平成三十年東京都議会会議録第十三号

○議長(尾崎大介君) 九十三番米川大二郎君。
〔九十三番米川大二郎君登壇〕

○九十三番(米川大二郎君) まず初めに、介護について伺います。
 平成十二年に介護保険制度がスタートして十八年が経過しましたが、主に利用者側の立場からその利便性が議論され、改定が行われてきました。しかし、介護業界の人手不足が今、深刻な社会問題となっており、介護サービスの提供者側の立場からもさまざまな改善を議論する必要があります。
 介護業界によい人材を集め、育てていくためには、介護職員の処遇改善、生涯賃金の改善、介護職員が明るい人生設計を描けるキャリアパス制度の確立などがキーワードとなり、東京都もさまざまな支援策を実施し、事業者からも一定の評価を得ております。
 しかしながら、介護業界は依然として職員の定着率が低く、また、自社の教育訓練制度を持たない中小零細事業所の集まりのため、共通教育がしにくい環境であり、それがまた若手の定着率を下げていくという悪循環を生んでおります。
 また、介護現場でのハラスメントの問題は、介護業界の健全な発展に大きな障害となりつつあります。私自身、葛飾区内の事業者の方から話を聞く機会がありますが、ハラスメントを受けたヘルパーさんが、退職に追い込まれることもあるとのことです。
 だからこそ、さまざまな支援策で集まった人材を育て、仕事の意義ややりがいを説き、労働環境を整備し、介護職員の定着率を高めていくため、これからは単なる介護技術の伝達にとどまらない、人間力のある現場の中間管理職など、リーダーを育成していく必要があると考えております。
 そこで、二〇二五年の超高齢化社会を目前にして、介護業界全体で職員が働き続けやすい環境を整備するため、東京都が積極的に支援していく必要があると考えますが、知事の考えを伺います。
 次に、AIに対する読解力の向上のための取り組みについて伺います。
 八月二十三日に行われた東京都総合教育会議では、これからの時代に必要な読解力を育てるとして議論が行われました。AIは、記憶と計算を行うことはできるが、読解力はないことから、この能力を身につけることが必要と指摘されたことは、まさにそのとおりと思いました。
 そこで、ぜひ活用していただきたいのが、全ての学校に設置してある学校図書館です。学校図書館は、子供たちの言語能力、情報活用能力などの育成を支え、主体的、対話的で深い学びを効果的に進める基盤としての役割に期待が高まっています。
 私の地元葛飾区では、学校図書館を学校教育の中核の役割を果たせるよう機能の充実を図っており、昨年、学校図書館を活用した授業実践モデル校として、小学校、中学校一校ずつを指定しました。
 学校司書を週二十四時間配置したことで開館時間がふえ、児童の貸出冊数も増加しました。また、教員の図書資料を活用した授業実践も増加しております。
 そこで、AI時代に必要な読解力を育てることに効果のある、小中学校に設置してある学校図書館を活用することが必要と考えますが、都教育委員会の取り組みを伺います。
 また、教職員研修センターにポスターが掲示されている、公益財団法人図書館振興財団が実施している調べる学習コンクールですが、昨年八月時点で、都内でも十の区と二つの市で地域コンクールが実施されています。図書館を使った学習は、AI時代に必要な読解力を初め、知的好奇心、情報リテラシー、思考力、言語力が磨かれる学びです。
 そこで、都立高校でも図書館を使った調べ学習のコンクールなどを積極的に活用していくべきと考えますが、都教育委員会の考えを伺います。
 次に、都立高校の部活動について伺います。
 先月、会派で視察に伺った秋田県では、高校野球の県代表が全国大会でベストフォー入りを目指すという高い目標を掲げ、平成二十三年一月から秋田型高校野球育成・強化プロジェクトを行い、事業最終年となるこの夏、地元出身の選手だけの秋田県立金足農業高校が、目標としたベストフォーを超える決勝戦進出という快挙をなし遂げました。
 さて、高校生活を送る中で、部活動は大変重要な柱と私は考えております。私自身、都立高校の野球部で活動した二年三カ月間は、高校生活の全てともいえ、三十年以上たった今でも、当時の仲間との交流は続いております。
 東京都内の高校の生徒数の割合は、平成二十九年五月一日時点で、公立四三・三、私立五五・六%、単純に生徒数から考えまして、運動クラブの全国大会出場も都立高校が四割程度となってほしいところですが、実態は、例えば硬式の高校野球で都立高校の全国大会出場はこれまで四校、延べ五回、しかも成績は全て初戦敗退となっております。バスケ、バレー、サッカーなども私学優勢の状況です。
 現在、都教育委員会では、都立高校のスポーツ特別強化校事業を実施していますが、全国大会や関東大会への出場を目指すとしており、全国大会で活躍するためには、私立に進学しなければなりません。
