平成三十年東京都議会会議録第四号

○副議長(長橋桂一君) 二十三番森口つかさ君。
〔二十三番森口つかさ君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○二十三番(森口つかさ君) 昨年九月、二〇四〇年代の東京の都市像につきまして、都市づくりのグランドデザインが発表されました。ちょうど今の子供たちが社会で活躍を始めるそんな二〇四〇年代です。世界の人口が都市に集約されていく中、東京は世界から選ばれる都市になっていますでしょうか。
 地球規模で人や物、資本が移動している現代におきましては、都市の問題も国境を越え、一都市だけでは解決をすることが困難であります。一国、一都市だけではなく、国際社会全体の持続可能な生存戦略として、世界共通の開発目標や開発指標が必要となっております。まさに、それこそがSDGsであります。持続可能な都市を実現する上で、SDGsの取り組みは、国際社会の大きな動きであります。
 東京の姉妹都市であるニューヨークでは、二〇一五年以降、都市計画目標であるワンニューヨークとSDGsのシナジーの強化に取り組んでおります。また、アジアにおきましても、中国、北京市では、SDGs達成に向けた研究や人材育成を始めております。
 日本におきましても、滋賀と長野がSDGsを県政に取り入れることを宣言をいたしました。また、つくば市も、先日、SDGsを取り入れた市のビジョンを打ち出しております。
 内閣府の環境未来都市推進委員会座長である村上周三東京大学名誉教授におきましては、SDGsを政策に取り入れている地方自治体と取り組んでいない自治体との間で、住民サービスや、その結果としての住民の生活のクオリティーにおいて、今後大きく差がつくSDGsリスクのおそれがあるとの見解を示されております。
 東京二〇二〇大会におきましても、IOCの方針のもと、SDGsを踏まえた運営計画が策定をされ、取り組みがまさに行われているところでございます。
 今後の都市づくりにおきましては、ESGの概念とともに、世界共通の指標であり、目標でもあるSDGsの取り組みを先駆的に進めていくことが、都民や世界の共感を集め、世界から選ばれる都市東京を実現するために重要と考えます。
 東京が世界から選ばれる都市として、安全・安心に住み暮らすことができ、持続可能な都市づくりをどのように進めていくのか、知事の見解を伺います。
 次は、東京のセーフシティーの取り組みについて質問をいたします。
 阪神・淡路大震災からことしで二十三年、東日本大震災から七年となります。この東京におきましては、首都直下地震の切迫性が高まっております。
 私は、一九九五年、阪神・淡路大震災の際に、家が倒壊をし、当時十四歳の兄を亡くしております。今でもそのときのことを鮮明に覚えております。
 東京が世界一の都市として、災害に強い安全・安心なまちづくりを実現し、そしてその取り組みが、日本中、そして世界中に広がり、震災の被害者を一人でも減らしていくことをみずからの使命とし、社会に貢献をしていきたいと考えております。
 都は今月、防災対策の新たな計画として、セーフシティ東京防災プランを策定する予定であります。都の多岐にわたる災害対策を都民へわかりやすく伝えることが本プランの策定の目的の一つでありますが、具体的にどのような特徴があるのか、お伺いをいたします。
 次に、住宅の耐震化について質問をいたします。
 阪神・淡路大震災におきましては、震災による被害者の直接的な死因の約九割が家屋、家具等の倒壊による圧迫死でありました。
 都内の住宅の耐震化は、平成三十二年度末に耐震化率九五%を目標に掲げております。とりわけ、都内に現状およそ四十万戸あるとされている耐震性の不十分な戸建て住宅の耐震化は急務であるといえます。
 そこで、戸建て住宅の耐震化について、今後の都の取り組みをお伺いいたします。
 建物の耐震化とともに、震災による被害者を減らすには、燃えないまちづくり、不燃化が重要であります。
 内閣府が公表している首都直下地震の被害想定では、最大、都内で二十二万一千棟の家屋が全焼するといわれております。都は、平成三十二年度までに整備地域の不燃領域率を七〇%にするとともに、市街地の延焼を遮断する二十八区間、約二十五キロの特定整備路線の全線整備を目標といたしております。
 先月、都内各地の地震の危険性を五段階で評価した地域危険度を公表いたしております。
 この地域危険度測定調査の結果を踏まえて、さらなる不燃化対策をどのように進めていくのか、都の見解をお伺いいたします。
 次は、震災の負傷者についてです。
 阪神・淡路大震災の負傷者の約半数は、家具の転倒が原因といわれております。震災が発生した際には、共助の取り組みが必要不可欠です。当時、地震によって倒壊した建物から救出され、生き延びた人の約八割が、家族や近隣住民によって救出がされております。私自身も、当時十二歳ではございましたが、倒壊した家の下敷きになり、そして地域の方々により救出がされております。
