平成三十年東京都議会会議録第十二号

○議長(尾崎大介君) これより質問に入ります。
 百十六番増子ひろき君。
〔百十六番増子ひろき君登壇〕

○百十六番(増子ひろき君) 平成三十年第三回東京都議会定例会に当たり、都民ファーストの会東京都議団を代表して、小池知事並びに教育長、関係局長に質問します。
 質問に先立ち、平成三十年七月豪雨、平成三十年台風第二十一号、北海道胆振東部地震において亡くなられた方々に対し深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 平成の三十年間、日本はさまざまな災害に見舞われてきました。阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災を初め、近年では熊本地震、そして、ことしに入っても日本列島を多くの災害が襲っています。
 東京都においても、これまでの想定とは大きくかけ離れた事態が頻発しています。例えば、八月に世田谷区では一時間の雨量が百十ミリを超えるという記録的短時間大雨情報が発表されました。そして、連日四十度近い猛暑日も続き、青梅市では都内観測史上初の四十度超えが記録され、東京消防庁の救急出動も熱中症の影響で、七月二十三日には三千三百八十三件と過去最多を更新しました。この猛暑はもはや災害と位置づけられ、対策が進められるべきものであり、複数の災害が連続して、複合的に発生している近年の状況を念頭に置いて、改めて災害対策に取り組んでいかなければなりません。
 そして、いよいよ東京二〇二〇大会まで残り二年を切りました。平成の次の時代で迎える東京二〇二〇大会は、東京、日本の新しい時代の幕あけの象徴として語り継がれることと思います。
 それだけに、東京でオリンピック・パラリンピックを開催する意義を、都民ファーストの視点からしっかりと再定義し、東京二〇二〇大会がもたらす都民への利益、レガシー、大会後の東京のあるべき未来像を改めて磨き上げ、東京二〇二〇大会を都の課題解決の大きなきっかけとするための取り組みを加速していかなければなりません。
 前回の定例会では、都民ファーストの会東京都議団が積極的に推進してきた東京都受動喫煙防止条例が成立しました。これは、世界基準のスモークフリー都市東京の実現に向けた大きな前進であり、東京二〇二〇大会の大きなレガシーの一つです。
 今回の定例会では、私たちも力を入れてきた東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案、新しい就労推進策、児童虐待対策などが取り上げられています。
 私たちは、東京二〇二〇大会を、これまで光が当てられてこなかった都の課題を解決するきっかけとし、新しい東京の未来をつくるための取り組みを加速させてまいります。そして、都民一人一人の人が、その人らしく活躍できる都市東京の実現に向けて全力で取り組んでいくことを改めて申し上げ、以下、質問をいたします。
 初めに、防災事業の緊急総点検について伺います。
 これまでの想定を超える事態が頻発している中、過去の被害想定を見直すに当たり、想定外を極力なくす備えが求められています。
 都は、西日本豪雨において総勢七百八名の派遣を実施し、北海道地震においても百四十二名の派遣を実施しています。警視庁、東京消防庁も、これらの災害に対して迅速な支援を行っています。警視庁からは広域緊急援助隊を派遣し救出救助や行方不明者の捜索活動を、東京消防庁からは緊急消防援助隊を派遣し救助活動を行いました。今回の都職員の派遣、現地支援などから得られる教訓は、今後の東京の防災力向上に資するものと考えます。
 今般、たび重なる豪雨や地震災害等の教訓を踏まえた、防災事業の緊急総点検の結果が示されましたが、その意義と早期の補正予算の編成を含めた今後の取り組みについて、知事の見解を伺います。
 次に、非常時における電源の確保について伺います。
 台風二十一号の影響で、関西国際空港では電源設備が水没し、外国人旅行者を初め大きな影響が生じました。さらに、今般の北海道地震では、北海道全域が一時停電となる事態、ブラックアウトが生じ、改めて災害時の電力確保の重要性が認識されています。
 災害が発生したとき、都内の区市町村は、被害状況の把握、避難誘導、避難所の開設等、被災者の生命、身体及び財産を守る上で重要な役割を担っています。そのため、災害対策本部が設置される区市町村庁舎の非常用電源を確保することは極めて重要です。
 例えば、札幌市役所本庁舎では、今や住民の重要なライフラインの一つといえるスマートフォンの充電サービスを提供したとのことですが、それも庁舎に十分な電源が確保されていることが当然の前提です。
 都民ファーストの会東京都議団は、知事に提出した要望において、災害対策の指揮に当たる官庁などにおける非常用電源の整備を求めてきました。先日公表された緊急総点検の結果において、都立一時滞在施設における携帯端末バッテリー切れ対策の検討など、新たな停電対策が示されたことは、非常に意義のあることと考えます。
 私たちは、昨年十二月の第四回定例会の代表質問において、区市町村庁舎における非常用電源の整備状況の調査を東京都に求め、本年三月の予算特別委員会で、都の調査結果を答弁として得ました。東京都の調査の結果、都内六十二団体中二十五団体の区市町村の整備状況が、国の手引において、人命救助の観点から、外部からの供給なしで非常用電源を稼働可能とする措置が望ましいとされる七十二時間を下回っていることが判明しました。財政状況などさまざまな事情から、都内の約四割の自治体で七十二時間分の整備が行われていないのが現実です。
 大規模災害は東京都においていつ起こるかわかりません。都として、一刻も早い基礎自治体における非常用電源、その燃料の確保、保管施設の整備の推進を後押しすべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 災害医療体制における電源確保についても伺います。
 北海道地震においても、病院によって非常用自家発電の出力量や確保燃料の容量の違いから、患者の受け入れ能力にばらつきが出ており、被災者に不安が広がりました。とりわけ人工透析を受ける患者への影響も指摘されたように、医療機関の非常用電源は、患者の命に直結する、いわば命の電源であり、重点的に非常用電源の整備が求められます。
 都民ファーストの会東京都議団は、知事に提出した要望において、人命に直結する災害拠点病院などにおける非常用電源の整備を求めてきました。本年八月には、国が都道府県に対して、病院における非常用電源の確保及び点検状況の調査を依頼したと伺っていますが、都は、調査結果を待つことなく、先日公表された緊急総点検の結果において、災害拠点病院の非常用電源の浸水対策を強化していく方針を示したことを評価します。
 都内に八十二カ所存在する災害拠点病院については、その指定基準である自家発電機の保有及び三日分程度の燃料の確保に関して、都として状況を定期的に確認していると承知しています。また、都として全ての災害拠点連携病院が非常用電源を有している点を確認しているものと承知しています。その他の病院についても、非常用電源を確保しているかが国の調査により明らかになりますが、災害時に備えて非常用電源を確保していくことが重要と考えます。
 都は病院に対してどのような働きかけを行っていくのか伺います。
 仮に災害時に病院における電源の確保が十分にできない場合、他の病院への速やかな搬送など、病院間の連携を円滑に確保することが都民の命を守ることにつながります。東京都独自の取り組みとして、都の災害医療コーディネーターに加え、二次保健医療圏及び区市町村単位で災害医療コーディネーターが配置されており、災害時における医療救護活動の統括、調整の助言等を行うこととされています。
 今般の北海道地震の教訓を踏まえれば、一層、災害医療コーディネーターの役割が重要になると考えますが、都はどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、避難所運営について伺います。
 ことし三月、区市町村だけではなく、避難所運営に関する全ての方に参考になるよう、避難所管理運営の指針が改定され、女性やLGBTなどの方、災害時要配慮者への対応が記載されたほか、動物保護の視点からも管理運営者に求められる具体的な指針が明記されたことを評価します。
 避難所には、ろうあ者、中途失聴者、視覚障害者など情報の入手やコミュニケーションに関して配慮が必要な方々も避難してくることから、手話及び筆談や字幕、点字、音声ガイドなど多様な対応が求められるとともに、こうした方々が周囲の方に配慮の必要性を理解してもらい、適切な支援を受けられるよう、ヘルプマークや耳マーク等のマークを平時から普及啓発し、活用することなども重要と考えます。
 都は、避難所における聴覚や視覚に障害を持つ方々への対応についてどのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、避難所までの水供給ルートの耐震化について伺います。
 災害時に多くの都民が集まることになる避難所での水の確保は、都民の生命、身体を守るための最重要課題であり、都民ファーストの会は、避難所の配水管、給水管の耐震化を都議選の公約に掲げています。
 現在は、平成三十七年度完了に向けて、避難所への供給ルートの配水管の耐震継ぎ手化が進められていますが、避難所における水の確保の重要性に照らすと、迅速に進めなければなりません。そして、避難所の水道メーターまでの給水管についても耐震継ぎ手化を迅速に進めなければなりません。
 避難所への水の供給ルートの耐震継ぎ手化の取り組みについて、都の見解を伺います。
 次に、下水道管の耐震対策について伺います。
 避難所等のトイレ機能の確保のため、下水道管の耐震化も重要課題であり、これも私たちの公約です。
 都では、避難所等の下水道管の耐震化対策が進められる一方で、大都市特有の課題である帰宅困難者への対応として、帰宅困難者が一時的に待機できる施設等の指定を進めるなど、地域防災計画が見直されてきました。
 また、都では、本年八月に、従業員の一斉帰宅抑制に積極的に取り組んでいる企業等を対象とした東京都一斉帰宅抑制推進企業認定制度を創設するなど、発災時の一斉帰宅抑制を推進しています。
 このように、帰宅困難者に対する新たな取り組みが行われる中、一時滞在施設等に関連する下水道管の耐震対策も拡充させる必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、情報などのソフト対策の強化、普及啓発について伺います。
 電源の確保、避難所の整備に加えて、災害時に極めて重要なものは正確な情報とその発信です。
 都民ファーストの会東京都議団は、知事に提出した要望において、災害に関する情報伝達や外国人などに対する情報発信について配慮することを求めました。
 私たちの要望を受け、今回の緊急総点検においても、情報、ソフト面に関する新たな取り組みが多く示されました。都民が具体的に避難行動に移れるようにするためのタイムラインの普及拡大、東京アメッシュやハザードマップ等の防災情報のワンストップ化、外国人への情報発信の強化など、いずれも評価できる内容です。
 一方で、西日本豪雨で百八人の方が亡くなられた広島県では、約二百十七万人を対象に避難指示が出されていましたが、実際に避難したのはその一%に満たない約六千人だったとされています。正確な情報を発信しても、それを都民に活用してもらわなくては意味がないということは、こうした事例からも明らかです。
 情報の受け手である都民に対して実際に行動に移してもらうために、都民が、災害が自分ごとであるという意識を持ってもらえるような新たな普及啓発の工夫が求められていますが、都の見解を伺います。
 次に、情報提供、普及啓発の観点から、ハンドブック「東京くらし防災」について伺います。
 「東京くらし防災」は、読みやすさに加えて、女性やさまざまなニーズの視点が盛り込まれており、多くの都民に喜ばれています。
 一方で、集合住宅のケースの記載が十分でないという声も届いていることは、第二回定例会の総務委員会で指摘しており、先日の防災に関する都民シンポジウムでも多かった質問の一つが、マンションに住んでいる場合はどうすればいいかでした。
