平成三十年東京都議会会議録第十三号

○議長(尾崎大介君) 十二番田村利光君。
〔十二番田村利光君登壇〕

○十二番(田村利光君) 都議会自由民主党、田村利光です。
 私からはまず、平成三十一年度から導入される森林環境譲与税について伺います。
 森林が人類に与える恩恵は、CO2の削減や治水など、はかり知れないものがありますが、外国産材の流入による価格の下落、また、相続による所有者不明森林の増加など、森林を取り巻く環境は、今、危機的状況にあります。
 そのような状況を打開すべく、国は森林環境税の導入を決めました。この新税の国民への課税は平成三十六年度からなのに対し、自治体への譲与税の交付が来年度から開始されることは、森林対策が予断を許さない状況にあることをあらわしています。
 そして、同じく来年度から運用の始まる新管理システムは、森林所有者の責任を明確にし、所有者自身が森林を整備できない場合は、市町村に委託し、市町村がさらに意欲のある林業事業体へ再委託し、森林整備を促進するものです。譲与税の三十一年度交付により、この森林新管理システムの円滑な運用が期待されています。
 東京都の面積の約四割が森林であり、その恩恵を受けるべきは東京都民自身です。将来的には、都と区市町村に毎年二十億円を超えて交付される譲与税は、東京都の森林整備や、それを担う林業事業体の強化、多摩産材の利用拡大など、東京の林業の振興に有効に活用するべきだと考えます。
 一方、譲与税の基準に人口割が入ったため、森林の少ない自治体へも譲与税が交付されますが、森林関係専門の担当者がいない区市町村は、譲与税の活用について、ただ戸惑っているのが現状です。そういった自治体への支援は、まさに東京都の役割です。知事には、このたびの森林環境譲与税の創設を契機に、東京の林業振興を強力に推進していただくことを強く要望いたします。
 その上で、都内自治体への支援も含め、東京都へ交付された譲与税を、東京の林業のさらなる振興のために効果的に活用すべきと考えますが、都の具体的な取り組みについて伺います。
 次に、内水面漁業振興について伺います。
 ことし、多摩川を遡上したアユは九百九十四万匹と、調査開始以来、二番目に多い水準でした。都と漁業関係者の方々の努力の成果だと思います。今後、さらなる内水面漁業の活性化を図るためには、アユの遡上の妨げとなっている堰において、アユの通り道である魚道の果たす役割が重要になると考えます。
 より多くのアユが魚道を通して、環境のよい上流域に遡上できるようになれば、釣り人の増加、捕獲したアユの活用と、さまざまな効果が期待できます。
 今後は、堰下流で滞留するアユを上流へ運搬する取り組みなどに加え、魚道機能の維持改善に取り組むべきと考えますが、都の取り組みを伺います。
 次に、農業の担い手育成への取り組みについて伺います。
 都内では、都市化の進展や後継者不足などにより、毎年約百ヘクタールもの農地が失われています。
 我が都議会自民党は、さきの第二回定例会において、都市農地の賃借に関する新たな法制度の成立を契機として、農地保全策について提言したところです。本制度によって、後継者のいない農家も農地を貸しやすくなり、就農希望者とのマッチングが進むことが期待されています。
 特に近年では、農業に関心のある若手流通事業者と連携して、都心のレストランにみずから収穫した農産物を提供するなどの意欲的な取り組みも行われています。
 次代を担う農業者を確保していくためには、こうした新たな発想でチャレンジする方々を、今まさに強力に後押しすることこそが必要であり、都は、これまでの担い手育成の取り組みを抜本的に強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、ラグビーワールドカップを契機にした外国人旅行者誘致について伺います。
 二〇二〇年にはオリンピック・パラリンピックが開催され、多くの外国人旅行者の訪日が期待されますが、実は、ラグビーワールドカップは開催期間が四十四日間と長く、団体よりも個人旅行の傾向のある欧米豪の旅行客が訪れるオリ・パラとは違ったインバウンド効果が期待されるビッグイベントです。
 開催まで一年を切った今、開催期間中の東京を中心とした観光需要喚起のため、旅行者の計画段階から魅力的な観光情報を世界に発信していくことが重要だと考えますが、都の取り組みについて伺います。
 次に、都立高校における文化活動について伺います。
