平成三十年東京都議会会議録第九号

○議長(尾崎大介君) 二十二番奥澤高広君。
〔二十二番奥澤高広君登壇〕

○二十二番(奥澤高広君) 初めに、多摩都市モノレールの町田方面延伸についてお伺いします。
 東京都の本年度予算において、鉄道新線建設等準備基金が創設されました。
 私の地元町田市においても、今後五年間で約十五億円の基金積み立てが決まり、多摩都市モノレール推進室が新設されるなど、機運が高まっています。
 周辺住民の利便性向上や多摩地域の経済活性化だけでなく、多摩の防災拠点立川において、東西にはJRの中央線、南北には多摩都市モノレールが通るということで、多摩地域の災害対策強化にも資するものと考えており、より一層の取り組み推進を要望するところであります。
 しかしながら、都民の皆さんの税金を使わせていただく以上、投資効果がより高いと客観的に認められる事業から整備されるべきであると考えております。基金創設等を踏まえ、各路線の整備は新たな局面に入ったものと理解しており、事業者、都、地元自治体が改めて課題認識を同じくすることが重要です。
 多摩都市モノレール町田方面延伸の実現に向けて、乗り越えるべき課題と今後の進め方について、都の見解を伺います。
 次に、都の動物愛護施策について質問をいたします。
 小池知事の公約、動物の殺処分ゼロは達成が近づいており、喜ばしいことです。都の取り組みにご協力いただいております譲渡対象団体の皆様や、保護犬や保護猫を家族として迎え入れてくださいました方々に、この場をかりて感謝申し上げます。
 一方、国内全体に目を転じますと、流通過程でとうとい命が数多く失われているとの指摘があり、痛ましい動物虐待事件も後を絶ちません。
 東京都においても、動物に関する苦情受理件数は、毎年一万件前後で推移しています。
 福岡市が実施したアンケートによれば、野良猫の頭数を減らすため、行政が猫の引き取りを行い、殺処分することについて、回答者の約半数が必要であると答えています。モラルの低い動物取扱業者やマナーの悪い飼い主のエゴで、ペットを飼わない人が迷惑をこうむり、動物を殺処分することもいたし方なしとの考えに至ることは大変遺憾です。
 平成二十五年度に環境省がまとめた動物の虐待事例等調査報告書においては、動物虐待が人への暴力へと連鎖していく可能性が指摘されており、動物の命を粗末にする社会は、人にとっても、冷たく恐ろしい社会であることを示唆しているのではないでしょうか。
 東京都動物愛護管理推進計画には、人と動物との調和のとれた共生社会を目指すとあり、さまざまな観点から事業を推進する旨が記載されています。動物の殺処分ゼロの先にある、人と動物との調和のとれた共生社会とはいかなるものか、動物愛護施策の拠点である動物愛護相談センターの役割を踏まえ、知事の考えをお伺いします。
 先日、二〇二〇年までに生体販売を禁止することを求める署名、一万筆を受け取りました。国において動物愛護法改正の議論が進んではいるものの、世界と比べて日本の動物福祉はおくれているともいわれています。
 東京二〇二〇大会では、多くの訪日外国人をお迎えすることになりますので、世界に恥じないアニマルウエルフェアな東京の道を歩むべきと考えております。
 そのような中、福岡市では、全国初の犬猫パートナーシップ店制度が始まりました。マイクロチップの装着など、市独自の基準を満たした認定店を通じて、動物を最期まで飼う責任や、万が一飼えなくなった場合は新たな飼い主を自分で探すことなど、飼い主への啓発を進めています。
 東京都においても、飼い主への意識啓発をより一層行うため、ペットショップ等の動物取扱業者みずからが役割を果たすよう働きかけるべきと考えますが、都の見解を伺います。
 さて、小さなつまずきから自信を失い、社会に出ることに臆病になってしまうことは誰にだってあり得ることであり、自分のペースで再出発できる社会をつくることは重要です。
 本年一月、インターネット掲示板上のとある記事を目にしました。その要旨は、平成二十八年度の都立高校入試で特別選考枠が廃止された結果、長期欠席からの学校復帰を目指す生徒に対し、内申点がついてしまうから学校に復帰してはならないとの指導があったというものです。
 インターネット掲示板という特性から、その真偽は確かめにくいのかもしれませんが、学習塾で進路指導を行ってきた経験から、あり得る事象だとも感じました。
 不登校を経験した生徒やその親にとっては、高校進学が再出発のきっかけになる場合は多く、都立高校入学選抜制度がその一歩を阻むものであってはならないと考えますが、都教育委員会の取り組みを伺います。
