○議長(尾崎大介君) 六十二番上野和彦君。
〔六十二番上野和彦君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕
○六十二番(上野和彦君) 初めに、東京の快適な水環境創出について質問します。
かつて武蔵野台地に刻まれた玉川上水は、世界に誇る大都市江戸東京を形成する根幹のインフラでした。玉川上水は、一六五四年に、羽村から四谷大木戸までの約四十三キロメートルを開渠で開削し、四谷大木戸からの下流は暗渠になり、神田上水とあわせて江戸市街地全体に生活用水を供給してきました。
一方で、江戸城の外堀、内堀にも導水され、江戸市街地の豊かな水環境形成の一翼を担っていたといわれています。
この構造は、一九六五年に淀橋浄水場が廃止されるまで保たれていましたが、それ以降、江戸城の堀への導水も停止となりました。その結果、都が財産管理する外堀への供給水は、ほとんどが下水道の汚水まじりの雨水となり、水質は悪化し、夏場に大量のアオコが発生しております。
都は、今年度、外堀の水質改善を目的としたしゅんせつ工事を行いますが、しゅんせつだけでは持続的な水質改善は期待できません。外堀の水は神田川、日本橋川に流れ、水質に大きな影響を与えています。河川の水質改善を図るためには、外堀の持続的な水質浄化が必要不可欠であります。
知事は、日本橋川について、昨年七月、国土交通大臣とともに、日本橋周辺のまちづくりと連携し、首都高の地下化に向けて取り組むことを発表されました。国際都市にふさわしい、品格のある都市景観の形成、歴史や文化を踏まえた日本橋の顔づくり、舟運など、さまざまな効果が期待されており、日本橋川の水質改善は、より重要な課題となっております。
そこで、世界に開かれた環境先進都市であるスマートシティーを実現する上でも、東京の中心地に、水と緑の回廊、快適な水環境を創出すべきと考えますが、知事の見解を求めます。
下水道局は、外堀の水質改善対策として、降雨時の汚れた下水が外堀に流入しないよう、貯留施設の整備を進めております。貯留管の整備が完成すれば、二〇二三年度末には、外堀への下水の流入がほとんどなくなり、水質悪化の一つの要因は改善されるものと思われます。
しかし、同時に、閉鎖性の公共用水域である外堀は、下水の供給水がなければ、水量が減少し、滞留水の長期化を招くことになります。学識者の方々は、このままでは依然としてアオコが発生するなど、水質は悪化し、新たな環境問題が危惧されるため、導水による水量回復を伴った水質改善が必要であると警鐘しています。
一方、国では、内堀への下水の供給水が二〇一六年度末になくなる対策として、一九九〇年に水質改善計画を策定し、二〇一三年度に浄化施設を稼働するなど、官民一体となって水質浄化に取り組んでいます。
ところが、外堀を管理する都は、今なお持続的な水質改善計画は策定されておりません。
そこで、一つの方策として、江戸時代に羽村から武蔵野の真ん中を流れ、外堀に達していた水の流れを復活させてはいかがでしょうか。これは、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック大会に向けて、都民の心をつなげ、レガシーとして、将来、東京のグリーンインフラの目玉となり得る施策であると考えます。
ところで、外堀の水質改善対策が進まない背景は、財産所有者が国土交通省、財産管理者は東京都、日常の維持管理は特別区となっており、複雑な所有状況で管理が難しくなっていることです。
そこで、都は、外堀浄化などの新たな水循環の方策を進めるために、まずは関係機関、関係団体との意見交換を行い、その後、外堀水質改善計画を策定するため、官、民、学の検討会を立ち上げるなど、本腰を入れて取り組むべきであります。見解を求めます。
次に、東京都の工業用水道事業について質問します。
有識者委員会からの提言も踏まえ、知事は、本定例会の所信表明で、廃止に向けた動きを進めるとの方針を示しました。廃止する場合にあっても、管路の必要な安全対策は着実に行っていかなければなりません。
工業用水の供給を停止した場合には、使用されなくなった配水管の破損による道路陥没の発生が懸念されます。撤去までの間、道路陥没防止のための処置を確実に行う必要があると考えますが、都の見解を求めます。
また、集合住宅における工業用水道利用者への対応は極めて重要であります。
有識者委員会報告書では、事業の廃止に当たっては、工業用水ユーザーのみならず、集合住宅を含む雑用水ユーザーに対しても支援策を講じるべきとされています。
個々の使用水量が少量とはいえ、集合住宅では、工業用水の需要拡大の一環として、現在でも約三万五千戸の居住者が工業用水道をトイレの洗浄水に利用しております。
そこで、事業廃止となる場合には、支援策を早期に策定し、集合住宅居住者へ丁寧に説明すべきと考えますが、都の見解を求めます。
