平成二十九年東京都議会会議録第二十号

○議長(尾崎大介君) 五十七番星見てい子さん。
〔五十七番星見てい子君登壇〕

○五十七番(星見てい子君) 初めに、子供食堂について質問します。
 子供に無料または低額で食事を提供する子供食堂が次々と広がっています。私も地元目黒区で子供食堂のスタッフをしていますが、用意した六十食がすぐなくなる状況です。きょうは一人なのと声をかけると、お母さんはお仕事、八時にお迎えと小学校の女の子。誰もいないから食堂が閉まるまでいると塾帰りの男の子。いつも一人でご飯の子も、コンビニで夕食の子も、子供食堂の日だけはにぎやかに食事をしています。親の長時間労働の広がりで、孤食になっている子供に楽しく栄養バランスを考えた食事を提供している意義は大きいです。
 保育園帰りの親子もたくさん来ます。子供をスタッフに任せ、安心しておしゃべりをする姿を見ると、子育て世代の孤立への処方箋にもなっていると実感しています。
 スタッフには退職した教師、栄養士、調理師、保育士、学童クラブ指導員など、さまざまな分野の専門家が参加しています。中学生、高校生もスタッフに加わっています。認知症の方やブラック企業で鬱病になり療養中の方も活躍しています。子供食堂には新しいコミュニティを形成して、地域を再生する力があります。
 知事は、昨年、都知事選直前に子供食堂を視察し、SNSで子供の貧困解消に向け、子供食堂のような取り組みを進めると発信し、公約でも子供食堂の活用を掲げています。
 知事は、子供食堂の役割や重要性をどのように認識していますか。また、活動への支援をどのように考えていますか。
 子供食堂の利用者やスタッフの多くは、インターネットから情報を得ており、とりわけ学生ボランティアは、ネット情報をもとに広域から参加しています。都が紹介することで、個々の子供食堂の認知度、そして信頼が上がり、活動しやすくなります。
 活動を広く周知するため、区市町村と連携して都のホームページから各地の子供食堂の場所や開催日、連絡方法などが検索できると効果的です。いかがですか。
 子供食堂が苦労しているのは会場確保で、会場費などが食事代にはね返っており支援が求められています。都が子供の居場所創設事業を行っていることは重要ですが、学習支援、食事提供、相談支援などを一体的に行う必要があるため、子供食堂への活用が困難です。東京都市長会も、子供食堂などが広がっているが、子供の居場所創設事業は地域の自発的活動への活用が難しい、小規模な活動も補助対象とされたいと要望しています。東京都市長会の要望を踏まえた検討をすべきと思いますが、いかがですか。
 私が初めてついた仕事は、さまざまな事情から家族と一緒に住めなくなった子供を養育する児童養護施設の指導員です。二十代だった私は、社会のゆがみが子供たちに陰をつくっている現実に直面し、自分の力のなさに打ちひしがれる毎日でした。これが私の原点です。
 議員になってからは毎週、何でも生活相談会を続け、一千件を超える相談を受けています。その中には、DV被害で母と逃げてきた子や、母親と中学生の息子二人の三人家族が六畳一間で寝起きをしている家など、憲法二十五条や児童福祉法がありながら、いまだに子供の成長を保障できない現実があふれています。これを東京都から打開したいと思っています。
 そこで、子供の貧困対策についてお聞きします。
 都が首都大学東京の子ども・若者貧困研究センターと連携して二万人規模の子供の生活実態調査を行ったことは重要です。調査では、低所得、家計の逼迫、子供の体験や所有物の欠如のいずれかに当てはまる生活困難層の子供が二割以上に上りました。中学二年生で、食べ物に困窮した経験があるのが一一%など、急迫している子供の生活実態が明らかになりました。
 知事は、この結果についてどのように受けとめて、子供の貧困解決に取り組もうとしているのかをお尋ねします。
 子どもの貧困対策法に基づく計画を作成していないのは東京都だけになりました。
 知事は所信表明で、子供・子育て支援総合計画の見直しについて、貧困の世代間連鎖を断ち切り、全ての子供が夢に向かって輝ける社会の実現に向けて、総合的な子供の貧困対策を盛り込んでまいりますと述べましたが、どのような対策を策定していくのですか。具体的な指標と目標を持つべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、今回の子供の生活実態調査で終わりにせず、専門家の協力を得ながら、さらに実態を把握する調査と分析を行っていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 今回の子供の生活実態調査の特徴の一つは、十六歳から十七歳の生活困難層が二四%にも上ることです。この子供たちは五人に一人が、食事もほぼ毎日二食以下で、授業がわからないも半数近くです。中学生までは区市町村で把握しやすいのですが、高校生になると難しくなり、都の役割が重要になります。