 そこで、都立高校の部活動でも全国大会で活躍できるチームや選手の育成を目標として取り組むべきと考えますが、都教育委員会の考えを伺います。
 次に、東部低地帯における大規模水害対策について伺います。
 東部低地帯ではこれまで、大規模水害に見舞われるたび、放水路や護岸などを整備することで安全性の向上に努めてきました。私自身、東京都港湾局に勤務していた際、水門の改修などに携わりました。
 しかし、近年の異常気象や地球温暖化を考えると、江東五区大規模水害は、いつあってもおかしくない状況ではないでしょうか。そのようなとき、江東五区のような平地におけるあらゆる高台は、逃げおくれた方々の緊急避難や救助、救出、物資輸送、復旧の拠点として、住民の命を守る重要な場所になります。
 昭和二十二年九月のカスリーン台風では、葛飾区の新小岩駅から江戸川区の小岩駅間の高台となる総武線の線路上を千葉県の市川方面へ避難し、その際、江戸川にかかる鉄橋を一万人以上の方が渡ったとの記録もあります。
 都は、都立篠崎公園で水害時にも対応できるよう広場の高台化を図るとしていますが、例えば、京成高砂駅から江戸川駅間の鉄道立体化事業では、京成車庫を都営団地の建てかえで創出した用地へ移転させることも検討されています。移転となった際には、車庫を覆蓋化して高台を設けることも、大規模水害対策として有効と考えます。
 逃げるというソフト対策を支える、ハードとしてのあらゆる高台を整備していくことが必要ですが、どのように高台を確保していくかについての方針や整備計画を作成すべき時期であることを指摘させていただきます。
 一方、八月二十二日、江東五区広域避難推進協議会が公表した二百五十万人の避難計画では、犠牲者ゼロのため、江東五区の外へ自主的に早めの広域避難を行うとなっていますが、現段階で公的には避難先が確保できていないため、住民が日ごろから避難場所を検討するとしております。
 しかし、要配慮者である高齢者、障害者、乳幼児、その他特に配慮を要する方を含む全ての方が、自主的に避難先を確保することはハードルが高いことから、大規模水害時に対応できる広域避難場所を初めとしたさまざまな安全対策について、早期に検討を行っていく必要があると考えます。
 そこで、東部低地帯における大規模水害時に、江東五区に暮らす二百六十万人の命を守るためにどのように取り組んでいくか、都の考えを伺います。
 最後に、鉄道の連続立体交差事業について伺います。
 京成高砂駅から京成江戸川駅間の鉄道の立体化についてですが、江戸川区の京成小岩駅周辺と比べ、葛飾区の京成高砂駅周辺部分は、駅西側に河川があり、東側では京成本線、京成金町線、北総線と三つに分かれ、さらに、大規模な車庫の移転が必要なため、事業実施の困難さは都内でも有数な場所と考えております。
 現在、本区間の西側の京成四ツ木駅から京成青砥駅間の事業が進みつつあることから、いよいよだとの思いで、地域の機運は盛り上がりつつあります。しかし、連続立体交差事業は、駅前広場などのまちづくりと一体となって取り組むことが重要です。
 連続立体交差事業とあわせて行われる京成高砂駅周辺のまちづくりですが、現在、当初予定していた歩行者用の広場の位置を交通広場として検討しているため、今後は、さらなる検討の加速化が望まれます。
 今後、江戸川区部分のまちづくりの検討の速度に対し、葛飾区部分でのまちづくりを初めさまざまな検討に時間を要することで、事業実施そのものがおくれないよう、鉄道立体交差事業の事業主体である都と、駅前広場などのまちづくりを担う地元の区は、情報の共有を初め連携を強化すべきと考えております。
 そこで、京成高砂駅から京成江戸川駅間の鉄道立体化及び駅周辺のまちづくりなどについて、早期の事業実施に向けた都の取り組みについて伺い、私の一般質問を終わります。
 ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 米川大二郎議員の一般質問にお答えをいたします。
 介護職員が働き続けやすい環境の整備についてのご質問がございました。
 今後高齢化がますます進展をし、介護ニーズの増大が見込まれております。そういう中で介護サービスを担う人材の確保、定着、そして育成というのは大きな課題でございます。
 そのため、都といたしまして、経営の改善や人材の育成を担う管理者などを対象に研修を行うなど、介護事業者がそれぞれの職場に合ったキャリアパスを導入できるように支援をしているところでございます。
 また、今年度からですが、経営コンサルタントを活用いたしまして、事業所合同でのリーダー層、そして若手職員への研修や賃金、研修体系などの構築に関します個別のアドバイスを行うなど、比較的規模の小さな事業所が多い介護業界の人材育成を支援しているところでございます。
