平成二十九年東京都議会会議録第二十号

○議長(尾崎大介君) 四番鈴木邦和君。
〔四番鈴木邦和君登壇〕

○四番(鈴木邦和君) 都民ファーストの会東京都議団の鈴木邦和です。
 本日は、情報公開の理念と技術に基づいた都民参加型の新しい行政、そして公共サービスについて質問いたします。
 初めに、インターネット投票について伺います。
 電子政府の最先端を走るエストニアでは、既に国政選挙におけるインターネット投票が実現しております。ネット投票における主要な課題の一つはセキュリティーです。しかし、電子決済が広く普及し、ブロックチェーン技術なども発展する中で、その課題は克服されつつあります。
 また、投票における秘密の保護の問題についても、エストニアでは、期間中に何度も投票できる仕組みを導入することで解決しています。
 こうした中で、先月、我が国の河野外務大臣は、再来年の参院選を目指すくらいの気持ちで、在外投票におけるインターネット投票を導入したいという考えを示されました。
 また、総務省は、インターネット投票の導入を検討するため、年内にも有識者による研究会を立ち上げるとの報道も数日前に出ております。今、日本においても、インターネット投票への機運はにわかに高まりつつあります。
 そこで、国政の都内選挙区選挙の管理は、東京都の選挙管理委員会が行うわけですが、将来的にインターネット投票を国が導入した場合に、どのような点を歓迎し、また、どのような点に課題を感じるか、知事の見解を伺います。
 次に、都の広聴事業について質問いたします。
 議会や行政が直接把握できる都民の声には限りがあります。投票時以外に都民の声をどのように聞き、また、都政に反映させていくかというのも重要なテーマです。
 こうした広聴事業に関して、海外では新しい動きが広がっています。例えば、モスクワ市では、市長が市民にアプリを通じて毎週質問を実施し、質問に対する市民の回答を政策に直接反映させています。
 最近では、家事サービスの分野でどのような専門職が必要かといった政策ニーズを把握するための質問や、来月の市のイベントに呼びたいゲストは誰かなどといった市の広報に寄与する質問が行われていました。
 モスクワでは、現在、百九十八万人の市民がこのアプリを利用しており、市の人口のおよそ二〇%に達する利用者になっております。市民が投票以外の方法で政治に参加する新しい民主主義の形といえるかもしれません。
 そこで、モスクワ市では、さきの事例のように、インターネットを利用したアンケート調査によって広聴を実施しておりますが、都ではどのような広聴事業を実施しているのか、都民の声をどのように都政に反映しているのか、伺います。
 続いて、都民による事業提案制度について質問いたします。
 先ほどの広聴事業からさらに一歩進み、住民が政策の立案や決定にかかわることで、行政サービスの質をより向上させている都市もあります。
 この分野において、世界で最も先進的な取り組みを行っているのがパリ市です。パリ市は、市の年間予算の一%から五%を市民が直接決めています。市民が毎年提案する事業を公開した上で、インターネット投票によって、市が実施する事業を市民が直接決定するのです。
 この制度によって、パリ市では、市民に熱望されていたスケートリンクが完成しました。そのほかにも、市民による斬新なアイデアが政策のプロである行政によって次々に実行されてきました。
 東京都でも、今年度より、日本の都道府県では初めて、都民による事業提案制度を開始しました。これは大変画期的な取り組みであると私は考えております。
 今年度は、制度の準備期間が短かったことから、事業応募の際には入力フォームがなく、スマホからの応募が難しい状況でした。しかし、先ほどのパリ市で制度が普及した事例を踏まえると、今後はより都民が参加しやすいようなUIやデザインの工夫を重ねていく必要があります。
 そこで、今年度の具体的な取り組み状況と来年度の事業継続に向けて、本制度の周知の改善及び多くの都民に参加を促すための施策について、知事の見解を伺います。
 続いて、政策評価の可視化について質問いたします。
 オープンデータの活用を実施しているボストン市では、市役所の一つ一つの事業の進捗をグラフにして、ウエブサイトで公開しています。ボストン市役所の成績表ともいわれるこのサイトは、多くの市民が日々関心と信頼を寄せているものです。
 東京都でも、小池知事による総合計画として、昨年十二月に二〇二〇年に向けた実行プランが策定され、公表から一年が経過しました。このプランに掲げられている事業については、その進捗状況が都のホームページで確認できるようになっています。
 都の総合計画について、その進捗状況や成果を都民と共有していくという取り組みは高く評価しております。
 今後は、ボストン市のように、各事業の成果をグラフによってビジュアル化するなどの工夫をすることで、都民の都政への関心をつなげていくべきと考えています。
 そこで、二〇二〇年に向けた実行プランの内容や進捗状況を都民としっかりと共有し、効果的な政策展開につなげていくための取り組みについて伺います。
 次に、行政サービスから公共サービスに視点を広げ、満員電車解消の取り組みについて質問いたします。
 都内の満員電車は大きな社会問題であり、車内の混雑率は依然として高い水準にあります。
 現在の混雑率は、朝の時間帯に特定の区間において、定期的に人手によって計測されたものです。しかし、実際には計測の対象となっていない区間や深夜の時間帯などでも、満員電車が発生しているという利用者の声も多く聞こえています。深夜帯であれば、車両の増便などで対応可能であるため、満員電車の問題を扱う上で、まずは全時間帯、全路線における混雑率の正確な測定が重要です。
