平成三十年東京都議会会議録第十七号

○副議長(長橋桂一君) 十八番小林健二君。
〔十八番小林健二君登壇〕

○十八番(小林健二君) 初めに、観光振興について質問します。
 訪日外国人旅行者数は、急激に増加した二〇一五年以降ふえ続け、二〇一七年には二千八百六十九万人となりました。
 国が策定した明日の日本を支える観光ビジョンでは、訪日外国人旅行者数の目標を、二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年には六千万人と掲げておりますが、東京二〇二〇大会を目前に控えた中、観光振興における東京の役割は極めて重要といえます。
 観光振興は、日本、そして東京という都市の魅力を発信し、旅行者に関心を呼び起こす取り組みであり、東京にある観光資源を大いに輝かせていく必要があります。
 私は、今後さらに重視すべき観光資源として、文化財とアニメを一層活用していくべきと考えます。
 国では、本年六月、地域における文化財の計画的な保存、活用を促進するため、文化財保護法の改正がなされ、今後、文化財を活用した地域振興、観光振興が期待されています。
 都としても、こうした背景のもと、文化財を活用して、旅行者を東京の歴史や文化へいざなう観光振興を進めていくべきと考えます。見解を求めます。
 また、国際的にも評価の高い、クールジャパンの代表ともいうべきアニメ資源の活用も重要であります。
 東京観光財団は、国内外の旅行者に対して観光情報を発信する東京観光公式サイト、GO TOKYOを開設し、アニメについても情報発信していますが、私はかねてより、ジャパンアニメーション発祥の地である練馬区を初め、都内のアニメ資源を観光振興に活用していく取り組みの強化を訴えてまいりました。
 アニメを観光資源としたアニメツーリズムを活性化するためにも、今後、発信するアニメ情報を一層充実させていくべきであります。見解を求めます。
 次に、文化芸術振興について質問します。
 聴覚障害がありながら後世に残る数々の名曲を残したベートーベンは、多くの人々に幸せや喜びを与えること以上に崇高ですばらしいものはないとの言葉を残していますが、まさに障害を乗り越えてなし得た業績は、不滅の輝きを放ち、この言葉どおり、文化芸術の力によって人類に幸せや喜びを与えています。
 さきの通常国会において、障害者による文化芸術活動を幅広く促進するため、超党派で提出した議員立法、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律が成立しました。本法律では、障害者による文化芸術活動の推進に関し、国や地方公共団体がその地域の特性に応じた施策を策定し、実施する責務が規定されております。
 都では、平成二十七年に文化芸術振興における基本指針となる東京文化ビジョンを策定していますが、同法律に基づき、一層障害者の文化芸術を推進していくため、今後、障害者団体との意見交換を重ねながら、地方公共団体に努力義務とされている基本計画の策定も検討するなど、都としても取り組んでいくべきと考えます。見解を求めます。
 小池知事は本年六月、都庁舎にピアノを設置し、来庁者に自由に演奏してもらう都庁おもいでピアノとの事業を発表されました。
 私の地元の練馬区役所においても、庁舎内にピアノが設置され、定期的にミニコンサートが開催されるなど、区民が文化芸術に親しむ憩いの場となっております。
 都庁という行政機関にピアノの音色が響き渡ることは、来庁者に心の潤いと彩りを与えるとともに、首都東京の中心地から文化都市東京を発信することにもなると考えます。
 そこで、都庁おもいでピアノを発案された知事の所見を伺います。
 私のもとには、この事業の発表を聞いた障害者の文化芸術に携わっておられる方より、設置されたピアノで障害者が演奏する機会をいただけないだろうかとのご提案も寄せられております。
 今後、ピアノが設置されたならば、障害者の方を初め、さまざまな方がピアノ演奏を披露できるような演奏会なども検討し、活用していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、都市農業振興について質問します。
 農産物の安全を確保するための管理手法であるGAPの認証取得を推進するため、都では本年、東京都GAP認証制度を開始しました。先月二十九日、初の東京都GAP認証取得者七件が発表されましたが、今後さらに認証取得を進めていく上で二つの課題があると考えます。
 一つ目は、都民への普及啓発です。
 私は昨年第四回定例会の一般質問で、都民に対し、GAPの意義を広く普及啓発していただくよう要望いたしましたが、認証取得した農産物の消費拡大を進めるために、今後、本格的に普及啓発に取り組んでいくべきと考えます。
