平成二十九年東京都議会会議録第十六号

○副議長(長橋桂一君) 二十九番川松真一朗君。
〔二十九番川松真一朗君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○二十九番(川松真一朗君) 初めに、知事の基本姿勢について伺います。
 一昨日、知事は、新党立ち上げ会見の中で、このたび国政に踏み出さなければいけない理由の一つとして、二〇二〇年大会準備で私が国にブロックされる瞬間があったりする、国に関与してほしい旨の発言をされました。これは具体的にどの場面のどの事象を指していらっしゃるのでしょうか。私は、この発言には、ある種の印象操作を感じました。思いつきで五輪関係者を混乱させてきたのは、知事や特別顧問だというのが私の認識です。より具体的な答弁を求めます。
 次に、築地再開発について伺います。
 先週、小池知事は、築地再開発検討会議のメンバーを公表しましたが、その顔ぶれから、幅広な議論が展開されることが予想されます。
 七月の関係局長会議では、場外市場や浜離宮などの周辺環境を含めた一体的な活用を検討するとしていますが、幅広に議論を展開するのであれば、対象エリアについてもさらに視野を広げて検討すべきではないかと考えます。
 また、開発手法も、民間主導はよいとしても、都が土地所有したままの開発は本当に有利なのか。きょうは、これらの点について具体的に論じさせていただきます。
 ご承知のように、築地市場用地は、築地川を挟んで浜離宮恩賜庭園に面し、近隣には、国内でも数少ない可動橋として名をはせた勝鬨橋があるなど、周辺にはさまざまなポテンシャルが存在し、東京の歴史と未来を語るにふさわしい土地であります。
 その中で私が注目しているのは、都バスの終点にもなっています豊海水産埠頭のエリアであります。また、隅田川を挟んで向かいにあるエリアについて見ても、例えば月島埠頭付近はレインボーブリッジを見渡せ、東京の夜景を見ることができる人気スポットとなっています。
 そして、豊海水産埠頭のエリアには、築地市場が近いこともあってか、水産関係の冷蔵施設が林立しています。折しもウィーン条約やモントリオール議定書に基づく、いわゆるフロン排出抑制法等により、二〇二〇年までに特定フロンガスの生産が廃止される中で、冷媒改革の大きな波が冷蔵庫業界を覆っています。このエリアは、臨港地区の漁港区に指定されており、今は開発ができない状態にありますが、今後、何らかの動きが出てくることもあり得ます。
 いずれにしても、都心の貴重な一等地である築地再開発の検討に当たっては、二十三ヘクタールという築地市場跡地のみにとどまるのではなく、より広い地域を視野に入れて検討を進めていくべきであると考えますが、都の見解を伺います。
 さて、築地市場のこの用地利用について、私は疑問に思っていることがございました。それは、土地は都が持ち続けて民間主導で再開発を行うことと、民間に売却して再開発することの違いがどこに出てくるのかということであります。
 そのことの答え、これは月刊誌「Voice」二〇一七年十月号の小池知事のインタビューにありました。この中で小池知事は、土地は一度売却してしまうと、あとはディベロッパーに切り売りされるだけでもとには戻らない、築地を守ることを考えて何が悪いかと述べておられます。
 築地市場用地は、二十三ヘクタールに及ぶ広大な敷地であり、小池知事も銀座至近のすばらしい立地であると認識されております。そして、その土地について、これまで利用計画を論じてきた人々の頭には、切り売りするという発想はみじんもなかったはずです。私も常識的な線を超えている考えに驚きを隠せません。
 これまで広大な土地が東京で使用されることになった事例では、国鉄清算事業団用地がございます。このときに、民間に売却されたものとそうでないものを比較すると、売却されなかった土地が、その後、目的ごとに区画を割って別の地主が所有するに至っています。つまり、小池知事が避けたいと思っている切り売りは、公有地であり続けることの方が発生する可能性は高くなるのではないかというのが私の考えです。
 西国分寺駅前の総合整備事業を見ると、こちらは築地の土地と同じ二十三ヘクタールで、民間には売却されませんでした。その結果、各事業体で土地が区割りされ、整理されています。
 一方で、ほかの再開発事業を見ると、六本木ヒルズやミッドタウンなど、できるだけ広く所有して大規模な再開発を進めて、価値を高めているわけでございます。
 また、別の視点でも、民有地となれば固定資産税など税負担が発生しますが、これを見込んで、それを大きく上回る価値を毎年生み出し、再開発期間も短縮して早期に回収しようと、民間地主は考えるに違いありません。その考え方が再開発の基本に流れていると思っています。
 ご承知のとおり、二十三区内の固定資産税は都が徴収者ですから、築地が都有地である限り固定資産税はかかりません。そのため、税負担を賄い、付加価値を生み出していこうとするインセンティブは当然薄れ、再開発がおくれ、価値を生み出す時期が十年後になろうと、都の支出が抑えられるため、都が困ることはありません。これは、ある意味でワイズスペンディングとはいえるでしょう。