 山手線では、車両のサスペンションを用いて、そのときの重量によって混雑率を自動で計測し、データを収集する仕組みがあります。ほかの路線にもこの仕組みを導入することで、これまで調査してこなかった区間や時間帯のデータを収集、蓄積するなど、混雑状況をより詳細に把握するべきだと考えます。
 そこで、都営地下鉄における重量センサーなどを活用した車両の混雑状況の把握について、これまでの混雑緩和の取り組みとあわせて、都の見解を伺います。
 最後に、時差ビズについて質問いたします。
 ロンドンやシンガポールでは、交通需要の分散を目的とした時間差料金制を導入しています。この時間差料金制は、例えばピーク時には乗車賃を上げて、通常時には乗車賃を下げることで、需要の分散を行うというものです。
 現在、シンガポールでは、朝七時半まで都心部への電車移動が無料となっています。この時間差料金制の導入によって、実際にシンガポールでは、ピーク時の混雑率が減少しました。
 日本の鉄道事業ではなじみが薄いかもしれませんが、例えば航空事業やホテル事業では、日本でも需要に基づいて料金を柔軟に変更しており、合理的な料金制システムの一つだと考えられています。
 一方で、交通系ICカードが普及しており、複雑な鉄道網を持つ首都圏において、時間帯別に運賃を設定するには、全ての鉄道事業者で実施することが必要であるなど、実現するには多くの課題もあります。
 東京都も、満員電車対策として、今年度より時差ビズを開始していますが、時差ビズによってピーク時の混雑緩和を実現するためには、やはり鉄道事業者の取り組みも不可欠です。特に、海外事例を踏まえると、利用者へのインセンティブ付与が極めて重要であると考えます。
 そこで、時差ビズによって利用者の実感を伴う混雑緩和を実現するために、鉄道事業者が今後拡大していくべき需要分散の取り組みについて、都の見解を伺います。
 今世界は、国家ではなく都市が新しい民主主義をリードする時代を迎えています。東京は、これから海外の都市と、経済や文化だけでなく、政治においても、また競争していかなければなりません。そのさなかにあって、情報公開を掲げる小池知事がこの東京に誕生し、都政に多くの都民の関心が向けられたことは、揺るぎない前進です。
 情報公開のその先に、都民とともに新しい政治を進めていくことを改めて決意いたしまして、私の質疑を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 鈴木邦和議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、インターネット投票についてのご質問でございます。
 インターネットを利用した投票が可能となるならば、投票所の立地であるとかその日の天候、時間的制約などに左右されることはなく、投票する人の利便性の向上が期待できるとの意見がございます。
 一方で、本人確認の確実な実施や、セキュリティーの確保、投票の秘密の保持など、実現には多くの課題があることも指摘されているところでございます。
 我が国の選挙制度の中核をなす投票方法のあり方にかかわる事柄でございますので、法整備が不可欠となることはいうまでもございません。よって、国において十分に議論が尽くされる、まずはその必要があると考えます。
 今後、国の検討の動向も見守ってまいりたいと思います。
 二つ目に、都民によります事業提案制度についてのお尋ねがございました。
 私が推し進めてまいりました東京大改革の要諦は、まさに都政を透明化して、都民とともに進める都政を実現することでございます。そして、平成三十年度におきましても、改革の取り組みをさらに加速させるため、予算編成過程に一人一人の都民の皆様の声を直接反映させる取り組みとして、この制度を試行的に実施しているところでございます。
 具体的には、九月二十九日から十一月七日までの四十日間、都民目線の身近なアイデアなど、多くの都民から二百五十五件のご提案をいただきました。その後、各局が新たな発想の活用や実現の可能性などの視点から検討を行いまして、きょうの二時からインターネットなどによる投票を開始したところでございまして、この結果は、平成三十年度の予算案の中で発表することといたしております。
 今後の実施に当たりましては、より多くの都民にご参加いただくための、ご指摘がありましたように、UIやデザインの工夫、そして利用しやすい環境づくりが重要と認識をいたしておりまして、ご指摘の内容も踏まえながら、さらなる発展に努めていきたいと考えております。
 なお、その他のご質問につきましては、東京都技監、関係局長からの答弁とさせていただきます。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 鉄道の混雑緩和についてでございます。
 都は、鉄道事業者と連携し、新線の建設や既存路線の複々線化など、輸送力の増強を進めてまいりましたが、なお残る鉄道の混雑状況を改善し、より快適に通勤できるよう、時差ビズを展開してございます。
 この実施に当たっては、企業などに時差通勤やテレワークなどをお願いし、鉄道事業者には、オフピーク通勤者に対する特典の付与、混雑している時間帯や列車を知らせる混雑の見える化、早朝における臨時列車の運行などの取り組みを働きかけ、すいている時間帯へのシフトを促してございます。
 今後、企業等と連携してさまざまな工夫を取り入れながら、混雑緩和に向けた機運を醸成するとともに、鉄道事業者の取り組みのさらなる拡大を図ってまいります。
〔生活文化局長塩見清仁君登壇〕

