平成二十九年東京都議会会議録第四号

○議長(川井しげお君) 七十九番大西さとる君。
〔七十九番大西さとる君登壇〕
〔議長退席、副議長着席〕

○七十九番(大西さとる君) 誰もが生き生きと働ける東京の実現に向けて、不本意非正規雇用労働者の正規雇用化の促進について伺います。
 格差是正への取り組みは、人口減少時代の東京都政において、持続的成長にもつながる最も重要な課題の一つであり、貧困と格差の拡大、雇用の流動化、経済成長の鈍化、超高齢化、少子化などに起因する課題に対応するためには、政策のレベルアップだけでは到底足りず、構造改革、社会変革を伴う理念、政策転換が必要だと訴えてまいりました。
 平均年収百七十万円という、正規雇用の三分の一にしかならない非正規雇用労働者の実態、将来の格差にも直結する子供の貧困、教育格差、この厳しい現実に対して、国に先んじてでも手だてを講ずることが都政の使命であると繰り返し申し上げてきたものです。
 私は、一人一人があすへの希望を持って生活し、努力を応援する東京にするために、予算においてもしっかりと対応して、負の連鎖を断ち切るため、手だてを講じていくべきだと考えます。
 そのような観点から、平成二十九年度予算案を見ますと、正規雇用等転換促進助成事業に四十一億円が計上されております。この事業は、働く人の四割が雇用の調整弁ともいわれる非正規雇用となっている昨今、ますますその重要性は高まっており、正規雇用に転換し、安定した雇用環境を整備する取り組みとして、引き続き強化充実していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 子供の貧困、教育格差の解消には、来年度予算に盛り込まれている給付型奨学金で、家庭の経済力に左右されずに教育機会を確保できるようにすることに加えて、子供一人一人の状況に応じたきめ細やかな教育を行っていく必要があると考えます。経済力の低い家庭では、学習サポートや学習環境が整わず、学力も低い傾向もかいま見られます。
 学力格差の解消に向けて、全ての子供に対してしっかりと指導できる取り組みを充実すべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 次に、交通政策に移ります。
 まず、満員電車の混雑緩和についてです。
 新線整備や複々線化、車両の長編成化などが行われ、いっときよりも混雑率は減少していますが、ピーク時における主要三十一区間の平均混雑率は依然として高く、二〇一四年時点で一六五%となっています。
 また、運輸政策審議会第十八号答申及び交通政策基本計画において定められた、ピーク時における平均混雑率を一五〇%以下、及びピーク時における個別路線の最混雑区間の混雑率を一八〇%以下とする目標は、いずれも達成していません。
 首都高環状線では、中央環状線の完成とともに慢性的な渋滞が緩和され、劇的に渋滞が減りました。私は、満員電車の混雑緩和のためには、同様の効果が期待できる区部周辺部環状公共交通──メトロセブン、エイトライナーと呼ばれますが、これの新設が必要だと何度も主張してまいりました。実現に向けて前向きな議論を期待したいと思います。
 また、混雑緩和には、一斉出社、一斉退社という働き方も柔軟に見直すことが必要だと考えます。これまで、サマータイムなど時差出勤の取り組みが繰り返されてきましたが、笛吹けど踊らずで、なかなか定着してきませんでした。
 一方で、子育て、介護と仕事の両立、あるいは、がんや難病を患っても続けられることなど、多様な働き方が求められる中で、短時間勤務や時差出勤などを当たり前にしていくことも、混雑緩和につながる一つの方策であると考えます。
 知事は、満員電車の混雑緩和も重要な課題であると発言されています。来年度予算では、広域交通の快適な利用に関する取り組みの推進が計上されておりますが、鉄道混雑の緩和に向けて、知事の見解を伺います。
 私は、昨年の第一回定例議会で、二種免許を持たずにタクシーの営業を行うライドシェア、ウーバーの問題を取り上げました。ハイヤー、タクシーの労働団体だけでなく、経営者団体も、ライドシェアは白タク行為の合法化であり、安全面からも断じて容認できず、断固阻止を要望していること、東京のタクシーサービスは世界の旅行者から一位の評価を得ていることを申し述べ、陣痛タクシーなど、あらゆる乗客に対するプロの仕事として、観光、子育て、高齢、障害などの分野で都民に貢献できる公共交通として発展させるべきであると強く主張したところです。