 このように、集合住宅特有の課題や防災、減災策があることから、マンション管理組合なども対象とし、これらの情報を正しく伝えるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、中小河川の洪水対策について伺います。
 西日本豪雨では、自治体が作成したハザードマップが公表されており、避難指示が出されたにもかかわらず、被害が拡大したと指摘されています。
 先日公表された緊急総点検において示されたとおり、新たな調節池の加速的な整備などのハード対策を一層推進するとともに、都民の迅速な避難行動につながるよう、河川の氾濫にかかわる水位の情報の提供など、ソフト対策の強化を図るべきと考えますが、見解を伺います。
 続いて、下水道水位の情報発信について伺います。
 西日本豪雨では、西日本を中心に各地で床上浸水等の家屋被害が発生しました。都においては、平成二十五年に千三百棟以上の甚大な水害被害が発生したことから、豪雨対策下水道緊急プランや、改定した東京都豪雨対策基本方針に基づいて対策を実施してきました。本年もゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な集中豪雨が頻発しており、八月二十七日の豪雨でも多数の浸水被害がありました。
 このような、これまでの想定を超えた豪雨に対応するためには、下水道施設整備といったハード対策を着実に進めるとともに、既に一部行っている下水道の水位情報をリアルタイムで関係自治体に提供する事業の拡大など、情報発信の強化等のソフト対策も組み合わせて実施することが重要と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、ダムの水害対策について伺います。
 災害時のダムの放流に関しては、事前に予測される被害想定情報がダムの管理者から国や地方自治体に流れ、それぞれが対応することが想定されていますが、西日本豪雨では、ダム放流に関する情報が適切に届かなかったことが指摘されています。
 都としては、こうした教訓をもとに、都の所有する小河内ダムの情報共有の体制を改めて確認する必要があります。小河内ダムは、水道専用ダムであり、治水機能を有していないとのことですが、大雨が降った場合には、下流への放流量を徐々にふやして対応するものと理解しており、ここでも情報共有のあり方が問題となります。
 小河内ダム放流時における国や下流の自治体への情報共有、連携を円滑に行うための取り組みについて、都の見解を伺います。
 次に、石油タンクの安全性の確保について伺います。
 現在、都内で消費されている電力の源は火力であり、その燃料はタンカーで東京湾から搬入されています。同じく首都圏の生活物資も東京湾を通じて流通しており、東京湾は、首都圏住民の生活に欠かせない重要な流通ルートになっています。
 このため、東京湾に大量の油が流出し、東京湾が封鎖される事態が発生した場合には、都民に重大な影響を与えることになります。石油タンクが海上に転がり出し、火の海になった気仙沼での教訓をもとに、石油コンビナート等の対策は万全のものでなければなりません。
 本定例会には、羽田空港に設置されている石油コンビナートが十万キロリットルを超えることから、新設の条例が提出されていますが、どのように安全性を確保していくのか、都の見解を伺います。
 次に、災害廃棄物について伺います。
 熊本地震に関する復旧、復興の取り組みに関する検証報告書によると、災害廃棄物の処理に当たり課題になったのが、県、市町村に災害廃棄物の処理に関して専門的な知識、経験を有する人材が不足した点です。そのため、仮置き場においてアスベストを含む建材が破損した袋に入れられるなど、飛散防止対策が徹底されずに放置された事例も報告されています。
 都は、平成二十九年六月に東京都災害廃棄物処理計画を策定し、都や区市町村の役割分担など、取り組むべき内容を明確にしましたが、熊本の教訓に学び、区市町村や民間事業者との認識の共有が重要です。
 発災直後の初動を中心に、区市町村や民間事業者とどのように連携して計画の具体化を図るのか、見解を伺います。
 次に、暑さ対策について伺います。
 この夏は気象庁の報道発表によると、夏の東日本の月平均気温は一九四六年の統計開始以来、過去最高でした。
 また、東京消防庁管内の七月と八月の緊急搬送件数の合計は、速報値で十五万三千九百七十件、うち熱中症の救急搬送件数は七千百十九件となり、緊急業務を開始した昭和十一年以来、過去最高の件数となりました。
 八月九日に東京消防庁が発表した七月十六日から八月五日までの猛暑における緊急搬送に関する分析によると、年代別では、七十五歳以上の高齢者の搬送件数が千四百八十八件、三三・六%と最も多く、入院が必要な中等症以上の割合は五八・七%と高い状況です。
 また、発生場所別で見ると、居住施設は高齢者が、会社、工場や交通施設では二十代から五十代の働き盛り世代が、学校、児童施設や運動施設では若年層の発生割合が高いと聞いております。
 今後は、多数の熱中症患者が発生した場合にも的確に対応できる搬送体制の確保が重要と考えますが、今夏の猛暑による救急搬送の状況と、東京消防庁では、今後、救急搬送体制をどのように充実強化していくのか伺います。
 続いて、学校施設における暑さ対策について伺います。
 学校施設の防災機能に関する実態調査によると、避難所に指定されている学校のうち、約九一%が地域の小学校とされており、東日本大震災後の学校に対する調査によれば、避難所として利用された施設は体育館が七〇・一%と最も多いとのことです。その設備に関する課題として、トイレに次いで冷暖房設備に不足があるということが明らかになっています。
 都民ファーストの会東京都議団は、知事及び教育長に提出した熱中症対策に関する緊急対策要望において、区市町村立の学校が設置するエアコンディショナーについて、特別教室への設置の補助を継続し、さらに体育館等必要な施設に補助を行うこと及び都立高体育館への冷房設置を求めました。
 先日公表された防災事業の緊急総点検において、夏季の避難所における熱中症予防等の観点から、冷房設備等への整備について区市町村を支援する方針が示されたことを評価します。
 今後は、体育館を含む学校施設における冷房設置を迅速に進めるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、監察医制度について伺います。
 最終的に熱中症を原因とする死亡者数は、消防庁の統計で示されている救急搬送による初診時における死亡者数の約十倍に及ぶといわれています。これまで、七月と八月の熱中症による死亡者数が最も多かった二〇一〇年の統計によれば、初診時の数字である消防庁の統計では百五十七人、最終的な数字である厚生労働省の統計では千四百二十二人となっています。
 東京都では、二十三区内は監察医務院による死体の検案及び解剖が行われて、熱中症による死亡の状況が速やかに判明し、熱中症予防対策に反映することができます。他方、多摩・島しょ地域は監察医務院の管轄外であるため、情報の集約に差が生じています。昨年の知事答弁でもありましたとおり、国に対しては、都の提案要求において、平成二十三年度から、監察医制度の拡充、十分な財源の確保について繰り返し要望していることは十分承知しています。
 引き続き国へ要望を行うとともに、今後、監察医制度の適用範囲を多摩地域にも拡大する必要があることについて、都の見解を伺います。
 次に、東京二〇二〇大会における暑さ対策について伺います。
 東京二〇二〇大会は、IOCの取り決めが七月十五日から八月三十一日までを開催すべき期間としていることを受け、オリンピックは七月二十四日から八月九日まで、パラリンピックは八月二十五日から九月六日までを開催期間としています。
 ところが、ことしの七月下旬から九月上旬までの東京は酷暑が続き、気象庁は、命にかかわる危険な暑さ、不要不急の外出や屋外活動は控えるようにと警告を発していました。二〇二〇年の夏がどうなるか予測できませんが、アスリートにとっても観客にとっても厳しい気候となることは想定外ではありません。
 この開催期間は、IOCの取り決めに基づいてのものと理解していますが、確認のため、改めて東京二〇二〇大会の開催時期決定の経緯について伺います。
 気象リスクを抑えるためには万全の対策を用意しなければなりませんが、気象リスクはゼロにはなりません。アスリートや観客はもとより、特に子供や高齢者、東京の暑さになれていない外国人を含めた対策が必要と考えますが、都の考えを伺います。
 次に、東京二〇二〇大会とその後の東京のあるべき姿について伺います。
 いよいよ残り二年を切った東京二〇二〇大会の成功に向け、準備をしっかりと進めていくことは当然ですが、単に大会運営の成功だけを考えるのではなく、東京でオリンピック・パラリンピックを開催することにより、大会後の東京に何を残すことができるのかを考える必要があります。大会後の東京のあるべき未来像を改めて磨き上げ、東京二〇二〇大会を都の課題解決の大きなきっかけとするための取り組みを加速していかなければなりません。
 まず、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案についてお伺いをいたします。
 ソチ・オリンピックでは、ロシアのLGBTへの対応により、アメリカやEUの首脳がオリンピックの開会式を欠席するという事件も起きており、性的マイノリティーへの差別は国際的にも大きな課題となっています。また、さまざまなスポーツの国際的な大会などでは、人種や国籍による差別的発言や行為が問題になっており、国際的に厳しい対応が求められています。
 こうしたことから、東京二〇二〇大会開催都市として、これまでの行政が定めた東京都人権施策推進指針も踏まえ、本条例を制定することで、性自認及び性的指向や、いわゆるヘイトスピーチといった新たな人権課題に光を与えることに加えて、あらゆる差別を許さない姿勢を改めて明確にすることになります。
 これまで以上に具体的で実効性のある取り組みが進むことが期待される一方、あらゆる差別とは具体的に何を指すのか、みずからが直面する人権課題についても対象になるのかと、不安に感じる方々がいるのも事実です。
 そこで、過去の指針に掲げられてきた人権課題、そして今回の条例で新たに光が当てられる人権課題を含め、あらゆる差別の解消を図ることで、オリンピック憲章の人権尊重理念の浸透を目指すという本条例の制定とその後の取り組みに向けた知事の見解を伺います。
 次に、ソーシャルファームについて伺います。
 東京二〇二〇大会、とりわけ世界で初めて二回目を開催することになるパラリンピックを通じて、都民一人一人の人がその人らしく活躍できる都市東京を実現する必要があります。
 第二回定例会において、就労の際に不利な立場にある人が働くことを目的とした社会的企業、いわゆるソーシャルファームについてお伺いをしました。今後さらなる少子高齢化と生産年齢人口の減少が予想される日本にあっては、これまで支えられる側と考えられてきた方々も社会の担い手となり、支え合う社会へと転換することが求められています。
 ソーシャルファームの考え方は、これまで障害者を中心に捉えられてきた就労困難者を、障害者に限らず、ひきこもりや刑余者など、就労に悩みを抱えるさまざまな方を対象とし、その後押しを行い、社会の担い手になっていただくというものです。先進的取り組みをしている欧州の国では、いわゆるソーシャルファーム法の整備を行い、就労困難者を積極的に採用しながら利益を追求する企業の後押しを行ってきた事例があります。
 一方で、国においてソーシャルファーム法がない日本においては、広く就労困難者をどのように規定するかなど、都としても検討すべき課題が多岐にわたると捉えています。
 そこで、さまざまな既存の法令、政策がある中、より広い視点で総合的に就労を進めることが重要であると考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、ひきこもり支援について伺います。
 平成十六年の厚生労働科学研究において、長期間にわたって自宅にひきこもり、社会参加しない状態が持続しているひきこもりが、約三十二万世帯存在するとの調査結果が明らかにされました。
