平成三十年東京都議会会議録第十三号

○議長(尾崎大介君) 四十九番上田令子さん。
〔四十九番上田令子君登壇〕

○四十九番(上田令子君) 知事においては、知事選よりカイロ大卒業につき疑念が持たれております。オリ・パラを踏まえ、カイロ大を卒業された賓客のおもてなしもあろうホストシティーの知事が、公職選挙法二百三十五条に抵触する学歴詐称を疑われていることは、東京都、都民にとって大変不名誉なことです。
 日本の首都東京の信頼回復のため、知事ご自身で説明責任を果たされ、名誉回復をされ、堂々と卒業証明書と卒業証書の提示をお願いいたします。知事は、エビデンスベースによる評価を重要視されていることからも、卒業を示すエビデンスを都民に提示されない場合は、理由を明快にお示しください。
 都市づくりです。
 戦後、九人の知事が歴任し、経済ハード重視、生活ソフト重視と、知事により政策軸が揺れてきました。両者のバランスをとり、都市間競争の中で東京は成長を遂げていかねばなりません。臨海副都心開発は、鈴木都政下から七番目の多心化政策として、バブル期から三十二年の歳月と多額の資金が投入されてきました。
 一方、都市高層化論のもと、東京マンハッタン計画、丸の内再開発、新虎通り、東京シャンゼリゼプロジェクトも展開している中、東京ベイエリアビジョン策定が七月に示されました。高層化を進めるのか、三たび副都心に分散を図るのか、急激な少子高齢化で社会経済状況が激変する中で、改めて問われるところです。
 これまでの副都心開発の功罪を踏まえ、同じ過ちを繰り返さず成功することができるのか、所見をお示しください。
 虐待です。
 先ごろ示された緊急対策では、警察との情報共有は、私が求めてきた全件共有ではなく、相変わらず児相が緊急性を判断する一部の共有にとどまるものとなりました。
 本年三月の目黒区五歳女児虐待死事件は、私の一般質問後、痛ましいノートや義父の大麻所持等、新たな事実が次々と発覚し、日本全国を揺るがす社会問題となりました。これまでも葛飾区愛羅ちゃん事件、足立区玲空斗ちゃん事件、江戸川区海渡君事件等、児童相談所が虐待と判断せず死に至る事例が繰り返されてきました。
 虐待親は隠す、一、二回の訪問で緊急性は判断できないと愛知県を初め九府県は全件共有に踏み出しています。
 知事においても、児相だけで虐待リスクの正確な判断は不可能という謙虚な姿勢に立つべきだと考えます。
 今後、警察への情報提供が漏れ、虐待死が発生した場合、知事はいかに対応されるつもりですか。全件共有せず、虐待死は防ぎ得るとする根拠を具体的にお示しの上、万が一発生してしまった場合の責任の所在につき、知事のご所見をお示しください。
 また、警視総監におかれましては、今次協定で目黒のような悲惨な事件の防止が本当にできるのか、ご所見をお示しください。
 二〇二〇年、江戸川区に待望の児相が移管されます。現在、練馬区以外の二十二区も、子供の命を守るべく移管を希望していますが、都に積極性が見られないと仄聞します。目黒の事件を受けて、都が率先して推進すべきです。
 現状と所見、移管のハードルとなっている課題認識、積極的な区への動機づけにつき、お示しください。
 来年の第一回定例会に向け、児童虐待防止条例が検討されています。都では、二十年前にも児福審から条例制定が答申されましたが、実現に至りませんでした。三重県では、二〇〇三年に議員提案で条例制定され、成果を上げております。
 ついては、要対協及び実態を知る現場の声を酌んだ実効性のある条例としていくためどうするか、ご説明ください。
 障害者の社会参加です。
 これまで私は、雇用率のアップを念頭に入れて質疑を重ねてきましたが、特別支援学校卒業生はまだ十八歳。健常者の多くは、高卒後、進学するわけですから、彼らにも大学、専門学校というアカデミックな教育の場で青春を謳歌する選択肢があって当然です。
 昨今、総合支援法を活用した学びの活動を行う福祉大学が登場しております。自立就労支援のきめ細かいサポートが特徴です。まず、こうした事業所を支援学校の進路指導の際に生徒へ選択肢として示しているか、また卒業後の就労サポート体制の詳細もご説明ください。
 関連して、障害者の十八歳問題です。支援学校を卒業後、支援の主体は区市町村になります。円滑な移行についてのご所見を求めます。
 昨年、不適切な部活指導により生徒が意識不明となる事故が発生した永福学園では、体罰根絶宣言がなされました。同校は、全都に先駆けて、就業技術科が二〇〇八年に開設されました。どのように三年間の過程を経て、障害者自身が生きがいを持って輝ける社会参加につながったのか、職場定着率を踏まえたその成果と課題を問います。
 欧米では、大学が知的障害者を受け入れ、障害の有無によらず、ともに充実した青年期、キャンパスライフを楽しんでいます。知事は所信表明で、高齢者の方が輝ける社会を実現する百歳大学を首都大学東京に開講としております。であれば、障害を抱える若者にもまず、首都大学東京改め、東京都立大が率先して受け入れ、門戸を広げていただきたいと考えます。国際派の知事の所見をお聞かせください。
 以上、再質問を留保し、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 上田令子議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、冒頭のご質問でございますが、さきの定例会でも申し上げましたとおり、私は一九七六年の十月にカイロ大学を卒業いたしております。これまで大学が発行した卒業証書及び卒業証明書につきましては、これまでも公にしております。また、大学側も、正式な卒業について幾度も認めているところでございます。
 なお、来月にもエジプトの閣僚が表敬に来庁をされる予定となっておりまして、ホストシティーの長として、海外の賓客を迎えるに当たっての支障があるとは考えておりません。
 児童相談所と警察との連携についてのご質問がございました。
 都は現在、子供の安全確認等で必要があるときは、警察と同行して訪問するほか、警視庁からの現職警察官の派遣や警察官OBの児童相談所への複数配置など、警察との連携強化を図っているところでございます。
 今般、警察との情報共有につきましては、児童相談所が対応した事案のうち、虐待に該当しないケースや助言指導で終了したケースなどを除きまして、リスクが高いと考えられる全てのケースを共有するものでございます。
 また、子供の安全確認が適切に行われますように、安全確認の手法など、都独自の行動指針を策定いたしまして、通告後四十八時間以内に安全確認ができなかった場合には、立入調査の実施を決定の上で、警察への援助要請を行うことといたしました。
 児童相談所の体制強化にも取り組んでおりまして、年内に児童福祉司等十九名を確保することといたしております。
 児童虐待は、いうまでもなく子供たちの輝きをいや応なく奪うものでありまして、何としてでも防がなくてはなりません。
 今後とも、警察を初め、子供家庭支援センター、学校、医療機関等の地域の関係機関と一層連携を深めながら、児童虐待防止に全力で取り組んでまいる所存でございます。
 障害のある若者の首都大学東京への受け入れについてのご質問でございます。
 首都大学東京におきましては、障害のある人が障害のない人とともに学ぶキャンパスを形成、そして維持することを目指しております。
 障害のある方が入学試験に出願する場合は、事前に受験上、そして入学後の修学上の配慮についてご相談をさせていただいているほか、大学のダイバーシティー推進室を中心といたしまして、入学後もさまざまな支援を行っているところでございます。
 なお、現在、国におきまして、知的障害のある方を含みます障害者に対する、学校の卒業後におけます多様な学びの機会の提供について、その方策を検討していると聞いておりまして、都としても国の動向を注視してまいります。
 残余のご質問につきましては、警視総監、教育長、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔警視総監三浦正充君登壇〕

