平成二十九年東京都議会会議録第四号

   午後一時開議

○議長(川井しげお君) これより本日の会議を開きます。

○議長(川井しげお君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(川井しげお君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 議員より、議員提出議案第四号、東京都シルバーパス条例の一部を改正する条例、知事より、東京都収用委員会委員の任命の同意について外人事案件二件がそれぞれ提出されました。
 これらを本日の日程に追加いたします。

○議長(川井しげお君) 昨日に引き続き質問を行います。
 六十五番小宮あんりさん。
〔六十五番小宮あんり君登壇〕

○六十五番(小宮あんり君) ことしも町会や自治会、各種団体の新年会でさまざまな意見を伺いました。築地市場は豊洲に移転するのかと聞かれます。保育園をもっとつくってほしいと頼まれます。木造住宅密集地域に暮らす方からは、初期消火のための消火栓の位置はここがいいよとか、まちをパトロールする防犯団体の方からは、ごみが放置された危険な空き家があそこにあるよとか、健康維持のため、まち歩きをする方からは、狭い歩道に段差や勾配があって、ベビーカーもお年寄りも歩きにくいということなど、東京の抱える大きな課題から身近な課題まで、いろいろなことを教えていただきます。
 こうした方々は、自分たちのまちに対して意識が高く、自助、共助の精神で活動している皆さんです。そういう皆さんが自分たちだけではどうにもならない問題を解決することが、私たち政治や行政、すなわち公助の役割です。
 特に、区市町村と比べ、東京都の職員と都民との距離は遠いものだなと、都議会での六年間で感じてきました。だからこそ、私たち議員が都民の思いをしっかりと行政に伝えていかなければなりません。
 小池知事の就任で、東京へ期待と注目が集まっている今は、都民の共感を得て、そうした東京の抱えるさまざまな課題を解決するチャンスでもあります。
 私はこの六年間、都議会で、無電柱化を初めとする人に優しいまちづくりの推進を訴えてきました。東京では、たとえ人と人とがすれ違えないような狭い歩道があっても、簡単に道幅を広くはできません。そんな歩道を放置すれば、人は自然と歩きにくい歩道を避けて裏通りを通るようになります。交通事故の危険もふえ、表通りの商店街の活気も失われます。
 電線を地下に埋め、電柱をなくせば、災害時の電柱の倒壊を防ぎ、ライフラインを守ります。子供もお年寄りも歩きやすい道が生まれます。まちの価値も高まります。知事も国会議員時代から、この事業に熱心に取り組んでおられたと伺っています。そのためか、最近は多くの方から、東京の無電柱化はどのくらい進んでいるのか、住宅街の狭い道を無電柱化してほしいなど、今までにない関心をいただいています。
 私は、都が優先する緊急輸送道路だけでなく、環七と環八の中間にある都道中杉通りの無電柱化を推進してきました。現在、近隣の皆様のご理解をいただきながら工事が進んでいます。
 また、都道だけでなく、道幅の狭い区市町村道の無電柱化には、財政面、技術面で東京都の支援が欠かせません。例えば、狭い道には必要な機器を地上に置く場所がありません。そうした機器を民地や公共空間などに設置する策、その際の非課税措置などを東京都が手引として取りまとめ、区市町村への研修に盛り込むなど、これまで地道な努力を重ねてきました。
 また、都議会自民党の都市政策推進本部では、東京電力の無電柱化モデル施設の視察をして、必要な機器のコンパクト化を学び、そうした技術を区市町村でも活用できるよう、技術者の育成を支援してきました。
 そして、このたび区市町村への新たな支援策が打ち出されました。それは、無電柱化の計画をつくるための経費や、低コスト手法の導入に取り組む区市町村の路線に対し、都が費用を全額補助する制度です。面的な無電柱化を推進する新たな一歩であると強く期待をしています。
 防災、快適な歩行空間の確保、まちの活性化など、無電柱化にはさまざまな効果があります。また、地域によって課題はさまざまですから、東京都はしっかりと区市町村と連携し、積極的に支援すべきです。具体的にどう取り組むのか伺います。
 次に、誰もが活躍できるまちづくりについて。
 女性の活躍が期待される昨今、東京都は待機児童対策について、保育所の整備補助、賃借料補助などのハード面、さらに、保育士のキャリアアップ補助や宿舎借り上げ支援など人材確保と定着のためのソフト面、両面に力を入れてきました。
 しかし、待機児童ゼロの達成には、保育所をふやすだけでなく、産休や育休、勤務時間の短縮など、働きながら子育てしやすい職場づくりが不可欠です。知事の号令のもと、都庁職員は、残業を減らすための意識改革や昼食の時間帯を分散するなど、働き方改革への取り組みを始めました。
 こうした改革を社会全体に広げていくには、都内の事業所の九九%を占める中小企業、小規模事業所への支援が重要です。中小企業の中でも、従業員が一人から四人の会社が五四・五%、五人から九人の会社が二〇・七%を占めます。限られた人数で事業を営む中小企業が働き方改革を進めるのは簡単なことではありません。
 都は今年度、新たに多様な勤務形態の実現に向けた支援制度を設け、来年度は拡充するとしていますが、今年度の利用実績を見ると、まだまだこれからといったところです。
 働き方改革に関する制度は複数あります。しかし、必死に働く経営者の方々に、制度の違いを学ぶ余裕はありません。誰にでもわかりやすく、利用しやすい、そうした制度となるよう工夫すべきです。
 今は育児を抱える社員も介護に直面する社員もいない、そんな会社でも、必ずいつか育児や介護の問題にぶつかります。そのときに備え、社内で話し合っておくだけでも、意識改革や社員の働きやすい環境づくりにつながります。働き方改革に関する都の事業を総合的に発信し、活用を促進していくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 次に、人に優しいまちづくりについて。
 そのきっかけとなる二〇二〇年東京大会まであと三年。昨年、リオから東京へと引き継がれたオリンピック・パラリンピックの旗が、被災地や都内各地を巡回し、機運を高めています。学校でもオリンピック・パラリンピック教育が始まりました。その目標は、ボランティア精神の醸成、障害者理解の促進、スポーツ志向、日本人としての自覚と誇り、豊かな国際感覚の習得です。子供たちが心身ともに豊かに育つ、その一助となってほしいと思います。
 東京都教育委員会が今年度指定した百校のオリンピック・パラリンピック教育重点校のうち、障害者理解の促進に取り組む学校は三十五校あります。そうした学校では、アイマスクや車椅子の体験、ボッチャ等の障害者スポーツを特別支援学校や特別支援学級の児童生徒とともに楽しむなどして、障害への理解を深めています。
