平成二十九年東京都議会会議録第三号

○副議長(小磯善彦君) 三番大門さちえさん。
〔三番大門さちえ君登壇〕
〔副議長退席、議長着席〕

○三番(大門さちえ君) 子供の歩行中の交通事故について伺います。
 過去五年間の歩行中の交通事故ですが、七歳児が突出して多いという新聞記事がありました。小学校入学とともに子供の外出がふえ、中でも遊戯中や訪問中などの登下校以外での交通事故が多いです。七歳を過ぎると子供自身も経験の中で危険を学んでいくため、年齢の上昇とともに、歩行中の事故の件数も減っていきます。
 この七歳のピークを小さくするには、小学校に入学してからではなく、小学校に入学するまでに交通安全指導を積み重ねることが重要と考えます。幼稚園のころから保護者と一緒に近所の危険な場所の確認をしたり、安全確認の習慣を身につけることが重要です。
 都では、入学前の子供の安全教育についてどのような取り組みを行っているのか伺います。
 また、子供は興味のあるものに目を奪われやすく、例えば、かわいい小犬がいたら、小犬ばかりを見てしまうこともあります。危険を認識する力も乏しく、突拍子もない行動をしたりします。左右の安全を確認してから道を渡るように教えても、道を渡りながら左右の安全を確認したり、うっかり確認を忘れてしまって道を渡り終えてから安全確認をしたりすることもあります。
 そういった子供の習性から、子供の安全教育は重要ですが、それだけで歩行中の事故を防ぐのは難しいです。大人の側も子供の動きに注意した安全の心がけ、安全な環境づくりをしなければなりません。
 例えば、現在都が進めている無電柱化も道路の見通しをよくし、事故の減少につなげるのに有効です。
 これまで警視庁では、子供の交通事故防止のためにさまざまな対策、取り締まりなどを実施してきたと思いますが、小学一年生を筆頭とする子供たちの交通事故防止をより一層推進していくために、初心者や高齢者ドライバー、保護者、学校関係者に対する指導教養に積極的に取り組むとともに、区域を定めて、時速三十キロの速度規制やその他の安全対策を組み合わせ、歩行者の安全な通行を確保するゾーン三十の整備や、歩車分離式信号機の整備などの歩行者安全確認のための対策を拡充していくべきと考えますが、警視総監のご見解を伺います。
 次は、学童クラブについて伺います。
 共働き世帯の増加により、保育園の希望者が増加し、都では待機児童の問題がなかなか解消しない状態となっていますが、子供の放課後の安心・安全指導を求め、学童クラブの登録児童数も年々増加し、学童クラブにおいても待機児童がいます。学童クラブの待機児童を減少させるために、民間業者の参入を促したいところですが、民間が参入しやすくするためには、運営費の補助の増額が必要です。
 現在、学童クラブの運営費は、基準額の三分の一ずつを国、都、区で負担しています。一見、区の負担は三分の一しかないように見えますが、現実は、基準額が低いため、基準額を超えた運営費は区の負担となります。例えば、私の地元の新宿区では、国と都が合わせて全体の三割を負担し、残りの七割を区が負担しているような感じとなってしまっています。新宿区は都心なので、家賃など、かかる経費が高いので、特にこのようないびつな状態になってしまっているのではないかと考えられます。
 都としても、国に対し、学童クラブの運営費の基準額の引き上げを求めているとのことですが、引き続き引き上げを要望するように求めます。
 また、現在、学童クラブに子供が通っている保護者からは、学童クラブの時間延長のニーズがあります。夜七時以降までの時間延長のニーズは高く、働く保護者の子供が放課後を安全・安心に過ごすためにも学童クラブの時間延長が必要と考えます。
 この時間延長のニーズに対応するための都の取り組みを伺います。
 次に、高齢者のための地域サロンについて伺います。
 二〇一〇年の国勢調査では、東京二十三区のひとり暮らし世帯の割合は四九・一%に上り、夫婦と子供の世帯の二一・五%の二倍を超えています。中でも私の住む新宿区のひとり暮らし世帯の割合は六二・六%と、二十三区で一番高い割合です。
 ひとり暮らしをしているのは若い世代ばかりではなく、六十五歳以上の高齢者に占めるひとり暮らしの割合も、二十三区平均で二六%、新宿区は三三・七%と多いです。新宿区にひとり暮らしが多いのは、ワンルームマンションが多いことと、都心で飲食店やコンビニなど、ひとり暮らしに便利な環境が整っていることが大きな理由と思われます。
 ひとり暮らしは気ままで気軽ではありますが、仕事などで人に会う機会が減る定年退職後の世代になりますと、家で引きこもってしまいがちになり、何日も外に出ずに誰とも話していないという高齢者も少なくないようです。
 地域のお医者さんの話によりますと、何日も人と会わずにしゃべっていない高齢者が診療に見えて、最初は声が思うように出ずに、自分の病状の説明がうまくできない人もいるようです。診療が終わるころにやっと話すのになれてきて、普通に声が出るのだそうです。
 話すということはストレス解消にもなりますし、また、人とコミュニケーションをとることにより、連帯感を感じ、安心したりします。昔は病院の待合室がおしゃべりの場となり、最近、何々さんが来ないわね、あら、調子が悪いのかしらという笑い話もありました。歩いて気軽に行ける場所に集まって、井戸端会議のようなおしゃべりやゲームなどができる場が必要と考えます。
 人生七十古来まれなりといっていたのが、人生九十年の時代となりました。一世代分寿命が延びた分、今、老後の生活資金に不安を感じる高齢者も多いです。お金が余りかからずに、高齢者が地域の中で楽しみながら安心して暮らせるような、さまざまな生活資源を活用した、気軽に集えるサロンをふやしていくべきと考えますが、都の取り組みを伺います。
 次は、交通について伺います。
 世間では、人口減少社会の到来と叫ばれています。東京も例外ではなく、今は他県からの流入により人口が増加していますが、二〇二五年以降は、東京の人口も減少していくと予測されています。
