平成三十年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 四十七番鳥居こうすけ君。
〔四十七番鳥居こうすけ君登壇〕

○四十七番(鳥居こうすけ君) 私は前職、神経難病のアルツハイマー病(ア病)及びALSの根本的治療薬の開発に携わっておりました。アミロイドベータの脳内蓄積がア病の原因とされ、多くの研究費や時間が費やされる中、新たな現象に対しては排除する傾向にあり、いまだに根治薬開発には至っておりません。
 巨費が投じられ、巨大化した組織の方向転換は、科学の分野においても容易ではありません。都が抱える多くの課題に対して、これまでの経験のみではなく、男性、そして女性を含め、多様な考えのもと、しがらみを打ち壊す強い意志と客観的判断材料となるエビデンス、それらに基づく鳥の目を持って、古い体質を壊し、新しい都政を実現することを誓います。
 まず初めに、難病医療提供体制の構築について伺います。
 神経難病では、日々の病状変化に苦しむ患者様のご負担ははかり知れません。看病が長期に及ぶこともあり、ご家族や介護者にも大きな負担が強いられます。治療法が確立されていない難病の克服は、難病患者様の切実な願いであることをこれまで肌で感じてきました。
 難病に対しては、対症療法にとどまるのではなく、根本的解決に向けた取り組みを早急に進めていかなければなりません。
 国では、指定難病を三百三十一疾患に拡大、難病基本法で、難病の診断や効果的治療に向けて研究開発を推進するとしております。
 このような中、本年一月、多摩メディカル・キャンパスの整備基本構想が策定され、都の難病医療の拠点となる難病医療センターを整備することが決定しました。
 多くの難病疾患に対応できる専門病院は国内外でも少なく、臨床データの蓄積と共有、新たな発見を生み出す組織の構築が重要と考えます。
 そこで、多摩メディカルキャンパスにおいて、新たに整備する難病医療センター、この臨床研究推進体制の構築について伺います。
 健康づくり、フレイル予防について伺います。
 私の住む杉並区の高齢化率は、二〇一六年二一・一%に対し、二〇二五年には二五・七%へ増加、それに伴い一日当たりの在宅医療サービスの必要者数は、二〇二五年八千五百三十七人と一・五倍以上に増加します。
 そのような中、杉並区では二〇一七年より、在宅医療、介護連携の主な取り組みの一つとして、区民とともに進めるフレイル予防を推進しています。簡便なフレイルチェックにより、自身の健康状態がわかること、よく食べ、よく運動することにより、元気を取り戻し改善することなど、フレイル予防のわかりやすさと実感から区民への浸透が進んでおります。
 また、東京大学との連携協定のもと、新たなエビデンスの蓄積がなされ、フレイルトレーナーやサポーターの活躍を促進させております。
 高齢化が進む中、健康長寿の延伸のためにも、フレイル予防の取り組みは重要です。都は、区市町村の取り組みが進むよう支援をするとともに、取り組みが広がるよう努めていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 食品の衛生管理に関する認証制度について伺います。
 人生百年時代を迎え、セルフメディケーションの推進が望まれております。前職で私が携わった機能性表示食品制度は、健常人の健康増進に寄与する科学的根拠、エビデンスに基づく機能を有する食品を、機能性表示食品として企業責任で販売することが許可されています。
 この制度の背景には、国民の健康増進に加え、四十兆円を上回る医療費の削減、さらには、機能を有する製品の輸出による経済の活性化を視座に、産官学連携で進められておりました。このような認証制度化の取り組みは、技術レベルを向上させ、消費者の利益になるとともに、企業の活性化、産業の育成や発展につながる有益な取り組みと考えます。
 一方、大量消費地であるこの首都東京においては、食品の衛生管理が特に重要であり、東京都食品衛生自主管理認証制度を設立しています。本制度は、国際標準であるHACCPを見据えた事業者の衛生管理を後押しする制度として有益と考えます。
 今後、国において、食品衛生法の改正が予定されており、全ての食品等事業者を対象に、HACCPが制度化されると聞いております。
 法改正の動きを受けて、都として本認証制度をどのように活用し、事業者の食品衛生管理につなげていくのかを伺います。
 ICTを活用した医療機関間の状況について伺います。
 地元杉並区では、病院、診療所、保険薬局に加え、歯科診療所、介護事業所などが連携する東京区西部ネットを構築し、患者の投薬、検査履歴、画像情報等の共有化を進めております。
 患者が質の高い医療サービスを受けながら生活するためには、地域の医療機関間の患者の診療情報等の情報共有を進めていくことが重要です。そのような中、東京都では、本年四月、東京都医師会主導による東京総合医療ネットワークにより、医療機関が電子カルテを利用して診療情報を相互に公開する連携が開始されます。
 そこで、地域における医療機関間のICTを活用したネットワークの構築を進めるとともに、都の特性を踏まえた広域的な取り組みも必要と考えますが、都の見解を伺います。
 ICTを活用した多職種間の情報共有についても伺います。