 当初は、子供や若年の問題として対策が講じられてきましたが、その後そのまま年齢が持ち上がり、現在では四十代、五十代の人がふえてきており、長期化、高齢化が問題になっています。
 こうした層に対する支援を、福祉保健局を中心とし、今後どのように進めていくのか、知事の見解を伺います。
 次に、外国人労働者の新在留資格創設について伺います。
 東京二〇二〇大会を契機に、世界中からすぐれた人材を東京都に引き寄せる取り組みを加速させていく必要があります。
 日本で働く外国人は、専門的、技術的分野の約二十四万人や留学生のアルバイト約三十万人、技能実習生約二十六万人など、過去最高の百二十七万九千人となり、都内では三十九万四千人となっています。
 人手不足で苦しむ企業にとっては待ったなしの状況になっていますが、国民的議論と合意形成が必要であり、新たな外国人労働者が増加することを見込んだ対策や法整備に取り組むことが求められています。
 一方で、東京での生活を始めた外国人が、生活習慣を知らずに近隣住民とのトラブルになることや、さまざまな認識不足のため生活面で支障を来す例があります。東京で暮らす外国人労働者や留学生に対して、都として支援をしていくことは、誰もが活躍できる都市ダイバーシティーの観点からも大変重要です。
 生活者である在住外国人に対する支援策に都が積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 また、十分な日本語能力を備えないまま雇用される外国人労働者も多くいるため、企業にとっても、外国人労働者とのコミュニケーションをとりやすくするための日本語能力の向上支援や働く上でのさまざまなサポート支援が必要となっています。
 国内の各種産業に必要不可欠となってきている外国人労働者の雇用、定着、労働環境の整備などに都としても取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、首都高速道路の日本橋区間の地下化について伺います。
 本年七月、首都高日本橋地下化検討会において、概算事業費及び事業スキームが議論、公表されました。東京二〇二〇大会後の着工で、事業費の総額は約三千二百億円ですが、都の負担額は中央区と合わせて約四百億円に抑えられており、評価したいと思います。
 一九六四年の東京オリンピックを契機に建設された首都高速道路は、現在では橋梁部の腐食やひび割れが発生するなど老朽化が進み、平成二十六年に大規模更新計画が策定されるなど、予測される大地震に備えた安全面での対策が急務となっています。
 また、一六〇三年に建造され、五街道の拠点となった日本橋の景観と水辺の美しさを取り戻すことは、江戸からの連続性という、未来の東京都の魅力の一つにもなります。東京二〇二〇大会を契機に首都高日本橋の地下化に取り組むことは、単に老朽化対策にとどまらず、東京二〇二〇大会後の東京の姿の一つとして、歴史あふれる美しい水の都東京を世界に示すことにつながるものです。
 技術的な難しさやそれに伴う費用の膨張を懸念する声もあり、そのような懸念にはしっかりと対応しつつも、首都高日本橋の地下化は、このような東京の未来像を踏まえた今後のまちづくりと連携して進められるべきと考えますが、見解を伺います。
 さて、小池知事の就任から二年余りが経過し、任期折り返し地点を迎えました。知事は、女性初の都知事として就任以来、セーフシティー、ダイバーシティー、スマートシティーを掲げ、多くの改革に取り組んできました。
 改革の取り組みの一つとして、二〇二〇年に向けた実行プランでは、事業実施状況レビュー結果として、各種の政策目標について達成に向けた進捗状況が毎年公表されています。
 そして、私たち都民ファーストの会も、都議選で掲げた公約の進捗状況を整理し、ウエブサイトで公表しています。選挙時に掲げた公約に対し、しっかりと説明責任を果たす姿勢こそ、都民、そして国民の根深い政治不信を解消する道であると我々は考えています。
 そこで、まずダイバーシティー政策について幾つか伺います。
 東京二〇二〇大会をきっかけに、都民一人一人の人がその人らしく活躍できる都市東京を実現するためにも、ダイバーシティー政策の一層の推進が必要です。
 知事は、就任以来、待機児童対策を最重要課題と位置づけ取り組んできました。舛添都政における保育関連予算を見ると、平成二十八年度総額で約九百八十億円でしたが、小池都政では平成二十九年度で約千三百八十億円、平成三十年度で約千五百八十億円と、毎年度増額されており、舛添都政と比較すると約六百億円も増額し取り組んでいます。
 これまでの主な取り組みとして、保育所の整備促進、人材の確保、定着支援、利用者支援の充実を図ってきました。特に整備促進では、都有地活用促進や賃貸料補助の創設、固定資産税の五年間全額減免は大きな措置として評価されています。
 これらの大幅な予算拡大措置などによって、待機児童数が平成三十年四月時点で三千百七十二人減少したと発表されています。これだけの数の待機児童数が減少したことは大きな成果と受けとめますが、待機児童はいまだ五千人以上存在しており、今後も待機児童解消に向け、施策をさらに加速していく必要があります。
 知事任期の折り返しとして、これまでの待機児童対策の取り組み結果を踏まえた今後の取り組みについて知事に伺います。
 なお、来年十月より、国は幼児教育無償化を開始することを掲げていることから、来年度予算編成に向けて、今後影響のあるものを整理する必要もあります。
 さらに、これまでの取り組みとして、保育従事職員の宿舎借り上げ支援事業やキャリアアップ補助については、特に事業者や区市町村からも継続支援の声が上がっていますので、引き続き継続支援に対しても強く要望をいたしておきます。
 次に、東京の未来を担う子供たちを守るという観点から、児童虐待について伺います。
 日本では、年間八十人の子供が虐待によって亡くなっています。目黒少女虐待死事件などを受けて、第二回定例会における我々の代表質問において、児童虐待対策に関して東京都独自の条例づくりを進めるべきと提案させていただきました。
 それを受けて、知事から条例づくりを進めるとの表明があり、児童福祉審議会専門部会が立ち上がりました。その後、九月十四日に児童相談体制の強化に向けた緊急対策と東京都子供への虐待の防止等に関する条例の基本的な考え方が発表されました。
 都には独自の子供家庭支援センターなどが既にあることから、他の自治体の先進事例を参考に、都独自の条例の制定が期待されています。虐待をする親は、困っているにもかかわらず人を頼るのが苦手で、地域から孤立していることが多いといわれており、その結果、虐待を受けている子の存在が見えづらいとの指摘があります。よって、条例の考え方の中に、未然防止と早期発見、早期対応の視点が入っていることを評価いたします。
 今回示された東京都子供への虐待の防止等に関する条例の基本的な考え方のどこに重要な視点を置き、児童虐待防止対策を進めるのか、知事に伺います。
 次に、緊急対策について伺います。
 緊急対策では、児童相談所の体制強化として、年内に児童福祉司と児童心理司を任期つき職員として新たに十九人確保することが明らかにされました。都は今年度既に三十六人増員しており、研修等を勘案するとこれ以上の新人の受け入れは厳しい状況だと伺っています。
 新規の十九人は、経験者などスキルのある人材を活用すべきだと考えますが、どのような人材を募集するのか伺います。
 そして、国の総合対策では、児童相談所の専門性強化、業務、役割分担、業務のあり方の見直しをすることや常勤弁護士の必要性もうたわれていますので、これらの視点も含めた体制強化を進めていただくことを要望いたします。
 緊急対策で、都は独自の安全確認行動指針の策定を行うことも明らかにしました。経験三年未満の児童福祉司が半数を超え、急激な職員増員を続けている現状では、判断ミス等が起きることも想定され、通告後四十八時間以内に安全確認ができない場合、緊急安全会議を開催し、原則立入調査等を実施すると明確にしたことは高く評価します。この指針により、これまで以上に確実に子供の安全を確認して、支援に結びつけていただくよう要望をいたします。
 都独自の安全確認行動指針に基づく立入調査は、具体的にはどのような体制で行うのか伺います。
 このほか、警視庁との情報共有範囲を拡大し、リスクが高いと考えられるケースを全て共有することになりました。これにより、虐待通報約一万三千件のうち、昨年ベースで約五百件だった児童相談所から警視庁への情報提供件数が約三千件になることを評価いたします。
 今後も、全庁一丸で関係各所との連携をしっかり進めていただくよう要望します。
 また、早期発見の取り組みとしては、子供や保護者がみずから相談しやすい環境を整備することも大切です。私たちが第二回定例会の代表質問で提案したLINE相談窓口が、十一月にトライアル実施されます。
 質を担保できる体制の確保など、トライアル実施の検証を速やかに行い、本格運用につなげていただくよう要望します。
 次に、性教育について伺います。
 誰もがみずから望む将来を選択していくことができるダイバーシティー都市東京を実現するためには、昨今の情報化社会にさらされる児童生徒たちに正しく適切な命の教育を行っていくことが必要です。
 都民ファーストの会東京都議団では、先日、秋田県教育委員会に性教育についてヒアリングを行い、実際に児童生徒への指導内容を作成した秋田県医師会では、講座のベースとなる資料を拝見しました。指導内容は、妊娠中絶のみならず、性感染症や性的マイノリティーなど非常に多岐にわたっており、指導を受けた学校や生徒からは、おおむね講座を実施してよかったという声が上がっているとのことでした。
 現在、東京都では、性教育のガイドラインの手引の改定を行っています。第二回定例会の我々の代表質問を受けて都が実施し、先般公表された都内公立中学校を対象にした性教育実施状況の調査結果では、約九割が、性に関する授業は医師等の外部講師を活用することが効果的であると回答しており、これはまさに第二回定例会の我々の代表質問で、医師、産婦人科医等の専門家の活用が必要と指摘した点と合致するものです。今後、学習指導要領を超える場合の保護者理解を得る方法などの諸課題に関する知見を深める必要があります。
 こうした調査の結果を踏まえ、実際にどのように性教育を推進していくのか都の見解を伺います。
 次に、悪質クレームについて伺います。
 ダイバーシティーの実現のためには、いかなる種類のハラスメントも許されるものではありません。都民ファーストの会東京都議団では、本年八月に、医科大学の女子減点問題を受けて、女性医師が働きやすい社会環境の推進などについて知事に要望書を提出しました。
 前回の代表質問でも言及したとおり、東京都男女平等参画基本条例第十四条では、職場だけに限られない広範なセクハラ禁止条項が設けられています。この禁止条項の趣旨に沿った、あらゆる場におけるセクハラを決して許さないための広範かつ実効的な取り組みを改めて要望しておきます。
 ハラスメントの新しい領域といえる顧客や取引先からの著しい迷惑行為、クレーマーハラスメント、セクシュアルハラスメントなどは、流通業界、介護業界、旅行業界などでサービス業に従事する従業員のメンタルヘルスへの影響、離職にもつながっており、とりわけ中小の事業者には影響が大きいにもかかわらず、いまだ手つかずの状態です。
 この解決のためには、社会全体の機運醸成を図ることが必要であり、関係者の協力のもとで、さらなる実態把握を行うことの重要性が指摘されています。また、業種や職種ごとに個別性が高いことも指摘されており、対応事例の積み重ねが必要です。
 社会通念上許される範囲を超えた消費者から中小事業者への悪質クレームについて、知事の認識をお伺いします。
 さらに、都は、今後適切な対応を行うため、実態調査を行うとともに対応策を講ずべきと考えますが、今後の対応について都の見解を伺います。
 次に、国有財産である旧こどもの城について伺います。
 先日、小池知事が都立広尾病院の移転計画を白紙撤回されて以降、この青山通りに面した都心の一等地という立地を生かした今後の活用方針が注目されてきました。東京二〇二〇大会を契機に、男女を問わず、子供から大人、高齢者に至るまで、誰もが活躍できるダイバーシティー東京を実現することは、私たちの大きな政策目標の一つです。