 また、人口の減少より先に、高齢化による労働者人口の減少が始まるといわれ、労働者が減れば税収も減ります。東京も徐々にダウンサイジングできる箇所の目星をつけて、来るべきときに備えて、準備は行うべきと考えます。
 例えば、交通局ですと、バス事業の管理の委託は、所有車両数基準で見てみますと現在は全体に対する管理の委託規模が一七%です。委託の限度は全体の三分の二である六六%ですので、あと四九%の車両数の委託が可能であります。
 また、総務省は、平成二十八年度決算から、ほぼ全ての公営企業に対し詳細な経営情報の開示を求める方針です。その上で、存続や経営改善の難しい事業については、廃止や民間売却などを促すなど、集中的に改革を進める姿勢です。
 こうした中、都営交通は、地下鉄事業は多額の累積欠損金を抱え、バスや都電、日暮里・舎人ライナーは、平成二十九年度予算も赤字を見込むなどの状態です。今後の経営の見通しを明らかにするなど、都営交通における経営情報のさらなる公表が必要となると思いますが、いかがでしょうか。
 最後に、女性の起業、創業について伺います。
 政府は、女性の輝く社会という目標を掲げています。女性が女性目線でビジネスを行うことは、今までにない新たな商品開発につながりやすく、ビジネスの多様化、そして消費者にとっても選択肢が広がることにより、より生活が便利で充実したものになることと思われます。
 このように、女性のビジネスでの活躍が期待されている一方、女性の起業は少数にとどまっています。女性の起業が少ないのは、さまざまな要因が考えられますが、お手本となる女性起業家が少ないというのも、その原因の一つと考えられます。
 都は、女性ベンチャー成長促進事業として、新規に一億六千八百万円の予算を投じ、女性ベンチャーのモデルケースの輩出を計画されていますが、どのようにやっていただけるのでしょうか、伺います。
 全国規模、さらには国際規模にまで事業拡大できるような女性起業家の輩出を目指されていますが、多くの女性の励みとなるよう、成功していただきたいです。
 女性の起業は、飲食店やネットも含む小売店が多いと聞きます。生活に密着した事業だからやりやすいという面もありますが、女性は男性に比べ、ビジネス上の人脈が少ない人も多いと思いますので、不特定多数を相手とした業種を選ぶようにも思われます。
 私自身も十年前に税理士事務所を開業しましたが、女子校出身のため、学生時代の友人、知人には専業主婦も少なくなく、また、働いていても企業の事務職が多いため、直接税理士事務所の売り上げにつながるような人脈が少なかった面で苦労しました。
 ビジネスにつながる新たな人脈を求めて、異業種交流会などの集まりに出向いたことがありますが、女性用とうたっているものの多くは、同じようにビジネス上の人脈の乏しい女性の参加が多いので、今後のビジネス取引につながるような出会いがほとんどありませんでした。十年前に比べたら、今はネットの発達で人脈がつくりやすくなった部分もあるかと思いますが、都の支援では、この人脈づくりについてどのようなサポートを行っているのか伺います。
 女性はその身体の特性上、ビジネスと結婚、出産、育児との両立という問題を切り離して考えることはできません。
 私は、税理士と行政書士の資格を持っているので、税理士や行政書士として独立開業している女性が身近に多いです。彼女たちの出産、育児の悩みといえば、まず、自分自身が仕事を休めないことです。会社員のように雇用が守られ、産休や育児休暇がもらえるわけではありません。
 それにもかかわらず、女性の自営というと、一日中家の中にいて、パソコンで仕事をしているというイメージがあるようで、保育園の申し込みをしても、あなたは自宅で自分で育児できますねといわれ、点数の加算対象とならず、待機児童になりやすいです。認可外保育もあきがありません。一人で経営している個人事務所といっても、外回りもありますし、急な来客や急な立ち会いなどもあります。赤ちゃんを連れて仕事をすることは難しいです。
 私には子供がいないのですが、赤ちゃんができたら仕事をやめてしまうかもしれない若い女性の税理士に、大事な会社の経理は任せられないといわれて、顧問契約をしてもらえなかったこともありました。
 女性の起業を促進していくのでしたら、子育ての問題もあわせて考えていかなければなりません。知事の見解を伺います。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 大門さちえ議員の一般質問にお答えいたします。
 最後のご質問で、働く女性のための子育て支援について、私からお答えをさせていただきます。
 東京で働く女性の活躍を後押しするためには、誰もが働きながら、地域で安心して子育てもできる、そのような環境を整えていくことが必要だと考えております。
 そのため、まず私は、待機児童問題を都政の最重要課題の一つに位置づけました。そして、二〇二〇年に向けた実行プランにおきまして、平成三十一年度末までに保育サービスを七万人拡充いたしまして、待機児童を解消する目標を掲げたところでございます。保育サービスの七万人分拡充ということは、七万人分の多くの女性が働く機会を確保できるというふうにいいかえてよろしいかと思います。
 来年度は、二十三区内で保育所用地を有償で貸し付ける場合に、固定資産税、都市計画税を十割減免する税制支援や、企業主導型保育施設の開設費用への支援、そして、預かり保育を進める私立幼稚園への支援の拡充など、新たな取り組みを展開してまいります。
 女性が持てる能力を遺憾なく発揮し、生き生きと活躍できる社会を実現するために、今後とも区市町村と連携いたしながら、子育て施策の充実に取り組んでまいりたいと考えております。
 残余のご質問につきましては、警視総監、そして、関係局長よりご答弁させていただきます。
〔警視総監沖田芳樹君登壇〕

