平成二十九年東京都議会会議録第一号

平成二十九年二月二十二日(水曜日)
 出席議員 百二十六名
一番小林 健二君
二番加藤 雅之君
三番大門さちえ君
四番和泉ひろし君
五番山森 寛之君
六番前田 和茂君
七番大場やすのぶ君
八番大津ひろ子君
九番塩村あやか君
十番やながせ裕文君
十一番小松 久子君
十二番西沢けいた君
十三番宮瀬 英治君
十四番米倉 春奈君
十五番白石たみお君
十六番斉藤やすひろ君
十七番栗林のり子君
十八番遠藤  守君
十九番伊藤こういち君
二十番菅野 弘一君
二十一番川松真一朗君
二十二番栗山よしじ君
二十三番小松 大祐君
二十四番堀  宏道君
二十五番木村 基成君
二十六番山内  晃君
二十七番上田 令子君
二十八番おときた駿君
二十九番山内れい子君
三十番中山ひろゆき君
三十一番田中 朝子君
三十二番石川 良一君
三十三番里吉 ゆみ君
三十四番和泉なおみ君
三十五番尾崎あや子君
三十六番大松あきら君
三十七番吉倉 正美君
三十八番まつば多美子君
三十九番高倉 良生君
四十番松田やすまさ君
四十一番柴崎 幹男君
四十二番舟坂ちかお君
四十三番清水 孝治君
四十四番鈴木 錦治君
四十五番神野 次郎君
四十六番北久保眞道君
四十七番高椙 健一君
四十八番栗山 欽行君
四十九番和泉 武彦君
五十番両角みのる君
五十一番西崎 光子君
五十二番あさの克彦君
五十三番新井ともはる君
五十四番中村ひろし君
五十五番島田 幸成君
五十六番とくとめ道信君
五十七番河野ゆりえ君
五十八番小竹ひろ子君
五十九番上野 和彦君
六十番野上 純子君
六十一番中山 信行君
六十二番谷村 孝彦君
六十三番藤井  一君
六十四番近藤  充君
六十五番小宮あんり君
六十六番ほっち易隆君
六十七番河野ゆうき君
六十八番島崎 義司君
六十九番鈴木 章浩君
七十番きたしろ勝彦君
七十一番田中たけし君
七十二番鈴木 隆道君
七十三番神林  茂君
七十四番早坂 義弘君
七十五番秋田 一郎君
七十六番今村 るか君
七十七番斉藤あつし君
七十八番小山くにひこ君
七十九番大西さとる君
八十番畔上三和子君
八十一番大島よしえ君
八十二番松村 友昭君
八十三番鈴木貫太郎君
八十四番ともとし春久君
八十六番長橋 桂一君
八十七番中屋 文孝君
八十八番鈴木あきまさ君
八十九番桜井 浩之君
九十番山崎 一輝君
九十一番三宅 正彦君
九十二番山加 朱美君
九十三番高橋かずみ君
九十四番山田 忠昭君
九十五番林田  武君
九十六番こいそ 明君
九十七番田島 和明君
九十八番古賀 俊昭君
九十九番立石 晴康君
百番野上ゆきえ君
百一番尾崎 大介君
百二番石毛しげる君
百三番植木こうじ君
百四番かち佳代子君
百五番曽根はじめ君
百六番小磯 善彦君
百七番橘  正剛君
百八番東村 邦浩君
百九番中嶋 義雄君
百十番宇田川聡史君
百十一番高橋 信博君
百十二番崎山 知尚君
百十三番高木 けい君
百十四番相川  博君
百十五番吉原  修君
百十六番野島 善司君
百十七番三宅 茂樹君
百十八番川井しげお君
百十九番野村 有信君
百二十番高島なおき君
百二十一番吉野 利明君
百二十二番内田  茂君
百二十三番酒井 大史君
百二十四番山下 太郎君
百二十五番清水ひで子君
百二十六番大山とも子君
百二十七番吉田 信夫君

 欠席議員 なし
 欠員
    八十五番
 出席説明員

知事小池百合子君
副知事安藤 立美君
副知事川澄 俊文君
副知事中西  充君
副知事山本  隆君
教育長中井 敬三君
東京都技監都市整備局長兼務邊見 隆士君
政策企画局長長谷川 明君
総務局長多羅尾光睦君
財務局長武市  敬君
警視総監沖田 芳樹君
主税局長目黒 克昭君
生活文化局長中嶋 正宏君
オリンピック・パラリンピック準備局長塩見 清仁君
環境局長遠藤 雅彦君
福祉保健局長梶原  洋君
産業労働局長藤田 裕司君
建設局長西倉 鉄也君
港湾局長斎藤 真人君
会計管理局長浅川 英夫君
消防総監高橋  淳君
交通局長山手  斉君
水道局長醍醐 勇司君
下水道局長石原 清次君
青少年・治安対策本部長廣田 耕一君
病院経営本部長内藤  淳君
中央卸売市場長村松 明典君
選挙管理委員会事務局長福田 良行君
人事委員会事務局長松山 英幸君
労働委員会事務局長土渕  裕君
監査事務局長猪熊 純子君
収用委員会事務局長砥出 欣典君

二月二十二日議事日程第一号
第一 第一号議案
平成二十九年度東京都一般会計予算
第二 第二号議案
平成二十九年度東京都特別区財政調整会計予算
第三 第三号議案
平成二十九年度東京都地方消費税清算会計予算
第四 第四号議案
平成二十九年度東京都小笠原諸島生活再建資金会計予算
第五 第五号議案
平成二十九年度東京都母子父子福祉貸付資金会計予算
第六 第六号議案
平成二十九年度東京都心身障害者扶養年金会計予算
第七 第七号議案
平成二十九年度東京都中小企業設備導入等資金会計予算
第八 第八号議案
平成二十九年度東京都林業・木材産業改善資金助成会計予算
第九 第九号議案
平成二十九年度東京都沿岸漁業改善資金助成会計予算
第十 第十号議案
平成二十九年度東京都と場会計予算
第十一 第十一号議案
平成二十九年度東京都都営住宅等事業会計予算
第十二 第十二号議案
平成二十九年度東京都都営住宅等保証金会計予算
第十三 第十三号議案
平成二十九年度東京都都市開発資金会計予算
第十四 第十四号議案
平成二十九年度東京都用地会計予算
第十五 第十五号議案
平成二十九年度東京都公債費会計予算
第十六 第十六号議案
平成二十九年度東京都臨海都市基盤整備事業会計予算
第十七 第十七号議案
平成二十九年度東京都病院会計予算
第十八 第十八号議案
平成二十九年度東京都中央卸売市場会計予算
第十九 第十九号議案
平成二十九年度東京都都市再開発事業会計予算
第二十 第二十号議案
平成二十九年度東京都臨海地域開発事業会計予算
第二十一 第二十一号議案
平成二十九年度東京都港湾事業会計予算
第二十二 第二十二号議案
平成二十九年度東京都交通事業会計予算
第二十三 第二十三号議案
平成二十九年度東京都高速電車事業会計予算
第二十四 第二十四号議案
平成二十九年度東京都電気事業会計予算
第二十五 第二十五号議案
平成二十九年度東京都水道事業会計予算
第二十六 第二十六号議案
平成二十九年度東京都工業用水道事業会計予算
第二十七 第二十七号議案
平成二十九年度東京都下水道事業会計予算
第二十八 第二十八号議案
職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例
第二十九 第二十九号議案
東京都職員定数条例の一部を改正する条例
第三十 第三十号議案
特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十一 第三十一号議案
市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三十二 第三十二号議案
東京都区市町村振興基金条例の一部を改正する条例
第三十三 第三十三号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例
第三十四 第三十四号議案
都と特別区及び特別区相互間の財政調整に関する条例の一部を改正する条例
第三十五 第三十五号議案
平成二十八年度分の都と特別区及び特別区相互間の財政調整の特例に関する条例
第三十六 第三十六号議案
東京都議会議員及び東京都知事の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例の一部を改正する条例
第三十七 第三十七号議案
東京都都税条例等の一部を改正する条例
第三十八 第三十八号議案
東京都体育施設条例の一部を改正する条例
第三十九 第三十九号議案
東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第四十 第四十号議案
学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
第四十一 第四十一号議案
東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第四十二 第四十二号議案
東京都市計画事業北新宿地区第二種市街地再開発事業施行規程を廃止する条例
第四十三 第四十三号議案
東京都都市整備局関係手数料条例の一部を改正する条例
第四十四 第四十四号議案
東京都国民健康保険運営協議会条例
第四十五 第四十五号議案
東京都国民健康保険調整交付金条例の一部を改正する条例
第四十六 第四十六号議案
東京都児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第四十七 第四十七号議案
東京都障害者支援施設等に関する条例の一部を改正する条例
第四十八 第四十八号議案
東京都イノベーション創出基金条例
第四十九 第四十九号議案
東京都工場立地法地域準則条例を廃止する条例
第五十 第五十号議案
東京都海上公園条例の一部を改正する条例
第五十一 第五十一号議案
東京都自然公園条例の一部を改正する条例
第五十二 第五十二号議案
東京都無電柱化推進基金条例
第五十三 第五十三号議案
東京都立公園条例の一部を改正する条例
第五十四 第五十四号議案
特定異性接客営業等の規制に関する条例
第五十五 第五十五号議案
警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第五十六 第五十六号議案
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の一部を改正する条例
第五十七 第五十七号議案
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例
第五十八 第五十八号議案
東京消防庁職員定数条例の一部を改正する条例
第五十九 第五十九号議案
都立府中療育センター(二十八)改築工事請負契約
第六十 第六十号議案
都営住宅二十八CS─一〇一東(港区北青山三丁目・港区施設)工事請負契約
第六十一 第六十一号議案
都営住宅二十八H─一〇七東(江東区豊洲四丁目)工事請負契約
第六十二 第六十二号議案
都営住宅二十八CH─一〇二西(村山・武蔵村山市施設)工事その二請負契約
第六十三 第六十三号議案
都営住宅二十八H─一〇四東(江東区南砂三丁目)工事請負契約
第六十四 第六十四号議案
警視庁有家族者待機寮戸田橋住宅B号館(二十八)耐震改修工事請負契約
第六十五 第六十五号議案
警視庁四谷警察署庁舎(二十八)改築工事請負契約
第六十六 第六十六号議案
都立城東高等学校(二十八)改修工事請負契約
第六十七 第六十七号議案
都立府中療育センター(二十八)改築空調設備工事請負契約
第六十八 第六十八号議案
都立府中療育センター(二十八)改築給水衛生設備工事請負契約
第六十九 第六十九号議案
環状七号線地下広域調節池(石神井川区間)工事請負契約
第七十 第七十号議案
平成二十八年度十三号地新客船ふ頭岸壁(-(マイナス)十一・五m)駐車場等用地建設工事請負契約
第七十一 第七十一号議案
平成二十八年度新砂水門(再整備)建設工事(その四)請負契約
第七十二 第七十二号議案
妙正寺川整備工事(その二〇二)請負契約
第七十三 第七十三号議案
包括外部監査契約の締結について
第七十四 第七十四号議案
土地の信託の変更について
第七十五 第七十五号議案
八王子市指定介護療養型医療施設の指定等に係る事務の受託について
第七十六 第七十六号議案
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターに対する出資について
第七十七 第七十七号議案
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター定款の変更について
第七十八 第七十八号議案
区分建物の買入れについて
第七十九 第七十九号議案
都道の路線の認定及び廃止について
第八十 第八十号議案
平成二十九年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区・市の負担について
第八十一 第八十一号議案
平成二十八年度の連続立体交差事業の実施に伴う費用の関係特別区の負担の変更について
第八十二 第八十二号議案
多摩川流域下水道北多摩一号処理区の建設に要する費用の関係市の負担について
第八十三 第八十三号議案
平成二十八年度東京都一般会計補正予算(第三号)
第八十四 第八十四号議案
平成二十八年度東京都特別区財政調整会計補正予算(第一号)
第八十五 第八十五号議案
平成二十八年度東京都用地会計補正予算(第一号)
第八十六 第八十六号議案
平成二十九年度東京都中央卸売市場会計補正予算(第一号)
第八十七 第八十七号議案
東京都指定障害児通所支援の事業等の人員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第八十八 第八十八号議案
東京都指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
第八十九 第八十九号議案
東京都障害福祉サービス事業の設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例
議事日程第一号追加の一
第一 議員提出議案第四号の撤回
第二 議員提出議案第一号
東京都議会議員の議員報酬等の特例に関する条例
第三 議員提出議案第二号
東京都議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
第四 議員提出議案第三号
東京都政務活動費の交付に関する条例の一部を改正する条例
第五 豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置に関する動議

   午後一時開会・開議

○議長(川井しげお君) ただいまから平成二十九年第一回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(川井しげお君) まず、議席の変更を行います。
 議席変更の申し出がありますので、会議規則第二条第三項の規定により、お手元配布の議席変更表のとおり、議席の一部を変更いたします。
(別冊参照)

○議長(川井しげお君) 次に、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   四番   和泉ひろし君 及び
   六十七番 河野ゆうき君
を指名いたします。

○議長(川井しげお君) 謹んでご報告申し上げます。
 江東区選出の木内良明議員には、去る一月二十六日逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。
 江東区選出の木内良明議員におかれましては、ご家族の懸命な看護と願いもむなしく、去る一月二十六日、ご逝去されました。
 享年七十二歳、長年、都議会議員として務められ、都政の発展に精力的に取り組まれていたやさきの突然の悲報に、ただただ驚愕いたしますとともに、痛惜の念にたえません。
 ここに私は、皆様方のご同意によりまして、東京都議会を代表し、謹んで木内良明議員への哀悼の言葉を述べさせていただきます。
 木内議員は、豪放さと繊細さをあわせ持ち、人情味が厚く、誰に対しても誠心誠意、公平無私であり、地域の方々のことや広く都政のことを真剣に考え、行動される方でした。
 本日、本議場に、誰からも信頼された木内議員の姿が見られず、議員一同、惜別の情を禁じ得ません。
 顧みますと、木内議員は、昭和五十四年、一人でも困っている人がいたらそれは政治の責任だとの強い思いから、衆議院議員に立候補、ご当選され、以後、衆議院議員を三期務められました。
 その後、衆議院議員時代の実績と豊富な経験を生かすべく、地元の方々の熱い期待に支えられ、平成九年に東京都議会議員にご当選され、活躍の場を都政に移されました。
 都議会議員としては五期連続してご当選を果たされ、この間、所属会派にあっては政務調査会長、議員団長などの要職を歴任されました。
 都議会では、経済・港湾委員会や予算特別委員会などでご活躍され、持ち前の熱意と行動力、国政や都政の場で培われた政務調査能力に基づく具体的かつ説得力のある数多くの政策提言を行い、都政の抱える重要課題の解決に向け、全力を尽くされました。
 特に、福祉の分野において大変な情熱を注がれ、交通事故などで脳が部分的に損傷を受け、言語や記憶などの機能に障害を来す高次脳機能障害者対策にご尽力をされておりました。医療や福祉の制度の谷間に置かれていたことから、その対策を都議会でいち早く取り上げ、都における取り組みを促進させ、その動きは国や全国自治体へも波及させるなど、その卓越した政治手腕と行動力は目をみはるものがございました。
 平成十七年には、同僚議員の推挙により、第三十六代都議会副議長にご就任されました。副議長在任中は、今後の首都東京の目指すべき姿として「十年後の東京」が策定され、都議会での活発な議論などがございましたが、川島忠一議長を助け、円滑な議会運営にご尽力なされたことは、我々の記憶に刻み込まれています。
 また、強い責任感と行動力を兼ね備え、人々のつながりを大切にされ、都民一人一人からの声には丁寧に耳を傾けるという姿勢を貫かれたことから、多くの方々から先生に大いなる信頼を置き、そのお人柄を慕われておりました。
 議場においても、木内議員は、同僚議員の発言を常に真摯な姿勢で聞き、ご自身の豊富な経験と知識をもとに、時に発せられる的を得たかけ声は、議場の空気を引き締め、また和ませてきました。今後は、それが聞けなくなる寂しさを感じるのは私だけではなく、ここにいる議員や理事者の皆さんも感じていることと思います。
 木内議員がご尽力された都政の発展には、各分野にわたってまだまだ多くの課題があります。我々都議会議員一同は、木内議員のご遺志を引き継ぎ、首都東京の発展に一層邁進していくことで、そのご遺徳にお応えをしたいと思います。
 木内議員、どうか安らかにお眠りください。
 最後になりましたが、ご遺族の方々がこの悲しみを乗り越えて力強く歩まれていかれますようお願い申し上げ、木内議員のご冥福を心からお祈りを申し上げまして、追悼の言葉とさせていただきます。
  平成二十九年二月二十二日
       東京都議会議長 川井しげお

○議長(川井しげお君) 謹んでご報告申し上げます。
 名誉都民岡野俊一郎氏には、去る二月二日、逝去されました。まことに哀悼痛惜の念にたえません。
 ここに生前のご功績をたたえるとともに、故人のご冥福をお祈りし、議会として深甚なる弔意を表します。

○議長(川井しげお君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(松丸俊之君) 平成二十九年二月十五日付東京都告示第二百六号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、本定例会に提出するため、議案八十九件の送付がありました。
 次に、知事及び監査委員並びに行政委員会より、平成二十九年中における東京都議会説明員及び説明員の委任について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、包括外部監査人より、平成二十九年二月十五日付で、平成二十八年度包括外部監査報告書の提出がありました。
 次に、知事より、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づく専決処分について、報告が二件ありました。
 内容は、訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告について並びに東京都高等学校・大学等進学奨励事業に係る貸付金の償還免除に関する報告についてであります。
 次に、監査委員より、例月出納検査の結果について報告がありました。
 また、平成二十八年工事監査、平成二十八年財政援助団体等監査及び平成二十八年行政監査の結果について、それぞれ報告がありました。
 次に、包括外部監査の結果に基づき知事が講じた措置の通知内容について、提出がありました。
(別冊参照)

○議長(川井しげお君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 平成二十八年第四回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(一八ページ)に掲載〕

○議長(川井しげお君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。
 去る二月二十一日付をもって、お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において、それぞれ同日付をもってこれを許可いたしました。
〔常任委員所属変更名簿は本号末尾(九一ページ)に掲載〕

