平成三十年東京都議会会議録第十三号

○議長(尾崎大介君) 六十八番後藤なみさん。
〔六十八番後藤なみ君登壇〕

○六十八番(後藤なみ君) 都民ファーストの会東京都議団の後藤なみです。
 私が政治家を志した原点は、介護福祉の現場にあります。昨年度まで、介護福祉の人材事業の立ち上げにかかわる中で、通算千を超える現場を見てまいりました。制度のはざまで苦しむ人たちを少しでも救いたい。そういった思いで今この場に立たせていただいております。
 直近の調査では、二十年後の社会保障費は、現在の一・六倍の百九十兆円までふえるとの試算がありました。社会保障費が膨らみ続ける中で、次の世代を生きる私たち世代の責任は、今の子供たちが次の社会にも持続可能な社会福祉のあり方を探し、つくっていくことにあると思っています。そうした観点から、初めての一般質問をさせていただきます。
 まず、東京都における福祉政策のあり方について質問します。
 現代社会では、暮らしの中の困り事が複雑化しています。子供、子育て、高齢介護、障害、生活困窮、それぞれ制度や仕組みによって分断されていますが、一つの家庭で複数の課題を抱えているのが現代の現実です。
 こうした課題を解決するためには、高齢者や障害者といったような支援対象者ごとに縦割りになっている従来の福祉サービスを誰もが利用できるように包括的に対応できる仕組みづくりが重要です。
 現在は、高齢、障害、児童と分野別に政策の策定や実行をしていますが、今後は、分野別から、課題全体を捉える体制が必要であると考えます。また、施設サービスのあり方も、高齢者や障害をお持ちの方、子供などが一体となって必要な福祉サービスを受けたり、地域住民との交流拠点となる共生型福祉施設を、東京都としてもより充実させていくことが重要です。
 東京都では、国が進める地域共生社会の考え方に基づき、本年、東京都地域福祉支援計画が策定されました。今後の施策展開について、知事の見解を求めます。
 次に、認知症対策について質問します。
 今、高齢化対策の中で最も大きなテーマは認知症です。今や認知症は、先進国を中心に世界的なテーマとなり、高齢社会における最も困難な課題といわれています。
 二〇一四年時点で、全国の認知症に対する介護費用や家族の負担を含めたコストの総額は、約十四・五兆円と推定されており、二〇二五年には、認知症がもたらす社会的なコストは、社会の根幹を揺るがしかねないインパクトになるといわれています。
 現役世代が高齢者世代を支えるのが福祉であるという考え方はもはや成り立たなくなっている現実を打破するためには、認知症の方々も重要な社会的プレーヤーとして位置づけ、社会活動や経済活動に緩やかに参加できる仕組みづくりを実現することが重要です。
 認知症の方々の社会参加を進める取り組みとして代表的なものが、認知症サポーターです。認知症サポーターは全国で養成されており、東京都でも約六十九万人が養成されておりますが、サポーターとなったものの、地域の中で力を生かし切れていない人が少なからず存在すると聞いています。
 また、都は、銀行やコンビニエンスストアなど民間事業者と、高齢者等を支える地域づくり協定を締結していますが、こうした企業で働く方にも認知症サポーターとして活動していただくことが重要だと考えます。都の見解を伺います。
 また、国では、こうした課題に対応して、二〇一九年度、コーディネーターを設置して、認知症の方と認知症サポーターをつなげ、支援を行う仕組みのオレンジリンク事業を始める方針を固めました。
 今後、地域全体で認知症の方を支えていくためには、認知症サポーターの活用を進めることが必要だと思いますが、都の見解を伺います。
 そして、東京都でも、国の動きにも注視しながら、引き続き認知症サポーターと認知症の方をつなげる各施策を検討することを要望いたします。
 次に、ダブルケアの抱える課題について質問します。
 少子高齢化と女性の晩婚化に伴い、子育てと親の介護に同時に直面するダブルケアの問題が表面化してきています。二つの負担が同時に襲いかかることにより、精神的、体力的、時間的な負担はとても大きく、複合的な課題を抱えているケースが多いのも特徴です。
