平成三十年東京都議会会議録第十三号

○議長(尾崎大介君) 六番西郷あゆ美さん。
〔六番西郷あゆ美君登壇〕

○六番(西郷あゆ美君) ことし二〇一八年は、明治維新の一八六八年に江戸を東京と改名する詔書が発せられてから百五十年目の年です。
 まず、東京の歴史的スポットを新しいテクノロジーを駆使して発信する観光振興策について質問します。
 歴史を振り返ってみますと、戊辰戦争時には、江戸は幕府軍と新政府軍と一大戦場となる可能性がありました。しかし、江戸無血開城により、江戸は戦火から免れることができ、都市インフラはほぼ無傷のまま残って、明治維新政府の新しい首都として東京が発展する基礎になりました。
 その後、日本は帝国主義という時代の中で、植民地化の危機を乗り越え、近代国家建設と戦争への道を歩み、一九四五年八月、終戦を迎えます。
 一九五二年のサンフランシスコ講和条約発効により、日本は独立を回復し、戦後の復興をなし遂げました。日本の高度経済成長を実現し、一九六八年には経済力が世界第二位になりました。その後、オイルショックやバブル崩壊など、幾多の経済危機がありました。東京は、現在では世界最大級の経済力を持つ大都市圏となっています。
 東京は、破壊と創造を繰り返してきました。その中で、伝統と革新が出会う場所でもあり、中央区を初め都内各所に江戸や明治以降から現代に至る歴史にゆかりのあるスポットが数多くあります。東京の歴史スポットを最新のテクノロジーを活用してインバウンドで東京を訪れる外国人を含む観光客の方々に発信していく、それが東京の観光に深みを与え、ますます魅力的な東京をアピールすることができると考えます。
 例えば、歴史的画像と自撮り画像を合成してインスタ映えする画像を作成し、撮影者自身の映像と過去の映像を合成して保存することができる体験型の映像コンテンツを提供することにより、SNS投稿による拡散効果も期待できます。
 明治維新百五十年目の節目を迎えるに当たり、都が歴史観光に関連してどのようなプロモーションを展開していくのか、知事の考えをお伺いします。
 次に、教科書採択における公正確保について、教育長に質問いたします。
 私たちが東京を紹介するには、東京や日本をよく知ることが大切です。特に、公教育における教科書選定は、公平に行われなければなりません。教科書採択の権限は、公立学校で使用されている教科書はその学校を設置する市町村や都道府県の教育委員会に、国、私立学校で使用されている教科書は校長にあるとされています。
 公正取引委員会は、平成二十八年七月六日、義務教育諸学校で使用する教科書の発行者に対する警告等についてにおいて、教科書出版社九社に対して、教科書採択に関与する可能性のある教員等に対して、意見聴取の謝礼として金銭等を提供する、懇親会を催し酒類、料理などを提供する、中元、歳暮を提供することなどをしていた事実を確認し、これが独占禁止法第十九条第九項、不当な利益による顧客誘引の規定に違反するおそれがあるとして、警告を発しました。
 これらを受けて、文部科学省は、平成二十九年三月二十八日の教科書採択における公正確保の徹底等についてにおいて、教科書採択の公正確保のためには、教育委員会を初めとする採択権者等における取り組みが不可欠であることはいうまでもありませんと通知しました。本年三月三十日にも、文部科学省は各都道府県教育委員会教育長宛てに同様の通知を出しています。
 そこで、都教育委員会では、どのように教科書採択にかかわる教員等へのコンプライアンス、公正確保のための取り組みを行っているのか伺います。
 次に、ベンチャー支援について伺います。
 イノベーションの進展により、これまで誰にもできなかったことや、私たちが想像もしなかったアイデアが現実なものとなり、新しいビジネスとして、次々と生まれようとしています。
 その一つに、宇宙開発、宇宙ビジネスがあります。一九六七年に発効した国連の宇宙条約以降、衛星の打ち上げ場所を抱える国では、条約履行のために国内法の整備が進みました。各国では、一九九〇年代から商業利用の本格的な展開が開始され、例えばアメリカのスペースX社は、二〇二二年に民間宇宙船で火星に人を送り込む計画を発表しています。また、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が創立した宇宙開発企業のブルー・オリジン社は、二〇一八年七月には宇宙飛行士を模したダミー人形を搭載した宇宙飛行実験に成功しています。
