平成二十九年東京都議会会議録第八号

○議長(川井しげお君) 六十一番中山信行君。
   〔六十一番中山信行君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○六十一番(中山信行君) 第十九期の東京都議会の締めくくりに当たり、都議会公明党を代表して質問を行います。
 今期、都政は、都民の信頼を大きく裏切る事態に幾たびか陥りました。
 一つは、政治と金の問題です。猪瀬、舛添両知事の相次ぐ辞任の中で、特に舛添前知事は、裏切られたと捨てぜりふを残し都庁を去ったとの報道もありました。しかし、裏切られたのは、あくまで都民、有権者の方であり、信頼して真剣に応援をしてくださった方々の方であります。
 もう一つは、その経緯と理由を明確に説明できる責任者が都庁に一人もいないという豊洲市場の盛り土の問題などであります。
 これらは、まさに都民感覚の欠如が招いた恥ずべき失態、不祥事にほかなりません。
 都議会公明党は、今再び、都民のための都政という原点に立ち返るため、まず隗より始めよの精神で、議員の身を切る改革の断行を決意しました。そして、それを具体化するための条例案を提出し、他会派に賛同を呼びかけた結果、公明案を一字一句も修正することなく全会派一致で可決し、成立させることができました。
 さらに、都議会公明党は、身近な生活の現場で都民の幸せが広がる都政の改革が必要と考え、私立高校の授業料の実質無償化による教育格差の是正や、人に優しいまちづくりとしての公立の小中学校や都立学校のトイレの洋式化、駅のホームドアなどのバリアフリーの推進、身近な公園や通学路での防犯カメラの整備や、区市町村道路における無電柱化の促進、さらには女性の視点に立った防災ブックの作成などを小池知事に直接提案し、本年度の事業に盛り込まれたところであります。
 今後も都議会公明党は、生活者目線での政策提言を重ね、その実現を目指してまいります。
 とりわけ教育支援においては、日本はOECDの加盟国の中で、教育機関への公的支出の割合が最も低く、中所得者層でも教育費の負担が大きな課題となっています。
 国は今年度から、公明党などの推進により、給付型奨学金を導入しており、大学、高校といった高等教育の無償化がやがて本格化していくものと考えます。
 これを踏まえ、二点申し上げます。
 一つは、国に先んじて都が実現した私立高校の授業料の実質無償化では、我が党は今後、年収約九百十万円未満の世帯に拡大を図り、都認可の通信制高校にも適用を広げる等の改善を求めるものであります。
 もう一つは、幼児教育や保育の実質的無償化であります。都議会公明党は、これこそ都における次の課題であると考えます。
 都はこの点でも国に先駆けて、まずは検討を開始するべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 次に、受動喫煙対策について質問します。
 都議会公明党は、スモークフリーの東京を目指す立場から、東京二〇二〇大会でのたばこのない五輪の実現を一貫して主張してまいりました。実際に、受動喫煙に関する都民の意識調査でも、全体の約六六%の人が法的な規制を望んでいます。
 しかし、日本の受動喫煙対策は、WHOが最低レベルと判定しているように、極めておくれた状況にあります。危機感を募らせた東京都の医師会は、受動喫煙の健康被害は子供への影響が大きく、SIDS、乳幼児突然死症候群とも関連すると指摘し、全ての屋内職場を完全禁煙とする罰則つき条例の制定を呼びかけています。しかしながら、国は、いまだ取り組みの方向性が定まらない状況にあります。
 もはや、これ以上の停滞は許されません。都議会公明党には、受動喫煙防止条例案を独自に提出する用意もあります。
 都は、率先して、受動喫煙による健康被害の抑制に向け、屋内を禁煙とする受動喫煙防止条例の制定を急ぐべきであります。知事の見解を求めます。
 次に、難病患者やがん患者の就業支援について質問します。
 都議会公明党は、就労を希望する難病やがんの患者の方々への支援をかねてより求め続けてまいりました。昨年十二月の我が党の予算要望を踏まえ、小池知事が、今年度から、全国で初めて治療と仕事の両立に取り組む企業への支援に踏み込んだ点を高く評価します。
 本制度では、患者の療養状況に応じた職場での配慮を重視し、医師の助言をもとに事業主が従業員と話し合い、個別の支援計画を作成するとしています。
 しかし、専門知識を持たない事業主にとっては、医師の助言を的確に反映した支援計画の作成は容易なことではありません。
 都は、都民や事業主、医療機関への周知に努めて、治療と仕事の両立に役立つ支援計画の作成が進むよう、きめ細やかに推進していくべきと考えます。見解を求めます。
 次に、入札契約制度改革について質問します。
 都は、先般、財務局の発注案件について、最低制限価格を廃止し、低入札価格調査制度の適用拡大を図るなどの改革の方針を明らかにしました。入札契約制度の変更は、公共事業や産業を支える都内の中小零細企業の経営を左右しかねない、極めて重要な問題であります。