○議長(川井しげお君) 次に、閉会中の議会運営委員、オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員並びに豊洲市場移転問題特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしました。
 なお、委員の欠員を補充するため、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
〔議会運営委員、オリンピック・パラリンピック等推進対策特別委員、豊洲市場移転問題特別委員辞任・選任名簿は本号末尾(九一ページ)に掲載〕

○議長(川井しげお君) 次に、日程の追加について申し上げます。
 九番塩村あやかさん外二十八名より、議員提出議案第四号の議案撤回請求書が提出されました。
 また、議員より、議員提出議案第一号、東京都議会議員の議員報酬等の特例に関する条例外条例二件及び一番小林健二君外百二十五名より、豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置に関する動議が文書をもって提出されました。
 これらを本日の日程に追加をいたします。

○議長(川井しげお君) 会期についてお諮りをいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から三月三十日までの三十七日間といたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川井しげお君) ご異議なしと認めます。よって、会期は三十七日間と決定をいたしました。

○六十七番(河野ゆうき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 平成二十八年度包括外部監査結果の報告について、地方自治法第二百五十二条の三十四第一項の規定に基づき、包括外部監査人の説明を求めることを望みます。

○議長(川井しげお君) お諮りをいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川井しげお君) ご異議なしと認めます。よって、平成二十八年度包括外部監査結果の報告について、包括外部監査人の説明を求めることに決定をいたしました。
 ここで、佐久間清光包括外部監査人の出席を求めます。
〔包括外部監査人佐久間清光君入場、着席〕

○議長(川井しげお君) ただいまご出席いただきました包括外部監査人をご紹介いたします。
 佐久間清光さんでございます。
〔包括外部監査人挨拶〕

○議長(川井しげお君) 本日は、ご多忙のところ、監査結果報告の説明のためご出席をいただき、まことにありがとうございます。

○議長(川井しげお君) この際、知事より、平成二十九年度施政方針について発言の申し出がありますので、これを許します。
 小池百合子さん。
〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 平成二十九年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。
 一月二十六日、木内良明議員が逝去されました。衆議院議員を三期、都議会議員を五期務め、国政及び都政の発展に尽くされました。また、二月二日、名誉都民である元日本サッカー協会会長、岡野俊一郎さんがご逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、お二人のご冥福を心よりお祈りを申し上げます。
 世界は今、大きな変化の真っただ中にあります。国民投票によりますイギリスのEU離脱、いわゆるブレグジットの決定や、アメリカ第一を掲げるトランプ新政権の誕生など、不透明で不安定、渦潮のような状態へと突き進んでいるように思えます。産業や経済構造の変化が生み出した格差拡大への不満を背景に、反グローバリズムのうねりが席巻し、世界中が内向き志向を強めつつあります。
 こうした国際情勢を背景に、今こそ日本の首都東京を鍛え直さなければなりません。東京の発展を支える都政のあり方や議会との関係の整理、見直しも必要であります。徹底した情報公開はその第一歩であります。ただし、自分たちの都合のいい情報だけを発信するのでは、情報公開とはいえません。
 私が東京大改革の名のもとに、都政の透明化を第一に掲げているのは、都民の皆様に都政の真実を曲げることなく届けることで、都民一人一人に考え、判断していただくためであります。実際、これまでにないほど、さらには全国的にも都政への関心は高まりを見せております。
 そして、まさにこの透明化が問われる一つの問題が、築地市場の移転問題であります。
 先月の地下水モニタリング調査の結果については、大変重く受けとめております。改めて、複数の機関による調査を実施し、科学的な分析を進めて、実態を正確に把握した上で、都民の皆様に情報を公開いたします。
 先月、築地市場を視察いたしました。消費者である都民、国民、そして働く業者の皆様のために、市場の安全・安心を確実に守らなければならない、その思いをさらに強くいたしました。安全が科学的、法律的な根拠に基づくものである一方、安心は消費者の理解と納得によるものであります。そのためにも、都民の判断に資する情報公開を進めます。専門家会議と市場問題プロジェクトチームの議論を踏まえ、市場の持続可能性もきちんと検討して、都民の皆様のご意見も参考に、総合的に判断してまいります。
 一方で、延期に伴う業者の皆様のご負担につきましては、四月からの補償開始に向けて補正予算案を本定例会に提案いたしております。また、豊洲の用地購入の経緯も明らかにし、引き続き真摯に対応してまいります。
 我が国の年間出生数は、統計開始以来、初めて百万人を割り込む見通しとなり、東京でも二〇二五年を境に人口が減少に転じると見込まれております。社会の持続的な成長は、知的な創造こそが源でありますが、それを生み出す新しい世代がこのまま減り続けることは、資源に乏しい我が国にとりまして死活問題であります。内外ともに困難な状況に直面し、未来が不確実さを増している今、従来の延長線上の発想にとらわれていては、それこそ渦潮にのみ込まれてしまうことでありましょう。
 しかし、見方を変えれば、国際情勢が流動的ということは、東京が世界から高度な人材や投資を呼び込み、成長を加速するチャンスでもあります。旧来の発想から抜け出し、世界の潮流を見きわめ、なすべきことをなす。そうすることで、都民一人一人の希望あふれる未来を切り開くことができるのであります。
 だからこそ、東京を今、大きく改革しなければなりません。現在、そして未来の都民への責任を果たすため、東京大改革を進めなければならないのです。東京大改革とは透明化を根づかせ……
〔傍聴席にて発言する者あり〕