 日本では、二〇〇八年の宇宙基本法で、内閣総理大臣を本部長とする宇宙開発戦略本部が設けられ、第三十五条で宇宙活動に関する法制の整備を進める旨が規定されていますが、宇宙活動法と衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律が成立したのは二〇一六年になってからです。
 日本の宇宙機器の産業の現状は、官需が八割以上を占めていますが、ロケット、リモートセンシング衛星、部品、宇宙ごみを回収するデブリ除去等など、さまざまな宇宙関連事業に新たに参入する企業が出現しています。
 本年五月二十九日には、JAXAが国際宇宙ステーションから超小型衛星を放出する事業を、三井物産と中央区に本社を置く宇宙利用ベンチャーのスペースBDに開放すると発表しました。また、JAXAなどとは別に、純粋に民間で宇宙ビジネスを展開しようとする企業も出ています。
 そう遠くない将来に、多くの人々が宇宙と地球を行き来する時代が到来し、そのときには、宇宙ビジネスが一大市場となっている可能性があります。
 その主役は、やはりベンチャー企業です。ぜひ東京においても、宇宙に挑むスタートアップ企業に大いに活躍していただきたいと思います。
 こうした新しい技術分野でのビジネスは、リスクも大きいですが、成功すれば飛躍のチャンスにもなります。未来の産業のリーダーとなる担い手を多く輩出するためにも、志のある若い起業家に夢を与え、強力に後押ししていくべきではないかと考えますが、知事の見解を伺います。
 最後に、地元中央区の緊急の案件である築地市場解体工事、オリ・パラ仮設駐車場設置工事、環状二号線仮設道路工事についてお伺いします。
 住民への説明会は、公共工事や民間の工事の際、紛争が多発した経験から、紛争の未然防止のために定式化された、制度化されたものです。これらは建設工事を行う事業者に対する住民の民法上の権利の行使に伴う紛争を予防し、調整を行おうとするものであって、飛行場、新幹線、マンション建設など、説明会の相手は民法上の権利者である一人一人の住民です。
 築地市場での工事は、三つの工事が並行して行われます。工事を統一的に管理することが不可欠です。
 例えば、工事用トラックの運行について、統一的な運行計画がつくられているのが常です。また、住民や場外市場の方々は、これらの三つの工事から出る騒音、振動、粉じんや、工事用のトラックによる混雑や大気汚染など、影響を受けることになります。したがって、周辺住民や営業者には、これらの三つの工事の影響を説明しなければなりません。
 そこで、地元住民や営業者が築地解体工事などの三つの工事に対する説明や対策の要求を行うに当たって、ワンストップ総合窓口を設け、これらの三つの工事のそれぞれにつき、また、これらの工事による影響について説明し対応するなどの体制を整える必要があると考えますが、都の考えを伺います。
 築地市場の解体工事などでは、周辺住民や営業者が特に心配しているのはネズミの駆除です。十月十一日以降の築地市場での工事のプロセスを想定しますと、建物の解体前に、残置物の撤去、ライフラインの停止や遮断工事、そして仮囲いの設置、工事事務所の建設、工事ゲートの設置、工事用の電気の準備、工事用の水の供給と排水施設、雨水排水施設、防音シートの設置等の工事が必要になります。これらに二カ月はかかると思いますが、その間にネズミが場外市場や周辺住宅へと拡散するおそれがあります。
 中央区は、場外でネズミ対策をするとして、粘着シートを住民らに配布するといっていますが、ネズミが粘着シートにかかったとき、業者や区役所の職員がとりに来てくれるとしても、その処理までの時間の住民の心理的な負担は極めて大きいものがあります。
 ネズミ対策は粘着シートを配ればいいというものではありません。まずは防除に全力を尽くしていただきたいと考えます。