 その観点から、当該用地を積極的に活用すべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、スマートシティー東京の実現に向けた取り組みについて伺います。
 まずは、知事のロンドン、パリ出張について伺います。
 八月下旬から九月上旬まで、都の事業の一環として、自動運転タクシーの公道での営業走行が世界で初めて行われ、知事も試乗されました。九十六名の枠に対し、応募したのは約千五百名と大変注目度は高く、運転手の人手不足とともに、深刻化する高齢者の移動手段の確保難といった課題を、東京が先端的テクノロジーで解決していく姿を世界に発信できたといえます。
 そして、十月から十一月にかけては、知事のロンドン、パリ出張が予定されています。ロンドンは二〇一二年大会、パリは二〇二四年大会の開催都市であり、大会の成功、そして大会を契機とした開催都市の魅力向上に関して、互いにその知見を共有することは大変意義があることと考えます。
 ロンドンは国際金融都市としても名高く、国際金融都市東京構想を推進する上で連携を強化すべきです。また、姉妹友好都市であるパリとの間では、パリ東京文化タンデムとして、パリと東京それぞれで展覧会や演劇など多彩な文化イベントを実施し、相互に文化交流を行い、その魅力を世界に発信する重要な事業も行われます。
 今後、東京二〇二〇大会を契機に、都市として大きく飛躍してプレゼンスを高めるために、今回のロンドン、パリ出張をどのように生かしていくのか伺います。
 パリ、ロンドンで注目されているのが持続可能な社会づくりです。持続可能な東京都を次の世代に引き継ぐことは今を生きる都民の責任であり、長期的視点で見れば、猛暑という新しい災害への対応としても、地球温暖化対策など、環境施策の一層の推進は欠かすことができません。
 本定例会における知事の所信表明においては、必要性の低い使い捨てプラスチックの大幅削減に向けて、条例による対策の推進も視野に検討を進めることが表明されました。都民ファーストの会東京都議団は、ことし七月、知事に対して、プラスチックの代替促進対策等に関して要望書を提出しており、我々の要望が受け入れられたものと評価をいたしております。
 今般、東京都が開始したチームもったいないは、都庁食堂における規格外野菜の活用など、意欲的な取り組みです。これは、私たちが本年六月に第二回定例会の代表質問等で求めてきたエシカル都市東京の実現に資するものと考えます。東京二〇二〇大会を契機に、東京都が環境政策で世界をリードする都市に飛躍していく必要があります。
 都の取り組みを環境意識が高い一部の人だけではなく、幅広く都民に定着させるためには、このようなチームもったいないなどの東京都の取り組みについて、より一層多くの人を巻き込む仕掛けが効果的と考えますが、都の見解を伺います。
 次に、電気自動車の普及促進について伺います。
 現在東京都では、CO2を排出しない電気自動車等の普及促進のため、中小企業を対象に購入費の一部の補助を実施していますが、ゼロエミッション東京を実現するためには、その一層の拡大強化が必要です。
 先日、知事が補助金の拡大、増額を検討する方針を表明したとの一部報道がありましたが、改めて今後の取り組みについて知事にお伺いをいたします。
 さて、ことしの後半は、今後の東京都にとって大きな意味を持つ行事が続きます。まずは、今後の上下水道事業へのIWA世界会議の成果の活用について質問します。
 九月十六日から二十一日の間、日本で初開催となる国際水協会、IWA世界会議・展示会が東京で開催されました。水分野では世界最大規模である今回の会議では、レジリエンスとサスティーナビリティーが主要テーマの一つです。SDGsの視点からも、世界に誇る東京の上下水道事業の技術力で、世界の水環境の向上に対して積極的に貢献すべきです。
 会議開催により、新たな知見や技術の共有、産業力の強化など、さまざまな成果を創出したと推察します。会議開催による成果を一時的なものとせず、将来へ継承していくことが重要です。IWA世界会議・展示会の開催により得られた成果を今後の上下水道事業にどのようにつなげていくのか、知事の見解を伺います。
 次に、いよいよ本年十月十一日に開場する豊洲市場について伺います。
 小池知事の開場延期表明から約二年が経過しました。この間に盛り土がなかったことが判明したほか、未完結だったモニタリング調査では、環境基準を上回る結果が出るなど、安心を揺るがす事態が発生しましたが、約三十五億円の費用を投じて追加対策工事を実施できたことは、開場延期のたまものであり、都民と事業者の安心に大いに寄与できたものと考えます。
 一方で、開場を目前に控えた開場記念式典の直前に、豊洲市場内で地盤沈下に伴うひび割れが明らかになりました。建築技術的には想定内であっても、ひび割れの発見とともに早期の対応をとり、市場関係者に不安を与えない努力が不可欠であったと認識しています。今後、このようなことがないよう強く求めておきます。
 加えて、再三、都民ファーストの会東京都議団として求めてきたのは、市場関係者に寄り添った対応による市場行政への信頼回復と円滑な移転です。
 私たちは、築地市場跡地の場外市場業者向けの駐車場拡充、豊洲への交通アクセス整備、築地から豊洲への事前引っ越しなど、多くの要望を行い、多くは前進しましたが、市場内の運用ルールの改善、また高額と指摘されている買い出し人の駐車場料金など、新たな課題も浮上してきています。
 衛生的で機能的な新市場となるように、一層の取り組みを都に求めます。都の見解を伺います。
 築地市場は開場から約八十年、昭和六十一年に現在地での再整備の判断がなされてから約三十年がたち、ここにようやく新市場が誕生することになりました。長い都政の歴史の中でもこれほどの時間を要した政策はなく、その調整の困難さを物語っています。
 その長い道のりは、東京の食の台所を預かる市場への日本人の関心の高さのあらわれでもあったと思います。小池知事が、安全の上に安心を追求して、妥協を許さずに徹底した調査と検証と対策を積み上げて、ついに開場への道筋をつけたことは、日本の食の安全・安心に大いに貢献するものと受けとめています。
 その上で、豊洲市場は、都民に生鮮食料品を安定的に供給するという行政目的を果たすためにも、都が設置する中央卸売市場であり、引き続き、その役割を果たすとともに、改正された卸売市場法、食品流通構造改革促進法に適切に対応し、発展のための改革を進めていかなければなりません。
 今後の豊洲市場をどのように発展させていくのか、知事の抱負を伺います。
 次に、ラグビーテストマッチについて伺います。
 来年九月二十日のラグビーワールドカップ日本大会の開幕まで、いよいよ一年を切りました。
 本年十月下旬から、来年の開催に向けたテストマッチが開催されます。機材や運営面での確認が行われるとともに、ファンにとっては世界のスタープレーヤーのプレーを目にすることができる貴重な機会です。
 昨日公表されたとおり、テストマッチのファンゾーンには、試合だけにとどまらず、ラグビーそれ自体の魅力を伝えていくためのさまざまな仕掛けが行われていると承知しています。
 例えば、ルールを知らない人でも理解できるような解説の実施や、女性を含め幅広い方に興味を持ってもらえるような会場づくり、ラグビー体験の提供など、いずれも都民ファーストの会東京都議団としても提言してきた取り組みです。これらの十一月のファンゾーンの仕掛けを今後のラグビーの普及、そしてラグビーワールドカップの機運醸成につなげていくべきと考えます。
 そこで、十一月のファンゾーンの具体的な内容と今後の取り組みについて、都の見解を伺います。
 次に、十一月に東京都で開催される全国育樹祭について伺います。
 東京の森林の多くは、木材として利用可能な時期を迎えていますが、木材価格の低迷や林業従事者の不足等により、伐採や更新が低迷しています。木材の需要を創出し、健全な森林循環を促しながら、長期的な視点で森づくりを進めることは、近年増加する風水害による土砂災害予防や水源林の保全の観点からも有効です。
 知事は、第二回定例会における所信表明で、五十年、百年先を見据えた東京の森林の将来像について言及しました。
 また、先日公表された防災事業の緊急総点検において、法令不適合のブロック塀の代替に多摩産材等の国産木材を活用する方針も示されました。保育園などで多摩産材を使ったおもちゃや備品については補助を出すなど、都の支援は手厚くなってきています。
 一方で、保育園の新設の際に建材として使用される多摩産材への補助は見送られていることから、本格的な消費促進に課題を残しています。
 ことしの十一月に予定されている全国育樹祭の開催や、来年から始まる森林環境譲与税の交付などを踏まえ、長期的な視点での東京の森林づくりについて、知事の所見を伺います。
 次に、東京の貴重な資源である水の利用のあり方、都の工業用水道について伺います。
 工業用水道事業のあり方は、平成十六年度包括外部監査において、廃止を含めた抜本的経営改革について具体的な検討を進める必要性が指摘されて以降、都政の長年の懸案事項でした。工業用水道事業のあり方に関する有識者委員会は、平成二十六年十二月に設置され、今般、報告書が提出されました。
 報告書においては、施設設備の老朽化が進行し、大規模更新時期の到来が間近に迫る一方、ユーザー件数や使用水量は長期にわたり減少傾向にあり、今後も需要の増加が見通せないことから、廃止すべきとの見解が示されました。
 その内容を受け、ことしの第二回定例会において、都は工業用水道事業の廃止に向けた方向性を示すとともに、料金差額補填などの支援策を検討すると表明しました。その後、多様な意見に耳を傾けるとともに、速やかに支援策をまとめられたことを評価します。
 そこで、知事に、工業用水道事業の廃止に際しての利用者支援の基本的な考え方を伺います。
 あわせて、料金差額補填などの支援策を検討するとの表明がありました。この事業が行政施策として開始されてきた経緯を踏まえると、工業用水道の現在のユーザーと、従来からの上水道のユーザーとの公平性を勘案しながら、工業用水道から上水道への切りかえ負担に対する十分な支援策を講じることは不可欠です。
 都民ファーストの会東京都議団は、工業用水道事業廃止時に現ユーザーの負担を軽減するために配慮すべき事項について、切りかえ期間を含めて十年程度の長期間にわたる料金差額補填の支援を行い、企業経営の安定のために寄与することなど、本年八月二十日に四項目、同じく九月四日に追加二項目を、それぞれ要望事項として知事に提出しました。
 対象となる事業者に対しては、個別訪問の上、ヒアリングを実施したと承知していますが、その結果がどのようなものであったか、また、その内容を踏まえた据置期間及び激変緩和期間の設定内容など、支援策の概要について伺います。
 最後に、平成三十一年度税制改正について伺います。
 世界の人、物、金が魅力的な都市を求めて瞬時に移動する時代の中で、首都東京は世界のどの都市よりも、創造力を有する人材を引き寄せ、新産業の創出拠点となる使命があります。すぐれた人材を引き寄せるためには、交通アクセスやまちの景観、治安やオフィス環境に加えて、感性を磨ける文化性の高い都市かどうかも、パリやロンドンの例で明らかなとおり、大事な要素です。
 これまでも東京都は、日本の玄関口として海外から人を引き寄せ、産業、観光等のさまざまな分野で、多くの経済波及効果を東京都以外にも生み出してきました。東京都の戦略的な投資が減少し、都市としての活力が低下すれば、このような経済波及効果を伴う海外からの需要も見込むすべもありません。
 さらに、少子高齢化社会の中で都市の活力を維持していくためには、戦略的な投資として、一層の女性活躍を促すための保育等への予算をふやす必要があり、さらに、東京の未来を担う人材の育成のために、教育への予算をふやしていく必要があります。働きたい高齢者の方々が、経済の担い手としてご活躍いただけるよう支援する予算も必要です。
 このように、世界中の人々を引きつけて、世界の都市間競争に勝利し、国内では超高齢社会の影を吹き飛ばす都市東京を創造するためには、日本全体にとっての戦略的投資として、都には多額の財政需要が見込まれています。私たちは、国による都税の収奪を日本全体の発展のために許すわけにはいきません。
