平成三十年東京都議会会議録第三号

○議長(尾崎大介君) 三十七番栗林のり子さん。
〔三十七番栗林のり子君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○三十七番(栗林のり子君) 少子高齢社会対策について質問します。
 国立社会保障・人口問題研究所が一月に発表した世帯数の将来推計によると、二〇四〇年には、単身世帯が全世帯の約四割に達し、中でも六十五歳以上の割合が四五%に達するとの予測が出ており、社会保障や地域社会のあり方が問われています。
 高齢者の単身世帯が今後一層ふえていく要因の一つとして未婚化が指摘されています。平成二十五年版厚生労働白書によると、結婚は人生の選択肢の一つであり、するかしないかについての自由度が高まる傾向にあるとの調査結果が出ています。
 とはいえ、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によると、いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は九割弱で推移しており、依然として高い水準にあります。若者の結婚願望は決して低いわけではないと報告されているのです。
 東京は、二〇二〇年に向けて、誰もが生き生きと活躍できる都市の基盤をつくることを目指しています。結婚を希望する人、結婚はしなくても、子供を産み育てていきたいと考えている人、結婚、婚姻はできなくても、パートナーとして家庭を待ちたいと思っている人など、都民一人一人が選択した自分らしい生き方を自信を持って歩んでいける、ライフコースの多様性を容認できる社会が求められています。
 初めに、結婚を希望する人への支援です。
 私も長年、議会でも取り上げ続けてきたテーマです。来年度予算にも、社会全体で結婚を応援する機運を醸成するため、都における結婚支援事業を展開することなどが盛り込まれ、大変期待されるところです。
 先日、二月二十日に開催された結婚機運醸成イベント、結婚について知事と語ろうに、私も会派の議員数名とともに出席しました。驚いたのは、高校生や大学生など、とても若い方たちが参加していたことです。質問コーナーでは、積極的に挙手をし、知事にも直接質問をするなど大盛況なイベントでした。学校や仕事帰りに気軽に参加し、情報収集や情報交換の場となり、自分の人生設計や目標設定にも役立つ大変有効な機会だったと思います。今後、こうした催しを定期的に開催するなど、結婚を希望する人への支援を積極的に展開すべきです。
 フォーラムに出席された知事の感想と今後の結婚支援の取り組みについて見解を求めます。
 次に、出産、子育てについてであります。
 安心して子育てできる環境をつくることが何よりも重要です。特に出産直後は、健康状態も回復しない中、夜中の授乳や夜泣き対応など、疲労は極限に達します。そうしたことから、我が党は一貫して出産直後の産後ケアが重要と訴え、産後ケア事業の拡充を強く求めてまいりました。既に実施されている区市の利用者からは、産後ケアのおかげで子育てに自信がつきましたなど、高く評価されています。
 しかし、この産後ケアはまだ一部の区市町村にとどまっており、実施されていない地域からは早期の事業展開を求める声が高まっています。都内全ての地域で産後ケア事業が実施できるよう支援すべきです。
 加えて、産後は、心身の状態が不安定になるなど、特に支援が求められる時期です。都は、ゆりかご・とうきょう事業により、妊娠期から切れ目のない支援体制の整備に取り組んでいるところでありますが、特に産後鬱の予防等の観点から、出産後間もない産婦に対する健康診査の機会が不可欠です。あわせて所見を求めます。
 子育ての時期に、親や親戚、親しい友人が近くにいない場合、若い母親は誰にも相談ができず、子育て不安に陥りやすくなります。そうした場合に有効なのがファミリー・サポート・センター事業であります。
 この事業は、子供の預かりの援助を希望する人と援助を提供する人が、それぞれ会員登録をして相互援助によって子育てを支援するものです。しかし、現状は、援助を提供する会員が少ないため、必要なときに預かり援助の利用ができないと聞きます。
 そこで、例えば、元気な高齢者の皆様にも、援助を提供する会員になっていただけるよう、事業の拡充に向けて都として支援を行うべきと考えます。見解を求めます。
 次に、多様化する家族の支援について質問します。
 初めに、里親制度、新生児委託推進事業についてです。
 虐待を受けた子供や何らかの事情により親が育てることができず、社会的養護が必要な子供は都内で約四千人といわれています。
