○議長(川井しげお君) 四十九番和泉武彦君。
〔四十九番和泉武彦君登壇〕
○四十九番(和泉武彦君) 急速に少子高齢化が進む中、我が国では、平成三十七年、二〇二五年に、いわゆる団塊の世代が全て七十五歳以上となる超高齢化社会を迎えます。
こうした中で、都民国民一人一人が、医療や介護が必要な状態となっても、できる限り住みなれた地域で安心して生活を継続し、その地域で人生の最期を迎えることができる環境を整備していくことは喫緊の課題であります。
そのような中、二年前の六月に、医療介護総合確保推進法が成立し、昨年七月には東京都の地域医療構想もまとまり、二〇一八年、平成三十年に向けた東京都保健医療計画の策定が始まろうとしています。
地域医療構想の中で、区部は慢性期の病床や介護施設が不足しており、重い病気や障害を抱え自宅に戻れない多くの都民が、埼玉や千葉、そして神奈川といった周辺県や多摩地区へ流出している現実が明らかになりました。
今後、流出先である周辺県や多摩地区の高齢化のスピードは二十三区を上回って進むというふうにいわれており、慢性期医療や介護が必要な方たちの行き場がますます少なくなってくるものと予想されます。
そのため、元気に東京で過ごす取り組みが必要であり、真に健康寿命を延ばす疾病予防と介護予防の対策に取り組まなければなりません。
まず、疾病予防としての受動喫煙対策についてお伺いさせていただきます。
我が国における喫煙関連の死亡者数は、高血圧、高血糖、飲酒に比べて高いといわれております。受動喫煙による年間の死亡者数は、およそ一万五千人と推計されております。
その主な要因というものは、高血圧とか高血糖が循環器疾患のみで死亡するのに対して、喫煙は循環器だけではなく、がんや呼吸器疾患による死亡も多いからというふうにいわれております。
オリ・パラへの対応のみならず、健康寿命の延伸のためにも、受動喫煙防止対策というものは極めて重要な施策であります。健康という観点から考えた場合、受動喫煙防止対策が必要であることは当然のことでありますが、海外では、屋内全面禁煙である反面、屋外では自由に吸えます。
しかしながら、外でたばこを吸い放題、道路には吸い殻が散乱している状況というものは、決して目指すべき方向ではありません。
日本は、海外とは違って、最初にまちの美化の観点から屋外の規制を厳しく設けたため、外でたばこを吸えるスペースが少ない。そのため、屋内を全面禁煙にしてしまうと、屋内でも屋外でもたばこを吸うことができなくなってしまうと。そのため、屋内禁煙にするためには、屋外の対策も必要になってきます。また、飲食を営んでいる事業者との意見の調整も必要になってきます。
厚生労働省が考えている受動喫煙防止対策を強化する健康増進法改正案をめぐり、さまざまな議論が行われております。平成二十八年十月には、病院などは敷地内全面禁煙、運動施設などは建物内禁煙、飲食店などのサービス業を喫煙室設置可能とする原則建物内禁煙とした強化策が公表されました。その後、バーやスナックなどの一定面積以下は喫煙可能にするなどの配慮も考慮した案が報道されているところであります。
受動喫煙防止対策の強化案について、さまざまな意見があることは承知しておりますが、健康を維持し、一人一人の人生を最大限尊重する社会の実現のためにも、受動喫煙防止対策は必要と考えます。
そこで、医師として、受動喫煙防止というものは、健康に対して重要な対策の一つと考えますが、知事の見解を伺います。
次に、介護予防としてのフレイル予防についてお伺いをさせていただきます。
最近、サルコペニアとかフレイルという言葉をよく耳にしたり目にしたりすると思います。これらは健康長寿社会を実現するための重要なキーワードとなっております。
サルコペニアというものは、加齢に伴う進行性かつ全身性の筋肉量と、また筋力の減少により、身体機能の低下がもたらされることであります。フレイルというものは、虚弱を意味するフレイリティーから来ている言葉で、高齢になって筋力や活力が衰えていくことを初め、精神心理や社会性が低下していくことを指します。すなわち、健常な状態と要介護状態の中間の状態であります。
重要なのは、フレイルは身体的なことだけではなくて、社会との接点が減少したり、また、人づき合いがおっくうになって、ふさぎ込みがちになるソーシャルあるいはメンタルのフレイルということがございます。
民間レベルでは、市民サポーター主導型健康増進プログラム、フレイルチェックというものを全国で実施することにより、フレイルの早期発見、予防の活動を行っているところがあります。
これは、フレイルサポーターと呼ばれている市民サポーターが筋力や口腔のチェックを行うものであります。実際には、筋肉量測定のための指輪っかテストというのがございます。これは、両手の親指と人さし指、これで輪っかをつくって、きき足じゃない方の足の方に、ふくらはぎの一番太い部分の、ちょうどつまんでもらうとわかると思うんですけれども、そこでつまめる人というのはサルコペニアの危険性が高い、そして、つまめない人というのはサルコペニアの危険性が低いと、こういったことがわかります。
