平成三十年東京都議会会議録第十七号

○議長(尾崎大介君) 三十七番栗林のり子さん。
〔三十七番栗林のり子君登壇〕

○三十七番(栗林のり子君) 都議会公明党は、動物との共生を進めるプロジェクトチームを三年前に立ち上げ、先進的な取り組みの自治体の視察や関係団体とのヒアリングなどを通し、今日までさまざまな政策提案をしてまいりました。
 マハトマ・ガンジーは、国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方でわかると格言を残しています。
 都は、二〇二〇年を目前に、世界に誇れる、人にも動物にも優しい共生社会を構築することが求められています。
 先月、私は、動物愛護の先進国といわれるドイツの動物保護施設ティアハイムの視察に、私費で参加してきました。ドイツは、動物保護が国の目標と、憲法にまで明記され、規則やガイドラインなどが存在しています。四百二十の行政区ごとに獣医局が設置され、ティアハイムも国内で約千三百以上設置されています。
 今回は、欧州最大規模のベルリンのティアハイムを初め、中規模、小規模ティアハイムなどを視察し、また、ハノーファー獣医科大学では、トーマス・ブラファ副学長から、ドイツの動物事情、動物保護の考え方や法制度についてお話を伺うこともできました。
 動物保護連盟が運営しているベルリンのティアハイムは、十八万五千平米の敷地に、五百人のボランティアが活動を支え、猿から爬虫類まで約千四百頭の動物が保護されています。
 多くのティアハイムは民間で運営されており、担当する自治体から依頼された保護動物、飼い主がいない動物、緊急に支援が必要な動物などを受け入れ、新しい飼い主が見つかるまで施設で世話をしています。運営資金は自治体の支援と寄附金から成り立っており、中には施設内に併設されているトリミングサロンやフードショップ、カフェなどの収益金などで一部賄われているところもありました。
 また、地域に住む子供たちや障害者も一緒に動物の世話をすることから、情操教育やセラピー効果につながると、住民が積極的に参加し運営している施設もありました。
 驚いたことに、ニーダーザクセン州では、ペットを飼い始める前に飼い主に筆記試験を行い、その後一年以内に犬とともに実技試験を行うなど、飼い主教育が徹底されていました。
 動物との共生とは、無責任な飼い主をふやさないこと、保護から譲渡へのしっかりとしたシステムがあること、そして動物の力をかりて人が元気になること、そうした社会だと実感しました。
 法律や税制も、また文化、風習が大きく異なるドイツと同じ制度をつくることは難しくても、共生社会を構築するための多くのヒントを得ることができました。
 現在、東京都では都内に三カ所、動物愛護相談センターがあり、狭隘化、老朽化が進んでいることから、昨年発表された整備基本構想の本格的な検討に期待が高まっています。
 現センターにおける動物殺処分ゼロは、犬においては二年連続で達成され、猫も大幅に減少しています。
 しかしながら、実際には、多くの動物愛護ボランティア団体がセンターから引き取り、新しい飼い主を探し、譲渡を行っているケースが多く、ボランティア活動をされる皆様の費用負担も増大しています。
 この機会に、持続可能な制度とするために、獣医師会や動物愛護団体などと連携し、民間活力を導入するなど大きく転換を図ることが必要です。
 迷惑施設と思われてきたセンターではなく、都民に開かれた明るいイメージのアミューズメント性のある動物愛護相談センター、東京版ティアハイムが設置できるよう、検討を始めるべきと考えます。
 愛犬家でもあり、ご自身も犬を飼われている小池都知事の所見を伺います。
 センターの移転改築での最大の課題は候補地です。
 候補地の選定に当たっては、都有地にとどまらず幅広く情報を集め、積極的に取り組むべきと考えますが、都の所見を求めます。
 次に、都が委嘱する動物愛護推進員について伺います。
 地域では、ペットの困り事に対応しているのが推進員の皆様です。飼い主による虐待や多頭飼育崩壊など、解決に当たるためには行政の福祉分野との連携が不可欠です。しかし、個人情報の問題などから、なかなか連携が図れない現状と聞いています。
 区市町村の福祉担当者に推進員の存在を周知し、ワークショップを開催するなど、問題が解決しやすいよう、都が推進員を応援していくべきと考えますが、所見を求めます。
 また、殺処分ゼロを継続していくためには、動物の譲渡活動を行うボランティアの協力が不可欠です。
 都は、動物愛護相談センターに保護された動物の譲渡に協力するボランティアに支援を行うことが重要と考えますが、都の所見を求めます。
