のみとのことですが、都内の高校生のうち六割近くが通う私立高校も含めて、より多くの学生が世界にチャレンジができることを望みます。
 そこで、私立高校のためのグローバル人材育成の取り組み状況についてお伺いします。
 教育費における公私間格差を減らすため、私立高校に通っている家庭に向けて、授業料負担軽減など、都として取り組んでまいりました。
 昨今の経済情勢から、入学時は必要がなくても、入学後に家計の状況が厳しくなり、授業料等の支払いが困難になるケースも多いと聞きます。
 私立高校に経済的な理由で通えなくなったとしても、途中から都立高校への編入は極めて狭き門であり、現実的な選択肢とはなりにくいため、都としてもできる限り支援策を講じるべきと考えますが、どのように取り組んでいるのか、お伺いします。
 次に、少子化対策について伺います。
 加速化する少子化にブレーキをかけるためには、妊娠適齢期の普及啓発は必要不可欠であります。しかし、妊娠、出産の適齢期がいつなのか、まだまだ正しく認識されていません。本来なら、性教育の一環として関連の知識を得られるのがよいと考えますが、妊娠適齢期の教育は今までほとんどされてきていないのが実情です。
 そのため、これから妊娠、出産を迎える二十代の若い世代に対しては、改めて正しい知識の普及啓発が必要であり、効果的な手法で実施すべきと考えますが、都の見解をお伺いします。
 東京は全国で結婚年齢は最も高く、合計特殊出生率は最も低い地域です。今や六分の一の夫婦が不妊に悩んでいるともいわれています。女性の社会進出が進み、キャリア形成の時期と結婚、出産が重なり、妊娠適齢期について正しい情報を得る機会が少なかったことも、これらの原因ではないでしょうか。
 都は、不妊に悩む夫婦に対して、医療保険が適用されず高額の治療費が必要となる体外受精、顕微授精について、治療費を助成しています。
 この特定不妊治療費助成事業の具体的な取り組み状況についてお伺いします。
 体外受精、顕微授精は、一回の治療で二十から三十万円と高額な治療費がかかります。一回で終了することはまれで、三ないし六回取り組むことが多いです。それでも三十代後半からは妊娠、出産に至らないこともよくあります。
 これほど高いハードルであるにもかかわらず、最後の望みをかけて不妊治療に取り組まれている夫婦は非常に多いため、この治療費助成の継続を要望いたしますが、所得制限については、ぜひ再考いただきたい点がございます。
 夫婦合算で年間所得金額が七百三十万円以下ということで、この基準以下であれば手厚い支援が得られる一方で、少しでも超えていたら全く支援がなくなってしまいます。所得額に対して、段階的な支援となるように設計していただくことで、より公平な助成制度となるのではないかと考えます。
 私の地元杉並区で、不妊に悩む共働きのご夫婦から、基準を超えてしまうので対象にはならないが、全額自費で治療を続けていくのは経済的に大変な負担だと、そういった声を数多くいただいています。働く女性だからこそ高齢出産になりやすく、共働きの世帯だからこそ夫婦合算の所得額は七百三十万円を超えやすい現状があります。
 より多くの不妊に悩む夫婦に支援が届きますよう、一層の工夫を強く要望させていただきます。
 最後に、都政改革について伺います。
 都は、平成二十八年度から自律改革を開始し、平成二十九年度からは現場改善のレベルから経営改革のレベルまで引き上げるため、主要事業の見える化への取り組みを開始しました。平成三十年度には当初予定を前倒しして、十一月でほぼ全ての事業ユニットの点検、評価が終了したとのことで、今後は政策評価を導入していくと都政改革本部で発表がありました。
 これまでも都は、予算査定の単位である事務事業の評価については、財務局により実施されてきましたが、同じアウトカムを目的とした複数の事務事業を統合的に把握し評価をする、政策レベルでの評価やPDCAサイクルの徹底はなされてきませんでした。
 政策評価の必要性について、私はかねてより問題意識を持っており、昨年実施された各会計決算特別委員会にて指摘をさせていただいたところです。
 導入に当たっては、目標設定、成果指標の立て方が重要であり、都庁内で既に浸透をしているアウトプット指標だけでなく、アウトカム指標を使って、政策が都民の生活にどのようによい影響を及ぼすのか極力定量的に測定をして、エビデンスに基づく見直しが継続的に図られるようにしなければなりません。
 また、今まで都庁にはなかったノウハウや経営的な視点が必要とされるため、都庁の内部だけでは限界もあると考えます。担当業務における改革、改善の範囲を超えて、経営や戦略レベルでの改革が必要となるため、外部の有識者の力も十分にかりながら進めていくことが必要不可欠であると考えます。
 一度政策評価が導入され、機能してくれば、最適な予算配分についてエビデンスに基づく判断がしやすくなるだけでなく、最適な人員配置、組織構成を検討する上でも判断材料を得られることになります。
