平成二十九年東京都議会会議録第二十号

   午後三時二十分開議

○議長(尾崎大介君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十五番森村隆行君。
〔四十五番森村隆行君登壇〕

○四十五番(森村隆行君) まず初めに、東京の都市づくりについてお伺いします。
 二〇四〇年代の東京における都市の未来を描くためにつくられた都市づくりのグランドデザインが九月に公表されました。この長期のビジョンでは、目指すべき新たな都市像がさまざまな観点から総合的にまとめられておりますが、目標として掲げられているのが、活力とゆとりある高度成熟都市です。
 実現に欠かすことができないのが多摩地域の発展であると考えますが、これまで培われてきた地域の特性を生かし、また、可能性を引き出しながら、いかに社会経済情勢の動向を見据えた都市づくりを進められるかが鍵になると考えます。
 先日の代表質問で、多摩の振興プランについて知事の思いと今後の取り組みに向けた決意をお伺いいたしましたが、都市づくりのグランドデザインにおいて、多摩地域が二〇四〇年代に目指すべき都市の姿とその実現に向けた取り組みの方向性について、知事の考えをお伺いします。
 都市づくりのグランドデザインでは、東京全体を四つのエリアに分け、それぞれの地域の特色を生かした将来像を示し、可能性を引き出していくとしております。
 東京の西部、八王子の一部と西多摩地域にわたる圏央道外側の地域は、島しょ部とともに、自然環境共生域に位置づけられておりますが、歴代の知事の中で、小池知事は最も多くこの地域を訪れ、そこに暮らす都民の声を聞いてこられました。
 ご存じのとおり、この地域では、高齢化や人口減少などの課題に直面する一方で、都心から比較的手軽にアクセスできる豊かな自然や観光資源などの強みもあります。この地域から多面的な魅力と可能性を引き出していくことは、活力とゆとりある高度成熟都市の実現に大きく寄与します。
 そこで、自然環境共生域として位置づけられた圏央道外側の地域において、その特性を踏まえ、都市づくりをどのように進めていくのかを伺います。
 次に、東京の自然について質問します。
 都は、ことしの五月、東京の自然公園ビジョンを公表しました。東京は、世界屈指の大都市でありながら、行政区域の約三六%ものエリアが、国立公園や国定公園などの自然公園に指定されており、その面積は実に八万ヘクタールにも及びます。二千メートル級の雲取山から、伊豆・小笠原諸島などの島しょ部など、極めて多様で豊かな自然が存在し、また、都心に近く、手軽に触れられる地域に広がっていることなどが特徴で、都民の誇るべき財産です。
 自然公園ビジョンの策定は、こうした東京の自然の利活用促進に向けて大きな意義があり、豊かな自然を守りながら、都民のみならず、国内外の多くの方々にそのすばらしさに触れていただくために、大変大きな期待が寄せられております。
 さて、秩父多摩甲斐国立公園の東の入り口に御岳山があります。この山の上には、古くから続く御師集落があり、関東一円から信仰を集めてきた武蔵御嶽神社の御師たちが経営する宿坊旅館を中心とした独自の文化とにぎわいがあります。
 徳川家康公から厚い庇護を受け、江戸の西方を守護する役目を担った御岳山には、ムササビやツキノワグマ、特別天然記念物に指定されておりますニホンカモシカなど、多くの野生動物や貴重な植物が分布しており、地域固有の伝統や歴史と豊かな自然が共存しております。
 このように、御岳山は都民にとっても、また、海外から訪れる観光客にとっても、大変貴重で魅力ある存在ですが、こうした自然と密接に関連した人文資源等に関する国内外へのアナウンスは、残念ながら十分なものといえません。
 都は、御岳山を訪れる多くの人に、自然環境についてはもとより、地域固有の文化や産業等、多様な魅力を伝える取り組みを行うべきと考えますが、見解を伺います。
 また、今後増加する訪都外国人へのインバウンド対策を効果的に実施し、より多くの人たちに同地域を訪れてもらうことや、満足度を上げるための施策を展開していくことは、地域の発展のみならず、東京の自然公園や観光資源の磨き上げのためにも重要です。
 現在、既に御岳の山上集落では、宿坊等が地元の観光協会と連携しながら、それぞれに各種取り組みを実施しておりますが、二〇二〇東京大会が開催されるまでの間に地域の連携を強化しておく必要があるのではないかと考えます。
