午後六時開議
○副議長(小磯善彦君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
質問を続行いたします。
七十六番今村るか君。
〔七十六番今村るか君登壇〕
○七十六番(今村るか君) 命を守ることと、守ることのできなかった命に目を向け、二度と繰り返さないために質問を行います。
消防署とともに地域の防火、防災活動を支えている消防団は、町内会自治会、自主防災組織を指導し、災害時には署隊と連携し活動します。
東京消防庁ハイパーレスキュー隊は、日本のみならず世界中の災害現場で活躍する災害救助のスペシャリストで、本年、エアハイパーレスキューも加わり、さらにその能力が強化されました。
消防団も火災や災害時の対応能力の向上に努め、平素からさまざまな訓練を通じ、災害時対応力の向上に取り組んでいます。団活動は火災から大規模災害まで幅広く、東日本大震災では、活動中二百五十四名のとうとい命が失われたことは記憶に新しいところです。
広範囲の大災害時、地域で真っ先に活動するのが消防団で、地域の防災のかなめとして、その役割に期待が寄せられています。
その期待に応えるため、災害時に消防隊が到着できない状況でも高度な救助活動を行う仮称消防団ハイパーレスキュー隊の検討を要望しておきます。
東京の災害対応力を高めるため、消防隊はもとより、多摩地域の消防団の救助技術を初め、災害時対応力の向上に東京消防庁は支援をすべきです。消防総監の見解を伺います。
災害時に消防団員の身を守ることは最優先であり、そのための知識、経験とともに安全な装備の充実も重要です。昨年の糸魚川の大火で、地元消防団は強風下、長時間活動し、本件で負傷した全十七名のうち十五名が消防団員でした。
東京消防庁は、特別区消防団に対し、新型防火服の更新、救命胴衣、デジタル無線の更新などに取り組む中、二年前に都内火災現場の崩落により消防団員二名が負傷する事故が発生したため、新年度、安全性の高い新型防火帽を更新することは高く評価をいたします。
多摩・島しょ地域の消防団が安全に活動し、災害時対応力を高めるため、装備品、救助資材の充実は欠かすことができません。都はどのように支援をするのか、所見を伺います。
昨年七月、障害者入所施設津久井やまゆり園で、障害者十九名が亡くなり、二十七名が負傷する殺傷事件が発生し、犯人は元職員で、障害者差別の意識を持って犯行に至ったとの報道に、社会は大きな衝撃を受けました。
同年七月、都外施設の入所者、M・Sさんの保護者から、お子さんが行方不明になり、六日後に亡くなって発見されたと連絡がありました。
局と連絡をとる中で気づいたことは、入所者が事故により亡くなって報告があっても、都の現地確認は迅速に行われず、有効な再発防止策がとられているかを都で適切に検証されているとはいいがたく、事故のフォローがしっかりとされていない状況でした。さらに、同施設で三年前にも同様の死亡事故があったことを都が把握していないこともわかりました。
その後、文書質問で、障害者入所施設で過去十年間の死亡事故と入院事故について、発生件数と状況についてただしましたが、文書保存年限は通常一年のため、それ以前はわからないとの回答でした。
また、文書が残っている二〇一五年四月から二〇一六年十一月までの間、死亡事故件数が七件、入院事故件数は五十件、私の調査によれば、先ほどの都外施設での三年前の死亡事故だけではなく、それ以前にも複数の施設で複数の死亡事故、入院事故が起きていることがわかりました。
とうとい命が失われる事故報告が毎年繰り返され、一年で廃棄されています。過去の事故検証によってはM・Sさんのような同じ状況で命が失われる死亡事故は減らすことができたのではないかと悔やまれます。とうとい命が事故により二度と失われることのないように、施設の安全対策、事故防止にどのように取り組むのか伺います。
なお、我が会派が求めた、知事が策定を約束した公文書管理条例制定時に命をたっとぶ取り扱いがされるよう要望をしておきます。
