平成三十年東京都議会会議録第八号

   午後三時十分開議

○議長(尾崎大介君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十番早坂義弘君。
〔百二十番早坂義弘君登壇〕

○百二十番(早坂義弘君) 昨日発生した大阪府北部の地震においてお亡くなりになった方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
 気象庁は、揺れの強かった地域では、地震発生から一週間程度、最大震度六弱程度の地震が発生する可能性があると発表しています。地域の皆様には十分注意をしていただきたいと思います。
 質問の冒頭に当たり、都議会の信頼回復について一言申し上げます。
 今定例会開会日に議長報告がありました。その内容は、いわゆる豊洲百条委員会において虚偽陳述をしたとして議長名で告発した二名の証人について、東京地検は不起訴処分と決定したというものです。
 我が党は、この告発を審議した昨年の第二回定例会で、豊洲百条委員会の報告書を都議会として認定することにも、都議会が偽証告発することにも、断固として反対いたしました。しかしながら、十分な根拠もないまま数の力のみで告発を強行した結果、不安は的中し、今回の不起訴処分となりました。
 そもそも昨年、偽証告発の前には、議会局が見解を求めた二名の弁護士からは、十分な証拠はなく虚偽の陳述であるとの証明は厳しい、また、偽証したとする動機も明らかになっていない、そして、両証人の人権に配慮が必要であるとの意見がありました。さらに、もし告発した場合、都議会に対して名誉毀損の訴訟を提起される可能性があり、軽々な告発は思いとどまるようにとの指摘がなされていたのです。
 申し上げるまでもなく、私たち都議会は裁判官でも検察官でもありません。百条委員会に与えられた告発という権限を行使する場合には、慎重かつ公平、公正であるのは当然のことでした。
 しかるに、今回、東京地検は、裁判を行うには嫌疑不十分であり、不起訴処分だとする判断を明確に下しました。この厳しい結果から目を背けてはなりません。
 私たち都議会は、委員会調査にご協力をいただいたお二人の証人にいわれのない疑いをかけ、著しく名誉を傷つけました。都議会として、公に謝罪し、真摯に反省するとともに、都議会の権能として両証人の潔白を証明すべきです。
 一部会派からは、嫌疑不十分はあくまで不十分であって、嫌疑なしということではないとの主張がありました。これはとんでもないことです。なぜなら、我が国では、判決が確定するまで、たとえ一審、二審で有罪とされたとしても、あくまで推定無罪なのです。ましてや、裁判にかかる手前で、嫌疑不十分だとして不起訴になった方に、嫌疑不十分はあくまで不十分なのであって、嫌疑なしということではないなどとの主張をする方の常識を疑います。
 また、このとき同時に決議された我が党の河野ゆうき議員に対する問責決議も取り消すべきであります。
 今回の過ちにどこまで真摯に向き合うのか、都議会のかなえの軽重が、今、問われています。我が都議会は誠実さを取り戻し、健全な議会へと再生していくべきだと冒頭に申し述べます。
 では、知事の基本姿勢について伺います。
 俗に政治は結果責任であるといわれています。この考え方に、知事は首肯なさいますでしょうか。それとも否定なさいますでしょうか。
 小池知事は就任以来、これまで議会と理事者が着実に進めてきた東京都の施策に大きな疑念があると問題視し、幾つもの東京大改革に取り組んできました。
 オリンピック競技施設の被災地への移転、豊洲新市場への移転中止と築地再開発、入札契約制度の変更。私たち都議会自民党から見ると、小池知事が取り組んだこれらの東京大改革の中心的課題は、一つも実を結ぶことなく、全てもとの施策に戻り、いたずらに時間と経費と関係者の意欲をそいだだけのように見えます。
 知事の任期は四年間です。それが間もなく折り返しを迎える中、現時点で、東京大改革の何が成功し、何が失敗したと自己評価されているのか、政治は結果責任との観点から、知事にお伺いをいたします。
 次に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会について伺います。
 パラリンピックの成功なくして二〇二〇年大会の成功なし、記録より記憶。知事が好んでお使いになる言葉です。
 二〇一二年ロンドン・パラリンピックは、史上最も成功したパラリンピックと称されています。ロンドン大会では、人々の態度や認識に影響を与え、障害者に対する態度を変えるとのレガシーが掲げられました。実際、大会後に行った政府の調査によると、国民の八〇%以上が、大会は障害者のイメージ向上のために有効だったと答えています。
 一方で、これとは反対の大変興味深い報告もなされています。イギリスの民間機関による、障害者を対象とした、大会後の障害者への態度の変化に関して、悪化したが二〇%、変化なしが五〇%と、極めて対照的な調査結果となっています。
 これまでイギリスの国民に、障害者は能力が劣る、あるいは障害者はかわいそうという先入観があったとすれば、それはパラリンピックを契機に払拭されたようであります。
 しかし、障害者を対象にした調査からは、それが行き過ぎて、あれだけのことができる障害者がいるのだから、この程度のことができないのは、その障害者の努力が足りないからだと感じる国民が存在するなど、市民感情は、意図せず、もう片方に振れ過ぎてしまったようにも見えます。実際、ロンドン・パラリンピック以降、イギリスでは、障害者に対するボランティアの数が減ったとも聞きます。
 私は日ごろの地元活動の中で、二〇二〇年大会についてお話しする機会が多くございます。その際、健常者の皆さんは、特にパラリンピックの理念に関して共感を抱くようです。
 一方で、不思議なことに、障害者の皆さんは、パラリンピックに対して驚くほど冷ややかだという印象を持ちます。それは、障害者の皆さんが、パラリンピックは自分とは別世界の話だと感じているからかもしれません。
 では、一体誰のためのパラリンピックなのでしょうか。
 客席を満席にすることは、パラリンピックの成功のための大きな目標の一つでしょう。それについて異論はありません。努力に努力を重ねてきたパラアスリートが渾身の力を振り絞って活躍する場面は、満席であってほしいと思います。また、パラアスリートの活躍を、全ての東京の子供たちに見てもらいたいとも思います。
 しかし、興行としてのパラリンピックの成功と、東京都がレガシーとして掲げる共生社会の実現とは、別問題だと考えます。今のままでは、パラスポーツにかかわり合いを持たない多くの障害者にとって、東京大会はロンドン大会と同じように、パラリンピックが開催されても、障害者への態度が何も変わらない、あるいはむしろ悪くなったという印象を持つということになりかねないと、私は危惧します。
 また、記録より記憶という言葉もそうです。
 私は平成二十八年第三回定例会で、スタジアムの客席や飲食店のバリアフリーについて提言いたしました。東京を代表するようなスタジアムであっても、車椅子の利用者は、障害者用に特別に設けられたエリアでの観戦を指定されます。そのことは、同行した健常者の仲間たちと離れて、一人ぽつんと観戦することを意味します。
 あるいは、私たちが日ごろ食べに行く食堂やそのトイレの多くには段差があります。したがって、何を食べたいかではなく、どこなら入ることができるかでお店を選ばざるを得ません。
 今日のこうした実態を考えれば、障害者の皆さんが二〇二〇年大会に求めるものは、記録でも記憶でもなく、共生社会の確立にほかならないはずです。にもかかわらず、記録より記憶とは、一体誰の視点なんでしょう。一体、どれだけの障害者が二〇二〇年大会に求めることが記録より記憶なんでしょう。当事者の視線が完全に欠落しています。
 つまり、パラリンピックの成功とは、二〇二〇年大会をきっかけに、誰もが障害の有無を意識せずに暮らしていける共生社会をスタートさせることにあると、私は考えます。
 では、知事のおっしゃるパラリンピックの成功とはどういうことを指すのか、教えていただければと存じます。
 折しも東京都障害者差別解消条例が提案されています。ここでは、東京都及び事業者に対して合理的配慮の提供が義務づけられています。
