平成二十九年東京都議会会議録第二十号

○副議長(長橋桂一君) 十二番伊藤しょうこう君。
〔十二番伊藤しょうこう君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○十二番(伊藤しょうこう君) 都議会自民党の伊藤しょうこうです。初めての一般質問となりますが、我が会派の掲げる謙虚に愚直に全員野球をモットーに、都政発展に全力を尽くす所存です。
 初めに、多摩地域の振興と知事の基本姿勢についてお尋ねします。
 四百万都民が暮らす多摩地域は、緑豊かな自然や各地区の誇る伝統文化、特色ある産業などを有しています。その一方で、不十分なインフラや過疎化による人口減少など、区部とは異なる課題がありますが、いずれにせよ、多摩の振興は東京の将来の発展に不可欠です。
 さて、国政も地方政治も、民の声をどのように代弁するかが共通の大事な役割です。しかし、公務多忙の中、知事が都民一人一人の声を受けとめるのは、物理的に不可能であります。よって、多摩地域のみならず、都民の声を都政の政策に反映させるには、四十二の選挙区から都民に選ばれた都議で構成する議会の発言や、住民に身近な市区町村の声にも真摯に耳を傾けていただく姿勢が重要です。
 先日の所信表明によると、今後は都政に専念していただけるとのことですが、多摩地域の都民の声をどのように受けとめ、多摩の振興を図っていくのか、知事の基本姿勢を伺います。
 次に、多摩の振興プランの実行、推進体制についてお尋ねします。
 技術革新や規制緩和など、都政を取り巻く環境の変化に対応するため、オリ・パラとその先の未来への道筋を示す二〇二〇年に向けた実行プランと、二〇四〇年代の都市像実現を目指す都市づくりのグランドデザインを策定いたしました。
 そして、これらの計画を多摩地域に特化した視点で整理し、目指すべき地域像や施策の方向性を示したものが、九月に公表された多摩の振興プランです。
 どの施策も必要な内容と理解しますが、計画は実行してこそ意味があり、地域の実情を踏まえた具体的な取り組みが期待されます。
 過去には、多摩地域担当副知事を設けて課題に専念させるという知事候補もおりました。また、都庁には優秀な職員がたくさんおられますが、新宿の本庁舎にいたのではわからないこともあります。気候や風土、各地区の住民も多様である多摩地域の現場になるべく出向いて、実態を肌で感じていただきたいと存じます。
 そこで、多様な特性を抱える多摩地域の課題解決に向け、多摩の振興プランをどのように実行していくのか伺います。
 続いて、多摩地域の道路交通ネットワークの充実強化に向けて、都市計画道路の整備状況と今後の取り組みについてお尋ねします。
 多摩地域の振興のためには、骨格幹線の整備が不可欠です。都は、南北主要五路線並びに東西主要四路線を初め、都市計画道路を整備してきましたが、整備率は六割と道半ばの状況です。
 このため、昨年、第四次事業化計画を策定しましたが、多摩地域の都計道の整備状況と今後の取り組みについてお答えください。
 次に、北西部幹線道路について伺います。
 道路が持つ機能としては、円滑な交通処理や物流の確保、良好な都市空間の創出とともに、災害時の緊急輸送路としての役割も重要です。多摩地域に不足する幹線機能を確保し、東京西南部の流通業務拠点となる川口物流拠点へのアクセス道路となるのが、優先整備路線に位置づけられた八王子都市計画道路三・三・七四号線、通称北西部幹線道路です。
 昨年十二月には、圏央道八王子西インターチェンジがフル機能化され、本路線の早期整備効果は、八王子北西部の交通利便性とともに防災性も高まるなど、重要性は極めて大きいものとなっています。
 そこで、北西部幹線道路の事業化に向けた取り組み状況についてお答えください。
 あわせて、都道美山通りの復旧状況についてもお尋ねします。
 ことし十月の台風二十一号の大雨により、八王子市の戸沢峠で斜面崩壊が発生し、美山通りが現在も通行どめとなっています。この影響で周辺の大渋滞が発生し、都民生活にも大きな支障が出ました。
 この間、建設局や地元市も早期復旧に向けてご尽力をいただき、感謝を申し上げます。また、災害対応として、圏央道あきる野インターチェンジから八王子西インターチェンジが暫定無料と対応いただきましたが、師走を迎えて、早期復旧に向けて地元や沿道利用者の声は大きいものがあります。現場作業の安全確保が第一ですが、早期復旧に向けての今後の見通しをお尋ねします。
 続いて、多摩ニュータウンの再生についてお尋ねします。
 多摩ニュータウンは、人口約二十二万人を擁する四市にわたる複合拠点です。昭和四十五年から、東京都や都市再生機構など複数の事業主体によりさまざまな住宅が建設され、新住宅市街地開発事業などは平成十八年に完了しました。当初は東京のベッドタウンとして計画されましたが、その後、新住法が改正され、近年は職住近接型のまちに変貌しております。
 しかし、入居開始から四十五年が経過し、初期入居地区を中心に、高齢者の増加と少子化、施設の老朽化などの問題が顕在化しております。
 このような状況を踏まえ、都は全体の再生に向けた多摩ニュータウン地域再生ガイドラインの素案を先月末に公表し、年度末には正式に策定される予定です。
 素案によると、ガイドラインは、地元市などによるまちづくりを技術的に支援していくためのものであるとのことですが、具体的にはどのような支援を行うのか、お答えください。