 高尾山では、先日、都のリーダーシップのもと、管理運営協議会が設置されたと聞いており、都は、御岳エリアの自然公園により多くの人が訪れてもらうために、このエリアにおいても地域連携の仕組みを構築すべきであると考えますが、見解を伺います。
 そもそもの問題意識として、都では、自然環境についての把握やアナウンスが不足していると考えております。国内はもとより、海外からの来訪者にもわかりやすく情報を伝えることができるような仕組みや装置の開設が必要ではないでしょうか。
 今現在、東京都に自然史博物館がありません。都内にはさまざまな研究者がおり、日夜、多様な研究が行われております。微細な細菌や昆虫、動植物の専門家もいれば、地層や地形、海や河川の専門家もおり、その研究分野は多岐にわたります。それらの研究成果を集約し、保管する場所がないのは本当にもったいないことで、将来にわたってこれらが集約されず散逸し、日の目を見ることなく失われてしまうことは、都民の利益にとってマイナス、また、五十年、百年後の東京都の利益を損ねるものではないかと考えます。
 単なる箱物をつくる取り組みではなく、例えば、ICTを駆使し、都民と双方向で貴重な知を蓄積しながら、内外に発信をしていけるような、次世代の自然史博物館の開設について検討を進めてほしいと考えますが、東京の自然公園ビジョンが策定されたことを契機に、自然環境に関する情報を的確に収集し、分析するとともに、積極的に発信していくような拠点の必要性について、都の見解を伺います。
 次に、観光振興策について伺います。
 都は、二〇二〇年に訪都外国人観光客数を現在の二倍の二千五百万人にするという目標を置いております。都心のさまざまなスポットがにぎわうことになると予想しますが、ぜひともこの機会に、東京にも高尾山や御岳山を有する自然豊かな地域があることを世界に発信し、都心からの近接性を誇る同地域をアピールしていただきたいと思います。
 しかし、そのためには、受け入れ面での対応力強化が必要不可欠です。受け入れ面での大きな課題の一つが交通の不便さで、とりわけ二次交通の不便さは、観光地間の周遊性を阻害する要因だという都民の多くの声があります。このままでは、地域の魅力を高めても、多くのお客様が事前計画の中で観光地間のアクセスの悪さに辟易し、行き先を変えてしまうことになりかねません。
 都は現在、電動アシストつき自転車の導入支援などに力を入れており、その試みには期待するものでありますが、それだけで十分とはいいがたく、回遊性を高めることに焦点を当てた取り組みをスピーディーかつ積極的に進めていくべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 また、都は現在、Tokyo Tokyoと銘打ち、東京ブランドの発信を主に海外向けに行っています。Old meets Newのキャッチフレーズは、伝統と革新とを意味し、その効果に大きな期待が持たれるところです。
 東京の自然や文化、歴史に目を向けた観光客誘致につきましても、伝統的なアプローチと革新的なアプローチの組み合わせによる効果が期待されます。
 例えば、夜間に従来は閉鎖していた施設を活用する取り組みや、ICTなどの先端技術の活用、スポーツツーリズムなどの推進、ほかにも従来なかった新しい視点を持ったさまざまな取り組みなど、都としてぜひとも東京らしさを発信し得る革新的なアプローチを行う事業者等を支援する枠組みの創設を行うべきと考えます。
 そこで、東京ならではの最新技術を活用するなど、これまでにない新しい視点から、観光スポットの魅力づくりの支援や多摩地域の豊かな自然などの魅力を発信していくべきと考えますが、都の取り組みを伺います。
 最後に、豊洲市場について伺います。
 開場時期は来年の十月中旬とのことですが、いまだ開場日は決まっていません。業界との丁寧な調整を進め、可能な限り早期に開場日の決定を行っていただきたいと存じます。
 業界団体との調整に際しましては、これまでに寄せられたご意見やご要望に都として真摯に向き合っていく必要があります。
 例えば、都は、九月七日付で東京魚市場卸協同組合から要望書をいただいており、それらについて、都から一旦は回答が行われておりますが、このことはさきの代表質問でも触れさせていただいたとおりです。
