平成二十九年東京都議会会議録第二十号

○議長(尾崎大介君) 十六番細田いさむ君。
〔十六番細田いさむ君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十六番(細田いさむ君) 初めに、豊洲市場、千客万来施設について質問をいたします。
 豊洲市場は、HACCPの視点に立った高度な品質衛生管理施設を整備するなど、世界基準を満たす市場として、大きな期待が寄せられています。
 その魅力をさらに高めるために、安全・安心対策を講じた上で早期に移転を実現していくことが極めて重要であります。そのために、風評被害の払拭や千客万来施設の整備を確実に実施しなければなりません。
 千客万来施設を早期に開業させることは、非常に重要な意味を持ちます。このことは、豊洲市場を受け入れる地元江東区と都が約束をしたことでもあります。
 また、同施設の開業は、豊洲市場と一体となって市場の魅力を発信することにつながるのと同時に、豊洲のまちに新たな活気やにぎわいを生み出し、地域の住民を初め、多くの都民や豊洲を訪れる人々を喜ばせるものになります。開業に向けて早期に進めていかなければなりませんが、現在も停滞をしたままであります。
 事態の打開に向けては、知事がみずから江東区や事業者に働きかけることも必要であります。江東区と約束をした事業が確実に進捗をするよう、千客万来施設のオープンに向けて都として最優先で取り組んでいくべきですが、知事の見解を求めます。
 次に、東京メトロ有楽町線、地下鉄八号線の延伸について質問をします。
 知事が取り組んできた快適通勤の実現は、時差ビズやテレワークの試行を初め、経済界等の各団体の協力も取りつけてムーブメントが創出されつつあります。
 都内の鉄道において、ピーク時の混雑率が一八〇%を超える個別路線には、実効性の高い混雑緩和が求められていますが、車内の混雑率が日本一の路線は、東京メトロ東西線であります。その区間は江東区の木場駅から門前仲町駅の間であり、平日の朝、七時五十分から一時間の平均は一九九%に上り、最混雑時には、電車が揺れるたびに体が斜めになり、身動きがとれないほどで、利用者は身の危険すら感じ、そのストレスははかり知れません。
 この日本一苛酷な混雑の緩和なくして、知事が掲げた満員電車ゼロの達成はありません。そのために取り組むべき計画の一番は、東京メトロ有楽町線、豊洲―住吉間の延伸計画であると私は考えております。
 有楽町線の豊洲駅から東西線の東陽町駅、そして半蔵門線と都営新宿線の住吉駅を南北につなぐ有楽町線が延伸されることにより、東西線のバイパス路線として機能し、日本一の混雑率が大幅に改善されるといわれています。
 また、地下鉄八号線の延伸は、豊洲市場の開場への条件として、平成二十三年に当時の副知事が江東区を訪問し、最大限の努力を傾注していく決意であると江東区と約束をした経緯もあります。
 都の広域交通ネットワーク計画、国の交通政策審議会の答申において大変に高い評価を得ていますが、いまだに事業化に向けた道筋は立っておりません。
 今後、市場の移転や東京二〇二〇大会など、臨海地域を取り巻く環境が劇的に変化していく中、交通路線の拡充は不可欠です。
 そこで、東京都が関係機関と具体的に調整を進めて、この事業を早期に実現させるべきであると訴えますが、知事に答弁を求めます。
 次に、防災対策について質問します。
 都民生活に関する世論調査での都政への要望は、防災対策が四九%でトップです。安全・安心の防災対策は着実に進めなければなりません。
 都政の事業継続計画、BCPは、都議会公明党の提案により、平成二十年十一月に策定されました。都は、策定以降現在までの間、東日本大震災を踏まえ、平成二十六年七月の東京都地域防災計画の修正や、平成二十八年三月、首都直下地震等対処要領改定などを実施してきました。
 さらに、平成二十八年の四月、熊本地震の際には、発災後の職員参集、安否状況の把握や業務執行体制の確保の重要性が改めて浮き彫りになりました。
 都政のBCPについては、これらの課題等を踏まえた内容へ見直しを行い、新たに改定をしていくべきと考えますが、都の見解を求めます。
 また、都は、平成二十二年一月には、区市町村事業継続計画・地震編の策定ガイドラインを示し、BCP策定を進めてきました。しかし、策定の支援から七年を経ますが、区市町村版BCPの策定は五分の一の自治体ができておりません。いまだ策定が進まない区市町村版BCPの策定の推進に向けた今後の取り組みについて、見解を求めます。
 次に、産後ケアについて質問します。
 都議会公明党は、一貫して妊娠、出産、子育ての切れ目のない支援の必要性を主張してまいりました。