 都は、平成二十九年度予算に、自動運転技術を活用した都市づくりの展開に関する調査を計上しております。そこで今回は、この自動運転について一言申し上げます。
 自動で行きたいところに連れていってくれる車の自動運転の実用化に向けて、技術開発が進展しています。
 先日、ニューズウィークが、エアバス、空飛ぶ自動運転車、年内にテスト開始か、消費者が実際に乗るのは二〇二〇年ごろになるだろうと伝えています。日本でも、レベルワンの自動運転技術である衝突被害軽減ブレーキなどが実用化されていますが、完全自動運転であるレベルフォーの実用化を目指す動きが加速しています。
 遠い夢だった未来がすぐそこまで来ていると感慨を持つ方もいるでしょう。しかし、自動運転で激変する社会の中で、その波にのみ込まれてしまう人のことを忘れてはいけません。そうした人たちのことを考えるのが政治の役割だと私は考えています。
 自動運転でなくなる二十の仕事ランキングという記事が週刊誌に掲載されました。一位は、空港内などの循環バス運転手、二位はタクシーの運転手、三位は建設現場の運搬車作業員などが並び、そのほかには鉄道運転士、長距離ドライバー、路線バス運転手、宅配便ドライバー、ごみ収集作業員、郵便配達員、駐車場オーナーと管理人、自動車保険業者、自動車教習所など、ランクインしたのは車に関係する職業がほとんどです。
 実用化までには、より高度なシステムの開発など、自動車自体の技術的な課題解決、社会インフラの整備、法律改正なども必要ですが、私は、これだけでなく、車関係者に与える影響など、広く社会に与える影響をしっかりと検討し、十分に勘案されることが必要だと考えます。
 そこで、来年度予算に計上された自動運転技術を活用した都市づくりの展開に関する調査において、どのように取り組まれようとされているのか、見解を伺います。
 都市計画道路の整備率が著しく低い東京の現状に鑑みますと、交通渋滞を減らして輸送効率を上げ、都民の快適性を上げていくためには、最新の技術を活用した取り組みを、より一層強力に推進していく必要があると考えます。
 例えば、ITS、インテリジェント・トランスポート・システムなど、最先端の情報通信技術等を用いることにより、渋滞や環境悪化が著しい地域のみならず、道路ネットワーク全体として最適な信号制御を行うことや、公共交通へのシフトを図るために、バスの定時性確保を図るPTPS、公共車両優先システムの導入路線を拡大することなど、技術力で渋滞を極限まで減らすことは大変重要な取り組みだと考えています。
 昨年十二月に策定されました二〇二〇年に向けた実行プランにおいても、ITS技術を取り入れた渋滞対策に取り組んでいくとされています。
 そこで、平成二十九年度において、どのような事業展開をしていこうと考えているのか、都に見解を伺います。
 最後に、物流関係における荷さばき場の整備についてです。
 宅配システムが整い、トラックに対する物流依存が高まる中、効率的な物流を実現するためにも、荷さばき場の整備が極めて大切であります。荷さばき場の整備には、スペースが必要であり、狭い日本、特に都内では課題が多く、整備も難しいと考えます。
 一方で、駐車禁止に対する規制緩和地域を広げることに大きな期待が注がれています。この荷さばき場の整備にかわる駐車規制の緩和エリアは、平成二十一年の警視総監のご英断により、従前から拡大されることとなりました。多くのトラック関係者から喜びの声が寄せられる反面、現在、四十五カ所の規制緩和地区、これは東京都内全域から考えれば、まだまだ十分とはいえません。
 今後、さらに規制緩和地区をふやしていく必要があると考えますが、警視総監の所見をお伺いいたしまして、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 大西さとる議員の一般質問にお答えをさせていただきます。
 私からは、鉄道混雑の緩和についてお答えいたします。
 これまでも、時差通勤など混雑緩和につながりますさまざまな取り組みが実施をされてまいりましたが、日本では、一斉に取り組むことでより効果が期待できるという、そのような風土がございます。
 そこで、ことしから夏の一定期間に、それも一斉に、多くの方々に快適な通勤を実感してもらう取り組みとして、快適通勤ムーブメントを実施する考えでございます。その実施に向けまして、来年度早々、快適通勤プロモーション協議会を開催いたしまして、参加者からさまざまな知恵を出していただきたいと考えております。
 こうした取り組みを、より実効あるものとするために、協議会の運営、ムーブメントの広報、効果の検証などに関する予算を計上しております。