 これまでは、仕事と子育ての両立、仕事と介護の両立がそれぞれ問題となっていましたが、今後はさらに、子育て、介護、仕事の三つが同時並行となる課題が加わってきます。
 超少子化と高齢化が同時進行する日本のような国では、ダブルケアは近い未来、大きな社会問題、政策課題になると考えます。
 こうしたダブルケアは全国に二十五万人おり、子育てが終了するまでの間に三人に一人はダブルケアを経験しているといわれています。初婚の年齢が夫婦ともに三十歳を超え、日本で一番晩婚化が進む東京都においては、特に顕著な課題になりつつあります。
 ダブルケアに直面する方は増加する傾向にある一方で、子育てと介護の両立を支える仕組みや制度はまだ十分とはいえません。特に、介護と子育てで役所の窓口が異なることもあり、当事者だけで課題を抱え込んでしまいがちです。
 課題解決に向けては、子供、子育て支援と高齢者ケアとを融合させる新たな発想が求められています。既に先進的な自治体では、相談窓口の開設や、ダブルケアマネジャーなど育児と介護の両方の相談や支援ができる専門家の養成に向けて取り組みを始めています。
 そこで、ダブルケアに対しての認識について都知事に伺います。
 また、自治体への支援としては、相談窓口の設置支援やケアマネジャー、子供家庭支援センター職員向けに研修開催など対策を講じるべきだと考えますが、都としての見解を伺います。
 次に、都の学童クラブ事業に関して質問します。
 育児休業を終えた共働き家庭が、いざ仕事に復帰しようとする場合に直面する第一関門が、保育園の待機児童の問題であるとすれば、第二関門といえるのが、小一の壁と呼ばれている小学校の放課後に子供を預ける放課後学童保育の確保の問題です。
 先日、国では、新・放課後子ども総合プランを策定し、二〇二三年度末までに約三十万人分の受け皿を用意して、学童待機児童を減らす方向を示しております。
 実際に、私の地元足立区でも、二十三区内で二番目に多い二百七十七名ものお子さんが学童保育の待機児童となっており、これは保育所の待機児童にも匹敵する人数となります。
 こうしたことからも、都において、学童保育の待機児童解消は喫緊の課題であると考えます。
 また、待機児童をゼロにするという観点ももちろん大切ですが、子供たちが時間を過ごす場の質という観点も非常に大切です。
 放課後と長期休みに学童保育で過ごす時間は、学校に通う時間に匹敵するということからも、子供たちにとってどんな居場所であるべきなのかといった質の議論も、今後行われていく必要があると感じています。
 そこで、学童クラブの待機児童解消と質の向上に向けた東京都の取り組みについてお聞かせください。
 次に、子育ての実体験から感じた課題についてご質問します。
 私は昨年の十一月、第一子を出産いたしました。その際に妊娠中から現在も使っているのがこの母子手帳です。母子手帳は、妊娠中の経過から、出産後、子供の体重変化やワクチンの接種状況など、育児と子供に関するさまざまな情報が記載できるようになっており、私も妊娠中から毎日持ち歩いておりました。
 東京都では、昨年度、核家族化や子育て環境の変化により、妊娠、出産、子育てに関して不安を感じる妊産婦や保護者が増加していることを踏まえて、母子手帳をもとにした都独自のモデルを策定いたしました。
 先日、妊産婦の死因のトップは自殺であるという報道があったように、子育て中の母親は毎日が不安でいっぱいです。母乳は十分に出ないけど足りているのか、一体どうしたら子供が寝てくれるのか、産後、自分の体調不良は病気なのか。子供が生まれて直面するそういったさまざまな疑問は、初めての出産だとどこでどうやって正しい情報を調べたらいいのかがわかりません。
 インターネットでありとあらゆる情報が氾濫する中で、いたずらに不安をあおるような記事も多くあります。そんなときに母子手帳は、正しい情報を受け取ることができ、妊産婦の不安を解消するバイブルのようなものであってほしいと思います。
 例えば、産後鬱の兆候に関する気づきを促し支援につながるものや、虐待防止に向けた相談窓口、さらには男性の育児サポートのあり方についても、手帳に情報を充実すべきだと考えます。