 建物内の家具の固定を進めることで死傷者の発生を防ぐとともに、被害を受けなかった方々による助け合いが可能となります。
 自宅にかかわらず、公共施設、オフィス、店舗など、あらゆるシーンで家具の転倒によるリスクが考えられ、都としては、事業者への義務化も含め、啓発や取り組みを進めるべきと考えております。
 そこで、都における家庭の落下、移動、転倒防止対策の普及啓発をどのように行っているのか、お伺いをいたします。
 次に、震災発生時の帰宅困難者について質問をいたします。
 都の被害想定では、首都直下地震の発生時に九十二万人の行き場のない帰宅困難者が発生をすると推定がされております。一方で、これらの帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設につきましては、必要数の三分の一の確保にとどまっているのが現状です。
 都はこれまでに、一時滞在施設の確保に向け、水や食料など、帰宅困難者向け備蓄用品の費用を補助するなど、取り組みを進めてきました。
 例えば、神社仏閣など、宗教にかかわる施設との連携も切り口の一つだと思います。
 昨年九月には、東京都宗教連盟と小池都知事が会談をし、宗教連盟から、都内約四千の宗教施設の防災対策での活用について申し出がございました。既に地域の宗教施設と地元区が一時滞在施設としての利用協定の締結を行っているケースもございます。いつ何どき起こるかわからない大震災であります。行き場のない九十二万人の帰宅困難者の受け入れを一刻も早く解決をするべく、民間施設との連携が必要不可欠と考えます。
 都内には、宗教施設以外にも大学などさまざまな民間施設があることから、今後、民間一時滞在施設の確保に当たっては、これらの組織に働きかけを行っていくことが重要であると考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 次に、無電柱化について質問をいたします。
 震災発生時の救助活動を円滑に進めるためには、都道の電柱ゼロの取り組みが重要です。これまでに、首都を担う東京圏の中核エリアであるセンター・コア・エリアの都道におきましては、九四%の地中化が既に実現をいたしております。都道での取り組みに加え、次は、区市町村道での取り組みが課題であります。
 都は今月、新たな東京都無電柱化計画を策定し、重点整備エリアを拡大するとともに、低コスト手法の導入を進め、都内の道路の約九割を占める区市町村道における取り組みを財政的、技術的に支援を行うことで、これまで二%しか進んでこなかった区市町村道の無電柱化をさらに推進をするとしております。
 知事もご経験された阪神・淡路大震災においては、多くの電柱が倒れ、避難や救助の妨げとなりました。無電柱化を推進することにより、災害時の電柱倒壊による道路の閉塞を防ぐとともに、電気や情報通信回線など地下化することで、電線等の被害を防ぎ、ライフラインの安定供給を確保することが可能となります。
 そこで、都市防災機能の強化に向けて無電柱化を進めるべきと考えますが、都の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、都市インフラの更新についてご質問をいたします。
 都民の暮らしを支える重要な社会資本である首都高速道路は、建設から五十年以上が経過をし、橋梁部の腐食やひび割れが発生するなど、老朽化が進行いたしております。
 東日本大震災後の平成二十四年には、首都高速道路の将来の更新に当たり、国土交通省の有識者会議において、都心環状線の高架橋を撤去し、地下化などを含めた再生を目指し、その具体化に向けた検討を進めるべきとの答申がされております。
 とりわけ日本橋の区間においては、これまでさまざまな議論がされてきたところでございます。昨年七月には、日本橋周辺のまちづくりと連携をして、首都高速道路の地下化に向けて取り組む方針が、国土交通大臣と小池都知事から発表がされております。
 日本橋周辺のように、高架橋の高速道路を地下化することにより、東京の魅力を高める取り組みも重要であります。一方で、首都直下地震の切迫性も指摘がされており、早急に老朽化対策を進めていくことが都民に対する都の責務であると考えます。
 そこで、首都高速道路の老朽化対策について取り組みを伺います。
 最後に、繁華街の客引き問題について質問をいたします。
 世界からの観光客がふえる中、東京二〇二〇大会に向けましても、安全・安心なまちづくりが求められております。東京は、世界に開かれた国際観光都市として、ナイトタイムエコノミーの充実とともに、繁華街の安全対策が必要です。