 業界団体からの要望は、組合員が安心して事業を営む環境を豊洲市場に整えるためのものであり、ぜひとも東京都として前向きかつ積極的な検討、調整を進めていただきたく存じます。
 一方で、円滑な市場移転のためには、個々の事業者にも移転のための準備を進めていただく必要があります。十二月五日の市場移転に関する関係局長会議でも、事業者が移転に向けて取り組まなければならない作業への支援体制の整備について市場長から説明がありました。
 そこで、個々の事業者にきめ細かく寄り添った形での支援体制がどのような形で整備されるのかにつきまして、その詳細をお伺いします。
 なお、現在、市場との取引のある関係者、例えば場外市場業者などの方々から豊洲新市場の視察に関する希望があると聞いておりますが、開場後のスムーズな商取引の継続を見据え、ここでもきめ細かな対応をお願いしたいことを申し添えて、豊洲市場に関する質問を終わります。
 さて、本日が私の都議会一般質問、初舞台となりました。都知事が掲げる東京大改革に共感をし、議員になってからこの間、さまざまなことがありました。事あるごとに意識を向けるのは、立ち返るべき原点を忘れてはいけないということです。都民ファースト、都民のための政治を行う、何かを変えてほしいと託してくれた都民への思いに応えられるよう、励んでまいりますことをお誓い申し上げ、私の質問を終えます。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 森村隆行議員の初めての一般質問にお答えいたします。
 私には、多摩地域の目指すべき姿についてのお尋ねがございました。
 グランドデザインでは、二〇四〇年代の東京の新しい姿とその実現のための戦略などを打ち出してまいりました。
 例えば、人、物、情報の自由自在な交流を実現する、持続的な成長を生み、活力にあふれる拠点を形成する、あらゆる人々の暮らしの場を提供する、このような戦略を展開してまいります。そして、特色ある東京のさまざまな地域で多様な住まい方、働き方、憩い方を選択できる都市を目指してまいります。
 多摩地域には、高い技術力を持つ企業や大学の集積、圏央道による首都圏一帯との強いつながり、職と住との近接、豊かな自然環境や地域資源などの強みや魅力がございます。
 ご指摘の多摩地域では、このような特徴を生かしながら、ものづくり産業など新たなイノベーションを創出してまいります。南北、東西を結ぶ骨格幹線道路など交通ネットワークを強化して、拠点間の連携を促進してまいります。今ある貴重な緑を守ってまいります。空き家の活用などを進めて、豊かな地域資源も生かしながら、多様なライフスタイルに対応した住み、働く場を提供してまいります。
 このような取り組みを進めまして、多摩地域独自の魅力を磨き上げまして、持続的な発展につなげてまいりたい、このように考えております。
 その他のご質問につきましては、東京都技監、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 自然環境共生域における都市づくりについてでございます。
 グランドデザインでは、圏央道の外側などの豊かな自然環境や地域資源に恵まれた地域を自然環境共生域と位置づけ、地域の特色を最大限活用して、多様なライフスタイルに対応した将来像を描き、その実現に向けた取り組みを示してございます。
 具体的には、山岳、清流などの自然環境や温泉、地酒などの地域資源を活用しながら、滞在施設や交通アクセスを充実させ、観光交流を促進してまいります。また、豊かな自然を楽しみながら、住み、働く場を提供できるよう、空き家を活用したサテライトオフィスの立地誘導などを図ってまいります。
 こうした取り組みにより、多摩地域の魅力を発揮し、発信させながら、東京全体の価値の向上につなげてまいります。
〔環境局長和賀井克夫君登壇〕

○環境局長(和賀井克夫君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、御岳山の多様な魅力を伝える取り組みについてでございますが、御岳山は、豊かな自然環境はもとより、農林水産業や山岳信仰など、自然と人の営みの関係性が色濃く見られることが魅力の一つでございます。