次に、八王子市内の道路整備について質問します。
多摩山間地域の道路は、地域の生活や経済を支え、災害時の生命線となる極めて重要な社会基盤であります。このうち、八王子市内の西多摩地域と南多摩地域を結ぶ交通の要衝である美山通りは、秋川街道との交差部で道路がクランク状となっており、慢性的な渋滞が発生しています。
また、戸沢峠付近では、昨年十月の大雨により、民間業者によって埋め立てた箇所が大規模に崩れ、約二キロにわたり通行どめになるなど、都民生活に大きな支障が出ました。
そこで、公明党の働きにより、並行する圏央道は暫定無料化の措置が行われ、美山通りの代替路として重要な役割を果たしました。美山通りは、同年十二月に応急復旧し交通開放されましたが、今後、大雨や大雪により再び通行どめにならないよう、防災性にすぐれた代替路となる道路整備を急ぐべきであります。都の見解を求めます。
次に、千葉県境における橋梁整備について質問します。
現在、神奈川県境の多摩川には、約二・五キロメートル間隔で橋梁が整備されています。
一方、千葉県境の江戸川では、市川橋から今井橋までの約八キロメートル区間に、人が渡れる一般道路の橋がありません。水害時における広域避難、震災時における帰宅困難者、災害時の救助救援活動のためにも、地域の安全・安心を支える都県境の橋梁整備が不可欠であります。
私は、平成十八年三月、この問題を議会では初めて取り上げ、これまで一貫して主張してきたところであります。
この区間には二つの橋が計画されています。このうち一つの橋である補助第一四三号線は、取りつけ部の導入空間が既に確保されており、早期の事業化を目指すべきであります。二つ目の橋である補助第二八六号線は、篠崎防災公園と大洲防災公園の拠点を結ぶ重要な防災橋となります。
取りつけ部の導入空間については、現在、区画整理事業で施工すべき区域に位置づけられておりますが、通常の街路事業に比べて時間を要するため、例えば、地元区が街路事業として先行的に用地取得を進めることも大いに検討の余地があります。
そこで、千葉県境における都市計画道路である補助第一四三号線と補助第二八六号線の橋梁整備について、千葉県や地元区との協議を精力的に進め、スピード感を持って取り組むべきであります。都の所見を求めます。
東京都は、本年三月三十日、水防法の規定に基づき、想定し得る最大規模の高潮による氾濫が発生した場合の高潮浸水想定区域図を公表しました。これによれば、浸水が想定される区域の面積は約二百十二平方キロメートル、浸水が想定される区域内の昼間人口は約三百九十五万人、想定される最大の浸水の深さは約十メートル、浸水は一週間以上継続するとなっています。
また、六月七日、土木学会は、東京湾で巨大高潮が起きれば、最悪百十兆円、荒川巨大洪水で六十二兆円の被害推計を公表しました。
都は、東日本大震災を教訓に、こうした最悪の事態を想定して、直ちに、ハード、ソフト対策を推進することが重要であります。
そこで、大水害から都民の命と財産を守り、社会経済の壊滅的な被害を回避するため、東京は、新たな防災、減災のあり方が求められておりますが、知事の見解を求めます。
また、ソフト対策として、避難体制の充実強化などを推進することが必要です。改正水防法では、住民の的確な避難行動などにつなげるため、高潮浸水想定区域の公表に加え、高潮特別警戒水位を定めることとなっております。
そこで、都は、都民の避難行動などの目安となる水位の設定に向けて、専門的かつ多様な視点から検討を進めるべきであります。見解を求めます。
水害による被害を最小限に抑えるためには、何よりも都民みずからが判断し、避難行動できる意識の向上を図る必要があります。
都はこれまで、区と連携し、住民向けの水防災ワークショップを実施してきましたが、今後は、これまでの実績や避難判断に必要な新たな情報を盛り込むなど、手引の充実を図るとともに、都民の水害に対する意識をさらに向上させるため、ワークショップの成果を広く展開していくべきであります。都の所見を求めます。
公表された高潮浸水想定区域図によると、浸水が一週間以上継続する区域が広範囲にわたっています。地盤が海面下にあるゼロメートル地帯では、河川や海へ自然流下できないため、ポンプにより排水することが不可欠であります。
そこで、都は、早い復興を実現するために、排水ポンプ整備運用計画を策定し、燃料補給体制の整備や排水施設へのアクセス道路の確保など、大規模水害時の排水対策の検討をすべきと考えます。
都の見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 上野和彦議員の一般質問にお答えいたします。
まず、快適な水環境の創出についてのご質問でございます。