 そこでうたわれている合理的配慮の提供義務とは、事業者に過重な負担を強いるものではないとの説明を担当職員から受けました。
 例えば、飲食店の入り口に段差があっては、車椅子の方は入れませんし、お店のトイレの入り口が狭くては、そのお店で飲食することはできません。しかし、まちの小さなお店まで含めて、全てのお店にバリアフリー改修を命じることは、過重な負担を強いることになります。ゆえに、どの事業者にとっても、あくまで過重な負担のない範囲でと限定して、合理的配慮を義務づけるというたてつけです。
 そう聞けば、なるほど、もっともだとお感じになるかもしれません。しかし、ちょっと待ってください。
 何が過重な負担かの基準すら定めずに、この条例にうたう合理的配慮の提供義務は、社会にとって一体どんな影響力を持つのでしょうか。この条例により進める東京都の施策は、相談員の配置と普及啓発に努めることだけです。一体、相談と啓発だけで東京のバリアフリーが本当に進むと思っていらっしゃるのでしょうか。
 車椅子を使う我が友人によると、アメリカ国内では、ただの一度も車椅子で入ることのできなかったお店はないといいます。その友人の説明では、我が国ではバリアフリー改修は福祉の問題、一方でアメリカでは人権の問題、そこに違いがあるのだと思います。
 アメリカと日本は違うのは当然です。それはわかります。しかし、二〇二〇年大会を契機に東京を共生社会にしていくのが、大会のレガシーではなかったのでしょうか。その根幹にあるはずの障害者差別解消条例を、相談と啓発だけに終わらせてよいのでしょうか。また、そこで受けた相談を単なる相談に終わらせず、社会にフィードバックして、バリアフリーが少しでも進む仕組みになぜさせないのでしょうか。
 今こそ、都庁全体の政策を総動員して、共生社会の実現に向けた確かな歩みを進めるべきときであります。
 実は、私が大変感銘を受けた東京都の施策があります。それは一見、福祉とは縁遠いと思われる環境局のものです。前知事の時代、平成二十八年度からスタートした、環境性能の高いユニバーサルデザインタクシーへの補助のことであります。
 現在、都内を走るタクシーは五万台あり、そのほとんどがクラウンコンフォートという車種です。そのうちの一万台を五年間でジャパンタクシーという車種のハイブリッド車に切りかえていくというのが施策の内容です。この施策のポイントは、それが単なるハイブリッド車ではなく、車椅子でも乗ることができるユニバーサルデザインタクシーだということにあります。クラウンコンフォートとジャパンタクシーには百万円の差があり、国と東京都でその差額を補助、環境対策という第一の効果を発揮しながら、あわせて共生社会を実現するための大きな手助けともなる、実に見事な手法です。
 理念条例の策定は否定しません。しかし、具体的施策を伴ってこそ、共生社会は実現するのです。今こそ、都庁全体が共生社会実現のための具体的施策を次々と提案すべきときではないでしょうか。
 そこで、東京都障害者差別解消条例に実効性を持たせることに関して、知事のご見解を伺います。
 次に、ボランティアについて伺います。
 過日、組織委員会と東京都は、大会ボランティア八万人、都市ボランティア三万人を募集することを発表しました。参加のしやすさにも配慮し、交通費の提供などを盛り込むとともに、都市ボランティアについては、区市町村からの推薦を検討するとしています。
 都市ボランティア三万人のうち二万人は、競技会場周辺で観客の案内を行うことになります。日ごろから各地域でボランティア活動を行っておられる方々には、大会開催時にもボランティアとして活躍していただきたいと思います。そのためには、区市町村とも連携して取り組みを進めていくことが必要です。
 次はいよいよ九月から募集開始となります。都市ボランティアは、東京都のほかに、競技会場のある各自治体でも募集されると聞いています。したがって、全国では十一万人を上回るボランティアが必要となります。
 これだけ多くのボランティアの人数を確保するには、今まで以上に国民の参加意欲を高めていくことが必要です。
 そこで、多くの学生さんの参加が期待される全国の大学への働きかけを初め、応募促進に全力を尽くすべきと考えます。東京都の取り組みを伺います。
 次に、豊洲新市場移転問題、築地再開発問題について伺います。
 今回の千客万来施設に関するどたばた劇は、地元江東区や市場関係者の信頼を失い、都政にまた一つ大きな汚点を加える結果となりました。
 二年間の暫定利用と、二〇二〇年大会後に本格着工することに決定したという知事の判断は、単に課題を先送りにしただけにすぎません。本年八月に商業ゾーンを先行開業することを前提にした万葉倶楽部と東京都との基本協定も、もはや体をなしていません。
 知事は、豊洲新市場を食の発信基地にするとおっしゃっています。しかし、その一方で、築地市場跡地を食のテーマパークとする構想は、くすぶったまま残っています。
 一連の事の本質は、昨年六月の市場移転に関する基本方針が、知事がどなたとも調整せずに発表したことにあります。それゆえ、その都度その都度、苦し紛れの対応を重ねざるを得ず、問題がさらに厄介になっています。
 本年十月十一日の豊洲開場に合わせた千客万来施設の暫定利用開始を考えた場合に、相当なスピード感を持って、その内容や規模、実施の方法など、地元江東区が納得できる形で決定しなければなりません。
 聞くところによると、今月二十九日には、江東区議会清掃港湾・臨海部対策特別委員会が開催されるとのことです。知事みずから交渉し、決定なさった千客万来施設の暫定利用について、今後いつからどのように取り組むのか、またいつまでに結論を出すのか、江東区にどのようなタイミングで回答するのか、万葉倶楽部との基本協定の見直しはいつまでにどのような内容で行うのか、お決めになった知事なら明確にお答えになれると思います。ご見解を伺います。
 豊洲新市場は、閉鎖型でコールドチェーンが整った活気ある市場として機能することが重要です。産地から市場へ、そして市場から消費者へと、円滑かつ確実に生鮮食料品を送り届ける物流は、市場機能の中核であり、生命線であります。
 場内の商品の流れにおいては、温度管理が隅々まで行き渡るルールの徹底が、鮮度維持を図るために欠かせません。また、市場業者にとっては、定温管理などに要する光熱水費の負担が、今後の経営における重要な関心事となっています。さらには、市場の担い手である市場業者が、深夜、早朝から働く環境整備として、通勤用駐車場の確保も必要です。
 そして、最も深刻なことですが、移転延期決定後にもたらされたいわれなき風評被害によって、市場業者は厳しい経営状況にさらされながら商売を営んでいかなければなりません。
 こうした諸課題について、我が党は、豊洲新市場への移転準備に着実に取り組むよう、折に触れて要望してまいりました。豊洲新市場開場まで四カ月を切った今、東京都と市場関係者との間でどのような合意に至っているのか、あわせて、合意に至っていない残された課題は何があるのか、ご見解を伺います。
 次に、受動喫煙防止条例について伺います。
 受動喫煙防止は、我が都議会自民党の公約であり、私自身も、ぜひ積極的に進めていただきたいと心から願う一人です。しかしながら、そのことと、今回提出された条例案がよいものかというのは別の話であり、残念ながら、この条例には問題が多く、賛成できないというのが、我が党の考えです。
 その理由に関連して、二つお伺いをいたします。
 東京都は、昨年九月、店舗面積三十平米以上の喫煙に対して規制をかける方針を示し、パブリックコメントを実施しました。これに対して一万七千件の意見が寄せられたうち、賛成意見は六千五百件にとどまったと、当時、マスコミなどで盛んに報じられました。
 しかし、パブリックコメントで寄せられた都民の声を何ら生かすことなく、突如、面でなく人に着目、つまり、これまでの店舗面積で判断するという考え方から、従業員の有無で判断するという新しい考え方を提案されたのはどうしてなのでしょうか。そして、これだけ大きな変更なのにもかかわらず、今回はなぜかパブリックコメントは行わない。また、飲食業を営む中小事業者団体からは多くの不安の声が寄せられています。
 都民や関係者の理解を得ようとしないままこうした条例制定に突き進む姿勢は、条例制定に係るプロセスを著しく欠いていると思います。このことに関する知事のご見解を伺います。