 こうした魅力を訪れる人々に十分に伝えることは重要でございまして、このため、来年度から指定管理者制度を導入する機会を捉え、山上のビジターセンターと御嶽駅前のインフォメーションセンターの機能強化を図ってまいります。
 具体的には、大型パネル等を用い、地域の産業と自然のかかわりを紹介するとともに、地酒等の地域特産物を販売するなど、御岳山の多様な魅力を積極的に発信してまいります。
 次に、御岳エリアにおける地域連携の構築についてでございますが、御岳山の自然や景観を守り、その魅力を内外に広く伝えていくには、ソフト、ハード両面からのインバウンドの受け入れ環境の整備、魅力を伝えるイベントの実施や積極的な情報発信等が重要でございます。
 そのためには、地域にかかわる多様な主体が連携することが有効であり、今後、地元の理解を得ながら、関係する複数の自治体や観光協会、交通事業者、住民等をメンバーとする意見交換や実施事業の企画を行う場の設置について検討を行ってまいります。
 最後に、自然環境に関する情報発信等の拠点の必要性についてでございますが、東京の自然公園ビジョンの検討の過程では、東京都自然環境保全審議会において、自然環境の状況を的確に把握し、情報の収集、分析を行う場の一つとして、自然史博物館の必要性について議論がなされたところでございます。
 これを受け、ビジョンでは、都心部における自然公園に関する情報の収集や発信を強化することとしております。
 今後、施策を推進する中で、拠点の必要性も含め、より多くの人々に東京の自然公園の魅力や価値を伝えていくための効果的な情報発信のあり方等について、検討を行ってまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、多摩地域の観光地をめぐる交通手段についてでございますが、東京に多くの旅行者を誘致するためには、多摩地域の魅力ある観光スポットを効率的に周遊するための仕組みづくりが重要でございます。
 このため、都は、多摩地域でバスやタクシーなどの交通機関を利用して、観光スポットを円滑に移動するためのモニターツアーや実証実験を行うとともに、新たな交通手段として、小回りのきく電動アシスト自転車の活用に向けた検証を行っているところでございます。
 今後は、これらの結果を自治体や交通事業者等の関係者と共有し、地域の交通事情に応じて、複数の交通手段を組み合わせることで、効率的に観光地をめぐる方法について検討いたします。
 こうした取り組みにより、多摩地域の観光振興を着実に進めてまいります。
 次に、新たな視点からの地域の観光振興についてでございますが、最新の技術や新たな発想を観光資源の開発やその魅力の発信に積極的に取り入れていくことは、さらなる集客につなげるために有効な取り組みでございます。
 都は今年度、美しい景観が広がる多摩地域の観光スポットに参加者を集め、撮影した写真をインスタグラムで効果的に拡散する交流型イベントを新たに実施いたしました。また、桜やもみじ等の自然などを夜間でも楽しめるよう、ライトアップに取り組む観光協会等を支援しております。
 今後は、最新の映像技術であるプロジェクションマッピングや近年話題のグランピングなど、民間事業者等が行う新たな取り組みに対する支援や、三百六十度動画など臨場感のある映像を用いた魅力の発信の充実を検討し、多摩を初めとする都内各地への誘客を一層進めてまいります。
〔中央卸売市場長村松明典君登壇〕

○中央卸売市場長(村松明典君) 個々の事業者への支援体制についてですが、豊洲市場への円滑な移転を進めるには、市場業者の行うさまざまな準備作業をきめ細かく支援する必要がございます。
 このため、都では移転準備に係る相談体制を強化するなど、市場業者が準備をしやすい環境を整えているところでございます。
 具体的には、今月中に造作工事の相談窓口を増設するほか、来年二月を目途に引っ越し相談窓口を再開し、個々の事業者の状況に応じてきめ細かく支援してまいります。
 また、豊洲市場での造作工事や習熟訓練等をより実施しやすくするため、年末年始を除き、土日祝日も市場への入場を可能とし、入場時間を二時間延長したほか、今後入場可能なゲートを順次拡大してまいります。
 こうした取り組みを通じて、個々の事業者に丁寧に寄り添いながら、円滑な移転のための準備作業を支えてまいります。

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