 この点から注目されるのは、都が昨年度開始したユースソーシャルワーカーの活動です。都立高校で五十人以上が福祉や就労支援の経験を生かして献身的に活動をしています。活動強化のためにも、教師との系統的連携や専門職としての経験を蓄積できる正規職の配置が重要です。しかし、全員が非常勤で任期も最大で五年です。ユースソーシャルワーカーを導入して二年目になりますが、その成果と、さらなる充実の方針を伺います。
 子供の生活実態調査によると、私学に進学した子供の割合は、一般層では五六%に対し困窮層では三六%です。私立を選んだ理由は、困窮層では公立高校に合格しなかったが過半数です。逆に、教育方針を理由に私立に行く子供は少なく、気に入った私立に行きたくても教育費負担により困難な状況がうかがえます。国との連携を踏まえ、困窮層が私立も選択できるよう支援を行うべきです。いかがでしょうか。
 中学生や高校生の塾代や受験料を支援する受験生チャレンジ支援貸付事業は、経済困難を抱える受験生と家族に歓迎されています。昨年、収入基準を引き上げたことは前進です。しかし、世帯の生計中心者だけの収入で判断していたものを世帯合算に変更したため、対象外になった家庭が生まれ、ひとり親以外の世帯の利用は一千五百件も減少しました。
 受験生チャレンジ支援貸付事業の収入基準は引き上げたとはいえ、生活保護基準の一・一倍です。都内の就学援助基準は一・二倍以上がほとんどですから、就学援助家庭でも使えない場合があります。
 世田谷区の都営住宅で就学援助を受けている家庭が、中学三年生で軽度の発達障害がある長男の高校受験のために塾費用の貸し付けを申し込みましたが、対象外になりました。収入基準を引き上げれば、このような中学生も利用ができます。
 また、合格した場合は返済を免除を、受験した場合に変え、誰でも安心して、望んでいる学校にチャレンジできる制度に改善すべきだと考えます。子供の進学を積極的に支援していただきたいと思いますが、いかがですか。
 続いて、高校生の健康と医療の問題についてです。
 子供の生活実態調査でも明らかになったとおり、一日に二食以下が多い高校生への食事の提供は困窮層対策でもかなめになります。子供も、本人のサービス利用意向でも、学校における無料の給食サービスが最も多く、困窮層では八三%になっています。都立高校での学校給食導入の検討が求められています。
 当面、既に実施されている夜間定時制高校の給食費のさらなる低廉化や無料化など、給食の喫食率を上げる工夫は重要だと思いますが、いかがですか。
 子供の生活実態調査では、医療の受診抑制の理由について、自己負担金が払えなかったと答えたのは、医療費助成のある小中学生では一%未満でした。しかし、十六歳から十七歳では二・七%、その中でも困窮層では一八・八%に上ると判明し、その深刻さに驚きました。調査では、その理由をどのように分析していますか。東京都として、十八歳までの医療費無料化を実現するべきです。認識を伺います。
 最後に、保育所の待機児解消についてお聞きします。
 目黒区は、保育所の待機児が世田谷区に次いで多く、入所率では全国最悪レベルです。毎年、保育園に入れてと区に不服審査請求が出ています。二人目が保育園に入れず、職場に復帰できなければ、おなかの子をおろすことになるという母親など、請求者が皆泣きながら訴えるほどの深刻さです。一刻も早く待機児をなくすため、都有地、国有地の活用についてお聞きします。
 都営目黒一丁目アパート敷地にある元区立保育園用地は、未接道で建築基準法に抵触するため、都の情報提供に載っていません。しかし、団地内道路のつけかえなどで活用できる可能性があるとわかり、目黒区長は、東京都と状況把握をしながら対応したいとしています。よく相談し、保育園整備につなげる努力をすべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次は、国有地です。
 目黒区中目黒には防衛研究所跡地があります。この地は目黒区と渋谷区にまたがり、二・二ヘクタールもあるため、区独自の購入は困難です。また、駒場東大前の駅前にも公務員宿舎跡地があり、目黒区が五月に国に要望しています。
 これらの土地を区が保育園、特養ホーム用地として活用できるよう国に申し入れるべきですが、いかがですか。また、区と相談や検討をして進めるべきです。支援をするべきと思いますが、いかがでしょうか。
 保育園の待機児問題、東京都の大きなイニシアチブを求めて、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 星見てい子議員の一般質問にお答えいたします。
 子供食堂についてのお尋ねでございました。
