平成三十年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 四十九番上田令子さん。
〔四十九番上田令子君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○四十九番(上田令子君) 二元代表制からの脱却を公の場で述べた都議がいると聞き及んでおりますが、ここは民主主義の聖堂です。私たち女性に参政権をもたらしてくれた議会、障害者、マイノリティーへの差別をなくした議会に心からの敬意を込め、地方自治の原点に立ち返り、行政のチェック機能を果たす二元代表制の議会人としての観点から、質問をさせていただきます。
 まず、都政改革の足元である職員のモラルとモラールについてお尋ねします。
 職員が産育休、病休などの休暇前に服務事故を起こしても、復帰まで服務監査の対象になりませんが、休暇が長引くことで必要な措置がおくれ、証拠が散逸してしまうことが危惧されます。休暇を継続し、また退職してしまって、そのまま逃げおおせてしまうことがないのか、法的根拠を踏まえて、対応につきご説明ください。
 以前、職員の不祥事を調査する総務局の監察員の破廉恥行為による服務事故が発生したことがありました。当該職員は、既に他部署に異動しているものと思います。また、水道局においても同様服務事故が起きております。
 これらを踏まえ、再発防止と職場配置の考え方についてご説明ください。
 児童虐待防止についてです。茨城県では、一月から児童相談所と県警の虐待情報全件共有を開始しました。
 二〇一〇年江戸川区の義父の暴行による海渡君虐待死事件、一三年足立区のウサギ用ケージ監禁玲空斗君事件、一四年警官が立ち寄ったにもかかわらず、情報を児相と共有していなかったため対処できず、父親におなかを踏みつけられて亡くなった葛飾区愛羅ちゃん事件、同年義父の虐待を学校が把握しつつ、児相につなげなかった西東京市中二男子自殺事件、そして過去二回一時保護され、品川児相が先月家庭訪問するも子供を現認せず、義父からの暴力で目黒区の結愛ちゃんが死亡したことが、先日ひな祭りの日に報道されました。物心もつく五歳でした。
 いずれも関係各機関が機動的に動いていれば防げた事案です。このような痛ましい虐待死事件が繰り返され、手おくれになる理由として、虐待を把握していながら児相が家庭訪問をしなかった、不在だった、子の現認を怠ったケース、一一〇番通報が入っても、児相との情報共有がないため見逃してしまうケースが散見され、児相、区市町村が関与しながら虐待死に至った子供は、過去十年で二十六名に上ります。
 二十八年度、児童福祉司の定数は二百二十七名、一人に対し平均百十八・六件を抱え、人員不足も指摘されています。
 アメリカでは、警察と連携を密にしたジョイントコンタクト、クロスレポーティングと呼ばれる情報共有、虐待が疑われる報告書は双方機関に保管され、州システムのチャイルドアビューズインデックスに登録、市や郡を超えて共有されています。イギリスでも同様です。
 都内初、江戸川区へ児相が移管されますが、警察署と協定を結び、具体的な連携を進めているところです。
 一方、都では、警視庁から児相へ全て情報提供されているにもかかわらず、児相側からは、児相が重大と判断した案件とし、情報提供は一部にとどまります。
 保護者を支える援助と、虐待対応のため子供を保護する介入という、相反する業務がありますが、介入は、さまざまな事件に即応する警官も適しており、子供をいち早く救うために警察との虐待事案全件共有が必要です。
 子供の権利条約では、子供の最善の利益が高らかに掲げられています。虐待死はもちろん、虐待根絶に向け、まず手始めに、児相と警視庁の虐待情報全件共有の早期実現を求めるものです。
 歴代知事の中でも、最も子供の人権に配慮し、里親推進同様、児相も国際標準としていただきたく、子供ファーストの知事の所見を求めます。
 児童虐待事案について、警視庁が関与しながら、児相から情報共有されなかったため見逃してしまい、死亡傷害事案等に発展した重大事案に対する課題認識について、警視総監のご所見を伺います。
 係る事案の再発防止や虐待及び虐待死事案の根絶のために、要保護児童対策地域協議会、児相及び警察との虐待事案関連情報の全件共有の必要性についてもご所見を伺います。
 学校ですが、スクールサポーター制度等、警察との連携制度がありますが、いまだ警察から学校への情報提供よりも、その逆は極端に少ない状況にあります。海渡君事件も、西東京中二自殺事件も、学校がもっと積極的に動いていれば防げたのではなかったのではないでしょうか。
 学校においても児相、警察と全件共有すべきと考えますが、警察への協力体制及び積極的な虐待防止についてどうしていくのか、見解をお示しください。
 昨年八月、都立特別支援学校高等部の部活で、生徒が熱中症で意識不明となる重大事故が発生、顧問がペナルティーと称した罰で走らせたとのことで、これは明確な体罰ガイドラインに当たる服務事案です。倒れている生徒を発見してから救急車を呼ぶまで約二十五分要した見立てにも大きな懸念を抱くものです。
 ほかの支援学校では、トイレが不衛生きわまりない実態を、上田独自調査で明らかにし、改善に結びつけました。