 都議会公明党は、今回の都の方針発表を受け、四月十四日に、知事が直接受注事業者から意見、要望を聞く機会を設けることなどを申し入れしました。
 小池知事による三日間で二十六の業界団体からのヒアリングは、まさに我が党の要請に応え実施されたものであります。
 さらに、我が党は同時に、ダンピングや過剰な低価格競争などを心配する中小零細企業の声を踏まえ、低入札価格調査制度の適用範囲の見直しを小池知事に要望しました。
 これを受け、知事は先日の会見で、中小零細企業への影響を最小限に抑えるため、当該調査の適用下限額を、当初案により大幅に引き上げる方針を表明しました。一度発表した内容でありながら、公明党の要望に応え、現場の声をヒアリングし、見直しを行った知事の判断を評価いたします。
 そこでまず、見直しによってどれだけの改善効果が都内の中小零細企業に及ぶことになったのかを具体的に伺います。
 一方、都は、改革の方針の試行を、まずは六月から財務局の契約案件について開始し、次いで、予定価格を事後公表する試行を十月から各局案件で開始するとしています。
 もし仮に、財務局案件の試行を進める中で課題が明らかになった場合には、見切り発車などを行うことなく、各局案件への試行をおくらせてでも、しっかりと対策を講じ、中小零細企業などの現場に混乱が生じないようにするべきであります。知事の見解を求めます。
 次に、住宅政策について質問します。
 まず、子育て世帯についてであります。
 私は、本年の第一回定例会の一般質問で、住宅に困窮する子育て中の世帯が都営住宅に入居しやすくなるよう、収入基準などの入居要件を改善し、応募機会の拡大を図るべきと訴え、前向きな答弁を得たところであります。
 早速、収入基準の改善に関しては、本定例会で、高校修了期の子供のいる世帯にまで特例的な収入基準の適用を拡大する条例案が提案されています。あと残るは、応募機会の拡充であります。若年世代の入居は都営住宅の活性化にもつながります。
 都は、速やかに、子育て世帯の応募機会の拡大を決断し、実施に移すべきと考えます。見解を求めます。
 このたび国土交通省は、我が党の意欲的な要請に応え、住宅セーフティーネット法を改正し、自力での住宅確保が困難な世帯に向けた支援策や、空き家の活用促進に向けたリフォーム助成などを打ち出しました。
 都内でも、入居倍率の高どまりなどから、都営住宅に入居できないでいる住宅困窮者の数は多く、先ほどの子育て世帯のほか、単身の若者世帯や高齢者世帯に向けた住まいの提供策が喫緊の課題となっています。
 民間賃貸住宅における入居支援策においては、こうした方々に向けた入居を拒まない住宅の確保や、低所得者に向けた家賃の低廉化など、国制度の後追いだけではない、都独自の取り組みの強化が必要であります。都の見解を求めます。
 特に高齢者は、賃貸住宅への入居を断られがちです。入院や死亡といった不慮の事態に陥りやすく、家賃収入が途絶えてしまいかねないと危惧されてしまうからであります。
 都は、高齢者等が安心して入居できるように、国の新制度の活用も視野に入れながら、家賃債務の保証料への支援などに乗り出すべきと考えます。見解を求めます。
 次に、都市農業について質問します。
 これまで我が党は、都市農業の振興や農地保全について、農業者の声を踏まえ、国会議員とともに農林水産省や国土交通省と意見交換を重ねてきました。
 その結果、今国会で都市緑地法等の一部を改正する法律案が成立し、都市農地の位置づけを、宅地化すべきものから都市にあるべきものに変更し、農地が新たに緑地に加わることになりました。これまでの経緯を考えますと、今回の改正は都市農業の歴史的な転換点といえます。
 具体的には、例えば生産緑地法の改正では、区市の条例整備により、生産緑地の面積要件を、現行の五百平方メートルから三百平方メートルまで緩和することが可能になります。いわゆる道連れ解除のリスクも和らぎます。
 また、十年単位で更新できる特定生産緑地制度が新設されました。この指定を受けた農地で相続後に営農を希望する場合は、自作農義務の期間は三十年ではなく、十年に短縮されます。営農継続のハードルが大いに下がるものと期待されています。
 都は、こうした画期的な法改正を好機と捉え、農地の保全に向けた取り組みを強化すべきであります。見解を求めます。
 都市農業の振興や農地の保全には、農業経営の魅力アップや収益増が欠かせません。全国では各地で、地域団体商標や地理的表示保護制度などを活用した地域ブランド化が進んでいます。農畜産物のブランド化によって差別化が進めば、付加価値が高まり、販売力の向上や単価増、収益増につながります。
 そこで、もともと安全で高品質な食材である都内産の農畜産物のブランド化を一層進めるべきと考えますが、知事の見解を求めます。