 地方創生とは、それぞれの地域が独自に魅力を磨き上げながらも、連携を深め、互いに高め合うという未来志向の関係創出から生まれるものです。折しも国の方では、ふるさと納税のあり方を見直すことが表明されました。昨年の地方消費税の見直しの件と同じく、国は地方創生に関する本質的な議論を行うことなく、自治体の自助努力を無に帰すような動きを繰り返しているのではないでしょうか。東京都としては、地方自治体の自助努力が適切に反映されるよう、地方税体系の根本的な見直しを求めるべきと考えます。
 本定例会において、都議会でも、地方法人課税の見直しに関する意見書を可決しました。東京と日本の成長を考える検討会での議論を踏まえ、小池知事みずからが先頭に立ち、都民、国、そして地方の理解を得る活動を行うべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 以上、東京都の防災施策全般、東京二〇二〇大会後の東京の未来像、そして、任期折り返しを迎えた小池知事のこれまでの取り組みについて伺ってきました。
 冒頭に述べましたとおり、都民ファーストの会東京都議団は、東京二〇二〇大会を、これまで光が当てられてこなかった都の課題を解決するきっかけとし、都民一人一人の人がその人らしく活躍できる都市東京の実現に向けて全力で取り組んでいくことを改めて申し上げ、代表質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 増子ひろき議員の代表質問にお答えをいたします。
 まず、防災事業の緊急総点検の意義と今後の取り組みについてのご質問がございました。
 本年は七月西日本での豪雨、そして今月は北海道胆振東部での地震など、大きな災害が立て続けに我が国を襲っております。
 このたび、これらの災害に対しまして、自衛隊、警視庁、東京消防庁などの関係機関が相互に連携をして、救命救助活動を行ったところでございます。
 また、避難所の運営などを支援するために、都内の自治体や都の職員を派遣いたしました。現地で懸命に活動されたこれらの方々に対し、心から感謝を申し上げたく存じます。
 また、都におきましても同様の災害がいつ起きてもおかしくない、そのことを改めて肝に銘じまして、防災対策に取り組んでいくこと、極めて重要でございます。
 これまでも都といたしまして、地域防災計画やセーフシティ東京防災プランなどに基づいて、ハード、ソフト両面での防災対策を着実に進めてまいりましたが、先ほど申し上げました風水害や地震などを踏まえまして、約二百の項目について緊急総点検を実施したところでございます。
 その結果、年度内に実施、または来年度予算編成に向けて事業化を図っていくというものとして、タイムラインの普及拡大、調節池の加速的な整備など、十二の分野にわたります取り組みを公表いたしました。
 引き続きまして、都民の生命、財産を守るために、不断の点検、そして見直しを行うとともに、一連の被災地支援を通じまして図らずも得た貴重な教訓をしっかりと分析をして、防災事業のスピードアップ、そしてグレードアップを進めるとともに、緊急性の高いものにつきましては補正予算の編成も視野に入れて、東京を高度防災都市へと昇華させていく所存でございます。
 次に、区市町村の庁舎の非常用電源についてのご質問がございました。大変時宜を得たご提案だと感じております。
 首都直下地震を初めとする大規模災害が発生した場合、区市町村は住民に直接対応する自治体といたしまして、医療救護所の設置や避難所の開設など、都民の生命や身体にかかわります応急対策を直ちに開始することとなります。
 また、都が医療資源や物資などを効果的に被災現場に供給する、そのためには地元の状況を詳しく把握している区市町村からの情報が欠かせません。まさに、都と区市町村が一体となって、都民の安全と安心を守らなければなりません。
 このために、区市町村庁舎の非常用電源の確保は極めて重要な課題でございます。大規模災害が、忘れる暇を与えることなく私たちを襲う今日であります。仮に、いわゆるブラックアウトが発生しても、区市町村の庁舎の電源は途絶えないようにしなければなりません。
 今後、都といたしまして、この非常用発電機の整備など、区市町村ごとに異なる状況を把握いたしまして、少なくとも七十二時間の非常用電源を確保するための方策について、区市町村と協議を進めまして、そのニーズを踏まえた上で、防災街づくり基金の活用や補正予算の編成など、予算上の措置を含めまして、必要な支援を行ってまいる所存でございます。
 オリンピック憲章にうたわれております人権尊重の理念の実現を目指す条例案についてのご質問をいただきました。
 多様性が尊重され、温かく優しさにあふれ、誰もがあすに夢を持って活躍できる、そんな東京を実現するためには、全ての人の人権が尊重されなければならないと考えます。
 そのためにも、東京二〇二〇大会の開催を契機といたしまして、いかなる種類の差別も許されないというオリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を広く都民に浸透させていくことが重要であります。
 そこで、東京都人権施策推進指針に掲げられました十七の人権課題に対しまして、今後も積極的に施策を進めてまいります。
 こうした取り組みはもとより、東京二〇二〇大会のホストシティーとして、性自認及び性的指向に関する不当な差別の解消及び啓発などの推進、そして、本邦外出身者に対します不当な差別的言動の解消にさらに積極的に取り組むべく、今般の条例案を提出したところでございます。
 条例の制定を通じまして、さまざまな人権に関します不当な差別を許さないとの姿勢を国内外に対して改めて明確にする、そして、啓発、教育等の人権施策を総合的に実施をしていく、そのことによりまして、都民の皆様とともに、多様な個性が輝く活力あふれる東京の実現に邁進してまいります。
 次に、総合的な就労支援の推進についてのご質問をいただきました。
 人手不足が深刻化する一方で、働く意欲があっても仕事につけない人も多いものでございます。とりわけ、障害のある方やひきこもり、ひとり親の方など、労働市場で不利な立場にある方々にとりまして、雇用環境は依然として厳しい状況にございます。
 私は、こうしたさまざまな困難を抱える人々を社会の一員として受け入れて全体で支え合うという、ソーシャルインクルージョンの考え方に基づきまして、誰もが自分らしく働ける環境をつくっていきたいと考えております。まさしくそれは、私が目指しておりますダイバーシティー、すなわち、多様性が尊重され、あらゆる人が生き生きと活躍できる社会へとつながってまいります。
 都といたしまして、これまで、障害者に限らず、さまざまな就労困難者に対しまして、それぞれの状況に応じた就労支援には取り組んでまいりました。社会が複雑化し、就労困難の要因も多様化する中で、そうした個別の施策に加えまして、社会全体で支え合うという理念に基づいて、お話のございましたソーシャルファームの考え方も取り入れながら、より広い視点で就労支援のあり方を考えていく必要がございます。
 こうした観点に立ちまして、希望する誰もが個性や能力に応じて仕事を選択し、社会の担い手としての誇りと自信を持って輝くことのできる東京を目指す、全ての都民の就労を応援する新たな条例の制定を検討いたします。
 まずは、学識経験者等によります検討会を設置いたしまして、そこから議論を始めてまいります。
 次に、ひきこもりの状態が長期化している方への支援についてでございます。
 お話のように、若年期にひきこもりとなった状態が長期化をして、四十代、五十代となる方がふえております。そして、本人やご家族が抱える悩みも、所得や就労だけでなく、介護や医療など、生活面の多岐にわたっているわけでございます。
 こうした悩みや相談に応えるために、都といたしまして、現在、東京都ひきこもりサポートネットのほか、精神保健福祉センターや東京しごとセンターなど、関係機関が連携しながら支援を行っているところでございます。
 また、区市町村におきましても、さまざまな窓口で相談に対応いたしておりまして、区市が設置している自立相談支援機関では、相談内容や世帯一人一人の状況に応じまして、ひきこもりの専門相談機関や、福祉事務所や保健所、地域包括支援センターなど関係の機関と連携して支援を行っているところでございます。
 ひきこもり状態にある方への支援は、まさしく都民ファーストの視点で、年齢によらず、身近な地域で切れ目なく実施することが重要でございます。
 こうした考えに立ちまして、今後とも区市町村の取り組みを支援するとともに、都におけます体制の強化も図ります。そして、福祉、保健、医療、雇用、教育等のさまざまな分野の連携を一層進めながら、ひきこもりの方やご家族への支援を推進していく所存でございます。
 次に、待機児童対策についてでございます。
 私は、待機児童の解消を都政の最重要課題の一つに位置づけております。そして、保育所等の整備の促進、人材の確保や定着の支援、利用者支援の充実、これら三つを柱といたしまして、保育サービスの拡大を図ってきたところでございます。
 具体的には、保育所等整備費補助の充実、都有地活用の推進、民有地を活用した保育所整備に対します税制支援、保育士等キャリアアップ補助の充実、認可外保育施設の利用者への支援など、都独自にさまざまな取り組みを進めてきたわけでございます。
 その結果といたしまして、ことし四月、都内の待機児童数は昨年度と比べまして、三千百七十二人減少、十年ぶりに五千人台となったわけでございます。
 女性の活躍を推進するためには、誰もが働きながら地域で安心して子育てができる、そんな環境を整えることが重要でございます。
 ことしの六月、都は多様な保育の受け皿の整備や人材確保策などにつきまして、区市町村と協議をいたすために、東京都待機児童対策協議会を立ち上げております。
 今後、この場も活用いたしまして、区市町村としっかり連携をしながら、二〇一九年度末までの待機児童解消に向けて、保育サービスの整備をさらに加速してまいる所存でございます。
 次に、児童虐待の防止に関する条例についてのご質問がございました。
 児童虐待は、子供たちの心に深い傷を残すだけではありません。子供たちの将来への可能性を奪うこともございます。決して許されるものではございません。
 しかしながら、都の虐待相談の対応件数は、近年増加の一途をたどっておりまして、平成二十九年度は過去最多となりました。
 こうしたことを踏まえまして、社会全体で全ての子供を虐待から守るという観点から、条例の基本的な考え方を取りまとめたものでございます。この基本的な考え方は、まず、虐待の未然防止、そして早期発見・早期対応、子供とその保護者への支援、人材育成、これら四つの視点で整理をいたしました。
 虐待の未然防止でございますが、妊娠、出産から子育てまで切れ目なく支援をすること、早期発見、早期対応につきましては、児童相談所と区市町村の子供家庭支援センターの連携、協働を一層推進すること、そして、児童相談所間の区域を超えた広域的な連携を推進することなどを盛り込んでおります。
 今後、都民や区市町村、専門家等の意見を伺いながら、条例案の検討を進めまして、来年の第一回定例会への提案を目指してまいります。
 次に、中小事業者に対します悪質なクレームについてでございます。
 消費者や取引先から寄せられるクレームには、商品やサービスの向上に役立つ貴重な意見もありますが、苦情が不当に長い時間続いて、同じ内容が何度も何度も繰り返されるなど、悪質な場合もございます。
 こうした迷惑行為は、従業員の健康を損なったり、影響が深刻になると経営にも支障を及ぼします。中小企業の振興を議論する有識者会議におきましても、行き過ぎたクレームが負担となって、製品開発に十分に取り組めない状況があることを、連合を初めとする委員の皆様方から伺ったところでございます。
 厳しい経営環境に置かれた中小事業者にとりましては、さまざまなクレームに適切に対応することは、快適で働きやすい職場環境をつくり上げて、社員の定着を図るとともに、限られたマンパワーを最大限に引き出して、生産性を高める上で重要な視点でございます。
 中小の事業者が直面する課題を解決するために、現在さまざまな支援を行っておりますが、今回改めて現場におけるクレームの実態を調べて、こうした問題につきましてもきめ細かな対応を行って、企業の労働環境と経営をしっかり支えてまいりたいと考えております。