 次に、この条例の実効性について伺います。
 受動喫煙防止策に関して、屋内においては、面積に着目した国の法律と、人に着目した都の条例、そして屋外においては、区市町村にそれぞれの条例があるなど、極めて複雑な仕組みとなっています。どこで吸うことができて、どこで吸うことができないのか、判断に苦しむのは、何も東京を訪れる外国人観光客に限らず、私たち都民も同じです。
 また、店舗における従業員の有無の確認や実際の取り締まりなどを行うのは、区市町村の役割です。では、既に区市町村から理解を得られ、その準備が少しでも始まっているのかといえば、甚だ疑問に感じざるを得ません。
 ラグビーワールドカップや二〇二〇年大会を念頭にという余り、準備が何一つ整っていない中でスタートさせては、条例の実効性が担保されません。そして、そのような条例は、受動喫煙防止を心から願う都民の一人として、大変不満に思います。
 そこで、東京都は、この条例の実効性をどのように担保するのか伺います。
 次に、里親認定基準の要件緩和について伺います。
 虐待などの事情で、いわゆる社会的養護のもとにある児童は、都内で四千人に上ります。こうした子供たちは、可能な限り家庭と同じような環境で暮らせることが望ましいと考えます。
 東京都は、十一年後の二〇二九年度までに、現状四割の家庭的養護を六割にまでふやすことを目標としています。そして、このたび、その受け皿の一つとなる養育家庭、里親認定の要件を緩和する方針を示しました。親元で暮らせない児童が一人でも多く里親のもとで健やかに育まれることが大切だと思います。
 しかし、要件の緩和によって単純に数をふやせばよいわけではなく、最も重視すべきは、子供にふさわしい里親がしっかりと認定されることです。
 そこで、里親としての質の確保、子供にとって適切だとする認定がどのようになされるのか伺います。
 児童虐待について伺います。
 児童虐待の件数は年々増加しており、中には死に至る大変痛ましい事件も発生しています。本年三月には、目黒区で、当時五歳の女の子が両親からの虐待により幼い命を奪われるという事件が発生しました。この事件では、亡くなった女の子が書き記したノートが明らかになったことで、社会に大きな衝撃を与えました。大変悲痛な事件であり、亡くなられたお子さんに心からお悔やみを申し上げます。
 この家庭には、当初住んでいた香川県においても児童相談所が関与しておりました。しかし、本年一月に都内に転居したことにより措置解除となり、情報共有が十分でなかったことが対応のおくれにつながりました。切れ目のない対応を行うために、情報共有のルールを確実なものにしていくことが重要です。
 また、増加する相談件数に対応するための職員体制の充実も欠かせません。
 現在、都内十一の児童相談所に二百七十三人の児童福祉司が配置されています。この三年間では六十四人が増員されました。毎年増員しているにもかかわらず、いまだ国基準には達していない状況です。さらに深刻な事態がふえていることから、警視庁との情報共有制度の見直しも早急に進めるべきであります。
 今回の事件を踏まえ、二度とこうした不幸な事件が繰り返されることのないよう、十分な検証と具体的な対策を強く求めておきます。
 そこで、東京都は、自治体をまたぐ児童相談所間の情報共有についてどのように取り組んでいくのか伺います。
 東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例案について伺います。
 我が国と欧米諸国では、人権尊重に係る歴史と社会的背景が大きく異なります。したがって、差別解消をうたうよりも、まず人権に関する相互理解を促進すべきというのが我が党の考えです。そのためには、現在国が進めている取り組みと連携して、多くの当事者の声を受けとめ、性的指向、性自認に関する広く正しい理解を促すことが必要です。
 現在、パブリックコメントを実施中ですが、本条例の制定は余りにも拙速といわざるを得ません。条例案は三定に提案されると伺っています。知事のご見解を伺います。
 さて、本年三月、港湾局と建設局は連名で高潮浸水想定区域図を発表しました。すなわち、過去最大級のスーパー台風が襲来し、高潮が発生して堤防が決壊した場合に想定される浸水区域図であります。
 その内容は実にショッキングで、最悪の場合、二十三区の三分の一に当たる面積が浸水、墨田区では区内の九九%、葛飾区は九八%、江戸川区は九一%が水につかるとされています。また、江東区亀戸七丁目や中央区築地五丁目では、最大浸水十メートルと想定される箇所もあり、これは四階以上に避難しないと助からないというレベルです。
 こうした高潮災害が発生した場合の命を守るための避難について、避難場所、避難のタイミング、避難手段の三つの観点から考えてみたいと思います。
 まず、避難場所です。
 現在指定されている広域避難場所は、地震災害時の火災からの避難を想定したものであって、高さは全く考慮されていません。それゆえ、河川敷が広域避難場所に指定されているところもあります。
 では、どこに避難したらよいのでしょうか。水防法の定めによれば、避難計画を策定するのは区市町村の役割です。高い建物に避難することが必要となりますが、五メートルの浸水被害予測がある地域では、三階以上に避難することが求められます。
 では、住宅地のエリアに三階以上の建物がどれだけあるでしょうか。地震災害の際に避難所となる公立小中学校も、三階以上の高さとなると、体育館は使えません。
 区内での避難が困難ならば、区外への避難ということになります。ならば、どの区や市なら安全なのでしょうか。そこに頼れる親戚や友人宅があればよいのですが、なければどうしたらいいでしょうか。離れた区や市の公立小中学校などを避難者用に開放していただくことが考えられますが、そのためには、区市町村や県をまたいだ広域調整が必要となります。
 次は、避難のタイミングです。
 堤防が決壊するほどの台風では、二十四時間前では、もはや雨風が強くなり過ぎていて、大勢の住民が避難するタイミングとしては遅いと思われます。しかし、本当に浸水するかどうかわからない状況で、雨風が弱いうちから区外に避難する人が実際にどれだけいるでしょうか。現実には、堤防決壊の危険性が相当に高まってから避難する方がほとんどだろうと思います。
 三つ目には、避難手段です。
 今申し上げたとおり、実際の避難行動が雨風が相当強くなってから始まるならば、子供や高齢者、障害者を含めた多くの都民の皆さんには、どのような手段で安全に区外まで避難していただくのでしょうか。少し考えてみただけで、区市町村の責務である避難計画の策定は極めて難航することがわかります。
 東京都は広域自治体として、避難対策を進める区市町村を支援する立場にあります。
 そこで、大規模水害に対する広域避難の取り組みをどのように進めていくのか伺います。
 今から百一年前の一九一七年には、大正六年の大津波という名前で知られる高潮被害が発生し、都内に大きな被害をもたらしました。このときの事例が大変参考になります。
 この水害がどれくらいの深さだったかは、例えば江東区役所の前に設置されている青い色の標識に記されています。海抜ゼロメートル地帯のこのあたりでは、大正六年の大津波で深さ四メートルを超える浸水があったことが、この標識を見上げることでわかります。私たちは、災害の被害想定を見聞きしても、まさか自分が巻き込まれるはずがないだろうという正常化の偏見にとらわれ、実際の避難行動に結びつけるのはなかなか難しいのが現実です。
 だとするならば、ソフト対策、すなわち有効な避難手段を検討することはもちろん、水害対策の根幹である堤防そのものの耐震化や、避難場所ともなるいわゆるスーパー堤防の整備などのハード対策をミックスしていくことが重要です。
 そこで、東部低地帯における河川施設の整備について伺います。
 次に、分譲マンションの適正な管理について伺います。
 今日、都内総世帯数の四分の一が分譲マンションに住んでいます。その数は百八十万戸に上り、全国の分譲マンションの三割に当たります。つまり、分譲マンションといえば、いかにも東京を象徴する居住形態だといえます。