○生活文化局長(塩見清仁君) 広聴事業と、そこで得られた都民の声についてでありますが、都民の声を行政運営や施策に活用することは重要であり、都では、統計的手法を用いた世論調査やインターネットによる都政モニターアンケート、計画立案の際に募集するパブリックコメントなど、さまざまな手法を用いまして都民の意向を把握しております。そして、これらの結果を参考にいたしまして、各局におきましては、施策や事業の実施に生かしているところでございます。
 また、日々、都民の声総合窓口及び各局で受け付けている意見や要望につきましては、昨年秋から、都政改革の取り組みの一環として、全ての局のホームページで対応事例を速やかに公表することといたしました。
 今後とも、都民の多様な声をさまざまな手法を用いて受けとめてまいります。
〔政策企画局長遠藤雅彦君登壇〕

○政策企画局長(遠藤雅彦君) 二〇二〇年に向けた実行プランに係る政策展開についてでございますが、実行プランでは、可能な限り数値化した政策目標を定めるとともに、各政策の年度別の進行を明瞭化した四年間の工程表を作成しております。
 これに基づき、本年九月には、各政策に係る取り組みの進捗状況や課題を取りまとめて公表し、また都民からの意見募集も実施をいたしました。現在、これらも踏まえ、政策の強化に向けた検討を進めております。
 今後とも、ホームページの内容について不断の改善を行うなど、都民にしっかりと伝わる工夫を凝らすとともに、さらなる政策の強化につながる手だてを講じ、プランの目指す新しい東京が実現できるよう努めてまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 都営地下鉄における混雑状況の把握についてでございますが、交通局では、定期的に実施しております乗客量調査等によりまして混雑状況を把握し、必要に応じてダイヤ改正や車両の増備を行うなど、輸送力の増強を図ってございます。
 また、本年夏に実施いたしました時差ビズキャンペーンに合わせ、各路線の最混雑区間における混雑状況を見える化し、ポスターやホームページで公表いたしまして、時差出勤等への協力を呼びかけております。
 お話にございました、重量センサー等を活用し、混雑状況のデータを収集、蓄積するためには、車両の大規模な改修等を伴いますことから、現時点での導入は困難でございますが、車両の更新等に合わせた導入につきまして検討してまいります。
 今後とも、輸送需要の動向等を見きわめつつ、ハード、ソフト両面から混雑対策に取り組んでまいります。

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