 国においても、動物愛護管理法の改正に向けてさまざまな議論が交わされようとしています。動物愛護とは、動物たちのためだけに存在するのではなく、人々の心身の健康維持に深く関与し、動物が介在することが生活のクオリティーを高め、社会貢献につながっていることを忘れてはならないと思います。
 営利のみを追求し、劣悪な環境で飼育するペットショップなどの規制をさらに強化し、終生飼養と逆行する行為は断じて許さないことを強く求め、次の質問に移ります。
 次に、都立中部総合精神保健福祉センターについて質問します。
 我が党は本年五月、同センターを視察した際、執務場所スペースが狭小であるため、多くの弊害が生じていることを感じてまいりました。
 この施設は、精神障害者保健福祉手帳の交付業務と、精神通院医療費助成認定業務を行っていますが、最近五カ年で、手帳の件数が一・三六倍、医療費助成の件数が一・二六倍と処理件数が著しく増加しています。作業場の狭小によってミスや停滞があってはなりません。速やかに作業場の拡充を図るべきです。所見を求めます。
 また、センターでは、鬱や依存症からの回復に向けた患者を対象に、我が党が推進してきた認知行動療法を取り入れています。薬を極力抑え行う認知行動療法は大変好評です。現状と今後の展開について所見を求めます。
 次に、乳児用液体ミルクについて質問します。
 乳児用液体ミルクの有用性を公明党も注目し、国内での製造、販売ができる規定整備を国に働きかけてきました。都においては、小池知事のリーダーシップのもと、「東京くらし防災」での普及啓発や、民間事業者と協定を締結し、七月の豪雨災害での被災地域などに救援物資として乳児用液体ミルクを提供もしてきました。乳児用液体ミルクの製品化が進み、来年春に販売開始との見通しと聞いています。
 そこで、災害時に備え、都として、乳児用液体ミルクの備蓄を進めるべきと考えます。今後の乳児用液体ミルクの活用について、知事の所見を伺います。
 次に、女性と若者の健康をサポートする取り組みについて質問します。
 女性活躍が期待される中、女性が元気に社会で働くために重要なのは、何といっても健康です。女性の生涯における疾病構造は、男性と大きく異なります。女性は、思春期から閉経に至るまで、ホルモンの変動に関係する疾病を多く経験するといわれています。
 日本医療政策機構の調査によると、日本の働く女性が病気で働けなくなった場合、日本の経済的損失額は約六兆円に上るといわれています。女性の健康を考えたとき、思春期から自分の体のことを知ることや、婦人科検診を身近に感じられる啓発の推進も重要です。
 我が党は、十五年ほど前から、女性の専用外来の設置を求め推進してきました。都立病院としても、墨東、大塚、多摩総合病院と三病院に女性専用外来を設置し、女性の健康増進に大きな役割を果たしてきました。今、社会状況も大きく変化する中、現在の利用状況を検証し、女性患者の多様な新しいニーズに対応できるよう機能を大幅に拡充するべきと考えます。
 そこで、都立病院として、思春期や働く女性などの新しい課題も含め、包括的に支援ができるよう取り組むべきと考えますが、都の所見を求めます。
 次に、若者の命を守るため、HIV感染、梅毒などの性感染症の予防について質問します。
 梅毒については、近年、都内で患者が増加しています。特に若い女性で急増しており、十年間で十倍以上という驚くべき数字です。この病気は免疫ができないので、治療し完治しても何度でも感染するといわれています。また、梅毒に罹患するとHIVの感染リスクを高めるといわれています。
 このような情報を広く周知し、予防に向けた取り組みを強化するべきです。都の所見を求めます。
 十一月十六日から十二月十五日は、東京都エイズ予防月間です。昨年、都内では四百六十四人が新たにHIVに感染、またはエイズを発症しており、二十歳代から三十歳代が約六三%といわれています。
 以前、私は、池袋にある東京都エイズ啓発拠点ふぉー・てぃーを視察させていただきました。若者が気軽に立ち寄れる雰囲気で情報提供されており、若者への啓発は重要と考えます。
 一方で、近年、外国籍のHIV感染者、エイズ患者がふえており、昨年は都内で九十一人の外国籍の方が新規HIV感染者、エイズ患者とし報告されています。
 このような状況を踏まえ、在留外国人の方にも積極的に検査を受けていただけるよう、都の検査・相談室について、易しい日本語や多言語で周知する必要があると考えます。都の所見を求めます。
 人も動物も、多様性も全てが尊重される真の共生社会の実現を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えいたします。