 さて、昭和五十八年以前に建てられたマンションは、都内全体の四分の一を占めます。この年に区分所有法が改正されましたが、改正前には、分譲マンションの管理組合設置義務はありませんでした。かつて昭和五十年代に供給されたマンションは、今や築四十年。今後、老朽マンションはどんどんふえていきます。一方で、分譲マンションに住まう住民の高齢化も進んでいます。
 そうした中、管理組合がない分譲マンションで、建物の老朽化、住民の高齢化という二つの老いがさらに進むと、機能不全が発生し、治安上の悪い影響を及ぼす可能性があるとの心配があります。こうした事態を招かぬよう、東京都は分譲マンションの管理適正化に向けて努力すべきであります。
 東京都は本年三月、学識経験者などで構成する検討会を設置しました。
 そこで、この検討会における議論の内容と、今後の東京都における分譲マンションの管理適正化に向けた取り組みについて伺います。
 次に、都立高校について伺います。
 東京都教育委員会はこれまで、都立高校改革に取り組んできました。その結果、例えば進学面では、都立高校の復権と賞されるほどの実績を上げ、注目を集めてきました。
 しかし、昨年度に行われた都立高校全日制課程の入学者選抜においては、一次募集、二次募集で定員が埋まらず、三次募集を実施した都立高校が三十一校ありました。ちなみに、三次募集を行った都立高校は、前年はゼロ、前々年は一校でした。また、都立高校全体でも応募倍率が低下しています。これは恐らく、いわゆる高校の無償化によって、学費の面で私立高校に進学しやすくなった結果によるものだろうと思われます。
 こうした状況において、今後、都立高校が進学先として生徒に選ばれる高校となるためにどのように対応していくのか、東京都教育委員会のご見解を伺います。
 次に、部活動の充実に向けた部活動指導員の活用について伺います。
 昨今、学校の教職員だけで行う部活動指導では、技術指導の面で生徒の期待に応えられなかったり、あるいは教職員の手が足りず、部活動を維持強化したりすることに限界が見られています。
 こうした課題を解決するため、東京都教育委員会は、今年度から部活動指導員制度を導入し、高い専門性や経験豊富な外部人材を活用しています。
 そこで、部活動の充実に向けたこの制度による学校支援策について伺います。
 次に、性教育について伺います。
 人が結婚して家庭を築き、新しい生命が誕生するということは極めて崇高なことであります。我が党は、こうした営みについて学ぶ性教育を重要な学習であると考えます。
 中学校の学習指導要領には、道徳教育において、家族愛、家庭生活の充実、生命のとうとさなどを取り上げることが示されています。学校における性教育についても、こうした価値を重視しながら進めるべきと考えます。
 そこで、学校における性教育が偏った内容や行き過ぎた内容にならぬよう、学習指導要領に基づいて指導すべきと考えます。東京都教育委員会のご見解を伺います。
 さて、東京都は昨年六月から、入札契約制度の変更により、比較的大規模な案件に課してきたJV結成義務を撤廃し、JVを組まない単独入札を認める混合入札を導入しました。JV結成義務とは、昭和五十年からスタートしたもので、大規模工事への入札参加に当たり、大企業と都内中小企業とのJV結成を義務づけるものです。
 これには、都内中小企業にとって、二つの意義があります。一つは受注機会の確保、もう一つは技術力向上のチャンスです。都内中小建設業で構成される団体からは、JVはふだん参加できない大規模な工事に参加し、大企業からノウハウなどを学ぶことができる人材育成の貴重な機会であるゆえ、JV結成義務を残してほしいとの意見が多数聞かれます。
 そこで、建設業の担い手の育成、確保の観点から、今後も都内中小企業が人材育成を図れる環境を整備していくべきと考えます。ご見解を伺います。
 設計業務などの品質確保に向けた取り組みについて伺います。
 公共工事の品質を確保するために欠かせないのが、設計、施工、管理という一連のプロセスの上流にある設計業務などが適切に実施されることです。設計業務などの品質確保に向けては、従来から進めてきた取り組みをさらに進めていく必要があると考えます。ご見解を伺います。
 工業用水道について伺います。
 高度経済成長時代、都内城東地域では、中小零細工場が地下水をくみ上げ、利用していました。一方で、このことが地域全体の地盤沈下を引き起こし、海抜ゼロメートル地帯の深刻な問題となっていました。このため、東京都は、地盤沈下対策の一つとして工業用水道を整備し、地下水の揚水規制を行った指定地域内の製造業者に、工業用水道の給水を行ってきた経緯があります。
 東京都はこのほど、利用者の減少による赤字経営や老朽化による維持修繕費の観点から、工業用水道の廃止に向けた検討を始めました。
 東京都の工業用水道を使用している企業の八割が、古くから地域で頑張っている中小零細工場であり、わずかな経営環境の変化でさえ、会社の死活問題に直結するといっても過言ではありません。
 都立皮革技術センターで開催された説明会や用水型皮革関連企業協議会からの要望書でも、東京都の廃止方針に対して、企業存続を危ぶむ切実な意見が出されています。行政施策として始めた工業用水道事業の見直しで、間違っても企業経営が立ち行かなくなることがあってはなりません。
 工業用水道事業の課題は長年の行政課題であり、また、対象となる企業の抱える課題はさまざまです。
 このため、東京都は、各ユーザーの実情を把握し、必要とされる対策を講じるとともに、企業発展につなげていくよう取り組むべきであります。ご見解を伺います。
 あわせて知事は、知事みずからの責任において、今まで努力してきた各ユーザーに対し、誠意を持って説明し、理解を得るべきことを申し添えます。
 中小企業振興について伺います。
 東京の持続的発展のために不可欠なのは、何をおいても産業の活性化であります。福祉や環境など東京が直面するさまざまな都市問題の解決も、豊かな経済の支えがあってこそだといえます。
 そして、その中心となるべきは、東京にある企業の九九%を占める中小企業の成長にほかなりません。そのためには、事業活動の生産性を高める設備投資が重要です。
 東京都は今年度、助成金の拡充や専門家を活用した先端設備の導入支援など、さまざまな施策を展開し、省力化や収益の強化を目指す中小企業の設備投資を後押しすることとしております。
 あわせて国も、金融施策の実施など、支援を強化しています。国は、新たな税制上の軽減措置を創設し、一定の要件を満たした中小企業の設備投資に係る固定資産税について、特例割合を自治体の判断でゼロから二分の一の範囲内で決定できることになりました。
 こうした国の動きを踏まえ、東京都では、中小企業が新規に導入する設備に対して、固定資産税の特例割合をゼロ、すなわち税負担をゼロにする都税条例改正案が本定例会に提出されています。その狙いについて伺います。
 しかし、こうした施策は、企業のもとにその情報が届かなければ、その効果は生きてきません。東京都は、生産性向上につながる設備投資の促進に向けて、関係各局の協力と区市町村などとの連携により、中小企業支援策の効果的な周知と活用を図るべきと考えます。ご見解を伺います。
 中小企業の海外展開支援について伺います。
 深刻な人口減少により国内市場が収縮する中、都内企業が海外の需要を取り込むことは重要であります。地域内の関税が撤廃されたASEAN地域などを初めとする東南アジア圏は、市場としても大いに有望視されており、ここをターゲットと定め、海外展開に踏み切ろうとする中小企業の動きも高まっています。
 一方、経営資源が限られた都内中小企業にとって、海外での生産拠点の設置など、現地での本格的な事業展開は、資金面や人材面でのリスクが大きく、チャンスをつかみたいという意欲はあっても、現実のハードルは高いといえます。
 東京都は現在、東南アジア地域に現地事務所を設置し、進出する中小企業への幅広いサポートを実施しています。
 今後も、中小企業が海外での取引を継続、拡大させていくためには、投資負担の少ない海外展開に向けたサポートを拡充するなど、支援策のさらなる強化が重要だと考えます。ご見解を伺います。
 次に、ビジネスチャンス・ナビについて伺います。
 我が国全体の産業が持続的な成長を遂げるには、東京のみならず、全国の中小企業が、二〇二〇年大会を契機に、さらなる成長のきっかけを得ることが重要です。そうした観点からすれば、大会関連を初めとするさまざまな受発注情報を集約して企業同士を結びつける、ビジネスチャンス・ナビの果たすべき役割は大きいものと考えます。