 次に、旧こどもの城についてのご質問がございました。
 この敷地というのは青山通りに面しておりまして、大変ポテンシャルが高い、そして、都のさまざまな政策実現にも資するということで、可能性を有した土地と考えておりまして、かねてから活用の可能性を検討してまいりました。
 こうした中で、改めて現地の状況に目を向けますと、この敷地の上には、寿命を迎えることなく、国有の施設として役割を終えましたこどもの城の建物が今なお残されております。そしてまた、これを取り壊すということは、もったいないと考えるに至ったところでございます。
 そのため、この旧こどもの城を、男性も女性も、高齢者も障害者も、性別や年齢、障害の有無にかかわらず、誰もが利用できる施設へとリノベーションいたしまして、まさしくダイバーシティーの実現に向けて、都民の学習、スポーツ、創業、人材育成などの場となる、いわゆる都民の城とも呼べるような複合拠点を創出していきたいというのが、今の私の思いでございます。
 加えまして、こうした施設を本格的に使用するまでの期間も無駄にすることのないよう、東京二〇二〇大会にも役立てればと、このように考えております。
 そこで、建物を含めました活用の可能性を、ハード、そしてソフトの両面について検討するように、事務方に指示をいたしました。
 今後は、ここに集うさまざまな人々とのつながりが相乗効果をもたらして、東京の大きな活力を生み出す、そんな場になるように検討を加速させてまいります。そして、早期の取得に向けまして、所有者であります国との協議を進めてまいることといたします。
 次に、ロンドン、パリへの出張についてのご質問を頂戴いたしました。
 お話のように、ロンドンは二〇一二年に、そして、パリは二〇二四年のオリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市でございます。また、ロンドンは国際金融の拠点でありまして、パリはヨーロッパの文化、観光の中心地、ことしは日仏友好百六十周年にも当たるということでございます。
 そのため、今回の出張におきましては、両都市の市長と会談をいたしまして、オリンピック・パラリンピックの開催後のレガシーや、大都市共通の課題解決に向けました取り組みなどについて知見を共有して、連携の強化を図ってまいりたいと考えております。
 さらに、ロンドンでは、金融プロモーションといたしまして、シティー・オブ・ロンドン、ロード・メイヤーとの会談や、金融関係者との意見交換、現地金融系企業向けセミナーなどを実施いたします。
 また、パリにおきましては、パリ東京文化タンデム二〇一八の一環といたしまして、現地で開催されております風呂敷をテーマといたしましたアートイベントなど、日本の文化を紹介する多彩な催しや、東京二〇二〇大会や東京の魅力をPRするブースを訪問する予定でございます。
 この出張におきましては、二〇一二年大会を成功させたロンドンの経験を学ぶとともに、文化、観光、環境の分野を初めとした東京の魅力を世界へと発信してまいる所存でございます。
 また、出張を通じまして、国際金融都市東京構想の実現に向けた施策を推進いたしまして、東京二〇二〇大会の成功、そして、その先の東京の発展につなげていきたいと考えております。
 次に、電気自動車等の普及促進についてのご質問をいただきました。
 都は、排出がゼロのゼロエミッション東京の実現を目指した取り組みを進めております。自動車につきましても、走行時にCO2を排出しないゼロエミッションビークルの普及が重要となっております。
 五月に開催いたしました国際会議におきまして、私は、二〇三〇年の都内の乗用車の新車販売におけますゼロエミッションビークルの割合を五割まで高めるとの目標を掲げております。
 都はこれまで、中小事業者等が電気自動車やプラグインハイブリッド車を購入する際の支援を行うとともに、今年度から新たに、集合住宅へ充電設備を設置する際の支援や、事業者を対象といたしまして、電動バイクの導入補助を開始いたしております。
 二〇三〇年に向けまして、電気自動車等の普及をさらに加速させるために、来年度から、より多くの都民が手が届く、そのような環境をつくるよう新たな支援策を検討しているところでございます。
 こうした取り組みによりまして、ゼロエミッションビークルの普及におきまして、国、そして世界を牽引し、環境先進都市東京を実現してまいります。
 次に、IWA世界会議・展示会の成果、そして今後の上下水道の事業についてのご質問でございます。
 皇太子殿下、妃殿下のご臨席のもとで開会をいたしました会議でございます。そして、展示会も行いました。世界各国から九千名以上もの水分野の専門家などを迎えまして、また、国内外から約二百五十の団体が出展をされ、最新の知見や技術の共有、人的ネットワークの構築などが行われました。
 また、会議・展示会を通じまして、東京の上下水道が培ってきたさまざまなノウハウの発信や国内企業のすぐれた技術の紹介などを行うことで、東京、日本のプレゼンス向上にも貢献をいたしました。
 私からは、今や東京が世界に誇る魅力の一つとなっております水、そして都市の水循環を支えております上下水道を将来に向けて維持するためには、そのレジリエンス、強靱化ですね、強化に向けました心技体の視点、すなわち意識、技術、システム、この三つをより高めていくことが重要との考えを提唱いたしまして、参加者の皆様方からの高い共感を得たものと考えております。
 加えまして、上下水道が持続可能であり続けるためには、常に最先端の技術を取り入れて進化していくスマートな視点が必要との考えを強調いたしまして、これに基づきます具体的な取り組みとして、スマートメーターの水道事業への幅広い活用を目指した、大規模な実証実験を立ち上げることといたしました。
 こうした今回の会議により得られました成果を踏まえて、世界の水問題の解決へより一層貢献をしていくとともに、東京二〇二〇大会やその先を見据えまして、上下水道のさらなる強靱化を図って、持続可能な成長を続ける都市東京を実現してまいります。
 次に、今後の豊洲市場の発展についてのご質問をいただきました。
 豊洲市場は、検証、対策、確認という一連のステップを経まして、安全・安心な市場として開場する運びとなりました。長年にわたりますさまざまな議論、そして調整を経まして、新たな市場として開場するものでございます。多くの関係者のご協力に改めて感謝をしたいと存じます。
 一方、市場外流通の拡大、ネット通販の台頭など、卸売市場を取り巻く環境は大きく変化をしております。こうした時代の変化を見据えながら、生鮮食料品の安定供給という卸売市場の役割を十分に果たしていくことが重要と考えております。
 このため、豊洲市場におきましては、これまで築地市場が培ってきた伝統をしっかり引き継ぐとともに、最新鋭の設備を備えました施設の優位性を発揮して、高度な品質管理や効率的な物流を実現してまいります。
 まずは円滑な移転に向けまして、市場業界の方々とともに、引っ越しを初めとするさまざまな準備を整えて、万全の体制での開場を目指してまいります。
 その上で、時代の変化を踏まえた市場機能の向上を図って、豊洲市場を日本の中核市場とするとともに、世界も見据えた食文化の新たな発信拠点へと大きく育ててまいります。
 長期的な視点での森づくりについてのご質問がございました。
 木材の供給を初め、水源の涵養や災害の防止、地球温暖化の緩和など、都民に多くの恵みをもたらしている森林でございます。古来、先人たちの手によって守り育てられ、長い時間をかけて現在の姿となっております。
 この豊かな森林を次世代に継承するには、五十年、百年先を見据えた森づくりが不可欠でございます。
 先日、檜原都民の森で、次世代を担う子供たちと記念の育樹活動を行いまして、世代を超えて森林を守り育て、受け継いでいく決意を新たにしたところでございます。
 ことしは、全国育樹祭の開催とともに、東京百五十年の節目を迎えます。この機会を捉えまして、都民の森づくりへの機運を醸成して、森林整備、木材利用を促進することは重要であります。このような思いから、長期を見据えました東京の森林の将来展望、東京フォレストビジョンを現在取りまとめているところでございます。
 ビジョンでは、花粉の少ない杉への植えかえを加速して、もはや社会問題でもあります花粉飛散量を大幅に減少させる、そのことに加えまして、多摩産材のブランド化、AI等の活用によります革新的なスマート林業の確立、オフィスや商業施設、保育園等の都市部における新たな木材需要の喚起など、森林の将来の姿を七つのメッセージに込めて、育樹祭を契機に広く発信をしてまいります。
 今後は、全国知事会と連携し展開をしていく国産木材のさらなる活用に関するプロジェクト、こちらには四十一もの都道府県が参加をしていただくこととなっております。このプロジェクトをベースに、森林環境譲与税の効果的な活用などをてこといたしまして、全国の森林再生及び治山の取り組みへとつなげてまいります。
 次に、工業用水道事業の廃止に際しての利用者支援の基本的な考え方についてご質問がございました。
 工業用水道事業でございますが、需要減少による経営状況の悪化、そして施設の老朽化から、その抜本的な経営改革は長年の懸案とされてまいりまして、これまで十四年間にわたって検討が行われてまいりました。
 今回、有識者委員会での廃止という提言も踏まえまして、さきの定例会で廃止に向けた動きを進めることを表明いたしまして、この定例会にて工業用水道事業の廃止条例案を提案しているところでございます。
 事業の廃止に当たりましては、何よりもまず利用者の企業経営への影響を最小限にとどめることが必要であり、これまで利用者への支援策について検討をしてまいりました。
 支援策の検討に当たりましては、職員が利用者一件一件個別に訪問いたしまして、ご意見を伺うとともに、私みずからも工業用水を利用する業界団体の代表の方と直接お会いをし、その話を伺っております。
 こうした皆様の声を考慮いたしまして、事業廃止に伴う工業用水利用者の料金差額支援につきましては、支援期間を二十年間に延長し、新たに節水対策に係ります支援を加えるなど、有識者委員会が示した案をさらにきめ細かく充実をさせて、今回、都の支援計画案として取りまとめ、公表をしたものでございます。
 今後、この計画案を踏まえまして、利用者の皆様に丁寧に対応してまいりたいと考えております。
 そして、平成三十一年度税制改正についてのご質問をいただきました。
 国はこれまで、不合理な税制度の見直しを幾度となく繰り返してきております。さらに、平成三十一年度の税制改正に向けまして、地方法人課税の新たな偏在是正措置を講じるべく、検討を加速をさせております。
 アメリカと中国の貿易摩擦の激化、国際情勢が日々混沌とする中、内向きの議論に固執し、国内の限られた財源の奪い合いに明け暮れていては、日本は成長の機会を逸し、世界の中で埋没をしてしまいます。
 東京、そして日本を持続的成長に導くためには、首都東京が我が国経済の牽引役となって、各地方もみずからの権限と財源をもって地域を活性化させること、すなわち共存共栄を図ることが重要であり、これに逆行する国の動きに歯どめをかけていくことは必要でございます。
 現在、東京と日本の成長を考える検討会において、東京の国際競争力強化の必要性や東京への積極的な投資の重要性など、日本の今を知る有識者の方々を交えながら、取りまとめに向けた議論を積み重ねているところでございます。
 平成三十一年度税制改正に向けた動きは、これからいよいよ本格化してまいります。都議会の皆様からも、国の動きに反対する意見書を全会一致で可決していただくなど、多大なご尽力を賜っていることに感謝を申し上げます。
 また、私自身も、七月全国知事会議におきまして、目指すべき方向性を強く訴えております。政府・与野党幹部、国会議員と面会をいたしまして、都の主張に対する理解を求めるなど、精力的に活動を展開しているところでございます。
 都民の生活、東京の未来を守ることが都知事としての最大の責務と考え、私みずから先頭に立って、都としての主張をわかりやすく都民の皆様方に発信をするとともに、都議会の皆様としっかり手を携えながら、日本の成長を目指す同志である国、地方にも理解と共感の輪が広がりますように全力を尽くしてまいる所存でございます。
 なお、その他のご質問につきましては、教育長、東京都技監及び関係局長よりのご答弁とさせていただきます。
