平成二十九年東京都議会会議録第十六号

   午後一時開議

○議長(尾崎大介君) これより本日の会議を開きます。

○議長(尾崎大介君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(尾崎大介君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第十六号、東京都小中学校給食費の助成に関する条例外条例一件、知事より、東京都教育委員会委員の任命の同意について外人事案件一件がそれぞれ提出をされました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(尾崎大介君) 昨日に引き続き質問を行います。
 百十一番栗下善行君。
〔百十一番栗下善行君登壇〕

○百十一番(栗下善行君) 初めに、ものづくり支援について伺います。
 かつて日本の高度経済成長を支えた中小ものづくり企業は、近年、厳しい環境に置かれています。二〇〇八年のリーマンショック以降、製造業全体の業績は、為替の影響などにより一進一退を繰り返しつつも、全体としては回復傾向にありますが、中小企業に着目してみると、事業所数、従業者数、出荷額いずれの指標を見ても、縮小傾向に歯どめがかかっておりません。
 オーナーの高齢化や後継者不足といった背景もあり、脈々と受け継がれてきた日本型ものづくりの精神や技術が失われ、将来的な国際競争力低下の大きな要因となることが懸念されています。
 我が国製造業の強さの源泉は、独創的かつ精度の高い部品や製品を生み出す町工場を含めた中小企業であるということは周知の事実であります。近年では、小惑星探査機「はやぶさ」や、この東京のシンボルであるスカイツリー、いずれも中小企業の持つ独自の技術を活用し、最先端のものづくりを実現させ、世界を驚かせてきました。
 リーマンショックは、いっときの不況を生み出しただけではなく、国内製造産業の構造そのものを変容させたとされています。それまでは、大企業の下請としてリクエストどおりの製品をつくれば、まとまった注文のとれた小さな工場も、ドラスティックな経営環境の変化に対応するため、系列企業や下請関係が解消され、新たに販路開拓を求められることとなりました。
 そういった中で、海外にフロンティアを求める中小製造業も数多くあり、二〇一一年以降、みずから輸出を行う中小企業の数はふえ続け、近年では、輸出企業全体の四%弱を占めるようになりました。
 しかし、中小企業庁の最新の調べによれば、日本と同じ技術先進国であるドイツやフランス、スペインでのそれは、いずれも二〇%前後で推移をしております。日本のものづくり中小企業は、いまだ大きなポテンシャルを秘めているとの考えに基づき、以下質問いたします。
 中小ものづくり企業が海外展開する上で最も難しいのは、ビジネスモデルの構築やマーケティングプランの策定であるとの声があります。
 先日、地元大田区から、三度の失敗にも諦めることなく、タイと中国に海外進出を果たし、プラスチック成形装置や静電気除去装置などを輸出する企業の経営者の方に、その実体験を伺ってまいりました。
 ものづくり中小企業の経営者、従業員は、技術者の占める割合が大きいのが一般的であり、マーケティング部門を自社で持てない規模の会社も多いことから、外部からのサポートをより手厚く行っていく必要があります。
 都は、既にその重要性を把握し、海外ワンストップ相談窓口やハンズオン支援といった販路開拓支援を行っていますが、さらに多くのビジネスチャンスに結びつけていくために、特に発展可能性のある産業を抽出し、より具体的なアドバイスを示せるよう充実を図っていくべきではないでしょうか、都の見解を伺います。
 さらに、情報収集や現地サポートの拠点をふやしていくことが支援力の強化につながります。
 現在、海外における販路開拓のサポートについては、東京都中小企業振興公社がタイとインドネシアの二カ国で現地に窓口を設けて行っております。東南アジアにおいては、ほかにもビジネス展開や市場として有望な地域があることから、さらに充実を図っていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 また、中小ものづくり企業の中にも、マネジメントやマーケティングにすぐれた人材の確保がしやすい環境をつくることが重要であります。
 都は、産業技術大学院大学と連携して、ものづくり人材の育成を目的とした講座を展開するなど、社会人として仕事を始めた後も、さらに高いスキルを求めて学習を続けるリカレント教育を推進してきました。昨今は、生産性向上、新サービス開発に特化した講座など、さらに細分化され、その充実も図られてきました。
 中小ものづくり企業の海外展開には、マネジメント、マーケティングなどの各分野に精通したコア人材、そして、これら個別のスキルをインテグレート、つまり複合的に俯瞰して、会社経営の一翼を担う人材が必要であります。そういった視点を踏まえた人材育成の場を充実すべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、羽田空港へのアクセス強化について伺います。