 二〇二〇年のその先には、東京が目指す共生社会があります。その中心となるのは、子供たちです。彼らが障害への理解を深め、障害のある人がどんな助けを必要としているか知ることが大切です。そのためにも、パラリンピックや障害者スポーツに関する教育をさらに充実すべきと考えますが、見解を伺います。
 子供たちが豊かに成長できるまち、そして、高齢者が安心して暮らせるまち、その実現には、高齢者が幾つになっても住みなれた自分の家に、まちに住み続けることのできる環境が重要です。しかし、そう希望する高齢者の六割は、その望みを諦めています。理由は、家族に負担をかけられないから、在宅でどのような医療や介護サービスが受けられるかわからないからとなっています。
 東京では、特別養護老人ホームなど施設の整備は簡単なことではありません。だからこそ、住みなれた家に、まちに暮らしながら、必要な医療や介護サービスが受けられる地域包括ケアシステムの構築を、各区市町村において、東京都がしっかりと支援すべきです。
 都は、医療と介護の連携、また、人材確保の面から、地域包括ケアシステムの構築を支援してきました。そして、四月からは、全区市町村において、介護予防の新しい総合事業が実施されます。
 これまでは、主に要介護予備群となってから介護予防事業の対象者とされました。今後は、全ての高齢者が健康で元気なうちから介護予防事業の対象となります。そうした高齢者が主体的に社会に参加する環境をつくるために、地域包括支援センターなどを中心として、場所の提供や活動メニューの提案を行うこととなります。
 高齢者はキョウイクとキョウヨウが大事と町会や老人会でよく耳にします。これは、きょう行くところがあるのキョウイクと、きょう用事があるのキョウヨウです。これからは行政が、きょう行くところを、きょうの用事をつくるためのきっかけを提供する、それが新しい介護予防事業となります。
 都としても、そうした区市町村の新たな体制を支援して、幾つになっても元気で長生きできる、そうした社会を目指すべきと考えますが、見解を伺います。
 最後に、安全なまちづくりについて。
 冒頭にも申し上げたとおり、自助、共助では解決できない課題に対して、公助の力が必要です。都内には約百七十三万戸の分譲マンションがあります。その約二割に当たる約三十六万戸が、昭和五十六年以前に建てられた旧耐震基準のマンションです。中でも築四十年以上経過したマンションの約四割は、容積率が超過し、単独での建てかえが困難と推計されています。
 私は、一昨年の予算特別委員会、また、住宅政策審議会で、そうした単独での建てかえが困難な老朽マンションの再生支援に都は取り組むべきと訴えてまいりました。
 その後、都は昨年度、今年度と二年間かけて、品川区、杉並区、多摩市において、まちづくりと連携したマンションの建てかえを検討するモデル事業を実施してきました。
 杉並区では、この間、地元関係者の意向調査や、隣地と一体的なマンションの建てかえができないかなど、技術的な検討を行ってきました。しかし、建てかえ前の規模を維持することは難しく、管理組合などは、都のさらなる支援を切望しています。マンションは個人の資産です。しかし、緊急輸送道路の確保や、周辺の住民に与える影響なども考慮して、都として適切に支援すべきと考えます。
 そこで、モデル事業を踏まえて、今後の分譲マンションの建てかえ促進にどう取り組むのか、所見を伺います。
 私はこの六年間、人に優しいまちづくりを掲げて活動してきました。世界でも有数の巨大都市東京は、効率性を追求する余り、時に弱い者には暮らしにくい一面を持ちます。歩道の真ん中を塞ぐ電柱はその一つのシンボルです。狭い歩道から電柱をなくし、誰もが快適に歩ける道をつくること、それは東京を人に優しいまちにするための第一歩です。
 都民の皆さんが日々暮らしの中で感じている不安や不満に一つずつ丁寧に向き合っていけば、東京は変わります。そのために、これからも一人一人の声を大切に都政に届けていくことをお約束し、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 小宮あんり議員の一般質問にお答えをいたします。
 働き方改革についてご質問がございました。
 ライフワークバランスを実現して、誰もが活躍できる社会にするためには、働き方の改革、意識改革は、もはや避けては通れません。ようやくこの日本でも、働き方改革に取り組む機運が生まれてまいりました。ようやくであります。
 今後さらに広めていくためには、大企業はもとより、中小企業でも取り組みが進みますように、そのメリット、そして都の支援策を、経営者の方々にわかりやすく伝えていくことが重要と考えております。
 そこで、今年度、働き方改革の意義を伝えるPR動画を作成いたしまして、トレインチャンネルを通じて、経営者の方々に向けてメッセージを発しております。
 さらに、長時間労働の削減など、働き方を見直すことで成果を上げている企業の取り組み、これ結構あるんですね。その成果を、さまざまなメディアやウエブサイトなどを通じて積極的に紹介をして、働き方改革のメリットを効果的に訴求をしてまいります。
 また、来年度開設するテレワーク推進センターに、ライフワークバランス推進のための施策をワンストップで提供する都独自の窓口を併設いたします。企業ニーズに応じた適切なサービスを案内するなど、きめ細やかな支援を行ってまいる考えでございます。
 こうした取り組みを通じまして、東京から、働き方改革を力強く進めてまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、教育長、東京都技監、そして、関係局長からご答弁をさせていただきます。
〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) パラリンピック等の教育の充実についてでございますが、障害者スポーツの最高峰であるパラリンピック東京大会は、子供たちが障害者スポーツへの関心を高め、障害者への理解を深める絶好の機会となります。
 そのため、都教育委員会は、今年度、障害者理解教育に先進的に取り組んでいる学校の実践をまとめ、全都に周知するとともに、パラリンピックスポーツ実技講習会を三回実施し、教員の指導力を高めてまいりました。
 来年度は、実技講習会を十回に拡大するほか、障害者スポーツ体験等に積極的に取り組むパラリンピック競技応援校を新たに指定するとともに、特別支援学校対抗のボッチャ交流会を創設し、小中学生も参加交流する機会を設けてまいります。
 こうした取り組みを通じ、障害者スポーツへの興味、関心や互いに認め合う心を子供たちに育んでまいります。
〔東京都技監邊見隆士君登壇〕