 ありがとうございました。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、学校施設での空調設備の整備についてでございますが、学校は地域の避難所としての役割を担うとともに、子供たちの学習、生活の場として安全性の確保が必要なことから、学校施設における暑さ対策は、最優先に取り組むべきものと考えております。
 都教育委員会は、学校施設への空調設備設置を行ってまいりましたが、今後も設置対象となる特別教室について整備の推進に努めてまいります。
 また、体育館については、都立特別支援学校に加え、今後は、都立高等学校についても空調設備の整備を速やかに進めてまいります。
 さらに、公立小中学校の体育館についても、国や区市町村との役割を踏まえつつ、体育館への空調設備の整備が進むよう、区市町村を支援してまいります。
 次に、性教育の推進についてでございますが、都内公立学校において性教育を適正に実施していく上で、その実施状況や学校等のニーズを正確に把握することは重要でございます。
 このため、都教育委員会は、ことし八月に都内の全ての公立中学校等を対象に、性教育の実施状況について調査いたしました。その結果、都教育委員会からの指導資料等の配布を希望する学校や、医師等の外部講師の活用が効果的であると考える学校が多数あることがわかりました。
 今後、性教育の手引を教員にとってよりわかりやすく活用しやすいものに改定するとともに、新たに産婦人科医を外部講師として活用したモデル授業を年度内に実施し、その成果を都内全公立学校に周知するなどして、各学校における性教育が適切に推進されるよう支援をしてまいります。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 中小河川の洪水対策についてでございますが、台風や集中豪雨による水害から都民の命と暮らしを守るためには、護岸や調節池の整備などハード対策とともに、迅速な避難につながる防災情報の発信など、ソフト対策を進めることが重要でございます。
 このため、防災事業の緊急総点検を踏まえまして、ハード対策につきましては、新たな調節池の検討を前倒しして実施いたします。ソフト対策につきましては、スマートフォン等による位置情報を活用し、豪雨の際に利用者が周辺の河川水位等を知ることができる仕組みを本年度中に導入いたしますとともに、氾濫危険情報など、水防災情報を多言語化し、発信力を強化いたします。
 引き続き、ハード、ソフト両面から洪水対策を進めまして、水害に強いセーフシティーの実現に向け、全力で取り組んでまいります。
〔福祉保健局長内藤淳君登壇〕

○福祉保健局長(内藤淳君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、病院の非常用電源についてでございますが、国は全ての病院に、みずからが被災することを想定してBCPを作成するよう求めており、BCPに基づく非常用電源の確保及び点検は必要不可欠であるとしております。
 このため、都は、都内の病院に対し、作成手順や記載項目を明示したガイドラインを配布して、BCPの作成を促すとともに、防災訓練説明会等において、ガイドラインを活用した実践的なBCPの作成や、非常用電源設備の浸水対策等に関する事例を紹介しております。
 また、医療法に基づく定例の立入検査の際に、非常用電源の確保及び点検の実施を確認するとともに、設備のない病院も含め、全ての病院が大規模災害時に医療機能を継続できるよう、助言指導し、災害医療体制の確保を図ってまいります。
 次に、災害医療コーディネーターについてでありますが、東京都災害医療コーディネーターは、都内全域の被災状況や医療資源の状況を把握し、他県からの参集を含めた医療チームの配置調整等を行う役割を担っております。
 また、二次保健医療圏ごとに設置した地域災害医療コーディネーターは、都や区市町村のコーディネーターと連携して、地域の実情を踏まえながら、医療資源の効果的な配分、患者搬送の調整を行うこととしております。
 災害の多様化、大規模化に備え、各地で発生した災害も踏まえて、今後、さまざまな場面を想定した総合防災訓練や図上訓練を行い、それを通じて医療救護活動ガイドラインを見直すなど、災害医療コーディネーターがその機能を確実に発揮できるよう、災害時の連携体制の充実を図ってまいります。
 次に、避難所における障害者への対応についてでありますが、都は、災害時に、障害者が必要な支援を受けられるよう、援助や配慮を必要としていることを周囲に伝えるヘルプマークや、必要な支援内容等を記入しておくヘルプカードの普及を図るとともに、障害者や支援者が災害時に適切な行動をとるためのマニュアルを作成しております。
 本年三月には、避難所管理運営の指針を改定し、情報掲示板や音声案内を初め、聴覚障害、視覚障害等の特性に応じて必要となる配慮の具体的な事例を盛り込み、区市町村に周知しております。
 今後とも、災害時に障害者がみずからの障害特性に応じた支援を適切に受けられるよう、区市町村に働きかけてまいります。
 次に、監察医制度の適用範囲についてでありますが、人の死因を究明することは、死者の尊厳や権利を守り、公衆衛生の向上や医学の進歩にも貢献するものであります。
 このため、都では、政令で監察医を置くべきとされている二十三区に限らず、多摩地域でも適切に死因究明ができるよう、都医師会や大学の協力を得ながら検案医を確保するなど、体制整備を進めております。
 本年改定した東京都保健医療計画におきましても、死因究明体制の確保を課題の一つに位置づけ、多摩地域の体制も含め、死因究明推進協議会で検討することとしております。
 死因究明体制は、本来国が必要な法整備を行い、地域を限定せずに整えるべきものであり、都全域で監察医制度を適用できるよう、引き続き国に強く働きかけてまいります。
 次に、児童相談所の体制強化についてでありますが、都政の喫緊の課題に対応するため、都は、専門的な知識や経験を有する人材を一定期間任用する、任期つき職員制度を設けており、平成十六年度から児童福祉司、平成十九年度から児童心理司の採用に活用しております。
 今般の緊急対策におきましても、この制度を活用して、さらに十九名の職員を確保することとしており、即戦力として活躍できるよう、履修科目など、児童福祉司等の任用に必要な要件を加え、学校卒業後の福祉に関する職務経験が五年以上であることなどの要件を定めております。
 採用後は、主任として任用し、児童福祉に関する職務等で培った高度な知識や経験を還元することで、児童相談所の専門的機能のさらなる強化を図ってまいります。
 最後に、安全確認行動指針に基づく立入調査についてでありますが、都は、都内全ての児童相談所で、児童の安全確認をより適切に行えるよう、今般、安全確認の手法や立入調査を行う判断基準等を定めた独自の指針を策定いたしました。
 この指針では、通告後四十八時間以内に児童の安全確認ができなかった場合には、児童が特定できないケースを除き、所長が緊急安全確認会議を速やかに開催し、立入調査の実施を決定の上、警察への援助要請を行うこととしております。
 立入調査に当たりましては、虐待対応を専任で行う虐待対策班を初め、警察官OBや保健師の資格を有する医療連携専門員など、複数の職員で対応することとしており、今後、児童の安全確認をこれまで以上に迅速かつ機動的に行ってまいります。
〔水道局長中嶋正宏君登壇〕

○水道局長(中嶋正宏君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、避難所への供給ルートの耐震継ぎ手化についてでございますが、水道局では、災害時における避難時の給水確保に向け、区市町が指定する避難所約二千六百カ所を対象に、供給ルートの耐震継ぎ手化及び水道メーターまでの給水管の耐震化を進めております。
 現在、避難所の中でも、建物規模が大きく、各地域にバランスよく配置されております約千八百カ所の小中学校につきまして、優先的に配水管の耐震継ぎ手化及び給水管の耐震化を進めております。
 このうち、中学校につきましては平成三十一年度までに完了させ、小学校につきましては平成三十四年度までに完了させてまいります。さらに、残る全ての避難所につきましては、平成三十七年度完了に向け着実に進めてまいります。
 次に、小河内ダム放流に関する情報連絡についてでございますが、水道専用ダムである小河内ダムの放流及び関係機関への通知等につきましては、国土交通省から承認を受けた小河内ダム操作規程に基づき実施をしております。
 豪雨等に伴い貯水量が増加し、放流量をふやす場合は、少なくとも一時間前に国土交通省や下流の自治体など関係機関への通知を完了させます。また、一般の方々へは、水道局みずからが、河川付近に設置してあるサイレンにより警告を発するとともに、職員が河川の両岸をパトロールして拡声機等にて周知を行い、さらに安全を確認いたします。
 小河内ダム放流の増量時におきまして、事前にこのような情報連絡に万全を期すことで、今後とも都民の安心を確保してまいります。
 最後に、工業用水道利用者への訪問結果及びそれを踏まえた支援策の概要についてでございますが、工業用水道事業の廃止に伴う支援の検討に当たりましては、利用者の声や経営等への影響を把握することが重要であるため、本年七月から各利用者を個別に訪問し、有識者委員会報告書の支援策についてご意見を伺ってまいりました。
 その結果、回答者の過半数の方から、料金差額補填の期間が短いとの意見や期間の延長を求める声が寄せられました。また、上水道への切りかえに伴う料金変動の影響を軽減するための節水設備の導入など、有識者委員会報告書の支援策に加え、さらなる拡充を求める意見が寄せられました。
 そのため、今回公表した支援計画案では、料金差額補填の期間につきまして、上水道への切りかえ期間四年の後、新たに料金の据置期間六年を加え、その後、利用者の料金負担の激変を緩和する期間を十年、合計二十年間といたしました。
 また、節水対策に資する設備の設置を支援するなど、利用者の負担を軽減するための支援を追加いたしました。
 さらに、上水道への切りかえ工事や、経営及び技術支援など、利用者の経営等への影響を最小限にとどめるための多面的な支援を盛り込んでおります。
 今後、この支援計画案を踏まえ、利用者への支援をきめ細かく進めてまいります。
〔下水道局長小山哲司君登壇〕

○下水道局長(小山哲司君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、下水道管の耐震対策についてでございますが、下水道局では、震災時にもトイレ機能を確保するため、地震により被害を受けやすい下水道管とマンホールの接続部の耐震化につきまして、対象施設を重点化して実施しております。
 これまでに、避難所や災害復旧拠点など、約四千六百カ所を対象に対策を進めておりまして、既に八割に当たる約三千七百カ所で対策を完了させております。
 今般、帰宅困難者が一時的に待機できる一時滞在施設の指定や一斉帰宅抑制に取り組む企業等の認定制度が創設されましたことから、これらの施設約五百カ所にも対象を拡大し、下水道管の耐震化を進めてまいります。
 こうした取り組みにより、下水道管の耐震化をさらに拡充し、地震に強いまちづくりを強力に推進してまいります。
 次に、下水道における浸水対策についてでございますが、浸水被害を軽減させるためには、下水道幹線やポンプ所などの基幹施設の着実な整備はもとよりでございますが、地域の自助や共助を支援するため、情報提供などのソフト対策の充実も重要でございます。
 これまで、東京アメッシュによる降雨情報の提供などに加え、浅く埋設され、地表に近い下水道幹線のうち、八つの幹線におきまして水位情報をリアルタイムで地元区へ提供し、地域の水防活動を支援してまいりました。
 このたび、呑川幹線など、新たに四つの幹線につきまして、地元区に対する水位情報の提供拡大を検討してまいります。
 今後とも、都民の生命と財産を守るため、関係機関と連携いたしまして、ハード、ソフト両面から浸水対策に取り組んでまいります。
〔総務局長代理次長榎本雅人君登壇〕