 所管の産業労働局は、ビジネスチャンス・ナビの利用促進を図るため、中小企業などに対する登録促進や発注案件の掘り起こしに取り組んでいます。しかし、それだけにとどまることなく、全庁を挙げて取り組んでいくことが必要です。
 また、現在、利用登録を済ませた二万五千社のうち、九割弱が都内企業であることから、全国の企業への働きかけがいまだ成果に結びついていないようであります。
 そこで、ビジネスチャンス・ナビが全国の中小企業にとって真に役立つものとなるよう、他の道府県との連携も含めて、取り組みをさらに強化、加速させていくべきと考えます。ご見解を伺います。
 次に、観光振興について伺います。
 急増する外国人旅行者を迎えるため、まち中において、観光案内機能や観光PRをさらに充実させることが必要です。ここでは三つ例を挙げます。
 一つ目がWi-Fiです。スマートフォンを片手に都内を歩く外国人観光客を見かけぬ日はありません。先進都市として、まち中のWi-Fi環境整備は不可欠です。
 二つ目は、観光ボランティアです。旅行者とコミュニケーションをとりながら、まち中の案内を行う観光ボランティアは、二〇二〇年大会で募集する都市ボランティアでも、その中心的役割を果たすことが期待されています。
 三つ目は、まち中の広報媒体です。上屋つきのバス停やタクシー乗り場などのまち中空間を広報媒体として活用することは、効果的な観光PRにつながると考えます。
 来年のラグビーワールドカップ、そして二〇二〇年大会を控え、まち中での観光案内機能や観光PRのさらなる充実に向けた、こうした取り組みを強化させていくことが重要だと考えます。ご見解を伺います。
 次に、都市農地の保全について伺います。
 都内に暮らす私たちにとって、農地は、食料生産の場としてはもとより、食育など教育的要素や、いっとき避難場所としての防災機能など、日常生活においても多面的にその役割を果たしています。しかし、農地の減少には歯どめがかかりません。
 東京都はこれまでも、農地保全に向けてさまざまな施策を繰り出してきています。しかし、その成果は十分とはいいがたいというのが実情です。今後は、さらに知恵を絞り、多面的、複合的に施策を繰り出していくことが不可欠です。
 一つは、これまで我が党が訴えてきたように、産業政策としてだけでなく、まちづくりや税制改正への取り組みなど、関係部局が連携し、複合的にこの問題に当たる体制を築くことです。今年度予算では、その兆しを感じ、期待しています。
 もう一つは、現在国で審議されている相続税納税猶予制度を適用可能にする、都市農地の貸借に係る法律の有効活用であります。そして、生産性と収益性の向上であります。
 おのおのの農業者が抱える課題は、個別性が極めて高いものです。きめ細かく周知や相談に対応することが求められています。
 加えて、意欲の高い積極的な農業者に対するさまざまな支援メニューを用意することも必要です。
 こうした観点から、都市農地の保全に係る施策を展開すべきと考えます。ご見解を伺います。
 さて、知事は、就任以来進めてきた顧問団行政をようやく廃止しました。今後は、都庁職員を信頼し、私たち都議会と真摯な議論を重ねることで、知事としての意思決定を行っていただきたいと思います。間違っても、ご自身の思いつきを、AIが決めたなどとおっしゃることはやめにしていただきたいと存じます。
 かつて都民の皆さんが小池知事に抱いた希望は、まことに残念ながら、この二年間で失望に変わりました。しかし、知事の人気は落ちても、任期はまだ二年あります。
 冒頭、政治は結果責任と申し上げました。残された二年間は、都民、私たち都議会、そして都庁職員の声に耳を傾け、結果を出していただきたいと思います。
 最後に、一部の月刊誌、週刊誌において、知事がカイロ大学を首席で卒業したという経歴について疑義があると報道されていることについて伺います。
 知事は、先週の記者会見において、このことに対する記者からの問いに正面からはお答えになりませんでした。この際、要らぬ疑惑を晴らしておくことが、ご自身のためだろうと存じます。知事のご見解を伺います。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 早坂義弘議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、二年間の自己評価についてのご質問がございました。
 東京大改革に対します都民の大きな負託に何としてでも応えていく、その思いでこの二年間、都民目線に立って都民のための改革を進めてまいりました。
 幾つかのご質問ございます。
 まず、ご指摘のオリンピック会場につきまして、経費の縮減、そして大会招致の際の理念であります復興五輪の実現に向けて、ここは見直しのラストチャンスだということで、その可能性を最大限追求をいたしてまいりました。
 この見直しは、経費縮減につながり、また、原点である復興五輪の理念に改めて光を当てることになった、そのことは大会開催に対しての都民、国民の理解を得ていく上で重要であったと、このように考えております。
 また、築地市場の移転におきましては、安全に万全を期すため立ちどまったことで、地下水モニタリングの数値が大きく変動したことも確認をできたわけでございます。これによりまして、まさに今、都民に安心を実感していただくための対策を着実に講じることができていると考えております。
 さらに、このたびの入札契約制度改革でございますが、応札者数が増加をいたしましたとともに、応札者が一者のみの案件の割合も半減をいたしております。入札の競争性、透明性を高める上で成果があらわれたものと考えております。
 いずれも都民ファーストの観点から看過すべきではないと判断した問題でありまして、果敢に取り組んだ結果、都民のためとなる成果が上がったと確信をいたしております。
 このように、過去約二年間、都民が都政に何を求めているのかを判断基準といたしまして、都民のための都政運営に邁進をしてまいりました。その評価は、都民の皆様方にお任せしようと思います。
 私は、引き続き、都民のための一心で東京大改革を推し進め、都民のためにも結果を出していきたいと存じます。都民のためへのご協力、よろしくお願いを申し上げます。
 続きまして、パラリンピックの成功についてのお尋ねがございました。
 IPCのパーソンズ会長は、パラリンピックの価値は、障害のある人への理解が大きく変わることだ、大会を終着点ではなく、人々の変化の通過点にしたいとおっしゃっておられます。
 パラリンピックの価値というのは、ダイバーシティーへの変革をもたらすところにあり、パラリンピックの成功というのは、その価値を社会に根づかせることにあると考えます。
 そのため、まずは多くの都民、国民にパラスポーツの魅力や迫力を発信し、東京二〇二〇パラリンピックの会場を満員の観客で埋め尽くしてまいりたい。パラスポーツをしっかりと社会に根づかせて、これまでスポーツにかかわりのなかった障害者の方々も含めまして、誰もがスポーツに親しめる環境を築いてまいります。
 また、スポーツだけでなく、あらゆる分野で障害者がその能力を生かせるよう、ハード面はもとより、心のバリアフリーなどソフト面のバリアフリー化をさらに進め、障害者の社会参画を推し進めてまいります。
 パラリンピックを契機といたしまして、障害者や高齢者など全ての人々に優しいまちづくり、社会づくりにつながる取り組みを、全庁を挙げて加速させてまいります。そして、私が目指しますダイバーシティーを着実に実現し、障害のある人もない人も、互いに尊重し、支え合う共生社会をつくり上げてまいります。
 障害者差別解消条例の実効性の確保についてのお尋ねがございました。
 都は現在、障害者や高齢者などを初め、全ての都民が安全・安心、快適に過ごすことができるように、東京都福祉のまちづくり推進計画を策定いたしまして、ハード、ソフトの両面からバリアフリーを推進いたしております。
 計画には、公共交通や建築物、道路といったハード面に加えまして、さまざまな障害特性などにも配慮いたしました情報バリアフリーの充実など、ソフト面でのバリアフリーについての施策を盛り込んでおります。お話のございましたユニバーサルデザインタクシーもその一つでございます。