 しかし、再開発に伴う収入、つまり固定資産税なり、再開発に伴う収益なりをみすみす逃すことになるわけです。再開発に向けた時間を無駄にし、収益機会を逃し、莫大な機会損失をこうむる可能性があるにもかかわらず、何がワイズスペンディングと呼べるのでしょうか。
 壮大なプロジェクトを早期に実現するインセンティブは、築地の土地が民有地となり、民間主導で再開発を進める状況があって初めて実現するもので、そうした視点を織り込んで築地再開発検討会議を進めるべきです。
 そこで、小池知事におかれては、なぜ築地の土地を民間に売却すると切り売りされてしまうと考えるに至ったのか、その根拠をお示しいただくとともに、これは知事自身のお考えか、東京都顧問など、どなたかの意見を参考にした上でのお考えか、知事の所見を伺います。
 かつて東京は水の都と呼ばれ、隅田川を初めとする河川は、文化や経済、生活の中心でありました。そして、臨海部の開発も進み、都心と結ぶ大動脈の一つとなり得るポテンシャルがあります。
 このたび、突然に小池知事が築地再開発検討会議を打ち出しましたが、実は、小池知事誕生前から、築地市場跡地には、川まちづくりの拠点をつくる構想があり、私は新時代の隅田川の未来像に思いを寄せてきたところであります。
 現在でも、隅田川沿いの浅草や両国などは、東京の魅力を発信する観光の拠点となっており、海外からも多くの人々が訪れています。東京都では、昨年末に策定した実行プランにおいて、こういった地区をにぎわい誘導エリアに設定するなど、隅田川を軸として、水辺のにぎわい創出を目指しています。中でも、私の地元である両国には、二〇二〇年大会でボクシング会場となる国技館があり、江戸東京博物館を中心に、文化施設の集積地となっています。
 そこで、隅田川における水辺のにぎわいづくりについて、都の取り組みを伺います。
 小池知事も参加されたリオデジャネイロ・パラリンピック閉会式、ハンドオーバーセレモニーにおいて、「東京は夜の七時」という名曲とともに登場した視覚障害者である檜山晃さんによれば、東京は夏の夜が最高、原宿駅をおりると、明治神宮の深い緑のにおいが届き、東京が自然豊かな都市とわかるとのことです。ダイバーシティーの実現という意味で、私はこのお話を重要視しています。
 改めて今、一九六四年から二〇二〇年を超えるという観点で、六四年のレガシーも多い都立公園の緑のにおいが広がる環境整備を望みます。
 江戸時代は、私の地元墨田区の英雄である葛飾北斎が浮世絵で江戸の魅力を発信いたしました。今は、SNSですぐに発信できる時代で、富士山を眺められる都立公園もあります。現代の北斎を生むような、インスタばえする都立公園を要望しておきます。
 二〇二〇年大会は、皆様ご承知のとおり、真夏の大会です。ところが、日本伝統種の夏の草花を考えると、アサガオやキキョウくらいしかありません。そこで、産業労働局では、真夏の草花を研究しているとのことです。私は、おもてなしの視点から、大会会場やライブサイトとなる可能性が高い都立公園を草花で覆うべきと考えます。
 また、海外からの利用者のためにも、園内の公共Wi-Fi環境の充実や多言語対応は必要と考えますが、今後の都立公園における外国人旅行者に対するおもてなしについて、都の見解を伺います。
 二〇二〇年大会まであと三年となりました。この大会は、スポーツの祭典だけでなく、オリンピック憲章でうたわれる文化の祭典でもあります。私は、東京大会を機に、一人でも多くの方に、東京のすばらしい文化を知っていただきたいと思い続けています。
 去年のリオデジャネイロ大会終了後から本格的に始まった東京文化プログラム事業も、その取り組み自体はすばらしいことではありますが、実際には、都民への浸透度は低いのが現実です。世界で一番の文化を国内外へ力強く伝えていくため、文化プログラムを外国の方々にもわかりやすくPRに工夫をし、ムーブメントとして盛り上げていくべきではないでしょうか。
 特に私は、今こそ、これまで文化に触れる機会のあった方もなかった方も、各文化に触れていくべきと考えます。
 持続発展可能な都市東京を実現するためには、どうも心に余裕がない現代のストレス社会を脱していくことが肝要です。ITを中心に情報があふれ出て、あくせくしている社会環境におけるワークライフバランス実現に向けても、余暇を楽しむことが重要で、首都東京に集まる本物の絵画や音楽、演劇、伝統芸能などに触れることができる東京文化プログラムのさらなる充実を切に願うものであります。
 二〇年大会の開催都市の現在のリーダーとして、残り三年間で文化プログラムの取り組みをどのように強化していこうと考えているのか、知事の所見を伺い、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
〔傍聴席にて発言する者あり〕