○総務局長代理次長(榎本雅人君) 防災に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、普及啓発のあり方についてでございますが、都民が、都の発信する防災情報を十分理解し、正しく避難できるような普及啓発の取り組みは重要でございます。
 都はこれまで、防災ホームページ、「東京防災」や「東京くらし防災」など、幅広い媒体で普及啓発を行うとともに、ことし三月には東京都防災アプリの配信を始めるなど、各種の取り組みを進めてまいりました。
 今後は、区市町村によるタイムラインの作成を支援するとともに、都民がその計画に従って行動を起こすことにつなげるための、災害の危険性を肌で感じてもらえるような防災訓練を工夫し、実施いたします。また、災害の脅威を実感できるような仮想現実機能、いわゆるVRを活用していくなど、新たな普及啓発活動を積極的に進めてまいります。
 次に、集合住宅の防災情報の提供についてでございますが、今や都内の分譲マンションの総戸数は、総世帯の約四分の一に達しており、マンションに居住する都民に対し、建物の特性を踏まえた情報提供は重要でございます。
 そのため、都はこれまで、「東京防災」や「東京くらし防災」等で、高層住宅における救助用資材の分散配置や管理組合による防災マニュアル作成の必要性について記載するとともに、マンションの防災対策をテーマとして、都民や集合住宅の管理組合などを対象に専門家を派遣するセミナーを開催してまいりました。
 今後、こうした取り組みに加え、東京都防災アプリに新たに集合住宅を対象としたコンテンツを追加するなど、さまざまな手法を用いて、マンションの防災対策を対象とした情報提供のさらなる充実を図ってまいります。
 最後に、石油コンビナートの防災対策についてでございますが、本条例は、国が指定する石油コンビナート等特別防災区域において、災害の発生及び拡大の防止等に必要な施策を行う東京都石油コンビナート等防災本部の設置に関する事項を定めるものでございます。
 防災本部では、本区域で起こり得る災害を想定した対策を盛り込んだ防災計画を策定し、この計画には、石油タンクの設置事業者、警察、消防等の関係機関と都が協働して、定期的な防災訓練を行うことなどを定める予定でございます。この訓練等の結果を踏まえまして、随時計画の内容を検証し、修正を加えることで、より実効性を高めてまいります。
 なお、万が一、本区域を超えるような広域的な災害が発生した際には、油等防除の協議会や近隣県市との協定等に基づき、関係機関が連携し、拡大防止に努めてまいります。
〔環境局長和賀井克夫君登壇〕

○環境局長(和賀井克夫君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、災害廃棄物処理計画についてでございますが、都は、熊本地震、西日本豪雨災害等に職員を派遣し、県の業務を支援いたしましたが、その中で、区市町村や民間処理施設等との連携の重要性を改めて認識したところでございます。
 昨年策定いたしました災害廃棄物処理計画では、発災後に都と区市町村の各担当者が共通認識のもとで、おのおのの業務を遂行できるよう、平常時から廃棄物の処分、仮置き場の管理といった業務ごとの連携体制を構築することとしております。
 今後、都の具体的取り組みのマニュアル化や区市町村に対する計画策定の支援の中で、連携体制を具体化してまいります。また、民間施設の能力や受け入れ条件等を定期的に把握する中で、発災時の事業者との協力関係を強化してまいります。
 さらに、区市町村等と連携した合同訓練の実施などを通じて、発災時における対応力の向上を図ってまいります。
 次に、暑さ対策についてでございますが、一つの災害であるとされたことしの猛暑を受けまして、体温調節が難しい子供や高齢者だけでなく、東京の高温多湿の気候になれていない外国人を含めた暑さ対策は、重要な課題でございます。
 都はこれまで、ホームページによる多言語での熱中症予防の広報に加え、遮熱性舗装の整備や微細ミスト等を設置したクールスポットの創出に取り組んでまいりました。
 今後、東京二〇二〇大会に向けて、ことし八月に立ち上げた全庁的な検討チームのもとに、内堀通り等において行った実証実験で得られた知見等も活用し、ハード、ソフトの両面から関係各局と連携した対策を効果的に推進してまいります。こうした取り組みをレガシーとして、都市の暑さ対策に活用してまいります。
 最後に、チームもったいないの取り組みについてでございますが、持続可能な都市の実現に向け、食品ロスの削減や資源の有効利用、省エネの徹底等を進めるには、都民のもったいないの意識を高め、行動変容を促すことが重要でございます。
 このため、本年八月、企業やNGO等とともに、さまざまな場面で消費者に直接アプローチし、消費行動につながる取り組みを行うチームもったいないを創設いたしました。
 今後、スーパーや飲食店等と連携した食品ロス削減キャンペーンを実施するほか、オフィス等でのレジ袋等削減のモデル的取り組みや、大規模イベント時のごみの分別徹底などを検討してまいります。
 企業、都民の皆様に幅広い参加を呼びかけながら、チームもったいないの取り組みへの共感と行動を広め、二〇二〇年とその先に向けたムーブメントを創出し、世界をリードする環境施策を推進してまいります。
〔消防総監村上研一君登壇〕

○消防総監(村上研一君) 猛暑による救急搬送の状況と今後の救急搬送体制についてでございますが、ことしの夏は猛暑が続いたことから、七月二十三日には、過去最多となる三千三百八十三件を記録するなど、東京消防庁の全救急隊二百五十四隊では、都民からの要請に対応できないおそれが生じました。
 このため、猛暑日など救急要請の増大が予測される日には、立入検査など火災予防業務の一部を取りやめて人員を確保し、臨時に救急隊を編成し、対応いたしました。また、あわせて熱中症予防に関する情報を報道発表し、住民に注意喚起を図りました。
 今後は、今夏の救急出場の状況を分析するとともに、現在構築中の救急需要予測システム等を活用した救急隊の効果的な運用や計画的な増強等について検討し、救急搬送体制のさらなる充実に努めてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京二〇二〇大会の開催時期決定の経緯についてでございますが、IOCは、二〇二〇年大会の招致に向けた立候補受け付け手順書の中で、オリンピック大会を開催すべき期間として、七月の十五日から八月の三十一日までの期間を示し、その期間内で開催時期を選ぶように定めておりました。
 これを踏まえ、東京二〇二〇大会の立候補ファイルでは、オリンピックは七月の二十四日から八月の九日まで、パラリンピックは八月の二十五日から九月の六日までを開催期間といたしました。
 この期間は、他の期間に比べまして、夏季休暇の期間中で、公共交通機関や道路が混雑しないこと、ボランティアや子供たちなど、多くの人々が参加しやすいこと、他の大規模な国際競技大会との重複がないことなどの理由から、決定したものでございます。
 次に、ラグビーワールドカップ二〇一九大会開催に向けた機運醸成についてでありますが、大会まで一年を切る中、多くの方々にラグビーへの関心を深めていただくことは重要でございます。
 十一月三日のテストマッチは、本番に向けた運営を検証する貴重な機会であり、その成果を生かしていくことが必要であります。そのため、有楽町の旧一〇〇〇days劇場におけるファンゾーンでは、大型スクリーンを複数設置いたしまして、ラグビーファンがじっくりと観戦できるベンチシートや、気軽に飲食を楽しみながら観戦できるスペースもご用意をいたします。
 また、初心者にもわかりやすい解説を行うとともに、ミニラグビー体験や日本代表のグッズ販売なども実施し、幅広い層の取り込みを目指してまいります。
 立地のよい本会場において、その後も大会をPRするための展示などを検討するとともに、周辺施設との連携を図り、今後も一層の機運醸成につなげ、来年の大会成功に向け取り組んでまいります。
〔生活文化局長浜佳葉子君登壇〕

○生活文化局長(浜佳葉子君) 生活者である外国人に対する支援についてでございますが、東京の在住外国人は五十四万人を超え、国の外国人材受け入れ拡大方針等を背景に、今後も増加が見込まれており、外国人が地域社会で安心して生活できるよう支援することが、これまで以上に必要でございます。
 都は、ホームページで生活に役立つ情報を多言語で提供するほか、東京で暮らし始める外国人に向け、基本的な生活習慣等を紹介する冊子、Life in Tokyo Your Guideを発行しております。今年度中に、この冊子のスマートフォン版を作成するとともに、今後その内容を充実させることとしております。
 さらに、地域で外国人相談等を担う区市町村やNPOに対する東京都国際交流委員会の支援機能を拡充するなど、外国人と日本人がともに活躍できる多文化共生社会の実現に向けて取り組んでまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、外国人材を雇用する中小企業への支援についてでございますが、海外での新たなビジネス展開や人手不足の解消に向けては、中小企業が外国人材を円滑に受け入れられる環境づくりが重要となります。
 このため、都は、外国人材の採用を考える中小企業を対象に、採用ノウハウや活用事例を紹介するセミナーを開催いたしますほか、事業者と外国人材との相互理解を図るためのインターンシップの機会を提供するなど、外国人材の受け入れを積極的に支援しているところでございます。
 今後は、国の動向も見据えながら、中小企業の人材確保をさらに後押しするため、外国人材の確保に関して企業からの相談に応えられる体制の整備や、仕事上の円滑なコミュニケーションに役立つノウハウの提供など、企業への支援を検討してまいります。
 次に、中小企業に対する悪質なクレームについてでございますが、都では、現在、中小企業に対し経営に係るさまざまな助言を行う相談窓口を設けており、顧客とのトラブルの解決についても、経営コンサルタントや弁護士などの専門家によるサポートを行っております。
 こうした窓口をより多くの中小企業が利用し、悪質なクレームへの適切な対処方法などに関する情報の提供を受けられるよう、積極的なPRを進めてまいります。
 さらに、悪質クレームは業種や社員の職種に応じて内容や状況が異なりますことなどを踏まえ、それらの実態について幅広く調査を行い、具体的な問題点をきめ細かく把握し、必要な対応を検討してまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 日本橋周辺の首都高の地下化についてでございますが、地下化は、品格ある都市景観の形成、歴史、文化、さらには水辺を生かした都市の顔づくりなど、東京の価値を高める一つの象徴となるものでございます。
 都は、本年七月、国、地元区、首都高速道路株式会社とともに、周辺のまちづくりとの連携も踏まえて地下化の計画案を取りまとめました。
 今後は、この計画案をもとに、既存の首都高、近接する地下鉄、河川などの機能確保や関連する民間開発との整合を図りつつ、コストや工期等を精査し、より効率的な施工方法などについて検討を進めてまいります。
 地下化の実現に向けて関係者間で緊密な連携を図り、日本橋周辺が国際金融拠点にふさわしいまちに生まれ変われるよう取り組んでまいります。
〔中央卸売市場長村松明典君登壇〕

○中央卸売市場長(村松明典君) 豊洲市場への移転についてですが、豊洲市場への移転を円滑に行うため、都は現在、業界と連携してさまざまな取り組みを進めているところでございます。
 具体的には、業界とともに引越実施計画の改定など、引っ越しの準備を進めるほか、施設管理や場内交通などを初めとした開場後の運用ルールについて、街区別検討会において業界団体と調整し、その内容について合意いたしました。
 また、市場内外に駐車場を確保するとともに、時間ごとの駐車場貸し付けを可能とするなど、利用状況に応じた駐車方法等について、物流施設管理協議会等において調整を行ったところでございます。
 十月十一日の開場まで時間が限られておりますが、引き続き業界と連携協力いたしまして、必要な準備を着実に進めてまいります。

○議長(尾崎大介君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時十二分休憩

ページ先頭に戻る