平成三十年東京都議会会議録第三号

○議長(尾崎大介君) 四十一番龍円あいりさん。
〔四十一番龍円あいり君登壇〕

○四十一番(龍円あいり君) 私は、スペシャルニーズ、パラリンピック、LGBT、そして公有地跡地について質問いたします。
 親ばかではあるんですけれども、私の息子は今四歳で、まあ、いつもにこにこ、けらけらと笑っていて、楽しそうな愉快な子です。遺伝子疾患であるダウン症候群があるので、本当に成長はゆっくりなんですが、親にとってみれば、いとしくてかわいい存在です。
 息子は世間では障害児といわれます。障害という言葉はマイナスの要素を連想させますので、劣っているとか、不完全、かわいそうというようなレッテルを張りつけられたように感じるときがあります。何も悪いことしてないのにどうしてというような憤るような気持ちだったり、悲しい気持ちになるときがあります。
 まあ、そう聞くと、いやいやいや、事実そうなんだから仕方ないでしょうと思われる方もいるかもしれません。でも、それが差別であり、偏見なんです。
 そもそも人類を健常者と障害者の二つに分けて、その間に越えられない壁があるように扱うことは、余りに乱暴なことで、多くの方を傷つけています。
 息子が生まれたアメリカでも、およそ二十年前は、ア・パーソン・ウイズ・ディスアビリティーズ、アビリティー、能力がないと表現していました。障害者権利条約も、コンベンション・オン・ザ・ライツ・オブ・パーソンズ・ウイズ・ディスアビリティーズとなっていましたが、現在は、公の場で話すときは、ア・パーソン・ウイズ・スペシャル・ニーズといいます。人にはいろいろなニーズがあるんですけれども、その中でも特別なニーズがあるということです。
 これは、私としてはとても腑に落ちる言葉でした。この概念を共有することが、偏見や差別を減らすための第一歩になることと信じて、少し長くなりましたが、お話しさせていただきました。
 アメリカにはIDEAという、ゼロ歳から二十一歳までのスペシャルニーズがある人を対象とする支援法があります。法律に基づいて、一人一人にチームが編成されます。チームメンバーは、行政のケアマネジャー、教育の担当者、そして保育や療育などの福祉担当者、必要があれば医療担当者、そして両親です。定期的に集まって、その子を多面的にかつ包括的に見て、きめ細やかなカスタマイズされた支援計画を立てていきます。
 また、原則として、その子にとって可能な限り最大限、インクルーシブな環境で育つべきだということが定められています。インクルーシブというのは、スペシャルニーズがない子たちがいる環境のことをいいます。
 インクルーシブな環境で育ちますと、その子は、自分のスペシャルニーズを理解して、周りに助けを求めることができるようになったり、逆に、どうしたらみんなと一緒に活動に参加できるのかというのも学んでいきます。また、スペシャルニーズ児が同級生にいる一般のお子さんにとっても、学習面でよい影響を与えるということが、アメリカの研究ではわかっています。
 子供のころからともに育つことで、スペシャルニーズのある方とない方が一緒に参画するインクルーシブな社会が実現されていきます。
 日本でも、厚生労働省の児童発達支援ガイドラインで、地域社会への参加、インクルージョンの推進と合理的配慮が、障害児支援の基本理念として位置づけられていますが、まだまだ分けてという風潮が残っているように感じます。
 さて、子供が育つのは、何も学校や保育園だけではありません。公園もとても大切な場所です。
 アメリカには、インクルーシブ公園というのがあります。滑り台などの遊具に、車椅子でも利用できるようにスロープがついていたりとか、ブランコはジェットコースターのシートのようにガチャンと体を固定できます。そのほかにも、手話のアルファベットが図解されていたりとか、耳で音を楽しむ遊具があったりとか、そのほかにも、絵で簡単に理解できる説明があったりと、さまざまなスペシャルニーズに対応しています。もちろん、スペシャルニーズのない子たちも楽しめるので、遊びを通して、いろんな違いがある子たちがいることを自然に学べるようになっていました。
 残念ながら東京にはこういう公園がまだありません。都立公園において、スペシャルニーズのあるお子さんが安全に安心して遊ぶことができる工夫がされている、インクルーシブな公園を整備していくことが必要と考えますが、都の見解を伺います。
 先ほど、アメリカでは多面的、包括的なカスタマイズ支援があるとお伝えしました。日本はというと、教育、福祉、医療のこの横の連携がやや薄いため、包括性が足りていないと感じています。
 どうしたらいいのかなとあちこち視察させていただきながら考えてきました。たどり着いたのは、児童福祉法に規定されている児童発達支援センターがキーポイントだろうということです。一般の児童発達支援事業は、お子さんへの直接的な発達支援にとどまります。一方、センターはそれに加えて、相談、情報提供、そして地域へのアウトリーチというのがあるので、より包括的な取り組みができます。