 誰もが可能な限り住みなれた地域で暮らし続けられるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築が進められています。
 地域包括ケアシステムにおいては、医療と介護の連携が不可欠な構成要素です。在宅医療患者の症状に応じて、医療、介護関係者間で速やかな情報共有を行うことにより、初めて質の高い医療、介護サービスの提供が可能となります。
 そのような中、介護保険法の地域支援である在宅医療・介護連携推進事業の事業項目には、医療、介護関係者の情報共有の支援があります。情報共有を効果的に行うためにICTの活用は欠かせません。
 ICTを活用した情報共有の推進について、都も取り組みを進めておりますが、本年四月、在宅医療・介護連携推進事業の本格実施も見据え、より一層推進する必要性があると考えます。これまでの取り組み状況とあわせて都の見解を伺います。
 次に、介護離職ゼロに向けた取り組みについて伺います。
 知事は、介護離職の防止に向け、個別のケースに応じた相談対応の仕組みの構築を検討するとともに、企業における柔軟な働き方を推進していく方向性を示されております。また、増大する介護ニーズへの対応のため、特別養護老人ホームについて、二〇二五年度末までの整備目標を六万二千人に引き上げるなど、介護サービス基盤をさらに充実させる方向性を示されております。
 介護離職の防止に向けては、介護サービス基盤の整備を含め、企業で働く方々が介護と仕事を両立できる環境を整備することが重要と考えますが、都としてどのように取り組んでいくのか、知事の見解をお伺いいたします。
 さて、私は、前職で多くの研究開発者の人材育成に携わり、特に化粧品事業においては、多くの女性の悩みに向き合う機会を得ました。女性、男性ともに輝き働ける社会が望ましい中、平成二十九年の総務省、労働力調査によれば、就業を希望しながら、出産や育児を理由に就業を諦める女性が全国で八十九万人おります。今も、女性は男性と異なり、結婚や出産といったライフイベントを節目に、仕事をとるか、家庭や個人の生活をとるかといった選択を迫られております。
 女性活躍の先進国であるスウェーデンにおいては、育児休暇の一定期間を男性に割り当てるクオータ制を導入し、男性が家事、育児に参加することを促進しております。
 女性の活躍をさらに進めていくためには、働き方の見直しや子育て支援など、多角的な施策も必要ですが、とりわけ男性の意識を改革し、父親と母親がともに家事、育児を担っていけるようにしていくことが極めて重要です。男性の家事、育児参画を推進していくため、都の施策について伺います。
 最後に、ひとり親家庭について伺います。
 十五歳から六十四歳の働く女性の割合は六九・四%と過去最高を記録しております。女性が社会で活躍し、自立していくことは望ましいことです。一方、急な社会環境変化による課題についても事前の準備が必要となります。
 東京都の離婚率は人口千人に対して一・七八と、全国平均より高率となっております。離婚による子供への悪影響が心配され、子供の健全な養育のためには、両親が離婚しない社会が必要と考えます。しかし、子供がいながら、やむを得ず離婚せざるを得ない方もおられます。
 都では、ひとり親に対して、就労支援等さまざまな取り組みを行っておりますが、子供とともに安心して生活していくためには、離婚前後、身近な地域での気軽な相談から専門的な相談まで、きめ細かく対応していく取り組みが必要と考えますが、都の見解を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鳥居こうすけ議員の一般質問にお答えいたします。
 介護と仕事の両立支援についてのお尋ねでございます。
 超高齢化のうねりの中で、家族形態の変化も背景といたしまして、働きながら介護をする人や介護を理由として離職する人がふえております。介護と仕事を両立できる環境を早急に整備していかなければなりません。
 私自身も母を自宅でみとった、介護した経験がございますが、実に多くの方に支えられてできたことでございました。
 介護にかかわる問題は、突然に直面することも多く、置かれました状況は、従業員によっても、企業によってもそれぞれ異なってまいります。
 そこで都は、介護による離職を防ぐために、昨年十月、専門家が助言や情報提供を行います電話相談窓口を新たに開設をいたしました。
 介護と仕事の両立の実現に向けましては、企業における働き方の見直しが鍵となります。このため、長時間労働の削減などに取り組むとともに、今後、テレワークや短時間勤務制度の導入など柔軟に働ける環境を整備する企業への支援も新たに開始をいたします。
 加えまして、介護が必要になりましても、高齢者やその家族が安心して暮らし続けられますよう、介護サービス基盤の整備などをさらに進めていくことで、介護をする人の離職防止にもつなげてまいります。
 こうした取り組みを通じまして、誰もが個々の事情に合わせて働き続けることのできる社会を実現してまいります。
 その他のご質問につきまして、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔病院経営本部長内藤淳君登壇〕

