平成二十九年東京都議会会議録第十六号

○議長(尾崎大介君) 十七番うすい浩一君。
〔十七番うすい浩一君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○十七番(うすい浩一君) 初めに、認知症対策について質問します。
 厚生労働省の推計によると、二〇二五年には、六十五歳以上の高齢者のうち、認知症の人は約七百万人に上り、五人に一人が罹患するといわれております。
 私もこれまで、認知症の方を抱える家族などから多くの相談を受けてまいりましたが、家族の負担ははかり知れないものがあります。
 現在、国では、認知症総合戦略である新オレンジプランをもとに対策を講じ、都としても、区市町村や関係機関と連携し、さまざまな認知症対策を推進しているところであります。
 しかし、根本的な治療法はいまだ開発中であり、施設や介護人材の不足等を含めて、なお一層の認知症対策の強化が急務であります。
 その大きな柱として、認知症に罹患する方の低減に視点を据えた、発症前の予防と早期発見、早期治療に重点を置いて対策を講じていく必要があります。
 発症前の状態である軽度認知障害、いわゆるMCIは、健常者と認知症の中間の状態であり、日常生活に支障はないものの、放置をすると約五年でその半数以上が認知症に進行するといわれています。最近の研究では、MCIの段階で適切な予防や治療を行えば、認知症の発症を防げることやおくらせることができることがわかっています。
 現在、血液から十三種類のがんの有無を同時に診断できる検査法が開発されておりますが、同様に、MCIの兆候を早期に発見できる血液検査を導入している医療機関もあり、注目されています。
 国のエビデンスが示された後、例えば、年齢を決めて各自治体が行っている特定健診のときに同時に検査を行えば、早期発見に極めて有効な手段の一つと考えます。
 今後、こうした取り組みを含めて総合的に対策を構築し、認知症の疑いのある方の早期発見や適切な診断、治療につなげていくことが重要と考えます。知事の所見を求めます。
 また、認知症の症状は、認知症の直接の原因である脳の細胞が損傷を受けることで起こる中核症状と、周囲の人とのかかわりの中で起こる行動心理症状との二つに分けられます。後者の行動心理症状の方がより介護者を悩ませ、ケアが不適切な場合は症状が急速に悪化することもあるといわれております。
 このため、感情が高ぶっている場合は、目と目を合わせてゆっくりと話をしたり、好きな音楽を聞かせて落ちつかせるなど、行動心理症状に的確に対応することが重要といわれております。そのため、医療、介護の専門職の育成が急務と考えます。都の所見を求めます。
 さらに、アルツハイマー型認知症のほぼ半数の方の症状として、財布をとられたなどの妄想の言動が出て、介護者を悩ませるといわれております。しかし、認知症の症状であることを理解していれば、家族や介護者を初め、近隣住民の方々も余裕を持って対応できます。
 住みなれた地域で認知症の方と家族が安心して暮らせるように、認知症対応で心強い存在となっているとうきょう認知症ナビを充実強化するなど、都民の認知症への理解をさらに進めていくべきと考えます。都の所見を求めます。
 次に、ユニバーサルデザインとバリアフリーについて質問します。
 ユニバーサルデザインとバリアフリーは、全ての人に平等な社会参加の実現を目指す点では同じであります。
 しかし、バリアの存在を前提として、その除去を行うのがバリアフリーであるのに対し、ユニバーサルデザインは、初めからバリアという発想を念頭に置かず、年齢、性別、国籍、人種等にかかわらず、誰もが気持ちよく使えるように、あらかじめ都市や生活環境を計画する考え方であります。
 平成二十八年の都の調査では、ユニバーサルデザインの認知度は、以前から言葉も意味も知っていたと答えた人は三二%にとどまり、まだまだ認知度が低いのが現実であります。したがって、高齢者や障害者がまちの中でどんなことで困っているのか、あるいはどんなことに暮らしにくさを感じているのかなどを都民に知ってもらい、理解を広げていく取り組みが必要です。
 都は、地域住民や次世代を担う子供たちに対するユニバーサルデザインの普及啓発をさらに促進していくべきと考えますが、見解を求めます。
 ユニバーサルデザインの普及は、二〇二〇東京大会を大きな節目とし、高齢者や障害者の方々が暮らしやすい福祉のまちづくりをレガシーとして捉えていくことが重要と考えます。
 そこで、都は、平成三十一年度から始まる次期東京都福祉のまちづくり推進計画の中に、高齢者や障害者の視点を入れた施設整備を取り入れるなど、ユニバーサルデザインのまちづくりを進めていくべきと考えます。見解を求めます。
