平成二十九年東京都議会会議録第二十号

   午後一時開議

○議長(尾崎大介君) これより本日の会議を開きます。

○議長(尾崎大介君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(尾崎大介君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第二十号、東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例、知事より、東京都公害審査会委員の任命の同意についてがそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(尾崎大介君) 一昨日に引き続き質問を行います。
 四十三番保坂まさひろ君。
〔四十三番保坂まさひろ君登壇〕

○四十三番(保坂まさひろ君) 都民ファーストの会東京都議団保坂まさひろでございます。
 初めに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会についてお伺いします。
 いよいよ来年二月九日より、隣の韓国では平昌冬季五輪大会が開催されます。私は先月、平昌大会会場を視察した際、現地で意見交換をしました江原道副知事や道職員たちからも、アジア三カ国で続く五輪大会のトップバッターとして、何としても成功させ、東京大会につないでいきたいという強い気迫が伝わってきました。
 会場となる平昌郡が属する自治体である江原道は、人口約百五十万人、韓国で唯一、北朝鮮と分断された自治体として、平和五輪を大きく掲げております。ことし九月には、平昌にて日中韓三カ国のスポーツ行政担当相の会談を開き、スポーツ交流を通じて相互理解と信頼を強化し、これを基盤に東アジアの平和共存のため努力するとする平昌宣言が採択されました。
 東京もこれを機会に、五輪開催都市の平昌、北京と未来志向のスポーツ交流、協力といった都市外交を促進していくことを強く望むところであります。
 平昌大会は、東京二〇二〇大会直前の大会でもあり、東京大会を成功させるための実践的な確認ができる最後の機会であります。
 また、東京大会でのパラリンピックの成功は大きな目標ですが、大会直前の運営準備として、パラリンピックで配慮すべき特有のニーズの対応、オリンピックからパラリンピックへのスムーズな移行などについても、さらなる理解を深めるため組織委員会と連携し、組織横断的に知識を共有していくことも重要です。
 平昌大会において、職員を現地へ派遣するなども含め、運営面での最終確認が重要になると考えますが、都の見解を伺います。
 また、平昌大会期間中は、東京二〇二〇大会をさまざまな施策で積極的にPRすることも重要です。リオ大会で実施した東京二〇二〇ジャパンハウスでは、東京、日本のPR、日本選手団の記者会見、レセプションや来賓のおもてなしなどホスピタリティー機能を有した施設で、大変好評だったと聞いております。平昌大会では、ぜひ東京二〇二〇大会の掲げる環境や復興五輪についても、現在施策中の事業なども含めてPRすることも重要だと考えます。
 そこで、平昌大会における東京二〇二〇ジャパンハウスではどのようなPRを行うのか、都の見解を伺います。
 東京二〇二〇大会に向けて、障害者スポーツへの関心が徐々に高まるとともに、パラリンピック競技の人口が拡大すると期待されておりますが、平昌大会においては、オリンピック競技に比べて、パラリンピック競技の人気がなかなか上がらないとの懸念の声も聞いています。
 平昌大会期間中、都内でも日本代表選手応援イベントや、ライブサイトで大会の盛り上げを図っていくことにもなりますが、東京二〇二〇大会に向けてパラリンピック競技のPRこそ重要になると考えますが、都の見解を伺います。
 次に、熊本地震支援での教訓について伺います。
 首都直下型地震による被災者支援の体制づくりは、都の喫緊の課題ともなっています。昨年四月に熊本地震が発生した直後から、都は被災地の要請に基づき、人的支援や物的支援を迅速に実施しました。その際、被災地に派遣された職員の経験や被災自治体へのヒアリングをもとに、平成二十八年熊本地震支援の記録が作成されました。この支援の記録を改めて読み返すと、女性や要配慮者など多様な視点を踏まえた避難所運営のあり方などの課題が明らかにされております。
 こうした課題を踏まえ、熊本地震の被災自治体への支援を通じて得られた教訓は大変貴重なものであり、都の防災対策に反映させ、一層の強化を図るべきと考えますが、都の見解をお伺いします。