 先日私は、里親をしているお宅に伺いました。三年前に、施設からこの家に来た当時三歳の女の子は、最初は感情が不安定で大暴れするような日もありました。しかし、里親はその子の感情を全て受けとめ、毎日温かく抱きしめるなど、愛情いっぱいに育ててきました。私がその子と再会するのは三年ぶりでしたが、明るく元気いっぱいの幼稚園児に成長しており、胸が熱くなりました。実親に育てられなかったとしても、里親の愛情に満ちた家庭で育っていくということは、その後の人生に大変に大きな意味を持ちます。
 平成二十八年の児童福祉法改正で、健やかに育つ環境を得ることは子供の主体的な権利であることが明確になりました。そして、家庭養護優先の理念が規定され、実親による養育が困難であれば、特別養子縁組や里親による養育を推進するということが重要と位置づけられました。我が党が、以前より求めてきた施設養護から家庭養護への大きな転換が図られました。
 特に、乳幼児期は原則的に里親委託を進めていくべきです。都は今年度から、新生児委託推進事業を開始しました。早期に養親子の愛着形成を行うために、新生児から特別養子縁組につなげる意義は大変大きいものがあります。
 今年度の取り組み状況と来年度の取り組みについて所見を求めます。
 こうした事業を進めるためには、担い手となる里親に対する支援が重要です。現在、国は、里親の採用から育成に至るまでの支援、さらに里親委託後の支援などに一貫して取り組む包括的支援体制、いわゆるフォスタリング機関を設けて、質の高い里親養育体制を構築することが検討されています。
 そこで、委託児童を愛情豊かに育てていくためには、都としても里親を支援する体制を強化する必要があると考えます。所見を求めます。
 次に、パートナーとして支え合う家族への支援についてであります。
 私は毎年、世田谷区で行われるLGBT成人式に応援団の一人として参加しています。この成人式は、自分らしい人生の一歩を踏み出す節目の日に位置づけられて、参加者については年齢、セクシャリティーなどは一切不問です。この催しでは、婚姻関係を結ぶことは困難な状況でも、互いに助け合って生きていくという何組ものカップルに出会いました。
 こうした人たちがさまざまな形で家庭を持とうとした場合、特に住宅を探すことが困難と聞きます。新たな住宅セーフティーネット制度などを活用し、こうした多様な家族が入居しやすい環境整備が必要です。都の所見を求めます。
 本格的な少子高齢社会を目前にして重要なことは、自助、共助、公助のバランスのとれた、地域社会を構築することです。そのために公明党は、かねてより地域創造型福祉の構築を提案してきました。年齢や障害の有無に関係なく、それぞれが役割を担い、誰もが分け隔てなく支え合い、助け合い、そこにNPOや民間団体などのコーディネーターの力も導入して、地域の力で福祉をつくり上げていく、それが地域創造型福祉であり、地域共生社会の実現につながると考えます。
 こうした社会を目指す上で大事なことが世代間交流です。国際世代間交流協会の報告でも、子供と触れ合うことにより、高齢者のポジティブ感情が豊かになり、心身の健康をもたらす効果があるといわれています。高齢者が子供を見守ることで自分の役割を見つけ、認知症が改善したり、障害者がスタッフの手伝いをすることで自立につながるなど、大きな効果があるともいわれています。
 こうした効果を生かすために、年齢や障害の有無等にかかわらず交流ができ、日中の居場所にもなる、地域における多世代交流が可能な拠点を整備するべきと考えますが、所見を求めます。
 私は、昨年の予算特別委員会で、女性の性犯罪被害者支援に対する取り組みについて質問をさせていただきました。
 昨年、国は、公明党の質問に答えて、若年被害女性等支援事業をモデル事業として実施することを明らかにしました。最近SNSの普及により、小学生も危険な人物との接触の可能性が高まり、誰にも気づかれないまま犯罪に巻き込まれるケースが増加傾向にあります。
 ある民間団体が被害女性に聞き取り調査したところ、危険な接触に至った理由として、現実が寂しい、話を聞いてくれる人がいない、何かあったときに行ける場所がないなど、生きづらさを感じている実態がわかりました。
 親からの虐待や貧困、いじめ等、さまざまな理由により居場所がなく、繁華街をさまよったあげく、AV出演強要やJKビジネス被害などに遭うことも少なくありません。こうした女性は、本人からはなかなか声も上げられないため、公的支援の手も届きにくい状況です。
