平成三十年東京都議会会議録第四号

○議長(尾崎大介君) 四十六番福島りえこさん。
〔四十六番福島りえこ君登壇〕

○四十六番(福島りえこ君) それでは、都民ファーストの会東京都議団福島りえこの一般質問を始めます。
 私は総合電機メーカーの基礎研究所で二十二年間勤めてきました。そこでは、千人以上の研究者が十以上の研究部門で百以上の研究テーマに取り組んでいました。私自身、眼鏡をかけずに見られる3Dテレビを世界で初めて製品化するなど、仲間と力を合わせて、ゼロから一を生み出す研究開発をしていました。
 後半はマネジャーを務めましたが、そこでの悩みは、研究が続けられるかどうかが市場規模で決まること、すなわち経済至上主義です。
 しかしながら、市場規模は政策に依存します。代表的なものとして再生可能エネルギーの導入目標やEVシフトなどのCO2削減政策がありますが、関連する産業や研究の、振興または停滞に大きく影響し、どの政策を選ぶかは国や地域によって異なります。
 私は、次世代のために今我々ができることに取り組むために政治を志しました。きょうは、東京の持続性向上と子供たちの未来のために、世田谷区民の皆様に与えていただいた議席をもって、証拠に基づく政策立案、すなわちEBPMの推進、東京都ICT戦略、そして地域共生社会の実現について質問いたします。
 初めに、EBPMの推進の重要性について述べます。
 さきの小池都知事の施政方針でも触れられたように、日本は既に人口オーナス期に突入し、東京の人口減少も間近に迫っています。このため、知事は、都の総合計画、二〇二〇年に向けた実行プランを策定するなど、就任以来一貫して東京の持続性向上に向けた取り組みを強力に推進されてきました。
 残された時間と資源が限られる中、行政、そして我々議会も実効性と効率を意識すること、そして、説明責任を果たすことがこれまで以上に求められています。つまり、一部の団体の声のみを議員が代表するしがらみ政治や、職員がみずからの組織の中だけで仕事を最適化する、縦割り行政とはきっぱりと決別するべきときです。
 そこで私が提案したいのが、証拠に基づく政策立案、EBPMの推進です。これまでの政策立案で主流だったエピソードベースから、客観的なデータに基づくエビデンスベースに切りかえることで、政策の優先度を誰もがわかる形で決めることができます。加えて、都民や職員による事業提案制度を初めとする、さまざまな新規事業をエビデンスベースで試行し効果検証することで、先が見えにくい中での真の打開策を打ち出せる可能性も秘めています。
 ちなみに、米英では二〇〇〇年代からEBPMに取り組んでおり、国も平成二十九年に官民データ活用推進基本法に基づく基本計画を示しました。都でも、財務局による平成三十年度の東京都予算案の事業評価からエビデンスベースによる評価を一部導入しています。
 EBPMは統計リテラシーの習得など、政策立案の考え方そのものを変える取り組みといえます。その推進に当たり、まずは統計のさらなる利活用に向けた機運を醸成しながら、施策立案に必要なデータを適切に把握、分析、活用する手法を確立しなければなりません。
 こうした観点から、今後、全庁的な統計リテラシーを強化するとともに、新たな技術の導入も含め、データの利活用を推進する環境を整備していく必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、都が平成二十九年度に発表した東京都ICT戦略についてです。
 ICT化はもはや世界的潮流です。山積する課題を効率的、効果的に解決するためには、都政においてもICT化を積極的に進めていくべきと考えます。
 来年度予算を見ても、ICT関係経費として七百億円近い事業費が盛り込まれるなど、ICT化を進める都の姿勢が見てとれます。
 一方、個別の事業を見てみると、さらにブラッシュアップできる取り組みが多く、ICTに関する知識やノウハウが十分ではないように見受けられます。
 こうした中、今後五年間のICT施策に関する基本的な考え方を東京都ICT戦略として網羅したことには、一定の評価をいたします。
 今後は、この戦略に向けた施策を着実に実施することになると思いますが、その際、各局の取り組みを把握し、施策の横串を通すとともに、技術的な提案を積極的に行う体制を構築し、都のICT施策の実効性を一段と高めていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、個別のICT化事業に関する質問です。
 例えば都は、今年度から保育所の、来年度から介護事業所のICT化を推進すると聞いています。しかしながら、既にICTシステムを導入した世田谷区内の介護事業者や保育園のICTシステムを開発、納品している業者に話を聞いたところ、事業者の情報リテラシー不足などが原因で、期待したほど作業時間が短縮できなかったり、システムとしての完成度が低いなどの問題があることがわかりました。