 さらに、要配慮者への支援という観点から、熊本地震の支援体制で注目を集めたのが乳児用液体ミルクでありました。小池知事と友好関係にあるフィンランドから、現地乳製品メーカーの販売する乳児用液体ミルク約六千本が特例措置として緊急輸入され、提供を受けた被災地のお母さん方から高い評価を受けたと聞いております。また、利用者のニーズという面では、熊本地震での乳児用液体ミルク利用者の反応など、情報収集や分析も必要です。
 そもそも日本における乳児用液体ミルクの課題は、食品衛生法に基づく乳児用の規格基準が粉ミルクしかないことから、国内で製造、販売ができないことです。厚労省は、事業者団体に長期保存などの安全性のデータを求めておりますが、いまだ実現はしておりません。
 類似例では、国内販売の解禁の可能性が高い常温の豆腐があります。高い製造技術を持つ国内豆腐メーカーが既に海外市場で三十年以上前から販売をしている中、日本においても災害時の緊急物資や時代のニーズを捉えるべく、業界と行政が連携して国内製造販売の実現に向けて取り組んできました。
 こうした例があるだけに、私は、乳児用液体ミルクの国内製造も必ず実現できると確信をしています。
 今後、実効性を高めていくためには、国内製造だけにこだわらず、国内企業と協力して海外商品を輸入することも、検討を始めていくべきと考えます。日本の規格基準に適合した乳飲料として、製造委託契約を海外メーカーと交わし、最低ロット数をほかの自治体と協力しながら共同購入すると同時に、避難訓練でのシミュレーションといった供給体制までつくることも必要です。
 そこで伺います。
 乳児用液体ミルクの利便性は非常に高く、迫りくる首都直下型大地震などの大震災において、赤ちゃんファーストで早期に供給することが必要だと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、都立上野恩賜公園の機能についてお伺いします。
 国立西洋美術館の世界文化遺産登録の決定、上野動物園のパンダの赤ちゃんシャンシャンの誕生、そして東京二〇二〇大会での文化プログラムの拠点となる上野恩賜公園は、国内外からの年間来場者数が約一千六百万人を超え、東京を代表とする文化観光エリアとなっております。
 さらに、上野公園を中心に、上野かいわいや下町情緒が残る谷中、根津、千駄木への来訪者も加えると年間約三千万人にも上り、おもてなしが大きなテーマとなっています。
 都では、これらのエリアに訪れる旅行者に対し、デジタルサイネージなどの整備に取り組むと同時に、公園の整備も進み、歩行者動線などは確保されてきております一方で、上野公園グランドデザイン検討会報告書によると、数ある上野公園の課題として、利用者への情報発信が不十分とされております。さらに増加する国内外からの来訪者にしっかりと対応するためにも、国際観光情報センターのような情報拠点機能は必要不可欠と考えます。
 現状として、公園管理者である都は、これまでも無料Wi-Fiなどの情報入手のための環境整備などを実施しておりますが、まだ十分とはいえません。
 来訪者全体を考慮した、さらなる情報発信とその環境整備が必要であると考えますが、都の見解を伺います。
 首都直下型地震クラスが発生した場合、上野恩賜公園を含む上野駅周辺では、台東区の上野駅周辺滞留者対策推進協議会がまとめた上野駅周辺エリア防災計画によると、約十一万人の滞留者が発生するといわれています。
 特にターミナル駅である上野駅を中心に、東京地下鉄、京成上野駅の一日の平均利用者が六十万人を超える状況で、人的被害が集中し、避難時の混乱、情報の錯綜、一時滞在施設における受け入れ不足、水、トイレの不足なども懸念されております。
 なお、上野恩賜公園は、周辺地域の住民にとっての広域避難場所でもあることから、防災公園としての役割は大変重要であり、膨大な数の帰宅困難者や避難者を守るためには、備蓄や本部機能を備えた防災センターの整備を検討する必要もあると考えます。
 現状の防災設備は、応急給水槽や防災トイレなどはありますが、非常用発電設備がない上、防災設備は山上に集中し、山下の不忍池周辺は十分でないという課題もあり、今後は上野恩賜公園の防災機能のさらなる強化がテーマとなってきます。
 そこで、都のパークマネジメントマスタープランにも提起されています地元自治体や関連機関と連携した防災訓練などの充実や、避難場所機能、通信、放送機能、情報提供機能などといった災害対応力を早急に強化していく必要があると考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、産業振興について伺います。