 子供が健やかに育つためには、栄養面でバランスのとれた食事や安心して過ごせる居場所があることは重要であります。私も豊島区にあります子供食堂に伺ったことがございますが、制度的にも持続的な形でこうした取り組みを進めることは必要だと考えております。
 現在、都内では、多くの民間団体が地域の子供たちへ食事や交流の場を提供する取り組みを行っておられます。都は現在、民間団体の事業の立ち上げ支援、学習支援、食事の提供、保護者への援助など、子供の居場所づくりに取り組む区市町村を支援しているところでございます。
 今後、こうした子供食堂のような取り組みがさらに進みますように、しっかりと支援をしてまいります。
 子供の貧困対策についてでありますが、子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることがあってはなりません。貧困の世代間連鎖を断ち切って、全ての子供が夢に向かって輝ける社会の実現に向けて、昨年行いました実態調査も踏まえ、福祉、教育、就労など、さまざまな分野の関係機関が連携をいたしまして、今後とも、子供の貧困対策を総合的に進めてまいります。
 なお、その他のご質問につきましては、教育長、東京都技監、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ユースソーシャルワーカーについてでございますが、都教育委員会は、社会生活を円滑に営む上での困難を有する都立高校生等に対して、学校の対応に加え、就労、福祉等の関係機関による多面的な支援を行うことが必要と考えております。
 このため、平成二十八年度から、不登校や中途退学の防止に向け、就労や福祉の専門的知識や技術を持つユースソーシャルワーカーを都立高校等に派遣する取り組みを開始いたしました。初年度は、ユースソーシャルワーカーの資質向上を図りながら、二千名を超える生徒に対応し、不登校の解消や進路決定の促進などを行い、一定の成果を上げたところでございます。
 今後とも、学校や関係機関と連携するなどして、課題を抱える生徒への支援に努めてまいります。
 次に、都立高校の夜間定時制課程における給食についてでございますが、都教育委員会では、現在、勤労青少年の修学を促進し、教育の機会均等を保障するため、有職者や求職中などの生徒を対象に給食費の一部を補助しております。
 さらに、給食の栄養バランスを確保するとともに、都内産食材の使用など、多様な食品を組み合わせた季節感のある給食を提供するなど、食の内容の充実を図り、喫食率の改善に取り組んでおります。
 今後とも、多様化する生徒のニーズなども踏まえながら、学校給食を適切に実施してまいります。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 都営住宅用地を保育所に活用することについてでございます。
 都営住宅においては、これまでも建てかえにより創出した用地等を活用し、関係局や区市と連携しながら、福祉施設の整備を進めてまいりました。
 都営住宅内の既存の広場等を活用し、新たに福祉施設を整備する場合においても、地元区市からの要請、関係法令への適合などのほか、それを利用している方々の理解なども必要となります。
 お話の元保育園用地については、今後、地元区の考えを聞くなど、相談に応じながら、適切に対応してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 七点のご質問にお答えをいたします。
 まず、子供食堂の周知についてでありますが、都は今年度から、専任職員を配置して、学校や保健所、民生児童委員などから成る関係機関の連携会議や生活に困窮する子育て家庭等の相談窓口の設置等を行う区市町村を支援しております。この専任職員は、子供食堂や学習支援など、地域のさまざまな取り組みについて情報を収集し、住民や関係機関等への周知も行っております。
 また、区市町村では、地域の子育て支援の取り組みをホームページ等で紹介をしており、都は、子育て世帯や子育て支援者向けのポータルサイトである、とうきょう子育てスイッチを通じて、区市町村の情報を提供しております。
 次に、子供の居場所づくりについてでありますが、子供の居場所創設事業は、日々の子供とのかかわりや、子供や保護者との面談を通じて、家庭の状況を的確に把握し、支援が必要な場合には、子供家庭支援センター、児童相談所、学校等の地域の関係機関と連携して支援することを目的としております。
 そのため、社会福祉士や相談援助の実務経験者など、専門的な知識を持つ支援員の配置を義務づけ、直接子供とかかわる機会である学習支援や食事提供等の実施日数にも要件を定めております。
 区市町村が地域の実情に応じて行う居場所づくりにつきましては、包括補助で支援をしております。