また、口腔の衰えチェックなんかでは、唇の筋肉の巧みさをはかる「ぱ」という言葉が、「ぱ」というこの発音、これは唇の筋肉の巧みさを見ます。あと「た」ですね。「た」というのは、舌の先端部分の器用さをはかるものです。どうぞ皆さん方おやりになってください。舌の根元の力強さをはかる「か」、これは、こういったものを五秒間に何回いえるかというのをカウントすると。こういったもので、フレイルというものを測定することが可能です。
また、両手を胸の上でこうやってクロスして、そして、椅子からきき足だけを使って立ち上がると。こういったことのテストも行っております。後でやってみてください。
ほかにも葛飾区では、高齢者クラブ連合会が、医師会と連携して積極的に年間二十種類ぐらいの講座やイベントもやっております。会の大久保会長は、積極的にフレイルの対策に取り組んでいきたいということもおっしゃっております。
医療面においては、このフレイルにかかる段階である高齢期における減量の注意が必要です。BMIパラドックスといって、七十四歳まで行っていると思うんですけれども、メタボ健診、これが高齢者にダイエットを勧めることになるんですね。そうなりますと、アルブミンが低下して足腰が弱ってしまうという状態になります。
疫学研究では、この総死亡率が最も低かったのは、五十歳から六十九歳ではBMIが二〇から二五でした。しかしながら、七十歳以上では二二・五から二七・五ということで、BMIがちょっと太目の方がいいというふうに結果が出ました。
そうなりますと、この生活習慣病予防と介護予防、それがちょうど重なる六十五歳から七十五歳の間というものは、栄養管理のギアチェンジが必要になってきます。そういったものにより、フレイルの予防というものを可能にさせていくわけでございます。
こういったフレイル対策というものを積極的に進めていくべきだというふうに考えておりますけれども、都の見解を伺います。
次に、病院の保有救急車の有効活用についてお伺いします。
病院間の搬送については、この転院のときには、一刻を争う救急搬送と、あるいは一刻を争うわけではないけれども、きちんとした医療機器の設備のもと、転院を進めるべきものがあります。
これは、現在では、ほとんどが通常の消防庁の救急車による転院搬送が行われています。
最近では、自分の病院に救急車があったりとか、病院救急車で搬送する病院というのがありますけれども、いまだ十分ではありません。
また、在宅療養中あるいは施設入所中の高齢者の緊急入院要請について、病院救急車を活用する取り組みが、葛飾区や町田市や八王子市などの医師会を中心に行われております。
このような病院救急車を有効に活用するということは、一般の救急出動が減少することにつながるため、救急搬送システムを維持するための重要な課題です。
消防庁は、現在、救急車、代車も含めると三百台以上所有しているということを伺っております。この救急車は一定年がたつと廃車にされるというふうに伺っています。
都の条例によりますと、公益上の必要に基づき、都以外の者に物品を譲渡するときは、無償で、もしくは時価より低い金額で譲渡することができるとなっておりますけれども、こうした役割を終えた廃車予定の救急車両を病院救急車として有効活用するために譲渡可能かと思われますけれども、都の見解を伺います。
また、外国人医療対応ですが、平成二十八年、訪日外国人観光客は二千四百三万人でした。こういった方々の中で、外国人が医療を受診するときに、当事者及び医療機関双方が安心できる体制が必要です。
そして、私は第三回の定例会で、訪日外国人に対する救急搬送体制、救急車を呼ぶべきか迷った場合の相談体制の充実について、電話で相談できる救急相談センターや東京版救急受診ガイドの消防庁の取り組みについて伺いました。この東京版救急受診ガイドの多言語化に向けて、消防庁におけるその後の検討状況と今後の取り組みについて伺います。
また、訪日外国人へのコールセンターサービスの状況について伺います。
病気とか、あるいはけがに見舞われるなど、困難な状況に直面したときに、直ちにサポートができるよう、コールセンターを活用して、さまざまな問い合わせに的確に対応できる体制が必要だということを、これも三定にて質問をさせていただきました。
そこで今回、実際にどのような事業が行われる予定なのか、具体的な内容についてお伺いさせていただきます。
我が国における医療及び介護の提供体制というものは、世界に冠たる国民皆保険を実現した医療保険制度、それから、創設から十七年がたつ、社会に定着した介護保険制度、このもとで着実に整備されてきました。
しかしながら、高齢化の進展に伴う慢性疾患の増加により、疾病構造というものが変化し、そして、医療ニーズは病気と共存しながら、QOLの維持向上を図っていく必要性が高まっております。介護ニーズにおきましても、医療及び介護の連携というものが、これまで以上に重要になってきます。
私は、在宅医療というものを、この十年間やってまいりました。開業当初からずっと必要だというふうに思っておりました医療と介護の連携、これが十年間うまくいかなかったということがございます。これがやっとスタートラインに立てたということに非常に感慨深いものがあります。この医療と介護の連携がしっかりとなされるべきことこそ、将来にわたって健康で、地域で暮らしていけることにつながるわけです。