 動物愛護相談センターについてのご質問でございます。その前に、ドイツでの現地視察、大変ご苦労さまでございました。
 都は、二〇二〇年に向けた実行プランで、飼い主が責任を持って動物を終生にわたり飼養し、動物の生命の尊厳を大切にする社会の実現に向けまして、二〇一九年度までに動物の殺処分ゼロとすることを目標として掲げ、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 その結果、昨年度の殺処分数は、犬はゼロ、猫も十六頭までに減少いたしております。さらに今年度は、十一月末現在、犬、猫とも殺処分ゼロとなっております。
 人と動物との調和のとれた共生社会を実現するためには、区市町村や関係団体等と連携をいたしまして、さまざまな普及啓発や動物の譲渡などを一層進めていくということが必要であります。動物愛護相談センターは、そうした取り組みの中核を担うものだと考えております。
 都といたしまして、昨年三月、センターの整備基本構想を策定いたしまして、これからのセンターに求められる役割等を取りまとめて、現在、動物愛護管理審議会において、センター全体のあり方についてご議論いただいているところでございます。
 センターの再整備に当たりましては、審議会のご意見なども踏まえながら、より親しみやすく、そして身近な施設として都民の皆様方が気軽に来所できる開かれた施設としてまいりたいと考えております。
 続きまして、乳児用液体ミルクについてのお尋ねでございました。
 乳児用の液体ミルクは、お湯で溶かさずにそのまま飲めます。よって、災害時に大変有用であり、私はこれまでも、その必要性、有効性について訴えてきたところであります。
 そして、本年六月、都は災害時に乳児用液体ミルクを海外から緊急に調達できるように、民間事業者と協定を締結したところでございます。
 八月には、国が規定を整備して、乳児用液体ミルクの製造、販売がいよいよ可能となりました。今般、一部の国内メーカーが製品化を実現いたしまして、来春からの販売開始を目指していることからも、国内からも調達できますよう本協定の見直しを進めているところでございます。
 今後、国内流通等の状況、そして区市町村の意見も踏まえながら、災害時の備蓄につきましても検討していく考えでございます。
 また、災害時に乳児用の液体ミルクが活用される、そのためには都民の正しい理解が必要であることから、専門家等の意見も聞きながら、普及啓発にもしっかりと取り組んでまいる所存でございます。
 残余のご質問は、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 七点のご質問にお答えいたします。
 まず、動物愛護相談センターの再整備についてでありますが、動物に関する施策は、狂犬病などから都民を守るための安全対策から、今日では、動物の愛護と適正な管理に向けた取り組みへと、その重心が移ってきております。
 こうしたことを踏まえ、昨年三月に策定したセンターの整備基本構想では、動物愛護施策の中核施設として、これからのセンターが担うべき役割を、適正飼養の普及啓発や保護された動物の譲渡の推進、事業者の監視指導、災害時の動物救護などとしております。
 この構想をもとに、現在、さまざまな分野の有識者等から成る動物愛護管理審議会で、センター全体のあり方につきまして、必要な機能の確保や利便性、業務の効率性等も勘案してご議論いただいており、それらを踏まえ、今後、センターの再整備について幅広く検討してまいります。
 次に、動物愛護推進員の活動への支援についてでありますが、現在、都は、委嘱した約三百名の動物愛護推進員が、地域において、動物の飼養に関し住民への助言や相談対応を行っており、都は、その活動がより効果的なものとなるよう、知識やスキルの向上のための研修会や推進員同士の意見交換等を目的とした連絡会を開催しております。
 近年、多数の動物を不適切に飼育する飼い主への対応や、ペットを飼い続けることが困難となった高齢者への支援など、地域の課題は多様になっており、推進員と保健、福祉部門の担当者との連携が必要なケースも出てきております。
 今後、保健や福祉部門の担当者等にも連絡会への参加を呼びかけ、連携しやすい環境づくりを進めるなど、推進員の活動をさらに支援してまいります。
 次に、動物譲渡に協力するボランティアの支援についてでありますが、都は現在、動物の飼育経験が豊富で譲渡活動に実績のある四十八のボランティア団体等と連携して、動物愛護相談センターが保護した犬や猫の譲渡を進めております。