 足立区の、うめだ・あけぼの学園のような質のいいセンターをふやしていくことが最重要課題だと考えています。センターがふえれば、暗い迷宮でさまよっている多くの親子に明るい道が開けていくと考えています。しかし、今のところ、センターはなかなかふえずに困っております。
 児童発達支援センターの設置促進に向けて、都はどのように取り組むのでしょうか、伺います。
 もう一つ重要なのが、保育所等訪問支援です。
 子供がふだん生活している場所に支援員が訪れて、先生らにアドバイスしたり、本人への発達支援を行うものです。それによって、保育園とか学校でのスペシャルニーズ児の受け入れが進んで、よりインクルーシブな環境づくりの手助けになります。
 また、四月からは、訪問支援対象に新たに乳児院や養護施設が加わります。これらの施設にいるお子さんのおよそ三割にスペシャルニーズがあるそうです。
 その中でも特に重いスペシャルニーズ児がいる、日赤乳児院を視察させていただきました。関係者に、何に一番困っていますかと聞きましたら、真っ先に、発達支援を受けさせてあげられていないんだとおっしゃったのが、強く印象に残りました。
 今後、施設にいるスペシャルニーズ児たちが少しでも発達支援を受けられるといいなと願っています。
 このように、保育所等訪問支援はとても有用な制度なんですけれども、スペシャルニーズ児の親にさえ余り知られてなく、認知度が低く、使用が限定されてしまっています。
 そこで、都は、保育所等訪問支援の利用が一層進むように積極的に取り組むべきだと考えますが、都の所見を教えてください。
 さて、二〇二〇年、東京は、夏季パラリンピックを二回開催する世界で唯一の都市になります。多様性を認め合い、インクルーシブな成熟した都市としての姿を世界に示していく必要があると思います。パラリンピック選手が一アスリートとして純粋に限界へ挑んでいる様子を積極的に伝えていくことが、大会成功の鍵だと考えます。
 ロンドン大会では、パラリンピック選手のかっこよさを伝える映像が、イメージを大きく変えたと聞いております。
 都としても、映像などを効果的に使いながら、パラリンピック選手の魅力発信にさらに取り組むべきだと考えますが、所見を伺います。
 きのう、我が会派の代表質問で、あらゆる差別を許さないとするオリンピック憲章の精神を浸透させるために、条例制定に向けた調査、検討に着手していて、ことし後半に条例の提出を目指すことを、都知事からご答弁いただきました。
 LGBTを初めとする性的マイノリティーに対する差別とは、一体どういうものなのでしょうか。あからさまなヘイトスピーチなどは、もちろん禁止されるべきです。しかし、行政においては、社会資源へのアクセシビリティーの障害を取り除いていく必要があると私は考えます。
 例えば、同性カップルが公営住宅に入居できなかったり、DV相談を聞き入れてもらえなかったり、家族をつくりたいという、人としては本当にごく普通の希望があっても、かなわなかったりします。トランスジェンダーの方は、更衣室やトイレの利用に困ったり、制服に抵抗を感じたり、またスポーツ時に苦痛を感じながら生活をしています。また、子供や若者が自分の性に悩んだときに、安心して相談できる場や人がいないことが、自殺へつながったりもしています。
 都は、オリンピック憲章を正面から受けとめて、LGBTを初めとする性的マイノリティーの方々の困り事に対応できるよう、総合的な窓口を設けるなどの体制をつくっていくべきだと考えますが、見解をお願いします。
 また、今後、協議会を設置して、LGBTのみならず、性分化疾患やXジェンダーなど、あらゆる性的マイノリティーの当事者の意見を広く聞いていくことを要望させていただきます。当事者のいないところで、LGBTを初めとする性的マイノリティーの方々のことを決めないでいただきたいと思います。
 最後に、私の地元の渋谷区にあります、こどもの城跡地の活用について伺います。
 こどもの城は、開館以来、二十九年間に二千八百万人が訪れて、さまざまな先進的なプログラムを開発し、子供に関する研究、実践、発信地でしたが、二〇一五年に多くの方に惜しまれつつ閉館いたしました。
 都は、当初、都立広尾病院をここに移転するとしていましたが、その計画が中止となりました。地元住民からは、跡地がどのような場所になるのか、期待とともに高い関心が寄せられています。
 こどもの城跡地について、都知事の見解を伺います。
 人は本来、一人一人が違います。違いを認め合い、そしてそれを力に変えていける東京になることを願って、私の質問を終了といたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 龍円あいり議員の一般質問にお答えいたします。
 旧こどもの城の敷地についてのお尋ねでございます。
 この敷地は青山通りに面しておりまして、そして背後には旧青山病院跡地など、周囲の都有地との一体的な利用によって、都のさまざまな政策実現にも資する可能性を有した土地であると考えております。