水は、生態系にとって良好な環境を形成する大切な要素であることはご指摘のとおりでございます。ゆとりや潤いに満ちた生活にも不可欠な資源でございます。持続可能な成長を続けるスマートシティーを実現していくためには、望ましい水環境の形成は重要でございます。
都市づくりのグランドデザインにおきましては、水の恵みを享受できる良好な水環境の実現を取り組みの一つとして掲げております。この中で、合流式下水道の改善や清流復活の取り組みによって、水の都にふさわしい、きれいな川の水を取り戻してまいります。
公園の整備のほか、雨水浸透施設や透水性舗装の整備を進めまして、地下水を涵養し、水の流れを回復し、さらに、雨水や再生水を循環利用するなど、あらゆる水資源を都市活動に生かしてまいる所存でございます。
また、開発の機会を捉えたお堀や池などの良好な水辺の再生に向けた取り組みを、区などと連携をいたしまして計画的に進めてまいります。
こうした水にかかわる多様な施策を展開いたしまして、ご指摘のように、持続可能な循環型の社会を実現してまいります。
大規模水害に対する都の取り組みについてのご質問がございました。
東京が荒川などの大河川の氾濫や大規模な高潮に襲われた場合、区部東部のゼロメートル地帯を中心といたしまして、都民の生命と財産が脅かされるとともに、東京の都市機能も大きな打撃を受けることとなります。
この三月には、想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図を公表したところでございます。まさに、都にとりまして、大規模水害への対策は、ご指摘のように喫緊の課題でございます。
これまで都におきましては、護岸や防潮堤、水門などの施設整備を推進するとともに、大規模水害が発生した場合の広域避難につきまして、国や関係自治体等との検討を進めるなど、ハードとソフトの両面から水害対策を進めてまいりました。
一方で、近年、降雨が局地化、集中化、激甚化しております。今後、地球温暖化に伴う気候変動により、豪雨もより強く、より頻繁となる可能性が高いと、このようにいわれております。
このような状況を踏まえまして、都といたしまして、引き続き施設整備を着実に進めるとともに、施設では防ぎ切れない大水害という最悪の事態も想定をいたしまして、計画的な広域避難の具体化に向けた検討を一層加速させ、大規模水害対策に全力で取り組んでまいる所存でございます。
残余のご質問につきましては、東京都技監及び関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕
○東京都技監(西倉鉄也君) 三点のご質問にお答えいたします。
初めに、八王子市内の道路整備についてでございますが、美山通りは、八王子市西部の山間地域に位置し、秋川街道と高尾街道を南北方向に結び、圏央道八王子西インターチェンジへのアクセス路となります、物流や地域の生活を支える重要な幹線道路でございます。
このうち、昨年の台風で約二カ月間通行どめとなりました戸沢峠付近の区間につきましては、秋川街道との交差部付近における交通渋滞や道路線形、積雪によります通行どめなどの課題を抱えております。
このため、本区間の代替路となります仮称戸沢トンネルの整備につきまして検討を進めており、本年四月には、そのルートや基本構造を定めました。
今後、地質調査や予備設計などを進めまして、早期事業化に向け、積極的に取り組んでまいります。
次に、千葉県境の橋梁整備についてでございますが、約三百万人の都民が生活します東部低地帯では、洪水等の災害時のリダンダンシーを確保いたしまして、避難や緊急物資輸送等を確実に行うため、新たな橋梁整備が不可欠でございます。
このうち、用地取得が比較的少なく、早期着手が可能な補助第一四三号線につきましては、橋梁構造等の検討を進めまして、早期事業化を目指します。
また、防災拠点の篠崎公園と千葉県の大洲防災公園とを結びます補助第二八六号線につきましては、国のスーパー堤防計画と整合を図るため、河川管理者との調整を開始したところでございまして、今後、道路構造等の検討を進めてまいります。
引き続き、共同事業者となります千葉県との協議を加速いたしますとともに、地元区との連携を一層強化いたしまして、千葉県境の橋梁整備に全力で取り組んでまいります。
最後に、大規模水害時の排水対策についてでございますが、東部低地帯における早期の復旧、復興には、浸水時におきましても排水施設の機能を確保いたしますとともに、それを補完する排水ポンプ車等の効果的な運用が重要でございます。
排水施設の機能の確保につきましては、現在、河川の排水機場等におきまして、電気、機械設備の高所への移設や水密化による耐水対策を推進しております。
また、本年三月には、住民の的確な避難に資する高潮浸水想定区域図を作成いたしました。これにより、排水ポンプ車等の適切な配置の検討に必要となります浸水の範囲や深さ、継続時間が明らかになりました。
