平成二十九年東京都議会会議録第二十号

○議長(尾崎大介君) 二十四番村松一希君。
〔二十四番村松一希君登壇〕

○二十四番(村松一希君) まず初めに、工業団体を通じた製造業への支援について伺います。
 東京の製造業は、地域で生産活動を行う数々の町工場によって支えられており、各地の工業団体を通じて町工場を支援していくことは効果的と考えます。中小の町工場の事業継続に向けた経営能力の引き上げや、ものづくりに不可欠な技術力や人材の確保は、個々の企業だけで進めようとしても限界があり、工業団体は頼りになる存在であります。
 こうした状況を受け、工業団体もさまざまな支援を行っておりますが、状況の変化に応じ、柔軟に対応を行うとともに、事情が異なる企業のニーズを幅広く受けとめる姿勢こそが不可欠であります。
 これまで工業団体は、都からの補助により、さまざまな中小製造業支援を進めてきましたが、事業の利用者に役立っているかをしっかりと検証していただくことも大切な視点であります。
 製造業のこれからの発展に寄与できるよう、工業団体による支援を都としてどのように進めていくべきとお考えか、知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、首都直下地震における緊急輸送支援システムの再構築についてお伺いいたします。
 首都直下地震は、今後三十年以内に七〇%の確率で起こるとされており、一たび起きればその被害は甚大であります。都民の生命、財産を守る上で、防災、減災に向けた対策は都政の最重要課題の一つといえます。
 こうした中、現在、圏央道周辺に、災害時避難場所の機能を有した広域防災拠点として集荷集積施設を新たに建設し、関東各県のトラック協会が広域応援協定を締結することで、首都直下地震発生時における協力体制の整備が検討されております。
 災害発生時、被災者の方々の支えとなるのは、困難な状況にしっかりと目配りをしたきめ細かな対策であり、避難所における緊急支援物資の供給を支える物流機能の確保は大変重要であります。
 そのため、東京都民の生命を守るという公共性や公益性の観点から、こうした取り組みについて都が積極的に支援を行っていくべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 次に、公共交通の充実について伺います。
 知事は、所信表明の中で、世界の都市間競争に打ち勝つ、都民の皆様が好景気を実感できる、そのための成長を生み続けるスマートシティーの実現に向けて、成長戦略を力強く展開していくとおっしゃっておられました。その政策を進める一つとして、公共交通の充実があると考えます。
 一般財団法人森記念財団都市戦略研究所の調査によれば、世界四十四都市の中の都市総合力の一位はロンドン、二位ニューヨークに次いで、日本は三位ということです。交通アクセスも大きなファクターとなっており、一位はパリ、二位ロンドン、東京は六位となっております。
 昨年の都に訪れた観光客数は過去最高の一千三百十万人となっており、国の方針でも、観光客誘致が掲げられております。東京二〇二〇大会に向けても、さらなる観光客数の増加が見込まれます。観光客の評価としても、公共交通はチェックポイントとなり、他大都市と比較されるところです。さらに、少子高齢化が進み、マイカー利用者が減ることで、より公共交通の需要はふえるものと考えられます。もちろん、CO2削減にもつながる政策であります。
 昨年四月、国の交通政策審議会の答申では、東京圏における今後の都市鉄道のあり方について、空港へのアクセス向上、混雑の緩和、バリアフリー化などの視点を踏まえ、国際競争力の強化に資するプロジェクトや鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクトなどが示されております。
 答申に示された鉄道新線のプロジェクトについて、自治体や事業者と着実に協議を進め、公共交通の充実を図っていただきたいと思いますが、都のご所見をお伺いいたします。
 さらに、都が取りまとめた広域交通ネットワーク計画についての中で、整備について優先的に検討すべき路線とした六路線の中で、大江戸線の大泉学園町への延伸は最も取り組みやすい路線であると考えており、早期に事業化すべきという観点から伺わせていただきます。
 都営大江戸線は、現在光が丘駅が終点ですが、大泉学園町への延伸について、昭和六十年の運輸政策審議会第七号答申で整備することが適当とされ、平成十二年の運輸政策審議会第十八号答申では、平成二十七年度までに整備着手することが適当である路線に位置づけられておりました。
 また、昨年、平成二十八年四月の交通政策審議会が示した答申においては、東京圏の都市鉄道が目指すべき姿を実現する上で意義があり、地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクトと位置づけられております。