 昨年度からは、飼育に手間がかかる離乳前子猫を育成し、譲渡するボランティアに対し、ミルクや哺乳瓶等を提供しており、これまでに百九十五頭の育成をお願いしてまいりました。
 また、今年度から、負傷して保護された犬や猫を飼育し、譲渡するボランティア団体に、保護用具やペットシーツ等を提供する取り組みを開始し、これまでに猫十三頭の飼育をお願いしているところでございます。
 これらの取り組みは、広く好評を得ており、引き続きボランティアの方々と連携を図りながら、動物の譲渡を推進してまいります。
 次に、中部総合精神保健福祉センターでの手帳等の交付業務についてでありますが、センターでは、精神保健福祉法など関係法令に基づき、精神障害者保健福祉手帳及び精神通院医療の受給者証の交付に関する業務を行っております。
 手帳及び受給者証の交付件数は年々増加しているため、それに合わせ、申請書類等の保管や職員の作業及びOA機器の設置等に要する場所の拡大が必要となっており、これまでさまざまな工夫を行っているものの、現在の執務室では狭隘となっているのが現状でございます。
 そのため、十分なスペースを確保し、手帳等の交付業務を効率的に行えるよう、センター内の部屋の改修を行うことを予定しており、速やかに職場環境の改善を図りまして、都民サービスの円滑な提供に努めてまいります。
 次に、中部総合精神保健福祉センターにおける認知行動療法の活用についてでありますが、認知行動療法は、ものの考え方や受け取り方である認知の偏りを修正し、問題解決を手助けする治療法であり、センターでは、この技法を取り入れ、鬱病の方を対象とした復職や再就職に向けたプログラムや、依存症の方を対象としたグループ形式で行う回復に向けたプログラム等を実施しております。
 また、区市町村や保健所、医療機関など、地域で相談支援に携わる職員の専門性の向上を図るため、認知行動療法の知識や活用方法に関する専門研修や事例検討会等も行っているところでございます。
 今後も、認知行動療法の一層の普及を図り、鬱病や依存症等の方に対する支援を充実してまいります。
 次に、梅毒の予防に向けた取り組みについてでありますが、近年、都内の梅毒患者報告数は増加し、平成二十九年には千七百八十八件、うち女性は五百五十九件となり、感染症法に基づく調査開始以来、ともに最多となりました。
 こうした状況を踏まえ、都は今年度から、梅毒の予防のための普及啓発の強化、検査体制の拡充、医師向け研修会の開催、梅毒の診察を受けられる医療機関の情報提供などに重点的に取り組んでおります。
 本年十一月には、新たにウエブサイト、東京都性感染症ナビを開設し、eラーニングを活用して梅毒の基礎知識や予防に必要な情報を提供しております。
 さらに、来年一月以降には、梅毒の予防を呼びかけるポスター等の配布や啓発動画の配信などを予定しており、引き続き梅毒の感染拡大防止に向けた対策を進めてまいります。
 最後に、エイズ検査・相談室の外国人への周知についてでありますが、新規のHIV感染者、エイズ患者の報告には外国人の方も多く含まれており、感染拡大防止のためには、都内の外国人の方にも検査を受けていただく必要がございます。
 そのため、都は、毎年実施しているエイズ予防月間に外国人向けの新聞を通じ、無料、匿名でHIV検査を受けられる南新宿検査・相談室の案内を行っております。
 さらに、外国人にもわかりやすいとされる易しい日本語で、南新宿及び多摩地域検査・相談室を紹介するページを、来年三月までに現在のホームページに追加し、一層の周知を図ってまいります。
 今後、在日外国人に対するさまざまな調査等も参考にしながら、多言語によるHIV検査体制の周知方法について、必要な検討を行ってまいります。
〔病院経営本部長堤雅史君登壇〕

○病院経営本部長(堤雅史君) 都立病院におけます包括的な女性支援についてでございますが、都立病院では、女性医師による女性のための専門外来を設置いたしまして、女性特有の心身の疾患を総合的に診察するなど、女性の健康の推進に取り組んでまいりました。
 近年、女性は、職場、家庭、地域など活躍の場が一層広がっておりますことから、これまでの性差を踏まえた心身の変化に応じた医療にとどまらず、個々の患者のライフステージに沿った支援の重要性が高まっております。
 こうした認識のもと都立病院で女性専用外来を最初に設置した大塚病院におきまして、思春期から老年期まで女性の生涯にわたる健康を支えられるよう、関係する全ての診療科と患者支援センターとの連携を一層強化し、女性に対する切れ目のない医療支援をよりきめ細かに提供するための具体的な検討を進めてまいります。

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