 若い女性の大事な将来を守るために、民間団体などとの専門機関と連携し、若年女性に寄り添い、適切な支援につながる仕組みが必要と考えますが、都の所見を求めます。
 最後に、都営住宅の建てかえについて伺います。
 私の地元世田谷区では下馬、八幡山、二団地が建てかえ工事中です。地域住民からは建てかえ後に生まれる創出された用地に、福祉施設や地域交流広場などの設置に期待が高まってきています。創出用地の活用について都の所見を求め、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 栗林のり子議員の一般質問にお答えいたします。
 結婚支援についてのご質問がございました。お話しいただきましたように、先日、結婚をテーマに開催をいたしました、知事と語る東京フォーラムは、おかげさまで約四百人の参加を得まして、会場の若い方とも直接語り合うことができるなど、大変有意義なイベントであったと感じております。
 もとより、結婚は個人が自分の人生観に基づいて決めるものでございます。しかし、全国の未婚者を対象にした国の調査で、男女とも九割近い方が、いずれ結婚するつもりと答えていることを踏まえれば、望んでいても一歩を踏み出せない方を後押しすることも重要と考えております。
 このため、来年度は、都や区市町村、非営利団体などが都内で開催する結婚関連イベントの情報であるとか、ライフプランの描き方など、さまざまな情報を総合的に発信するポータルサイトを新たに開設するなど、各種の事業を展開する予定でございます。
 また、ご提案のような、結婚に関心を持つ方にライフプランなどについて考える機会を提供するセミナーやシンポジウムについても開催に向けて検討してまいる所存でございます。
 今後とも、個人の価値観、そして人生観に十分配慮しながらも、結婚を希望する方の支援にしっかり積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 二点の質問にお答えをいたします。
 まず、LGBTの方々などへの入居支援についてでございます。
 誰もが希望を持って生き生きと生活できる都市東京を実現するには、都民の多様なニーズに応える住宅を確保することが重要でございます。
 都は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給促進計画案を作成し、本年二月に公表をいたしました。この計画案では、高齢者や子育て世帯などとともに、東京の実情を踏まえ、LGBTの方々なども住宅確保要配慮者に含め、貸し主の選択の幅を広げることといたしました。
 今後、住宅セーフティーネット制度を活用し、LGBTの方々などを含め、住宅確保に配慮を要する都民が入居しやすい環境を整えてまいります。
 次に、創出用地の活用についてでございます。
 都営住宅の建てかえによる創出用地は都民共有の貴重な財産であり、まちづくりに効果的に活用し、都の政策目的の実現や地域の課題解決を図ることが重要でございます。この用地を活用して、これまでも福祉施設や道路、広場の整備など、地元区市の要望も踏まえ、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 お話の世田谷区内の団地では、例えば桜上水五丁目アパートにおいて、創出した用地を活用して保育園や障害者施設、地域の方々が利用できる広場などを整備いたしました。
 今後とも、都営住宅の建てかえにおいて、地元区市と連携し、地域の特性や個々の土地の状況などを勘案しながら、創出用地の活用を図ってまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 七点のご質問にお答えをいたします。
 まず、産後ケア事業についてでありますが、産後ケアは、子供の健やかな育ちと母親の心身の健康を支える上で重要な取り組みでございます。
 現在、都内十六の区市で産後ケア事業を実施しており、都は、妊娠期から切れ目なく全ての子育て家庭を支援するゆりかご・とうきょう事業により、区市町村が専門職による妊婦への面接等とあわせて産後ケア事業を行う十二の区市を独自に支援しております。
 来年度は、より多くの区市町村が産後ケア事業に取り組めるよう、産後ケアのみを実施する場合も、運営費や実施場所の改修費を新たに支援してまいります。
 次に、産婦健康診査についてでありますが、都は来年度、産後鬱の予防や新生児への虐待予防等を図る観点から、出産後間もない時期の産婦に対する健康診査を実施する区市町村の支援を開始いたします。