○警視総監(沖田芳樹君) 子供の交通事故防止対策についてですが、子供自身への交通安全教育に加え、ドライバーに対しては、交通安全講習会や街頭指導等の機会を通じて、子供は死角に隠れやすく視野が狭いことなどについて注意喚起を行っているところです。
 また、運転免許の更新時講習においても、視聴覚教材を活用するなどして、実際の交通事故事例をもとに、子供の行動の特性を踏まえた内容にいたしております。
 さらに、学校に対しては、東京都教育委員会等を通じて、子供の交通事故の発生状況や特徴、交通事故防止のため注意すべきポイントなどについて情報提供を行っているほか、保護者に対しては、保護者会などの機会を通じて、ご家庭での交通安全教育をお願いしているところです。
 次にゾーン三十についてですが、平成二十七年度末時点で二百十三区域を整備し、平成二十八年度は四十七区域を整備しております。
 また、歩車分離式信号機については、平成二十七年度末時点で千四百五十三カ所を整備し、二十八年度は五十四カ所を整備しております。
 今後とも、ドライバー等に対する交通安全教育を初め、通学路における指導取り締まり、保護者、学校に対する情報提供や、ゾーン三十、歩車分離式信号機のさらなる整備に向け、総合的に取り組んでまいります。
〔青少年・治安対策本部長廣田耕一君登壇〕

