平成三十年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 三十二番宮瀬英治君。
〔三十二番宮瀬英治君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○三十二番(宮瀬英治君) 昨年十月、父、宮瀬眞佐雄が他界いたしました。その経験から、命をテーマに提案いたします。
 最初に、病院の体制です。
 十六万人の死傷者を見込む首都直下地震では、停電に備えた病院の電力確保は最重要です。父が入院していた病院は、都の災害拠点連携病院です。しかし、その担当者に聞くと、わずか数時間分の燃料備蓄しかないと苦慮されているのが実態でした。父は、呼吸器をつけ、電力なしには生きられませんでした。
 改めて都内全百三十九連携病院の分量を局に確認すると、一キロリットル以下の病院が七十九。これでは一日すらもたない病院が半数以上であります。熊本や東日本の停電日数は約一週間。ひとたび連携病院の電力が喪失すれば、負傷者の受け入れのみならず、人工透析患者を含めた外来四万人、入院患者二万人の生命に危険が生じます。
 しかし、災害対応マニュアル策定率は八割、事業継続計画の策定率は五割にとどまり、都には財政支援や燃料供給計画などは現在全くありません。
 都は、連携病院の停電時の電力確保に向けて取り組むべきですが、所見をお伺いします。
 このままでは、二次災害により死者が千人単位でふえる可能性があることを、ここに指摘しておきます。
 次に、助けられる命は助けなければなりません。
 平成二十八年に心停止で搬送された方は、都内で約一・二万人です。しかし、都の過去十カ年における一カ月後生存率はわずか九%、全都道府県で四十二位です。心停止から十分を経過すると心肺蘇生法をしてもほぼ助かりませんが、平成二十八年の救急車の平均到着時間は、入電からの時間を含めると十分四十九秒と、ワーストワンです。
 救急車等の体制を抜本的に見直すなど、一カ月後生存率の向上に向けた取り組みが必要でありますが、まずは消防庁の見解を伺います。
 次に、新たにパトカーにAEDを搭載することを提案します。
 昨年の警察官の交通事故などの現場平均到着時間は六分五十六秒で、救急車より早く、かつ十分以内です。
 警視庁は、車内温度や振動が課題としていますが、既に車載AEDを導入した神奈川県警、鳥取県警に伺うと、故障はともにゼロ件。鳥取県警では、八年前から予算計上し、実際に救命活動をしているとのことです。警視総監の所見をお伺いいたします。
 次に、心停止は夜間から早朝にかけて一番多く発生していることから、二十四時間営業の全コンビニにAEDを置くことを提案します。
 日本フランチャイズチェーン協会に伺うと、具体的にATMの横に置くことを検討、あと一押し行政の支援があればとおっしゃっておりました。
 国もコンビニへの設置を推奨しており、船橋市、戸田市など全国の自治体も、市内全コンビニに設置、救命実績もあります。その財源も、伺った船橋市では、市の施設にある全てのAEDを一括リースし、コストを削減、その予算で費用を捻出しました。
 警視庁でも、交番などのAEDをリースにし、約四千万円のコスト削減に成功。さらには、とある自治体関係者は、施設などにある区のAEDは、学校やスポーツ施設など最低限を除いてコンビニに置いてもよい、区施設と比べ来店者も多く、夜間や休日など利用可能時間も今の倍になる、都で協会と協定を結んでもらえればとおっしゃっていました。
 このように、都有施設AEDの一括リースや区市町村との連携など、仕組みを変えれば、予算を多くかけずとも都内全コンビニにAEDを置くことが可能ですが、知事の所見をお伺いいたします。
 さて、守らなければならない命は守らねばなりません。温暖化が加速し、北関東、九州北部などで洪水やゲリラ豪雨など、毎年水害が発生しています。それらの教訓を受け、国が昨年八月、新たなステージに突入したと洪水浸水想定区域図を発表しましたが、その中には多くの都の施設があります。
 例えば、百二十六万人が被災するとされる荒川水系において、その区域図をもとに、各局のご担当と場所や数の突き合わせをし、実際に現場を確認しました。
 都立学校は、全二百五十六校のうち五十九校が浸水。しかし、現地調査をすると、うち三十六校では、備蓄が地下や一階、地上に保管されており、使用できない可能性があります。さらに、水害を想定した訓練実施率は四割にとどまり、多くで避難場所の事前選定もされておりません。
 今後、教育庁は、洪水、浸水への対応として、備蓄を適切な場所に保管するよう指導すべきです。あわせて、水害想定の避難訓練も実施するよう指導すべきですが、それぞれ所感をお伺いします。
 都営地下鉄では、全出入り口に止水対応をしておりました。しかし、駅地下でつながる民間ビルの出入り口ではその限りではなく、連絡体制もなく、交通局はその状況全てを把握できていません。
