平成二十九年東京都議会会議録第二十号

○議長(尾崎大介君) 九十七番岡本こうき君。
〔九十七番岡本こうき君登壇〕

○九十七番(岡本こうき君) 都民ファーストの会岡本こうきです。
 私はこれまで司法修習及び弁護士を通算して十二年間以上法律実務に携わり、企業法務、民事、家事、刑事とさまざまな案件にかかわってまいりましたが、その傍ら、この間、一貫して取り組んできた問題があります。たばこ問題、受動喫煙問題です。
 たばこを吸わない人が、他人のたばこの煙で健康被害や苦痛を受け、立場上、それを我慢し続けている社会というのは余りに理不尽です。
 私は弁護士として、日本で初めてインターネット及びメールで受動喫煙の法律相談を立ち上げました。そうしたところ、日本全国から、絶えず受動喫煙の法律相談が来ました。
 職場、近隣住宅、夫婦の離婚、家庭内の子供の受動喫煙など、数多くの苦しみの声を第一線で聞いてまいりました。また、受動喫煙をめぐる裁判を行い、判例や先例をつくってまいりました。
 我が国の受動喫煙の法規制は、WHOから世界最低レベルとされています。五十五カ国以上が飲食店やバーを含めて屋内全面禁煙義務の法律を制定しており、我が国は百二十五カ国よりも劣後していると分類されています。今もこの国、この東京の飲食店や居酒屋の多くは、たばこの煙が漂い、また、いまだに分煙すらされていないオフィス職場も存在します。
 なぜ日本は、受動喫煙防止の法制がこれほど大きくおくれてしまったのでしょうか。
 その答えは、我が国の、政官財の利権構造にあります。我が国は、たばこを国策として売ってきた珍しい国です。多くの国々では、たばこの製造販売会社は、民間企業あるいは外国企業であり、たばこ政策は、厚生省や保健省が所管し、規制を強めています。
 しかし、我が国は、日露戦争の戦費調達から、たばこを専売制にし、さらに、大蔵省のもとに専売局、後に専売公社を設置し、まさに国策として、たばこの製造販売をしてきました。今も財務省が、日本たばこ産業株式会社、JTの株式を三分の一超保有し、最大の株主です。
 こうした歴史的経緯から、我が国では、政治、官僚、産業による非常に強固な利権構造ができ上がり、まさにしがらみ政治を形成しています。
 これまで、厚生省、厚生労働省のたばこ対策、受動喫煙対策が何度も大蔵省、財務省、そして、たばこ族議員によって潰されてきた経緯があります。
 いよいよ二〇二〇年東京オリンピックが迫る中、またしても起きました。
 ことし三月一日、厚労省が、健康増進法改正のたたき台を発表しましたが、同月七日、これに反発して、自民党たばこ議連が対案を発表し、調整がつかず、国会に法案を提出できませんでした。自民党たばこ議連の議員らの政治団体が、たばこ業界の政治連盟から継続的に政治献金を受けていることも具体的に明らかにされています。
 その後、厚生労働大臣が変わり、先月十六日ごろの報道によれば、厚労省側が大幅に後退して、店舗面積百五十平方メートル以下の飲食店での喫煙を認める新たな案を自民党と調整しているとのことです。
 小池都知事の、一桁間違いではないか、本当にやる気があるのかとのコメントも報道されているところであり、まさに同感です。
 そこでお伺いします。
 百五十平米と三十平米とでは、法令の適用対象となる飲食店の原則と例外が逆転するのではないかと思うのですが、東京都が行った飲食店の実態調査における店舗面積百五十平方メートル以下、店舗面積三十平方メートル以下の飲食店のおのおのの割合について、一般飲食店とバー、スナックなどの遊興飲食店の別に伺います。
 なお、法律家の観点からいえば、そもそも面積で法の適用の有無を分けることは不公平であり、合理性に疑問もあります。もっと本質的に、人に焦点を当て、働いている人を受動喫煙から守るという観点で条例案を検討していただきたいと考えます。規制の例外については、面積よりむしろ労働者を使用していない一人経営者の店、あるいは労働者の意向を適切に反映できるような許認可性を検討していただきたいと思います。
 次に、喫煙専用室に関して発言いたします。
 我が国も批准している、たばこ規制枠組み条約、FCTC、その第八条のガイドラインは、換気、喫煙区域の使用は不完全で、屋内の職場と屋内の公共の場所について屋内全面禁煙を要請しています。建物内に喫煙室を設置することをWHOは推奨しないと明言しています。
 平成二十二年二月及び平成二十四年十月の厚労省健康局長通知においても、多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべきとされています。
 建物内の喫煙所は、あくまで例外的な措置であって、公的に推奨して公費を投じるべき性質のものではなく、あくまで店舗等が自費で設置することを許容するにとどめるべきです。
 そこで、産業労働局にお伺いします。