今後、速やかに都の関係局で構成する連絡会を設置いたしまして、直轄河川を管理する国と連携して、排水ポンプ車の運用等、大規模水害時の排水対策につきまして検討してまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕
○都市整備局長(佐藤伸朗君) 外堀などへの新たな水循環の方策についてでございますが、東京の快適な水環境の創出には、健全な水循環や水辺の水質の回復が重要でございます。
都は、水循環マスタープランを平成十一年に策定し、おおむね平成二十七年を計画の目標として、水循環にかかわる施策を総合的、体系的、効率的に推進してまいりました。
その後の水循環にかかわる施策については、平成二十九年に策定した都市づくりのグランドデザインに引き継ぎ、水の都にふさわしい、きれいな川の水を取り戻すことなどを目的として、さまざまな取り組みを進めております。
外堀への水の流れについては、四谷大木戸から外堀までの管路整備が可能かなど、さまざまな課題があるため、関係機関や関係団体との意見交換などを今後幅広く行ってまいります。
〔水道局長中嶋正宏君登壇〕
○水道局長(中嶋正宏君) 工業用水道についての二点のご質問にお答えいたします。
まず、工業用水道配水管の安全対策についてでございますが、工業用水の供給を停止した場合も、配水管を引き続き適切に管理し、安全性を十分に確保していくことが重要でございます。供給停止後の工業用水道配水管の取り扱いにつきましては、その内側に新たな管を挿入するなど、強度を確保した上で、上水道や他の用途で極力活用してまいります。
その上で、他の用途での活用ができない配水管につきましては、速やかに撤去を進めますが、供給を停止してから撤去が完了するまでには一定の期間が必要となるため、今後、道路管理者等と協議し、道路陥没を防止するための措置を実施いたします。
こうした供給停止後の配水管に係る全体的な計画を今後策定し、十分な安全対策を構築してまいります。
次に、集合住宅における工業用水道の雑用水利用者への対応についてでございますが、事業を廃止した場合の利用者への影響としましては、建物外部の配管工事や利用者宅における上水道への切りかえ工事の実施が必要になるとともに、使用状況によりましては料金の変動などが考えられます。
そのため、この間、当局では、工業用水道に関する検討状況を集合住宅の建物所有者等に説明いたしますとともに、本年四月からは、各利用者に対しましても情報提供をしてまいりました。
今後は、有識者委員会の提言を踏まえ、都としての支援策を関係各局が緊密な連携のもと、早期に検討してまいります。
あわせて、集合住宅の雑用水利用者からの問い合わせに対しましては、各利用者宅の配管状況や工業用水の使用状況等を踏まえ、きめ細かく対応してまいります。
〔港湾局長斎藤真人君登壇〕
○港湾局長(斎藤真人君) 高潮特別警戒水位の設定についてでございますが、改正水防法で定める高潮特別警戒水位の設定は、万一の際に都民が避難を開始する契機となるもので、的確な避難行動のために極めて重要でございます。
このため、都は、既に公表した高潮浸水想定区域図の作成過程で得られた地域ごとの水位の変化の想定を初めとして、都民への情報伝達や避難に要する時間など、避難行動に関連する要素も踏まえながら、水位の設定を検討してまいります。
具体的には、本年九月を目途に有識者等で構成する検討委員会を設置するとともに、関係局及び地域の実情を熟知し、避難計画を担う地元区とも連携し、実効性のある高潮特別警戒水位の設定に向け取り組んでまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕
○総務局長(多羅尾光睦君) 水害に対する意識啓発の推進についてですが、水害による被害の軽減には、住民が被害想定や、みずからとるべき避難行動をあらかじめ理解しておくことが重要でございます。
都は、二十八年度から、区と共催で住民参加型ワークショップを実施しており、今後も、地域特性や参加者に応じた企画となるよう工夫するとともに、区独自でもワークショップを自発的に開催できるよう、地元区にワークショップの企画、運営の手引を提供してまいります。
また、手引には、早い段階からの避難に必要な気象情報へのアクセスや、その読み方などを加え、充実させるとともに、その手引を区部東部以外の都内自治体にも配布いたします。
さらに、水害リスクをわかりやすく説明した映像コンテンツを、トレインチャンネル等の媒体を活用して放映するなど、都民の水害への意識を高める取り組みを進めてまいります。
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