いま一度確認しますけれども、健康の定義というものは、WHOで、肉体的に、精神的に、そして社会的に完全な状態であることであります。まさに、この健康というものこそ、人間の幸福と強い相関関係があるんだと、こういった論文もございます。人が幸せだというふうに感じるためには、健康でなければならないわけです。都民の幸せを得てもらうために、我々が存在しているのであれば、我々は都民の健康をしっかりと守っていくべきでありまして、議会も、そして都も、そのつもりで都民に接していただくことを求め、私の質問を終わらせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事小池百合子君登壇〕
○知事(小池百合子君) 和泉武彦議員のご質問及び大変ためになる情報をありがとうございました。
私からは一問お答えさせていただきます。
受動喫煙防止対策についてのお尋ねでございました。
ご承知のように、スモークフリーへの取り組みは、もはや世界的な潮流でございます。受動喫煙防止対策には、都民の健康増進の観点から、また、オリンピック・パラリンピックのホストシティーとしての責任を果たすためにも、しっかり取り組まなければなりません。
現在、国では、法制化に向けてさまざまな議論がなされておりますが、ぜひとも、屋内での受動喫煙を防止するように実効性のある法律を制定していただきたいと考えております。
また、都におきましては、国の動きを注視しつつ、都民の意識、そして飲食店、宿泊施設の調査を行うなど、対策に向けました準備を加速していく考えでございます。
その他の質問につきましては、関係局長より答弁をさせます。
〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕
○福祉保健局長(梶原洋君) フレイル対策についてのご質問にお答えをいたします。
フレイルを予防するためには、その意味と予防の重要性を広く啓発いたしますとともに、地域における健康づくりや、介護予防の取り組みを支援することが必要でございます。
そのため、都は現在、包括補助等により、健康教育や高齢者の通いの場づくりなどに取り組む区市町村を支援しております。
また、今年度、医療や介護関係の団体と連携いたしまして、フレイルを都民にわかりやすく紹介する冊子の作成に取り組んでいるところでございます。
国は今年度から、低栄養防止、生活習慣病等の重症化予防に向けまして、高齢者の特性を踏まえた保健指導等のモデル事業を開始しており、都は今後、国の取り組みも踏まえながら、関係団体や区市町村と連携して、フレイル予防の取り組みを進めてまいります。
〔消防総監高橋淳君登壇〕
○消防総監(高橋淳君) 二点のご質問にお答えいたします。
まず、使用廃止する救急車両の病院救急車への活用についてでありますが、東京消防庁では、医療機関が保有し、患者搬送に使用する病院救急車は、救急需要対策に効果があると認識しております。
現在、救急車両の使用の廃止に当たっては、車両登録の抹消を行った上で廃車しておりますが、関係条例に基づき、公益上の必要があると認められる場合は、車両を譲渡することが可能であります。
今後、医療機関から要請があった場合には、東京都医師会等の関係機関と連携し、適切に対応してまいります。
次に、東京版救急受診ガイドの多言語化についてでありますが、東京消防庁では現在、救急車を呼ぶべきか迷った場合に、症状を確認し、緊急性の有無や受診の必要性などをインターネット上で自己判断できる東京版救急受診ガイドを運用しております。
平成二十九年度には、東京都医師会や救急専門医等と連携して、英語版を作成し、英語圏外国人による有用性を検証した後、インターネット上に公開していく予定でございます。
今後とも、関係機関と連携しながら、東京版救急受診ガイドのさらなる多言語化に向けた検討を進めてまいります。
〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕
○産業労働局長(藤田裕司君) 外国人旅行者へのサポートについてでございますが、海外から東京を訪れる観光客が病気などの困難な状況に直面した場合でも、意思の疎通を円滑に行い、安心して滞在できる環境をつくり上げることは重要でございます。
都は現在、宿泊施設等におきまして、従業員からの電話連絡により、接客時の通訳を行うコールセンターのサービスを二十四時間体制で提供しているところでございます。
来年度は、外国人旅行者が観光情報を入手したいときや病院で診療を受けたいときなどに、コールセンターに直接問い合わせのできる仕組みをモデル的に導入をいたします。同センターでは、観光名所や交通情報を多言語で案内いたしますほか、医療機関案内サービス「ひまわり」とも連携をし、外国語で受診できる病院等の紹介も行います。
これらの取り組みによりまして、外国人旅行者が安心して観光のできる環境整備を進めてまいります。
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