 都の分煙環境整備補助金は、方向性としてこれらに反するものであり、今後は廃止すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 今後は、建物内の分煙に大きな予算を使うよりも、屋内喫煙所を廃止する費用や屋外、屋外の喫煙所の整備などに予算を投じることを検討していただきたいと考えます。
 また、抜本的な解決策として、本心は禁煙したいと望む喫煙者の助けとなるよう、禁煙治療の普及啓発に予算を回すことも検討していただきたいと考えます。
 次に、加熱式たばこについて伺います。
 加熱式たばこの健康リスクは、いまだ研究の途上ですが、ニコチンやホルムアルデヒドなどが排出されており、周囲の人々に悪影響を及ぼすおそれがあるとの見解も示されています。三月一日の厚労省の発表によれば、法案の規制対象には含めた上で、今後の研究などを踏まえて、後に政令で規制対象から除外可能とする方式を考えているようです。
 そこで、加熱式たばこに対する都の見解を伺います。
 以上のほか、条例制定に向けた知事の決意及び東京都子どもを受動喫煙から守る条例の普及啓発方法などについては、既に代表質問で取り上げましたので割愛いたします。
 繰り返しになりますが、日本の受動喫煙対策のおくれは、まさにしがらみ政治、政官財癒着の利権政治の典型であること、そして、政治家の問題であることを付言しておきます。
 次に参ります。
 一昨日の我々都民ファーストの会代表質問において、知事から、オリンピック憲章の精神を実現するため、条例化に向けた検討をするよう指示した旨の答弁をいただきました。
 これを踏まえて、LGBTとヘイトスピーチの差別解消について質問させていただきます。
 LGBTの方々が直面する困難としては、学校生活、親との関係、就職活動や就労先、特有の医療ニーズ、パートナーの入院先医療機関との関係、本人やパートナーが行政サービスや民間サービスを受けられない、住居の賃借、公営住宅の申し込み、トイレ、介護施設、避難所、里親の認定基準、地域コミュニティ、身分証明書、葬儀やお墓、生命保険、刑事事件の手続など、LGBTの方々が直面する困難は非常に広範、多岐にわたります。
 何が国政の問題で、何が都政において解決できる問題かをしっかりと整理、分類して検討し、できるところから着実に解決していただきたいと考えます。
 また、縦割り行政による個別断片的な対応ではなく、包括的、総合的に取りまとめ、検討を行う部署の設置も検討していただきたいと思います。
 平成二十七年、渋谷区が条例で、世田谷区が要綱で、同性パートナーの証書の発行を行う制度を開始しました。伊賀市、宝塚市、那覇市、札幌市でも同様の制度を採用しています。
 また、文京区男女平等参画推進条例や多摩市女と男の平等参画を推進する条例など、地方自治体レベルで性的指向や性自認を理由とする差別的な取り扱いの禁止を明記する条例も存在します。
 そこで、まず都の現状として、LGBTについて、都は現在どういった啓発活動や取り組みを行っているのかお伺いします。
 次に、ヘイトスピーチについて、我が国は、一九九五年に人種差別撤廃条約に加盟し、二〇一六年六月、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律、いわゆるヘイトスピーチ解消法が公布、施行されました。
 この法律は、禁止条項や罰則規定はなく、理念法とされ、具体的な抑止策については、地方公共団体に委ねられています。この点、東京弁護士会は、地方公共団体に対して人種差別を目的とする公共施設の利用許可申請に対する適切な措置を講ずることを求める意見書を公表しています。
 また、大阪市は、法律に先行して、大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例を制定しました。大阪市は罰則を設けず、事後的な救済を内容とし、ヘイトのデモ活動や街宣活動の動画を削除要請する措置を行っています。また、被害者の訴訟費用の支援も検討されていました。
 そこでまず、都の現状として、ヘイトスピーチについて、都は現在どういった啓発活動や取り組みを行っているのかお伺いします。
 今後、LGBT及びヘイトスピーチに関し、先ほど述べた条例制定を含む他の市区の動向、また世界各国の立法の動向なども踏まえて、検討を進めていただきたいと考えます。改めて、都知事に差別解消に向けた検討の方針及び知事の思いをお伺いします。
 最後に、これらの問題は、オリンピック・パラリンピックのホストシティーとして取り組むべき課題であるだけでなく、現に、他人のたばこの煙で苦しんでいる人々、周りの偏見、無理解、いじめによって悩み苦しんでいるLGBTの人々、ヘイトデモによって生活の場を破壊され苦しんでいる人々、そうした現に苦しんでいる人々が存在する人権問題なのだということを強調した上で、その解決に向けた今後の都政に期待をして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 岡本こうき議員の一般質問にお答えいたします。
 私からは、あらゆる差別の解消に向けた検討の方針についてお答えをさせていただきます。