 東京が成熟した文化都市として輝き続けるためには、若者が芸術文化の担い手として成長できる機会を保障することが重要です。文化の祭典でもある東京二〇二〇大会の開催を好機と捉え、高校生が吹奏楽、演劇、美術、工芸等の活動を通して、芸術文化への造詣を深めることは極めて意義のあることです。
 また、その二年後の二〇二二年度には、文化部のインターハイともいわれる全国高等学校総合文化祭が東京都で初めて開催されます。
 そこで、この二つの大きな大会に向けて、都立高校における文化部活動を一層充実させるべきと考えますが、都教育委員会の取り組みについて伺います。
 次に、ヘルプマークについて伺います。
 我が党の山加朱美前都議会議員の提案により生まれたヘルプマークは、義足や人工関節、内部障害、妊娠初期の女性など、外見からはわかりづらい障害を持つ方たちが、援助や配慮を必要としていることを周囲に知らせるためのものです。
 この東京発のヘルプマークは、昨年七月、JIS規格に追加され、日本共通の福祉マークとなり、全国の自治体への導入も、現在三十二都道府県と急速に進んでいます。
 今後、ヘルプマークの商標権を有する東京都は、国際都市として、二〇二〇大会開催都市として、ますます増加する外国人旅行者に向けて、ヘルプマークの意味や、このマークを持っている方に対して思いやりのある行動をとることを啓発していくことが大切です。
 そこで、このヘルプマークについて、外国から来た方々にとって最も目につきやすい多言語表示ポスターを作成することが効果的であり、重要であると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、高齢者対策について伺います。
 都は、後期高齢者が百八十九万人になる平成三十七年を目途に、特別養護老人ホームの整備目標を六万二千床に引き上げ、そのための支援策も充実させつつありますが、現実には、人手不足や建築費の高騰などの課題があり、スムーズには進んでいません。
 そのような中、当初から高齢者を受け入れてきた多摩地域の特別養護老人ホームをさらに活用することが重要です。
 今後は、多摩地域を含めた都内全体での増床を図るとともに、既存施設を支援する施策が重要と思われますが、都の見解を伺います。
 次に、土砂災害対策について伺います。
 本年七月の豪雨では、西日本を中心に、土砂災害により多くのとうとい命が失われました。亡くなられた方々へ改めて哀悼の意を表するとともに、被災された方々にお見舞い申し上げます。
 都内でも、平成二十五年に伊豆大島において大規模な土石流災害が発生し、甚大な被害を及ぼしました。昨年十月の台風二十一号では、幸い人的被害はなかったものの、多摩地域において十カ所を超える土砂災害が発生しました。
 都内には、多摩・島しょ地域を中心に、土砂災害のおそれのある箇所が約一万五千カ所存在しています。土砂災害から都民の命を守るためには、危険箇所を、住民に加え、新たに土地所有者も含めた関係者に幅広く周知し、住民の迅速な避難行動を促すことが大切です。
 また、土石流をとめる砂防堰堤などを整備する砂防事業や、崖崩れを防止するのり枠などを整備する急傾斜地崩壊対策事業を着実に進めることが重要です。都のソフト、ハード両面からの取り組みについて伺います。
 次に、西多摩山間地域の道路整備について伺います。
 ことしの日本各地での自然災害では、道路が寸断される被害が多発しました。西多摩の山間地域では、幹線道路が多摩川と秋川に沿って走る一路線しかなく、土砂崩れなどによって通行不能となった場合、避難や救助活動などに大きな支障を来すこととなります。
 そのため、本地域では、防災力の強化に資する道路整備を進めていくことが喫緊の課題です。
 都は、昨年九月に取りまとめた多摩の振興プランにおいて、災害時の代替ルートとなる多摩川南岸道路と秋川南岸道路の整備を推進する方針を示しました。
 そこで、これらの路線の取り組み状況について伺います。
 最後に、建設工事案件の仕事の平準化について伺います。
 都は、発注の端境期と集中期の比率を一・五倍以内に抑えるという目標を立て、対策も講じた結果、その比率は二十九年度で二・二倍にまで縮小されました。しかし、都においても働き方改革が叫ばれる中、都政と密接にかかわる建設業界からは、都の発注案件にまだまだ平準化の余地があるとの声が多数あります。
 そこで、今年度が目標最終年度となるこの指標を、来年度以降どのように運営していくのか、また、現場の仕事の平準化のために、具体的にどのような取り組みを行っていくのか、都の見解を伺い、私の一般質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 田村利光議員の一般質問にお答えいたします。