 この取り組みは、産後二週間、一カ月などの節目に、母体の身体的機能の回復や授乳状況、精神状態の把握等を行い、その結果を健診実施機関から区市町村にフィードバックし、必要に応じて保健師による訪問等の支援につなげていくものでございまして、今後、多くの区市町村で取り組みが進むよう、さまざまな機会を通じて周知を図ってまいります。
 次に、ファミリー・サポート・センター事業についてでありますが、この事業は、子供の一時的な預かりや保育所等への送迎など、子育ての援助を受けたい人と、その援助を行いたい人がそれぞれ依頼会員、提供会員になり、地域で子育てを支える取り組みであり、都は、その立ち上げや運営を支援しております。
 現在、五十一の区市町で実施をしておりますが、依頼会員の数に対し提供会員が不足していることや、提供会員に対する研修が十分でないことが課題となっております。
 そのため、来年度は、国のカリキュラムに都独自の内容を加えた研修を受講した提供会員を、とうきょうチルミルとして報酬の上乗せを行う取り組みを開始し、提供会員の質と量を確保し、事業の充実に取り組む自治体を支援してまいります。
 次に、新生児委託推進事業の取り組み状況についてでありますが、都は今年度から、児童相談所と乳児院に専任職員を配置し、養子縁組が最善と判断した場合には、できる限り新生児のうちに委託するモデル事業を開始いたしました。
 乳児院では、委託を希望する里親に面接や家庭訪問を経た上で、沐浴や体調管理など新生児の養育に関する二日間の実践的な研修を行っており、これまでに八家庭が受講をしております。
 また、新生児と里親の交流期間中は、委託につなげられるよう養育に関する助言や里親子関係のアセスメントを集中的に行うとともに、委託後も安定した養育が行われるよう家庭訪問等により継続的に支援しておりまして、マッチングを開始いたしました昨年十月以降、先月までに三名の乳児が里親のもとで暮らし始めております。
 来年度も引き続き、里親子に寄り添った丁寧な取り組みを進めてまいります。
 次に、養育家庭等への支援についてでありますが、都はこれまで、養育家庭等への委託を推進するため、児童相談所の体制強化や民間団体を活用した里親への相談支援など、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 本年一月からは、児童相談所が中心となり、民間団体や児童養護施設などの関係機関と定期的に里親子に関する情報交換を行い、各機関が連携しながら、それぞれの役割に応じた専門的な支援を行うチーム養育の体制を整え、養育家庭等が地域で孤立しないよう支援をしております。
 来年度は、未委託家庭への家庭訪問や、養育力向上のための多様な研修を開始するほか、里親子が身近な地域で専門的な相談ができるよう、都内にある全ての児童養護施設に里親支援専門相談員を配置するなど養育家庭等への支援の充実を図ってまいります。
 次に、多世代の交流拠点についてでありますが、都は現在、子供への学習支援や食事の提供等を行う居場所や、高齢者の閉じこもりを防ぎ、見守り等の拠点となる地域サロンなど、地域における交流拠点の整備に取り組む区市町村を支援しております。
 来年度は、新たに、高齢者、障害者、母子、子供など、誰もが気軽に立ち寄ることができる多世代型の交流拠点である地域サポートステーションを整備する区市町村を包括補助で支援をいたします。
 今年度策定する東京都地域福祉支援計画におきましても、分野や世代を超えた地域の支え合いが進むよう、誰もが気軽に立ち寄ることができる居場所づくりを施策の一つに位置づけ、地域の特性に応じた多世代交流拠点の整備を支援してまいります。
 最後に、若年女性への支援についてでありますが、現在、都の児童相談所や女性相談センターは、区市町村と連携しながら、困難を抱えた女性の相談に応じるほか、必要な場合には一時保護を行っております。
 また、子供シェルターを運営する民間団体とも連携し、緊急避難を要する若年女性を受け入れております。
 来年度は、モデル事業として、支援のノウハウを持つ民間団体等と連携し、SNSによる相談や性犯罪被害防止のための夜間の見守り、声かけなどのアウトリーチ、一時的な居場所の提供などの取り組みを行います。
 また、警察や福祉事務所など関係機関との連携会議を設置し、若年女性の身体的、心理的な状況に応じて、適切な関係機関につなぐ仕組みづくりを進めてまいります。

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