 そこで、都として、築地市場外にネズミが拡散しないようにどのような駆除対策を講じるつもりなのか、また、場外市場や近隣住宅にネズミが拡散した場合、都としてどのような対策を講じるつもりなのか伺います。
 最近の解体工事等の事例では、横浜の花月園競輪場跡地の解体と基盤整備における説明会では、独立行政法人都市再生機構は、家屋事前調査を行い、工事中も住民に工事による影響がわかるように措置しています。
 形だけの説明会で工事を開始すれば、工事中も工事後も、ネズミの拡散、騒音、振動、粉じん、トラックの駐停車や道路への侵入等による苦情や紛争、さらに損害賠償訴訟や工事差しとめ訴訟も起こりかねないことは、過去の経験から推察されます。
 築地市場の解体工事など三つの工事は、都心における大工事です。現状は三つの工事の規模、内容、必要性さえも住民に十分説明されていません。
 飛行場建設、道路建設、新幹線騒音、ごみ焼却場など、これまでの多くの工事において近隣住民と紛争がありました。その中で、紛争を拡大しないためには、住民の意見を聞きながら工事を見直すなど、柔軟に対処するという知恵を蓄積してきました。工事に当たっては、騒音、振動などに関する法令基準を遵守することは当然のことであり、また、法令さえ守ればいいというものでもありません。築地市場の解体工事等においても、硬直的な対応ではなく、柔軟な対応を求めたいと考えます。
 解体工事や建設工事は、住民へ迷惑をかけるものです。通常の工事で行われるように、工事実施前だけでなく、工事実施中も住民に対して丁寧な説明を続けるべきだと考えますが、市場長の考えを伺います。
 以上で私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 西郷あゆ美議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、東京の歴史を生かした観光振興についてのご指摘がございました。
 ご承知のように、東京には、江戸時代から続く伝統的な食、お祭り、そして明治、大正期の歴史的な建造物や産業遺産など、それぞれの地域に固有の歴史、そして文化がございます。
 東京への旅行者の誘致を進めていくために、こうした江戸から近代、現代と連なります東京の都市としての魅力を、最新のテクノロジーを活用して発信することは効果的でございます。
 そして、ことしは東京百五十年の節目に当たります。都庁の展望室におきましては、明治時代の東京の風景をVR体験できるイベントを行いました。また、来月には浜離宮恩賜庭園で開催をいたします東京百五十年祭におきまして、樹齢三百年の松の前で、タイムスリップした記念写真を撮れるような体験型コンテンツなどを展開いたしまして、伝統と革新が共存する東京の魅力を実感していただきます。西郷どんが出てくるかどうかは確認はいたしておりません。
 また、地域への誘客を進めるために、都といたしまして、伝統文化や歴史的な景観などを活用した地域の観光振興の取り組みに対しまして、ソフト、ハードの両面からの支援を行っております。
 そして今年度からは、日本橋の江戸、東京の史跡や名所などをめぐりますまち歩きツアーの開発、それからSNSやVR映像などを活用した情報発信など、地域の新たな取り組みを支援いたしまして、都内各地への旅行者の回遊を促してまいります。
 今後も、東京の歴史を生かした観光振興を新しい技術も活用しながら推進いたしまして、さらなる旅行者の誘致につなげてまいります。
 そして、ベンチャー、新たな技術分野での起業家への支援についてのご質問もございました。
 新たな技術分野で力を発揮して、これまでにないビジネスをつくり上げるという起業家、将来の東京の産業の担い手といたしまして大きく成長するポテンシャルを持っている。そして、世界を舞台に活躍することも期待できます。
 海外では、新しい技術を生かして急速に力を伸ばすベンチャー企業が数多く生まれ、中には、突出して成功をおさめるユニコーンと呼ばれるような存在感を発揮している企業もあります。私は、そうした起業家を東京から数多く生み出していきたいと考えております。