 本条例は、こうしたバリアフリーの施策に加えまして、社会全体で障害のある方々への理解を深める、そして差別を解消する取り組みを一層推進するために、障害者差別解消法の規定に加えまして、合理的配慮を民間事業者に義務づけるほか、相談、そして紛争解決の仕組みを整備するなど、差別解消への実効性を高めるものでございます。
 この条例を一つの契機といたしまして、障害を理由に分け隔てられることのない共生社会の実現に向けた取り組みを加速してまいりたいと存じます。
 千客万来施設事業についてのお尋ねがございました。
 千客万来施設事業は、豊洲ならではの活気やにぎわいを生み出し、豊洲市場の魅力を高める上で大変重要な事業でございます。そして、事業者である万葉倶楽部とは、事業実施に向け、基本方針、築地再開発に関する都の考え方の説明も含めまして、これまでさまざまな協議を行ってまいりました。
 こうした協議の積み重ねに加えまして、先月三十日、万葉倶楽部の高橋会長との会談で、率直な意見交換を行いまして、信頼関係の回復が図られたところでございます。事業をともに進めていこうという共通の認識に立つことができたと存じます。
 今回、事業者から、東京二〇二〇大会後、速やかに施設整備に着手する旨の新たな提案を受けまして、協議に応じる判断をしたものでございまして、現在、事業者との間で具体的なスケジュールなどの課題整理を進めているところでございます。
 今後、建設工事の着手時期や完成時期などを含めました協定を事業者と締結をいたしまして、確実な施設整備を図ってまいります。
 また、それまでの間も豊洲市場に継続的ににぎわいを創出していくために、現在、五街区及び六街区の千客万来施設用地を活用したさまざまなイベントや、仮設建物によります事業などについての検討を進めているところであります。
 また、千客万来施設事業の推進に当たりましては、何よりも地元である江東区のご理解を得ることは大変重要でございます。この間の一連の経緯や都の対応につきましては、私から直接区長にご説明させていただいてはおりますが、急な展開だったとはいえ、江東区や江東区議会の皆様に、事前に十分な調整、そしてご説明ができず、ご心配をおかけしたところでございます。
 引き続き、今回の経緯につきましては丁寧にご説明するとともに、千客万来施設を確実に整備することや、それまでの間のにぎわい創出に向けた方策を早急にお示しすることで、江東区の皆様のご理解を得てまいりたいと考えております。
 事業者、そして江東区の皆さんと力を合わせまして、活気とにぎわいにあふれ、地域に親しまれる豊洲市場をつくり上げてまいりたいと考えております。
 次に、受動喫煙防止条例についてのご質問がございました。
 昨年九月に公表いたしました基本的な考え方では、バー、スナックなどを対象といたしまして、店舗面積三十平方メートル以下で従業員を使用しない店、または全従業員が同意した店については喫煙可能とする例外措置を設ける案を提示させていただきました。この例外措置の対象となる店舗は、都内の全飲食店の約九%でございました。
 これに対するパブリックコメントでございますが、賛成が約六千件、反対が約五千件、加熱式たばこは規制対象外とすべきといった一部反対が約三千件、雇用者の喫煙可の方針に従業員が反対意思を示すことは困難といったご意見もございました。
 こうしたご意見を踏まえまして、本条例では、店舗面積などにかかわらず、全ての飲食店を原則屋内禁煙とした上で、従業員を使用しない店のみを例外としたものでございます。その結果、例外となる飲食店は約一六%となっております。
 また、加熱式たばこにつきましては、健康影響が明らかになるまでの間、健康増進法改正案と同様の取り扱いとすることといたしております。
 飲食店の皆様からは、平成二十六年に設置した受動喫煙防止対策検討会を初め、平成二十九年度、三十年度の予算要望の際などに、喫煙環境は事業者の判断に委ねてもらいたい、喫煙等のステッカーでお客様が店を選択する仕組みにしてほしいなどのご意見を一貫して頂戴いたしております。
 本年四月二十日に発表いたしました骨子案でございますが、こうした都民や事業者の皆様からのご意見を踏まえた上で取りまとめたものでございます。
 その公表後も、改めて区市町村、事業者、関係団体のご意見を十分に伺いまして、今回の条例案を策定いたしております。
 この条例案に関して、都民を対象に都が行いました調査では、今月行った調査でございますが、よい施策である、どちらかといえばよい施策であるが約七四%、どちらともいえないが約一六%、よい施策ではない、どちらかといえばよい施策ではないが約一〇%となっておりまして、多くの都民の方々にご賛同いただいているものと考えております。
 条例の実効性の担保につきまして、この条例は、現在、国会で審議されております健康増進法の改正案と整合を図っておりまして、可決され、施行した場合、従業員を使用していない飲食店以外は、全て原則屋内禁煙という、法案と同一の規制がかかることとなります。すなわち、条例案は、国の法案に上乗せ、横出しを行うものでございまして、同一の対象に異なる規制を設ける、いわゆるダブルスタンダードにはなっておりません。
 法案におきましては、原則屋内禁煙となる飲食店の割合、約四五%、都道府県知事及び保健所設置市区長が指導、勧告や命令、罰則の適用などの業務を担うことといたしております。
 この条例での上乗せ、横出しによりまして、原則屋内禁煙となる飲食店は約八四%となりますが、指導、勧告などの業務につきましては、法案同様に保健所設置市区長に担っていただきたいと考えております。
 現在、各保健所では、飲食店の営業許可や監視指導を行う中で管内の飲食店の状況を把握しておりまして、改正法案及び都条例に伴います新たな業務につきましても、適切な対応が可能である、このように考えております。
 今後、保健所を設置している区市とは、地方自治法に基づきます協議を行っていく予定でございます。区市町村と連携協力しながら、受動喫煙防止対策をより一層推進してまいりたいと考えております。
 人権尊重の新条例についてのお尋ねがございました。
 東京二〇二〇大会を控えまして、また、新たな人権に対する社会の関心が急速に高まる中で、できる限り早く、いかなる種類の差別も受けることなくという人権尊重の理念実現に向けました決意を都として示し、引き続き、さまざまな人権課題へ対応していくことが求められております。
 また、ホストシティーとして、国際社会の視点から、新たな人権課題にも光を当てることが必要でございます。
 そこで、人権尊重の理念に加えまして、性自認や性的指向等に基づきます差別の解消と啓発などを車の両輪として推進する姿勢を、今こそ条例として示すことが重要と考えております。
 これまで、当事者の方々、さまざまな分野の専門家から個別にご意見を伺いまして丁寧に検討し、条例案の概要を策定いたしました。
 今後、都議会の皆様とのご議論、パブリックコメント、区市町村の意見も踏まえまして条例案を精査いたし、第三回の都議会定例会におきましてご審議いただく予定でございます。
 都といたしましては、条例化を通じて、人権尊重の理念を東京の隅々まで浸透させて、都民の皆様と意識を共有し、国内外に向けて強く発信することで、あらゆる人々のさまざまな人権が尊重される都市東京を実現してまいりたいと考えております。
 最後に、私の経歴についてのご質問がございましたが、これまで何度も申し上げておりますとおり、正式なカイロ大学の卒業証書及び卒業証明書を有しておりまして、大学側も、幾度もこの卒業を認めているところでございます。
 なお、首席につきましては、当時の担当教授の言葉をうのみにしたということでございまして、そのことでうれしくなって、その旨を記述したということでございます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、今後の都立高校のあり方についてでございますが、真に社会人として自立し、我が国の将来を担う人材の育成のためには、都立高校と私立高校が互いに切磋琢磨しながら、教育の質を向上させていくことが重要でございます。