 東京には、世界に誇ることのできる製造業の高い技術があり、さまざまな基礎的な技術によって、数々のすぐれた工業製品が生み出されてきました。
 特にメッキ加工の技術は、航空機、自動車、携帯電話、アクセサリーなど幅広い製品に不可欠な技術となっており、こうした力を持つ都内の中小企業の維持と発展を図ることは、都政として重要な役割であります。
 メッキ加工を初めとする基礎技術を担う会社は、小規模な場合が多く、国際的な競争にさらされるなど、経営の環境は非常に厳しい状況が続いております。個々の企業でも問題の解決に向けて、創意工夫、自助努力を積み重ねてはいるものの、行政と連携して困難の解決を目指すことは、業界団体の切実な要望ともなっております。
 特に、メッキなどの分野は、技術力を生かし生産性を高めるため、設備の更新が重要となっておりますが、資金的にも中小零細の企業では容易ではないのが現実であります。
 また、工場が立地する周囲と折り合いをつけながら稼働するための、ハード面での整備も欠かせません。東京の製造業を支えるための技術の活性化には設備投資などをしっかり行えるよう、都としても支援を進めるべきだと考えます。
 都として、メッキなどの基礎技術を持つ中小企業を支え、その活性化を通じて東京の産業発展につなげていくべきと考えますが、知事の見解をお伺いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 保坂まさひろ議員の一般質問にお答えをいたします。
 私からは、メッキ加工等の都内製造業への支援についてお答えさせていただきます。
 メッキを初めとする基盤技術を持つ中小零細の町工場がすぐれた力を十分に発揮して、さまざまな部品を加工することによってレベルの高い工業製品が生み出されている、そのことはご指摘のとおりであります。
 東京の中小零細の製造業が、人材や資金に制約の多い中で、将来に向けて存続してさらに発展する、そのためには、より付加価値の高い生産品を効率的に供給する設備投資をしっかり行うことが大切であります。
 その一方で、地域社会との間で、騒音、振動などのほか、排水などによって環境面の影響が生じることのないように、配慮の行き届いた施設や装置を備える必要がございます。
 このため、生産性の向上を図りながら、同時に地域の暮らしや環境との調和を目指していく設備投資に対しまして、ものづくり企業の資金負担を軽減する助成の充実を図ってまいります。
 これによりまして、東京の基盤技術を守って産業の発展に結びつけていく所存でございます。
 残余の質問につきましては、関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔オリンピック・パラリンピック準備局長潮田勉君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(潮田勉君) 三点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、平昌大会における運営面での確認についてでありますが、平昌大会は、輸送やボランティアなどの運営について最新の状況を確認し、大会準備に反映させる上で貴重な機会でございます。このため、IOC、IPCなどが現地で開催するオブザーバープログラムに、組織委員会とともに職員を派遣し、実際の大会運営に係る知見を習得するとともに、IOCやIPCと意見交換を行ってまいります。
 とりわけ、パラリンピックにつきましては、会場のアクセシビリティー、ボランティアによる障害者対応、円滑なパラリンピックへの移行など、現地での対応状況や課題を確認する予定でございます。
 さらに、平昌大会の終了後には、IPCとの間で行われるワークショップ等の機会を通じ、得られた成果を最大限活用して、二〇二〇年大会の準備を着実に進めてまいります。
 次に、平昌大会における東京二〇二〇ジャパンハウスについてでございますが、平昌大会にはリオ大会と同様に世界中のメディアや観戦客等が訪れることから、この機を捉えて、世界に次は東京の番だと発信をしていくことは重要であります。
 このため、都は、組織委員会と共同で、アイスアリーナ等の競技会場が集中する江陵オリンピックパーク内に、東京二〇二〇ジャパンハウスを開設いたします。冬季大会の規模を踏まえ、実施内容を十分に精査し、費用対効果の高い運営を行ってまいります。
 具体的には、大会や開催都市東京の魅力のPRに加え、みんなのメダルプロジェクトや復興オリンピック・パラリンピック等の取り組みもしっかりとアピールをしていきます。
 ジャパンハウス等を通じて、二〇二〇年大会に対する世界の関心を高め、大会に向けた機運醸成を図ってまいります。