 そのため、まずは意欲ある若手や女性の起業家を数多く見出す登竜門といたしまして、すぐれた事業プランを競い合うコンテストを開催いたしております。また、ベンチャーの技術を大企業の営業力や資金とマッチング、結びつけて、そして画期的な事業の創出を目指す、そのほか、起業家と海外の有力企業とのマッチングにも着手をいたしております。
 特に女性のベンチャー経営者向けには、世界の市場で活躍できる経営知識を身につけてもらい、現地で取引先をふやして、投資家から支援を受ける、そのような力を養うようなプログラムも開始をいたしております。
 今後、これらの施策に一層磨きをかけまして、起業家を幅広くまず掘り起こす。そして、成長のステージに応じたサポートをきめ細かく行う。東京発のベンチャーが次々世界に向けて羽ばたいていけるように、力を尽くしてまいりたいと考えております。
 残余のご質問については、教育長、中央卸売市場長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 教科書採択における公正確保についてでございますが、教科書の採択は、採択権者の責任と権限のもと、適正かつ公正に行われなければならず、教科書採択の補助業務等に携わる教職員の服務は厳正を期す必要がございます。
 このため、都教育委員会は、都立学校や区市町村教育委員会等に対して、毎年度、教科書採択の公正確保の徹底について通知するとともに、教科書の採択や執筆等にかかわる教職員が遵守すべき指針を定め、周知してまいりました。
 また、平成二十七年度に、教職員の教科書発行者との不適切な接触が全国的に問題となったことを契機として、指針に教科書発行者と意見交換を行う際に守るべき規定を新たに加えるなどして、一層厳格な対応を図っております。
 今後とも、こうした取り組みを通して、教科書採択の公正性と透明性を確実に確保してまいります。
〔中央卸売市場長村松明典君登壇〕

○中央卸売市場長(村松明典君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、築地市場跡地における工事の窓口についてでございますが、築地市場の移転後は、建物の解体工事に速やかに着手するとともに、環状第二号線の整備工事が並行して進められることとなります。
 さらに、東京二〇二〇大会の車両基地整備工事も予定されておりまして、地元住民の方からは、問い合わせ先がわかりづらいとの声もいただいております。
 当面は、跡地の大部分が解体工事エリアとなることから、中央卸売市場が住民の皆さんの問い合わせ等の窓口となりまして、関係局と連携しながら迅速に対応してまいります。
 次に、築地市場のネズミ対策についてですが、閉場に向けた取り組みとして、外部への流出経路を遮断するとともに、生息数を減らすために、徹底的な駆除を行うこととしております。
 具体的には、まず流出防止策として、市場外周部に波板、金網、金属ブラシ等を設置し、外周部の内側には捕獲かごを設置いたしました。また、生息数を減らす取り組みといたしまして、五月、八月、九月の連休を利用して一斉駆除を行い、閉場後は、十一月中旬まで駆除を継続して実施いたします。
 さらに、市場外の取り組みといたしまして、場内の駆除と時期を合わせ、中央区において駆除対策を講じるなど、連携して適切に対応してまいります。
 最後に、築地市場跡地における工事についてですが、築地市場の解体は、都心での非常に大規模な工事であり、住民の方々からは不安の声もいただいております。こうした声に応えるため、跡地で行われる他の工事を含め、工事前の説明会においては、できるだけ具体的な数値を示すなど、わかりやすい資料を用いた説明を重ねてまいりました。
 今後、工事期間中におきましても、住民の方々とコミュニケーションを図るため、適切な情報提供を継続することが必要と認識しておりまして、周知看板やホームページを活用するなど、中央区とも連携しながら、関係局とともに丁寧な情報発信を行ってまいります。

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