 次に、広域行政として都が果たす役割についてお尋ねをいたします。
 そもそも多摩ニュータウン事業は、高度経済成長期の大量住宅供給を目的に、多摩丘陵が選ばれ開始されました。すなわち、受け入れた地元市や住民がみずから望んだわけではなく、先祖伝来の土地を手放し、職業も変え、大規模な変化を受け入れてきました。
 確かに、事業そのものは終息し、再生の取り組みも一部ではスタートしております。また、整備が終わった後は、地元市が主体的にまちづくりを進めていく基本ルールとなっておりますが、当初の事業主体であった東京都も、再生に向けて、当事者としての意識が欠かせないと考えます。
 そこで、都は技術的支援にとどまらず、ニュータウン再生に向けて積極的に関与すべきと考えますが、どのように対応するのか、見解をお聞かせください。
 続いて、医療、福祉政策に関して、発達障害児の支援についてお尋ねをいたします。
 自閉症、アスペルガー症候群、学習障害などの発達障害のある子供は、早期から発達段階に応じて一貫した支援を行うことが重要です。早期に適切な支援を受けられないと、就学後の学習面や生活面にさまざまな困難を抱え、情緒不安や不適応行動などの二次障害が生じることもあります。
 私の身の回りでも発達障害の相談がふえていることを実感いたしますが、障害の種類や程度は、年齢や性格によってもあらわれ方が違うため、生活で困難なことや苦手なことも人それぞれであるようです。同時に、保護者の方のご苦労も多いため、特性に応じた配慮や支援が重要です。
 よって、発達障害児のライフステージに応じて、本人やご家族に身近な地域できめ細かい支援を行うべきと考えますが、都の取り組みをお尋ねします。
 また、東京都は、発達障害に対する総合的支援を行う拠点として、発達障害者支援センター、TOSCAを平成十五年に世田谷区に設置しました。本人や家族からの障害や就労などに関するさまざまな専門相談に対応するとともに、福祉や教育、就労など、関係機関に対して情報提供や研修などを行っています。
 都は、支援センターが有するスキルやノウハウを生かし、多摩地区を初めとする市区町村を積極的に支援すべきと考えますが、見解をお尋ねいたします。
 以上で私の一般質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 伊藤しょうこう議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩振興についてのご質問がございました。
 多摩地域は、東京の面積の二分の一を占める、また、人口では三分の一に相当する四百万人もの規模を擁するなど、東京の持続的な発展に欠かすことのできない地域でございます。
 一口に多摩と申しましても、地域ごとに課題や特性はさまざまである、そしてまた、効果的な振興策を講じていくためには、こうした地域の実情を的確に把握することは重要である、そのことはいうまでもございません。
 このため、多摩の振興プランの策定に当たりましても、都議会の議論を踏まえるとともに、私みずからも、多摩地域の住民を代表する全ての市町村長と直接意見交換を行うなどいたしまして、地域の実態の把握に努めてまいったところでございます。
 その中でご要望の多かった課題は、子育て、高齢者施策、防災対策、道路交通ネットワークの充実などでございまして、これらの施策につきましては、本プランにも盛り込んだところでございます。
 今後とも、積極的に現地に足を運びまして、市町村を初め関係機関の皆様とも一層緊密に連携をしながら、人口動向や産業構造、行財政制度など、地域特性を踏まえました振興策を着実に推進をして、多摩地域の持続的な発展につなげてまいる所存でございます。
 その他のご質問につきましては、東京都技監、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、多摩ニュータウン再生への技術支援についてでございます。
 多摩ニュータウンでは、かつて先駆的に整備された生活基盤を時代に合わせてリニューアルすることや、未利用地を活用して活気あるまちへと再生することが求められてございます。また、道路交通ネットワークの整備に合わせて、将来を見据えたまちづくりを進めることが必要でございます。
 このため、都は、これまでのまちづくりで得た経験やノウハウをもとに、地元市や都市再生機構などとも検討を重ねて、ガイドラインの素案を取りまとめ、公表してございます。
 今後、地元市等において、このガイドラインを再生に向けた指針として共有するとともに、都は、地元市による個々のまちづくりの具体化や都市計画など計画の見直しに際して、その検討の場に参画するなど、技術的支援を行ってまいります。
 次に、多摩ニュータウン再生に向けた都の関与についてでございます。
 都はみずから、南多摩尾根幹線など骨格的なインフラの整備を進めるほか、都営住宅の建てかえに当たって、土地の高低差をバリアフリー化するなど、誰もが使いやすいものにリニューアルしてまいります。
 また、残る未利用地等を活用して多摩イノベーションゾーンの一翼を担う機能を誘致するとともに、民間住宅団地でも、建てかえなどに際して多世代が交流する活気あるまちとなるよう、都市計画の見直しなどを行ってまいります。加えて、これらの取り組みが全国のニュータウン再生のモデルとなるよう、広く情報発信をしてまいります。