 次に、子供の貧困対策の取り組みについてでありますが、都は今年度、子供・子育て支援総合計画の中間の見直しを行い、子供の将来が生まれ育った環境に左右されず、健やかに育つ環境の整備を進めるため、子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づく計画としての位置づけを明確にいたします。
 見直しに当たりましては、子供の居場所づくりや子供の貧困対策に取り組む区市町村への支援、高校生を対象とした給付型奨学金などの事業も盛り込む予定であり、福祉、教育、就労などの支援策を実施してまいります。
 施策の効果検証については、子供・子育て会議の意見も踏まえ、評価指標を設定し、分析した結果は次期計画に反映させることとしております。
 次に、子供の生活実態の把握についてでありますが、都は昨年度、これまでの施策の効果や状況を改めて検証し、その内容の充実を図ることを目的に、首都大学東京と連携して、子供の生活実態調査を実施いたしました。
 今年度は、この調査データを活用し、子育て家庭における子供の食事や学習等の生活実態と保護者の家計や就労等との関連等について、分析を進めております。
 また、国の交付金等を活用し、独自に調査を行うなど、貧困の状況にある子供や家庭の実態把握に努める区市町村に対し、都は首都大学東京と連携して、専門的見地からの助言も行っております。
 次に、受験生チャレンジ支援貸付事業についてでありますが、都は、一定所得以下の世帯の中学三年生や高校三年生等の受験や進学を支援するため、学習塾の受講料や受験料の無利子貸付を行っております。
 本事業の貸付要件につきましては、平成二十八年度に、世帯間の公平性を確保するため、収入額の確認方法を、生計中心者の収入から世帯単位へと変更するとともに、ひとり親世帯については、生活保護の母子加算を反映した新たな収入基準を設けるなどの見直しを行いました。
 また、貸付金の償還につきましては、希望校へ入学した場合のほか、進学できなかった場合でも、利用者の実情により審査を経て免除できることとしており、今後とも、本事業を活用し、子供たちの進学を支援してまいります。
 次に、十八歳までの子供の医療費助成についてでありますが、子供の生活実態調査では、困窮層の保護者のうち、医療の受診を抑制する理由として、自己負担金を支払うことができないと思ったためと回答した割合は、小中学生より十六歳から十七歳までの子供のいる保護者の方が高くなっており、その理由の一つとして、調査対象の四自治体において、医療費助成の対象が十五歳までとなっていることが考えられるとしております。
 都が実施しております乳幼児や義務教育就学児に係る医療費助成への支援は、乳幼児は病気にかかりやすいこと、学齢期は人間形成の核となる重要な時期であること等から行っているものでございます。
 また、ひとり親家庭につきましては、その経済的負担を軽減するため、十八歳までの子供に対しても医療費を助成する市町村を支援しております。
 最後に、目黒区の国有地についてでありますが、国は、普通財産に属する未利用の国有地をホームページ上で情報提供いたしますとともに、都と区市町村それぞれに対して、活用の意向を照会しております。
 お尋ねの防衛研究所跡地は、現在、普通財産となっておらず、国から都や地元区に照会は来ておりません。また、国家公務員宿舎跡地につきましては、地元の目黒区は、活用の意向がある旨を国に申し入れたと聞いております。
 国有地を地元区市町村が活用する場合は、直接国に申し出ることとなっております。
 都は、認可保育所や特別養護老人ホームの整備を進めるため、国有地や都有地等を活用する区市町村を引き続き支援してまいります。
〔生活文化局長塩見清仁君登壇〕

○生活文化局長(塩見清仁君) 困窮層の私立高校への進学支援についてでありますが、これまでも都は、低所得世帯を中心に、都の特別奨学金や国の就学支援金により、授業料の保護者負担の軽減の充実を図ってまいりました。
 また、入学支度金などの無利子貸付を実施しますとともに、低所得世帯を対象に奨学給付金を支給することで、授業料以外の教育費の負担軽減にも努めております。
 加えて、文部科学省では、奨学給付金の充実を図るため、平成三十年度概算要求で補助単価の増額を行っているほか、都においては、都内通信制高校への特別奨学金の適用についても、既に検討を進めているところでございます。
 今後も、こうした施策を総合的に活用し、家庭の経済状況に左右されることなく教育を受けることができるよう、子供たちの学びたいという気持ちに応えてまいります。

○議長(尾崎大介君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時一分休憩

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