 二つ目は、農業者への負担軽減です。
 農業者の方からは、GAPの取得に取り組もうと思っても、作業場の整備など、経費の面での課題があるとの声もいただいており、こうした農業者の方の負担軽減を図る支援策も検討していくべきと考えます。あわせて見解を求めます。
 また、今般の生産緑地に関する制度改正を初め、都市農業は大きな転換点を迎えています。これを機に、関係者が一丸となって東京の農業を盛り上げていくことが重要であり、都としても、シンポジウムを開催するなど、機運の高まりを後押ししていただくよう要望いたします。
 次に、地域の安全対策について質問します。
 都では、学校、地域などが行う通学路における児童の見守り活動を補完するため、五カ年計画で、防犯カメラの整備に係る経費を区市町村に対して最大二分の一を補助する事業を実施してまいりましたが、今年度がその最終年度となっております。
 都議会公明党は、さきの第三回定例会の代表質問でこの問題を取り上げ、都からは、国の動向や区市町村の調査結果なども踏まえつつ、子供の安全確保のため適切に対応していくとの答弁がありました。
 本年夏に、西東京市議会公明党が通学路の防犯カメラ設置の拡大を求める署名運動を展開したところ、市の人口の約二五%に及ぶ五万人を超える方々の署名が集まり、通学路の安全対策への関心が高いことがうかがえました。
 こうした地域の要望も踏まえ、都は、通学路などの防犯カメラの設置を推進する補助事業を来年度以降も継続し、子供たちのさらなる安全・安心の確保に積極的に取り組んでいくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、外堀の水質改善について質問します。
 公明党は先月、外堀の水質改善に向けた調査のため、玉川上水の上流部、羽村取水堰から下流部に向け、小平監視所、浅間橋、四谷大木戸と現地視察を実施いたしました。玉川上水の価値を再認識する視察でありましたが、東京が世界に開かれた環境先進都市として快適な水環境の整備を進め、世界を魅了する美しい風景を創出すべきと改めて実感をいたしました。
 都議会公明党はこれまで、日本橋川の水質悪化の原因の一つである外堀の水質について、国指定史跡にふさわしい良好な環境となるよう、水質改善を進めるため、現在行われているしゅんせつや下水道の貯留管整備の先を見据えた、恒久的な水循環による水質改善の方策について提言してきました。
 都は、さきの第三回定例会での都議会公明党の質問に対し、外堀などの水質改善に向けて検討会を立ち上げたと答弁されましたが、外堀の水質などの状況調査や有識者との意見交換を速やかに行い、検討会での議論を着実に進めるべきと考えます。見解を求めます。
 最後に、都営地下鉄について質問します。
 初めに、エスカレーターの利用におけるマナーについてです。
 先般私は、公益社団法人東京都理学療法士協会が取り組んでいる、ストップ・ザ・ステップ、エスカレーター、とまって乗りたい人がいるとのプロジェクトをお聞きする機会がありました。
 都内のエスカレーターでは、右側をあけて乗るという暗黙の慣習が存在し、左側は整然と立ちどまって乗る人がいる一方、右側は急ぎ足でエスカレーターを昇降する光景が日常的になっています。
 しかし、例えば、左手が不自由な方は、左手でベルトをつかむことができず、右側のベルトにつかまりたいと思っても、暗黙の慣習がある中、右側に乗ることに不安や使いづらさを感じている方々がいらっしゃるとのことでした。
 こうした中、心のバリアを取り除き、エスカレーターを利用する全ての人が気兼ねなく右側にとまって乗ることのできる社会を目指して、このプロジェクトに取り組んでいるとのことでありました。
 都営交通では、安全にエスカレーターを利用するための注意喚起を呼びかける啓発活動にも取り組んでいますが、障害のある方や年配者など、エスカレーターの利用に当たって、左右関係なく乗ることができるよう、こうした視点を踏まえたマナー啓発に取り組んでいく必要があると考えます。見解を求めます。
 次に、駅のバリアフリー化についてです。
 都営地下鉄大江戸線光が丘駅では、北側の出口のみに一カ所、エレベーターが設置されていますが、南側の出口も利用者が多く、かねてより南側にも設置を求める多くの声をいただいております。
 私は、昨年の予算特別委員会の質疑で、南側出口へのエレベーター増設の検討を求めましたが、都からは、駅の利用実態や駅施設の構造上の課題などを勘案しながら、設置の可能性を検討していくとの答弁があったところであります。