 江戸川区立中学へ車椅子で通う生徒へ、校長が都教委に確認することもなく、使いなれたタブレットの使用ができないという誤った受験指導をし、私がかかわらなければ進学のチャンスを奪われかねなかった事案もありました。いずれも管理体制の大問題です。
 また、一三年江戸川区立小学校において、担任の暴言で不登校となるも放置され、学校側の誠意に欠ける対応が、一六年新聞報道となった事案は、ようやく一月三十日に戒告処分に至りました。この件は、被害に遭った子供たちが勇気を持って証言をしてきたにもかかわらず、五年がいたずらに流れたのです。教員が暴言を吐いて子供を脅かし、一生一度の小学校生活を台なしにしたことは、明確に子供の人権を侵害するものであります。
 給食無理強い嘔吐と新聞報道もなされ反響を呼び、尾木直樹氏が、給食強要体罰ではないか、戒告処分は甘過ぎる、学校に来なくていい、最低だねの暴言も吐き、はっきりいってやめてほしいと発言しています。
 教員個人の感情に任せた暴力的行為と、教育の延長線上にある不適切な指導とは、切り分けるべきですが、東京都教育委員会ではどう解釈しているのか伺います。
 その上で、指導の名のもとに行われる暴力行為を根絶するために、何をすべきかについての所見をお聞かせください。
 具体例を例示しましたが、どの事案も学校災害、いじめ、不適切指導に当たって、学校においての意思決定、管理体制が原因という根幹は同じです。
 これら、あってはならないことが実際に生じた事案を深く受けとめられ、都教委、区市町村教育委員会、各指導室長、指導主事体制、学校管理職が、子供最優先に、迅速に有機的に機能するためにどうしていくか、具体的な対策をご説明ください。
 そのために、児童生徒、保護者の声をたらい回しにせず、すぐに反映するシステムづくりについてのご所見を求めます。
 縦割り、押しつけ合い、縄張り争いをいさめ、亡くなったことは重く受けとめますでは済まさず、二度と子供の命が奪われることのない都政を願い、再質問を留保し、私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 上田令子議員の一般質問にお答えをいたします。
 私からは一問お答えをさせていただきます。
 児童相談所と警察との連携についてのお尋ねでございました。
 多くの関係者の懸命な努力にもかかわらず、痛ましい虐待事件が起きております。
 児童虐待を防止するためには、児童相談所を初め、子供家庭支援センター、警察、学校、医療機関など、地域の関係機関が適切な役割の分担のもとで、必要な情報を共有しながら、一体となって家庭への支援を行っていかなければなりません。
 都といたしまして、深刻化する児童虐待に対応するために、児童相談所の体制強化に取り組んできたところでございます。
 また、子供の安全確認などで必要がございましたときには、警察と同行して訪問するほか、警視庁と協定を締結いたしまして、身体的虐待で一時保護した子供が家庭復帰した場合に、その情報を共有するなど、日常的に警察と連携して取り組んでまいっております。
 現場の体制面におきましても、警視庁から現職警察官の派遣を受けるとともに、警察官のOBを全ての児童相談所に複数配置するなど、連携を図っているところでございます。
 今後、警察との連携を初め、地域の関係機関と一層連携を深めながら、児童虐待防止に取り組んでまいります。
 なお、その他のご質問につきましては、警視総監、教育長、総務局長よりのご答弁とさせていただきます。
〔警視総監吉田尚正君登壇〕

○警視総監(吉田尚正君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、重大事案に発展した事案に対する課題認識についてでありますが、児童虐待事案は、対象家庭に関する情報を関係機関が共有し、早期発見、早期対処していくことが事態の深刻化を防ぐ上で重要であると認識をいたしております。
 警視庁では、児童虐待が疑われる事案を認知いたしました際には、児童相談所等にその児童の取扱状況等を照会するなど、関係機関と情報共有を行っているところであります。
 引き続き、児童虐待事案への的確な対応を図り、重大事案の未然防止に努めてまいります。
 次に、児童虐待事案関連情報の全件共有の必要性についてでありますが、警視庁では、要保護児童対策地域協議会におきまして、関係機関と情報共有を図っているところであります。
 また、児童相談所との情報共有といたしまして、平成二十八年十月、東京都との間で、全国に先駆けて情報共有に関する協定を締結し、情報共有を図っております。
 今後も、関係機関との連携強化に努め、児童虐待事案への的確な対応を図ってまいります。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、児童虐待への対応についてでございますが、学校は児童虐待を早期に発見し、児童相談所等の関係機関と連携して対応することが極めて重要であります。
 これまで都教育委員会は、学校が虐待と思われる子供を発見した場合、児童相談所へ速やかに通告するとともに、命を守ることができなかったさまざまな虐待の事案を教訓に、子供の安全を第一に考え、必要な場合には、所轄の警察署とも積極的に情報を共有するよう、管理職に対し周知してまいりました。
 今後とも、教職員研修において具体的な対応事例を取り上げるなど、内容の充実を図り、学校が児童相談所や警察署等の関係機関とともに組織的に対応できるよう、区市町村教育委員会とも連携して、学校を指導してまいります。