○議長(川井しげお君) 傍聴人に申し上げます。ご静粛にお願いをいたします。

○知事(小池百合子君) これまでの延長線を超えた新たな発想を常に生み出すために、自律改革を重ねて、都政の手法と体質を変えること。そして、都民とともに大義と共感のある政策を進め、誰もが生き生きと輝ける東京の明るい未来を築くことであります。
 就任以来、幅広く都政の課題を掘り起こし、都民目線で、このままでいいのかと考えるものについては、既に決まったとされたことでありましても、立ちどまって検証を行ってまいりました。昨年九月に設置した都政改革本部では、オリンピック・パラリンピック予算を見直し、都の施設の整備費を約四百億円縮減したところであります。
 情報公開、内部統制、自律改革、この三つのテーマの改革にも取り組んでおります。
 情報公開については、開示請求のあった文書を極力そのまま公開し、いわゆるノリ弁状態からの脱却を目指します。公文書の閲覧手数料の無料化、ICTを活用した公文書データの無料提供、公金支出情報の公開、各種審議会やその議事録の公開なども進めてまいります。知事の公務日程の公開も始めており、予算編成のプロセスも、公開の場で都議会、区市町村、各種団体の皆様からの要請を直接伺うなど、透明化を進めてまいりました。
 入札制度につきましても、一者入札、最低制限価格、予定価格の事前公表などの見直しを検討中であります。
 自律改革については、都政改革本部の本部員である各局長を中心に各現場で取り組んでおり、これまでに都民サービスの向上や事業の効率化など、五百件近くのテーマに対応してまいりました。個々の職員からも、職員目安箱に対し約六百件の提案が寄せられております。その提案をきっかけに、先日は都立高校の一つを訪問し、未来を担う生徒の皆さんにエールを送らせていただきました。自分の提案で、知事とともに東京をよりよく変えていける、職員にそう思ってもらうことが、都民ファーストの都政につながると信じています。
 実は都庁は、平成十八年度を最後に、いわゆる行政改革のプランを策定しておりません。そこで、四月から、二〇二〇年に向けた実行プランと対をなす二〇二〇改革プランの策定作業を始め、業務の効率化、官民の適切な役割分担、監理団体の戦略的活用、時代に合った人事制度や執行体制の見直しなどに取り組む予定であります。その先駆けとして、先日、ライフワークバランスに関するプロジェクトチームを設置いたしました。
 あわせて、来年度からは、各局の自律改革のレベルも上げてまいります。これまでの現場改善のレベルから、都民ファーストや賢い支出の視点に立った経営戦略改革のレベルへと上げていく。そのため、当面は主要事業の実態の情報公開、すなわち見える化を図り、適正な予算、人員、サービス水準となっているか、また、ほかにより有効な政策がないかなど、総合的な見直しを行ってまいります。
 このように、今後の都政改革では、情報公開を基軸にしつつ、都民ファースト、賢い支出の観点から、これまでの組織、制度、政策の全てを包括的に見直すことで、都庁を柔軟な発想で課題を解決する組織へと磨き上げてまいります。
 なお、現在、国において文部科学省の再就職が大きな問題となっております。都は昨年度、条例を制定し、第三者委員会によるチェックなどの運用を行っているところでありますが、この際、再度、幹部職員の再就職について、監理団体のあり方とあわせて検証してまいります。
 手法と体質を変えた新たな都政のもとで実現を目指す新しい東京。その具体的な道しるべとなるのが、私の知事としての最初の総合計画である二〇二〇年に向けた実行プランであります。セーフシティー、ダイバーシティー、スマートシティー、この三つのシティーの実現に向けた道筋を明らかにし、東京のさらなる成長のための四つの挑戦と五つの戦略を掲げております。大義ある五百余りの政策目標を、それぞれ具体的な工程に従って着実に達成し、都民の皆様の共感を追い風に、未来への航路を突き進んでまいります。
 私たちの目の前に広がる可能性は無限であります。実行プランにおきましても、ビヨンド二〇二〇として、二〇二〇年の先の明るい未来像の一端を掲げました。私は、さらに夢を膨らませ、それこそ大風呂敷を広げるかのように、まだ見ぬ東京の姿を大胆に描いていきたいと考えております。
 先月、未来のビジョンを語る懇談会を開催し、各分野で活躍される高校生から四十代半ばまでの皆様方の豊かな発想に、大変刺激を受けました。東京のこれからへの責任を負う政治家として、次代を担う若い世代と大いに語り合い、果敢に未来を切り開いてまいります。
 そして、実行プランのまさしく実行力を支えるのが、知事として初めて編成し、この議会でご審議をいただく平成二十九年度予算案でございます。都税収入は景気に左右されやすく、世界の経済動向も不透明でありますが、今後の社会保障やインフラの維持更新など、都は膨大な財政需要を抱えております。
 まさしくワイズスペンディング、賢い支出が求められる中、新しい東京の実現に向けた真に必要な投資を積極的に行うため、そして無駄の排除を徹底するため、知事査定には例年の倍の日程を充ててまいりました。その結果、今回の予算案は、格差と段差、すなわち男女や教育機会の格差とまちの段差を解消する施策を含め、過去最高となる三百八十二件の新規事業を盛り込むなど、大義あふれるものに仕上がりました。
 同時に、事業評価の徹底などにより、めり張りをきかせることで、財政構造改革の一層の推進を図り、一般会計の規模は五年ぶりの減少となる六兆九千五百四十億円としております。まさに、改革を強力に推し進め、明るい未来への確かな道筋を紡ぐ予算といえましょう。
 この予算案には、将来の東京への私の思いや、私がかねてより温めてきた政策が詰まっております。ご審議をいただく中で、議会の皆様と未来を開く議論を重ねていきたいと存じます。そして、都民の皆様に、都民ファーストの都政が導くあすへの希望を実感していただけるよう、全力を尽くしてまいります。
 これより主要な政策について申し述べてまいります。
 あと三年と迫りました二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックにつきましては、都民、国民のわくわく感を高め、誰もがやってよかったと思える大会へと導くため、開催都市として主体的に準備を加速してまいります。
 昨年末、経費を削減し、大会後の有効活用やライフサイクルコストを考慮した上で新設を決めた三つの会場は、具体的な整備が始まっております。都民に長く愛されるレガシーとすべく、例えば、バレーボール、車椅子バスケットボールの会場となります有明アリーナの周辺については、民間の創意工夫も取り入れながら、スポーツと文化の新たな拠点としてまいります。
 準備に万全を期すため、費用負担のあり方や輸送、治安対策等につきましても、組織委員会、国、関係自治体との連携を密にしっかりと対応してまいります。
 昨年末、私が提案して設置されました関係自治体との作業チームでは、仮設施設に加え、輸送、警備などで膨大な業務があることが明らかになりつつあります。都は、開催都市としての責任を重く受けとめ、真摯に協議を続けてまいります。その際、組織委員会が負担することになっている仮設整備につきまして、他の自治体が所有する施設を含め、都も負担することを排除せず検討するよう、事務方に指示をいたしました。
 一方で、都民、国民の皆様との一体感も高めたいと存じます。家庭に眠る、いわゆる都市鉱山からメダルをつくる。公式商品をPRする。大会を支えるボランティアのやりがいや楽しさを発信する。チームビヨンドへの登録やチャレスポTOKYOなどのイベントへの参加を呼びかけ、パラスポーツを一緒に盛り上げる。多くの皆様に大会を身近に感じていただけるよう、多彩な取り組みを進めてまいります。
 フラッグツアーも、福島、宮城、岩手に続き、熊本を初め全国各地をめぐるなど、オールジャパンの機運も着実に高めてまいります。そして、世界中に興奮と感動を呼び、記録と記憶が人々の心にいつまでも残る大会を、都民、国民の皆様とともに実現をしてまいります。
 成熟都市として迎える東京大会は、大規模な都市開発で戦後の復興を印象づけた一九六四年の前回大会とは異なります。一人一人の暮らしを見詰める細やかな目を持ち、誰もが優しさを感じられる社会を実現する契機としなければなりません。
 その象徴ともなるのが、皆様の足元にある段差の解消であります。道路のバリアフリー化については、競技会場や観光施設周辺の都道において重点的に進めるとともに、区市道への支援も新たに開始し、面的に広げてまいります。
 加えて、隅々にまで目を凝らし、きめ細やかに、東京のバリアを解消していくことも必要であります。都営バスへの新たなフルフラットバスの導入、鉄道駅におけるエレベーターやホームドアの設置、そしてトイレの洋式化など、パラリンピックも見据えて幅広い取り組みを進めてまいります。
 東京の安全・安心なくして、大会の成功はなし得ません。ハード、ソフトの両面からしっかりと対策を打ってまいります。
 新しい東京をつくり上げる上で、その基盤となるのは、セーフシティーの確立であります。昨年末に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災は、木造住宅密集地域を抱える東京も他人事ではありません。災害に強い都市に向け、市街地の不燃化や延焼遮断帯の形成、緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化など、燃えない、倒れないまちづくりに加え、近年頻発する集中豪雨への対策などにも着実に取り組んでまいります。
 震災時に迅速な避難、救助活動を行う上で、電柱倒壊による道路閉鎖は大きな妨げとなります。無電柱化の推進に向け、この先の財政需要に備える新たな基金を設置いたします。今後、都道への電柱新設の禁止、コスト縮減につながる技術開発の推進等を定めた条例案を早期に策定するほか、区市町村への支援も充実し、無電柱化を加速してまいります。
 ソフトの対策としては、町会、自治会等による防災活動を後押しするため、コンサルタントの派遣やサポートガイドの作成を行います。消防団の装備充実や入団促進も図るなど、地域の防災力を向上させてまいります。女性の力ももっと生かすべきでありましょう。女性の防災リーダー育成や女性の発想を詰め込んだ防災ブックの作成などを通じまして、地域の活動に女性の視点が反映されるように取り組んでまいります。さらに、国や関係団体と連携し、乳児用液体ミルクの国内製造に向けた検討も進めており、誰もが安心できるきめ細かな災害対策を実現してまいります。
 テロ対策にも万全を期してまいります。東京の玄関口である羽田空港の警備強化や、官民連携の基盤づくりを着実に進めます。IoTやAIといった技術進歩に伴い増加が見込まれるサイバー空間の脅威については、捜査体制のさらなる強化に加え、中小企業に対する普及啓発の充実やセキュリティー対策費用の支援などにも取り組んでまいります。加えて、地域における防犯カメラ設置への支援も充実するなど、都民生活の安全・安心を確実に確保してまいります。
 世界の注目を集める東京大会を機に、東京の魅力と品格を高め、より洗練された都市をつくり上げていきたいと存じます。大手町、丸の内、有楽町地区、六本木、虎ノ門地区、渋谷駅周辺などでは、国際ビジネスや先進的な生活文化など、多様で魅力ある拠点づくりが進んでおります。今後、新宿や品川におきましても、世界の人々を引きつける国際交流拠点の形成に向けたまちづくりに取り組んでまいります。
 都心での拠点整備に加え、都内全体、さらには東京圏全体を俯瞰し、各地の拠点が担うべき機能を明らかにすることも必要であります。広域的かつ中長期的な視点から、目指すべき都市像とその実現に向けた具体的な施策を示す、都市づくりのグランドデザインの検討を進めております。各拠点の交流を促進する三環状道路の整備も着実に推進しながら、人や物が活発に往来をし、持続的に発展する魅力あふれる都市をつくり上げてまいります。
 昨年のリオデジャネイロ大会を契機に、東京、日本の伝統文化や最先端の現代アートは、ますます世界の注目を集めております。東京大会に向け、いよいよ東京文化プログラムを本格的に展開をしてまいります。
 来年度は新たに、都民が主役となる大規模な文化活動への支援や、アーティストも鑑賞者も、誰もがわくわくする企画を公募するプロジェクトを開始いたします。都民とともに大いに盛り上げ、集大成として、二〇二〇年に開催する文化フェスティバルへとつなげてまいります。
 また、都民がもっと文化に親しむことができるよう、アール・ブリュットの拠点など、心を揺さぶるような芸術を東京に根づかせる基盤の整備を進め、世界オンリーワンの文化都市をつくり上げてまいります。
 受動喫煙防止対策につきましては、都民の健康増進のため、そしてオリンピック・パラリンピックのホストシティーとしての責任を果たしていくため、しっかり取り組まねばなりません。そのあり方につきましてはさまざまな議論が出されておりますが、国の法制化の動きを注視しつつ、都民の意識や、飲食店、宿泊施設の実態等について調査を行うなど、対策に向けた準備を加速してまいります。
 動物愛護の取り組みにつきましては、平成三十一年度までに殺処分ゼロを達成するため、子供が命の大切さを学ぶ機会の充実や、動物譲渡に関する情報発信サイトの開設などに取り組んでまいります。老朽化した動物愛護相談センター本所については、移転改築し、都民が来所、見学しやすい環境や、譲渡会などのイベントを開催するスペースを整えるなど、新しい飼い主へのかけ橋となる施設にしたいと思っております。
 新しい東京への扉を開くのは、都民一人一人の力であります。その力を存分に引き出すため、格差の解消を進めてまいります。
 その一つが、世界百四十四カ国中百十一位というランキングが根深さを物語る男女の格差の解消であります。
 女性活躍を阻む待機児童問題に対し、来年度は大胆に予算を配分いたしました。平成三十一年度末までに待機児童をゼロとするために、かつてないほど抜本的な取り組みを展開してまいります。
 まずは、保育人材の確保、定着であります。保育士の処遇改善策として、現行のキャリアアップ補助を拡充し、モデルケースで保育士一人当たり月額二万一千円の給与改善につなげてまいります。加えて、産休、育休明けの保育士へのベビーシッター代補助や、業務負担軽減に向けた保育所のICT化支援も開始をいたします。きめ細やかな施策で、多くの方々が保育というやりがいのある仕事につき、長く働ける環境を整えてまいります。
 また、民有地を活用した保育所等の整備を推進するため、二十三区内で保育所用地を有償で貸し付ける場合に、固定資産税、都市計画税を十割減免する新たな税制支援を導入いたします。企業が従業員のために設置し、その働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供する企業主導型保育施設についても、設置、運営に関する相談窓口や、開設費用の一部を独自に支援する助成制度を設け、整備を促してまいります。さらに、預かり保育の拡充や小規模保育施設の卒園児受け入れに積極的な私立幼稚園への支援を充実し、保育施設以外の選択肢もふやすことで、仕事と育児の両立をしっかりと後押しをしてまいります。
 待機児童対策は、決してこれで一段落ということではございません。引き続き、効果的な施策を強力に推し進めてまいります。
 女性の起業もふやしていきたいと思います。先月、丸の内に開設したTOKYO創業ステーションにおいて、女性起業家向けのセミナー開催や相談員配置などのサポートを行うほか、新たなビジネスを支援する民間のインキュベーション施設の整備を促進いたします。世界市場を目指す女性に対しては、短期集中型の支援プログラムや海外派遣の機会の提供など、その志の実現を力強く応援してまいります。
 先月、東京の教育の根本方針となる教育施策大綱を策定いたしました。重要事項の冒頭には、全ての子供が学び成長し続けられる教育の実現とうたっております。子供たちの希望ある未来のため、東京の最大のエネルギーである豊かな人材の育成のため、給付型奨学金を創設、拡充し、家庭の経済状況による教育機会の格差を解消してまいります。OECD加盟国においては、多くの国々で教育に対する手厚い支援が行われておりますが、教育への投資はまさに未来への投資であります。
 そこで、都立高校生については、勉強合宿の費用や資格試験の受験料など、学校における学習活動経費を新たに支援してまいります。
 また、東京においては、高校生の約六割が在学する私立高校がそれぞれ特色ある教育を行い、多様な人材を育成する上で極めて重要な役割を果たしております。そのため、私立高校生につきましても、年収約七百六十万円未満の世帯を対象に、さらなる授業料負担の軽減を図るとともに、無利子の入学支度金貸付額を引き上げてまいります。
 東京の未来を担う、人に焦点を当てた支援を拡充し、誰もが個性と能力に応じて希望する教育を受けられる環境を整えてまいります。
 子供の基礎学力の定着も徹底をいたします。学力向上に力を入れる小中学校への教員の追加配置や、高校生の学び直しを支援するプログラムの実施など、新たな取り組みを展開してまいります。
 加えて、都立高校において、文系理系の境を超えた総合的な価値創造力を育成する。あるいは、いわゆるJETプログラムにより学校へ配置する外国人を増員し、授業以外でも生きた英語を学ぶ機会をふやす。こうした、子供たちの強みを伸ばす教育にも力を入れてまいります。
 一方、子供たちの学びを支える教師力、学校力を強化していく上で、教育管理職の不足は深刻な問題であります。そこで、来月、教育管理職の確保をテーマとして、総合教育会議を開催することといたしました。教育委員会と協議しながら、学校現場の課題にもしっかりと向き合ってまいります。そして、グローバル化の進展や情報技術の発展といった社会の変化に対応し、輝く未来を創造する人材を数多く育ててまいります。
 ようやく日本でも、働き方の見直しに本腰を入れて取り組む機運が生まれつつあります。個人のライフスタイルに見合った働き方こそ、一人一人の一〇〇%の力を引き出し、社会全体の生産性を高める鍵であります。引き続き四千社を目標に、民間企業の働き方の見直しを支援してまいります。
 一方、都としても、新たに設置したプロジェクトチームにおいて、職員の声を踏まえて仕事の仕方や能力開発等を幅広く検討するなど、生産性の向上、そして残業ゼロへの意識改革をさらに徹底して、首都東京における働き方改革を力強く牽引してまいります。
 私は、時間や場所にとらわれずに仕事ができるテレワークの推進を、働き方改革の起爆剤にしたいと考えております。今回の予算編成に当たり、知事査定は初めてタブレット端末で実施をいたしました。ペーパーレスで仕事を進めることはテレワークへの第一歩であり、今後、この動きを全庁的に展開したいと思います。民間企業におけるテレワーク導入に向けては、国と連携して、情報収集や体験、相談がワンストップで行えるセンターを開設いたします。将来的には、テレワークを導入している企業と求職者とのマッチングも行う考えであります。
 また、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィスといった働き方は、住まいに近接した場所での仕事を可能とし、仕事と育児の両立にも役立ちます。このような施策の相乗効果も勘案しながら、さまざまな形態に応じたモデル事業の実施や、実際に導入する企業への費用助成など、一貫した取り組みでテレワークを強力に推進してまいります。
 満員電車の混雑緩和も、社会の生産性向上のための重要な課題であります。国や民間企業等とともに快適通勤プロモーション協議会を立ち上げ、時差出勤の導入や混雑の見える化など、鉄道利用の分散に向けたムーブメントを展開いたします。小田急線の一部区間では、来年度、都の連続立体交差事業と一体となった複々線化の完成が見込まれ、輸送力の強化が図られます。今後とも、鉄道の利用者、事業者双方に働きかけ、快適通勤の実現に向けて幅広く取り組んでまいりたいと存じます。
 誰もが生き生きと生活できる環境は、人々を明るくし、東京全体を元気にします。高齢者や障害者の暮らしをしっかりと支えてまいります。
 不足する特別養護老人ホームの整備に当たり、最大のネックは土地の確保であります。そこで、区部と比べまして土地確保が比較的容易な市町村に対し、地域のニーズを超えた特養整備へのインセンティブを設けることで、広く都民が利用できる施設を都内全体でふやしていきたいと思います。
 介護保険サービスと保険外サービスの一体的な提供を可能とし、利用者の利便性向上や職員の処遇改善が期待できる介護のあり方が注目されております。利用者のサービス選択を重視する、いわば選択的介護の実現に向けて、豊島区と連携をいたしまして、先日、国家戦略特区の区域会議に提案をいたしたところであります。特区の認定に向けて、モデル事業の準備を進めてまいります。
 介護人材の確保、定着も大きな課題であります。キャリアパスを導入する事業者の支援を強化し、職責に応じた処遇の実現につなげていきたいと思います。一方で、福祉現場への就労支援のためのシステムを新たに構築し、求職者や離職者の目線に立った情報を提供するなど、介護になじみのない方々も含めた人材の掘り起こしにも取り組んでまいります。
 医療技術の進歩を背景に、障害のある新生児の救命率が向上し、日常生活において医療的ケアを必要とする子供たちがふえております。適切な支援の実施に向け、障害児の通所支援施設や特別支援学校、保育所等への看護師配置などを推進してまいります。
 障害のある方々の雇用や社会参加の推進にもしっかりと取り組まなければなりません。新たな就労支援の概念であるソーシャルファームの仕組みづくりを支援するため、障害者団体と企業のCSR活動のマッチングを促進するなど、能力や適性に応じた働く場の創出を進めてまいります。
 東京は、日本経済のエンジンであります。積極果敢な成長戦略により、激化する都市間競争に勝ち抜き、日本の持続的な経済成長をリードして、アベノミクスにもプラスの効果を生み出してまいります。
 昨年、日本を訪れた外国人旅行者は約二千四百四万人と、初めて年間二千万人を突破いたしました。東京におきましても、二〇二〇年までに二千五百万人という目標を確実に達成するため、先月公表いたしました観光産業振興実行プラン二〇一七に基づいて戦略的に施策を展開し、世界最高のPRIME観光都市を実現してまいります。
 観光の活性化を考える上で、マーケティング目線は極めて重要であります。海外による東京、日本の評価をしっかりと把握しなければなりません。
 先日、元駐日米国大使夫人であるスーザン・ルース氏から、東京の観光振興について貴重な提言もいただきました。世界中に魅力をいかにして理解してもらうかという観点から、東京を世界に向けてPRする、わかりやすい新たなアイコンとキャッチフレーズの作成も進めております。海外の視点を十分に踏まえながら、東京の観光振興やブランディングのあり方について、有識者の方々と検討を重ねてまいります。
 東京らしい印象的な景観をふやすため、光の演出をさらに展開をいたします。水辺や庭園などで見られるライトアップを活用し、何げない地域の桜やもみじも付加価値を高めてまいります。プロジェクションマッピングの活用も含め、日常と異なる都市の表情を大いに引き出してまいりましょう。
 MICE誘致も重要な課題であります。特別感を演出できるレセプション等の会場であるユニークベニューの増加に向け、八つの都立施設をモデルとして活用いたします。利用にふさわしい場としての整備や積極的なPRを進め、ユニークベニューを充実することで、MICEの増加につなげてまいります。
 世界から人、物、金、情報が集まり続けるアジアナンバーワンの国際金融、経済都市へ。激動の国際情勢にしっかりと目を向けながら、世界から選ばれる最先端都市への道を歩んでまいります。
 国際金融都市にふさわしい金融産業、とりわけ資産運用や、フィンテックを初めとする新しい分野の企業と人材を東京に集積させるためには、ニーズを踏まえた支援が必要であります。無償コンサルティング、金融ワンストップ支援サービス等の提供に加えて、就任早々に特区の区域会議へ提案をいたしました外国人材による家事支援サービスにつきましても、早速開始できる体制が整いました。ビジネスの検討から生活面まで、海外からの東京進出をきめ細かくサポートしてまいります。
 さらに、世界の都市間競争が激化する中で、海外から東京への流れを確実なものとするためには、これまでの既成概念や既得権益にとらわれることなく、本質的な課題にも切り込んでいかなければなりません。規制、税制、業界慣行にまで踏み込み、教育の充実や顧客に対する金融機関の受託者責任の徹底なども含めて、国内外の専門家を交えた懇談会で対応を検討しております。
 その答申を参考にしつつ、秋には東京版金融ビッグバンともいうべき新たな構想を取りまとめてまいります。東京都が先兵としてみずから可能な限りの対応を行いつつ、国家戦略として政府にも必要な協力を求めて、東京を世界に売り込んでまいります。
 経済の活力と成長をもたらすイノベーションを絶えず生み出す鍵は、都内企業の九九%を占め、高い技術力を有する中小企業にあります。成長産業への参入や新たな価値の創出に向け、設備投資から技術支援、IoT化による生産性の向上まで、中小企業を多面的に支援するとともに、福祉、環境など都の政策課題に対応した技術の開発も促進してまいります。
 また、グローバルな活躍を目指す起業家やベンチャー企業の挑戦を後押しし、次代のイノベーションの担い手として育てることも重要であります。開業手続を一元的に支援する東京開業ワンストップセンターのサテライトセンターを、四月に渋谷に、その後丸の内にも設置いたします。TOKYO創業ステーションとのネットワークを強化して、創業準備から開業手続、事業化まで、切れ目のない総合支援体制を構築してまいります。さらには、国際金融都市東京構想とも連携し、国内外の大企業や投資家とのネットワーク形成の支援、ベンチャーファンド創設による投資の呼び込みなども進めてまいります。
 先端技術の一つの象徴である自動運転については、レベルフォーの完全自動走行を見据えた実証実験を行うため、官民一体となった自動走行サンドボックス分科会の設置を特区の区域会議に提案し、了承されたところであります。羽田空港周辺地域等における最先端の実験に向けて、安全性を確保しつつ、事前の手続を抜本的に簡素化する全国初のサンドボックス特区を積極的に活用してまいります。
 本定例会には、イノベーション創出に向けた基金を新設する条例案も提案いたしております。新たな技術が東京の成長を持続的に牽引する、そのための確固たる基盤を築いていきたいと思います。
 環境の分野におきましても、先進的な取り組みを展開してまいります。
 照明のLED化は、スマートエネルギー都市の必須要件であります。まずは都有施設において率先して導入を進め、民間ビルについても、省エネルギー化のメリットをオーナーとテナントが分け合うグリーンリースの普及により、LED導入につなげたいと思っています。
 そして、家庭への普及を進める起爆剤として、白熱電球二個とLED電球一個を無償交換する公正な取り組みを開始いたします。仮に家庭の白熱電球二百万個がLED電球に置きかえられれば、年間で一億八千万キロワットアワーの削減が可能で、これは都庁舎の電力消費量の約五年分に相当いたします。一人一人の取り組みによる大きな効果を実感していただくことで、都民の共感と意識改革につなげ、改めて東京に省エネのムーブメントを巻き起こしてまいります。
 住宅そのものを省エネ型に転換する取り組みも進めます。高断熱窓の導入を支援し、都が推奨するエコハウスの水準を普及させるなど、家庭におけるエネルギー消費量の削減につなげてまいります。
 利用段階でCO2を排出しない水素エネルギーについても、都営バスへの燃料電池車の一部導入や、羽田空港における燃料電池フォークリフトの実証事業等を通じて、本格普及を目指してまいります。
 そして、都の環境施策を都民、国民の投資を通じた後押しによって強力に進めるため、来年度、二百億円規模の東京グリーンボンドを発行いたします。昨年十二月にトライアルとして発行した東京環境サポーター債は、売り出し初日に完売をし、環境に対する都民、国民の関心は非常に高いことを実感いたしました。そうした機運をさらに高め、幅広い共感を力に、環境先進都市東京をさらに磨き上げてまいります。
 緑の創出、保全にも力を入れてまいります。東京のみどり率は、長期的に低下傾向が続いております。ヒートアイランドの緩和や良好な景観の形成など、都市の緑が持つ多面的な機能を次世代に確実に継承していくため、都民に身近な花による緑化や、都立公園の緑の確保等に取り組んでまいります。江戸東京野菜の生産や多摩産材の活用、新たな担い手の確保など、東京の農林水産業を活性化しながら、農地や森林を守らなければなりません。多摩川上流域における民有林の購入やボランティアによる森林保全を通じて水源を育むなど、都内全体で貴重な緑を守る機運を高めてまいります。
 日本の美徳である、もったいないの心を呼び覚まし、生活様式にも持続可能の概念を浸透させてまいります。
 例えば、日本国内で年間に発生する食品ロスの量は、一千三百万都民の全員が一年間に食べる量に匹敵をいたします。賞味期限の迫った防災備蓄食品の配布等の機会も活用し、こうした実態を広く知っていただくことで、食べずに捨てるなんてもったいないという消費者の共感を呼び起こし、関連企業の方々との対話も通じまして、食品廃棄を前提としない加工、流通等の新たなビジネスモデルの構築につなげてまいります。
 世界の事例に学ぶべき点もあります。レジ袋を提げて家路を急ぐ人々の姿は、日本ではまだまだおなじみでありますが、フランスでは既に使い捨てレジ袋の配布が禁止されております。都におきましても、まずは無償での配布ゼロに向け、小売店、消費者双方への働きかけを進めてまいります。
 東京の多面的な魅力を発揮していくためには、多摩・島しょ地域の発展も欠かせません。
 多摩地域には、大学や研究開発型の企業が集積しております。その強みをさらなる創業へとつなげていくため、セミナーの実施やインキュベーション施設の整備を支援するなど、多摩のものづくり創業を活性化いたします。また、南北方向に加え、東西の道路整備を推進し、広域的な道路ネットワークも形成するなど、多摩地域の一層の発展に向けました基盤を整えてまいります。
 東京の島々の魅力も、もっと多くの方々に知っていただきたい。ブランディングやマーケティングなどの専門家から成る東京宝島推進委員会を立ち上げ、隠れた魅力を掘り起こすとともに、付加価値をつけて広く発信してまいります。観光客に選ばれる島を目指して各島が魅力を競い合う取り組みを進め、島々を船舶で周遊する婚活ツアーなども後押しして、島しょ全域の観光振興に結びつけてまいります。
 なお、先月訪問した大島町では、特定外来生物であるキョンによる食害等に悩まされており、対策の強化を検討してまいります。
 一口に多摩・島しょ地域といっても、市町村ごとに地理的条件も産業構造もそれぞれであります。そこで、先日より三十九の市町村全ての長の皆様から、直接、各自治体が抱える課題や要望についてお伺いをしてまいりました。貴重なご意見は、今後の振興や課題解決にしっかりと生かさなければなりません。多摩地域の振興に向けては、二〇二〇年の先を見据え、目指すべき姿を明らかにする多摩の振興プランを、地域の方々との意見交換も行いながら策定をしてまいります。
 来月には八丈町、青ヶ島村を訪れる予定といたしております。今後も、積極的に多摩・島しょ地域に足を運び、市町村と緊密に連携を図って、各地域の課題解決を力強く進めてまいります。
 不一致があれば調和をもたらしたい、誤りがあれば真実をもたらしたい、疑いがあれば信頼をもたらしたい、そして絶望があれば希望をもたらしたい、このように英国のマーガレット・サッチャー元首相は語りました。
 私が目指す都政とは、都民の皆様一人一人が希望を持てる東京を実現することにほかなりません。きょうよりもあしたがいい、あすよりもあさってがもっといいと誰もが希望を持って毎日を生き生きと過ごせる東京を実現する。五十年、百年先も世界をリードするため、歴史の転換点となるような取り組みを推し進める。同じ志を持つ皆様とともに、東京大改革に邁進してまいりたいと存じます。
 なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案三十一件、条例案三十四件など、合わせて八十九件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどお願いを申し上げます。
 以上をもちまして、私の施政方針表明を終わります。
 ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〔傍聴席にて発言する者あり〕