 本年三月にはバリアフリー法が改正され、共生社会の実現に向け、公共交通事業者に対し、さらなるバリアフリーへの取り組みの推進が義務づけられました。光が丘駅のある地域は、約一万三千世帯が居住する大規模団地群で、高齢化が進む中、エレベーターの増設は今後の重要課題であり、改めて設置に向けた検討を加速させていただきたいと思います。現在の検討状況を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 小林健二議員の一般質問にお答えいたします。
 私からは一問、都庁おもいでピアノについてのご質問いただきました。ありがとうございます。
 都庁おもいでピアノですが、都民の皆様から募集いたしました思い出の詰まったグランドピアノを都庁舎内に置きまして、誰にでも自由に弾いていただこうというものでございます。
 東京二〇二〇大会などを控えておりまして、国内外からこの都庁舎を訪れるお客様、大変ふえております。そういう中で、音楽を通じてお客様同士の交流が促進できれば、うま下手問わず、ピアノを演奏する方、それを聞く方、それぞれの思い出づくりに役立てたいとの願いで進めているところでございます。
 欧米諸国では、今、練馬区庁舎の例も出されましたが、まち角や駅などに自由に弾けるピアノを置いて、その周りに人の輪ができるという、交流が生まれております。こうした取り組みが広く行われていることから、私は以前からこのような大変すばらしい試みを東京でできればというふうに考えておりました。
 この都庁舎におきましても、都民の方の思い出の詰まったピアノを活用して、都庁舎を訪れる皆様の間のつながりを音楽によって広げていきたいと考えております。どうぞご期待ください。
 残余の質問につきましては、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、文化財を活用した観光振興についてでございますが、地域の生活や産業活動等を通じて育まれた文化財など、地域の歴史や文化に触れることは、旅行者にとって旅の大きな魅力であり、東京に対する理解や愛着を深める上でも重要でございます。
 このため、都は、地域が取り組む文化財の情報発信など、特色ある観光資源を活用した取り組みに対し、ソフト、ハードの両面から支援を行っております。
 今年度は新たに、観光協会が地元の関係団体と連携して企画した、幕末の史跡や明治時代の建造物等の文化財などをめぐるまち歩きツアーの開発を支援いたしますとともに、こうしたツアーを集めた専用サイトを構築し、情報発信を行いました。
 今後は、国内外からより多くの旅行者を呼び込むため、ツアーの実施期間の延長やPRの強化を検討し、都内各地に取り組みを広げてまいります。
 次に、アニメに関する情報発信についてでございますが、アニメは海外でも人気の高い重要な観光資源でございまして、都はこれまでも、東京の観光公式サイト、GO TOKYOなどを活用し、アニメなどの情報を国内外に発信しているところでございますが、ご指摘のとおり、さらなる充実が必要でございます。
 そのため、本年四月に実施をいたしました当サイトの英語ページの改修に際しまして、利用者がより容易に情報を検索し入手できるよう、アニメや漫画に特化した分野を設けたところでございます。また、先月からは、地域ゆかりのキャラクターの銅像を設置している観光スポットを新たに掲載するなどの取り組みを行っております。
 今後、同様の改修を日本語を含む他の言語においても実施いたしまして、九言語十種類の全言語で展開をいたしますとともに、アニメに関するイベントや観光スポットの情報の充実を検討するなど、アニメを活用した地域への旅行者誘致を強化してまいります。
 最後に、GAP認証の取得促進についてでございますが、都は今年度から、都市農業の特徴を加味した都独自のGAP認証制度を開始いたしました。これまで、普及指導員による農業者へのきめ細かな指導を実施してきておりまして、先日の審査会において、七件の認証を行ったところでございます。
 今後、認証取得の一層の促進を図るためには、GAP農産物の需要拡大に向けたPRや農業者の負担軽減に向けた取り組みが重要となります。
 このため、新たに都民や流通事業者等を対象としたGAPに関するシンポジウムの開催や、直売所等でのPR動画による周知に加え、認証取得に当たって必要となる保冷施設や農薬保管庫の改善など、施設整備等の経費に対する支援も検討してまいります。
 これらにより、GAPの認証取得を加速し、東京二〇二〇大会とその先の持続可能な東京農業を実現してまいります。
〔生活文化局長浜佳葉子君登壇〕