都外施設は一九六〇年代から一九九〇年代に整備をされ、現在四十四施設、約三千人が生活をしています。都外施設では入所者の高齢化、親の高齢化、災害時連絡がとりにくい、施設の老朽化などの課題があります。
私はこれまでも、障害の有無にかかわらず、全ての人がともに生きるインクルーシブ社会の実現を求めてきました。都は、第四期東京都障害福祉計画で、施設入所者の地域生活への移行を進めるとしています。二度目のパラリンピックを開催する東京で、障害者が遠く離れた施設で生活する現状に、北欧を初め海外から来られる方は驚くのではないでしょうか。障害があっても、家族や友人と安心し生活できる地域移行支援を一層促進すべきです。都の所見を伺います。
矯正施設を退所した障害者、高齢者が地域で当たり前に生きる上で欠かすことのできない支援を、身寄りがなく受けることができない退所者のため、地域生活定着支援センターが設置をされ五年がたち、先日、視察をさせていただきました。
高齢と障害を重複した退所者が多く、受け入れ先に矯正施設退所者だと話すと断られることがあるなど、苦労されている現状をお聞きしました。地域で安心して生活するには、本事業への理解促進、受け入れ先のアフターフォローを丁寧に行うなど必要です。
一方で、国は本事業に係る補助金を昨年削減しています。都は国に対して十分な活動を保障する費用負担を求めるべきです。都の所見を伺います。
障害があっても、一人一人の特性を生かし、伝統工芸など活躍の場は広げられます。栃木県足利市のこころみ農園では、障害のある方たちがブドウ栽培、収穫をし、保護者が設立をした有限会社で買い取られ、サミット晩さん会や国内線ファーストクラスで採用されるプレミアムなワインに生まれ変わることで有名です。
町田市の美術工芸館では、市内在住の彫刻家、佐藤允了先生が型を作製し、障害のある方たちによって、えとの置物が制作されています。えとの置物は出生届を提出したお祝いとして配布をされる趣のある芸術作品です。
また、町田市の大賀藕絲館では、二〇〇〇年以上前の古代ハスの実から発芽した大賀ハスの茎から抜き出した、クモの糸のような細い藕絲を紡いだ糸から藕絲織を作製しています。
藕絲織は天平時代、當麻寺の中将姫が寄進されたと伝えられる當麻曼荼羅伝説などで知られています。気の遠くなるような作業を経て紡ぎ出される貴重な藕絲織は、日本でただ一つのものであります。
こうした貴重で趣のある作品がもっと広く知れ渡ることで事業収益を高め、広く障害者の工賃に反映されることが必要です。
小池知事が施政方針で述べられたように、ソーシャルファームの仕組みづくりを支援し、障害者が生き生きと働き、活躍できる社会を実現すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
知事は施政方針で、人こそが新しい東京の主役として、その力を十分に引き出すため、格差の解消を進められると述べられました。
社会的養護のもとにある子供たちは親の養育を受けられず、最もその格差の解消に努めなければならない存在です。
昨年四月、東京都社会的養護推進計画を策定、二〇二九年までに家庭的養護の割合を六割とする新たな目標を掲げました。社会的養護のもとにある約四千人の子供たちに対して、家庭的養護の割合は現在三割にとどまり、乳児院、養護施設への支援、養育家庭の育成、グループホーム、ファミリーホームの設置を推進すべきです。都の所見を伺います。
国は二〇〇四年、児童福祉法改正で、政令で指定する市に児童相談所が設置できるといたしました。現在まで横須賀市、金沢市二市にとどまっています。
そこで、来月の改正法施行で特別区も政令の指定を受け設置を可能にしました。今後五年間を目途に、新たに児童相談所を設置する自治体を支援するとしています。
また、これに先立ち昨年十月、児童福祉司の配置基準を四万人に一人以上と改正しましたが、アメリカ二千人に一人、ドイツ九百人に一人と比べ、セーフティーネットの違いは歴然です。
都の直近数値、二〇一五年度は六万四千人に一人となっており、二万二千人に一人の高知県とは三倍もの差があり、ここ数年全国最下位であります。