○議長(川井しげお君) ご静粛にお願いします。従わないときは退場を命じる場合がございます。
〔傍聴席にて発言する者あり〕

○議長(川井しげお君) ご静粛に願います。従わないときは退場を命じます。そこで騒いでいる人、退場を命じますよ。
 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(川井しげお君) 次に、警視総監より、都内の治安状況について発言の申し出がありますので、これを許します。
 警視総監沖田芳樹君。
〔警視総監沖田芳樹君登壇〕

○警視総監(沖田芳樹君) 都内の治安状況についてご報告いたします。
 警視庁では、昨年、犯罪抑止総合対策を初め、人身安全関連事案総合対策、伊勢志摩サミット関連警備など、さまざまな治安課題に取り組み、首都東京の治安維持に努めてまいりました。
 以下、その状況と対策についてご説明いたします。
 第一は、犯罪抑止総合対策の推進状況についてです。
 昨年の都内における刑法犯認知件数は十三万四千六百十九件で、本対策を開始した平成十五年から十四年連続で減少し、戦後最少を記録した一昨年をさらに下回りました。
 しかしながら、特殊詐欺や子供に対する犯罪など、都民生活の平穏を脅かす事件が後を絶たないことから、今後も防犯と検挙の両面から本対策を推進してまいります。
 以下、主な対策の推進状況について、五点申し上げます。
 その一は、重要特異事件の検挙状況についてです。
 当庁では、昨年、特別捜査本部を開設した五事件のうち、区立碑文谷公園弁天池内発覚強盗殺人死体遺棄事件を含む四事件を解決し、残る永山三丁目マンション内殺人事件についても、先日被疑者を検挙いたしました。
 ほかにも昨年は、特別地方公共団体職員らによる贈収賄事件、一昨年、特別捜査本部を開設した弥生町三丁目マンション内女性殺人事件等、社会的反響の大きい事件を解決いたしました。
 しかしながら、大和田町スーパー事務所内拳銃使用強盗殺人事件を初めとする未解決の重要特異事件については、現在も懸命な捜査を続けているところでありますが、被害者の無念を晴らし、地域社会の不安を取り除くため、事件解決に向け、粘り強い捜査を尽くしてまいります。
 その二は、特殊詐欺対策の推進状況についてです。
 昨年は、犯行拠点であるアジトの摘発、だまされたふり作戦による受け子等の検挙、突き上げ捜査による中枢被疑者の検挙等を推進するとともに、犯行使用電話を提供するレンタル電話事業者、アジトを提供する不動産業者、被害金の受け取りに関与するバイク便事業者等、犯行を助長する事業者の摘発を強化してまいりました。
 また、関係機関や関係事業者との連携による官民一体となった被害防止対策を初め、高齢者やその子、孫世代に対する広報啓発等の取り組みを推進しているところです。
 しかしながら、昨年の都内における特殊詐欺の認知件数は二千三十二件、被害額は約六十一億七千万円で、一昨年に比べ被害額は約五億六千万円減少したものの、認知件数は百五十三件増加しており、依然として憂慮すべき状況が続いております。
 こうした状況を踏まえ、今後も特殊詐欺の根絶に向け、防犯と検挙の両面から効果的な諸対策に取り組んでまいります。
 その三は、犯罪の起きにくい社会づくりの推進状況についてです。
 安全で安心な地域社会を構築するためには、自治体等と連携、協働した取り組みが必要不可欠でありますことから、当庁では、昨年末までに六十の区市町村と安全・安心まちづくりに関する覚書等を締結いたしました。
 また、民間団体等による防犯カメラの設置促進を初めとする防犯環境の整備促進や防犯ボランティア団体への支援による活動の活性化などを推進してまいりました。
 今後も、自治体を初めとする関係機関と連携し、犯罪の起きにくい社会づくりを推進してまいります。
 その四は、盛り場総合対策の推進状況についてです。
 当庁では、昨年、盛り場総合対策の行動計画である盛り場セーフティアクションプランを改正し、部門横断的な取り組みを推進するとともに、七月及び十二月に盛り場一斉対策日を設定し、地域の方々と連携しながら盛り場における諸対策を実施するなど、盛り場環境浄化の機運を醸成するための取り組みを推進しているところです。
 引き続き、管内の実情に応じた先制的な取り締まりを徹底するとともに、関係機関、防犯ボランティアとの合同パトロール等、官民連携による取り組みを促進し、安全で安心して憩える盛り場の実現に向けた諸対策を推進してまいります。
 その五は、少年非行防止、保護総合対策の推進状況についてです。
 近年、都内の繁華街において、女子高校生にマッサージ等を行わせたり、会話やゲームの相手をさせるなどのサービスを提供する、いわゆるJKビジネスが増加し、一部の店舗では性的被害が確認されるなど、青少年を取り巻く社会環境は憂慮すべき状況にあります。
 こうしたことから、青少年の健全育成を阻害する行為及び青少年を被害者とする犯罪を防止するため、営業者に公安委員会への届け出義務を課すとともに、青少年に接客させることを禁止することなどを内容とした特定異性接客営業等の規制に関する条例案を今定例会に提出しているところです。
 今後も、関係機関及び少年警察ボランティア等と連携し、少年の非行及び犯罪被害の防止に向けた取り組みを推進してまいります。
 第二は、人身安全関連事案総合対策の推進状況についてです。
 昨年のストーカー、DV事案の相談件数及び児童、高齢者虐待事案の取扱件数は、いずれも一昨年を大幅に上回りました。
 当庁では、こうした情勢に的確に対応するため、人身安全関連事案総合対策本部の機能を拡充して、事態対処に万全を期しているところです。
 人身の安全にかかわる相談については、事態が急展開し、重大事件に至る場合もあることを踏まえ、申し出のあった相談内容にとどまらず、相談者が不安を感じて警察に相談に来た事情や背景なども考慮した上で、広く人身安全関連事案として、迅速かつ的確な組織的対応に努めているところです。
 今後も、被害の未然防止、拡大防止のため、自治体を初めとする関係機関、団体と連携し、相談者等の安全確保を最優先とした検挙措置、保護対策等を徹底してまいります。
 第三は、テロ等不法事案の防圧検挙状況についてです。
 昨年は、邦人七名を含む多くのとうとい命が犠牲となったバングラデシュ・ダッカにおけるレストラン襲撃事件を初め、世界各地でイスラム過激派等によるテロが多発したことに加え、ISILが邦人に対するテロを繰り返し呼びかけるなど、我が国に対する国際テロの脅威は現実のものとなっております。
 一方、国内においては、極左暴力集団がアジト摘発及び活動家の検挙を受けて報復ゲリラの実行を示唆しているほか、右翼についても、領土問題等を捉えた抗議行動等の過程において、テロ等重大事案を引き起こすおそれがあります。
 こうした中、一昨年十一月には、イスラム過激思想に共鳴していると見られる在日インドネシア人らを不正輸出事件で検挙したほか、昨年は、極左暴力集団の活動家二十二人、右翼団体構成員等百一人を検挙いたしました。
 また、警備面においては、重要施設はもとより、大規模集客施設等のソフトターゲットにおける警戒警備を徹底するとともに、特殊部隊SAT、緊急時初動対応部隊ERT等の専門部隊による事態対処能力向上のほか、地域版パートナーシップを初めとした官民連携による協働対処体制の強化など、日本型テロ対策を推進してまいりました。
 本年も、四日後に開催される東京マラソン二〇一七を初め、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えて、組織の総合力を発揮したテロ対策に万全を期してまいります。
 第四は、サイバー空間の脅威に対する総合対策の推進状況についてです。
 昨年は、不正アクセスに起因した企業等における大規模な情報流出事案やインターネットバンキング不正送金事犯など、都民、国民の生活を脅かすサイバー犯罪が多発するとともに、標的型メール攻撃を初めとするサイバー攻撃事案も相次いで発生するなど、サイバー空間における脅威は一層深刻化しております。
 こうした中、当庁では、各種サイバー犯罪に対する取り締まり、ツイッターを用いた不正送金ウイルスつきメールの早期警戒情報の発信などの被害防止措置を実施するとともに、重要インフラ事業者等との共同訓練やセミナーの実施など、対処能力の向上に取り組んでまいりました。
 また、昨年四月にはサイバーセキュリティ対策本部を設置し、各種研修プログラムの拡充等、職員の対処能力の強化を図ったほか、東京都や中小企業支援機関等と協働した東京中小企業サイバーセキュリティ支援ネットワーク、Tcyssの設立、東京サイバーセキュリティ官民合同会議の開催等、官民一体となった取り組みの強化を図るなど、サイバー空間における安全・安心を確保する取り組みを推進してまいりました。
 今後も、積極的な取り締まり、被害の未然防止及び実態解明を徹底するとともに、官民連携のさらなる強化に努めてまいります。
 第五は、重大交通事故防止対策の推進状況についてです。
 昨年は、年初から、見せる交通街頭活動を推進するとともに、重大交通事故に直結する速度超過、横断歩行者妨害、飲酒運転等悪質、危険な交通違反の取り締まりを徹底するなど、重大交通事故防止対策を推進してまいりました。
 その結果、死者数は百五十九人となり、戦後最少を記録したほか、発生件数、負傷者数についても十六年連続で減少するなど、一定の成果を得たところです。
 本年は、第十次東京都交通安全計画にある、平成三十二年までに交通事故死者数を百二十五人以下とするとの目標を見据え、交通事故死者数百四十人以下を抑止目標とする、交通死亡事故連続減少チャレンジロード百四十をスローガンに掲げ、子供や高齢者の事故等、悲惨な交通事故を一件でも減少させるために、引き続き交通事故分析に基づく、きめ細かな交通安全対策や交通街頭活動を推進するとともに、交通違反の取り締まりを強化するなど、重大交通事故防止に全力で取り組んでまいります。
 第六は、総合的な組織犯罪対策の推進状況についてです。
 その一は、暴力団総合対策の推進状況についてです。
 昨年三月、六代目山口組と神戸山口組が対立抗争の状態にあるとされて以降、都内を含む全国で両団体による殺人、傷害等の事件が発生しております。
 こうした中、当庁では、繁華街、学校周辺及び通学路における警戒活動を強化するとともに、両団体を初めとする暴力団の取り締まりを徹底し、昨年は暴力団員等四千七百四十九名を検挙いたしました。
 今後も、取り締まり及び警戒の徹底、暴力団対策法の活用等を通じて、対立抗争の防圧及び暴力団の弱体化、壊滅に向けた総合的な対策を推進してまいります。
 その二は、国際組織犯罪総合対策の推進状況についてです。
 昨年は、偽装結婚を初めとする犯罪インフラ事犯や、外国人による殺人事件等の凶悪事件が発生する中、当庁では、外国人犯罪者四千百六十二人を検挙いたしました。
 東京二〇二〇大会に向け、来日外国人の増加が見込まれることから、今後も、外国人犯罪の取り締まり、事業者等に対する不法就労及び不法滞在を防止するための指導、広報啓発活動を実施するなど、国際組織犯罪総合対策を推進してまいります。
 その三は、銃器、薬物対策の推進状況についてです。
 銃器情勢につきましては、昨年、住宅街における拳銃使用の殺人事件が発生するなど、銃器事犯が都民生活の安全・安心を脅かしている中、七十二丁の拳銃を押収いたしました。
 また、薬物情勢につきましては、昨年、薬物事犯被疑者二千二百二十五人を検挙するとともに、違法薬物約三百三十七キログラムを押収いたしました。
 今後も、関係機関と連携して、銃器、薬物事犯の取り締まりを徹底するとともに、危険性についての広報啓発活動に努めるなど、総合的な銃器、薬物対策を推進してまいります。
 第七は、災害警備諸対策の推進状況についてです。
 昨年は、四月に平成二十八年熊本地震が発生し、当庁から特殊救助隊や機動隊等の部隊を派遣したほか、夏季には台風による被害が各地で発生し、都内においても電車の脱線事故が発生するなど、改めて自然災害の脅威とさまざまな事態に対する備えの大切さを実感したところです。
 当庁では、従来の震災対策に加え、さまざまな事態を想定した警視庁大規模災害対策推進プランを策定するなど、全庁を挙げて各種災害対策に取り組んでおります。
 今後も、救出救助技能の向上や関係機関との連携強化等により、災害対処能力の向上を図るとともに、地域版パートナーシップを活用した合同訓練や災害に関する情報発信等により、危機意識の共有と地域防災力の向上を図るなど、災害対策の万全を期してまいります。
 第八は、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた諸対策の推進状況についてです。
 東京二〇二〇大会開催まで三年余りとなり、当庁では、大会開催に向け、テロ対策等を中心とした治安対策上の各種課題について推進体制を整備し、検討を進めております。
 また、関係機関、民間企業との連携を強化するため、競技会場が所在する各自治体との連絡会議を順次開催し、大会に向けた警備、交通対策等に関する情報交換を実施しているほか、大会の公式パートナー企業と設立したMPD─TOKYO二〇二〇Sponsor Partnershipにおいて、爆発物等発見時の初動対応やサイバーセキュリティーに関するワークショップを開催するなどしております。
 今後も、東京二〇二〇大会の安全・安心を確保するため、各種対策を推進してまいります。
 最後に、これら諸対策を推進するための組織基盤の強化についてです。
 当庁では、警察への多様なニーズに的確に対応することができるよう、引き続き、女性職員が一層活躍できる職場環境の醸成、一般職員のさらなる活躍に資する各種取り組みを推進するなど、職員一人一人を生かすことのできる職場づくりに配意し、活力ある強靱な組織の構築に努めてまいります。
 また、世界一安全な都市東京を実現するためには、業務の合理化、効率化とあわせて、人的基盤の充実強化が必要です。
 本定例会においても、警察官六十人及び警察官以外の職員五十四人の増員並びに東京二〇二〇大会に向けた実働員確保方策として、初任科学生の定員外措置を行うための条例改正と所要の予算の確保をお願いしているところです。
 以上、都内の治安状況と警視庁の対策について申し上げましたが、東京都議会の皆様方には、今後とも一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、治安状況報告を終わらせていただきます。

○議長(川井しげお君) 以上をもって警視総監の発言は終わりました。

○議長(川井しげお君) 次に、監査委員より、監査結果の報告について発言の申し出がありますのでこれを許します。
 監査委員鈴木あきまさ君。
〔八十八番鈴木あきまさ君登壇〕

○八十八番(鈴木あきまさ君) 監査委員を代表いたしまして、平成二十八年一月から十二月までの一年間に実施した監査の結果についてご報告申し上げます。
 監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務事業を監査することで、都民の信頼を確保していくことであります。そのため、年間を通じて、これから申し上げる六つの監査など、多岐にわたる監査を実施しております。
 この一年間に六百十八カ所で監査を実施し、問題点の指摘は二百六十三件、指摘金額は約十九億円でありました。
 第一に、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。本庁各部の全てと事業所の約四割、合計で四百六十四カ所を対象として監査を実施しました。
 その結果、都民から受領した料金等の収納手続を速やかに行うよう求めたもの、同時期に締結した複数の契約を集約することにより、随意契約ではなく入札を行うよう求めたもの、六年以上もの間、一度も使用されていない設備の適切な取り扱いを求めたものなど、合計百十六件の指摘及び意見、要望を行いました。
 また、マイナンバー制度の開始等を背景に、個人情報管理を重点監査事項の一つとして、個人情報を取り扱う事務事業について、収集、利用、保管等が適正に行われているかを検証いたしました。
 その結果、個人情報を含む文書の廃棄またはデータの消去を適切に行うよう求めたもの、私物外部記録媒体の持ち込み禁止の指導及び周知を徹底するよう求めたものなどがありました。
 第二に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は百万円以上の工事等の中から、契約金額の高額なものや発注時の工期が短いものなど、千六百八十四件を抽出して監査を実施しました。
 重点監査事項を施工管理として監査を実施した結果、掘削作業を行う際に、土砂の崩壊を防ぐための山どめを設置せず、掘削面が一部崩落している状況の中、作業を行っている事例や、埋め戻し復旧後の強度試験が不十分な事例など、重大な事故につながる危険な工事が認められたため、監督員である職員が受注者を適切に指導監督するよう求めました。
 また、山間部の斜面を保護するための工事において、採用した工法が不適正であった事例や、基準の適用誤りなどにより、本来より割高な単価を設定している事例も認められたことから、設計や積算を適正に行うよう求めました。指摘等の件数は合計三十四件です。
 第三に、財政援助団体等監査について申し上げます。
 財政援助団体等監査は、都が補助金の交付や出資等を行っている団体に対し、事業が財政援助の目的に沿って適正かつ効果的に行われているかなどについて実施する監査です。
 監査対象としては、補助金等の交付額が大きい団体、東京都監理団体や地方独立行政法人等、都との関連性が高い団体などから、補助金等交付団体については百三十六団体、出資団体については十三団体、公の施設の指定管理者については五団体を選定いたしました。また、事業の中で工事の件数、金額等が大きい二団体について、技術面からの監査をあわせて実施しました。
 その結果、対象経費の算定誤りなどによる過大交付が認められたため、補助金や分担金の返還を求めたもの、団体が合理的な理由なく特命随意契約で委託している業務について、競争による契約に改めるよう求めたもの、団体が中長期的な経営判断をする際に必要となる長期修繕計画を策定するよう要望したものなど、合計八十七件の指摘等を行いました。
 第四に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、特定の事務や事業を対象として行う監査であり、今回は、財務に関する事務の内部統制についてをテーマに、会計、物品管理、公有財産、契約の四つの事務を対象に監査を実施しました。
 地方公共団体における内部統制については、第三十一次地方制度調査会で体制の整備、運用の制度化が答申され、国において地方自治法改正に向けた準備が進められています。
 こうした状況を踏まえ、内部統制の現状に関し、統制の仕組みは想定されるリスクに適切に対応して整備、運用され、継続的に評価、改善されているかなどについて検証しました。
 その結果、概算払いなどの会計審査について、リスクの低減に向けた対応を行うこと、無体財産権の管理について、権利の登録や削除が適正になされるための方策を検討すること、業務委託契約及び企画提案方式の契約事務について、各局の履行確認に対する支援を充実させることなど、七件の意見、要望を行いました。
 第五に、決算審査について申し上げます。
 平成二十七年度の決算について、決算の数値が正しいか、予算の執行が適正で効率的に行われているかなどを審査した結果、一般会計、特別会計においては、会計処理の計上誤り七件、財産に関する調書への登載誤り十一件について、公営企業会計においては、固定資産の計上誤り一件について指摘を行い、それぞれ適正な事務処理を求めました。
 ここで、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて初めてその目的を達成します。このため、年二回、各局から見直しに向けた取り組みについて報告を求めています。過去三年間に行った指摘について見ると、各局が改善に努めた結果、これまでに前年を上回る約九五%が改善済みとなっています。
 改善事例としては、委託契約で一部未実施の業務について、契約変更により金額を減じたもの、都庁舎の改修工事に合わせてバリアフリー等の情報を正確にホームページなどで提供したものなどがありました。
 また、監査結果を予算に反映させる事業評価の対象として、デジタル化した資料を都立図書館やインターネットで公開するよう求めた指摘などが選定され、必要な経費が予算措置されたことにより、都民サービスの向上につながりました。
 引き続き、全庁共通して発生し得る課題や繰り返し起こり得る問題点について、各局への情報提供も行いながら改善を促してまいります。
 最後に、住民監査請求について申し上げます。
 平成二十八年は、前年の二倍以上となる二十九件の住民監査請求があり、そのうち審査要件を備えている六件について監査を実施しました。中でも、知事専用車の使用を違法、不当とし、その使用に要した経費の返還を求めた請求については、十三年ぶりとなる勧告を行いました。
 以上、この一年間に実施した監査について述べてまいりました。
 監査の結果、契約履行の確認不足、積算や補助金の算定誤りなど、例年繰り返し発生している指摘に加え、契約の競争性が確保できていないものや財産を有効に活用できていないものなど、経済性の観点からの指摘が多く見受けられました。
 これらの発生原因としては、各事務事業におけるリスクへの対処について、組織的支援が十分機能していないことなどが挙げられます。
 昨今、都民の都政に対する関心は非常に高まっております。各局長並びに管理者の皆様には、監査結果の講評の際にも個別に意見等を申し上げておりますが、組織の責任者としての先頭に立ち、指摘を受けた事項の是正改善のみならず、誤りの根本原因の解消や仕事の進め方の見直しなど再発防止に取り組み、都民サービスのさらなる向上に努められるよう望みます。
 都財政は景気の影響を大きく受けやすい歳入構造であり、先行きは予断を許さない状況にあります。こうした中で、都は、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた準備を初め、少子高齢化、安全・安心の確保、経済活性化や環境問題への対応など、山積する課題を解決していかなければなりません。
 そのためには、財政基盤の強化を図るとともに、事務事業について不断の見直しを行い、事業の効率性や実効性を一層高めていくことが求められています。
 監査においては、これまでの規定を抜本的に見直し、昨年末に新たな東京都監査委員監査基準を策定しました。今後は、これに基づき、リスク評価に基づく重点的な監査や都民目線に立った監査を進めてまいります。
 私ども五名の監査委員は、都政が公正かつ効率的に運営されるよう、これからも監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。(拍手)