 歌舞伎町など世界有数の繁華街のある地元の新宿区におきましても、これまで、悪質な客引きや暴力団などの取り締まりが行われてきました。新宿区のほかにも、都内の繁華街におきましては、客引き等の行為に対する罰則つき区条例をつくり、地元区、警察、地域が連携をして、繁華街のパトロールを行うなど対策を進めてきたところでございます。
 悪質な客引き等迷惑行為が減少する中で、風営法や迷惑防止条例などにかからない客引き行為はいまだに続いており、取り締まりの難しさが課題となっております。地元商店街、地域からも、さらなる実効力のある取り組みが求められております。
 国内外から多くの方々を迎える中、最大のおもてなしは、まちの安全・安心であります。東京二〇二〇大会を控え、さらなる安全・安心なまちづくりをどのように行っていくのか、都の見解を伺います。
 この東京に住み暮らす皆さんが、また、訪れる皆さんが、安全・安心に住み暮らすことができ、また次の世代である子供たちも皆、この東京に希望と誇りを持ち、安全・安心に住み暮らすことができる、そんな世界に誇るセーフシティー東京を実現してまいります。
 以上です。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 森口つかさ議員の一般質問にお答えいたします。
 都市づくりのグランドデザインについてのお尋ねがございました。
 これまでどの都市も経験したことのない少子高齢、人口減少社会となる二〇四〇年代に向けまして東京を持続的に発展させていくためには、環境、社会、ガバナンス、すなわちESGにも配慮いたしました都市づくりを進めていくことは重要であります。
 グランドデザインにおきましては、その都市づくりの戦略と取り組みの方向性を示したところでございます。
 具体的には、持続的な成長の実現に向けまして、世界をリードする国際ビジネス拠点の育成、三環状道路、鉄道といったインフラの充実、活用を進めてまいります。
 加えまして、燃えない、倒れない、安心して住み続けられるまちづくりを展開するとともに、再生可能エネルギーを活用するなど、ゼロエミッション東京を実現してまいります。
 このような取り組みは、持続可能な開発目標であるSDGsの取り組みとまさに軌を一にするものでございます。将来を見据えて、よりよい都市づくりを展開いたしまして、誰もが生き生きと輝く持続可能な都市東京を実現してまいります。
 その他のご質問は、東京都技監及び関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、戸建て住宅の耐震化についてでございます。
 耐震化を促進するためには、所有者がみずからの問題として認識し備えることが不可欠であり、耐震改修等の費用負担を軽減することに加え、所有者が主体的に取り組むよう、働きかけを強化することが重要でございます。
 これまで都は、整備地域内において、区の取り組みを後押しするため、改修等に助成を行い、これを拡充するとともに、整備地域外においては、国費を活用して耐震化を促進してまいりました。
 来年度からは、整備地域外においても、都費を充当して、所有者への積極的な働きかけなどを行う区市町村を対象として、診断や改修等に対する助成を実施してまいります。
 こうした取り組みを通じて、戸建て住宅の耐震化を加速し、都民の安全・安心を確保してまいります。
 次に、地域危険度を踏まえた不燃化の推進についてでございます。
 先月公表した地域危険度調査では、建物の延焼の危険性は、都内全体で改善したものの、相対的な値としての危険度は、木密地域などで高い状況にございます。この調査結果も踏まえ、引き続き、延焼を遮断する特定整備路線等の整備や、不燃化特区における老朽建築物の除却、建てかえ支援などを推進いたします。
 また、狭隘道路を事業として拡幅して、地域の改善と不燃化を促進する防災生活道路についても、その整備を加速いたします。
 来年度からは、これらの取り組みに加えて、都有地を活用して、コミュニティを維持しながら権利者の移転を促す魅力的な受け皿づくりについても、先行する地区で事業者募集などを開始いたします。
 燃えない、燃え広がらないまちの実現に向け、今後とも工夫を加え、さらなる取り組みを推進してまいります。
 最後に、首都高速道路の老朽化対策についてでございます。
 首都高速道路は、一日約百万台もの自動車が利用する首都東京の大動脈であり、その機能を維持するため、構造物の老朽化対策を計画的に実施していく必要がございます。
 首都高速道路株式会社では、平成二十六年に策定した更新計画に基づき、老朽化が著しい五カ所、八キロメートルで、橋梁のかけかえなどによる大規模更新を順次行うこととしており、一部の区間で既に工事を進めてございます。
 加えて、新たな損傷の発生、進行を抑制するため、五十五キロメートルの区間で、橋脚の補強など大規模修繕を順次実施し、長期の耐久性向上を図ってございます。