○警視総監(三浦正充君) 重大な児童虐待事案の防止についてでありますが、児童虐待事案は、対象家庭に関する情報を関係機関が共有し、早期発見、早期対処していくことが、事態の深刻化を防ぐ上で重要であると認識しております。
 そのため、このたび東京都福祉保健局と情報共有範囲の拡大等を内容とする協定を締結いたしました。
 この協定により、東京都福祉保健局から、リスクが高いと考えられるケースは全て情報提供がなされるほか、警視庁で認知した児童虐待が疑われる全ての事案の取扱状況を児童相談所に提供するなど、さらなる連携強化を図ることといたしました。
 警視庁では引き続き、児童虐待事案に的確に対応し、重大事案の未然防止を図ってまいります。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別支援学校における進路指導についてでございますが、生徒の自立と社会参加を促すためには、多様な進路先の中から、生徒が自身の障害の状態や能力、適性に合った選択ができるよう、丁寧な進路指導を行う必要がございます。
 そのため、都立特別支援学校では、入学後から保護者会や進路面談等において、本人や保護者の希望に寄り添いながら、上級学校や企業、また、ご指摘の事業所を含めた福祉作業所などの進路先について情報提供を行うとともに、職場実習を三回程度実施しております。
 また、生徒一人一人について、福祉、労働等の関係機関と連携しながら、卒業後二年間にわたる社会への移行に関する支援計画を作成し、その間に原則年一回以上、進路指導担当教員が就労先の企業等を巡回するなどして、社会生活への円滑な移行を支援しております。
 次に、都立永福学園就業技術科についてでございますが、就業技術科は、実践的な職業教育を通して、生徒全員の企業就労を目指している職業学科でございます。
 永福学園では、これまでビル清掃や福祉等の職業コースを設置し、民間技術者による実習を行うなどして、他の就業技術科を牽引してまいりました。
 また、開校以来の就労率の平均は九五%であり、就労した卒業生の九割が現在も就労を継続しているという状況にございまして、社会一般の状況から見ますと非常に高い水準にございます。
 卒業生からは、経験を重ねるにつれ責任ある仕事を任され、やりがいを感じているといった声が聞かれております。
 今後とも、永福学園を初め、就業技術科設置校において、生徒全員の企業就労及び職場定着率を向上させることができるよう、企業等と連携しながら、生徒の社会的、職業的自立に向けた資質、能力の向上を図ってまいります。
〔港湾局長斎藤真人君登壇〕