○議長(川井しげお君) 以上をもって監査委員の発言は終わりました。

○議長(川井しげお君) 次に、包括外部監査人より、平成二十八年度包括外部監査結果の報告について説明を求めます。
 包括外部監査人佐久間清光さん。
〔包括外部監査人佐久間清光君登壇〕

○包括外部監査人(佐久間清光君) 平成二十八年度包括外部監査人の佐久間清光でございます。
 今年度の監査は、建設局の事業に関する事務の執行について監査対象とし、補助者二十名とともに実施した結果、合計百一件の指摘、意見を監査報告書に記載することとなりました。
 この指摘、意見の内容を大まかに区分いたしますと、防災対策事業のさらなる推進についての意見が一件、組織、業務分担の見直しについての意見が八件、中長期計画の策定とPDCAサイクルの必要性についての意見が十四件、連結情報など建設局事業にかかわる情報の活用についての指摘、意見が九件、ITのセキュリティー強化、計画的な導入、更新等についての指摘、意見が十一件、入札、契約にかかわる制度、業務の見直しについての指摘、意見が十件、資産の管理徹底、有効活用、料金の見直しなどについての指摘、意見が四十八件となりました。
 本日は、この指摘、意見のうち、五点についてご説明申し上げます。
 まず一点目は、防災対策事業のさらなる推進についてであり、具体的には次のとおりでございます。
 東京都では、自然災害などを想定してさまざまな防災対策事業を実施しており、建設局も防災インフラ整備の面でその重要な役割を担っております。
 しかしながら、建設局の実施している土砂災害防止事業や木造住宅密集地域不燃化対策事業などについては、その整備進捗率が十分とはいいがたい状況でございます。したがって、防災インフラの整備率を、事業の特性等を踏まえつつ、できる限り早期に一〇〇%を目指すべく、都民の安心・安全の観点から、建設局が担うべき事業の中で何が重要かつ緊急な防災対策事業であるのかをめり張りをつけて選択し、部単位だけではなく、建設局全体で横断的に調整し、決定すること、この結果、決定した重要かつ緊急な防災対策事業については、過去の経験にとらわれない方策も講じること、さらに、これらの事業、方策については、局全体としての中長期計画として策定し、今まで以上に防災対策事業を推進するよう求めました。
 二点目は、建設局と監理団体等の業務とその役割分担の見直しについてであり、具体的には次のとおりでございます。
 ご承知のとおり、東京都監理団体活用方針によりますと、都の業務は、都が直接実施する業務、監理団体を活用して実施する業務、民間事業者を活用して実施する業務といった三つの業務に区分されます。
 しかしながら、建設局の業務につきましては、その範囲が明確に整理されていない部分がございました。例えば、監理団体である東京都道路整備保全公社では、本来、都が実施する業務に区分される用地取得業務や無電柱化事業などを実施しております。また、動物園に関しては、本来、都が実施する業務である中長期計画の策定について、数値目標等を設定した具体的な計画が存在せず、また計画に具体性が乏しい面があることから、建設局がその役割を全うしているとはいいがたい状況にございました。
 さらに、建設局が直営している二つの公園については、監理団体である東京都公園協会または民間事業者にその業務を移管する余地がございます。このほかにも、同一業務につきまして、局が直接実施する場合と民間事業者へ委託している場合が混在しているものがございます。
 さきの一点目に述べましたとおり、今まで以上に優先して実施すべき防災対策事業、業務に人的資源等を集中的に配分する必要性がございますので、局と監理団体等の業務ないし役割分担をいま一度適切に整理し、明確にするよう求めました。
 三点目は、建設局では現在三つの監理団体を所管しておりますが、さきの二点目に関連して、監理団体の組織のあり方についても、幅広い選択肢の中から最適な手法とすべく、定期的に見直すことが必要になります。したがって、今後も三つの団体を引き続き活用するのが効果的、効率的であるのか、監理団体の組織のあり方を再検討し、その検討結果を都民に開示するよう求めました。
 なお、その際、動物園と水族園については、平成二十五年度に地方独立行政法人化が可能となりましたので、この点も踏まえていただくよう求めました。
 四点目は、国交省によれば、都内の道路のうち立体交差部、アンダーパスの冠水箇所が百三十三カ所存在するとされておりますが、建設局のホームページからは当該情報を得ることができない状況にございます。したがって、道路管理者である局として、都民の安全性等の観点から、発信すべき道路防災対策情報を整理し、発信する体制を構築するよう求めました。
 最後に、五点目として、局は防災対策事業として、浸水予想区域図の公表、水防災総合情報システムでの降雨量や河川水位情報の公表を実施しておりますが、これらの公表は日本語版でしか対応していない状況でございます。したがって、今後は、日本語がわからない外国人に向けた情報発信体制を再構築するよう求めました。
 以上をもちまして、平成二十八年度の包括外部監査結果のご説明といたします。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(川井しげお君) 以上をもって包括外部監査人の説明は終わりました。

○六十七番(河野ゆうき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日は、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一から第五までを先議されることを望みます。

○議長(川井しげお君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川井しげお君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一から第五までを先議することに決定をいたしました。

○議長(川井しげお君) 追加日程第一、議員提出議案第四号の撤回を議題といたします。
 お諮りをいたします。
 本件は、提出者の申し出のとおり、撤回を承認することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川井しげお君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、提出者の申し出のとおり、撤回を承認することに決定をいたしました。

○議長(川井しげお君) 追加日程第二から第四まで、議員提出議案第一号、東京都議会議員の議員報酬等の特例に関する条例外条例二件を一括議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
(議案の部参照)

○六十七番(河野ゆうき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 ただいま議題となっております議員提出議案第一号外二議案については、趣旨説明並びに委員会付託を省略されることを望みます。

○議長(川井しげお君) お諮りをいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川井しげお君) ご異議なしと認めます。よって、議員提出議案第一号外二議案については、趣旨説明並びに委員会付託を省略することに決定をいたしました。
 これより採決を行います。
 追加日程第二から第四まで、議員提出議案第一号、東京都議会議員の議員報酬等の特例に関する条例外条例二件を一括して採決いたします。
 本案は、起立により採決をいたします。
 本案は、いずれも原案のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕

○議長(川井しげお君) 起立総員と認めます。よって、議員提出議案第一号外二議案は、原案のとおり可決されました。

○議長(川井しげお君) 追加日程第五、豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置に関する動議を議題といたします。
 案文は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略をいたします。

豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置に関する動議
 右の動議を別紙のとおり提出します。
  平成二十九年二月二十二日
(提出者)
小林 健二  加藤 雅之  大門さちえ
和泉ひろし  山森 寛之  前田 和茂
大場やすのぶ 大津ひろ子  塩村あやか
やながせ裕文 小松 久子  西沢けいた
宮瀬 英治  米倉 春奈  白石たみお
斉藤やすひろ 栗林のり子  遠藤  守
伊藤こういち 菅野 弘一  川松真一朗
栗山よしじ  小松 大祐  堀  宏道
木村 基成  山内  晃  上田 令子
おときた駿  山内れい子  中山ひろゆき
田中 朝子  石川 良一  里吉 ゆみ
和泉なおみ  尾崎あや子  大松あきら
吉倉 正美  まつば多美子 高倉 良生
松田やすまさ 柴崎 幹男  舟坂ちかお
清水 孝治  鈴木 錦治  神野 次郎
北久保眞道  高椙 健一  栗山 欽行
和泉 武彦  両角みのる  西崎 光子
あさの克彦  新井ともはる 中村ひろし
島田 幸成  とくとめ道信 河野ゆりえ
小竹ひろ子  上野 和彦  野上 純子
中山 信行  谷村 孝彦  藤井  一
近藤  充  小宮あんり  ほっち易隆
河野ゆうき  島崎 義司  鈴木 章浩
きたしろ勝彦 田中たけし  鈴木 隆道
神林  茂  早坂 義弘  秋田 一郎
今村 るか  斉藤あつし  小山くにひこ
大西さとる  畔上三和子  大島よしえ
松村 友昭  鈴木貫太郎  ともとし春久
長橋 桂一  中屋 文孝  鈴木あきまさ
桜井 浩之  山崎 一輝  三宅 正彦
山加 朱美  高橋かずみ  山田 忠昭
林田  武  こいそ 明  田島 和明
古賀 俊昭  立石 晴康  野上ゆきえ
尾崎 大介  石毛しげる  植木こうじ
かち佳代子  曽根はじめ  小磯 善彦
橘  正剛  東村 邦浩  中嶋 義雄
宇田川聡史  高橋 信博  崎山 知尚
高木 けい  相川  博  吉原  修
野島 善司  三宅 茂樹  川井しげお
野村 有信  高島なおき  吉野 利明
内田  茂  酒井 大史  山下 太郎
清水ひで子  大山とも子  吉田 信夫
東京都議会議長 川井しげお殿

豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置に関する動議
 次の要綱に基づき、豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会を設置されたい。
豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置要綱
一 名称
 豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会とする。
二 委員会の法的根拠
 地方自治法第九十八条第一項並びに同法第百条第一項から第八項まで及び第十項に基づく調査を行うため、同法第百九条第一項及び東京都議会委員会条例第四条により特別委員会を設置する。
三 調査事項
 豊洲市場移転問題に関する次の事項
  築地市場から豊洲市場への移転に関する経緯及び両市場の適正性
  東京ガス株式会社などとの交渉及び土地売買に関する経緯
  豊洲市場の土壌汚染対策及び豊洲市場の主な建物下に盛り土が行われなかった経緯
  豊洲市場建設工事における契約事務
  その他調査に必要な事項
四 委員会組織
 委員は二十三名とし、議長指名による。委員長一名、副委員長三名、理事六名を置く。
五 調査期限
 本調査が終了するまでとし、閉会中も調査を行うことができる。
六 調査経費
 五百万円とする。

○議長(川井しげお君) 本動議は、起立により採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕

○議長(川井しげお君) 起立総員と認めます。よって、豊洲市場移転問題に関する調査特別委員会設置に関する動議は可決されました。

○議長(川井しげお君) ただいま設置されました特別委員会の委員は、委員会条例第五条第一項の規定により、議長からお手元に配布の名簿のとおり指名いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川井しげお君) ご異議なしと認めます。よって、委員は、お手元に配布の名簿のとおり選任することに決定をいたしました。
 なお、本日の本会議終了後、役員互選のため、委員会を第四委員会室に招集いたしますので、ご了承をお願いします。
〔豊洲市場移転問題に関する調査特別委員名簿は本号末尾(九二ページ)に掲載〕

○六十七番(河野ゆうき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明二十三日から二十七日まで五日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(川井しげお君) お諮りをいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(川井しげお君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明二十三日から二十七日まで五日間、議案調査のため休会することに決定をいたしました。
 なお、次回の会議は、二月二十八日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会をいたします。
   午後二時四十五分散会


文書質問趣意書及び答弁書

28財主議第565号
平成29年2月14日
東京都議会議長
川井しげお殿
東京都知事
小池百合子

文書質問に対する答弁書の送付について

 平成28年第四回東京都議会定例会における下記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。

おときた駿議員
白石たみお議員
上田令子議員
中村ひろし議員
今村るか議員
畔上三和子議員
大島よしえ議員
石毛しげる議員
清水ひで子議員

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 おときた駿

質問事項
一 不適切な医療情報等を掲載するウェブサイトへの対応について
二 羽田空港新航路に関する都の認識について
三 ゼロ歳児の里親委託促進・特別養子縁組について
四 医療的ケアが必要な児童(医療的ケア児)に対する保育支援について

一 不適切な医療情報等を掲載するウェブサイトへの対応について
 先般、上場企業である大手IT企業が運営する情報サイト「WELQ(ウェルク)」において、医学的・科学的に不正確な記事が多数掲載されていることが発覚し、大きな社会問題となりました。多数の有識者からの指摘を受けて、私が福祉保健局健康安全部に11月28日午前に報告したところ、その日のうちに運営会社にコンタクトを取るなど、都の迅速な対応によって当該サイトが全面非公開となったことについては高く評価するものです。
 しかしながら、ウェブ上には同様に不適切な情報を掲載しているウェブサイトが多数存在し、再発防止のためにも抜本的な対策の検討が必要不可欠と言えます。そこで、以下の5点についてお伺い致します。
1 インターネットの情報サイト「WELQ」で、医薬品医療機器等法上、不適切な広告が見受けられました。現在、当該サイトは非公開となりましたが、都はこのようなインターネット上の広告に対し、どのように対応してきたのか伺います。
2 ネットショップなどの販売元に対する調査・指導は綿密に行ってきた都ですが、「WELQ」のような情報サイトについてはチェックが行き届いていなかったようです。チェックが行き届かなかった理由・原因について、都の認識を伺います。
3 薬機法は広告の規制を行う法律であり、「WELQ」については、具体的な医薬品の名前をあげて不適切な情報を掲載していたことから薬機法に触れる可能性が高く、行政が指導力を発揮することができたものと認識しています。しかしながら、現在の薬機法に基づく行政対応では、仮に具体的な商品名などがなかった場合、あきらかに広告収入で運営されているサイトであっても、指導に入れない恐れがあります。再発防止に向けて、都は「WELQ」などの運営会社に対し、今後どのような調査・指導等の対応を行っていくのか。現時点での予定を伺います。
4 このような情報サイトの中には、医薬品医療機器等法に抵触するものも散見されます。また、これらの広大なネット情報の中から不適切な広告を一つ一つ見つけ出すことは困難を極めるのが実情です。こうしたネット上の広告に対応するための官民連携の現状と、今後の展望について都の所見を伺います。
5 あきらかに医学的・科学的見地から不適切と思われる表現で販売・広告が行われている情報サイトや記事を都民が発見した場合、電話だけでは都に伝えるために十分な情報を迅速に伝達することができません。都民が通報するためのメールやウェブ上のフォームが存在すれば、この問題は解消されます。体制を整えるべきと考えますが、見解を伺います。

二 羽田空港新航路に関する都の認識について
 羽田空港の新航路、特に南風時の着陸コースは都庁と防衛省をかすめるルートであり、経済的な影響や危機管理の問題が懸念されています。そこで、都の認識について以下の5点をお伺いします。
1 第四回「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」で配布された資料で示された国土交通省の認識では、「何故このような飛行経路の見直しが提案されているのかについて、他の選択肢が見当たらないことも含めて、深く知っていただいた」と都民が納得したことになっています。一方で東京都の都市整備局管轄の当該HP上
(http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kiban/haneda/index.html)には、これについての認識や今後の方策が示されておりません。この国土交通省の認識について、都は同意されているのでしょうか。見解をお伺いいたします。
2 東京都は現状において、都民や当該地域の区民に対して十分な情報提供と丁寧な説明が行われたと考えているのでしょうか。根拠も含めて見解をお聞かせください。
3 新航路による地価下落や高層ビル規制、そしてテロ時の経済的影響については、試算は行われているのでしょうか。行われているとすれば、具体的な金額も教えてください。
4 今回の新ルートにつき、他の航路案はないという認識でしょうか。また、都において代替案の調査などは行ったかどうかを教えてください。
5 国交省の提示にそのまま従うのではなく、関係区市や有識者と十分な協議を行い、その意見を反映して都独自の計画策定を行うなども可能性として考えられると思いますが、所見をお伺いいたします。