 ICTは物ではなくサービスです。そして、ICTに関連する技術は日進月歩で発展しています。つまり、単に全事業所にICTを導入することを目指すのではなく、事業者が使いこなせること、さらにはシステム開発業者間で健全な競争がなされ、事業者のニーズに応えるサービスを普及させるという視点が大切です。
 そこで、保育所や介護事業所へのICT導入について、事業者にとって本当の意味での使いやすさ、そして生産性向上につなげる取り組みが必要だと思いますが、所見を伺います。
 また、都は、都内の企業数の九九%を占める中小企業のICT化も進めようとしています。ビジネスにおいてICTの活用は今後必須であり、IoTやAIなどの最新技術の活用も急速に進んでいます。
 例えばドイツでは、中小企業が大企業並みの競争力を持つ取り組みを推奨しており、インダストリー四・〇というIoT推進施策はこれと連動しています。
 東京においても、中小企業がIoTやAIなどの最新のICT技術を活用することで、生産性向上や競争力強化を図る必要があると考えますが、知見やノウハウが不足しているという中小企業の実態を踏まえ、どのように支援していくのか、取り組みを伺います。
 次に、地域共生社会に関する質問に移ります。
 都の総合計画、二〇二〇年に向けた実行プランに続き、昨年公表された重点政策方針においては、人のライフステージの視点に着目し、人の持つ活力を引き出す全庁横断的な取り組みを進めるとしています。
 政策の横串として、人に着目した理由とその効果について知事に伺います。
 以下は戦略の一つ、支えられる社会から、誰もが元気に支え合う社会へについて話を続けます。
 私は、仕事と子育てを両立する中で、いや応なしに助け、助けられるという地域が持つ機能の恩恵を実感することができました。そして、より多くの現役世代が同じように地域の価値に触れ、徐々に地域を支える側に回れる仕組みをつくることで、少子高齢化における次世代の負担を減らせるのではないかと考え、平成二十四年からの二年間、社会福祉協議会の協力会員として、週に一度、高齢女性の生活の支援をしたり、議員になってからも、地域のつながりをテーマにタウンミーティングを重ねてきました。
 国も人口減少社会を迎えるに当たり、平成二十九年二月に地域共生社会を提唱しています。制度や分野の縦割りや、支え手、受け手の関係を超えて、地域社会をともに支えることで、社会保障制度の持続性を高めようとするものです。
 同様に、東京都の総合計画でも、防災や防犯、そして介護などの領域で共助や支え合い、そしてボランティアの育成を促すとしています。
 とはいえ、仕事先で多くの時間を過ごす現役世代、特に男性が地域で活動する時間をつくることは難しく、その結果、退職後も地域のつながりを持てないケースが少なくありません。
 例えば、世田谷区が二〇一六年に実施した高齢者ニーズ調査では、要介護認定を除いた六十五歳以上で、近所の人とのつき合いがほとんどない人が、女性で八・五%であるのに対し、男性が一五・六%と、より孤立している様子がわかります。
 その結果、地域にかかわる人も固定化しており、例えば、特別区の消防団員では、高齢化が進み、充足率が目標値の九〇%を下回った状態が続いています。地域のつながりの現状と課題については、既に多くの調査が行われており、地域活動に参加したいと思っている人が少なくないにもかかわらず、きっかけがない、情報がないなどの課題が既に明らかになっています。
 私が主催したタウンミーティングでも、どんな活動をしているかわからない、拘束時間が長いなどの課題が示されるとともに、防犯、防災、介護、教育や子供食堂、マンション管理、サッカークラブなどのそれぞれが身近と感じるテーマであれば、地域で活動したいという人がいることもわかっています。
 現在、地域共生社会を前提とした計画を描いている都の各局は、個別に区市町村の取り組みを支援することが多いようですが、都民という主体が一つである以上、より連携して、現役世代に向けた加入促進策を支援するべきと考えます。
 例えば、ことし一月に公表されたセーフシティ東京防災プランの骨子でも、自助、共助の取り組みが重要であるとしています。
 そこで、共助の担い手である町会、自治会の防災活動を活性化するとともに、その防災活動により若い世代がかかわれるよう、町会、自治会の取り組みを支援する必要があると考えますが、見解を伺います。
 また、地域包括ケアシステムの担い手の裾野を広げる必要がある福祉分野において、福祉保健局は、平成二十七年度より、既存の福祉団体とプロボノを結びつけ、その活動を広げる東京ホームタウンプロジェクトなどを行ってきました。こうした活動には、地域活動にかかわる社会福祉協議会やNPOなど他組織との連携が重要と考えますが、見解を伺います。
 さらに、近年、働き方改革が進んだことにより、現役世代も退社後に自由な時間を持てるようになりつつあります。また、ICTを通じて新たな対面の関係が生まれるシェアリングエコノミーも広がりつつあります。