 多様性が尊重されて、温かく優しさにあふれる東京、これが私の目指すダイバーシティーでございます。これは、いかなる種類の差別も許されないということが明記されているオリンピック憲章の精神に通ずるものでございます。
 二〇二〇年東京大会を成功させるためには、人権を尊重するという考え方を、大人だけではなくて未来を担う子供たち、また企業や教育機関などにもしっかりと浸透させていくことが大切だと考えております。
 そこで、二〇二〇年東京大会の開催に向けまして、オリンピック憲章の理念を東京のまちの隅々に行き渡らせ、都民の皆様と意識を共有するために、条例化に向けた検討をすることといたしました。
 今後、必要な取り組みを加速してまいり、都民の皆様とともに多様性が尊重され、温かく優しさにあふれるダイバーシティー東京を目指してまいりたいと考えております。
 その他のご質問につきましては、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、飲食店における受動喫煙防止対策の実態調査についてでありますが、都が本年七月から八月にかけて、都内二万店の飲食店を対象に実施した調査では、店舗面積について、一般飲食店から三千六百三十四店、遊興飲食店から二千八百二十四店、合計六千四百五十八店から回答をいただきました。
 そのうち、百五十平方メートル以下の割合は、一般飲食店は九二・三%、遊興飲食店が九五・三%でございました。
 また、三十平方メートル以下の割合は、一般飲食店は三一・三%、遊興飲食店は四六・二%であり、そのうち、従業員がいない店舗に限ると、一般飲食店は七・七%、遊興飲食店は一五・三%となっております。
 次に、受動喫煙防止対策における加熱式たばこの取り扱いについてでありますが、国が平成二十八年八月に発表したたばこ白書では、電気加熱式たばこと疾病との関連については、今後の研究が待たれるとしており、本年三月に厚生労働省が公表した受動喫煙防止対策の強化に関する基本的な考え方の案でも、現時点では受動喫煙による健康影響についての知見が十分でないとしております。
 一方、日本呼吸器学会は、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある、また、日本禁煙学会では、周囲の人々に危害を及ぼすとの見解を出しております。
 現在、国立保健医療科学院において、非燃焼加熱式たばこに関する研究が進められており、都としては、国の動向や都の基本的な考え方に寄せられた意見も踏まえながら、取り扱いを検討してまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 分煙環境整備の補助制度についてでございますが、都は、東京を訪れる外国人旅行者が増加する中、快適な受け入れ環境を整備するために、旅の拠点である宿泊施設や、多くの旅行者が利用する飲食店において、多言語対応に取り組むことなどを条件に、平成二十七年度から分煙環境の整備に対する補助を行っているところでございます。
 今後は、本制度のあり方について、国の屋内禁煙に向けた検討状況、都において、制定に向けた検討を進めている条例の内容などを踏まえ、適切な対応を図ってまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、LGBTについてですが、性についての多様性があることへの理解を深め、LGBTへの偏見や差別をなくすことが重要であると認識しております。
 都はこれまでも、啓発冊子の発行や人権啓発イベントの開催など、さまざまな都民の理解を促進するための啓発活動に取り組んでまいりました。
 具体的には、リーフレット、性的マイノリティの人権を発行したほか、ヒューマンライツ・フェスタ二〇一七では、LGBTを題材にした映画の上映やLGBTに関するパネルを展示いたしました。
 今後とも、オリンピック憲章の人権尊重の理念を東京で実現するため、工夫を凝らした取り組みをより一層推進してまいります。
 次に、ヘイトスピーチについてですが、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動、いわゆるヘイトスピーチに対しては、都はこれまでも国に対して実効性のある対策を求めるとともに、外国人の人権をテーマにさまざまな都民への啓発を行ってまいりました。
 加えて、ヘイトスピーチ解消法の施行を踏まえ、都民への啓発をより強化するため、本年六月には「広報東京都」、都営地下鉄でのポスター掲出、渋谷や新宿における大画面での動画放映など、啓発を集中的に実施いたしました。
 また、本年八月と九月に、プロ野球やJリーグ、計四チームと連携し、球場や競技場でリーフレット等を配布し、主に若者に向けた啓発に努めました。
 今後とも、十分国とも連携しながら、啓発活動などの取り組みを推進してまいります。

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