 また、最近、高齢者がエスカレーターで転倒し、けがをする事故がふえています。商業施設や公共施設等に設置されているエスカレーターで転倒が発生すると、大勢の人が巻き込まれる重大事故につながりかねません。
 その防止策として、エスカレーターを利用する際は手すりにつかまることが大切です。手すりに、エスカレーターでの転倒事故を防止するため、手すりにおつかまりくださいなどと記載したシールを手すり部分に張っているものを見かけることがあります。
 例えば、東京メトロでは、駅のエスカレーターの手すりに転倒防止対策のシールを張りつけ、しかも、利用者の衛生面の不安を感じる心理的バリアに対応した抗菌タイプのシールを採用するなど、整備を進めております。
 しかし、都営地下鉄では、こうした取り組みが進んでおりません。都営地下鉄駅のエスカレーターにおいても同様の対策を講じるべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、大規模水害対策について質問します。
 国は、荒川の決壊による大規模な水害から人命を守るために、荒川下流河川事務所が主体となり、足立区、北区、板橋区及び関係機関と連携し、発災時の行政、関係機関等の動きを整理した荒川下流タイムライン(試行案)を作成するなど、さまざまな取り組みを実施しています。
 一方、人的被害を防ぐには、自治体の境界を越えて、住民をより安全な地域に避難させることも想定しておかなければなりません。このため、国や都が管理する河川の流域に位置する自治体はもとより、隣接自治体が連携して対応する広域的避難の体制づくりが不可欠です。
 都はその調整役として機能を果たすべきと考えますが、見解を求めます。
 また、洪水時に被害を最小限に抑えるためには、住民が地域特性を理解し、水害リスクを正しく認識しておくことが重要です。水害リスクを正しく認識することで、例えば町会、自治会などの自主防災単位においてマイタイムラインを作成し、自主的に避難できる体制をつくることができます。
 そこで、都が区と連携して水害リスクの認識をより向上させていく取り組みが必要と考えますが、見解を求めます。
 次に、日暮里・舎人ライナーにおける車内の迷惑行為防止策について質問します。
 私の地元足立区内を走る日暮里・舎人ライナーは、平成二十年に開業して以来、都心と区の西部地域を結ぶ足として、多くの住民が利用しています。
 しかし、日暮里・舎人ライナーは自動運転システムで運行しており、車内に非常通報器などの連絡手段があるものの、痴漢行為や盗撮などの迷惑行為で不快な思いをしても、直接駅へ訴えにくいという事情があります。このため、利用者からは迷惑行為防止の強化を求める声が私のもとに強く寄せられております。
 利用者が安心して乗車できるように、交通局は警視庁と連携を密にしながら、迷惑行為対策を講じるべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、日暮里・舎人ライナーの沿線にある都立舎人公園の整備について質問します。
 舎人公園は、都内屈指の規模と美しい自然を誇る総合公園です。訪れた多くの来園者が、自然空間の中で食事を楽しみ、満足感が得られるようにするために、駒沢公園のように、民間との連携でレストランを整備すべきです。
 本年五月の東京都公園審議会での都立公園の多面的な活用の推進方策についての答申には、これまで都立公園を利用していない人をも引きつける、充実感、満足感が得られる質の高い場を提供するには、これまで以上に民間のアイデア、ノウハウの活用を通じて、官民の連携、協働を深めていく必要があるとあります。
 都民のニーズに対応していくため、新たなにぎわいを創出するなど、都立公園の活用を進めるべきと考えます。都の見解を求めます。
 私は、足立区議のときに、本会議等の議会質問で、同公園内のフィールドアスレチックやバードサンクチュアリーの整備、さらには陸上競技場の夜間照明の設置を求めてまいりました。多くの区民、都民がその実現を楽しみにしております。
 今後の整備スケジュールについて見解を求め、質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) うすい浩一議員の一般質問にお答えさせていただきます。
 まず、認知症対策についてのご質問、一問いただいております。
 お話のとおり、認知症は、早く気づいて、そして治療を開始すれば、進行をおくらせたり、また病状を改善させることも可能と聞いております。早期に発見をして、対応することが何よりも重要ということでございます。