 続いて、ひきこもりの若者の社会復帰支援について、都の主催するセミナーに参加してまいりました。都庁大ホールは満席で、根が深く、喫緊の課題であると改めて実感したところです。
 セミナーでは、ひきこもりは、年齢によらずいつでも起こり得ることであり、ある程度社会経験がある方が少しのきっかけで立ち直りやすいというお話がありました。また、八十代の親と引きこもる子供が孤立化し、経済的にも精神的にも追い詰められていく八〇五〇問題も顕在化しております。
 今年度、内閣府がひきこもりの長期化、高齢化に関する実態調査を行うとも聞いています。東京都では、青少年・治安対策本部を中心に、主に若者を対象とした支援を行っていますが、年齢で分けられる性質の問題ではなく、組織横断での体制整備を進めるよう要望しておきます。
 さて、町田市では、二〇一五年にひきこもり当事者への丁寧なヒアリングを実施しました。ひきこもり当事者やご家族は、どこに相談していいのかわからず、よかれと思った行動が状態を悪化させてしまったケースも見られ、第三者の存在が社会復帰の鍵になっています。
 ひきこもりの若者の社会復帰支援には、福祉、医療、教育、就労、居場所づくりなどのネットワーク化とともに、気軽に相談でき、適切な支援へとつなぐコーディネーター的な役割を育成することが重要と考えますが、都の取り組みを伺います。
 昨日の代表質問に引き続きまして、ソーシャルファームについて二点ご質問をいたします。
 ソーシャルファームの本質は、労働市場で不利な立場にある方々が就労を通じて社会参画することで、企業の価値や利益をより高めるとともに、新たなコミュニティづくり、多様性への理解促進、再犯防止などのさまざまな価値を生み出し、より豊かな社会を築くことにあります。
 東京は、日本中の仕事と人が集まる場所です。全国に先駆けてソーシャルファームを定義し、さまざまな背景を持つ就労弱者が活躍できる環境整備を進めてほしいところではございますが、本日は、法的枠組みの存在する障害のある方の就労に焦点を当てて質問をいたします。
 障害のある方の働く場である就労継続支援施設を訪問し、施設長の方のお話を伺ってきました。利用者の男性を指し、彼は知的障害があって、問題行動もしばしばありました、でも、水に触れることが好きだ、それを思い切って、商品の染め織物を水で洗う仕事を任せてみたんです、今では彼の右に出る者はいませんよというお答えが返ってきました。
 人の能力や特性を生かした仕事を生み出していくことで、誰もが社会に豊かさを与える存在になれることを示しており、大変興味深いものでした。
 一方で、ソーシャルファームの概念の認知度はまだまだ低いです。ビジネス的視点で社会課題を解決する意義や成功事例を発信し、その裾野を広げていくべきであると考えます。
 東京都では、昨年度より、障害者雇用エクセレントカンパニー賞を創設いたしました。受賞企業の価値をより高めるとともに、こうした企業のすぐれた取り組みを広く波及させるため、東京都の発信力と信頼度を生かしたPRを積極的に行うべきと考えますが、都の見解を伺います。
 東京都では、保護観察中の若年者を雇用しています。また、総務局においては、知的障害のある方の特性に合った職務の創出に努め、一般就労でオフィスサポーター三名を採用したと伺っており、大変評価いたします。ぜひノウハウを蓄積し、対外的にも発信していただきたいと思っております。
 ソーシャルファームの成功の秘訣は、一般企業には負けない商品やサービスを提供することでありますが、一筋縄にはいきません。販路開拓も悩みの種です。
 これらを同時にかなえる場として、自主製品魅力発信プロジェクト、KURUMIRUに期待をしています。都庁店は皆さんご存じのことと思いますけれども、丸井錦糸町店、伊勢丹立川店がオープンし、平成二十九年度の売り上げは二千八百万円を超えており、新たな受注につながったケースもあると聞いております。一流の店舗と肩を並べ、目の肥えた消費者から受ける評価は一つの試金石であり、出品すること自体が目標の一つになっているそうです。
 KURUMIRUは、アンテナショップであるとともに、障害者福祉とビジネスをつなぐハブ機能を有していると考えますが、これまでの成果と今後の取り組みについてお伺いいたします。
 最後に、障害者グループホームの東京都独自加算制度の見直しについて質問をいたします。
 障害のある方が自立した生活を目指す上では、安心して暮らせる環境が不可欠です。今般の見直しでは、障害の重度化、高齢化に対応するための措置であると伺っており、その趣旨は理解できます。