 次に、教員の暴力行為と指導についてでございますが、都教育委員会は、教職員が児童生徒に対して行う暴力行為、不適切な指導、暴言等を全て体罰等として明確に定め、その根絶に努めております。
 具体的には、毎年、体罰防止月間を設定し、全公立学校に体罰等の根絶に向けた校内研修の実施を義務づけております。また、体罰等を起こした教職員に対しては、アンガーマネジメント研修を実施し、再発の防止を図っております。
 今年度は、さらに、全ての教職員向けに服務に関する指針等をまとめたガイドラインを作成し、その中で、暴力行為、不適切な指導等についても、未然防止の観点から、教職員がとるべき具体的な行動事例等を示したところでございます。
 今後とも、教職員による体罰等の根絶に向け、不断に取り組んでまいります。
 次に、学校で発生した事案に関する対策についてでございますが、都教育委員会や区市町村教育委員会は、教員による子供への不適切な行為や事故の発生等の情報を得た場合、指導主事を学校に派遣するなど、直ちに事実を確認するとともに、学校が子供や保護者の不安等を解消できるようにするための支援などを行っております。
 また、都教育委員会は、発生した事案の重大性等に応じて、全公立学校に緊急の通知を発出したり、臨時の校長連絡会や区市町村教育委員会の指導課長連絡会を開催したりして、情報共有と再発防止の徹底を図っております。
 今後とも、都教育委員会は、管理職研修等を通して、学校において問題を未然に防止する取り組みや、問題発生時に迅速かつ適切に対応できる体制づくりなどについて、指導助言を行ってまいります。
 最後に、児童生徒、保護者の声の反映についてでございますが、都教育委員会は、都内公立学校の全児童生徒を対象とした体罰等実態調査を毎年実施しており、小中学校については、設置者である区市町村の教育委員会を通じて、その実態を把握しております。
 また、都教育委員会では、学校に関する都民からの意見、要望、相談等を広く把握するため、都民の声や公益通報、東京都教育相談センターなどの窓口を設置しております。窓口に寄せられた事案については、区市町村教育委員会に対して情報提供し、問題の速やかな解決が図られるよう、地方教育行政法に基づき必要な指導助言を行っております。
 今後とも、児童生徒や保護者の声を速やかに把握し、区市町村教育委員会等とも連携の上、適切に対応してまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、休暇中の職員に対する服務監察についてですが、知事部局等の職員が、事故を起こした後に産休、育休などの休暇を取得した場合についても、服務監察の対象としており、職員の健康等に配慮しつつ、公務員関係の秩序を維持するため、服務監察を適正に実施しております。
 次に、職員の服務事故への対応についてですが、職員は、都民の負託に応えるため、公務員として高い使命感と倫理観を持って職務に精励する責務を負っており、職員の非行はあってはならないと認識しております。
 非行が発生した場合には厳正な処分を行うとともに、原則、全ての処分内容を公表し、処分の程度により、昇給の停止など、その後の処遇にも反映させております。
 再発防止の観点から、指導や助言に当たっては所属長任せにせず、組織的なフォローのもと行うとともに、職務遂行上支障が生じるおそれがある場合など、必要に応じ、人事異動を行う場合もございます。
 今後とも、厳正かつ適切な対応により、全体の奉仕者としての自覚を促すなど、非行防止に向けた取り組みを一層進めてまいります。
〔四十九番上田令子君登壇〕

○四十九番(上田令子君) 数々ご答弁をいただきました。
 現状のままでもご努力いただいていることは確認できたところではありますが、残念ながら、私の一般質問の前に、三月二日に結愛ちゃんが亡くなるというような痛ましい事件がありました。都外から転居されてきて、しっかりと情報共有していたはずでありますし、これは未然に防げたに違いないというふうに私は思っております。
 行政が必要な情報と判断するのではなくて、私は、やはり警察とは、虐待事案は全件共有すべきだというふうに強く思った次第でございます。
 中井教育長にお尋ねします。
 学校、自治体、児童相談所だけでは命を守ることができなかった数々の事案にあって、教育長のおっしゃる必要な場合に情報提供とは、どのような場合で、どこから情報を得て、どこへ提供し、それを誰が判断をするのか、現場が対応できるよう、虐待防止法の基本理念にのっとり、命を守る観点からご答弁をお願いいたします。(拍手)
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 上田令子議員の再質問にお答えいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、学校は児童虐待を早期に発見し、児童相談所等の関係機関と連携して対応することが極めて重要でございます。こうした観点を十分に踏まえながら、子供の安全を第一に考え、必要な場合には所轄の警察署とも積極的に情報を共有するよう、管理職に対し周知を行っているところでございます。

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