 現在、都営地下鉄全百一駅では、十八年前の東海豪雨災害をもとに対策をしていますが、新たな予測によれば、この対策では大手町駅を初め、多くの駅で浸水や逃げおくれの可能性を国が指摘しております。
 都営地下鉄の該当する浸水駅数と新たな対策を伺います。
 都の備蓄倉庫では全体の四割が浸水。しかし、その地域にある倉庫の六割では有効な対策が見出せず、このままでは延べ二十七万人分の備蓄が水没します。さらには、浸水想定地域にある八つの災害拠点病院や連携病院の一部では、自家発電設備がいまだに地下にある状況が続いています。
 状況を正確に把握し、災害拠点病院の水害に対する体制強化を図るべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 最後に、父の病名はCOPDという病でした。COPDは、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれ、主たる原因は喫煙、症状は徐々に徐々に息ができなくなる、大変苦しい、苦しい病気です。
 WHOは二〇三〇年には死因第三位になると予測し、日本でも推計五百万人以上の患者がいます。しかし、治療を受けている方は四%にとどまり、予防や早期発見につながるその認知度は、都の目標に対しわずか三割であります。都議会でも過去十年、単独で質疑されておりません。企業での検診や区市町村との連携も欠かせませんが、わずか一、二自治体にとどまっています。
 そこで、認知向上、検診、区市町村との連携などが課題となりますが、知事のCOPDに対する見解を伺います。
 最後に、一言申し上げます。私の父は助かりませんでした。しかし、同じ病で苦しむ方、また、今、病院で看病を受けている方、何よりも今を苦しむ人たちのために尽力を尽くしてまいります。
 以上で質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 宮瀬英治議員の一般質問にお答えをいたします。
 父上のご逝去に際しましてのお悔やみ、改めて申し上げたく存じます。
 AEDについてのご質問がございました。
 人が突然の心停止によって倒れたときに、その場に居合わせた人がAEDを用いて、そして心肺蘇生を行うということができれば、かけがえのない命を救うことにもつながります。
 そのため、都といたしまして、二十四時間使えるAEDの設置に取り組む区市町村を支援するとともに、都民に対しましては、使用方法などに関する講習会を実施しているところでございます。
 また、設置場所を検索できるように、AEDの設置者に対しまして、日本救急医療財団の全国AEDマップへの登録を呼びかけております。
 今後とも、コンビニエンスストアに設置している自治体の取り組みなども参考にしながら、区市町村や業界団体等と連携いたしまして、緊急時に速やかにAEDを利用できるよう環境づくりを進めてまいります。
 COPDについてのご質問でございます。
 慢性閉塞性肺疾患、いわゆるCOPDでございますが、せき、たん、息切れを主な症状とした進行性の疾患でありまして、長期にわたる喫煙習慣が主な原因とされております。肺の生活習慣病といわれております。
 現在、都におきまして、COPDについての認知度を高めて、発症予防、早期発見につなげるために、動画、パンフレットを作成するとともに、スポーツイベントで肺年齢測定会を行うなど、普及啓発に取り組んでいるところでございます。
 また、今回改定をいたします東京都保健医療計画におきましては、生涯を通じた健康づくりの取り組みの一つといたしまして、新たにCOPDを取り上げて、早期発見と早期受診に向けました普及啓発に取り組むことといたしております。
 今後、区市町村と連携をいたしながら、肺年齢の測定や正しい知識の啓発を行って、思い当たる症状がある方には、医療機関への受診を勧めるなど、早期発見の取り組みを進めてまいります。
 なお、その他のご質問につきまして、警視総監、教育長、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔警視総監吉田尚正君登壇〕

○警視総監(吉田尚正君) パトカーにAEDを搭載することについてでありますが、AEDにつきましては、振動への耐久性や正常に作動する温度の管理の問題がございますために、常時、車載することには課題があるものと承知をいたしております。
 こうした課題を残したままAEDを車載した場合に、切迫した救急現場でAEDが適正に作動しないといった事態も想定されます。
 このようなリスクを避けるために、今後、耐久性に関する検討を進めるとともに、地域におけるAEDの普及状況や、AEDを設置しております千百九十二カ所の交番、駐在所等の分布状況等を踏まえまして、試験的運用を含めまして、その必要性について検討いたしてまいります。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立学校における災害用備蓄品についてでございますが、都立学校は、地震等の災害が発生した場合に備え、児童生徒及び教職員の生命を守ることを目的に、三日分の食料品や毛布等を災害時の対策として備蓄しております。