 そのため、都は現在、区市町村ごとに鑑別診断や専門の医療相談に対応できる認知症の疾患医療センターの設置を進めておりまして、現在、五十一の医療機関を指定いたしております。
 また、拠点となります十二のセンターにおきましては、医師、看護師から成るアウトリーチチームを設置して、認知症の疑いのあります高齢者のお宅を訪問し、早期に医療や必要なサービスにつなげる取り組みを進めております。区市町村が設置する認知症初期集中支援チームに対しましても、訪問支援のノウハウを提供するなどいたしまして、早期対応の取り組みを支援しているところでございます。
 二〇二五年には、何らかの認知症の症状を有する高齢者は、都内で五十六万人に達するという推計がございます。認知症対策は、都が取り組むべき重要な課題と認識しております。
 今後、認知症施策のさらなる充実を図っていく、そして、認知症の方とそのご家族が地域で安心して暮らすことができる東京を実現してまいります。
 その他のご質問につきましては、関係局長よりの答弁とさせていただきます。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えをいたします。
 まず、認知症に係る医療、介護の専門職の育成でありますが、都は、認知症ケアに従事する医療従事者等の研修拠点として、東京都健康長寿医療センターに認知症支援推進センターを設置し、認知症サポート医や認知症支援コーディネーターなどの専門職のスキルアップを図っております。
 また、高齢者に身近なかかりつけ医や看護師、介護事業所の職員を対象に、認証の方への適切なケアの確保に向けた研修を実施しております。
 さらに、現在、東京都医学総合研究所の知見を活用しまして、介護事業所等の職員が行動心理症状へ適切に対応できる支援手法の開発を進めております。こうした取り組みを通じまして、医療、介護の専門職の認知症対応力向上を図ってまいります。
 次に、認知症への理解を進めるための取り組みについてでありますが、都は、認知症の疑いを家庭で簡単に確認できるチェックリストや相談窓口等を掲載したパンフレット、知って安心認知症の配布、認知症の基礎知識等を紹介した専門のポータルサイト、とうきょう認知症ナビ等を通じまして、広く認知症の理解を促進してまいりました。
 本年十二月には、このポータルサイトの画面上でチェックリストの項目を入力すると、自動的に集計結果が表示されるよう、サイトをリニューアルしてまいります。
 また、都民がアクセスしやすいよう、スマートフォンにも対応できるようにするなど、今後とも、認知症に関する情報発信を進めてまいります。
 次に、ユニバーサルデザインの普及啓発についてでありますが、都は現在、ユニバーサルデザインへの理解を深めるため、小中学校における体験学習や地域住民向けワークショップの開催、地域において行政と協働して活動する福祉のまちづくりサポーターの養成、事業者への研修の実施などに取り組みます区市町村を包括補助で支援をしております。
 また、こうした取り組みをさらに広げていくため、効果的な取り組み事例を紹介をしたガイドラインを作成、配布しておりまして、今年度は、車椅子の使用者や視覚障害者等の障害特性などを踏まえた配慮や支援内容を盛り込んだプログラムの作成を進めております。
 今後とも、区市町村や事業者と連携したユニバーサルデザインの普及啓発に積極的に取り組んでまいります。
 最後に、ユニバーサルデザインのまちづくりについてでありますが、都は現在、福祉のまちづくり推進協議会において、これまでの福祉のまちづくりの進展を踏まえた、より望ましい整備等の方向性について検討を進めております。
 その中では、施設整備マニュアルの改定に向けまして、競技場などで車椅子使用者が観覧しやすいサイトラインを確保するなど、二〇二〇年東京大会のアクセシビリティ・ガイドライン等を踏まえた整備内容の見直しや、高齢者や障害者などの当事者が参加して行う施設整備の推進が議論をされております。
 今後、ユニバーサルデザインのまちづくりをさらに進めるため、こうした議論を、平成三十一年四月に改定予定の福祉のまちづくり推進計画に反映させる考えでございます。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都営地下鉄駅のエスカレーターの転倒防止対策についてでございますが、都営地下鉄では、お客様にエスカレーターを安全にご利用いただけますよう、ポスターの掲出等による、みんなで手すりにつかまろうキャンペーンを鉄道各社等と共同して毎年実施しておりますとともに、駅の構内放送を通じて注意喚起を行ってございます。