 さて、いよいよ三年後に迫った東京二〇二〇大会は、東京の農畜産物を国内外に広くアピールする絶好の機会であります。農家にとっても、自分が育てた農畜産物が大会で活用されるとなれば、生産意欲が高まり、農業経営の魅力増進にもつながります。
 農畜産物を選手村等で活用してもらうためには、組織委員会が定めた調達基準を満たすGAP認証が要件となっています。このため、都内の多くの農家がGAP認証を取得できるよう、積極的に支援すべきと考えます。見解を求めます。
 続いて、動物との共生について質問します。
 都議会公明党は、殺処分ゼロに向けて、上野動物園や井の頭自然文化園などの都有施設を活用した譲渡普及イベントの実施や工夫などを求めてきました。
 小池知事も昨年、譲渡促進月間を十一月に定めたほか、ビデオメッセージにも出演されるなど譲渡の促進に努めています。
 その結果、安楽死などを除く殺処分数として、昨年度はついに犬でゼロを達成し、猫でも一年で約百匹も減らして九十四匹になっています。
 さらなる進展には、離乳前の子猫に対するミルクボランティアへの支援などを充実させ、猫についての対策の強化が必要です。今後の取り組みについて、知事の見解を求めます。
 このたび、我が党が求めてきた、都の動物愛護相談センターの移転に伴う機能増強の構想がまとまりました。その中では災害時の動物への対応が重要な施策とされています。
 震度七が連続発生した昨年の熊本地震では、ペットなどの同行避難が改めて課題となりました。都内でも、区市町村の状況を見ますと、体制や備蓄内容に差が見られます。同行避難は、ペットなどを飼養する都民に迅速な避難を促す効果もある一方で、ペットなどへの適切な対応に苦慮する避難所も出てくる可能性もあります。
 そこで、都内における動物の同行避難のスタンダードな形を具体的に提示し、そのために必要な支援を都として実施していくべきと考えますが、見解を求めます。
 次に、豊洲市場移転問題について質問します。
 先日、築地市場内で行われた専門家会議では、豊洲市場の土壌汚染に対する今後の対応策が検討される予定でしたが、一部の傍聴者が議論を遮り、会議は休止され、結論がまとまらないという結果に終わりました。
 傍聴者は、無害化という言葉を一様に叫び、平田座長を糾弾し、専門家会議の進行を妨げていましたが、無害化とは環境基準以下にするという意味であります。そもそも、無害化された安全な状態での開場という平成二十二年の付帯決議は、都民にとって安全で安心な市場を実現するという大目標に向けたものであり、その趣旨は、平成二十四年の、豊洲新市場の開場に当たっては、土壌汚染対策を着実に実施し、安心・安全な状態で行うことという付帯決議にあらわされています。
 残念ながら、地下水の環境基準以下という目標は今の段階では達成されておりませんが、現状を踏まえ、安全で安心な市場の実現に向けて、今なすべきことは何であるのかを明確にするための議論であるべきです。
 三月の専門家会議では、地下水管理システムの浄化機能を活用することで、将来、環境基準を目指すことが可能であるとの見解が示されています。環境基準を将来に向けた目標として掲げつつ、専門的、科学的に妥当な対策を講じることで、都民の皆さんの理解を得る努力を続けていくというのが、今、選択すべき現実的な対応であると考えます。
 五月二十二日付読売新聞の世論調査でも、さらに安全対策を行い豊洲に移転するが四二%と一番多く、そのほかのできるだけ早く豊洲に移転するや、移転せずに築地市場を改築するは、それぞれ約二〇ポイントも下回っています。
 そのためにも、専門家会議では、冷静な議論を進めていただきたいと思います。
 そして、専門家会議の結論を受けて、小池知事は、都民が安心して利用できる市場という大きな目標の実現に向けて、早急に明確な判断を示すべきです。知事の見解を伺います。
 また、都民の安心につなげるためには、豊洲市場の見える化を進めていく必要があります。見える化すべきは、施設それ自体であるとともに、施設周辺の大気や地下水の状況の時々刻々の数値の変化であります。
 そこで、都民の安心に向けた施策として、こうした数値の変化を豊洲市場内だけでなく、インターネット上でも公開すべきと考えますが、都の見解を求めます。
 最後に、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会について質問します。
 まず、経費分担についてであります。
 都が六千億円を分担することなどについて、一昨日の関係自治体等連絡協議会で合意に至りました。この間、都外自治体の仮設等の課題を初めとして、知事はどのように考え、取り組んできたのかお伺いします。
 また、開催まで三年二カ月という時点での合意の評価について、改めて知事の見解を求めます。
 関連して、都が分担することになった六千億円の根拠と合意を決断した理由、そして、都民の理解を今後どう得ていくのかについて、知事の見解を求めます。