三 ゼロ歳児の里親委託促進・特別養子縁組について
 2016年12月4日の東京新聞に、「0歳からの里親広がれ 委託率1.8%の都、積極支援へ」というタイトルの記事が掲載され、児童福祉審議会の結論に基づき、都が新生児委託を積極的に支援していく方針である旨の報道がなされました。また、2016年6月には児童福祉法が改正され、また12月にはいわゆる「特別養子縁組あっせん法案」が成立するなど、児童養護をめぐる分野でめまぐるしい変化が起こっています。そこで、以下の5点についてお伺いいたします。
1 11月の児童福祉審議会では、ゼロ歳児の里親委託促進についてどのような結論となり、また都はその意見をどのように受け止めているのか、所見をお伺いいたします。
2 ゼロ歳児里親委託については明確な数値目標を設け、一層の促進を図るべきと考えますが、見解を伺います。
3 都は現在、民間事業者が行っている特別養子縁組に対して、どのような連携を取っているのか、現状をお聞かせ下さい。
4 今回の法案成立によって、地方自治体が民間事業者に対する財政上の措置、つまり金銭的な支援や研修などを行えることになりました。特別養子縁組の促進・健全化のために、こうした対応を早急に検討していくべきと考えますが、見解を伺います。
5 都を通してマッチングを行った特別養子縁組家庭と、民間事業者によって特別養子縁組を行った家庭に差が出ていることは、2015年3月の厚生委員会でも指摘をしたところです。繰り返しになりますが、行政があっせんした場合には、特別養子縁組の事情に応じたそれぞれの行政サービスが受けられますが、例えば民間のあっせんで成立した特別養子縁組の場合には、そうした行政のサービスの一部である里親相互交流事業を利用することができません。仮に民間あっせんにより成立したケースに同様のサービスを提供しても、その絶対数の少なさから大きなコストになるとは考えられません。今回の法令を機に、こうした状況についても改善を検討するべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

四 医療的ケアが必要な児童(医療的ケア児)に対する保育支援について
 2016年5月、改正障害者総合支援法の中に、医療的ケア児の支援体制の整備が盛り込まれました。これまで法律の中に存在していなかったことで、支援の手が届かなかった医療的ケア児がようやく法的にも認められ、自治体は医療的ケア児の支援の努力義務を負うことになっています。都内には極めて少数ながら医療的ケア児を預かることができる保育所が存在し、小池知事も都知事選の最中に敢えてその保育所を視察するなど、医療的ケア児に対する保育については深く理解・認識をされているものと思います。そこで、以下2点についてお伺いいたします。
1 平成26年11月20日の厚生委員会において、医療的ケア児が保育サービスから事実上排除されている現状について疑念を呈しました。これに対して「障害児に対する保育サービスが適切に提供されるよう、区市町村が行う職員研修への補助や、都独自の子育て推進交付金、保育所における障害児の受け入れに必要な施設改修経費補助などにより、区市町村を支援しております」との答弁がありましたが、実際に障害児保育に携わっている事業者からは、いまだに区市町村が医療的ケア児への保育に極めて消極的である旨の報告もあります。医療的ケア児に対する保育サービス提供の現状について、都はどのように認識をされているのか見解を伺います。
2 医療的ケア児に対する保育の受け皿を拡充するためには、法律にも明記された医療的ケア児に対して、独立した補助を確立することが有効です。現在、重症心身障害児に対しては様々な加算措置が存在するものの、重症心身障害児並にきめ細かな対応が必要となる医療的ケア児に対する加算は存在せず、その部分が区市町村や保育事業者たちの医療的ケア児受け入れのボトルネックとなっていることが推察されます。医療的ケア児の受け入れに対しても、重症心身障害児と同様の加算措置を加えるべきと考えますが、見解を伺います。

平成28年第四回都議会定例会
おときた駿議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 不適切な医療情報等を掲載するウェブサイトヘの対応について
1 インターネットの情報サイト「WELQ」で、医薬品医療機器等法上、不適切な広告が見受けられた。現在、当該サイトは非公開となったが、都は、このようなインターネット上の広告に対し、どのように対応してきたのか伺う。

回答
 都は、医薬品等に関するインターネット上の広告を対象とした一斉監視指導を実施し、ショッピングモールサイトなどで掲載されている不適切な広告の発見に努めるとともに、インターネット関連企業の協力を得て、広告主に対する注意喚起や指導を行っています。
 平成23年度から平成27年度までの5年間で、医薬品医療機器等法違反が疑われる広告37,649件について、広告主への注意喚起等を行いました。

質問事項
一の2 「WELQ」のような情報サイトについてはチェックが行き届いていなかったようだが、その理由・原因について、都の認識を伺う。

回答
 都は、インターネット上の広告が急速に増加していることを踏まえ、平成15年度から、商品の販売を目的としたインターネットショップが集まるショッピングモールサイトを中心に医薬品医療機器等法に基づく一斉監視指導を行っています。
 一方、情報サイトは、広告に該当しない記事などが多いため、一斉監視指導の対象とはしていませんが、不適切な内容が掲載されているなどの情報が寄せられた場合には、医薬品医療機器等法上の広告に該当するか否かを個別に判断した上で、必要な対応を行っています。

質問事項
一の3 再発防止に向けて、都は「WELQ」の運営会社に対し、今後どのような調査・指導等の対応を行っていくのか、現時点での予定を伺う。

回答
 医薬品等の広告の指導等は、医薬品医療機器等法に基づき、広告主に対して行う必要がありますが、WELQの場合、サイトの情報のみでは広告主の特定が困難であることから、都は、現在、WELQを運営する会社から事情を聴取し、記事掲載の仕組みなどの把握に努めています。
 今後、広告主が特定されれば、必要な指導を行っていく予定です。

質問事項
一の4 このような情報サイトの中には、医薬品医療機器等法に抵触するものも散見され、また、これら広大なネット情報の中から不適切な広告を一つ一つ見つけ出すことは困難を極める。こうしたネット上の広告に対応するための官民連携の現状と、今後の展望について都の所見を伺う。

回答
 都は、医薬品等に関するインターネット広告の監視指導を効果的に実施するため、全国に先駆け、平成15年度からインターネット関連企業14社、厚生労働省、総務省との連絡会を開催しています。連絡会では、効率的に検索・指導するための技術的手法やインターネットにおける広告表現の留意点等について、意見交換を行っています。
 また、インターネット関連企業による自主審査の取組を支援するため、担当者を対象とした医薬品医療機器等法上の広告を適正に行うためのポイントなどを伝える講習会を開催しています。
 今後も、インターネット関連企業の協力を得ながら、不適切な広告の発見・指導に努めるとともに、新たな広告手法に対する監視指導の在り方や改善指導に従わない悪質な事業者への対応方法等について、国や関係機関と協議していきます。

質問事項
一の5 あきらかに医学的・科学的見地から不適切と思われる表現で販売・広告が行われている情報サイトや記事を都民が発見した場合、電話だけでは都に伝えるために十分な情報を迅速に伝達することができない。都民が通報するためのメールやウェブ上のフォームが存在すれば、この問題は解消される。体制を整えるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
 インターネットサイトで医薬品等を販売している事業者の所在地は、国内外にわたるため、厚生労働省は、医薬品医療機器等法違反の疑いがあるインターネットサイトを国民が発見した場合、事業者の住所がホームページ等から分かる場合は所在地の自治体、事業者の住所が分からない場合又は海外の事業者の場合は厚生労働省にメールで情報を送付する仕組みを設けており、厚生労働省が入手した情報は、速やかに関係自治体に送付されることになっています。
 また、都は、都民の声総合窓口などにメール等で寄せられた情報についても、医薬品医療機器等法上の広告に該当するか否かを個別に判断した上で、必要な対応を行っており、今後とも、迅速かつ適切に対応していきます。

質問事項
二 羽田空港新航路に関する都の認識について
1 第4回「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」の配布資料では、都民が納得したと国土交通省の認識が示されているが、都の都市整備局の当該HP上には、これについての認識や今後の方策が示されていない。この国土交通省の認識について、都は同意しているのか、見解を伺う。

回答
 都としては、国において平成27年7月より、都内16か所で延べ70日間にわたる住民説明会を開催したことについて、住民への丁寧な説明が行われたものと認識しています。
 国は、今後も、より多くの方に知って頂けるよう多様な手法を用い、情報提供の取組を強化することとしており、都としても、国に対して、引き続き地元への丁寧な情報提供を要望しています。

質問事項
二の2 都は現状において、都民や当該地域の区民に対して十分な情報提供と丁寧な説明が行われたと考えているのか、根拠も含めて見解を伺う。

回答
 国において、オープンハウス型の住民説明会を、平成27年7月から2回にわたり都内16か所で延べ70日間開催し、約8,800人が来場しました。
 説明会では、来場者に個別に対応し、きめ細やかに情報提供するとともに、意見、質問等を丁寧に聴取しています。平成27年12月からの第2フェーズでは、実際に近い形で飛行機の見え方や音の体験ができるコーナーも設置しました。
 このほか、国は、特設ホームページや特設電話窓口、日刊紙への広告掲載などを通じて、幅広く情報提供や意見の聴取に努めてきました。
 こうしたことから、都としては住民への丁寧な説明が行われたものと認識しています。
 都は国に対して、引き続き地元への丁寧な情報提供を要望しており、国は、住民説明会の継続開催等の方針を示しています。

質問事項
二の3 新航路による地価下落や高層ビル規制、そしてテロ時の経済的影響についての試算は行われているのか伺う。行われているとすれば、具体的な金額を伺う。

回答
 国によれば、不動産価値については、周辺の騒音等の環境面や立地、周辺施設等の地域要因だけではなく、人口の増減等の社会的要因、財政や金融等の経済的要因、土地利用計画等の行政的要因、あるいはそもそもの需要と供給のバランスなど経済情勢を含めた様々な要素が絡み合い決定されることから、航空機の飛行と不動産価値の変動との間に直接的な因果関係を見出すことは難しいとの認識です。
 なお、国はテロについては飛行経路に関わらない課題であり、現在も取組を順次強化していますが、今後も未然防止に万全を期していくこととしています。

質問事項
二の4 今回の新ルートについて、他の航路案はないという認識なのか。また、都において代替案の調査などは行ったのか伺う。

回答
 学識経験者等で構成される「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」において、羽田空港の滑走路の運用方式と飛行経路案が複数検討され、その検討に基づき、国は、最も効率的な滑走路の運用方式等に合わせた、新たな飛行経路案を提案しました。
 都において、飛行経路の代替案の調査は行っていません。

質問事項
二の5 国交省の提示そのままではなく、関係区市や有識者と十分な協議を行い、その意見を反映して都独自の計画策定を行うなども可能性として考えられるが、見解を伺う。

回答
 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会やその後の航空需要に応え、国際便の就航を増やしていくためにも、羽田空港の容量拡大は必要不可欠です。
 国は、羽田空港の発着回数を増やすため、安全を前提に様々なケースについて行った学識経験者等の検討に基づき、最も効率的な滑走路の運用方式等に合わせた、新たな飛行経路案を提案しました。
 都は関係区市の意見を聴いた上で、国に対して、地元への丁寧な情報提供と、騒音・安全対策の取組を求め、その上で、2020年までに必要な施設整備や環境対策を着実に推進していくことを要請してきました。
 今後とも、都民の理解が深まるよう、積極的に取り組み、国際的な拠点空港としての羽田空港の更なる機能強化を図っていきます。

質問事項
三 ゼロ歳児の里親委託促進・特別養子縁組について
1 11月の児童福祉審議会では、ゼロ歳児の里親委託促進についてどのような結論となり、また都はその意見をどのように受け止めているのか、見解を伺う。

回答
 平成28年11月に出された児童福祉審議会の提言では、乳児の養育家庭等への委託を促進するため、乳児院の機能をより一層活用すること等により、養育家庭への委託を促進すること、また、特別養子縁組が最善と判断した場合には、できるだけ早期に養親子を結び付けられるよう、新たな委託の仕組みを整備すること等が示されています。
 具体的には、〔1〕児童相談所は、ケースの進行管理や支援機関全体の調整を行う機能を一層発揮すること、併せて、乳児院に、里親子の交流中のアセスメントや委託後の支援等、現在児童相談所に集中している役割の一部を担ってもらうことも必要であること、〔2〕特別養子縁組が最善と判断した場合は、乳児院の協力の下、養育に対する助言や指導、里親子関係のアセスメント等を短期間で行い、できるだけ新生児のうちに委託に結び付けることが求められることなどが盛り込まれています。
 今後、この提言も踏まえ、養育家庭等への乳児委託を一層促進していきます。

質問事項
三の2 ゼロ歳児里親委託については明確な数値目標を設け、一層の促進を図るべきだが、見解を伺う。

回答
 要保護児童の措置に当たっては、児童の福祉を第一に考え、児童の心身の発達状況や保護者の家庭引取りの可能性など、児童一人一人の状況を総合的に勘案し決定しています。
 今後、児童福祉審議会の提言も踏まえ、養育家庭等への乳児委託を一層促進していきます。

質問事項
三の3 都は現在、民間事業者が行っている特別養子縁組に対して、どのような連携を取っているのか、現状について伺う。

回答
 養子縁組あっせん事業は、社会福祉法第2条に定める第二種社会福祉事業に位置付けられており、これまで、国及び都道府県以外の事業者については、事業の開始に当たり、事業経営地の都道府県知事に届出を行うこととされていました。
 都は、届出を受けるに当たり、定款や事業計画書を確認するほか、定期的に、あっせん事務の流れを説明する業務方法書の提出や収支決算の報告を求め、必要に応じて指導を実施してきました。

質問事項
三の4 今回の法案成立により、地方自治体が民間事業者に対して金銭的な支援や研修などを行えることになった。特別養子縁組の促進・健全化のために、こうした対応を早急に検討すべきだが、見解を伺う。

回答
 平成28年12月16日に公布された、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律では、第22条に、「国又は地方公共団体は、民間あっせん機関を支援するために必要な財政上の措置、養子縁組のあっせんに係る業務に従事する者に対する研修その他の措置を講ずることができる」と規定されています。
 また、同法の附帯決議では、民間あっせん機関が継続的かつ安定的に事業を運営することが可能となるよう、政府が、財政上の措置その他必要な措置を講ずるよう努めることとされています。
 同法は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとされており、都としては、今後示される厚生労働省令や、国の財政上の措置等を踏まえ、対応を検討していきます。

質問事項
三の5 特別養子縁組について、行政があっせんした場合、事情に応じたそれぞれの行政サービスが受けられるが、例えば民間があっせんした場合、そうした行政サービスの一部である里親相互交流事業を利用できない。今回の法令を機に、こうした状況の改善も検討すべきだが、見解を伺う。

回答
 現在、里親支援機関は、養子縁組里親が、互いに養育の悩み等を話し合うほか、様々な情報の交換等を行う里親サロンを開催しており、民間事業者のあっせんで成立した特別養子縁組里親の参加についても可能となっています。

質問事項
四 医療的ケアが必要な児童(医療的ケア児)に対する保育支援について
1 平成26年11月20日の厚生委員会において、「障害児に対する保育サービスが適切に提供されるよう、区市町村が行う職員研修への補助や、都独自の子育て推進交付金、保育所における障害児の受け入れに必要な施設改修経費補助などにより、区市町村を支援しております」との答弁があったが、実際に携わっている事業者からは、いまだに区市町村が医療的ケア児への保育に極めて消極的である旨の報告もある。医療的ケア児に対する保育サービス提供の現状について、都はどのように認識をしているのか見解を伺う。

回答
 平成28年6月に改正児童福祉法が公布され、同法第56条の6第2項に、「地方公共団体は、人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児が、その心身の状況に応じた適切な保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を受けられるよう、保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を行う機関との連絡調整を行うための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるように努めなければならない」と規定されました。
 また、国の通知「医療的ケア児の支援に関する保健、医療、福祉、教育等の連携の一層の推進について」では、「保育所等における保育は、保護者が就労している場合など保育を必要とする子どもに対して一般的に提供されるものであり、医療的ケア児についてもそのニーズを受け止め、これを踏まえた対応を図っていくことが重要である」とされています。
 都としても、こうした考えに立って、医療的ケア児の保育ニーズに対応できるよう、今後とも区市町村の取組を支援していきます。

質問事項
四の2 重症心身障害児に対しては様々な加算措置が存在するものの、医療的ケア児に対する加算は存在せず、その部分が区市町村や保育事業者たちの医療的ケア児受け入れのボトルネックとなっていることが推察される。医療的ケア児の受け入れに対しても、重症心身障害児と同様の加算措置を加えるべきだが、見解を伺う。

回答
 都は、医療的ケア児を含めた障害児に対する保育サービスが適切に提供されるよう、必要な施設改修経費補助や都独自の子育て推進交付金等で区市町村を支援しています。
 また、保育サービス推進事業に障害児保育加算を設け、障害児を受け入れる事業者の取組を支援しています。
 平成27年度は都内の認可保育所の7割に当たる約1,600か所で障害児保育が実施されており、今後とも、医療的ケア児を含めた障害児に対する保育サービスの提供が進むよう、区市町村や事業者を支援していきます。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 白石たみお