 今後、地元市や民間事業者などさまざまな主体と一層連携し、多様な世代が豊かに暮らせる活力あるまちの実現に向けて、多摩ニュータウンの再生に取り組んでまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 多摩の振興プランの推進体制についてですが、多摩の振興プランの実現に向けては、計画を着実に実施するとともに、状況の変化にも柔軟に対応していくことが重要と考えております。
 このため、多摩・島しょ振興担当の副知事を本部長とする多摩島しょ振興推進本部を多摩振興の推進力として有効に活用し、庁内連携を一層推進するとともに、本プランに掲げる取り組みの進捗状況について、毎年度調査、把握し、的確な進行管理を行ってまいります。
 また、地域の実情に精通している市町村と緊密に連携することはもとより、職員が日々の業務を遂行する上で、現地にも積極的に出向き、実態把握を行うなど、本プランに基づく施策がより地域のニーズに即したものとなるように努めてまいります。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、多摩地域の都市計画道路についてでございますが、多摩地域のさらなる発展を図るためには、交通、物流機能の強化、災害時の迅速な救急救援活動を担う都市計画道路の整備が重要でございます。
 多摩南北主要五路線は、既に八王子村山線など三路線が開通しておりまして、現在、府中所沢鎌倉街道線の西武国分寺線交差部等で工事を進めますとともに、東西主要四路線では、東八道路でJR南武線との立体交差工事、新青梅街道等で用地取得を進めております。
 今後も第四次事業化計画に基づきまして、立川東大和線や新五日市街道等の骨格幹線道路や、地域の防災性や安全性の向上を図るための地域幹線道路の整備を推進してまいります。
 引き続き、多摩地域の発展に資する都市計画道路ネットワークの整備に着実に取り組んでまいります。
 次に、北西部幹線道路の取り組み状況についてでございますが、北西部幹線道路は、多摩地域の交通利便性や防災性、活力向上に寄与いたしますとともに、圏央道と国道一六号を連結することで、川口地区における物流拠点とのアクセスを強化する重要な骨格幹線道路でございます。
 このうち、谷野街道から西寺方町までの延長約六・五キロメートルを第四次事業化計画の優先整備路線に選定いたしました。本区間は、まちづくり等とあわせて検討する必要があることから、昨年四月から八王子市と定期的に検討会を行っております。
 また、急峻な地形に計画されておりまして、トンネルや橋梁が必要なほか、交差道路との接続などの課題があるため、今年度から道路構造等の検討に着手いたしました。
 引き続き、多摩地域の一層の発展のため、市と連携を図りながら、事業化に向けて積極的に取り組んでまいります。
 最後に、美山通りの復旧についてでございますが、あきる野市と八王子市を結ぶ都道六一号、通称美山通りは、本年十月の台風二十一号接近に伴う大雨により、民間事業者によって埋め立てられた箇所が大規模に崩壊し、約一・九キロメートルにわたり通行どめとなっております。
 現場では、崩落した約一万立方メートルもの土砂により沢の水がせきとめられ、道路上に水があふれたため、作業が難航しておりましたが、安全が確認された箇所から作業を開始し、鋭意土砂の撤去を進めております。土砂を撤去した後、道路の損傷状況を確認した上で、必要に応じて補修工事を実施しまして、年内には交通開放を行う予定でございます。
 引き続き、現場作業の安全に配慮しながら、道路の復旧に全力で取り組んでまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、身近な地域での発達障害児者への支援についてでありますが、都は、発達障害児の早期発見、早期支援のため、福祉職や臨床心理士等による専門相談や保育所等への巡回指導を行う拠点の設置、成人期支援として発達障害者の社会参加のための訓練や就労支援などに取り組む区市町村を包括補助により支援しております。
 また、相談支援に携わる区市町村職員等を対象に、支援に必要な知識や実践的な技術などについての専門研修を実施しております。
 今後とも、発達障害児者が身近な地域で安定した生活を送ることができるよう、乳幼児期から成人期まで、ライフステージに応じた支援体制の整備に取り組む区市町村を支援してまいります。
 次に、東京都発達障害者支援センターのノウハウを生かした区市町村への支援についてでありますが、都は、地域における発達障害児者への支援の取り組み状況等を把握し、支援体制の整備について指導助言を行うため、センターに地域支援マネジャーを配置をしております。
 地域支援マネジャーは、区市町村からの要請に応じて体制整備に向けた検討会に参画をし、専門的な助言を行いますとともに、支援機関等の対応能力の向上を図るため、困難事例を検討する研修などを開催しております。
 さらに今年度から、多摩地域において、地域の取り組み状況や課題等について情報交換を行い、行政や支援機関の連携強化を図るため、地域連携会議を開催しており、今後とも発達障害者支援センターを中心に、区市町村の取り組みを積極的に支援してまいります。

○議長(尾崎大介君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後四時五十二分休憩

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