 また、大会全体の経費の総額とされる一兆三千八百五十億円のうち、分担が決まっていない三百五十億円や予備費の取り扱いが今後の最大の焦点となります。
 今後、整理、精査が必要なこうした課題について、都としてどう協議をリードしていくおつもりか、あらかじめ都民に理解を得ておくためにも、知事に見解を求めます。
 大会後、結果的に支出総額が想定を上回れば、都にさらなる負担が求められかねません。都が分担する六千億円だけでなく、支出総額の全体についての透明化が必要です。
 特に、リデュース、リユース、リサイクルの3Rの視点の徹底追求など、まさに、もったいないの精神を貫き、英知を結集した抑制を図るべきであります。リーダーシップをいかに発揮するお考えなのか、それぞれ知事の見解を求めます。
 今回の合意で、都は、他県市の所有する仮設施設についても、整備費を負担することとなりました。都が負担するこれらの仮設施設についても、例えば施設内の椅子などの調度品を都内で再利用するなど、都民の納得のいく大会後の活用について、早急に検討していくべきと考えます。見解を求め、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 中山信行議員の代表質問にお答えいたします。
 私からは、十一問、お答えをさせていただきます。
 まず、幼児教育、保育の無償化についてのご質問がございました。
 国は平成二十六年以降、毎年、経済財政運営と改革の基本方針に幼児教育の無償化に向けた取り組みを位置づけて、段階的に進めております。
 都におきましては、現在、区市町村が認可保育所等の保育料を国の基準から軽減しており、認証保育所などを利用する保護者の負担軽減につきましても、都独自に区市町村を支援しているところでございます。
 また、幼稚園につきましても、保護者の教育費負担を軽減するため、都独自に区市町村への支援等を行っているところであります。
 幼児期の教育、そして保育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものでございます。全ての子供に質の高い幼児教育を保障するということが必要と存じます。
 今月閣議決定する本年の経済財政運営と改革の基本方針におきましては、幼児教育、保育の早期無償化を明記し、年内にはその財源について結論を出す方針と聞いております。そこで都は、こうした国の動きを踏まえまして対応していくことが必要である、このような認識を有しております。
 受動喫煙防止対策でございますが、国際条約であるたばこ規制枠組み条約、FCTCでございますが、その実施のためのガイドラインにおきましては、受動喫煙防止対策として罰則つきの立法措置が求められております。
 また、昨年発表されましたたばこ白書では、受動喫煙のある人は、ない人に比べますと肺がんになるリスクが約一・三倍となること、そして受動喫煙がもたらす子供への健康影響が指摘をされております。
 現在国では、法制化に向けた議論が行われておりますが、依然として結論には至っておりません。早期に実効性のある法律を制定していただきたく存じます。
 そこで、都といたしましては、都民の健康増進の観点や、またオリンピック・パラリンピックのホストシティーとしての責任を果たしていく、そのためにも受動喫煙防止対策にしっかりと取り組んでいかねばならないと認識しております。
 今後、さまざまな場合を想定しながら、受動喫煙防止対策にスピード感を持って取り組み、都独自の条例化も検討してまいります。
 入札契約制度改革についてのご質問でございます。
 入札契約制度は、競争性、公平性、透明性を担保する、そして、同時に品質を確保する、さらには中小企業の育成や女性の活躍促進などの政策課題への対応とのバランスもとりながら、総合的に制度を構築していく必要がございます。
 特に、都内産業を支えます中小企業、この中小企業がしっかりと活躍できる環境をつくり、公共工事の中長期的な担い手を確保することは極めて重要と存じます。
 こうした観点から、今月から開始いたします財務局契約案件にかかわる試行におきましては、都議会の皆様、業界団体の皆様のご意見も踏まえまして、中小企業、とりわけ小規模の零細企業に配慮いたしまして、低入札価格調査制度の適用範囲の一部見直しを行うことといたしました。
 また、予定価格の事後公表に当たりましては、人手が限られる中小企業でもきちんと見積もりができるように、詳細な数量の提示、十分な見積もり期間の確保などの配慮を行ってまいります。
 十月から開始いたします各局の契約案件につきましては、事業者に対する説明を丁寧に行います。そして、財務局案件に係る試行の実施状況を踏まえて、現場に混乱が生じないよう、万全の準備を整えた上で、試行、試みを行っていく考えでございます。
 次に、農業に関連してでございます。都内産の農産物のブランド化についてのご質問がございました。