 このため、都教育委員会は、難関国立大学等への進学を目指す進学指導重点校や、主として不登校経験のある生徒を受け入れるチャレンジスクールなど、個々の生徒の希望、適性に応じた多様な学校づくりを推進してまいりました。
 今後、本年度中に都立高校改革推進計画の次期実施計画を策定する予定であり、その中で、各学校の特色化、活性化に向けた方策を具体化するとともに、個の状況に応じたきめ細かい指導の充実を図ってまいります。あわせて、それらの取り組みを積極的に発信することなどを通じて、都民の期待に応え、魅力ある都立高校を目指してまいります。
 次に、部活動指導員の活用についてでございますが、学校が部活動指導員を効果的に活用できるようにするためには、その資質の向上を図るとともに、教職員と適切に連携し、指導できるようにすることが重要でございます。
 そのため、都教育委員会は、本年四月、全ての部活動指導員を対象に、部活動の意義や生徒の発達段階に応じた指導、安全確保や事故対応等に関する研修会を実施し、学校組織の一員としての自覚を促しました。
 今後、部活動指導員同士がよりよい指導のあり方を協議する機会を設定するとともに、教職員との連携、協働や指導、運営に係る校内体制の整備等に関するガイドラインを作成、配布するなどして、学校における効果的な部活動指導員の活用を支援し、部活動の一層の充実を図ってまいります。
 最後に、学校における性教育の進め方についてでございますが、学校における性教育は、児童生徒の人格の完成を目指す教育の一環であり、人間尊重の精神に基づいて行うとともに、児童生徒が性に関する正しい知識を身につけ、適切な行動を選択できるよう進めていく必要がございます。
 そのため、全ての児童生徒に学習指導要領に示された内容を確実に指導するとともに、性情報の氾濫等の実情を踏まえ、児童生徒等の状況に応じ、保護者の理解を得ながら、個別やグループ等での対応を行うことも必要であります。
 都教育委員会は、学校における性教育を通して、児童生徒が自分の行動に責任を持ち、相手を尊重した適切な行動ができるよう、区市町村教育委員会等と連携しながら取り組んでまいります。
〔東京都技監西倉鉄也君登壇〕

○東京都技監(西倉鉄也君) 東部低地帯における河川施設の整備についてでございますが、三百万人の都民が暮らす東部低地帯には、都と国が管理する多くの河川が流れておりまして、地震や豪雨、高潮などによる水害に対処いたしますため、河川施設の整備を推進することが重要でございます。
 都は、隅田川や中川などにおきまして、最大級の地震が発生した際にも施設の機能を保持するよう、堤防や水門などの耐震、耐水対策を推進しております。
 また、国は、江戸川や荒川などにおきまして、洪水による決壊を防ぐとともに、一地区でも完成すれば避難場所ともなりますスーパー堤防の整備を進めております。
 このうち江戸川では、都立公園の高台化と一体的に、荒川では、都営住宅の建てかえに合わせまして整備を進めるなど、都と国、地元区が連携して取り組んでおります。
 引き続き、河川施設の整備を推進いたしまして、首都東京の安全性を高めてまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) ボランティアの応募促進の取り組みについてでございますが、多くの方々に参加いただけますよう、都内や会場所在自治体はもとより、全国で広く参加機運を醸成するとともに、さまざまな手段で応募を促進することは重要でございます。
 都はこれまで、ウエブサイトやシンポジウムを通じ、大会のボランティアの情報発信等を行ってまいりました。募集開始に向けましては、大会二年前の時期を捉えたPRイベントの開催や、さまざまなメディアを活用した募集映像の放映、駅等におけるポスター掲示など幅広いPRを展開いたします。
 また、会場所在自治体が行う都市ボランティアの募集に当たり、都の広報コンテンツも活用できるよう取り組みます。さらに、組織委員会が全国十一都市で行う大学への働きかけでも連携するなど、応募促進に向けた取り組みを広く推進してまいります。
〔中央卸売市場長村松明典君登壇〕

○中央卸売市場長(村松明典君) 豊洲市場への移転準備についてでございますが、都は現在、引っ越し準備や施設の改善、各種運営ルールの策定など、移転準備に関する多岐にわたる検討事項について、業界団体との調整を進めているところでございます。
 これまで、業界団体と合意した上で、引越実施計画を先週末に策定したほか、新たに確保いたしました約二百台分の駐車場用地の管理に係る協定も締結いたしました。
 また、業界との調整を整えて、場内サインの改修や荷積みのしやすい台の設置等の工事を進めるとともに、風評被害の払拭に向けて、産地へのPRを業界と連携して行っているところでございます。
 今後、品質、衛生管理や場内物流等のルールのほか、光熱水費等の費用負担も含めた業界との役割分担について、この間の調整状況も踏まえつつ早急に協議を整えるなど、移転準備をしっかりと前に進めてまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、里親の認定要件の改正についてでありますが、都はこれまで、児童の成長発達に必要な養育環境を提供する観点から、児童福祉審議会の議論等を経て里親認定基準を改正してまいりました。
 今般、平成二十八年に児童福祉法が改正され、家庭と同様の環境における養育の理念が示されたことを踏まえ、年齢要件の上限撤廃や配偶者がいない場合の要件緩和等の改正を行ったところでございます。
 里親の認定に当たっては、これまでも、研修の受講を基本要件に、児童相談所が家族構成や住居等を調査した上で、審議会で適格性等について審議をいただいております。
 また、委託に当たりましては、児童の年齢、生育歴、心身の発達状況など、児童一人一人の状況を総合的に勘案して決定しており、今後も児童の福祉を第一に考え、里親への委託を実施してまいります。
 次に、自治体をまたぐ児童相談所間の情報共有についてでありますが、今回の事案では、管轄を越えて転居した場合の自治体間の情報共有等について課題があったと認識しており、現在、児童相談所の対応について、香川県と連携しながら、外部の専門家による検証を進めております。
 また、国に対しましては、虐待により相談対応を行っている家庭が転居した場合、他の児童相談所へのケース移管や情報提供等を行う際のルールについて、児童の安全を最優先に確保するという観点から見直しを行い、徹底を図るよう、緊急要望を行いました。
 都は、今後、児童安全確認の手法や出頭要求、立入調査を行う判断基準等について、都独自の行動指針を策定いたします。
 また、ケース移管は、措置などの援助方針を終結せず、移管先の児童相談所が移管元と連携しながら、少なくとも一カ月間は援助方針を継続することが全国ルールであり、今後とも、都としてルールを徹底してまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 大規模水害に対する広域避難の取り組みについてですが、荒川などの大河川の氾濫や高潮の発生が想定される場合において、百万人以上の住民が確実に避難を行うためには、広域的な避難場所、また、住民がそこに移動するまでの十分な時間、さらに、避難するための手段が確保されていることが不可欠でございます。
 都はこれまで、江東五区の協議会に参画して助言を行うなど、区の取り組みを支援してまいりました。
 今般、広域避難の取り組みを加速するため、都は、国と共同で、都内自治体、埼玉県、千葉県、気象庁等の関係機関で構成する検討会を設置いたしました。
 都としても、今後二年間かけて、関係機関と連携し、行政区域を越えた避難場所や避難手段の確保を含め、時間軸に沿った計画的な避難について検討してまいります。
〔都市整備局長佐藤伸朗君登壇〕

○都市整備局長(佐藤伸朗君) 分譲マンションの適正な管理についてでございますが、都はこれまで、マンション管理適正化法などを踏まえ、管理組合に情報提供など支援を行ってまいりましたが、管理組合の自主的な管理だけでは、今後、建物と居住者の二つの老いに的確に対応していくことは困難でございます。
 このため、本年三月から、有識者による検討会におきまして、管理状況を把握すべきマンションの範囲や管理情報の内容等について意見を聞き、検討を進めております。