○港湾局長(斎藤真人君) 東京ベイエリアビジョンの策定についてでございますが、東京のベイエリアは、臨海副都心などこれまでのまちづくりにより大きな変貌を遂げながら、東京の魅力と活力を高める拠点として存在感を発揮しております。
 また、築地、晴海、豊洲などまちごとにさまざまな個性を有し、次世代へのポテンシャルを秘めたエリアでもございます。
 今般、これまでのような個別計画の枠を超え、総合的なビジョンを策定することとし、二〇二〇年以降のまちづくりのモデルとなる将来像を示し、東京、ひいては日本の今後の成長戦略につなげてまいります。
 策定に当たりましては、官民連携チームを発足し、行政の枠を超えた発想による提案をいただきながら、具体的な検討を進めてまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 三点のご質問にお答えいたします。
 特別区の児童相談所設置についてでありますが、平成二十八年の児童福祉法改正により、特別区も児童相談所を設置できるようになりました。設置に当たりましては、児童相談所設置後も、児童福祉行政の円滑な実施が見込まれることを都道府県が確認することが必要とされております。
 都は、特別区の求めに応じ、職員の研修派遣を受け入れるほか、児童相談所の運営に関する勉強会を開催しております。
 また、今年度から、都区間で児童養護施設や一時保護所等の広域利用について協議を開始したところでございます。
 現在、各区では、人材の確保や育成、一時保護所の運営等を初めとした設置に係る課題について検討が進められており、今後とも、子供たちの安全や安心の確保の観点から、特別区の取り組みを支援してまいります。
 次に、児童虐待の防止に関する条例についてでありますが、子供への虐待防止対策を進めていくためには、都民、関係機関、区市町村などの理解や協力が不可欠であります。
 今般、都は、虐待の未然防止、早期発見・早期対応など、四つの視点で整理した条例の基本的考え方を公表し、現在、都民から幅広く意見を募っているところでございます。
 今後、要保護児童対策地域協議会の設置主体である区市町村、専門家等の意見や、ことし三月の虐待死事例の検証も踏まえながら、条例骨子案を作成し、改めて都民や区市町村の意見を伺う機会を設けまして、検討に生かしていくことを予定しております。
 こうしたプロセスを通じて、都民の理解を深めていくとともに、現場の実態をより踏まえたものとなるよう、条例案の検討を進めてまいります。
 最後になります。
 特別支援学校卒業後の障害福祉サービスの利用についてでありますが、区市町村の障害福祉担当は、特別支援学校高等部の生徒に対しまして、卒業後の生活支援に関する講義を行うなど、福祉制度の活用に関する支援を実施しております。
 また、特別支援学校在学中から進路指導担当教員と連携し、生徒や保護者からの相談に個別に応じまして、必要な情報提供を行うとともに、障害福祉サービスの利用を希望する場合には、サービス等利用計画の策定を支援することにより、卒業後の円滑な障害福祉サービスへの移行につなげております。
〔四十九番上田令子君登壇〕

○四十九番(上田令子君) メディア等の学歴報道が正しくないのであれば、法的な措置も含め、毅然とした態度をとられるのが政治家の本懐です。どのような対応をされ、今後疑惑を晴らしていくのか、さきの知事選で支援した都議として、改めてお答えいただくよう強く求めます。
 けさも文京区から悲しいニュースが飛び込んできました。都と議会へ文書で三百七十三件も都民の声が寄せられている虐待対策ですが、また児相が取りこぼし、死亡事案が再発した場合、知事が辞任に値するほどの失策となりますまいか、大きな危惧をしております。
 虐待情報の警察との全件共有に向けての知事の姿勢につきまして、改めて明確にしてください。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) たびたびのご質問でございますが、先ほど申し上げましたとおり、私のカイロ大学卒業は、既に大学側も正式な卒業について幾度も認めているところでございまして、それ以上でもそれ以下でもございません。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 警察との情報共有に関します再質問についてお答えいたします。
 先ほど知事からもご答弁させていただきましたが、今般、警察との情報共有につきましては、児童相談所が対応した事案のうち、虐待に該当しないケースや、助言指導で終了したケースなどを除き、リスクが高いと考えられる全てのケースを共有することといたしました。
 このことも含めまして、児童虐待を防止するためには、児童相談所を初め、区市町村の子供家庭支援センター、保健所、民生児童委員、保育所、幼稚園、学校、医療機関、そして警察など、地域の関係機関が一体となって取り組んでいくことが重要と考えております。
 都といたしましては、全ての子供を虐待から守るため、今後とも、こうした地域の関係機関との連携を一層強め、虐待防止に全力で取り組んでまいります。

○議長(尾崎大介君) 以上をもって質問は終わりました。

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