 都営大江戸線の延伸は、昭和六十年の運輸政策審議会第七号答申から三十年以上にわたる練馬区民の悲願であり、交通空白地域の改善や地域の活性化に大きく貢献する路線であります。
 交通局ではこれまでも、大江戸線の延伸に向けた検討を行っていると聞いております。先日の公営企業委員会事務事業質疑の中で、収支採算性の確保に課題があり、具体的な検討が必要とご答弁をいただきました。
 練馬区は、大江戸線延伸地域の活性化策として、本年四月一日に、ねりま健育会病院をオープンさせるなど、地元町会、商店会が連携をし、さらなるまちづくりを進めていると聞いております。また、区民、区議会、区で大江戸線延伸促進期成同盟を組織し、要請活動や啓発活動などの促進活動に取り組んでこられました。
 先月十一月十六日には、大江戸線延伸促進期成同盟と練馬区の経済、産業界や地域を代表する八つの団体で組織する大江戸線延伸推進会議が協力して行う初めての事業として大江戸線延伸フォーラムを開催するなど、延伸に向けた機運はどんどん高まっております。
 導入空間である補助二三〇号線の建設が進んでおり、駅の位置イメージもあります。早期の事業化を目指し、地元自治体である練馬区とより密に連携をし、大江戸線延伸実現に向けた検討を進めるべきと考えますが、交通局の見解を伺います。
 次に、教育委員会の取り組みについて伺います。
 グローバル化が進む中で、国際社会に通用する人材をいかに育てるか。そして、社会生活が多様化、また激変する中で、より柔軟に考え行動できる、まさに学習指導要領で示された生きる力を伸ばす教育が重要であります。
 社会で求められる人材とはどんな人材でしょうか。バブル経済の崩壊以降、我が国経済が長期の低迷を続ける中で、我が国の産業、就業構造も急速な変貌を遂げています。多くの企業が生き残りをかけて、経営の合理化と事業の再編成を目指す企業再構築、リストラクチャリングを推し進める中で、年功賃金や終身雇用など従来型の日本的雇用慣行は揺らぎ、また、即戦力となる専門知識や技能を持つ人材を求める傾向が強まり、従来型の新卒一括採用制度も変わり始めています。
 また、大学入試の方法も、平成三十二年度から大学入試センター試験は大学入学共通テストにかわり、記述式が取り入れられるように変わるとされています。
 都立高校において、これからの時代を担う生徒に必要な資質、能力の育成が重要と考えます。都教育委員会のご所見をお伺いいたします。
 今までの、教員が一方的に教え、生徒は覚えるだけの教育から、みずから考え、意見をいえる人材を育てるためには、授業の指導方法も変えていかなければなりません。
 最近は、授業の手法としてアクティブラーニングがよく取り上げられます。平成二十六年十一月の中教審への諮問の中では、高校におけるアクティブラーニングについて言及されました。その中では、高等学校教育については、課題の発見と解決に向けた主体的、協働的な学習指導方法であるアクティブラーニングへの飛躍的充実を図ると述べられております。
 これからの日本で、世界で活躍する人材を育成するためには、時代の流れに合わせた教育改革が必要であります。都立高校において、アクティブラーニングを推進できるようにするための都教育委員会の取り組みをお伺いいたします。
 国際社会の中で活躍する人材を育成するために、外国語が重要であるということはいうまでもありません。しかしながら、今までの外国語というと、多くの学校では読み書きが中心で、中学、高校と英語を学び、大学生で英会話ができるレベルになることは難しいと思います。しかし、本来の外国語の授業は、会話ができることをゴールにカリキュラムを設定するべきと考えております。
 学習指導要領にも目標として、高校では、外国語を通じて言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、情報や考えなどを的確に理解したり、適切に伝えたりするコミュニケーション能力を養うと書かれておりますが、その目標を達成するためには授業の改善がさらに必要と感じます。
 スピーキング力も含めた英語力を客観的に把握するには、英検等の資格、検定試験を利用することが効果的と考えます。さらに、大学入試でも、資格、検定試験を利用することが検討されております。
 都立高校において、外部機関の資格、検定試験を活用し、生徒の英語力を一層伸ばしていく取り組みを推進していくことが重要だと考えます。都教育委員会のご所見を伺います。
 教員の語学力向上とともに指導力向上も求められております。小中学校でも、外国語を母国語とする外国人講師、ALTの配置が進んでおります。ネーティブな発音を学ぶことができ、非常に有用と感じます。
 都立高校では、JETプログラムによる招致事業を活用し、ALTとしての配置と指導改善に取り組んでいると聞いております。
 都立高校における外国人指導者を活用した生徒の英語による会話力を伸ばすための取り組みについてお伺いいたします。