一方、過去の児童相談所運営指針は、人口五十万人に最低一カ所で、これを当てはめると、最低東京は二十六カ所となりますが、現在十一カ所と指針の数に大きな開きがあります。
先般、特別区長会から知事に児童相談所設置に向けたさまざまな支援の要請がありましたが、多摩地域の町田市を含む自治体も児童相談所の設置を目指すべきと考えています。
都内で過去一年間に、A君三歳、Kちゃん六カ月、Yちゃん三カ月が虐待で亡くなっています。繰り返される悲劇をとめ、二度と虐待によって幼い命が失われないよう、知事、今こそ虐待死ゼロを掲げ、児童福祉司は法基準まで増員し、家庭的養護の早期目標達成に向けた施策の推進を図り、社会的養護のこれらおくれた現状を、市区町村と連携をし大改革すべきと考えますが、知事の所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 今村るか議員の一般質問にお答えをさせていただきます。
まず、障害者が活躍できる社会の実現についてのお尋ねがございました。
私は、障害者が社会の担い手として自信やプライドを持てる社会をつくっていきたい。そのためには、一人一人の能力や適性に応じまして、働き続けられる場を提供していくことは重要だと考えております。
都はこれまで、就労面と生活面での支援を一体的に行う地域における拠点の設置や、福祉施設の生産性の向上を図る設備導入への補助などを行いまして、障害者の就労を支援してまいりました。
また、ご存じのように昨年の九月には、障害者がつくる自主製品の魅力を発信するショップKURUMIRUを、ここ都庁に開設をしたものでございます。
来年度は、新たにソーシャルファームの仕組みづくりを支援するために、福祉施設が企業のノウハウを活用して自主製品の開発や販路の拡大を行うなど、福祉施設と企業のCSR活動を結びつける、そんな取り組みを開始してまいります。
また、ソーシャルファームの考え方に立って、障害者雇用の特色あるすぐれた取り組みを行う企業を表彰してまいります。
女性も、男性も、子供も、高齢者も、障害者も、誰もが生き生きと活躍できる都市、ダイバーシティーの実現に向けまして、今後もさまざまな施策に取り組んでまいります。
次に、社会的養護への取り組みについてのお尋ねでございます。
東京には、さまざまな事情で親元では暮らせない約四千人の子供がおります。こうした子供たちの健やかな育ちを支えることが社会的養護の役割と考えております。
都はこれまで、社会的養護の取り組みを進めるために、児童相談所の体制強化に取り組んでまいりました。来年度は、児童福祉司を二十三人、児童心理司を十三人増員するなど、一層の強化を図ってまいります。
また、家庭的養護を推進するために、養育家庭の登録の拡大やファミリーホーム、グループホームの設置を進めておりまして、来年度は里親交流支援員の配置など、乳児院の養育家庭などへの支援体制を強化してまいります。
私は、社会的養護のもとにある子供たちもできるだけ家庭と同様の環境で養育されることが望ましいと考えます。こうした考え方のもとにおきまして、今後とも、児童相談所の一層の体制強化を図りながら、養育家庭を初めとした家庭的養護、これを柱に社会的養護の取り組みを進めてまいります。
残余のご質問には、関係局長よりご答弁させていただきます。
〔消防総監高橋淳君登壇〕
○消防総監(高橋淳君) 多摩地域の消防団への支援についてでありますが、東京消防庁では、多様化する災害や震災等の大規模災害に的確に対応するため、消防団と連携し、消防活動能力の向上を図ることが重要であると認識しております。
このことから、多摩地域においても消防署と消防団が連携し、放水訓練、資器材取扱訓練、震災時等における倒壊家屋からの救出救助訓練などを積極的に推進しております。
今後とも、消防署と消防団が連携した実戦的な訓練を充実し、地域の災害対応力の向上に努めてまいります。
〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕
○総務局長(多羅尾光睦君) 多摩・島しょ地域の消防団の支援についてですが、発災時の初期消火や救出救助活動など、地域に根差した消防団が担う役割は極めて重要であり、その活動強化に向けた多面的な取り組みが不可欠でございます。
都はこれまで、消防訓練所の講習内容の充実や、団員確保のための広報活動に加え、多摩・島しょ地域の消防団に対し、救助救命用の資機材の充実や消防救急無線のデジタル化などに対する支援を実施してまいりました。
さらに、消防団員の一層の安全を確保するため、今年度より、防火服を更新しようとする市町村に対し、その費用の補助を開始したところであり、来年度も引き続き実施してまいります。
今後とも、市町村と連携し、消防団の活動を支援することで、多摩・島しょ地域の防災力向上に努めてまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕
○福祉保健局長(梶原洋君) 四点のご質問にお答えをいたします。
障害者支援施設の安全対策についてでありますが、都は毎年、年度当初に、施設に対して、事故防止マニュアルの作成や職員研修の実施など、事故等防止対策の徹底を通知いたしますとともに、計画的に実地確認を行い、必要な運営指導を実施しております。
また、相模原での事件を受けまして、防犯等の安全管理について、所管する全ての施設に対して緊急時の職員体制の整備や施設設備の点検などを徹底するよう通知をいたしました。
来年度は、利用者の一層の安全確保を図るため、防犯カメラや警察等への非常通報装置などの整備を支援することとしており、今後とも、利用者が安心してサービス提供を受けられるよう、障害者支援施設の事故防止や防犯等の安全管理を徹底してまいります。
次に、施設入所者の地域移行についてでありますが、都は、平成二十五年度末時点の施設入所者数の一二%以上が平成二十九年度末までに地域生活へ移行することを目標に、入所施設に地域移行促進コーディネーターを配置し、グループホームでの生活体験の場を提供するなど、地域移行を支援しております。
また、整備費に対する特別助成のほか、借地料や定期借地権の一時金への補助などを実施し、グループホームや通所施設など、地域生活基盤の整備を促進しております。
来年度は、都外施設から入所者を受け入れるグループホームに対し、入所施設との調整等の準備に要する経費を新たに補助するなど、支援を充実することとしており、今後とも、都外施設も含め、施設入所者の地域への移行を積極的に進めてまいります。
次に、地域生活定着支援センターについてでありますが、センターは、矯正施設退所後、福祉的な支援を必要とする高齢者、障害者を対象に、入所中から退所後まで一貫した相談支援を行っており、平成二十三年の開設から昨年末までに、他道府県のセンターにつないだ方も含め約六百人を支援しております。
こうした矯正施設退所者に対する社会復帰支援は基本的に国の役割であるにもかかわらず、昨年度から運営に係る補助金を国は減額したことから、都は国に対しまして必要な経費を全額負担するよう強く求めております。
今後とも、対象者の地域定着に向け、区市町村等と連絡会を開催するとともに、社会福祉施設など関係機関との連携も強化し、センターの円滑な運営を図ってまいります。
最後に、家庭的養護の推進についてでありますが、都は、家庭的養護を進めるため、民間団体を活用して養育家庭を支援するほか、グループホームやファミリーホームの開設準備経費や家賃を独自に補助してまいりました。
今年度は、グループホーム、ファミリーホームの設置を促進するため、一法人が三カ所以上設置する場合の支援員に要する経費への補助を充実するとともに、賃貸物件を活用する際の改修経費等への補助を開始したところでございます。
来年度は、乳児院の入所児を早期に養育家庭委託につなげるための里親との交流支援や、新生児のうちに養子縁組里親に委託できるよう、乳児院と児童相談所が連携しながら、実親や里親への支援を行う取り組みなどを開始することとしておりまして、養育家庭を初め、家庭的養護を一層推進してまいります。
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