 これを受けて都は、平成二十七年度より、ゆりかご・とうきょう事業を開始いたしました。事業実施三年目となり、区市町村での産後ケア拡充など、産後間もない時期の母子への支援がますます必要とされる中、本年十月の東京都児童福祉審議会専門部会において、多くの区市町村で産婦健診や産後ケアが実施できるよう支援への緊急提言もありました。
 産婦健康診査により支援が必要な母子を早期に発見し、産後ケア等の支援を強化していくことは極めて重要であります。
 私は、江東区議のときに、専門の産科医師、産婦人科病院などを調査して、産後の母子健診を確実に行うことができれば、母子の健康、育児の不安、そして虐待の早期発見、早期治療へと確実につながっていくと確信をいたしました。
 一昨年には、健診の必要性から、必須事業での一人一万円までの育児パッケージの中に産婦健診の受診券も選択肢に入れるべきと訴えました。
 そこで、産後うつ等の予防の観点から、産婦健康診査について東京都としても支援をすべきと考えますが、都の見解を求めます。
 都議会公明党が提案をし実現をした東京版ネウボラ事業により、都は産後ケア事業に取り組む区市町村を支援していますが、この事業は全ての妊婦を対象に、助産師、保健師などの専門職が面接をして必要に応じて支援プランを作成し、支援を実施することを規定しております。
 産後ケアの取り組みを、より一層推し進めるためには、産後ケアを先行して実施したいと考える区市町村に対する支援など、地域の実情を踏まえた支援策が必要ではないかと考えます。
 そこで、都は、都内で産後ケアの取り組みが広がるよう、区市町村の実情を踏まえて、支援を強化すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、多摩産材の利用について質問します。
 江東区の木場は、江戸から昭和にかけて、江戸東京へ材木を供給する材木のまちとして栄えてきました。現在も新木場が木材関連事業者の拠点となっています。
 わが国の森林は、杉やヒノキなどが成熟し、かつてなくふんだんに木材供給資源が整っています。健全な森林の育成、循環から、今は積極的に木材を利用しなければならないときであり、公共建築物等木材利用促進法のもと、収穫期を迎えた多摩産材が東京での地産地消の出番を迎えております。
 東京は、潜在的に大きな木材需要が期待できますが、木造化された公共建築物はいまだに少なく、国産材の利用も不十分であり、林業が安定的に経営を続けていける状況ではありません。
 江東区や港区では、都の利用推進方針に基づき、区として独自の木材利用推進方針を定めて、公共施設の建築や改修での木材の使用に取り組んでいます。
 木の表面をそのまま見せて用いると、木目や木の肌ざわりを感じる心地のいい空間ができます。また、子供の心の安定にもつながり、環境教育にもなります。
 区市町村が公共建築物整備で新築や改築をするときに多摩産材の利用を促進すべきと考えますが、都内で法に基づく木材利用推進方針を樹立している区市町村はまだまだ少ないと聞いています。
 そこで、そうした実態の改善を目指して、都は区市町村で多摩産材の利用拡大の推進に向け積極的に支援をすべきと考えますが、答弁を求めます。
 いよいよ来年の秋には、第四十二回全国育樹祭が東京都で開かれます。健全で活力のある森林を育てて、次代に引き継ぐ大切さを伝えていく全国育樹祭を成功させるために、都は全国育樹祭の開催機運の醸成に向けた取り組みを実施していくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、江東区での都市基盤整備、都営豊洲四丁目アパートの建てかえについて質問します。
 ここは、二ヘクタールを超える敷地があり、建築から半世紀を迎え、昨春より改築工事を行っていますが、東京二〇二〇大会のころに完了を予定している二期目の工事の後、北西側に約一ヘクタールの土地があくことになります。ここがどうなるのか、現在は明確ではありません。
 仮に都が民間に払い下げた場合、周辺と同様に分譲マンションができると、保育園の待機児童対策や小中学校の収容対策に大きく影響してきます。このエリアにおける新設マンションの児童出現率は戸数の四割に上り、二年前に新設の小学校は既に増築計画が策定されました。
 ここは豊洲地域に残される貴重な種地であり、公園が少ない臨海部において、防災公園、緑化などの地域貢献スペース、地域貢献施設の設置が可能な最後の空間です。
 そこで、民間に売却することは決してないように、公共に資する利活用を確実に実施すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 最後に、猿江恩賜公園南側の放射第三一号線、都道新大橋通りの拡幅整備について質問します。
 江東区議会公明党は、この十年間に何度も区議会の場で早急な整備を都に対して働きかけるよう要望してきました。