○病院経営本部長(内藤淳君) 新たに整備する仮称難病医療センターの臨床研究体制についてでございますが、難病は、希少な疾患であり、新たな診断や治療を進めるためには、多種多様な症例に基づく臨床研究や治験を積極的に実施していくことが重要でございます。
 多摩メディカルキャンパスでは、難病医療センターを中心に、多摩総合及び小児総合の両医療センターとも連携し、ほぼ全ての指定難病に対応する医療を提供してまいります。そこで得られる豊富な症例を活用するため、三病院で共同利用する臨床研究支援センターを創設し、研究人材の育成やノウハウの共有など、効率的、効果的に臨床研究が実施できる体制を構築いたします。
 今後は、都の難病医療の拠点といたしましての機能を一層高め、新たな難病治療の研究開発に貢献してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 五点のご質問にお答えをいたします。
 まず、フレイル予防についてでありますが、フレイルを予防するためには、地域における健康づくりや介護予防の取り組みが必要でございます。
 そのため、都は現在、包括補助等で生活習慣病の改善に向けた健康教育や、リハビリテーション専門職等を活用した介護予防、高齢者が体操等を行う通いの場づくりなどに取り組む区市町村を支援いたしますとともに、事例発表会の開催や事例集の配布により、他の自治体の参考となる事業を広く周知をしております。
 今回改定する東京都保健医療計画では、新たに、フレイル、ロコモティブシンドロームの予防を、生涯を通じた健康づくり推進策の一つに位置づけることとしており、今後も、フレイル予防に取り組む区市町村を支援してまいります。
 次に、自主管理認証制度を活用した食品の衛生管理の取り組みについてでありますが、事業者による自主的な食品衛生管理を進めるため、都は、平成十五年度に、HACCPの考え方に基づき独自に設けた東京都食品衛生自主管理認証制度により、中小事業者の取り組みを支援しております。
 現在、国が進めている食品衛生法の改正では、小規模事業者については、HACCPの弾力的な運用を可能とする予定であり、都は、国の新たな制度と都の認証制度との整合を図りながら、衛生管理マニュアル作成セミナーや実地講習会の開催などを通じて、事業者の認証制度の活用を進め、食品衛生管理の取り組みを促進してまいります。
 次に、ICTを活用した医療機関の情報共有についてでありますが、医療機関同士がICTを活用して、診療録や検査結果、薬歴などの診療情報等を共有することは、急性期から在宅療養への切れ目のない医療連携の推進につながるほか、二重検査や過剰投薬の防止による患者負担の軽減にもつながります。
 このため、都は、情報共有に必要なサーバーシステムを導入し、ICTを活用して医療連携に取り組む医療機関を支援しており、これまで十六の地域医療連携ネットワークの構築が進められております。
 今年度からは、地域のネットワーク同士を接続し、都全域にわたる広域的な医療連携ネットワークを構築する東京都医師会の取り組みとの連携も進めており、今後とも、ICTを活用した医療連携の充実を図ってまいります。
 次に、ICTを活用した地域での情報共有についてでありますが、都はこれまで、地域で在宅療養患者を支える医療、介護関係者がICTを活用して効果的に患者の情報を共有する体制の構築に取り組む地区医師会を支援しており、現在五十の地区医師会でICTを活用した多職種連携の取り組みが進められております。
 来年度からは、区市町村を中心とした取り組みに事業を再構築しまして、主治医、副主治医制による二十四時間診療の仕組みづくりや災害時対応など、在宅医療と介護の連携を推進する区市町村が地域で共有されている情報を効果的に活用できるよう支援をしてまいります。
 今後とも、医療、介護の関係者の情報共有を進め、地域における在宅療養体制の整備を推進してまいります。
 最後に、ひとり親家庭への相談支援についてでありますが、区市町村では、ひとり親家庭等の相談窓口である母子・父子自立支援員が、離婚前からの相談も含め自立に必要な指導や支援を行っております。
 また、都は、ひとり親家庭支援センターにおいて、養育費相談や面会交流支援、離婚前後の法律相談等を無料で実施をしております。法律相談では、家事事件に精通している弁護士が家庭の状況を把握した上で、親権や慰謝料、財産分与等について専門的な助言を行っており、平成二十八年度の相談実績は、離婚前が百三十一件、離婚後が二十九件となっております。
 今後とも、区市町村と連携しながら、離婚後も親子が安心して生活できるよう、ひとり親家庭を支援してまいります。
〔生活文化局長塩見清仁君登壇〕

○生活文化局長(塩見清仁君) 男性の家事、育児参画促進の取り組みについてでございます。
 女性も男性も輝く社会を実現するためには、男女が協力して家事、育児を担うことが必要でありますが、総務省の社会生活基本調査によりますと、その負担は女性に大きく偏っているのが現状でございます。
 都は、男性向けにイクメンサミット等を開催してまいりましたが、今年度からは、夫婦間の協力の大切さを理解してもらうため、夫婦やカップルで参加する、パパママサミットを初めて開催いたしました。
 また、子供の誕生前から、男女がともに家事、育児について考えるための啓発冊子を作成し、広く配布するほか、来年度は、家事、育児に積極的に取り組む男性の事例などをウエブサイトやSNS等で新たに発信してまいります。
 こうした取り組みを通じまして、男性の家事、育児参画の一層の促進を図ってまいります。

○議長(尾崎大介君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時三十二分休憩

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