 都内では、限られた農地を最大限に活用いたしまして、消費者のニーズに応えた少量多品目の農産物を直接販売することで、高い収益性を目指した農業が展開されております。
 こうした農業経営におきまして、さらなる収益力の向上を図るためには、差別化、高付加価値化に向けた農産物のブランド化、これを推進することが有効と考えます。
 都内では、都が開発いたしましたトウキョウX、キウイフルーツの東京ゴールド、これらに加えまして、地域ブランドとして有名な稲城の梨、立川のウドなど、消費者に魅力ある農産物が数多く生産されております。
 今後は、こうした農産物を地域団体商標などの活用によりまして東京ブランドとしてPRするとともに、女性農業者の感性を生かしました農産加工品の開発への支援を強化してまいります。さらに、伝統ある江戸東京野菜の生産の拡大、飲食店への販路の開拓を図ることによりまして、東京の宝物としての磨きをかけ、そのブランド力を高めていく所存でございます。
 こうした都内産農産物のブランド化に向けた取り組みを通じまして、東京農業が秘めた潜在力を一層発揮させて、次代に向けた新たなステップを踏み出し、魅力ある東京農業を実現してまいります。
 動物の殺処分ゼロに向けた取り組みについてのご質問がございました。
 都は、引き取りました動物の譲渡を進めるために、昨年度から十一月を動物譲渡促進月間に定めまして、PRイベントの開催、都民の皆様に向けたビデオメッセージの配信など、さまざまな取り組みを行ってきたところでございます。
 その結果として、昨年度の殺処分数二百三頭から九十四頭へと半減をいたしました。そして、犬は初めて殺処分ゼロを達成したところでございます。
 今年度は、都やボランティア団体の譲渡活動を広く都民に発信するサイトも開設をするなど、ボランティアの皆様方と連携しながら、動物を新しい飼い主へと譲渡する取り組みを一層進めてまいります。
 また、四月から、飼育に手間がかかる離乳前の子猫の育成と譲渡のために、ミルク、哺乳瓶などを提供する取り組みを開始いたしております。五月末現在でございますが、二十五名のボランティアの方が登録されておられます。そして、四十匹の猫を育てていただいているというのが最新の情報でございます。
 今後、飼い主のいない猫対策など、区市町村との連携も一層強化いたしまして、ボランティア団体、都民の皆様の理解と協力を得ながら、二〇一九年度までに動物の殺処分をゼロにしてまいりたいと考えております。
 市場の移転問題についてのご質問でございます。
 安全で安心な市場の実現は、市場の移転問題を考える上で極めて重要な要素でございます。消費者の目線に立って理解と納得をいかに得ていくか、ご指摘のとおり大切でございます。
 豊洲市場用地の土壌汚染に対しましては、法令上の安全性を超えた対策を講じてきたその目的も、都民の安心を得るためのものでございました。
 しかしながら、市場を無害化するというこれまでの約束は、いまだ果たされていないのが現状でございます。こうした現実を受けとめまして、昨日の所信表明では、市場業者の皆様と都民の皆様方に都知事としておわびをしたところでございます。
 その一方で、世の中にはゼロリスクはあり得ないという考え方もございます。安全・安心な市場の実現に向けまして、専門家会議で対策の検討を含めまして、科学的な議論を進めていただきたいと考えます。
 また、こうした安全・安心に加えまして、事業の継続性や市場のあるべき姿など、未来を見据えた議論につきましても、市場のあり方戦略本部に集約をいたしまして、材料を整えた上で、都民にご理解いただけるよう、総合的に判断をしてまいります。
 次に、オリンピック・パラリンピック大会に関してでございます。
 経費の負担に関する合意に至るまでの取り組みについてのご質問、二〇二〇年大会に必要な業務を誰が担い、組織委員会以外の費用をどのように負担するかなど、円滑に大会準備を進めていくためには、それぞれの役割と責任を明確化することがいうまでもなく喫緊の課題であると、かねてから申し上げてきたところでございます。
 そうした中で、昨年十二月に、関係自治体の首長からの要請も受けまして、各県ごとの作業チームの設置を提案させていただきました。
 都、国、組織委員会の三者協議の中でも、各競技会場を大会仕様としていくためにはグレードアップしていかなければならないこと、また、その際の地方の財政負担をぜひ最小化してほしいという要望があることなどが明らかになってまいりました。
 こうした中で、私は費用負担の議論を前に進めるため、第一回定例会の施政方針の中で、他の自治体が所有する施設を含め、都負担を排除せず検討することを表明させていただきました。
 一方、大会を成功に導きたいとの強い思いから、私は一月と五月に安倍総理に直接面会をいたしまして、国がオールジャパンで必要な取り組みを進めるよう、協力を要請させていただいてまいりました。