質問事項
一 待機児童対策について

一 待機児童対策について
 東京都は「待機児童解消に向けた緊急対策」の中で、新たな支援策を2017年度予算案に反映するとしています。区市町村や保育の現場の実情に応じたきめ細かな支援が求められます。そこで質問します。
1 東京都が行った「待機児童解消に向けた緊急対策活用意向調査」では、待機児童解消区市町村支援事業について、補助率のかさ上げの要件を自治体の規模を考慮したものにしてほしいという意見が複数の自治体から出されています。
 同事業では、〔1〕当該区市町村の区域における4月1日現在の0歳児から2歳児までの待機児童数の合計以上の保育所等の定員の拡充を行う、〔2〕0歳児から2歳児までの保育所等の定員について、150人以上の拡充を行う、〔3〕0歳児から2歳児までの保育所の利用児童数を100人以上増やす、という要件を定め、これを一つ満たした場合は補助率が引きあがり、二つ満たすとさらにかさ上げされます。
 このうち〔2〕と〔3〕は人口の多い自治体に有利な条件となっています。それは、保育の定員や利用児童を同じ人数増やす場合、人口の少ない自治体ほど、住民にとっての意義も、財政的な重みも大きくなりますが、一律の基準になっているからです。
 そして、「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」によれば、今年1月1日時点で23区のうち人口20万人を下回る自治体は3つだけですが、逆に多摩26市で人口20万人以上の自治体は4つしかないなど、多摩の自治体は区部と比べて人口が少ない傾向にあります。そのため、結果的に多摩の自治体で条件を満たしにくくなっています。しかも、多摩の小規模な自治体は財政力も相対的に弱いところが少なくありません。かさ上げ条件の見直しを求める意見が出されたのも多摩の自治体からでした。
 そこで、自治体からの要望に応え、待機児童解消区市町村支援事業における補助率かさ上げの条件を自治体の規模を考慮したものに見直す必要があると思いますが、都の考えをうかがいます。
2 借地料への補助について、今年度の補正予算で補助率や上限額が引き上げられたのは重要です。一方で補助の期間は5年間となっています。
 先日開かれた「待機児童解消に向けた緊急対策会議」では、世田谷区の保坂展人区長から期間を延長してほしいという要望が出されました。認可保育園の運営は長期にわたって継続するものであり、世田谷区は20年間にわたり補助を行っています。都としても補助期間の延長を検討すべきだと考えますが、いかがですか。

平成28年第四回都議会定例会
白石たみお議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 待機児童対策について
1 自治体からの要望に応え、待機児童解消区市町村支援事業における補助率かさ上げの条件を自治体の規模を考慮したものに見直すべきだが、都の見解を伺う。

回答
 保育の実施主体は区市町村であり、保育所等の整備費の負担割合は、原則、国が2分の1、区市町村と事業者がそれぞれ4分の1となっています。
 待機児童解消区市町村支援事業は、区市町村の保育サービス拡充に向けた取組を更に加速させるため、その取組に応じて、区市町村や事業者の整備費の負担を軽減する補助事業です。
 この補助は、都内の待機児童の約95パーセントを占める0歳児から2歳児までについて、〔1〕4月1日時点の待機児童数以上の保育サービスの定員拡充を行うこと、〔2〕150人以上の保育サービスの定員拡充を行うこと、〔3〕認可保育所の利用児童数を100人以上増やすことの三つの要件を設定し、区市町村が保育サービスの拡充に取り組み、要件を満たした場合、区市町村や事業者の負担を最大で16分の1まで軽減するものです。
 今後とも、こうした仕組みにより、待機児童解消に向けて積極的に取り組む区市町村を支援していきます。

質問事項
一の2 借地料への補助について、今年度の補正予算で補助率や上限額が引き上げられたのは重要だが、補助期間は5年間である。認可保育園の運営は長期にわたり継続するものであり、世田谷区は20年間にわたり補助を行っている。都も補助期間の延長を検討すべきだが、見解を伺う。

回答
 都が実施している借地料に対する補助は、収入のない開設前の工事期間中を含め、経営が安定しにくいと考えられる期間を対象としています。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 上田令子

質問事項
一 急発進による追突事故防止に向けた対応について
二 医療政策について
三 三多摩地区における行政解剖について
四 有料老人ホームにおける事故対応と人権擁護について
五 教育政策について
六 都営地下鉄における安全対策について
七 いわゆる「政党復活予算」について

一 急発進による追突事故防止に向けた対応について
 高齢者及び不注意な運転による追突事故により、死亡者が出るなど深刻な事故が続発しています。高齢者の絶対数も多く、繁華街、住宅密集地が他自治体よりも卓抜して多い東京都として、重大事故が発生する前に未然に措置を講じる必要があると考えます。ついては以下についてお尋ねします。
1 高齢者ドライバー対策の現在の取組と課題についてご説明ください。
2 高齢者ドライバーにおける認知症対策と課題を伺います。
3 免許返納要件は満たさぬものの、本来は免許返上が勧められるものの車がどうしても必要な高齢者への対策について伺います。
4 米国では、NHTSA(運輸省道路交通安全局)ⅡHS(道路安全保険協会)にて、本年3月17日、自動車メーカー20社との間で、自動ブレーキを標準装備することで合意する等の取り組みを開始している。東京都では、ディーゼル車規制を平成15年10月から実施し平成18年4月に規制の基準値が強化され今日に至り、自動車及び大気における環境改善に大きな成果をあげました。このような実績を踏まえ、国に先駆けて、取組の検討をしてはどうかと考えますが見解を伺います。

二 医療政策について
1 公衆衛生医師について
 都民の命と健康を守る東京都の医療政策を実現し、医療法人・病院等の管理指導をするため、東京都には医師免許を持つ職員いわゆる公衆衛生医師がいます。つきましては以下についてお答えください。
 ア 公衆衛生医師登用目的と役割につき説明ください。
 イ 公衆衛生医師について人数、部署、業務内容を説明下さい。
 ウ 公衆衛生医師が、同業者や医療業界を守ることを都民の健康を守ることよりも優先しないか、出身大学や、医療法人・病院と利益相反な関係性にならないか懸念するところです。利益相反を回避する体制が整っているか、都民最優先の立場で公平公明に業務にあたる体制となっているか所見をお示しください。
 エ 慣れ合いや調査・指導・立入検査の情報漏洩を防止するために、公衆衛生医師の出身大学や経歴、医療施設・法人との関連性を把握する等、公平性を保つためになんらかの措置を講じているのかお答えください。
 オ 公衆衛生医師の退職後の就職先を把握しているのか、把握しているとしたら、都内の医療機関への就職はどのくらいの割合かお答えください。
 カ 以上を踏まえ、都立病院医師と公衆衛生医師の倫理性確保強化の考え方、取組を伺います。
2 管理・指導体制について
 梶原福祉保健局長によれば「私どもは、行政でございますので、法律等に基づいて指導を行っています。都は、医療法、医療法施行規則、厚生労働省通知等に基づいて、医療法人の運営管理の指導を行っております。」とのことです。つきましては、以下につきご説明ください。
 ア 通常の検査の概要及び指導・監督においてどのような場合に、報告徴収、立入検査、改善命令、業務停止、役員解任勧告、設立認可取消となるのか、どのような職員が担当するのか担当部署・役職も含めてご説明ください。
 イ 私が、平成28年11月1日の厚生委員会事務事業質疑にて取り寄せた資料によれば、10年間で、報告徴収28件、立入検査27件、改善命令5件、業務停止0件、役員解任勧告0件とのことがわかりました。設立認可取消128件ですが、平成21年は、政府による医療法人の集約が推奨されて99件と異例に多いことを除き、5000を超える医療法人が都内には存在し、患者が医師や医療機関を告訴をしたり、医師が逮捕される事案も発生、報道されているにもかかわらず大変件数が少ないように感じます。都の「医療法人の運営管理の指導」がこれまで適正であったか、個別事案も踏まえ所見をおしめしください。
3 医療過誤事案について
 本年6月9日、都内の大学病院へ東京都による立入検査が行われました。この病院では、点滴装置の電源が切られて強心剤の投与が数十分間停止し、女性患者が寝たきり状態になったことから、同院に対する損害賠償請求訴訟とともに、業務上過失傷害罪での刑事告訴を検討していることを同日ご家族が記者会見をしました。ご家族は昨年11月に、「患者の声相談窓口」に相談していたとのことですが、この時点で適宜適正な対応をしていれば、法的手段にまで打って出ることはなかったのではないか、東京都の対応不足があったのではないかと思料をするものです。つきましては以下についてお答えください。
 ア 医療事故発生から対応にいたるまで公衆衛生医師はどのように関わったかも含め東京都の対応の経緯を時系列で説明ください。
 イ 当時、部長級の公衆衛生医師が立入検査に赴いていますが、通常部長職が立入検査に立ち会うものか、過去部長職が立ち会ったか詳細につきご説明ください。あわせて、この大学出身の公衆衛生医師が立ち会ったのか、立ち会ったとすれば、その公衆衛生医師の役職についてもお示しください。
 ウ 「患者の声相談窓口」がなぜ活きなかったか、電話に出た担当者及び、公衆衛生医師の対応を含め伺います。
 エ 具体的な事案を受けて、再発防止、都民の相談に早急に真摯に対応する等今後の対策を伺います。
4 指定医について
 武蔵野市にある産婦人科にて、母体保護法に定められた資格のない医師が中絶手術を行い6日後に女性が死亡した事案が12月5日に明らかになりました。この医師は計12件手術を行っていたといいます。また、精神保健指定医の不正取得に伴い厚生労働省による89名の大量処分が10月に明らかになり、東京都で該当する医師はすべて都立病院医師であり、また資格を失効しこの2月には懲戒処分も受けており、指定医の管理体制に疑念を抱かざるを得ない事態です。ついては以下についてお尋ねします。
 ア 知事も、武蔵野市の事案を受け12月9日付記者会見にて「この病院については、理事長の方が亡くなっていた、そのままであるとか、そういった問題も含めて、かなり問題の多いところであり、これからもこういった類似のことなどが起こらないように、都としてもしっかりと見ていきたい」と述べています。私の取り寄せた前述の指導監督の実施件数の資料では、当該法人に立ち入った形跡はみられません。過去から痛ましい事案に至るまでの東京都における指導監督の経緯詳細について、理事長が死亡していたことを把握できなかったのか、部長級の公衆衛生医師及び部長級職員が立入検査に同行したのかも含めてお示しください。
 イ 母体保護法指定医の今後の適正管理について所見をお示しください。
 ウ 都立病院の精神保健指定医において、先般の事務事業質疑で明らかにされた、都立病院医師の精神保健指定医資格の更新手続きの不備の状況についてお答えください。あるとすれば当該医師が失効中に行った入院(措置入院、医療保護入院、緊急措置入院等)、行動制限(身体拘束、隔離)の件数及びそのうち18歳未満の患者の件数をお示しください。
 エ 失効医師がいたとして、都立病院において精神保健指定医の有効期限を失効した医師は、どのような処分となったのか。また、当該医師の行った精神保健指定医業務の検証は行ったのか伺います。
 オ 岐阜県では12月9日に、精神障害者を強制的に入院させる「措置入院」や退院などの処遇が妥当かどうかを判断する「県精神医療審査会」が、開催要件を満たさないまま平成23年度以降40回開かれ、計約4,300件を審査していたと発表しました。つきましては、東京都の精神医療審査会でも要件を満たさない開催はなかったか、過去3年の状況につきご説明ください。
 カ 今後の東京都立病院における精神保健指定医資格の管理徹底について所見をお示しください。また、都内各医療機関等に対する再発防止について、どのように取り組んで行くのか、伺います。
5 医療観察法病棟退院者の考え方について
 傷害などの事件に及んで刑事責任能力が問われず、不起訴や執行猶予になった精神障害者を拘束し、入院治療を強制できる医療観察法をめぐり、退院できる症状に回復した場合でも、住居や保証人が確保できないなどの理由で、社会的入院を余儀なくされる人々が相当数いることが、法務省奈良保護観察所が開いた医療観察制度運営連絡協議会で明らかになったとのことです。専用病棟のある奈良県大和郡山市小泉町、国立病院法人やまと精神医療センターを退院し、通院命令に切り替わった44人の行方について、36%に当たる16人が、実際は通院ではなく、一般の精神科病院に任意入院する形で再び入院していたとのことです。東京都においても同様の状況ではないかと思料するものです。つきましては以下についてお尋ねいたします。
 ア 都立松沢病院における医療観察法病棟退院者の考え方につきご所見をお示しください。
 イ 医療観察法病棟退院者について、調査把握をしているのか、しているとすればご説明ください。把握していないのであれば、今後の検討の有無を含めて所見をお示しください。
 ウ 退院者の社会復帰に向けた関係機関との連携体制などの現状をお示しください。

三 三多摩地区における行政解剖について
 監察医務院における、平成26年1月から同年12月までの死体検案数は13,301件、解剖件数は2,225件、死体検案書の発行数は18,187件。多摩・島しょ地域における死体検案数は6,171件、解剖件数は777件ということです。また、多摩・島しょ地域は、監察医務院のある23区と異なり、監察医を置くべき地域として政令で定められていないため、検案業務を東京都医師会に、解剖業務を東京慈恵会医科大学と杏林大学に委託し実施するほか、立川警察署管内については監察医務院による検案業務を実施し、検案・解剖体制の確保を図っている現状があります。
 人口規模からいって差が出るのは致し方ありませんが、検案数や設備機器や人員体制など高度な技術を誇る監察医務院と通常業務をしながら、行政解剖をする三多摩において、行政解剖における三多摩格差があるのではないかと懸念するものです。前述の武蔵野市の産婦人科病院で無資格医により中絶手術6日後に女性が亡くなった事案は、三多摩地区ですから、大学病院で行政解剖を行い「死因は急性うっ血性心不全」で因果関係は不明とのことで、監察医務院で検案していたら原因が明確になったのではないかとも考えうるものです。ついては以下について伺います。
1 解剖の委託業務について、どのようにその質や技術の担保、人員の確保をしているか、課題認識もお示しください。
2 監察医務院との連携状況、技術や知見の共有などの現状と課題をお示しください。

四 有料老人ホームにおける事故対応と人権擁護について
 高齢社会の進展に伴い高齢者の自立と生活の質の確保も重ねて課題になっております。介護保険の導入から16年あまり経ち、サービス供給における民間事業者の活動は、高齢者福祉において不可欠なものとなっております。多くの事業者は高齢者のために、日夜全力で事業展開しているところですが、残念ながら平成28年11月1日の厚生委員会資料29にあるように事故件数が急増しております。私も江戸川区内の介護付き有料老人ホームで骨折事故が発生したにもかかわらず事故報告書が存在しておらずご家族の求める説明に即応しなかった事例にあたったこともあります。全国的にも、介護者による虐待や暴行、殺人事案も報道されております。つきましては、有料老人ホームにおける事故対応と人権擁護について、以下、うかがいます。
1 都における指導監督のための組織体制について、ご説明ください。
2 有料老人ホームにおける事故の状況について、ご説明ください。
3 有料老人ホームにかかる利用者・親族等からの相談体制と相談内容について、ご説明ください。
4 有料老人ホームにおいて、人権擁護の観点も踏まえ、都では、どのような実地検査を実施しているのか伺います。
5 有料老人ホームへの実地検査の実績について、ご説明ください。
6 有料老人ホームへの実地検査のうち、利用者にかかわる事故対応についての実施実績、処分の有無について、ご説明ください。

五 教育政策について
1 東京都総合教育会議について
 ア 年度別の東京都総合教育会議の開催状況と、教育施策大綱の成果・課題についてご説明ください。
 イ 今年度における、知事の交代による教育施策大綱策定の変更についての検討状況及び学校における影響について、ご説明ください。
2 体育的活動における安全対策について
 体育的活動における安全対策検討委員会の開催の目的、開催状況と審議の内容、成果と課題について、ご説明ください。また、審議において、学校保健安全法の精神・規定はどのように反映されたのか、具体的にご説明ください。
3 いじめ対策について
 いじめ問題対策委員会および同調査部会によるいじめ調査の進め方、対応状況についてご説明ください。

六 都営地下鉄における安全対策について
1 都営地下鉄のホーム上での列車との接触事故、転落事故について、直近の状況をご説明ください。
2 都営地下鉄のホーム上での列車との接触事故、転落事故の被害者に、高齢者、幼児・学童、身体障がい者がどの程度、含まれているのか、ご説明ください。
3 都営地下鉄におけるホームドアの整備状況、今後の見通しについて、ご説明ください。
4 ホームドアの整備の際、ホームのかさ上げが必要になる場合があると聞きますが、かさ上げについての基本的な考え方、雨水対策を含む車椅子利用者等へのバリアフリー配慮について、ご説明ください。

七 いわゆる「政党復活予算」について
 小池知事は先の所信表明におきまして、いわゆる「政党復活予算」の終了を宣言しました。
1 いわゆる「政党復活予算」がいつからなぜ実施されてきたのか、歴代知事の下、終了は検討されなかったのか、経緯をご説明ください。
2 地方自治法は、予算編成権は知事に専属するとしていますが、いわゆる「政党復活予算」の慣行は法の趣旨に反しないのか、理由を含めて、ご所見をお示しください。

平成28年第四回都議会定例会
上田令子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 急発進による追突事故防止に向けた対応について
1 高齢者ドライバー対策の現在の取組と課題について伺う。

回答
 警視庁では、高齢運転者に対して、加齢に伴う身体機能の低下、認知機能の変化等の自覚を促すため、高齢者向けの交通安全のつどいや街頭キャンペーン、シルバードライバー教室等における検査機器を用いた交通安全教育のほか、警視庁ホームページやラジオ、チラシなどの各種広報媒体を活用し、交通安全指導を行っています。
 また、運転免許を自主返納した高齢運転者を支援することを目的として、平成20年に「高齢者運転免許自主返納サポート協議会」を発足させ、運転免許を自主返納し、運転経歴証明書を取得した方が、生活用品の購入や飲食店利用時の割引など様々な優遇措置を受けられるよう、民間企業・団体等に対して加入を呼びかけるなどしています。
 今後も、関係機関と連携を図り、サポート協議会の更なる拡充や高齢運転者に対する相談窓口業務の充実など、総合的な高齢者の交通事故防止対策に努めていきます。

質問事項
一の2 高齢者ドライバーにおける認知症対策と課題について伺う。

回答
 高齢運転者に係る交通事故防止対策については、高齢運転者の認知機能の現状をいかにタイムリーに把握し、その状況に応じた個別対応をとるかということが課題となっています。
 平成29年3月12日に施行される改正道路交通法では、75歳以上の高齢運転者は、3年に1度の免許更新時の認知機能検査に加え、新たに一定の交通違反をした場合には、臨時の認知機能検査の対象となります。
 その結果、認知症のおそれがある第1分類に該当したときには、臨時適性検査又は医師の診断書の提出が義務付けられ、また、直近の認知機能検査の結果と比べて機能が低下しているとき等には、臨時高齢者講習が義務付けられることとなり、認知機能の低下をタイムリーに把握して、その結果に基づく臨時適性検査や安全教育等を行うこととしています。
 そのほか、警視庁では、認知機能が低下している疑いがある高齢運転者や家族等からの相談についても、運転免許試験場や運転免許センター、最寄りの警察署交通課において相談に応じています。