○東京都技監(邊見隆士君) 分譲マンションの建てかえ促進についてでございます。
 容積率や絶対高さ制限により既存不適格となっているなど、単独では建てかえが困難なマンションについては、周辺との共同化などにより、まちづくりと連携して建てかえを促進することが有効でございます。
 このため、防災上の観点から、旧耐震基準のマンションを対象に、地域の安全性や魅力の向上に寄与する建てかえを支援する新たな制度を創設をいたします。
 具体的には、来年度から、区市が地域のまちづくり計画を検討する場合や、管理組合が建てかえを検討する場合に、その費用を助成するとともに、容積率の緩和により共同化などを促進するため、都市開発諸制度などを見直してまいります。
 こうした取り組みによりまして、マンションの建てかえを積極的に促進し、良好な市街地環境の形成を図ってまいります。
〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 区市町村の無電柱化に対する支援についてでございますが、区市町村道の無電柱化を進めるためには、道幅の狭い道路に対応できる技術開発やコスト縮減を図っていくことが重要でございます。
 このため、都は、東京電力やNTT等と本年一月に、無電柱化低コスト技術検討会を設置いたしまして、材料の見直し、電線等の埋設の深さを浅くする手法の導入、電線共同溝のさらなるコンパクト化等の検討を進めております。
 今後は、区市町村が設置する技術検討会に参加し、この成果を提供するなど、技術支援を強化いたしますとともに、平成二十九年度から補助制度を拡充しまして、道幅の狭い道路に低コスト手法を導入する区市町村に財政支援を行ってまいります。
 引き続き、区市町村に対する支援を積極的に行い、面的に広がりを持った無電柱化を推進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 介護予防に取り組む区市町村への支援についてのご質問にお答えをいたします。
 都は、全ての区市町村が、本年四月までに新しい介護予防事業を実施できますよう、介護予防に関する幅広い知識と経験を有する専門職を、地域包括支援センター等に配置する取り組みを支援してまいりました。
 来年度からは、リハビリテーション専門職等と連携して、体操などを行う通いの場の運営ノウハウの提供や、ボランティアの養成などを行う地域づくり推進員を新たに配置し、住民が主体となって、身近な場所で介護予防の取り組みを進める区市町村への支援を開始をいたします。
 また、新たに東京都健康長寿医療センターに介護予防推進支援センターを設置し、地域で介護予防に取り組む人材の育成や、専門的知見を生かした相談支援等を行うなど、区市町村の介護予防の取り組みを支援してまいります。

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