○生活文化局長(浜佳葉子君) 障害者による文化芸術活動の推進に関する法律への対応についてでございますが、この法律は、障害者による文化芸術の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、文化芸術活動を通じた障害者の個性と能力の発揮及び社会参加の促進を図ることを目的として、本年六月に施行されたものでございます。
 これまでも都では、東京都障害者総合美術展を開催するほか、都立文化施設における障害者の鑑賞機会の拡大、障害者の作品を含むアール・ブリュット展の開催など、さまざまな取り組みを行ってきているところでございます。
 今後、本法律に基づきまして、国において基本計画が策定されることとなっており、都においても国の動向を見ながら適切に対応してまいります。
〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 都庁おもいでピアノの活用についてでございますが、今回の都庁おもいでピアノの公募では、趣旨にご賛同いただきました都民の皆様から、合計八台のグランドピアノの応募を頂戴しております。
 その中から一台を選ばせていただき、現在、設置に向けてピアノの整備など、準備を進めているところでございます。
 今後の活用方法につきましては、ピアノの設置後の運用状況や課題などを踏まえまして、検討していきたいと考えております。
〔青少年・治安対策本部長大澤裕之君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(大澤裕之君) 通学路等の防犯カメラ補助事業についてでございますが、都は、通学路における児童の安全を確保するため、今年度までの五カ年の取り組みとして、区市町村に対し、小学校の通学路の防犯カメラの設置費用を補助しており、昨年度までに累計約五千三百台が設置されております。
 一方、国の登下校防犯プランに基づき、本年九月までに区市町村が行った通学路の緊急合同点検では、さらなる防犯カメラの設置が必要との調査結果が出ております。
 このため、地域におけるこうした需要も踏まえ、通学路等の防犯カメラ設置補助の継続に向けて検討を進めるとともに、防犯教育人材の育成等、ソフト面の対策もあわせ、地域の防犯ボランティア団体や町会、自治会等とも協力して、子供の安全・安心の確保に向けた取り組みを推進してまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 外堀の水質改善についてでございますが、都は、本年九月に関係局による検討会を立ち上げ、外堀などのより効果的な水質改善方策に関する調査等を実施することといたしました。
 具体的には、全国の閉鎖性水域での水質改善事例などを踏まえ、外堀への適応可能性などの検討を進めるとともに、対策内容に応じた外堀の水質データに基づくシミュレーションを行い、その対策を実施した場合の水質改善効果の予測評価や課題の整理などを実施する予定でございます。
 また、これとあわせて、来年一月から有識者などとの意見交換を開始するよう準備を進めております。
 今後こうした取り組みを行いながら、外堀の水質改善に向けた検討を着実に進めてまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営地下鉄のエスカレーター利用時のマナー啓発についてでございますが、全てのお客様が安心して、安全にエスカレーターを利用するためには、手すりにおつかまりいただくことが重要と考えてございます。
 このため、都営地下鉄では、鉄道各社等と共同で、みんなで手すりにつかまろうキャンペーンを毎年実施しておりまして、ポスターの掲出やノベルティーの配布等を通じまして、エスカレーターの安全利用を呼びかけてございます。
 加えて、局独自の取り組みといたしまして、マナー啓発用ポスターや車内モニターなども活用し、お体の不自由な方やお子様連れの方を含め、誰もが安全にエスカレーターをご利用いただけるよう、今後とも、ご指摘をいただきました視点も踏まえまして、積極的なマナー啓発に努めてまいります。
 次に、大江戸線光が丘駅における新たなエレベーター設置についてでございますが、都営地下鉄では、全駅でいわゆるワンルート整備を完了し、現在、経営計画二〇一六に基づき、東京メトロ等他事業者と連携を図りつつ、乗りかえ駅等でのエレベーター整備を進めてございます。
 さらに、バリアフリー法に基づく移動等円滑化基準の改正を踏まえまして、駅の周辺状況なども勘案しながら、バリアフリールートの複数化について検討を行っております。
 この中で、大江戸線光が丘駅につきましても、関係機関と連携し、用地の確保や構造上の課題に関する検討を深め、バリアフリールートの充実に取り組んでまいります。

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