 都立高校における文化部活動の充実についてのお尋ねでございますが、文化部活動は生徒が創造性を発揮しながら協力して技能を高めることなどを通して、豊かな人間性を育むとともに、芸術文化の担い手を育てる意義のある活動でございます。
 これまで都教育委員会は、オリンピック・パラリンピック教育の一環として、日本の伝統文化を尊重する取り組みを推進しており、茶道部が外国人をもてなすなどの活動を行っている都立高校もございます。また、今年度から文化部推進校を指定し、都立高校の部活動の活性化を図っているところでございます。
 今後、部活動の成果を全都に広く周知したり、私立高校とともに活動する機会を設けたりするとともに、東京二〇二〇大会に向けた取り組みを通して培ったレガシーを全国高等学校総合文化祭東京大会につなげることにより、芸術文化の継承、発展に貢献できる人材を育成してまいります。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、土砂災害対策についてでございますが、土砂災害から都民の生命を守るには、ソフト、ハード両面から対策を着実に推進することが重要でございます。
 ソフト対策といたしましては、住民の避難行動につながる土砂災害警戒区域等の指定を前倒しいたしまして、平成三十一年度前半までに完了させるとともに、区域指定の前提となります基礎調査結果を、新たに公表いたします警戒区域内の住民や土地所有者へ周知してまいります。
 ハード対策といたしましては、多摩・島しょ地域で砂防事業や急傾斜地崩壊対策事業等を実施しておりまして、今年度は、奥多摩町の西川で砂防堰堤を、大島町の大金沢で流路工を整備するなど、三十三カ所で着実に進めますとともに、新たにあきる野市の五日市地区等で砂防基本計画の策定に着手いたします。
 引き続き、都民の安全・安心の確保に向けまして、ソフト、ハード両面から土砂災害対策を推進してまいります。
 次に、多摩川南岸道路及び秋川南岸道路についてでございますが、これらの道路は、地域の生活や産業経済を支えますとともに、災害時には交通機能のリダンダンシー等を確保し、集落の孤立化防止を図る重要な社会基盤でございます。
 このうち、多摩川南岸道路では、最後の未開通区間でございます約一・九キロメートルの丹三郎工区におきまして、早期事業化に向け、今年度、路線測量や地質調査等を進めてまいります。
 また、秋川南岸道路は、あきる野市荷田子地区におきまして、今年度、道路拡幅工事を実施しております。さらに、未整備区間の下元郷地区などにつきまして、早期事業化に向け、調査、設計を実施してまいります。
 今後とも、地域の防災力を高めまして、命綱ともなる西多摩山間地域の道路整備を全力で推進してまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 四点のご質問にお答えいたします。
 初めに、森林環境譲与税の効果的な活用についてでございますが、都や区市町村が地域の実情を踏まえ、森林整備や多摩産材の利用拡大に森林環境譲与税を有効に活用することは、東京の林業振興を図っていく上で重要でございます。
 これまで都は、区市町村に対し、譲与税の使途の説明とともに、税の活用にかかわる都の支援についてヒアリングを行ってまいりました。
 今後は、このヒアリングの結果も踏まえ、森林経営管理システムを運用する市町村への専門的な助言やノウハウの提供とともに、区市町村における多摩産材等の利用の拡大を図る支援の充実について検討を進めてまいります。
 さらに、林業事業体の多様な経営モデル創出への支援をあわせて検討するなど、譲与税を有効に活用した取り組みを進めるとともに、引き続き林道等の基盤整備に着実に取り組み、林業のさらなる振興を図ってまいります。
 次に、多摩川における魚道の維持改善についてでございますが、内水面漁業において貴重な資源でございますアユが上流まで遡上するためには、農業や水道用の取水堰等に設置されている魚道の管理を適切に行う必要がございます。
 このため、都は、国とともに連絡会を設置し、堰を管理する各機関と連携し、ガイドラインに基づく魚道の点検を行うとともに、魚道以外の場所に迷い込んだアユを遡上させるため、漁協が行う土のうを活用した簡易魚道の設置を支援しております。
 今後は、アユの遡上環境を一層向上させるため、専門家や地元自治体、漁協などを交えた新たな会議を立ち上げ、魚道機能回復のために行う堰上下流に堆積した土砂の撤去や新たな簡易魚道の開発など、堰、魚道機能の維持改善策を検討してまいります。これにより、内水面漁業の一層の振興を図ってまいります。