 そして、東京二〇二〇大会のボランティアに参加することで、仕事外でのつながりの価値を体験する人が確実にふえます。
 このように地域の再構築に向けた条件が整いつつあり、来年度から都民の活動を支える新たな支援の仕組みなどを検討する機会と捉え、現役世代が地域活動に参加できるよう取り組みを強化するべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、地域共生社会を残り十年もない二〇二五年に向けて真剣に実現するには、地域を支える人材の現状と理想の姿を人数や年齢分布、属性等で把握、表現するとともに、目標と現実の乖離を把握し、各局を横断して現役世代からの人材育成を進捗管理するなど、関係する施策のPDCAをエビデンスベースで進める必要があると考えます。
 例えば、世田谷区の社会福祉協議会の約一千七百名の構成員は、町会や自治会、消防団や民生委員など複数の役職を兼務しています。世田谷区の人口九十万人に対して千七百名といえば約五百人に一人、これが現状です。
 支えられる社会から、誰もが元気に支え合う社会へという戦略も含め、実行プランの推進に当たっては、社会情勢や都民ニーズを踏まえた上で、各局の持つ情報や知恵が有機的に組み合わさり、効果的な政策が展開されるよう、全庁一丸となって取り組んでいくべきと考えますが、政策企画局の見解を伺います。
 以上で質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 福島りえこ議員の一般質問にお答えをいたします。
 まず、人に着目した政策の展開についてご質問がございました。
 私が目指しております都政の要諦でございますが、人に焦点を当てた大義と共感の行政にございます。人の持つ活力、これこそが東京の課題を克服して持続的な成長をもたらす全ての基礎となるものでございます。
 こうした考えに基づいて、昨年の七月、妊娠、出産、子育てなど、人のライフステージに応じた政策を重点的に展開していく観点から、「人が生きる、人が輝く東京へ 重点政策方針二〇一七」を策定したところでございます。この方針のもとで全庁横断的な視点で検討を進めて、二〇二〇年に向けた実行プランの政策を強化したところでございます。
 そして、政策の強化に当たりましては、人に着目した多面的な政策が相乗効果を発揮できるように、さまざまな行政分野からのアプローチに取り組みました。
 例えば、子育て世代に対する支援でございますが、保育サービスの拡充のみならず、働き方改革や多世代交流の推進を組み合わせて政策を強化いたしております。
 今後とも、このような人への投資を続けまして、東京の活力の源である都民お一人お一人が生き生きと輝いて、東京が持続的に成長を続けていけますように、引き続き政策を磨き上げてまいりたいと考えております。
 その他のご質問につきましては、関係局長よりのご答弁とさせていただきます。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、今後の統計データ等の利活用についてですが、総務局ではこれまで、人口、産業、経済などの各種統計データを各局に提供することにより、さまざまな政策立案に寄与してきました。また現在、統計データ等の再利用が可能なオープンデータ化の推進にも着手しております。
 今後、EBPM、すなわち、証拠に基づく政策立案を推進するためには、職員の統計分析、活用能力の向上と、データの利用環境のさらなる整備が重要でございます。
 このため、セミナー開催や庁内ウエブによる情報発信などにより、職員の統計利活用についての理解を進めるとともに、ビッグデータやAIの活用など、都の政策立案を支える新たな技術の導入についても検討を深めてまいります。
 こうした取り組みを通じ、さらなる統計の利活用を図り、EBPMの推進に寄与してまいります。
 次に、ICT施策の実効性の向上についてですが、実行プランに掲げる三つのシティーを効率的、効果的に実現するためには、日進月歩で発展するICTを積極的に活用していくことが不可欠でございます。
 そのための体制を強化するため、昨年十一月に、民間の最新の知見を有する人材八名を都の特定任期つきの管理職として採用いたしました。
 この人材を中心に、現在、各局の施策立案に対する技術的な助言、提案に加え、IoTやオープンデータなど、各局横断的な取り組みの共通基盤となる技術のあり方などについて、スピード感を持って検討を進めているところでございます。
 こうした取り組みにより、早期に実現した施策をショーケースとして東京二〇二〇大会時に展開するとともに、その後も各施策の速やかな実現に全力で取り組んでまいります。
 次に、地域の防災活動への支援についてですが、災害時には共助の核となる町会、自治会が行う防災活動は重要でございます。
 これまで都では、町会、自治会等に対し、地域で想定される災害を学ぶ東京防災学習セミナーを実施し、区市町村と連携して活動の活性化を図ってまいりました。