 このように、今後の都政改革において、極めて重要な仕組みである政策評価の導入に向けた知事の所見をお伺いして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) あかねがくぼかよ子議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、外国企業誘致の取り組みについてのご質問でございます。
 国際的に熾烈な都市間競争が繰り広げられる中で、東京は世界から人材と資本を呼び込んで日本経済を牽引していくために、成長戦略を果敢に展開しているところでございます。
 その鍵の一つが、ご指摘の最先端技術であります。都は、特区制度を活用して、外国企業を戦略的に誘致してきております。昨年度はアクセス・ツー・トウキョウをロンドン、パリ、サンフランシスコの海外三都市に、さらに今年度からはシンガポールにも設置をいたしまして、取り組みを加速させているところでございます。
 また、昨年度から、先進的な技術を有する海外スタートアップ企業を支援するアクセラレータープログラムを実施しておりまして、毎年、その成果を披露するためにビジネスプラン発表会も開催いたしております。
 例えば、先般開催されました発表会におきましては、AIを活用したスマートシェルフが紹介されました。これは、そのまま訳しますと賢い棚となりますが、消費者が商品を手にとったときに、そのデータをモニターで表示いたしまして、スマートフォンでの決済にまでつなげるというものでございます。こうしたユニークな技術が毎年紹介されるたびに、革新的な技術が秘める無限の可能性を感じるところでございます。
 さらに、来年度からは、産官学の関係者が連携をいたしまして、エコシステムの形成に向けた検討を行って、イノベーションの連鎖が続く魅力的なビジネス環境を構築したいと考えております。
 これらの取り組みをスピード感を持って推し進めることによって、都市間競争に打ち勝ち、東京と日本の持続的な成長につなげてまいります。
 社会的な起業家の育成についてのお尋ねがございました。
 海外では、障害者を初め、就労に困難を抱える方が数多く元気に働いておられます。ソーシャルファームと呼ばれる社会的企業があって、一般企業と同じマーケットでビジネスを行い、企業的手法で経営されているというものであります。
 私はこうした取り組みをこの東京にも広げて、就労を希望する誰もが個性や能力に応じて自分らしく活躍できる、そんな社会をつくっていきたいと考えております。
 このためには、取り組みの母体となります社会的企業を設立いたしまして、経営する起業家を数多く生み出す、そして育成していくことが重要となります。
 現在、都では、社会全体で支え合うソーシャルインクルージョンの考え方に基づきまして、全ての都民の就労を応援する新たな条例の制定を目指しております。有識者会議を設置いたしまして、就労支援のあり方についての議論を開始したところでございます。
 私自身、来週には、精神障害者の自立と就労への支援に幅広く取り組まれ、代表者がこの有識者会議の委員でもいらっしゃいます、多摩草むらの会の活動を視察いたしまして、意見を交換する予定といたしております。
 今後、有識者会議におきましても、ソーシャルファームなどをテーマに幅広い議論を行う予定でございまして、その担い手となる起業家の育成や支援を含めて多角的に検討を進めてまいります。
 最後に、政策評価の導入についてのご質問がございました。私が本部長を務めております都政改革本部におきましては、昨年の四月から、各局の主要事業を総点検する見える化改革に取り組んでまいりました。
 この主要事業の総点検がおおむね完了したことを踏まえまして、各局の自律的な改革のPDCAサイクルを徹底するため、来年度には、新たに政策評価を導入することとしたものであります。
 この政策評価におきましては、都民への説明責任の観点から、成果目標が重要であり、施策が都民生活にもたらす効果を測定するための定量的な指標、いわゆるアウトカム指標を可能な限り設定していくことといたしております。
 また、政策評価の開始に当たりまして、第三者の知見を活用するために、松本晃氏を座長とする各分野の専門家で構成されます都政改革アドバイザリー会議のもとに、政策評価分科会を設置することといたしました。
 この分科会におきまして、評価制度について検証するとともに、各局の施策を検討、分析をいたしまして、成果目標や自己評価の妥当性につきましても、客観的な見地から意見、助言をいただく予定でございます。
 都民にとってわかりやすく、有効に機能する政策評価を推進することによりまして、各局が主体となりました自主的、自律的な都政改革をさらに推し進めてまいります。
 その他のご質問につきましては、教育長、関係局長からの答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) TOKYO GLOBAL GATEWAY、いわゆるTGGの利用状況及び利用促進についてでございますが、九月のTGG開設後、三カ月間で約二万人の児童生徒が利用し、今後の予約も好調な状況にございます。