 さらに、英語でのコミュニケーション力を高めるには、授業の充実に加え、実践的な場で英語を活用し、考え、話す力を鍛えることが重要であります。そして、小学校からの取り組みも重要と考えます。幼少期にネーティブな英語に触れる機会や英会話を楽しむことを覚えることで、学年が上がるごとに、さらに英語力が上がることが期待されます。
 小学生からの実践の場として期待されるのが、来年九月に開設される東京都の英語村、TOKYO GLOBAL GATEWAY、いわゆるTGGであります。学校だけでは難しい英会話の実践の場として、小学生から高校生までさまざまなレベルに応じたプログラムがあり、海外に行かずとも、ホテルやレストランなどのシチュエーションに合わせた英会話学習ができるということで大変期待をしております。
 TGGにおける児童生徒が主体的に考えながら英語を話す力を伸ばすための取り組みについてお伺いいたします。
 以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 村松一希議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、工業団体を通じた製造業への支援についてのご質問がございました。
 都内のものづくり企業は、高度な技術力を持って地域の経済、そして雇用を支え、東京の産業活動の中で欠かせない存在となっております。
 ものづくり企業の多くは、中小零細の規模でございます。国内外の企業との間で、品質と価格の両面から激しい競争に直面をし、また、次世代の経営者や技術の新たな担い手の確保に問題を抱えるなど、個々の経営者の努力だけでは対応できない状況が広がっております。
 こうした中で、企業が連携して製品の競争力を高めて、経営基盤の維持強化を図るために、地域の工業団体の果たす役割は大きいものと思います。
 都におきましては、各地の工業団体の連合組織を通じて、さまざまな企業に対して新たな製品の開発や経営力の向上を下支えするほか、それぞれの団体による技術承継の取り組みなどを支援してまいりました。
 製造業を取り巻く環境の変化は速い、そして、課題の解決に向けた支援のニーズを確実に見通すことも難しゅうございます。
 そのため、都内各地域のものづくりの現状を幅広く把握している工業団体の連合組織の力が効果的に発揮できるように施策を改めて見直しまして、個別企業にとって真に必要とされるサポートに結びつけてまいりたいと考えております。
 次に、災害時の広域的な物資輸送についてのご質問でございます。
 都はこれまで、大規模災害時に支援物資の受け入れや区市町村の拠点への積みかえ、配送等を行うために、公共トラックターミナルやコンテナふ頭などを広域輸送拠点とする体制を整備してまいりました。
 一方で、圏央道の整備が進んできておりまして、災害時に緊急物資の輸送を円滑に行っていくためには、こうした広域的な都市インフラを一層生かしていくことが効果的でございます。
 昨年の熊本地震では、民間物流施設が物資輸送拠点として活用されまして、事業者や自衛隊の協力を得て物資輸送が行われたのも記憶に新しいところでございます。
 被災者に必要な物資を円滑に届けるために、物流事業者を初め多様な主体が連携をして、民間の物流施設も活用しながら相互協力を行っていくことは重要でございます。
 こうした観点に立ちまして、民間事業者が主体的に行う広域応援体制の整備に対しましても、今後、その支援のあり方を検討してまいります。
 なお、その他のご質問につきましては、教育長、東京都技監、交通局長よりの答弁とさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 五点のご質問にお答えいたします。
 まず、生徒に必要な資質、能力の育成についてでございますが、変化の激しい時代を担う生徒には、主体的に課題を発見し解決する能力、既存の概念にとらわれない発想力や企画力など、一人一人が社会的に自立し、未来を切り開いていく力を育成することが重要であります。
 そのため、都教育委員会は、学校が育成すべき生徒の資質、能力を明確にし、教育活動全体の指導計画の改善充実を図ることができるよう、今年度、カリキュラムマネジメント推進校を指定いたしました。
 今後、推進校の成果を踏まえ、全管理職対象の説明会を開催し、カリキュラムマネジメントの意義について周知を図るとともに、各校が次代を担う生徒に必要な資質、能力の育成を具現化する実行プランを作成できるようにするなど、全都立高校の取り組みを支援してまいります。
 次に、アクティブラーニングの推進についてでありますが、生徒の思考力、判断力、表現力等を育成するためには、生徒が主体的に考察し、他の生徒や教員等と対話をして考えを深めたり広げたりするアクティブラーニングの視点からの授業改善を図ることが重要でございます。