 地域の防災活動では、若い世代が集まらないことによる参加者の固定化などの課題がございます。そのため、今年度より町会、自治会等がつくる自主防災組織に防災の専門家を派遣し、若い世代が参加しやすい活動の工夫をアドバイスするなど、組織の活性化を支援しております。
 今後も、区市町村と連携して地域の防災活動を支援し、共助の取り組みを推進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、福祉職場へのICT導入についてでありますが、都は現在、保育所や介護施設等において、事務処理などの負担軽減を図るシステムの導入を支援しております。
 一方、厚生労働省の調査によれば、介護事業所は小規模な事業者が多いこともあり、ICTを導入しているのは全体の四分の一にとどまっております。
 こうしたことも踏まえまして、都は来年度、介護を初めとした福祉職場における導入の先行事例を収集いたしますとともに、福祉の現場における業務を精査し、ICTの活用による省力化が可能か、またどのような活用ができるかについて分析いたします。あわせて、導入できない要因についても調査をし、ICTを活用した福祉職場における業務の効率化等を進め、働き方改革につなげてまいります。
 次に、地域活動の担い手づくりについてでありますが、高齢者が地域で安心して暮らし続けるためには、住民相互の支え合いを推進していくことが重要でございます。
 このため、都は、地域の社会福祉協議会等と連携して、地域活動の担い手の掘り起こしなどを行う区市町村の生活支援コーディネーターの養成研修等を実施しております。
 また、お話の東京ホームタウンプロジェクトでは、専門知識を有する企業人のボランティア活動であるプロボノによるNPO等の活動の支援のほか、これまで地域とのかかわりが薄い方々がボランティア活動に踏み出せるよう、セミナーの開催や情報発信等を行っております。
 今後とも、地域活動の新たな担い手の創出や育成に向けまして、社会福祉協議会やNPO等と連携する区市町村を支援してまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 中小企業への最新技術の導入支援についてでございますが、中小企業の競争力や生産性を高めるため、その業務に最先端の技術であるIoTやAIを円滑に導入し活用できるよう支援を行うことは重要でございます。
 このため、都は今年度より、IoTの技術に関し、中小企業に専門家を派遣して業務への導入に向け助言を行いますほか、産業技術研究センターで企業との共同研究を開始したところでございます。来年度には、専門家を派遣する中で、AIに関しても助言をいたしますほか、現場の状況に最もふさわしいITシステムを提案してまいります。
 また、産業技術研究センターでAIの活用をテーマに共同研究を開始いたしますとともに、IoTのシステムを開発、提供する中小企業をサポートするための拠点を整備いたします。
 これらにより、中小企業が最新の技術を適切に活用できるよう支援してまいります。
〔生活文化局長塩見清仁君登壇〕

○生活文化局長(塩見清仁君) 現役世代の地域活動への参加についてでございますが、地域における課題の解決に向けましては、地域活動の担い手の確保が必要でありまして、現役世代に対して、地域活動への参加意欲を高める取り組みは重要でございます。
 これまで都は、地域の底力発展事業助成を通じまして、町会、自治会がみずから行う加入促進の取り組みや、地域のイベント等の多世代間の交流事業等を支援してまいりました。
 さらに今年度からは、町会、自治会みずからの情報発信力等を高めるため、現役世代の企業の社員等の経験やスキルを生かしたボランティアであるプロボノを活用する事業を開始したところでございます。今後、町会、自治会ポータルサイト等でその取り組みを幅広く発信してまいります。
 また、来年度から、地域活動へ現役世代の参加を促す方策につきまして、都民の活動を支援する新たな体制とあわせて検討してまいります。
〔政策企画局長遠藤雅彦君登壇〕

○政策企画局長(遠藤雅彦君) 実行プランの推進についてでございますが、都政を取り巻く社会情勢の変化は、ますますその速度を増しており、計画も一度つくったら終わりではなく、常に見直しの視点を持って取り組んでいくことが必要でございます。
 このため、実行プランの推進に当たっては、各施策の実施状況について確認を行い、把握した課題を次の政策の強化につなげるなど、PDCAサイクルの運用を徹底しております。
 また、政策の強化に際しましては、各局からの提案はもとより、国や民間の動向などを踏まえ、全庁的な視点から政策提言を行うなど、今後の取り組みについて議論を重ねてまいりました。
 今後も、現場を持つ各局との密接な連携のもと、常に新たな動きを的確につかみつつ、都民のニーズにかなった先進的な政策を打ち出していけるよう努めてまいります。

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