 しかし、複数の事業者から不安の声が聞かれ、収入減の影響による人材削減や、それに起因する職員の過労、サービス低下の可能性が懸念されております。実際に、町田市や昭島市などでも複数の事業者から改善を求める要望書がこちらに届いているところでございます。
 一方、今般の見直しの趣旨や内容は、事業者に伝わり切っておらず、制度を十分に活用できていない部分もあるように見受けられます。
 改めて、国や都の加算制度を最大限活用していただけるよう丁寧に説明し、時には助言をすべきと考えますが、都の見解を伺います。
 いずれにせよ、各事業所の運営状況をしっかりと把握し、検証を行うべきと考えます。利用者の皆様が安心して暮らすことができるよう、必要に応じて新たな施策を講じることを強く要望しておきます。
 昨日、ワールドカップ・ロシア大会で、日本代表がコロンビア代表に勝利しました。個の力で劣るといわれていた日本代表が一人一人の持ち味を存分に発揮した姿に大きな勇気をもらいました。
 東京都には千三百八十万の色とりどりの人という宝物があります。世界一のダイバーシティー東京の実現を願い、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 奥澤高弘議員の一般質問にお答えいたします。
 私から、一問に対しまして答弁させていただきます。
 人と動物との共生社会についてのご質問でございます。
 動物は、飼い主にとりましては家族の一員同然であります。社会にとってもその一員、私たちの生活に潤いや癒やしを与えてくれる大切な存在でございます。
 私はこういった考え方のもとで、平成三十一年度までに動物の殺処分をゼロにする取り組みを進めるなど、動物愛護施策に力を注いでまいりました。
 そして、その結果、苦痛からの解放など動物福祉等の観点で行う場合や、収容後に死亡したものを除きますと、昨年度の殺処分数、犬は二年連続でゼロになりました。猫は十六頭にまで減少しております。
 この殺処分ゼロの先にある社会は一体どういうものか。それは、動物を飼う人や動物を好きな人というだけではなく、動物を飼っていない人や苦手な人も含めて、東京に暮らす誰もが、それぞれの立場を尊重して、お互いを思いやることのできる社会ということを考えております。
 その実現に向けまして、飼い主に対するさまざまな普及啓発、それに加えて、子供のころから動物との接し方や命の大切さを学べるように、小学校での動物教室を実施しており、今年度はこれを拡充していく考えでございます。先ほどご質問のあった点などにも、いろいろ検討も重ねていきたいと思います。
 今後も、動物愛護相談センターを中心といたしまして、動物愛護の取り組みを推進をし、人と動物との調和のとれた共生社会を実現してまいりたいと存じます。
 また、最後に、ワールドカップにお触れになりましたので一言。次のセネガル戦にもぜひ勝ってほしいと、頑張れ日本とエールを送っておきたいと思います。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 高校入試での不登校生徒への取り組みについてでございますが、高校入試は中学生にとって進路選択の貴重な機会であり、長期欠席を理由にその機会が損なわれることがあってはなりません。
 このため、都教育委員会は、都立高校の入学者選抜における応募資格、出願書類や手続等、制度にかかわる相談を受ける入試相談コーナーを通年で設置して、相談者の疑問に丁寧に対応しております。
 また、中学校での欠席が多い場合、その事情を説明するための申告書を志願者本人及び保護者が作成して、出願の際、高校に直接提出し、提出された申告書を高校が面接等で確認することで、生徒の不利益とならないようにしております。
 今後とも、こうした取り組みを継続するとともに、引き続き、学校や保護者に周知を図ってまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 多摩都市モノレールの町田方面延伸についてでございますが、本路線は、開業区間と一体となって多摩地域の南北方向の拠点を結ぶことで、沿線利用者の利便性はもとより、多摩地域の活力や魅力の向上に資するものでございます。
 一方、本路線の整備に向けては、国の答申でも、導入空間となり得る道路の整備が課題とされているほか、コスト縮減や収入確保策、事業採算性を見きわめながら検討を行う必要があり、沿線市、多摩都市モノレール株式会社とともに調整を進めております。
 今年度、都は、検討を深度化するための調査費に加え、鉄道新線建設等準備基金を創設し、鉄道新線整備に対する都の取り組み姿勢を明確に示すことといたしました。