 次に、農業の担い手の確保、育成についてでございますが、都市農業に関する制度改正が進みます中、東京農業の持続的な発展のためには、この機を捉え、担い手の確保、育成と、その経営力の強化を図ることが喫緊の課題でございます。
 これまで都は、就農コンシェルジュによる就農相談や、指導農業士による体験研修などを実施してきております。
 今後は、新規就農者向けの実践的な技術研修や、就農初期の負担軽減に向けた施設や機械の導入支援が重要となってまいります。さらに、経営拡大を目指す意欲的な農業者に向け、ICTを活用した栽培技術やマーケティング手法の習得等、経営の高度化の後押しを含め、担い手の技術や経営のレベルに応じた育成施策について検討してまいります。
 こうした取り組みにより、新規就農者の確保や意欲ある農業者の育成を進め、東京農業の一層の振興につなげてまいります。
 最後に、ラグビーワールドカップを契機とした旅行者誘致についてでございますが、全国十二の会場で開催されるラグビーワールドカップ二〇一九は、試合日程に合わせ、長期間にわたる国内周遊が期待できる欧米豪地域からの観戦客が多く、こうした特性に応じた誘致活動を行う必要がございます。
 このため、都は、主に欧米豪地域での認知度を高めるため、海外のラグビー専門誌などの記者を招聘し、東京と他の開催都市を結ぶ観光ルートの取材記事の掲載を来月から実施いたします。また、東京での観戦後に楽しめる施設や飲食店等の情報に加え、全国の開催都市の観光スポット等をあわせて海外に発信するためのウエブサイトを開設いたします。
 さらに今後、開幕戦や決勝戦などが行われる近隣の自治体が連携し、海外の旅行博での観光PR等にも取り組んでまいります。これらにより、旅行者誘致に向けた情報発信を効果的に実施してまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ヘルプマークの普及についてでありますが、都は、平成三十年三月までに累計でポスター約三万八千枚を作成し、都営交通、「ゆりかもめ」、多摩モノレール、都立病院等と協力して、駅や公共施設等への掲示を行ってまいりました。
 平成二十八年度に実施した障害及び障害のある方への理解に関するアンケート調査におきまして、ヘルプマークを知ったきっかけとして、都のポスターなどの広告物という回答が約三五%となっており、ポスターを活用した普及啓発の効果は高いと考えております。
 今後は、駅や公共施設等を利用する外国人の増加等を踏まえ、関係局とも協力して、外国語によるポスターの作成について検討してまいります。
 次に、特別養護老人ホームの整備についてでありますが、都は、都有地の減額貸付や土地賃借料の負担軽減、整備率が低い地域への補助単価の加算などに加え、今年度からは、建築価格の高騰に対応する整備費補助の加算を地域密着型の場合にも拡大するなど、さまざまな独自の支援策により、特別養護老人ホームの整備を促進しているところでございます。
 また、都内全体で必要な定員を確保するため、地元の必要数を超えた整備に同意する区市町村が、福祉目的に活用する基金を造成できる交付金制度を設けております。さらに、既存施設に対しましては、入居者のプライバシーを保護するための多床室の改修や老朽化した施設の改築、大規模改修等の補助を行っております。
 今後も、区市町村のニーズを踏まえながら、特別養護老人ホームの整備を促進してまいります。
〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 建設工事の平準化についてでございますが、発注時期の平準化は、事業者の受注環境を安定させ、計画的かつ着実に事業を実施する上で重要でございます。
 このため、財務局では、平成二十八年三月より関係局と連携し、設計業務を含めた発注の前倒しや十二カ月未満の工事への債務負担行為の適用などを積極的に活用することなどによりまして、発注時期の平準化に取り組んでまいりました。
 目標の最終年度であります今年度は、目標達成に向け着実に取り組むとともに、関係各局による庁内連絡会を開催し、これまでの状況を分析した上で、平成三十一年度以降の取り組みにつきまして検討しているところでございます。
 平準化の取り組みは、建設業における長時間労働を是正するなどといった働き方改革にも資するものと考えておりまして、引き続き積極的に推進してまいります。