 これまで都教育委員会は、アクティブラーニング推進校三十校を指定し、それらの学校における授業の映像をおさめたDVDや成果をまとめた報告書を全都立高校に配布するとともに、各校の教員を対象として、推進校のすぐれた事例を紹介する報告会を開催してまいりました。
 今後、これらの取り組みをもとに、全都立高校で実施している校内研修や公開授業等において指導助言を行うなどして、全教員がアクティブラーニングの視点からの授業改善を一層図ることができるよう支援をしてまいります。
 次に、検定試験等を活用した英語教育についてでありますが、生徒の英語力を向上させるためには、聞く、話す、読む、書くの四技能をバランスよく指導するとともに、適切に評価する必要があることから、教員による評価に加え、外部機関の資格、検定試験により、客観的、相対的な到達度を把握することが有効でございます。
 そのため、都教育委員会は、東京グローバル10及び英語教育推進校の合わせて五十校において、各校の指定する学年の生徒全員が四技能の資格、検定試験を受験できるよう支援しております。
 今後も、こうした資格、検定試験を活用することで、生徒に目標を持たせ、学習意欲を高めるとともに、各校における試験結果の分析に基づく授業改善を一層促進することにより、生徒の英語力をさらに伸長させてまいります。
 次に、英語の会話力を伸ばす教育の充実についてでございますが、英語で聞く、話す能力を伸長するには、外国人と直接英語を使ってコミュニケーションを図る経験をふやしていくことが有効でございます。
 このため、都教育委員会は、全ての都立高校等にJET青年などの外国人指導者を配置し、生徒が三年間を通して、授業中に外国人から指導を受けられる環境を整備しております。
 また、一部の都立高校では、インターネットを通じて海外の外国人指導者と直接会話できるオンライン英会話や、授業以外でもJET青年と時事問題や身近な話題のディスカッションを行うプロジェクトを実施するなどして、体験的に英語を使う場面を拡充しております。
 今後とも、外国人指導者の積極的な活用により、生徒の英語による会話力を一層伸長させてまいります。
 最後に、TOKYO GLOBAL GATEWAY、略してTGGにおける取り組みについてでございますが、TGGでは、児童生徒が主体的に考え、自分の意見を英語で話すことができるようさまざまな工夫を凝らした、体験的で実践的な活動を提供してまいります。
 具体的には、児童生徒六人から八人の少人数グループに一人のネーティブスピーカーが常に付き添い、児童生徒にみずから考えさせ、意見を引き出すようサポートいたします。また、児童生徒にとって興味、関心のある題材を発達段階や習熟度に応じて展開し、英語で話し合うことによって課題を解決していく手法を活用してまいります。
 都教育委員会は、児童生徒がTGGでの活動を通じ、将来グローバル社会で臆することなく英語でコミュニケーションを図ることができる力を身につけられるよう、来年九月の開設に向けて着実に準備を進めてまいります。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 公共交通の充実についてでございます。
 人や物の交流を促し、持続的な成長を実現するには、東京の強みである鉄道を生かし、これを充実させていくことが重要でございます。
 国の答申では、国際競争力の強化や質の高い鉄道サービスの実現などに向けたプロジェクトが示され、このうち、羽田空港アクセス線など六路線が事業化に向けた検討や合意形成などを進めるべきとされてございます。
 昨年度から、これらの路線について、鉄道事業者や地元区市など関係者とも連携して、採算性や事業主体の確立、費用負担のあり方についての合意形成などの課題について検討を行ってございます。
 引き続き、関係者とともに、こうした課題の解決に努め、鉄道ネットワークのさらなる充実に取り組んでまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 大江戸線の延伸についてでございますが、交通局では、国の答申等を踏まえ、地元区や都の関係局と連携して事業化に関する検討を進めてございます。
 その中で、事業化に向けた課題といたしまして、地形や地下埋設物などを考慮した駅やトンネルの構造の検討、延伸に必要な車両の留置施設の整備、収支採算性の確保等が必要であるとの認識を共有してございます。
 とりわけ収支採算性につきましては、沿線まちづくりの状況を反映した需要予測等を踏まえ検討を実施しておりますが、さらなる輸送需要の確保に向け、具体的なまちづくりに関するより一層の検討を地元区において進めていく必要があると考えております。
 今後とも、地元区や関係局と連携し、事業化について引き続き検討してまいります。

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