 一方で、この土地は、現在国が管理している国有地でございます。敷地を購入する場合には、多額の投資を要するとともに、都民の皆様方のご理解も必要となってまいります。
 そのため、現在、旧こどもの城敷地、そして周囲の都有地も含めた活用の可能性、これについて事務方で検討いたしておりまして、今後、地元を含め、東京全体にとって利益となる形で結論を出していきたいと考えております。
 残余の質問は、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 都立公園におけます障害のある子供も安全に遊べる遊び場の整備についてでございますが、年齢、性別、障害の有無にかかわらず、誰もが楽しめるレクリエーションの場として都立公園を整備していくことは重要でございます。
 これまでも、対象とする子供の年齢を考慮いたしまして、法令を遵守した安全な遊具や、幅広い世代に人気のある健康器具を設置してまいりました。
 来年度は、新たな取り組みといたしまして、障害のある子供が障害のない子供とともに楽しく遊び、学ぶことのできる遊び場の整備に向けまして、専門家等の意見を聞きながら、対象公園や設置に適した場所を検討いたしまして、設計に着手する予定でございます。
 引き続き、誰もが安心して楽しむことのできる公園づくりに積極的に取り組んでまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、児童発達支援センターについてでありますが、都は現在、第四期障害福祉計画におきまして、地域における障害児支援の中核的施設として、通所支援や障害児とその家族への相談支援、障害児が通う他の事業所への専門的な支援等を総合的に行う児童発達支援センターの整備目標を掲げ、整備を促進しております。
 今年度、新たに障害児福祉計画を盛り込んで策定する東京都障害者・障害児施策推進計画では、センターを平成三十二年度末までに、各区市町村に少なくとも一カ所以上設置することを目標に掲げ、整備費の事業者負担を軽減する特別助成を実施いたします。
 また、サービスを担う人材の募集や研修への支援など、施設の立ち上げに必要な取り組みを行う区市町村を、来年度から新たに包括補助で支援してまいります。
 次に、保育所等訪問支援の利用促進についてでありますが、保育所等訪問支援は、障害児の受け入れを促進するため、支援員が保育所等を訪問し、児童が集団生活に適応できるよう専門的な支援を行うもので、来年度から、訪問先が乳児院や児童養護施設にも拡大をされます。
 本年二月現在、支援を実施している事業所は、二十一区市、三十一カ所にとどまっておりまして、都は、現在策定をしている障害者・障害児施策推進計画において、平成三十二年度末までに全区市町村で保育所等訪問支援を利用できる体制を構築することを、新たに目標に掲げることとしております。
 来年度からは、目標達成に向けまして、開設準備経費の支援など、事業の立ち上げに必要な取り組みを行う区市町村を新たに包括補助で支援し、体制整備を促進してまいります。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 映像を活用したパラアスリートの魅力発信でありますが、映像には、障害者スポーツに関心がない人にもその魅力をわかりやすく伝える力があり、効果的に活用することで、多くの人にその魅力を発信できると考えております。
 都が二十七年度に制作したパラアスリートの魅力を伝える映像、Be The HEROは、漫画と組み合わせることで、障害者スポーツに関心のない方にも見ていただけるよう工夫をしております。動画再生数は二十五万回を超え、渋谷の大型ビジョンや電車内のビジョン等でも放映したところでございます。
 また、現在、パラアスリートの迫力に加えて、会場観戦の魅力を伝える新たな映像を制作しており、平昌パラリンピック期間中のジャパンハウス等で効果的に活用してまいります。
 今後も、パラリンピックの成功に向け、さまざまな取り組みを組み合わせて、普及啓発に取り組んでまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) LGBTの方々への対応についてですが、都は、LGBTの方々も含め、誰もが希望を持って生き生きと生活ができ、活躍できる都市、すなわちダイバーシティーの実現を目指しております。
 お話のように、LGBTの方々が直面する課題は多岐にわたり、都においても、庁内のさまざまな部署で対応が求められております。
 今後、各種の施策を進めるに当たっては、都全体が性について多様性があることへの理解を深め、LGBTの方々に配慮して事業を実施していくことが必要でございます。
 そのため、総合的な調整を行う担当組織を設け、庁内各局がLGBTに関する情報を共有し、連携して施策を推進する体制の整備を図ってまいります。

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