 特に五月十一日の面会の際には、他の自治体が所有する施設の仮設整備について、都が負担することを表明いたしまして、一方、パラリンピック経費などについて国が取り組むように要請をさせていただきました。
 このように、私は関係自治体の直面する実情に配慮しつつ、開催都市としての責任を全うするように常に考えて行動してきたところでございます。
 このたびの合意についてのさらなるご質問がございました。
 都は、さらなる経費の圧縮、組織委員会の増収、国の負担の三点、この一体的解決を目指しまして、国、組織委員会など関係者との調整を主導してまいりました。
 その結果、追加会場など必要な経費は計上した上で、既存の公共交通機関の活用が見込まれるものなどは排除いたしまして、セキュリティー、ドーピング対策といった国の本来業務を切り分け、予備費を除きますV1予算の一兆五千億から一千億円以上圧縮ができたものでございます。
 また、公的負担の内訳が未定であったパラリンピック経費でございますが、国がその四分の一を負担することがここで正式に決まりました。
 収入面では、組織委員会がさらなる増収に向けた取り組みを行いまして、六千億円の収入を目指すこととなりました。
 また、合意の中で、仮設など都が負担するものにつきましては、コスト管理、執行統制を強化する仕組みをこのたび組み込むことができました。
 そしてこの間、関係自治体ともしっかりと調整を行いまして、オールジャパンで関係者が一致協力し、大会準備に邁進していく基礎が固まり、極めて意義ある合意となったものと考えております。
 東京都は、開催都市として、今後とも関係者と緊密に連携をいたしながら、主導的な役割を果たして、大会準備を加速させてまいります。
 今回の、東京オリンピック・パラリンピック大会についてのさらなるご質問でございました。その決断の理由と都民の理解についてでございます。
 五月三十一日、関係自治体等連絡協議会が開催をされまして、役割と経費の分担について大枠の合意をしたところでございます。
 この合意によりまして、都は、都及び都以外の自治体が所有する施設の仮設など、都内会場周辺にかかわる輸送、そしてセキュリティー対策に係る経費を負担することとなり、現時点で六千億円と試算をいたしております。
 五十六年ぶりのオリンピック・パラリンピック大会は、都民、国民に感動と共感を与え、全国に大きな経済波及効果をもたらし、ハード、ソフトの両面にわたりまして有形無形の大きなレガシーを残すことでございましょう。
 都は、開催都市として大会を成功に導く責任がございます。このため、運営を担う組織委員会とそれぞれの役割を踏まえた分担のもとで、経費を負担することを決断したものでございます。
 財源については、オリンピック・パラリンピック開催準備基金を初めとしてさまざまなものが想定される中で、都民生活に影響を及ぼさないように、来年度予算編成に向けて多角的な検討を財務局に指示をしたところでございます。
 都民の皆様には、今回の合意につきまして、あらゆる機会を捉えましてしっかりとご説明を行い、また責任を持って合意内容を実行してまいりたいと考えております。
 今後の経費の精査と検討についてのご質問でございます。
 今回の合意文書におきましては、全ての業務を対象にいたしまして、都、組織委員会、国、関係自治体の四者がそれぞれの役割と経費を分担していくということが明記をされております。
 そのために、この役割、経費分担の基本的な方向に基づいて、今後、試算の全ての数字が精査、精緻化されていく段階におきまして、具体的な負担額、そして負担者が定まっていくものでございます。
 関係自治体につきましても同じように、今回の合意に基づいて今後整理されていくことになるため、支障なく大会準備が進められることとなります。
 一方、この合意のルールを超えて、想定外の事態があった場合には、関係者間で予備費を充当するなどの協議を行うこととなるわけでございます。
 いずれにいたしましても、都といたしまして、開催都市、ホストシティーとして、今後の関係者間の連携を主導してまいることには変わりございません。
 最後に、大会経費の抑制と透明化についてのご指摘、ご質問がございました。
 今回の合意につきましては、都民の理解を得ながら、効率的、効果的に大会準備を進めるために、経費の抑制と透明化の仕組みを盛り込んだところでございます。
 具体的には、まず、都、国などから組織委員会に公費が投入をされ、共同で実施する事業につきましては、組織委員会に特別勘定を設置いたしまして、区分経理して収支を明確化することといたしました。
 組織委員会は、この特別勘定を通じまして、仮設の整備等を一元的に実施することとなります。
 また、公費が投入される事業の実施に当たりましては、組織委員会、都、国などが共同実施事業管理のための委員会を設置いたしまして、コスト管理、執行統制の強化を図っていくというものでございます。
 これらの仕組み、体制につきましては、関係者と早急に具体化をいたしまして、大会経費の透明化を図り、経費の抑制に努めてまいります。