 その結果、昨年三月に第四次事業化計画の優先整備路線に位置づけられました。この通りは幅員が二十七メートルの計画道路ですが、現在の幅員は二十二メートルであり、残りの五メートルの拡幅が必要です。
 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のホームともいえる劇場で千二百名以上の収容が可能な江東公会堂から都営新宿線住吉駅までの道のりのほとんどは、貴重な広域避難場所でもある都立猿江恩賜公園の敷地と隣接をしています。
 このため、安全・安心に向けて、また文化芸術の振興に向けて、早期に拡幅整備をすべきと考えますが、都の見解を求めて質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 細田いさむ議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、千客万来施設についてのお尋ねでございます。
 千客万来施設事業は、豊洲市場と一体となって豊洲ならではの活気、にぎわいを生み出す事業、そして、都として最優先に取り組むべき課題、このように認識をいたしております。
 そのため、都といたしまして、千客万来施設の事業者に対しましては、双方で締結した基本協定にのっとって事業が進捗するよう、誠意を持って対応しているところでございます。
 こうした状況を、市場の受け入れ区である江東区に対しましても丁寧に説明をし、理解を得られるように取り組んでまいります。
 これらの取り組みを一つ一つ積み重ねた上で、私自身、足を運ぶということも考えてまいりたいと思います。
 今後、新たな豊洲ブランドの構築に向けましては、地元の区とも知恵を出し合いながら、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 続いて、地下鉄八号線の延伸についてのお尋ねがございました。
 東京の持続的な成長を実現するためには、東京の強みである鉄道ネットワークを生かして、これをさらに充実させていくこと、これが重要でございます。
 地下鉄八号線の豊洲─住吉間は、東西線の混雑緩和はもとより、臨海地域の今後の発展などにも寄与する重要な路線であると認識をいたしております。
 都も、提案と働きかけを行った結果、国の答申におきまして、国際競争力の強化に資するプロジェクトの一つに位置づけられたところでございます。
 そして、現在、地元江東区などと連携をいたしまして、事業の採算性、費用の負担のあり方、事業主体の選定などの課題につきまして検討を行っているところでございます。
 今後とも、関係者間で連携をし、これらの課題の解決にしっかりと取り組んでまいります。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 豊洲四丁目アパートの創出用地についてでございます。
 都営住宅の建てかえによる創出用地は、都民共有の財産であり、まちづくりに効果的に活用し、都の政策目的の実現や地域の課題解決を図ることが重要でございます。
 このような用地を活用し、都はこれまでも道路や公園などを整備するほか、定期借地権を設定して福祉施設の整備やにぎわい機能の導入を図るなど、地元区市の要望も踏まえ、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 今後とも、お話の豊洲四丁目アパートを初めとする都営住宅の建てかえにおいては、地元区市と連携し、社会経済情勢や都民ニーズの変化を的確に捉え、創出用地の有効な活用を図ってまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都政のBCPの改定についてですが、都政のBCPについては、東京都地域防災計画の修正や首都直下地震等対処要領の改定、熊本地震の際に得られた知見等を踏まえ、現在、改定作業を進めており、年内を目途に公表する予定でございます。
 改定に当たっては、非常時の優先業務を発災からの時間軸に沿って詳細に整理するとともに、本部体制を継続するための基盤整備として、職員参集安否確認システムの各局への導入推進などを盛り込んでまいります。
 また、長期間持続可能な業務執行体制を確保していくため、職員の交代勤務の考え方をより明確化いたしました。
 さらに、訓練等を通じてBCPを検証し改善するBCMの運用を強化していくことにより、首都直下地震等災害への備えをより一層確実なものとしてまいります。
 次に、区市町村のBCP策定推進に向けた取り組みについてですが、都は、平成二十二年一月、BCP策定ガイドラインを区市町村へ提供するなど、その策定を後押ししております。本ガイドラインの提供前の策定団体は、六十二区市町村のうち一団体のみでございましたが、平成二十九年六月一日現在、五十一団体まで増加しております。