○議長(尾崎大介君) 傍聴人は静粛に願います。
〔傍聴席にて発言する者あり〕

○議長(尾崎大介君) そこの傍聴人の方、退場を命じます。
〔傍聴席にて発言する者あり〕

○議長(尾崎大介君) 退場を命じます。
〔傍聴席にて発言する者あり〕

○議長(尾崎大介君) 退場を命じていますよ、傍聴人の方。
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 川松真一朗議員の一般質問にお答えをさせていただきます。
 私には三問、ご質問がございました。
 まず、大会準備に対しての私の発言についてのご質問でございます。
 世界中が注目する国際的なイベントでございます。オールジャパンで盛り上げて成功させるため、都は、大会の役割分担、そして経費の分担に関しまして、組織委員会、国、関係自治体との協議を主導して、オールジャパンの体制を準備してまいりました。
 また、日本全体におけます一層の機運醸成に向けて、フラッグツアーの全国巡回、そして、ホストシティTokyoプロジェクトのさらなる展開などに取り組むことといたしております。こうした取り組みを通じまして、誰もがやってよかった、そう思える大会を実現して、その先の日本のさらなる発展にもつなげていかなければなりません。
 開催都市の長、さらには首都の長として、そうした決意を強く抱く一方で、国には、もっと全面的に大会にかかわっていただきたい、マリオとして出演するだけでなくて、もっとかかわっていただきたい、この流れをより確実なものにすることができるはずであると率直に思っております。この先日の発言はそうした思いを吐露したものでございます。
 今後、組織委員会、国、関係自治体との連携を一層深めて、都民、国民の皆様とともに、世界的な祝祭を大いに盛り上げることによって、二度目のオリンピック・パラリンピックを大成功に導いて、東京、日本の持続的な成長へとつなげてまいりたいと考えております。
 築地に関する私の発言、もしくは、そこでの記載についてのご質問でございました。
 私は、築地が長年培ってきた魅力的な歴史や文化、さらには世界への発信力をこれからの東京の持続的な成長に生かしていくことこそ、未来に責任を持つ都知事としてなすべきことだと考えております。そのための議論を進めていくのが、ご指摘のございました築地再開発検討会議でございます。
 そして、築地の土地を単純に民間に売却すれば、都として主体的に再開発にかかわることができなくなり、知事として未来への責任を果たすことにはならないと考え、その雑誌での発言とつながったわけでございます。そのような道はとるべきではないとの私自身の思いをわかりやすく表現させていただきました。
 築地ブランドや築地エリアが有するポテンシャルを最大限に活用しながら、引き続き築地が世界に誇る東京の宝物として輝きを保つように、知事として責任を持って再開発に取り組んでいく決意でございます。
 文化プログラムの取り組みの強化についてのご質問がございました。
 二〇二〇年大会を文化の面でも盛り上げて、大会の成功につなげていくには、東京、日本の芸術文化の魅力をより多くの人に届けていくことがご指摘のように重要でございます。
 都におきましては、リオ大会において、東京キャラバン、TURNを実施いたしまして、それ以降も民間など、さまざまな主体を巻き込みながら、六本木アートナイト、東京大茶会など、多種多様な東京文化プログラムを展開しているところでございます。
 より認知度を高めて、世界中に東京、日本のファンをふやす、そして訴求力の強い、さらなる工夫をしていかなければならない。