 二〇二〇年東京大会の開催に向けた大幅な機能強化を控え、東京の空の玄関口、羽田空港の担う役割は、今後今まで以上に大きなものとなってまいります。
 首都圏と羽田空港を結ぶ交通網の整備についても重要な課題であり、その中でも、京急蒲田と東急多摩川線蒲田駅、二つの蒲田をつなぐ新空港線、蒲蒲線の整備は、わずか八百メートルを結ぶことによって、東急東横線、東京メトロ副都心線、西武池袋線、東武東上線などとの相互直通運転を可能とし、多くの地域と空港とのアクセスを格段に向上させることから、長きにわたって地元区のみならず、周辺区からも実現が期待されてきました。
 都でも、事業化に向けて検討などを進めるべきとされてきましたが、これまでの都政のもとでは具体化が遅々として進んでこなかった経緯があります。この現状を打破すべく力強く検討を進めていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、MICE施設について伺います。
 二〇二〇年東京大会開催に伴い、東京ビッグサイトの一部がメディア施設として使用され、展示会やイベントへの利用が制限されることから、関連事業者の間には一部不安の声があります。東京ビッグサイトは日本最大の展示場であり、年間三百本の展示会が開催され、都内で二兆円、全国では三兆円の売り上げを生み出しているとされております。
 日本の誇る技術や産業を世界にアピールすることも、二〇二〇年東京大会の大きな意義の一つであり、大会開催によって生まれ得る損失については、最小限に抑えていかなくてはなりません。
 都は、既に占用期間の短縮、仮設展示場の活用、新展示棟の開場を前倒しするなどの対応を予定しておりますが、さらなるスペースの確保、事業者との調整による稼働率の向上など、引き続き可能な限りの努力について行っていくべきであります。都の見解をお伺いいたします。
 また、国内展示会場のキャパシティーについては、日本の経済規模に追いついていないと指摘をされてきました。国内展示場の総面積は、おおよそアメリカの二十分の一、ドイツの十分の一、最近では、国土が四分の一ほどである韓国にも比肩されようとしております。
 一方で、稼働率は他国の水準よりも顕著に高く、特に首都圏においては、慢性的にリソースが逼迫していることから、そこに潜在的な需要が存在していることが見てとれます。
 そこで、こうした施設の現状を踏まえ、都はあらゆる対策を講じていくべきと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
 最後に、ペーパーレス化の取り組みについて伺います。
 昨年、小池百合子知事就任直後に発足をした都政改革本部において、都庁における業務改善の議論が行われ、その中で、ペーパーレス化の推進について具体化が進んでおります。
 IT機器を活用し、紙資料の作成、取り扱いをやめることによって仕事の効率化を進めるペーパーレス化は、既に多くの民間企業などで導入されていることはご承知のとおりですが、都においては、実に十五年以上前から検討されていたにもかかわらず、これまで具体的な議論が進められてきませんでした。
 折しも、今月いっぱいで全庁的に有線ネットワークの設置が完了し、来週の月曜日、十月二日からはペーパーレス強化月間が始まります。各局がペーパーレス化に向けて会議資料をPC上に電子データを映し出す形で行い、会議の電子化率や業務上の課題について把握し、分析していくというものでありますが、効果を上げていくためには、どのような目標を設定するかが大変重要であります。
 具体的にどのような目標を掲げ評価を行おうとしているのか、お伺いいたします。
 ペーパーレスという呼称から、紙資源の保全、コスト削減が第一の目的であるとの受けとめ方をされることもあるこの取り組みですが、紙を電子データに置きかえることで、ほかにもさまざまなメリットが生まれます。
 先日、行政におけるペーパーレス化の先進事例として知られる豊島区役所にお伺いしてまいりました。
 会議で電子データを利用することで、資料に修正が必要になってもその場で対応できる、資料を手渡すために庁内を行き来する時間が減った、また、紙資料を管理する煩雑さから解放され、資料を見失うことがなくなった、検索が行えるので資料を探す時間が短縮されたなどなど、業務効率の向上にも大きな効果があったというお話をお聞きしました。
 都においても、業務効率向上の効果を最大化していくために、電子化のメリットや目指す方向性について明確にしていくことが重要であると考えますが、都の見解を伺います。
 豊島区役所においては、課長級以上の管理職の方は、通常のPCは持たずにタブレットのみ利用、また、無線ネットワークが全ての会議室に整備をされているとのことでありました。
 都においても、タブレットの導入については現在まさに進めている最中とのことでありますが、ネットワーク設備はいまだ有線のものに頼っているのが現状であります。