 BCPを策定していない団体は、火山噴火、津波等、想定される災害の状況が多様であることなどの課題があることから、今後、これらの団体に対して個別に状況をヒアリングし、その要因を把握した上で当該団体の実情に応じて対応するなど、BCP未策定の団体を支援してまいります。
 なお、今後、都のBCP改定に合わせて、改定したガイドラインを区市町村へ提供してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず産婦健康診査についてでありますが、産後うつの予防や新生児への虐待予防を図るためには、妊娠期から支援が必要な家庭を発見し、支援につなげる仕組みが必要でございます。
 そのため、都は、全ての妊婦を対象に保健師等の専門職が面接を行い、各家庭の状況を把握した上で必要に応じて支援プランを作成し、継続的な支援を行う区市町村をゆりかご・とうきょう事業を通じて支援をしております。
 本年十月には、児童福祉審議会専門部会から、産婦健康診査など、産後間もない時期の母子に対する支援をさらに強化するよう緊急提言をいただいたところであり、今後、多くの区市町村が産婦健康診査を実施できるよう、都としての支援策を検討してまいります。
 次に、産後ケア事業についてでありますが、産後ケアは、子供の健やかな育ちと母親の心身の健康を支えるため、退院直後の母子に対し、保健指導、母親に対する療養上の世話や心理的ケア、カウンセリング、育児指導、育児サポート等を行う取り組みでございます。
 都は、先ほど申し上げたゆりかご・とうきょう事業で、育児パッケージの配布や専門職による妊婦等への面接等とあわせて産後ケア事業を行う場合に独自に支援をしておりまして、今年度は十二の区市から申請が出されております。また、国の事業を活用して、四区が産後ケア事業を実施しております。
 今後、より多くの区市町村が産後ケア事業に取り組めるよう、支援の充実について検討してまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、区市町村での多摩産材の利用拡大についてでございますが、多摩産材の認知度向上と需要拡大を図るためには、多くの都民が利用する公共建築物の整備において多摩産材の活用を推進することが重要でございまして、都はもとより、区市町村の主体的かつ積極的な取り組みが必要でございます。
 このため、都は、区市町村に対し、説明会を通じて、区域内の公共建築物への木材利用を促進する方針の策定を働きかけるとともに、多摩産材を円滑に調達できるよう、多摩産材情報センターを設置し、製品に関する情報提供や製材所等とのマッチングを実施しております。
 今後は、こうした取り組みに加え、区市町村における木材利用促進方針の策定と公共建築物への多摩産材の活用を一体的に進める具体的な支援策を検討するなど、区市町村での多摩産材のさらなる利用拡大を図ってまいります。
 次に、全国育樹祭の開催機運の醸成についてでございますが、全国育樹祭は国民的な森林と緑の祭典であり、その開催機運を醸成していくことは、森林整備や木材利用に対する都民の意識を高める上で極めて重要でございます。
 都はこれまで、育樹祭のプレイベントとして、林業や木材利用の新たな可能性等に関するシンポジウムのほか、多摩の森林に親しむ宿泊体験ツアーを開催するなど、森林の重要性やその魅力を伝えるためのさまざまな機会を提供してまいりました。
 今後は、より幅広い世代の多くの都民が参加できるよう、多摩産材を活用した親子木工体験や、都立公園などの身近な場所での樹木の手入れを体験できる都民育樹行事を都内各地で展開するとともに、全国の地域材を活用した木材製品の展示会を開催するなど、育樹祭の開催機運の醸成に向け、取り組みを強化してまいります。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 放射第三一号線の拡幅についてでございますが、本路線は、都心から千葉県境を結ぶ幹線道路でございまして、人や物の流れを円滑化いたしますとともに、災害時の救助救援活動など、防災性の向上にも資する重要な路線でございます。
 このうち、第四次事業化計画の優先整備路線であります猿江恩賜公園付近の四百六十メートルの区間は、地下鉄住吉駅に近接し、歩行者が多いことから、現道の新大橋通りを拡幅し、無電柱化を図ることで、安全で快適な歩行者空間が確保されます。
 本区間では、交通量の多い放射第三十二号線との交差点処理等につきまして検討が必要であり、今年度着手いたしました概略設計をもとに、今後、交通管理者等との協議を進めてまいります。
 引き続き、地元区や関係機関と調整を図りまして、早期事業化を目指し、積極的に取り組んでまいります。