 お話のエスカレーターの手すりへの転倒防止対策シールの張りつけにつきましては、シールの剥離による機器トラブルや張りかえコスト等の課題がございますことから、今後、シールの試験施工を実施いたしまして、これらの課題や手すり利用の改善効果等につきまして検証してまいります。
 これらを通じまして、引き続き、エスカレーターの転倒防止対策に取り組んでまいります。
 次に、日暮里・舎人ライナーの迷惑行為対策についてでございますが、交通局では、これまでもお客様に安心してご利用いただくため、鉄道各社及び警察と連携いたしまして、痴漢撲滅キャンペーンを毎年実施しておりますとともに、暴力行為防止ポスターを掲出するなど、迷惑行為の防止に努めてございます。
 また、平成二十七年度から導入いたしました新型車両には、車内防犯カメラを設置いたしますとともに、防犯カメラ作動中と記載したステッカーをあわせて張ることで、迷惑行為の未然防止を図っております。
 今後はさらに、全駅の改札口付近にございます列車の運行情報等を提供するディスプレーや新型車両の車内液晶モニターも活用いたしまして、迷惑行為の防止を呼びかけてまいります。
 こうした取り組みを通じまして、警察とも連携しながら、引き続き安心してご利用いただけますよう努めてまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、大規模水害における広域的避難についてですが、大規模水害が発生した場合において、都民の命を守るためには、あらかじめ自治体の区域を越えて住民が避難できる体制を構築しておくことが重要でございます。
 このため、東京都地域防災計画において、広域的な立場から、都は、避難者受け入れに関する都内自治体間の調整、都県境を越える避難も想定した近隣自治体との協議などの役割を担うこととしております。
 現在、都は、国の中央防災会議のもとに設置されたワーキンググループ等に参加し、浸水の範囲や深さ、継続時間などの被害状況に応じた域内、域外避難の優先度や自主避難も含めた適切な避難方法等について検討しております。
 今後とも、国の動向等を踏まえつつ、関係自治体などと連携しながら、大規模水害対策を着実に進めてまいります。
 次に、水害リスクに対する認識の向上についてですが、洪水などの被害を最小限に抑えるためには、住民が地域の水害リスクを正確に認識することが重要でございます。
 都は昨年度から、区と共催で、住民を対象とした水害に関するワークショップを開始しており、今年度は、足立区など三団体で実施しております。このワークショップでは、参加者が地域の地形等の特性に応じた水害リスクを把握し、発災前からの避難行動のタイムラインを作成するなどの取り組みを行っております。
 また、都は、ワークショップを共催した区に対して、その企画、運営の要点をまとめたマニュアルを提供し、当該区独自の啓発活動のさらなる展開を支援しております。
 これらの取り組みを通じて、住民の水害リスクに対する認識をより一層向上させてまいります。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、都立公園の活用についてでございますが、都はこれまで、民間を活用いたしまして、上野恩賜公園のカフェや駒沢オリンピック公園のレストランの導入などを進め、公園の新たなにぎわいを創出してまいりました。
 こうした取り組みに加えまして、本年五月の東京都公園審議会の答申を受け、民間の創意工夫によりまして、公園の魅力を一層高めるモデル事業を実施いたします。現在、対象公園の選定や公募要件等を検討しておりまして、今後、事業採算性や実現性につきまして民間事業者からヒアリングを行います。
 引き続き、都市の貴重な緑を守りながら、公園の多面的な活用に積極的に取り組み、そのポテンシャルを最大限発揮させてまいります。
 次に、舎人公園の整備についてでございますが、本公園は、区部北部に位置します開園面積約六十三ヘクタールの公園でございまして、都民が気軽にスポーツやレジャーを楽しめますよう、野球場や子供たちに人気のじゃぶじゃぶ池などを整備してまいりました。
 陸上競技場におきましては、利用者のニーズに応えるため、平成三十年度の完成に向けまして、新たに夜間照明を設置する工事に今年度着手いたします。
 また、舎人公園駅の南東部に位置するエリアでは、池を中心としました豊かな自然環境を生かしまして、野鳥を観察できるバードサンクチュアリーを平成三十年度、フィールドアスレチックを平成三十一年度の完成を目指してまいります。
 こうした取り組みによりまして、舎人公園の魅力をさらに高めてまいります。

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