 最後に、平昌大会を契機としたパラリンピック競技のPRについてでありますが、都は、二〇二〇年大会のパラリンピック会場を満員にすることを目指しまして、パラリンピック競技体験プログラム、NO LIMITS CHALLENGEを初め、さまざまなイベントや取り組みを通じまして、競技の体験やPRに力を入れてまいりました。
 平昌大会の際には、大会への関心が高まる機を捉えまして、都内及び被災県でライブサイトを実施いたします。ライブサイトでは、競技の中継を行うとともに、二〇二〇年大会で実施されるパラリンピック競技の体験やパラリンピアンのトークショー等を通じまして、来場者に競技の迫力やおもしろさを体感していただきます。
 こうした取り組みにより、パラリンピック競技や大会を身近に感じ、一緒に盛り上げていこうという機運を醸成し、大会の成功につなげてまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 熊本地震の教訓と防災対策への反映についてですが、都は、熊本地震への支援を通じ、より甚大な被害が想定される首都直下地震等においても共通の状況が発生するとの認識に立ち、防災対策の実効性向上のための課題等を取りまとめてまいりました。
 避難所運営についても、要配慮者を想定したプライバシー等の確保、女性や子育て世帯など多様な主体の参画、支援物資の準備等、その必要性が確認されております。
 これらを踏まえ、都は、防災市民組織リーダー育成研修の内容充実や新たな防災ブックの作成等、防災対策に要配慮者や女性の視点が反映されるよう取り組んでおります。
 今後とも、熊本地震で得られた教訓を庁内で共有しつつ、組織全体の取り組みへの反映を図ることにより、都の防災力の一層の強化に努めてまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 乳児用液体ミルクに関するご質問にお答えをいたします。
 乳児用液体ミルクは、常温保存が可能で、調乳せずに容器から直接飲むことができ、災害時に非常に有用でございますが、現在我が国では法令上の位置づけがなく、規格基準及び表示許可基準もないため、乳児用と明記して国内での製造、販売や輸入品の販売はできないこととなっております。
 また、海外製品を一般の乳飲料として輸入する場合にも、検疫所での手続やコストなど多くの課題がございます。
 そのため、都は昨年度から、規格基準等の整備を速やかに行うよう、国に対し提案要求しており、九都県市首脳会議を通じても同様の要望を行っております。
 国は、乳児用液体ミルクを国内で製造や販売ができるよう、規格基準等の整備について検討を始めており、都は今後とも提案要求を行ってまいります。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、上野恩賜公園における情報発信等についてでございますが、国内外から多くの来園者を迎える本公園では、園内情報や観光情報等を誰もが容易に得られる環境を整備することが重要でございます。
 これまで、インフォメーションセンターや総合案内板により、園内案内や文化施設の催事情報等を来園者に対して提供してまいりました。また、ホームページやSNSにより園内の情報を広く発信するとともに、Wi-Fiアンテナを四カ所設置し、通信環境を整備してまいりました。
 今後は、案内サインの多言語化やピクトグラムの表記によるわかりやすい情報提供を進めるとともに、Wi-Fiアンテナを増設し、通信環境を改善してまいります。
 引き続き、文化施設や地元区と連携いたしまして積極的な情報発信等に努め、来園者の利便性のさらなる向上を図ってまいります。
 次に、上野恩賜公園の災害対応力の強化についてでございますが、都立公園は、都民の貴重なオープンスペースであり、避難や救出救助活動の拠点として、発災時には重要な役割を担うこととなります。
 本公園は、東京都地域防災計画におきまして避難場所等に位置づけられておりまして、都はこれまで、円滑な避難のために必要な入り口表示灯や地下ピットを備え、断水した場合にも使用できる防災トイレ等を整備してまいりました。
 今後は、公園灯や管理所を停電時にも機能させる非常用発電や蓄電池の設置、避難者等に情報を提供するデジタルサイネージを計画的に整備することとしております。
 引き続き、こうした施設整備とあわせ、地元区や関係機関と連携いたしまして、避難者等の誘導訓練を実施するなど、上野恩賜公園の災害対応力のさらなる向上を図ってまいります。

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