 新たに条例の制定も含めた行政の関与が必要との意見もございまして、九月に中間報告、十一月に最終報告を予定しております。
 都は、これらを踏まえ、管理組合の機能強化に向けて、管理状況の把握や助言、支援の仕組みなどについて、幅広い観点から鋭意検討を進め、年度内を目途に取りまとめ、条例化も視野に施策を講じてまいります。
〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 全体で三問、最初に入札契約制度に関する二問のご質問をいただいております。
 そのうち、まず中小建設業の育成についてでございますが、今回の制度改革におきましては、JV、共同企業体結成義務が入札参加の制約になっていたとの認識のもと、混合入札を導入いたしました。これにより、入札参加者数の増加などの効果があった一方、入札監視委員会から、中小企業育成の観点での取り組みを検討すべきとの提言をいただいております。
 こうした点も踏まえまして、混合入札を継続しつつ、都内中小企業の育成という観点から、都内中小企業とJVを組んだ場合の総合評価方式による加点の拡充や、一部の案件で技術者育成モデルJV工事を実施することといたしました。
 また、運用面におきましても、同様の観点から、都内中小企業に入札参加条件等で配慮するなど、本格実施で目指す、東京の公共工事に欠くことのできない重要な担い手である都内中小企業の育成に今後とも尽力してまいります。
 次いで、設計業務等の品質確保についてでございますが、設計業務等は、後続の建設工事等の内容を決定するための重要な業務でありまして、これらの業務においても品質確保の取り組みを進めていくことが必要でございます。
 こうした観点から、これまで都では、プロポーザル方式や成績評定制度などの取り組みを実施しております。
 一方で、設計関係の業界団体からは、現在、一部の局で実施している総合評価方式の適用拡大や予定価格の公表について、強い要望が寄せられております。こうした点について検討を行うことにより、設計業務等の品質確保に向けた取り組みを加速してまいります。
 最後に、工業用水道に関しまして、企業ユーザーに対する支援策のご質問がございました。
 工業用水道の企業ユーザーは、東京の経済と雇用を支える存在であり、将来にわたり安心して事業経営を図ることができる環境づくりが重要でございます。
 こうした観点から、工業用水道の廃止に向けた動きを進めるに当たりましては、料金差額支援とあわせて、個々の企業ユーザーを取り巻く環境や経営状況を把握した上で、支援策を構築することが不可欠であります。
 このため、工業用水道事業の今後の方向性を丁寧に説明するとともに、意見や要望に真摯に向き合いながら関係各局と連携し、実効性ある支援策を検討してまいります。
〔主税局長目黒克昭君登壇〕

○主税局長(目黒克昭君) 中小企業に対する固定資産税の特例についてでありますが、東京の産業の活性化のためには、税制も効果的に活用し、中小企業における先端設備等への投資を促すなど、生産性の向上につなげていくことが重要でございます。
 この特例措置の適用を受けるためには、区市町村が導入促進基本計画を策定することが要件とされており、現在、都におきましては、特別区はもとより、多くの市町村におきまして、計画の策定が進められていると伺っております。
 また、特例割合をゼロとした場合には、あわせて国が実施いたします、ものづくりサービス補助金等の優先採択を中小企業が受けやすくなるとされております。
 こうした点を踏まえ、都におきましては、固定資産税の特例割合をゼロとし、税制面から中小企業の生産性向上に向けた設備投資を後押ししてまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 五点のご質問にお答えをいたします。
 初めに、中小企業の設備投資の促進についてでございますが、都では、中小企業による競争力を高めるための設備の導入に加え、今年度から、生産性の向上に役立つ設備も新たに助成の対象に含め、支援の充実を図っております。
 こうした設備助成の内容とともに、今般の法改正による固定資産税の全額免除を可能とする制度変更について、関係局を初め地域の自治体や金融機関と協力し、利用者への十分な周知を図ってまいります。
 実際に税の全額免除の適用を受けようとする場合、事業者は地元の自治体に計画を提出することが必要となるため、そうした中小企業に専門家を派遣し、計画の策定についても支援をいたします。
 これらの取り組みにより、中小企業の設備の導入が円滑に進むようサポートを進めてまいります。
 次に、中小企業の海外市場への進出の支援についてでございますが、東京の中小企業の事業拡大に向け、今後の成長の見込まれる東南アジア等の市場で、販路の開拓や生産、販売に役立つ海外企業との連携を支援することは重要でございます。
 都では、中小企業振興公社のタイの事務所やインドネシアの窓口で、現地の会社と取引を始めるためのマッチング支援を行っております。
 今年度からは、アジア市場で中小企業が製品の販売やサービス提供をより効果的に進めるため、現地で製造業者に生産を委託する場合やサービス業者と代理店契約を結ぶ取り組みへのサポートを開始しているところでございます。
 また、これらの取り組みを経済成長の著しいベトナムでも展開できるよう、中小企業の相談ニーズに対応する現地の窓口拠点を今月中に開設をいたします。
 こうした施策により、中小企業の海外市場への進出を着実にサポートしてまいります。
 次に、ビジネスチャンス・ナビの利用促進についてでございますが、都は全庁を挙げた取り組みといたしまして、各局を通じ、その所管の監理団体がナビを利用し入札を行う仕組みを導入するよう働きかけを強化しております。
 また、各局の事業者向けセミナー等を効果的に活用し、ナビのPRを行っているところでございます。
 本ナビは、全国の多くの企業が登録し活用することを通じ、ビジネスの可能性をより一層広げることを目的といたしております。
 このため、全国との共存共栄に向けた取り組みの一つとして、関係局が道府県に出向き、ナビの周知、普及を依頼しており、引き続き、これらをきめ細かく実施してまいります。また、各種の商工団体のネットワークを活用し、全国各地の事業者へのPRにも力を入れてまいります。
 さらに、ナビのシステムの機能を高め、発注の内容をSNSにより広く紹介するほか、メディアを通じ受注の実例を発信いたします。
 こうした取り組みにより、ナビの利用を着実に推進してまいります。
 次に、まち中での観光案内等の充実についてでございますが、都では、外国人旅行者が快適に観光ができるよう、新宿や上野など外国人が多く訪れる地域で約二百カ所のWi-Fiサービスを提供してまいりました。
 今年度は、旅行者の行動の多様化を踏まえ、池袋駅や品川駅などの主要駅周辺にも拡大し、新たに約三百カ所を整備いたしますとともに、まち中での観光ボランティアによる案内について新たに二つの地域で開始をいたしまして、八つのエリアで活動を行ってまいります。
 こうした都の取り組みに加え、区市町村が独自に行う地域の案内機能の整備についても支援をいたします。さらに、まち中でふえてきておりますデジタルサイネージを積極的に活用するなど、工夫を行いながら観光PRの充実も図ってまいります。
 二〇二〇年に向けて、まち中で情報を入手しやすい環境の整備を総合的に強化してまいります。
 最後に、都市農地の保全に向けた施策展開についてでございますが、後継者不足や相続時の税負担が都市農業の大きな課題となる中で、農地の貸借に関する新たな制度も踏まえ、多様な担い手、とりわけ意欲のある農業者の規模拡大の取り組みを支援することは、農地の有効活用を進め、その保全を図る上で重要でございます。
 このため、都は、農業者の実情を把握している農業会議やJA等と連携し、貸借制度の個別具体的な相談に対して、より的確な助言を行いますとともに、貸し手と借り手のマッチングを行い、貸借を促進いたします。
 また、農地を借り受けた農業者に対し、農業用ハウスなど生産施設の導入支援を強化いたしますとともに、販路開拓や加工品開発等の取り組みに対して専門家派遣や経費助成を行い、生産性や収益力の向上を図ってまいります。
 これらの取り組みにより、農地の貸借促進と経営力強化を進め、都市農地を保全してまいります。