 私は、開催都市の長として先頭に立ちまして、大会の成功に向け、大会準備を加速させていく、このことを改めて皆様の前に表明させていただきます。
 その他のご質問でございますが、東京都技監及び関係局長よりご答弁させていただきます。
 ありがとうございました。
   〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、子育て世帯の応募機会の拡大についてでございます。
 人口減少社会に向かう中、都営住宅において、子育て支援などの政策課題にも対応していくことは重要でございます。
 本定例会において、お話のように、都営住宅の入居収入基準を引き上げる特例の適用を受ける子育て世帯を、高校修了期までの子供のいる世帯に拡大する条例改正案を提案してございます。
 さらに今後は、居住者の転出入期間の圧縮などにより、これまで以上にストックの有効活用を図り、期限つきでない若年ファミリー世帯向けの募集回数をこれまでの年二回から拡大をいたします。
 具体的には、子育てに適した広さの住戸の中で、倍率などを考慮しながら、平成三十年一月から月五十戸程度の募集を開始し、応募機会を充実させてまいります。
 これらの取り組みを通じて、若年世帯の入居促進を図り、子育て世帯を支援してまいります。
 次に、民間住宅における入居支援の取り組みについてでございます。
 住宅確保要配慮者の居住の安定確保のためには、公共住宅に加え、民間住宅も含めた重層的なセーフティーネット機能を強化することが重要でございます。
 都はこれまで、借り手への住宅相談や入居あっせん、貸し主に対する家賃債務保証制度の紹介などの取り組みが円滑に進むよう、区市町村による居住支援協議会の設立を促し、活動に対して財政面も含めた支援を行ってきてございます。
 今後、改正住宅セーフティーネット法の施行に向けて、借り手に対しては、住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅の登録制度の創設を進めてまいります。
 また、貸し主に対しては、法施行に合わせて国が導入した家賃低廉化への支援措置の活用を区市町村の動向を踏まえ検討するなど、低所得者の住まいを確保できるよう、施策の充実を図ってまいります。
 最後に、入居拒否を防ぐための支援の取り組みについてでございます。
 住宅確保要配慮者の民間住宅への円滑な入居を促進するためには、借り手と貸し主の双方に対し、さまざまな懸念の解消に向けて支援を行うことが重要でございます。
 都は今後、借り手に対し、家賃債務保証料についても、国の新たな制度を活用した支援策を区市町村の動向も踏まえ検討するなど、居住の安定に向けた施策の充実を図ってまいります。
 また、貸し主の不安感を解消するため、高齢者の見守りや残存家具の片づけなどのサービスを提供するあんしん居住制度について、東京都防災・建築まちづくりセンターと協力し、引き続き積極的な活用を促してまいります。これに加えて、今後、このような取り組みを行う区市町村と連携して、住宅確保要配慮者の円滑な入居に向けた取り組みの充実を図ってまいります。
   〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 三点のご質問にお答えいたします。
 初めに、難病やがん患者の方々への就業支援についてでございますが、誰もが活躍できる社会の実現に向けましては、疾患があっても安心して働ける職場環境を整備していくことが重要でございます。
 このため、都は今年度から、難病やがん患者の方々の治療と仕事の両立に配慮した雇い入れや、継続就業を進める企業に対して助成を行う新たな支援制度を創設いたしました。
 本制度の活用を促進するため、事業主や医療機関向けの説明会を開催するほか、ハローワークや拠点病院においてリーフレットを配布するなど、広く周知を図ってまいります。
 また、事業主が策定する両立に向けた支援計画については、疾患の特性等に応じた効果的なものとなるよう、国の専門機関にも協力を要請し、きめ細かなサポートを実施いたします。
 こうした取り組みにより、制度の実効性を高め、難病やがん患者の方々が働きやすい職場環境づくりを推進してまいります。
 次に、都市農地の保全に向けた取り組みについてでございますが、このたびの法改正により、生産緑地の指定面積要件が緩和され、これまで保全が難しかった小規模農地の指定が可能となりますことから、その保全、活用に向けた対策を図ることが重要であります。
 このため、都は、区市の農業委員会や農業者団体を通じて、制度改正の内容を広く都内農業者に周知し、小規模農地の指定を促進してまいります。
 また、こうした農地においても、多様な形態での営農継続が図られるよう、ICT等を利用した効率的な施設栽培や植木の苗木生産、地域住民の要望が多い農業体験農園の開設など、地元区市と連携し、支援を実施してまいります。