 各学校は、これらの備蓄品を、学校ごとの施設の状況や災害により各地域で想定される被害などを考慮し、地域内に設置したコンテナや校舎内の倉庫等に保管しております。
 ご指摘の水害が想定される地域に所在する学校では、備蓄品を上層階に保管しているところもございますが、校舎の使用状況等からそれが困難なところもございます。
 都教育委員会は、各学校に対し、備蓄品の一部を上層階に移すなど、備蓄品を適切な場所に保管するよう、引き続き指導してまいります。
 次に、水害を想定した避難訓練の実施についてでございますが、各都立学校が地域の実情を十分に踏まえ、さまざまな想定を取り入れた実践的な避難訓練を実施することは重要であります。
 こうしたことから、全ての都立学校において、毎年度、多様な場面や状況を想定した避難訓練を行っております。
 また、各都立学校は、水害等の災害が発生するおそれがある場合には、気象警報等の情報を収集し、必要に応じて臨時休業とするなど、児童生徒の安全確保に万全を期しております。
 都教育委員会は、都立学校に対し、今後は水害対応も含めるなど、地域の実情に応じた実践的な避難訓練を実施するよう、引き続き指導してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、災害拠点連携病院の停電時の電力確保についてでありますが、都は、災害時にも医療機能を継続できるよう、都内全ての病院に対し、近隣のガソリンスタンド等と連携した燃料の補充等について、BCPに規定することを働きかけております。
 また、災害時に、主に中等症患者などを受け入れる病院として都が指定する災害拠点連携病院には、毎年、災害時の体制に関する報告を求め、その中で自家発電装置の使用燃料や備蓄量等についても確認をしております。
 災害時に病院に求められる機能は、病院の規模や立地環境によって異なっており、来年度は、各病院の実態に沿ったBCPの策定や改定を促すため、燃料の確保状況等について詳細な調査を行う予定でございます。
 次に、災害拠点病院の水害に対する備えについてでありますが、都は、各病院の自家発電装置の発電容量等について、毎年、国の依頼に基づき調査しており、平成二十七年度は、関東・東北豪雨の発生を踏まえ、自家発電装置の設置場所等についても調査するとともに、浸水被害にも対応できるよう、BCPの改定を働きかけてまいりました。
 また、今年度は、自家発電装置の設置場所と、昨年改定された国土交通省の洪水浸水想定区域データとの照合を行っております。
 今後、浸水が想定される区域内において自家発電装置を地下に設置していることが確認された災害拠点病院に対してヒアリングを実施し、ハザードマップ等を参考に適切な場所への自家発電装置の移設など、必要な助言を行ってまいります。
〔消防総監村上研一君登壇〕

○消防総監(村上研一君) 心肺停止傷病者の一カ月生存率向上に向けた取り組みについてでございますが、心肺停止傷病者の一カ月生存率向上のためには、緊急性の低い救急需要の抑制、救急隊の増隊、応急手当ての実施率の向上、医療機関等との連携が重要でございます。
 そこで、東京消防庁では、不要不急な救急需要の抑制につながる救急相談センターの利用促進や、救急隊の計画的な増強等による現場到着時間の短縮に取り組んでおります。
 また、傷病者のそばに居合わせた人、いわゆるバイスタンダーに、一人でも多くの応急手当てを実施していただくため、引き続き、救命講習の受講促進に取り組むなど、今後とも、心肺停止傷病者の生存率向上に努めてまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 都営地下鉄における水害対策についてでございますが、交通局では、お話のように、当局の駅出入り口の止水板や防水扉の設置など、東海豪雨を想定したハード対策は完了してございます。
 一方、こうした局地的に発生する都市型水害とは異なる荒川氾濫におきましては、昨年八月の国の想定によりますと、都営地下鉄四十駅を含む十七路線百駅で浸水するとしてございますが、国はこうした大規模水害に対して、施設で守り切るのは現実的ではなく、命を守ることを目標とすべきとしています。
 交通局におきましても、迅速な避難が重要と認識してございまして、防災関係機関等と連携し、あらかじめ荒川氾濫時の事前行動を時系列で整理した計画に沿って、気象情報等を収集しつつ、各駅ごとに水防法で定めた避難確保計画に基づいて適切に避難、誘導することとしてございます。
 今後とも、関係機関と緊密に連携し、安全・安心の確保に取り組んでまいります。

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