 都としても、これらの取り組みが着実に進められ、高速道路ネットワークの機能が持続的に発揮されるよう、国や首都高速道路株式会社と緊密に連携を図ってまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 セーフシティ東京防災プランについてですが、本プランでは、自然災害の様相、施策の体系、効果、自助、共助の必要性等を具体的に示すことで、都民一人一人が防災の重要性等を実感し、それが具体的な行動に結びつくことを目指し策定を進めております。
 プランでは、例えば、豪雨発生率の増加や特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化の効果をグラフ等で明示するなど、現状や効果が実感できるよう工夫を凝らしております。
 また、自助、共助の促進のため、熊本地震の県民アンケートを活用し、住宅の耐震改修の有効性を示すなど、都民の理解が得られるよう留意しております。
 都では、わかりやすさを追求した本プランを活用して、都民の理解と共感に基づく防災対策を一層進め、都民とともに、セーフシティーの実現を強力に推進してまいります。
 次に、帰宅困難者対策についてですが、民間一時滞在施設の確保に向けては、受け入れ人員の拡大の観点から、都内に多くの関連施設を保有している団体などに、重点的に協力を求めていくことも効果的でございます。
 このため、都は、都内に多くの宗教施設があることから、これらに協力を得るため、宗教団体の連合組織と連携し、傘下の宗教法人に対し、協力の可否について意向確認を進めているところでございます。
 また、数多くの大学により構成されている連合組織に協力を要請するとともに、各大学を区市町村と連携し、個別に訪問するなどの取り組みを実施しております。
 今後とも、多くの施設を傘下に持つ他の連合組織にも積極的に働きかけを行い、一時滞在施設の確保に取り組んでまいります。
〔消防総監村上研一君登壇〕

○消防総監(村上研一君) 家具類の転倒、落下、移動防止対策の普及啓発への取り組みについてでございますが、過去の地震災害の調査結果では、家具類の転倒、落下、移動によって多くの死傷者が発生していることは確認されております。
 このため、東京消防庁では、平成十五年度から、防火防災訓練や各種イベント等において、対策の必要性とともに、具体的な取りつけ方法についての周知に取り組んでおり、平成二十九年、消防に関する世論調査によりますと、対策実施率は六五・六%でございます。
 今後とも、取りつけ講習用資器材や新たに制作したプロモーションビデオ等を活用し、あらゆる機会を通じて普及啓発に努めてまいります。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 無電柱化についてでございますが、無電柱化は、災害時に電柱の倒壊による道路閉塞を防ぐなど、都市防災機能の強化を図る上で重要でございます。
 都は、第七期の無電柱化推進計画に基づきまして、センター・コア・エリア内の無電柱化を平成三十一年度までに完了させますとともに、第一次緊急輸送道路の無電柱化率を平成三十六年度までに五〇%とし、そのうち震災時に重要な機能を果たします環状七号線は、全線での完了を目指して整備を進めてございます。
 今後、新たに策定いたします無電柱化計画におきましては、都道の重点整備地域を環状七号線の内側エリアまで拡大し、重点整備路線として、第一次緊急輸送道路と区市町村庁舎や災害拠点病院等を結びます都道を新たに位置づけまして、防災性のより一層の向上を図ってまいります。
 引き続き、東京の無電柱化を強力に進めてまいります。
〔青少年・治安対策本部長大澤裕之君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(大澤裕之君) 安全・安心まちづくりについてでございますが、安全・安心の確保は、都民の希望と活力の前提であり、繁華街を含め地域の防犯力を高め、人々が安心して集い、憩う、安全な空間としていくことが重要であります。
 都はこれまで、安全・安心まちづくり条例等を踏まえ、繁華街等に関する指針の策定、暴力団排除に向けた普及啓発、防犯カメラの設置促進、防犯活動の担い手の育成、ながら見守り連携事業など、警視庁、区市町村、事業者や地域住民と連携した取り組みを展開してまいりました。
 東京二〇二〇大会を見据え、都民のみならず来訪者を含め、誰もが安全・安心を実感できるセーフシティーの実現に向け、官民一体となった防犯、見守り活動を一層強化するなど、さまざまな主体と密接に連携し、安全・安心まちづくりに積極的に取り組んでまいります。

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