 引き続き、課題の検討を進めるとともに、関係者との協議、調整を加速してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、動物の飼い主等への啓発についてでありますが、人と動物との共生社会を実現するためには、まず、動物の飼い主が法令を遵守し、動物をその終生にわたり適正に飼養する責務を果たすことが重要でございます。
 このため、都は、区市町村、動物愛護団体、ボランティア等と連携しながら、飼い主に対し、動物の適正飼養、終生飼養に関する普及啓発を行っております。
 また、動物取扱業者に対しましては、動物を適切に取り扱うとともに、飼い主への普及啓発の担い手として役割を果たすよう、動物取扱責任者研修を通じて求めております。
 今後、動物取扱業者等を通じて、飼い主等に適正飼養、終生飼養の徹底を促すパンフレットを配布するなど、さまざまな機会を活用し普及啓発に取り組んでまいります。
 次に、KURUMIRUの取り組みについてでありますが、都は就労継続支援事業所の自主製品の販路拡大や魅力発信のため、平成二十八年度に福祉・トライアルショップKURUMIRUを都内三カ所に開設いたしました。
 このショップでは、製品に出品基準を設け、市場で流通する商品としての質を確保するとともに、事業者に対し、流通分野の専門家が製品開発やコスト管理などについて丁寧なアドバイスを行っております。
 出品事業者数は、開設当初の百二十一から、本年五月末時点で百六十三となり、製品の信頼性も向上し、企業からのノベルティー向け等の受注がふえております。
 今後は、店舗での販売に加え、イベントでの出張販売など、企業や消費者に製品の魅力を知ってもらう機会をふやし、さらなる販路拡大や工賃の向上を目指してまいります。
 次に、障害者グループホームへの支援についてでありますが、都は、地域における障害者の居住の場であるグループホームの事業者が質の高いサービスを提供できるよう、国の報酬に加え、都独自の補助を実施しております。
 今回の見直しは、質の向上のための国加算を取得した場合に、その加算額が事業者の収入に直接反映される仕組みに改めるものでございまして、本年一月及び三月に事業者に対する説明会を開催いたしました。
 その後、国から、平成三十年度の報酬改定に係る新たなサービス類型や加算についての詳細が示されたことから、昨日改めて、事業者向けに説明会を実施したところでございます。
 今後、請求事務等に関する説明会につきましても、区部及び多摩地域で実施する予定であり、個別の事業者からの問い合わせに対しても、丁寧に説明してまいります。
〔青少年・治安対策本部長大澤裕之君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(大澤裕之君) ひきこもりの若者の支援についてでありますが、ひきこもりの若者の支援においては、適切な見立てを行い、早期の支援につなげ、長期化を未然に防ぐ必要があります。
 このため、都では、東京都ひきこもりサポートネットにおいて、電話やメールによる相談のほか、区市町村と協働して訪問相談を実施し、臨床心理士等の相談員がひきこもりの若者や家族の状況を十分に把握した上で、地域のNPO法人等の支援機関につないでおり、その際には、区市町村の関係部署を初め、福祉、保健医療、雇用等のさまざまな分野の関係機関と連携して、対応しております。
 今後も、ひきこもりの若者の社会的自立に向けて、関係各局や区市町村、民間支援団体等との連携をさらに推進し、若者への支援の充実に努めてまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 企業における障害者雇用のすぐれた取り組みのPRについてでございますが、企業において障害者が能力や適性に応じて活躍できる環境づくりを促進していくためには、モデルとなる好事例を広く発信していくことが重要でございます。
 このため、都は、ソーシャルファームの考え方から、障害者の能力開発や処遇改善等を積極的に行う企業をエクセレントカンパニーとして表彰し、受賞企業の取り組み内容や社員の声などをまとめた事例集を作成し、企業等に幅広く配布するほか、ホームページにも掲載しているところでございます。
 今年度は、この賞の表彰式を企業や関係機関が一堂に会する障害者雇用支援フェアの中で実施することで、受賞企業の注目度が高まるよう工夫を図ってまいります。また、同フェアでは、パネル展示により具体的な取り組みの紹介もあわせて行ってまいります。
 今後も、受賞企業のすぐれた取り組みを積極的に発信し、障害者が生き生きと働ける職場環境の整備を促進してまいります。