 介護現場で働く人たちが仕事にやりがい、そして誇りを持って働き続けられますように、職場の環境整備に取り組む事業者を今後とも積極的に支援してまいる所存でございます。
 残余のご質問につきましては、教育長、東京都技監、総務局次長からのご答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、読解力向上のための学校図書館の活用についてでございますが、さまざまな情報を理解して考えを形成し、その考えを表現するために必要となる読解力は、AI技術が進化した社会においても極めて重要な力でございます。
 これまで都教育委員会は、東京ベーシック・ドリルを開発し、全ての都内公立小中学校に配布することにより、指示語や文章の構成など、基礎的、基本的な内容の定着を図ってまいりました。また、小中学生を対象とした都独自の学力調査において、文章や図表を読み解く上での課題を把握し、授業改善の方策を各学校に示してきております。
 今後、児童生徒の読解力の向上を図るために、学校図書館を活用している実践事例等を収集し、区市町村教育委員会の担当者と情報を共有するなどして、各地区における取り組みを支援してまいります。
 次に、図書館を活用した調べ学習についてでございますが、調べ学習は、生徒がみずから学び、考え、よりよく問題を解決する活動を促す学習形態の一つであり、その実施に当たっては、図書館の積極的な活用が有効でございます。
 これまで都立高校では、総合的な学習の時間を初め、さまざまな授業において、生徒の自主的、自発的な調べ学習の場として図書館を活用するなどして、言語活動や探究活動の充実を図ってまいりました。
 今後、都教育委員会は、アクティブラーニング推進校を中心に、図書館等を活用した調べ学習の成果発表会の実施や、実践事例を発表するさまざまなコンクール等への参加を促すことにより、生徒同士が学び合ったり、切磋琢磨したりする機会を創出してまいります。
 最後に、全国大会で活躍できる高校生の育成についてでございますが、部活動は生徒の人格形成や健全育成において有益な教育活動であり、都立高校生の全国大会等での活躍は、部員自身の夢や目標であるとともに、都立高校全体の競技力向上と部活動振興に大きく寄与するものであります。
 このため、都教育委員会は、今年度から三年間、第二期スポーツ特別強化校として四十校、五十八の運動部を指定し、都立高校の運動部活動の強化を図っております。
 今後、指導者がすぐれた練習方法や生徒の自己肯定感などを育む指導方法等を共有することを目的として、新たに特別強化校実践報告会を開催いたします。この報告会では、トップレベルの指導者による技術講習を実施するなどして、顧問の総合的な指導力の向上を図り、都立高校生が全国大会で活躍できるよう支援してまいります。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 京成本線の京成高砂駅から江戸川駅間の鉄道立体化及び京成高砂駅周辺のまちづくりについてでございますが、連続立体交差事業は、数多くの踏切を同時に除却することで、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化や防災性の向上にも資する極めて効果の高い事業でございます。
 都は、現在、事業範囲や構造形式などの検討を進めるとともに、課題となっております京成高砂駅付近にある車両基地を、都営高砂団地の建てかえで創出された用地に移転する案について検討しております。
 連続立体交差事業の効果を高めるには、本事業とあわせまして、地元区による駅周辺のまちづくりを行うことが重要であり、都は、駅前広場等の検討に対しまして技術的支援を行っております。
 今後とも、地元区や関係機関と緊密に連携しながら、鉄道立体化に向けて積極的に取り組んでまいります。
〔総務局長代理次長榎本雅人君登壇〕

○総務局長代理次長(榎本雅人君) 東部低地帯における水害対策についてでございますが、この地域において大規模水害が発生した場合、行政区域を越えた避難が必要であることから、その避難先や移動手段があらかじめ確保されていることが重要でございます。
 都はこれまで、江東五区の協議会に参加し、広域避難計画の策定に協力してまいりました。
 本年六月に、江東五区を含む東部低地帯における広域避難の取り組みを進めるため、都は国と共同で、都内自治体、近隣県等で構成される検討会を設置し、避難場所や避難手段等の確保に関し、課題の抽出を行っております。
 今年度末までに、広域避難場所の選定等に関する基本的な条件や鉄道事業者等の役割など、課題を整理し、対応の方向性をまとめる予定でありまして、これに基づき、都民の広域避難に関する各関係者の取り組みを促進してまいります。

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