 新しい働き方を実現する上で必要なICT環境の整備についても、さらに検討を進めていくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 ペーパーレス化については、テレワーク推進への入り口でもあることから、働き方改革に向けた大切なファーストステップであるといえます。豊島区役所においてこの取り組みは、当初、情報管理部門主導で行われたそうでありますが、導入後に、職員の方々から自発的にさまざまなアイデアが提案され、発展的に業務改善が進んでいったそうであります。
 これまでの都庁の常識を時代に合わせ一つ一つアップデートしていく。働き方改革の成否は、まさに都庁職員の皆さんお一人お一人に委ねられているといっても過言ではありません。
 来週から始まるペーパーレス強化月間を前に、皆さんに深くご共有いただく意味でも、最後に、ペーパーレス化推進に向けた知事の決意についてお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 栗下善行議員の一般質問にお答えをさせていただきます。
 ペーパーレス化についてのご質問がございました。
 突き詰めて申し上げますと、ペーパーレス化、その本質は、仕事の進め方の抜本的な見直しでございます。私は、ペーパーレス化こそが、まず、都庁の働き方改革の扉をあける、そんな鍵だというふうに考えております。
 例えば、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を可能にし、育児、介護と仕事の両立も後押しをしますし、またテレワークの推進に当たっては、資料の電子化が欠かせないということになります。
 また、場所が離れている現場とも迅速な情報共有が可能となることや、会議のあり方が見直されるということを通じまして、意思決定のシステムや仕事のスピード感に大きな変化がもたらされます。
 既に昨年度から、各局におきましては、自律改革で、ペーパーレスの取り組みを開始しておりますが、今後は、仕事改革で、職員の意識改革、ICT基盤の整備、都庁BPR、ビジネス・プロセス・リエンジニアリングの略でありますが、BPRの推進による業務プロセスの再構築をあわせて実施することによって、ペーパーレス化への取り組みを加速させてまいります。
 ご指摘ございましたように、こういった取り組みを通じまして、生産性の向上、そして職員のライフワークバランスの実現を図って、都庁から働き方改革を強力に発信をしていきたいと考えております。
 なお、その他のご質問につきましては、東京都技監、関係局長よりのご答弁とさせていただきます。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 新空港線についてでございます。
 国際都市東京の玄関口としての羽田空港の機能を最大限発揮させるためには、鉄道アクセスのさらなる充実を図ることは重要でございます。
 新空港線は、国の答申において、国際競争力の強化に資するプロジェクトの一つとして、事業化に向けて合意形成を進めるべきと位置づけられてございます。昨年度から、地元大田区や鉄道事業者など関係者とも連携し、採算性や費用負担のあり方などの課題について検討を行ってございます。
 引き続き、関係者とともに、このような課題の解決に努めてまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 五点のご質問にお答えいたします。
 初めに、海外市場のマーケティングの支援についてでございますが、都内の中小企業が、経済成長の大きな伸びの見込まれるアジア市場の需要を一層取り込むため、商品のニーズを的確に把握する取り組みが必要でございます。
 現在、都は、中小企業振興公社の相談窓口で、アジア各国の市場に関する情報提供を行いますほか、専門家が具体的な販路の開拓に役立つ助言を行っております。二十七年度には、タイに事務所を設けて、現地の状況をより詳しく調べ、都内の中小企業に伝える取り組みも進めております。
 タイでは、食品関連の産業が有力であり、農産物を加工する機械の導入を予定する会社も多いことから、そうした企業の要望等を、都内のものづくり企業が商談を通じ把握のできる機会を設ける支援を検討してまいります。これにより、都内中小企業の海外マーケティングを支援してまいります。
 次に、海外市場の販路開拓の支援についてでございますが、将来の経済発展が期待できるアジアの各国において、都内の中小企業が幅広く販路の開拓を図るための支援は重要でございます。
 都は、タイ事務所に加え、ジャカルタにも窓口となる拠点をつくり、これらの国の市場に関する情報を収集して、都内の中小企業の販路開拓に役立つアドバイスなどを行っております。
 アジアの中で経済成長の著しいベトナムなどに進出を希望する都内中小企業がふえておりますことから、今後、販路開拓に向けた支援を検討いたします。
 こうした取り組みにより、都内中小企業の海外での活動サポートを着実に進めてまいります。