 これらの取り組みを着実に実施するとともに、生産緑地の貸借等、さらなる制度改正の早期実現を国に強く働きかけ、都市農地の保全を図ってまいります。
 最後に、都内農業者のGAP認証取得についてでございますが、二〇二〇年大会において、より多くの都内農業者が農産物を提供していく上では、調達基準を満たすGAP認証の取得の促進が課題となっております。
 都はこれまで、農業者の認証取得を進めるため、GAPの内容や仕組みなどを説明する研修会を開催してまいりましたほか、国際、国内認証取得を目指す農業者に対し、生産工程管理や安全対策等に関する助言を行う専門家を派遣するとともに、審査経費の支援を実施してまいりました。
 今後は、認証取得に向けた取り組みを着実に実施することに加えまして、都市農業の特徴を反映した都独自の基準を設けた東京都GAP制度を早急に構築するなど、都内農業者の認証取得に向けた施策を一層強化してまいります。
   〔財務局長武市敬君登壇〕

○財務局長(武市敬君) 入札契約制度における低入札価格調査制度の適用範囲についてでございますが、三月末に公表した入札契約制度改革の実施方針では、比較的規模の大きい財務局契約案件をその対象としておりました。
 しかし、財務局契約案件の中には、一部、中小企業の多くが参加する価格帯の工事も含まれていることから、特に小規模零細企業への影響に配慮いたしまして、低入札価格調査制度の適用範囲の下限額を、建築工事は三・五億円から四・四億円に、土木工事は二・五億円から三・五億円に、設備工事は〇・四億円から二・五億円にそれぞれ引き上げることといたしました。
 この見直しにより、小規模零細企業が含まれる割合は約五割から一割未満に減少いたします。より多くの小規模零細企業が、従前どおり最低制限価格制度のもとで入札に参加することが可能になってまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 災害時における避難所への動物との避難についてのご質問にお答えをいたします。
 災害対策を初め危機管理への対応は、動物愛護施策の重要な柱であり、新たな動物愛護相談センター整備基本構想でも、センターを基幹施設として対策の強化を図ることとしております。
 都はこれまで、動物の身元表示の徹底など、心がけておく事項を掲載したパンフレット等により飼い主への普及啓発を図るほか、区市町村に対しましては、飼養場所の確保等を地域防災計画に位置づけるよう働きかけてまいりました。
 また、動物救護マニュアルの作成やペットフードの供給に関する協定の締結など災害時対策の事例集を提供いたしますとともに、避難所で必要となるケージなどの備蓄を包括補助で支援しておりまして、今後とも区市町村と連携し、災害時に飼い主と動物が安全に避難できるよう体制づくりを進めてまいります。
   〔中央卸売市場長村松明典君登壇〕

○中央卸売市場長(村松明典君) 豊洲市場の見える化についてでございますが、豊洲市場の現状について、都民に正しく理解していただくためには、環境測定結果や施設の状況に関する正確な情報をわかりやすく発信していくことが重要でございます。
 都はこれまでも、豊洲市場における地下水や空気等の測定結果について、専門家会議に報告し、科学的な見地に立って評価していただくとともに、その内容をホームページ等で公表するなど、情報発信に努めてまいりました。
 今後、市場の安全・安心につきまして、さまざまな測定結果へのアクセス性の向上や、都民にわかりやすい説明内容の充実など、ホームページを活用した情報発信について一層工夫してまいります。さらに、今月実施いたします都民向けの市場見学会などを通じて、豊洲市場の見える化を進めてまいります。
   〔オリンピック・パラリンピック準備局長塩見清仁君登壇〕

○オリンピック・パラリンピック準備局長(塩見清仁君) 仮設施設の整備についてでございます。
 大会の準備、運営を行う上での原則となります持続可能性に配慮した運営計画におきましては、資源循環の確保を目指し、ほかで使われた資材物品等や大会後の第三者による再使用等の取り組みを推進することとしております。
 具体的には、物品等の調達におけるリース、レンタル品の活用や仮設施設の資材等を可能な限り再利用していくというものでございます。
 他県市の所有する施設における仮設施設につきましても、組織委員会がコスト縮減も考慮しながら、本運営計画を踏まえまして設計等の準備を進めているところでございます。
 都といたしましては、組織委員会や関係自治体、関係局等と連携いたしまして、大会後の活用も十分に見据えながら、資源の効率的な利用に取り組んでまいります。

○副議長(小磯善彦君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時二十九分休憩

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