 また、母子手帳に記載する成長の記録が親たちを苦しめるものであってはなりません。子供手帳モデルの検討会では、近年ふえている低出生体重児用の成長曲線の追加や、成長や発達の記録について、できていなければいけないというような質問はやめてほしいなどの意見も上がっています。
 そこで、都が作成した子供手帳モデルにおける具体的な取り組み内容についてお伺いします。
 また、今後、本モデルが各区市町村でも活用されるよう、普及啓発が必要であると考えますが、あわせて見解を伺います。
 次に、都営住宅における少子高齢化対策について伺います。
 私の地元足立区と聞いて思い浮かべるまちのイメージの一つに団地があります。足立区では、都営住宅やUR、公社住宅などを合わせると、四万五千戸を超えることからも、団地のあり方を考えることは、足立区の住宅政策において大きなテーマとなっています。
 そして、高齢化と単身化が進む都営住宅においては、高齢ひとり暮らし世帯の課題に目を向けていくことが重要です。
 東京都では、都政改革本部における見える化改革の取り組みにおいて、新たに都営住宅で高齢者を見守る環境の整備について検討を進めることになりました。
 今後は、従来のような住まいの提供に加えて、見守りや日常生活の支援、福祉拠点の目的外使用など、福祉的なサービスの視点を都営住宅に加えていくことが重要であると考えます。
 また、都営住宅全体が高齢化する中においては、学生や子育て世代など、さまざまな世代が共存するミクストコミュニティを形成していくことは、持続可能な経営の観点からも重要です。特に、シングルマザーなども含めた若年のファミリー世帯や学生にも裾野を広げ、入居を促進すべきだと考えます。
 また、足立区では、団地の一部建てかえ用地を転用して文教大学を誘致し、平成三十三年度にキャンパスが開校となります。大学周辺には都営住宅も集積しており、こうした資源を活用して学生の入居についても積極的に進めるべきであると考えます。
 そこで、こうした状況を踏まえ、東京都における都営住宅の少子高齢化に向けた取り組みについて伺います。
 以上、私からの質問を終了いたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 後藤なみ議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、地域共生社会に向けました今後の施策の展開についてでございます。
 誰もが活躍できる環境を整えて、いつまでも安心して暮らせる地域社会をつくり上げる、そのことがダイバーシティーの実現につながると考えております。
 都はこれまで、高齢者、子供、障害者など、分野ごとに計画を策定して、大都市特有のニーズに応じた福祉施策を展開してまいりました。
 その取り組みをさらに進めるため、それぞれの計画を横につないで、そして、都の福祉施策全般を支えるものといたしまして、ことしの三月、東京都地域福祉支援計画を策定したところでございます。
 今後、地域共生社会の構築に向けまして、世代を超えた包括的な相談、支援体制の整備、高齢者と障害者、障害児がともに過ごし、必要な支援を受けられる共生型サービスの推進や、誰もが集える居場所づくりなど、分野を超えた取り組みを推進してまいりたいと考えております。
 次に、ダブルケアに対しての認識についてご質問をいただきました。
 いわゆるダブルケアでありますが、お話にございましたように、育児をしながら、同時期に親の介護を担うという状況であります。都民の中にも、こうしたご苦労をされている方、多々おられるかと存じます。
 私は、地域で安心して子供を産み育てることができるように、妊娠、出産、子育ての切れ目のない支援の仕組みづくりや、保育サービスの充実に積極的に取り組んでまいっております。
 一方で、介護が必要になったとしても、住みなれた地域で安心して暮らし続けることができるように、特別養護老人ホームなどの施設サービスと在宅サービス、これをバランスよく整備をしてまいりました。
 今後、それぞれの取り組みの連携をさらに深める、それによって福祉施策を総合的に展開することで、誰もが生き生きと生活をして、一人一人が自分らしく輝くことができるダイバーシティーの実現を目指してまいりたいと考えております。