 そこで、今後、多くの人々の参加や、誰もが楽しめるプログラムを一層充実していくために、伝統文化はもちろんのこと、先端技術を活用した取り組みなども積極的に取り入れていく。そのために、インパクトとエンターテインメント性のあるイベントを実施していくべきと考えております。
 さらに、こうしたコンテンツの拡充に加えまして、多彩な文化プログラムを国内外に力強くアピールしていくために、ホストシティTokyoプロジェクトにおきまして、具体的なPRの仕掛けを検討しているところでございます。
 引き続き、私自身が先頭に立ちまして、東京の魅力発信を行ってまいる所存でございます。
 その他のご質問につきまして、東京都技監及び建設局長からの答弁とさせていただきます。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 築地再開発についてでございます。
 築地は、築地エリアが有する食文化、浜離宮の景観、水辺の魅力など、さまざまなポテンシャルを有してございます。
 また、近接する東京駅周辺や環状第二号線でつながる虎ノ門駅周辺、あるいは臨海部などで、現在、首都東京の成長を支える拠点機能の充実強化に向けたさまざまな開発プロジェクトが進められてございます。
 こうした周辺のまちづくりの動向も視野に入れながら、築地のまちの魅力と付加価値をそれぞれ高め、東京の持続的な成長にとってよりよいものとなるよう、しっかりとした検討を行う必要がございます。
 来月立ち上げる検討会議では、自由な発想で、幅広い観点からご議論いただき、それを踏まえ、ステップを踏みながら、開発コンセプト等を具体化してまいります。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、隅田川における水辺のにぎわいづくりについてでございますが、隅田川は、東京の魅力を高める上で重要な河川でございまして、都はこれまで、緑豊かで水辺に親しめるスーパー堤防やテラスの整備を進めてまいりました。
 また、規制緩和によりまして、水辺で飲食が楽しめる、かわてらすを誘導いたしますとともに、橋梁のライトアップやテラスの夜間照明など、夜の水辺に彩りを添え、人々が集い、散策できるよう取り組んでまいりました。
 今後は、両国において、川とまちをつなぐ魅力ある水辺空間となります両国リバーセンターを整備いたします。
 具体的には、墨田区と連携いたしまして、都と区の保有する公有地に民間活力を導入したホテルやレストランを有する複合施設を設置するほか、水上ルートの拡大など、舟運の活性化に資する防災船着き場、スーパー堤防を一体的に整備いたします。
 引き続き、さまざまな取り組みを推進し、にぎわいの創出を図ってまいります。
 次に、都立公園における外国人旅行者に対するおもてなしの取り組みについてでございますが、二〇二〇年東京大会に向けまして、外国人旅行者が都立公園で快適に過ごすことができますよう、環境を整えていくことは重要でございます。
 そのため、今年度から、多くの外国人旅行者が訪れます上野恩賜公園などでWi-Fiのアクセスポイントを増設いたしますとともに、競技会場等となります公園、動物園や文化財庭園で多言語対応の案内サインを整備し、利便性の向上を図ってまいります。
 また、大会開催に合わせまして、世界中から訪れる多くの方々を華やかに迎えるため、花壇づくりやハンギングバスケットによる園路の装飾にも取り組みまして、花や緑によるおもてなしを提供してまいります。

○議長(尾崎大介君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後五時五分休憩

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