 利用した児童生徒からは、自信がついた、英語でもっと話したいという声が聞かれるなど、学習意欲の向上が見られるところでございます。
 今後、都教育委員会は、さらに多くの利用を促すため、TGGと学校教育との効果的な活用のあり方について広く周知いたしますとともに、学校の意見を取り入れながら、プログラム内容等を継続的に改善してまいります。
 具体的には、国公私立の学校を対象に実践発表会を開催し、学校での効果的な事前事後学習や利用後の成長の姿について事例を通して共有化を図ってまいります。
 また、TGGでの活動の最後のまとめの時間を充実するなどして、より魅力的な体験を提供し、さらなる利用の促進を図ってまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 創業の活性化に向けた支援についてでございますが、都内産業の一層の発展を図るため、創業を目指す人材をふやし、国際的に活躍する起業家を東京から数多く生み出す取り組みは重要でございます。
 都は、丸の内に設置しておりますTOKYO創業ステーションにおきまして、起業を勧める啓発イベントや相談対応を行いますほか、コンテストの形式で若者の創業の意欲を引き出す取り組みも進めているところでございます。
 また、女性のベンチャー経営者が海外で事業を展開するためのサポートを行うなど、後押しをしております。
 今後は、創業を目指す人材を幅広く掘り起こすための拠点を多摩エリアに整備いたしますほか、小中学生等の段階から、起業の魅力を学ぶ機会をつくる取り組みを検討いたします。
 また、女性起業家の世界進出のモデルをふやすサポートの充実も検討し、東京での創業のさらなる活性化に結びつけてまいります。
〔生活文化局長浜佳葉子君登壇〕

○生活文化局長(浜佳葉子君) 私立高校におけるグローバル人材育成のための都の取り組みについてでございますが、東京二〇二〇大会を契機に、東京が国際都市としてさらに飛躍するためには、次代を担う若者が語学力や国際感覚を身につけることが重要でございます。
 そのため、都は平成二十五年度から、生徒が海外留学する際の費用を補助しており、現在までに延べ二千人以上の留学を支援してまいりました。
 また、二十七年度からは、学校が外国語指導助手を雇用する際の経費を補助することとし、日本にいながらにして、生きた英語を学ぶ環境の整備に努めてまいりました。
 今後とも、これらの施策を総合的に実施することで、私立高校におけるグローバル人材の育成を支援してまいります。
 次に、生徒の家計が急変した場合の支援についてでございます。私立高校に通う生徒が経済的な理由にかかわらず、教育を受けられる環境を整備していくことは重要でございます。
 そのため、都は、私立高校が家計状況の急変などを理由に授業料等を減免した場合に、その減免額について、最大で五分の四を補助しております。
 さらに、こうした減免制度の導入を促すため、減免制度そのものを整備している学校に対して定額の補助を行っております。
 今後とも、各私立高校に対し、減免制度の導入を積極的に働きかけ、生徒が安心して学び続けられる環境を整えてまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、妊娠、出産に関する知識の啓発についてでありますが、都は、若い人たちが妊娠、出産に関して正しい知識を持ち、自分のライフプランを考えるきっかけになるよう、小冊子を作成し、区市町村や大学等を通じて配布するほか、新聞広告等による普及啓発を実施しております。
 今年度は、この小冊子にこれまで以上に関心が集まるよう、デザインを一新し、その配布先も、新たに約四百ある専修学校にも拡大することとしております。
 また、スマートフォン対応のウエブサイトを新たに開設するとともに、若い世代に人気のタレントを活用したSNSによる情報発信を行っております。さらに、リーフレットも作成し、成人式等で配布する予定でございます。
 今後、これらの取り組みにつきまして、アンケート等による効果測定も行いながら、若い世代への妊娠、出産に関する普及啓発を進めてまいります。
 次に、特定不妊治療費助成事業についてでありますが、都は現在、高額な不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、妻の年齢が四十歳未満の夫婦を対象に通算六回、四十歳から四十三歳未満の夫婦を対象に三回まで助成を実施しております。
 具体的には、新鮮胚移植や凍結胚移植の場合は、初回に三十万円を助成し、二回目以降は国基準の十五万円に、都独自にそれぞれ五万円、十万円を上乗せしてございます。
 平成二十九年度の助成額は約三十六億円で、平均いたしますと夫婦一組当たり三十五万二千円となっております。助成件数は一万七千四百三十一件で、事業を開始した平成十六年度から十倍以上に増加してございます。
 今年度からは、都独自に事実婚の方につきましても助成の対象としており、今後とも、子供を産み育てたいと望む方々を支援してまいります。

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