 次に、中小企業の人材育成についてでございますが、都内の中小企業が国内外での事業の展開を行う上で、経営者を助け、会社の運営の方針を適切に判断できる人材の育成を図ることは重要な取り組みでございます。
 都では現在、製品開発から販路の確保や量産までの一貫した体制づくりを担当する人材の育成支援や、新しいサービスを生み出すためのノウハウやスキルを社員が習得する機会の提供を行っております。また、職場で生産効率を上げるリーダー役の育成や海外市場で販路を開拓する実務を学ぶ講習を実施しているところでございます。
 今後は、中小企業のものづくりやサービス提供の事業について、海外市場での展開を含めてマネジメントの役割を担う人材の育成支援を検討いたします。これにより、中小企業の経営サポートを着実に進めてまいります。
 次に、東京ビッグサイトの利用制約への対応についてでございますが、二〇二〇年大会の開催の年を含め、中小企業が東京ビッグサイトで展示会の場をできる限り確保し、販路の開拓を図っていくことは重要でございます。
 このため、都は、新設する南展示棟の完成を六カ月前倒しし、利用期間を確保いたしますほか、仮設展示場を平成三十一年四月から翌年十一月まで設置をいたします。
 また、大会組織委員会と調整し、西と南の展示棟は、利用制約の期間が二カ月以上短縮され、仮設展示場につきましては、大会期間を含む三十二年七月から九月までの制約期間に関し、新たに一カ月以上の短縮も図ったところでございます。
 今後とも、主催者と十分な調整を行い、展示会等の開催が可能となった期間の中で、ビッグサイトの利用が高まるよう取り組んでまいります。
 最後に、展示会を開催する機会の確保についてでございますが、都内の中小企業が、販路の開拓を図るため、都内で開かれる展示会等で商談を行う機会を確保することは効果的でございます。
 これまで都は、東京ビッグサイトなどの施設において展示会の場を提供し、中小企業の販路開拓を支援しております。展示会に使用する施設を整備し、その維持や更新を行うには多大な経費を要しますことから、中小企業の出展のニーズや費用対効果を十分に検証した上で、必要な施設の整備を進めているところでございます。
 そうした状況の中、中小企業の出展の要望により柔軟に対応できる仕組みも模索し、ITの技術などを活用したビジネスマッチングを行い、商談の機会を生み出す方法も検討し、販路開拓の適切な支援を進めてまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、十月からのペーパーレス化の取り組みについてですが、本年一月の知事予算査定以降、主要な会議で順次タブレット等を活用したペーパーレス化を実施しております。
 こうした取り組みを日常的な会議にも拡大していくため、本庁舎の各会議室においてネットワーク環境の整備を進めるとともに、十月を強化月間として会議のペーパーレス化を促進する取り組みを実施することといたしました。
 強化月間期間中は、ネットワーク環境の整った会議室において、ペーパーレスでの会議を一〇〇%実施することを目標といたします。
 今後、強化月間の取り組みを通じて明らかになった課題を解決していくとともに、各局における年度内の取り組み目標を設定し、都庁全体でペーパーレス化の推進につなげてまいります。
 次に、電子化のメリット等についてですが、紙資源の節約や文書保管スペースの縮小はもとより、業務の効率化に資するため、都はこれまで、業務のシステム化など電子化、ペーパーレス化に取り組んでまいりました。
 さらに近年、ICT技術が急速に発展する中、テレワーク等働き方改革の促進の観点からもペーパーレス化の重要性は増しており、今後、庁内で一層の推進を図ってまいります。
 具体的には、電子掲示板の活用やペーパーレス会議を拡大するなどの取り組みを通じて、職員一人一人の意識改革を促します。さらに、紙、押印による事務処理の見直しや、権限の整理等の制度面も含めた業務プロセスの改善により、都民サービスに一層注力できるよう内部事務の合理化を図り、都庁の生産性を向上させてまいります。
 最後に、ICT環境の整備についてですが、これまで、ペーパーレスの実現はもとより、テレワーク、モバイルワークなど、都庁の新たな働き方改革に資するよう、ICT環境の整備を行ってまいりました。
 タブレットは、この一年余りで新たに約七百台を導入し、各局の現場や本庁部長級以上の職員への配備、さらには外部委員等が参加する審議会等向けに、タブレットを用いたペーパーレス会議システムも導入いたしました。
 あわせて、庁内での打ち合わせや幹部職員への説明などのペーパーレス化に向け、会議室等に職員がパソコンを複数台持ち込めるLAN環境を整えました。
 こうした取り組みも踏まえ、今後進められる働き方改革に向けた検討の中で、新たな働き方を支えるICT環境のあり方についても、さらなる検討を重ねてまいります。

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