 その他のご質問につきましては、関係局長よりのご答弁とさせていただきます。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、認知症サポーターについてでありますが、都はこれまで、養成したサポーターが認知症の方への声かけや見守り、家族会の運営支援などの活動に従事できるよう、フォローアップ講座の開催や見守りネットワークづくりなどの区市町村の取り組みを包括補助で支援してまいりました。
 また、窓口対応や自宅への訪問を通じて、高齢者と接する機会が多い銀行、コンビニ、新聞販売など五十二の事業者や団体と、見守りや認知症の方への支援に関する協定を締結しており、従業員等が認知症の方に適切に対応できるよう、これらの事業者や団体におけるサポーター養成を働きかけているところでございます。
 今後とも、こうした取り組みを通じまして、認知症サポーターの養成や活用を促進してまいります。
 次に、育児と介護のダブルケアについてでありますが、都は、地域で安心して子供を産み、育てることができるよう、妊娠や出産に関する相談窓口の設置や、地域の児童家庭相談窓口である子供家庭支援センターの体制強化を支援するとともに、センター職員に対し、家族全体のアセスメントの重要性等に関する研修を行っております。
 また、介護を必要とする家庭を適切に支援できるよう、高齢者やその家族の相談窓口である地域包括支援センターに対し、相談機能の強化や職員研修等の支援を行うほか、介護支援専門員に対しては、介護以外の問題を抱える家族への対応の視点を含めた研修を実施しております。
 今後とも、育児と介護のダブルケアに直面する家庭を支える区市町村の取り組みを支援してまいります。
 次に、学童クラブについてでありますが、都は昨年度、平成二十六年度から三十一年度末までにふやす学童クラブの登録児童数の目標を七千人分引き上げ、一万九千人分とする新たな目標を設定いたしました。
 この目標の達成に向け、施設の新設や改築、小学校の余裕教室等の既存施設を利用する場合の改修に係る経費を補助するほか、賃貸物件を活用する場合は賃借料補助を行っており、今年度からは、開所前三カ月分の賃借料につきましても、都独自に補助しております。
 また、午後七時以降までの開所や常勤職員の配置などを要件とした都型学童クラブ事業を実施しており、今後とも、学童クラブの整備やその質の向上に取り組む区市町村を支援してまいります。
 最後に、子供手帳モデルについてでありますが、都は、妊娠、出産、子育てに関し、不安を抱える妊産婦等の増加を踏まえ、昨年度、学識経験者等による検討会を経た上で、母子健康手帳をもとに、記録欄や子育て情報を拡充した独自の子供手帳モデルを策定いたしました。このモデルには、低出生体重児等に対応する成長の記録や発育曲線、出産後の母親の心身の不調に早期に気づくためのチェック項目、育児における父親の役割など、妊産婦や子育て家庭向けの情報を盛り込んでおります。
 区市町村がこのモデルを活用し、妊娠期からの切れ目のない支援を推進できるよう、今年度から包括補助で支援しており、引き続き、その普及拡大に向け、母子保健の研修会や説明会を通じまして、区市町村への働きかけを行ってまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 都営住宅における少子高齢化への対応のご質問にお答えいたします。
 都は、都営住宅の建てかえに当たり、保育所や幼稚園、高齢者福祉施設の整備を進めてまいりました。また、子育て世帯の入居促進や、巡回管理人による高齢者世帯への訪問、共益費の代理徴収などを実施してまいりました。
 現在、少子高齢化と世帯の単身化が急速に進行する中、高齢者世帯や住宅に困窮する子育て世帯が安心して暮らし続けることのできる環境の一層の充実が課題となっております。これらに対応していくため、都営住宅における福祉的サービスとの連携の強化や、子育て世帯の入居のあり方などについて検討を行い、施策を進めていく必要があります。
 都は、十月に住宅政策審議会を立ち上げ、都営住宅の管理制度などのあり方について検討を進めてまいります。

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