 今後、鉄道の利用者、事業者の双方に働きかけまして、ムーブメントを契機に、さまざまな施策を総動員しながら、快適通勤の実現に向けまして幅広く取り組んでいく考えでございます。
 残余の質問につきましては、警視総監、教育長、東京都技監、そして関係局長からのご答弁とさせていただきます。
〔警視総監沖田芳樹君登壇〕

○警視総監(沖田芳樹君) 荷さばき車両に配意した駐車規制の緩和についてですが、これまで、荷さばきの需要が多く緩和の必要性が認められる場所であって、地域住民等との合意が整った区間について、駐車規制の緩和を順次行ってきたところでございます。
 今後も、物流事業者及び地域住民等のご意見やご要望を十分に踏まえ、交通の安全と円滑を確保しつつ、荷さばき車両に配意した、より合理的な駐車規制を推進してまいることといたします。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 学力格差の解消に向けた取り組みについてでございますが、家庭の経済状況に左右されることなく、全ての児童生徒が将来への夢や希望を抱き、みずからの進路を実現するためには、生きる基盤となる基礎学力を確実に身につけることが重要でございます。
 そのため、都教育委員会は、習熟度別指導や東京ベーシック・ドリルの活用を図るとともに、補充学習等に取り組む地域を十地区指定するなどして、児童生徒一人一人の学習状況に応じた指導を推進してまいりました。
 こうした取り組みに加え、平成二十九年度には、補習体制の構築や児童生徒の学習情報の管理、家庭学習やキャリア教育の推進等の役割を担うための教員を、新たに小中学校二十五校に配置するなど、児童生徒が学び成長し続けられる教育をさらに充実してまいります。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 自動運転技術を活用した都市づくりに関する調査についてでございます。
 自動運転技術の普及により、自動車交通の安全性の向上、高齢者など交通弱者のスムーズな移動、公共交通や物流の効率化などが見込まれてございます。
 こうした将来の姿を見据え、来年度は、有識者へのヒアリングや都民へのアンケートなども実施しながら、自動運転技術の普及による人々の行動や都市のありようの変化、既存の公共交通や道路交通システムに与える効果と影響などに関する基礎的な調査を行うものでございます。
 今後、こうした調査を踏まえるとともに、国や自動車メーカーなどの知見も生かしながら、自動運転技術を活用した都市づくりの具体化に向けて取り組んでまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 非正規雇用対策についてでございますが、正規雇用を望みながらも、やむなく非正規で雇用された方々は、十分なスキルを習得できず、不安定な就労を続けている場合が多く、このことは、本人にとっても不利益なばかりか、社会にとっても大きな損失であります。
 都は、国の助成金を活用して、社内での正社員転換に取り組む企業に対して、都独自の上乗せを行うなどにより、一年間で五千人、平成二十七年度からの三年間で一万五千人の正規雇用化を目指しております。この取り組みの三年目となる来年度は、規模を八千人に拡充して正規雇用への転換を促進してまいります。
 こうした施策により、安定的な雇用環境の整備に取り組んでまいります。
〔青少年・治安対策本部長廣田耕一君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(廣田耕一君) ITS技術を活用した渋滞対策についてですが、都では、警視庁等と連携して、ITS技術を取り入れた渋滞対策事業であるハイパースムーズ東京を、今年度から平成三十二年度までの五年間で実施しております。
 この事業では、都内の主要渋滞箇所のうち百カ所を対象として、交通量を予測して最適な信号制御を行う需要予測信号の整備や、リアルタイムに渋滞情報を提供する交通情報板の設置等の対策に取り組んでおります。
 これらに加えて、二十九年度からは、個々の自動車の走行地点や日時、速度等に関する情報、いわゆるプローブ情報を活用しまして、渋滞の実態をきめ細かに把握し、十分な効果が見込まれる箇所を選定して対策を実施することで、渋滞緩和の取り組みを着実に進めてまいります。

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