○青少年・治安対策本部長(廣田耕一君) 子供の交通安全教育の取り組みについてですが、子供は、小学校入学を機に単独行動が多くなるなど、交通事故に遭う危険性が高まることから、入学前の子供に安全に関する知識等を習得させることが重要でございます。
 都はこれまでも、子供の交通事故に関する地図情報のウエブ発信や、交通安全運動を通じた啓発等により、子供の交通安全に取り組んでまいりました。さらに来年度からは、子供に危険を回避する力を身につけさせるため、親子で地域の安全点検事業を開始し、入学前の子供と保護者に交通ルール等を学んでもらうほか、親子で地域を歩き、交通事故等の危険性が高い箇所を確認する取り組みを行うこととしております。
 本事業をまず複数の区市でモデル的に実施し、その成果を踏まえ、各自治体へ普及を図っていくことで、子供を交通事故から守る取り組みをより一層推進してまいります。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、学童クラブについてでありますが、都はこれまで、学童クラブの時間延長のニーズに対応するため、午後七時以降まで開所する場合、都独自に整備費の補助率を引き上げ、区市町村の負担軽減を図ってまいりました。
 また、平成二十二年度に、民間事業者が運営するクラブを対象に、午後七時以降までの開所等を条件に運営費を補助する都型学童クラブ事業を開始し、平成二十九年二月末で二十の区市、二百八十五カ所となっております。
 現在、施設の新設や改築、小学校の余裕教室など、既存施設を利用する場合の改修に係る経費等についても補助を行っておりまして、今後とも学童クラブの整備や開所時間の延長に取り組む区市町村を積極的に支援してまいります。
 次に、高齢者の地域交流の拠点、いわゆるサロンについてでありますが、都は商店街の空き店舗や公共施設等を活用し、在宅高齢者の閉じこもりを防ぎ、地域住民による見守り、支え合い活動等の拠点となるサロンや、医療機関と連携して、認知症の方とその家族に介護や医療に関する情報提供や相談を行う、認知症カフェなどを設置する区市町村を、包括補助により支援しております。
 また、地域の生活支援サービスを充実するために、区市町村が配置するコーディネーターを対象に、研修や情報交換会を開催し、住民が主体となった地域交流拠点の設置を進める手法や支援事例などを紹介しております。
 今後とも、地域の特性に応じて、地域交流の拠点を整備する区市町村を支援してまいります。
〔交通局長山手斉君登壇〕

○交通局長(山手斉君) 都営交通における経営情報の公表についてでございますが、交通局ではこれまでも、局を取り巻く事業環境や中長期的な見通しを踏まえまして、三年ごとに経営計画を策定し、公表するとともに、計画の進捗状況や経営実態を示す財務諸表等について、ホームページなどで積極的に発信してまいりました。
 さらに、経営の透明性を一層高めていく観点から、経営の健全性、効率性の指標を他都市と比較して示すほか、地下鉄、バスの路線別収支状況を初めて公表するなど、詳細な経営実態の見える化を図っております。また、今後の需要予測や施設整備の更新等を踏まえました十年先までの事業別収支見通しにつきましても、年度内に公表してまいります。
 今後とも、事業運営の効率性や安全サービスへの投資など、経営の実態を公表することによりまして、都民やお客様に信頼され、支持される都営交通を目指してまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、女性ベンチャー成長促進事業についてでございますが、女性が個性や能力、ライフスタイルに応じて多様な起業の形態を選択できるようにするためには、身近な創業を後押しすることに加え、海外展開や大きな成長を目指す女性起業家のロールモデルを創出することが重要でございます。
 このため、都は来年度、創業初期からスケールアップを目指す女性起業家の支援に着手をいたします。
 具体的には、成長可能性の高い女性起業家二十名程度に対し、事業展開に必要な助言を行うメンターを配置し、集中的な育成プログラムを実施いたします。このうち十名を選抜し、海外派遣を行い、海外企業や投資家等とのネットワーク構築を後押しいたしますとともに、修了後は、その成果を広く発信してまいります。こうした取り組みによって、多くの成功事例を生み出し、多様な女性起業家の輩出と成長を促してまいります。
 次に、女性の起業における人脈づくりの支援についてでございますが、女性の起業を促進する上では、経営者としてのノウハウや家庭との両立など、身近に相談できる体制づくりとともに、起業後の事業展開に必要となるネットワーク形成への支援が必要でございます。
 都は、ことし一月に開設いたしましたTOKYO創業ステーションにおきまして、女性起業ゼミの修了生と先輩起業家等との交流会を実施し、情報や意見交換の場を設けるなど、創業期の女性をサポートしております。
 今後は、こうしたコミュニティ形成に加え、資金提供や販路開拓、事業提携等の事業拡大につながるパートナーづくりを後押しするため、大企業や投資家との交流会を数多く開催し、女性の積極的な参加を促してまいります。こうした取り組みにより、起業を行う環境の向上を図り、多くの女性起業家の輩出を目指してまいります。

○議長(川井しげお君) この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後五時三十七分休憩

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