質問事項
一の3 免許返納要件は満たさぬものの、本来は免許返上が勧められるものの車がどうしても必要な高齢者への対策について伺う。

回答
 警視庁では、日々の生活を送る上で車の運転が欠かせない高齢者に対して、運転に必要な認知力や判断力、注意力等が加齢に伴い低下することについて、自覚を促すための交通安全指導を継続して行っていくほか、関係機関と連携を図り、リーフレットの配布等による先進安全自動車の普及促進に向けた取組も実施していきます。
 また、車に代わる移動手段の確保に向けた取組として、引き続き、コミュニティバスをはじめとする地域公共交通網の形成と高齢者運転免許自主返納サポート協議会の拡充に向け、区市町村等の関係機関に働きかけていきます。

質問事項
一の4 米国では、NHTSA、IIHSにて、本年3月17日、自動車メーカー20社との間で、自動ブレーキの標準装備に合意する等の取組を開始した。都では、ディーゼル車規制を実施するなど、自動車及び大気における環境改善に大きな成果をあげたが、このような実績を踏まえ、国に先駆けて、取組の検討をすべきだが見解を伺う。

回答
 国の交通安全基本計画では、安全運転を支援するシステムを搭載した先進安全自動車(ASV)について、ASV推進検討会の下、車両の開発・普及の促進を一層進めるとしています。
 また、衝突被害軽減ブレーキ等の市場化されたASV技術については、国際的な動向も踏まえつつ、義務化も含めた道路運送車両保安基準の拡充・強化などを図るとしています。
 都としては、都民に対し、先進安全自動車に関する情報提供を行うなど交通安全の普及啓発に努めていきます。

質問事項
二 医療政策について
1 公衆衛生医師について
 ア 公衆衛生医師登用目的と役割について伺う。

回答
 都は、本庁や保健所等において、感染症、生活習慣病・がん予防や健康づくり、母子保健、精神保健、難病や医療安全など、主として保健衛生分野の業務に従事させることを目的に、公衆衛生医師を採用しています。
 公衆衛生医師は、医師としての立場から、医学的知識や臨床経験に基づいて事業の評価や判断を行う一方、事業の企画・立案、調整、実施及び進行管理を行う行政職としての役割を担っています。

質問事項
二の1のイ 公衆衛生医師について採用配置時の人数、部署、業務内容をの状況について伺う。

回答
 平成28年12月1日現在の公衆衛生医師配置部署等は次のとおりです。

配置部署 人数
(人) 業務内容
技監 1人 公衆衛生医師の統括
医療政策部 3人 在宅療養・医療連携の推進、地域医療提供体制の整備、医療施設等の許認可・監視指導、患者の声相談窓口の業務に従事
保健政策部 8人 健康づくり、生活習慣病・がん予防対策、難病等の疾病対策の業務に従事
少子社会対策部 1人 母子保健、不妊治療・小児慢性疾患の医療費助成の業務に従事

健康安全部 4人 結核・HIV・新型インフルエンザ等の感染症対策の業務に従事
西多摩保健所 2人 地域保健法による都道府県保健所として感染症対策、健康危機管理、広域医療連携等の業務に従事
南多摩保健所 3人
多摩立川保健所 4人
多摩府中保健所 4人
多摩小平保健所 3人
島しょ保健所 3人
健康安全研究センター 4人 食品、医薬品、飲料水等の安全・安心確保や感染症等の危機管理に対する試験検査、調査研究、公衆衛生情報の解析・提供及び監視活動などの業務に従事

質問事項
二の1のウ 利益相反を回避する体制が整っているか、都民最優先の立場で公平公明に業務にあたる体制となっているのか、見解を伺う。

回答
 地方公務員法は服務の根本基準として、職員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務しなければならないことを定めており、職員は採用の際、全体の奉仕者として誠実かつ公正に職務を執行する旨の宣誓を行っています。
 また、都は「利害関係者との接触に関する指針」を定め、免許、認可、許可、検査等の職務に従事する職員が利害関係者と接触する際の禁止事項や遵守事項を明確にするとともに、公衆衛生医師を含む全職員を対象とした汚職等非行防止研修やチェックリストによる点検を実施するなど、職員の意識啓発に取り組んでいます。

質問事項
二の1のエ 慣れ合いや調査・指導・立入検査の情報漏洩を防止するために、公衆衛生医師の出身大学や経歴、医療施設・法人との関連性を把握する等、公平性を保つためになんらかの措置を講じているのか伺う。

回答
 地方公務員法は、職員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務しなければならないこと、また職務上知り得た秘密を漏らしてはならないことを定めています。
 都は「利害関係者との接触に関する指針」を定め、免許、認可、許可、検査等の職務に従事する職員が利害関係者と接触する際の禁止事項や遵守事項を明確にするとともに、公衆衛生医師を含む全職員を対象とした汚職等非行防止研修やチェックリストによる点検を実施するなど、職員の意識啓発に取り組んでいます。

質問事項
二の1のオ 公衆衛生医師の退職後の就職先を把握しているのか伺う。把握している場合、都内の医療機関への就職はどのくらいの割合なのか伺う。

回答
 都は、東京都職員の退職管理に関する条例に基づき、実質的に行政上の権限を行使しない職員として人事委員会規則に定める者等を除き、職員に対して再就職情報を届け出ることを義務付けています。
 条例が施行された平成28年4月1日から同年12月1日までの間において、届出の対象となる公衆衛生医師はいません。

質問事項
二の1のカ 以上の質問を踏まえ、都立病院医師と公衆衛生医師の倫理性確保強化の考え方、取組について伺う。

回答
 東京都職員服務規程により、職員は、全体の奉仕者としての職責を自覚し、法令、条例、規則その他の規程及び上司の職務上の命令に従い、誠実、公正かつ能率的に職務を遂行しなければならないとされています。
 また、職員は、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを認識するとともに、日常の行動について常に公私の別を明らかにし、職務や地位を私的な利益のために用いてはならないとされています。
 職員がこうした服務の原則を踏まえ、高い倫理観を持って職務に精励するよう、都は引き続き、医師を含む全職員を対象とした汚職等非行防止研修やチェックリストによる点検を実施するなど、職員の意識啓発に努めていきます。

質問事項
二の2 管理・指導体制について
 ア 通常の検査の概要及び指導・監督において、どのような場合に報告徴収、立入検査、改善命令、業務停止、役員解任勧告、設立認可取消となるのか、どのような職員が担当するのか担当部署・・役職について伺う。

回答
 医療法人に対する指導監督については、医療法で定められています。
 同法第63条第1項では、医療法人の業務若しくは会計が法令等に違反している疑いがあり、又はその運営が著しく適正を欠く疑いがあると認めるときは、知事は、当該医療法人に対し報告を求め、又は職員にその事務所に立ち入り、検査させることができるとされています。
 同法第64条第11項では、医療法人の業務若しくは会計が法令等に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、期限を定めて、必要な措置をとるべき旨を命ずることができるとされています。
 この命令に従わないときには、同条第2項により、期間を定めて業務の停止を命じ、又は役員の解任を勧告することができるとされています。
 同法第66条では、医療法人が法令等の規定に違反した場合、他の方法により目的を達することができないときに限り、設立認可を取り消すことができるとされています。
 同法第65条では、医療法人が、成立した後又はすべての病院等を休止若しくは廃止した後1年以内に正当な理由なく病院等を開設しないとき、又は再開しないときは、設立の認可を取り消すことができるとされています。
 医療法人の指導監督に関することは、福祉保健局医療政策部において所管しており、役職の定めはありません。

質問事項
二の2のイ 過去10年間の報告徴収などの実績について、5000を超える医療法人が都内には存在し、患者による医師などの告訴、医師の逮捕事案の発生・報道にもかかわらず大変件数が少ないが、都の「医療法人の運営管理の指導」がこれまで適正であったのか、個別事案も踏まえ見解を伺う。

回答
 医療法人は、医療法第40条の2により、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を果たすよう努めなければならない、とされています。
 都では、医療法人から毎会計年度終了後に提出される事業報告書等で事業内容や経営状況等を確認しており、法令違反の疑いがある場合やその運営が著しく適正を欠く疑いがある場合には、同法第63条第1項に基づき当該法人に業務又は会計の状況に関し報告を求め、必要に応じ立入検査を実施しています。
 また、改善に向けた指導を繰り返し行っても改善が図られない場合や、運営が著しく適正を欠く場合には、同法第64条第1項に基づき改善命令等を行っており、今後とも医療法人の適切な運営の確保に努めていきます。

質問事項
二の3 医療過誤事案について
 ア 医療事故発生から対応にいたるまでの公衆衛生医師はどのように関わったかも含め東京都の対応について、時系列で経緯を伺う。

回答
 平成27年6月に発生した本事案については、同年7月に都内の大学病院から書面で事故の概要と再発防止策の報告を受け、その内容を確認しています。
 また、定例で行った同年8月の立入検査の中でも、再発防止策の取組状況の確認を行いました。
 同医療機関に対しては、平成28年6月の立入検査においても、当該事故に対する改善策・再発防止策が継続して実施されているかどうかを確認しました。
 さら更に同年8月の定例の立入検査でも確認しました。
 医療法第25条第1項に基づく立入検査は、同法第26条第1項に基づき知事から任命された医療監視員が行うことになっており、本事案については公衆衛生医師である医療監視員も立入検査に従事しています。

質問事項
二の3のイ 当時、部長級の公衆衛生医師が立入検査に赴いているが、通常部長職が立入検査に立ち会うものか、過去部長職が立ち会ったか詳細について伺う。あわせて、この大学出身の公衆衛生医師が立ち会ったのか、立ち会ったとすれば、その公衆衛生医師の役職についても伺う。

回答
 医療法第25条第1項に基づく立入検査は、同法第26条第1項に基づき知事から任命された医療監視員が行うことになっています。
 医療監視員は、職種や職層を問わず任命されており、部長職である公衆衛生医師が医療監視員として立入検査を行うこともあります。
 出身大学は、医療監視員の任命には関係がなく、個人情報でもあるため、公表していません。

質問事項
 二の3のウ 「患者の声相談窓口」がなぜ活きなかったのか、電話に出た担当者及び公衆衛生医師の対応を含め伺う。

回答
 「患者の声相談窓口」は、患者・都民と医療従事者や医療提供施設の間にあって、中立的な立場から問題解決に向けた双方の取組を支援するよう努めています。
 患者・都民の求めがあった場合は、個人情報の保護に留意しつつ、医療提供施設に要望などを伝えることによって、双方の関係構築を支援しています。
 「患者の声相談窓口」の担当医師は、医学的知見に基づき、相談に応じています。

質問事項
二の3のエ 具体的な事案を受けて、再発防止、都民の相談に早急に真摯に対応する等今後の対策について伺う。

回答
 都民から「患者の声相談窓口」に医療事故等の相談があった場合には、病院に状況を確認し、医療を安全に提供する上で管理上重大な問題があると疑われる場合には、臨時の立入検査を実施するなど、今後とも病院の適正な管理運営の確保に努めていきます。

質問事項
二の4 指定医について
ア 武蔵野市の産婦人科で、母体保護法に定められた資格のない医師が中絶手術を行い、6日後に女性が死亡した事案が12月5日に明らかになったが、過去から痛ましい事案に至るまでの都における指導監督の経緯詳細について、理事長が死亡していたことを把握できなかったのか、部長級の公衆衛生医師及び部長級職員が立入検査に同行したのかも含めて伺う。

回答
 当該病院に対しては、平成28年8月から立入検査を複数回行い、病院の運営の不適正な点について早急な改善を指導しています。
 また、同年10月の時点で警察に対し告発に向けた相談を行いっており、同年12月に受理されています。
 当該法人の理事長の死亡については、法人から報告がなく、虚偽の書類が提出されるなど、正確な情報を把握することが困難でしたが、同年9月の立入検査で理事長死亡を確認し、直ちに新たな理事長の選任を求めました。その結果、同年10月に新理事長が選任されました。
 なお、本事案の立入検査を行った医療監視員の中には、部長級職員はいません。

質問事項
二の4のイ 母体保護法指定医の今後の適正管理について、見解を伺う。

回答
 母体保護法では、人工妊娠中絶を行うことができる医師は、都道府県の医師会が指定することとなっています。
 東京都医師会は、指定医師の指定に当たり、母体保護法指定医師審査委員会を設置し、人格、技能及び設備の3点を考慮して審査を行っており、指定及び2年ごとの更新には、講習会の受講などを要件としています。
 また、指定医師に遵守規定の厳守を求めるとともに、必要に応じて医師や実施施設に実地指導を行うほか、指定医師に不適格な事情が発生した場合には、指定の取消し等の処分を行うこととなっています。
 都は、これまでも、医療法に基づき、医療を安全に提供する上で管理上重大な問題があると疑われる場合に立入検査等を実施し、病院の適正な管理運営の確保に努めており、今後とも、様々な機会を捉えて、法令の遵守をはじめ医療の安全確保に必要な取組を促していきます。

質問事項
二の4のウ 都立病院の精神保健指定医において、先般の事務事業質疑で明らかにされた、都立病院医師の精神保健指定資格の更新手続きの不備の状況について伺う。あるとすれば当該医師が失効中に行った入院(措置入院、医療保護入院、緊急措置入院等)、行動制限(身体拘束、隔離)の件数及びそのうち18歳未満の患者の件数について伺う。

回答
 当該医師が失効中に行った各件数は、医療保護入院の届出が10件(うち18歳未満10件)、隔離が9件(うち18歳未満9件)、措置入院に関する診断1件(うち18歳未満0件)です。

質問事項
二の4のエ 失効医師がいたとして、都立病院において精神保健指定医の有効期限を失効した医師は、どのような処分となったのか。また、当該医師の行った精神保健指定医業務の検証は行ったのか伺う。

回答
 当該医師に対しては、精神保健指定医の資格を失効させたまま精神保健指定医の職務を行ったとして、訓告の措置となりました。
 また、当該医師が失効期間中に行った入院中の隔離・拘束などの精神保健指定医業務については、改めて精神保健指定医による検証を行いましたが、当初と異なる判断がなされた事案はなく、全て適正でした。

質問事項
二の4のオ 東京都の精神医療審査会で要件を満たさない開催はなかったか、過去3年の状況について伺う。

回答
 都は、精神障害者の人権に配慮しつつ、適正な医療及び保護を確保するため、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第12条に基づき、精神科病院に入院している患者の処遇等について、専門的かつ独立的に審査を行う精神医療審査会を設置しています。
 審査案件については、精神医療審査会が指名する5名の委員による合議体において取り扱うこととされており、その委員は精神障害者の医療に関し学識経験を有する者、精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者、法律に関し学識経験を有する者で構成し、各分野の委員がそれぞれ1名以上出席することが開催要件となっています。
 東京都における精神医療審査会は、平成25年度から平成27年度までの3年間で、合議体を計223回開催し、全て開催要件を満たしています。

質問事項
二の4のカ 今後の東京都立病院及び都内各医療機関における精神保健指定医資格の管理徹底について、見解を伺う。また、都内各医療機関等に対する再発防止について、どのように取組んでいくのか伺う。

回答
 各都立病院では、精神保健指定医をはじ始めとする医師の専門資格を定期的に確認しているほか、厚生労働省が定める精神保健指定医資格の申請要件の周知徹底や診療関与を客観的に示すための十分なカルテ記載、診療科及び事務局双方でのケースレポートの管理など、組織全体での管理体制を構築し、再発防止を徹底します。
 また、精神保健指定医の有効期限が失効することのないよう、精神病床を有する都内医療機関の管理者等に対し、更新時期の管理を徹底するよう依頼するとともに、精神保健指定医本人に対しても、措置診察業務説明会や関係団体が開催する研修会等の機会を捉えて周知しており、今後とも、精神保健指定医証の更新について、適正に管理していきます。

質問事項
二の5 医療観察法病棟退院者の考え方について
 ア 都立松沢病院における医療観察法病棟退院者の考え方について、見解を伺う。

回答
 医療観察法病棟からの退院については、指定入院医療機関が医療観察法の規定に基づき、対象者が重大な他害行為を行った際の精神障害を改善するなど入院継続の必要がないと認めた場合は、保護観察所の長の意見を付して、地方裁判所に対し、退院の許可の申し立てを行うものです。
 松沢病院においては、治療を担当する多職種チームによる評価に加え、院長又は副院長が当該対象者の面接を行うなど多重チェックを実施した上で、院内会議で審議・決定し、裁判所に申し立てを行っています。

質問事項
二の5のイ 都立松沢病院における医療観察法病棟退院者について、調査把握をしているのか、しているとすれば内容を伺う。把握していないのであれば、今後の検討の有無を含めて見解を伺う。

回答
 医療観察法では、保護観察所が、退院後の対象者に対する医療、精神保護観察及び援助などを定めた「処遇の実施計画」を策定するほか、対象者との面談や関係機関から報告を受けるなどの「精神保健観察」を行い、生活状況を見守ることとなっています。
 なお、対象者の指定通院医療機関に松沢病院が指定され、退院後も引き続き松沢病院に通院している場合は、外来診療を通じてそれぞれの生活状況等を把握するだけでなく、保護観察所や精神保健福祉関係機関等から構成される「ケア会議」に参加し、必要な情報を共有しています。

質問事項
二の5のウ 退院者の社会復帰に向けた関係機関との連携体制などの現状を伺う。

回答
 医療観察法では、対象者の退院後は、保護観察所の社会復帰調整官が中心となり、継続的な医療の確保とともに、対象者の生活を見守り支援するために必要な精神保健福祉サービス・障害福祉サービス等の提供を支援することとなっています。
 松沢病院では、医療観察法に基づき社会復帰調整官の依頼により、区市町村や障害福祉サービス事業者等の関係機関と連携して、円滑に社会復帰できるよう支援を行っています。

質問事項
三 三多摩地区における行政解剖について
1 解剖の委託業務について、どのようにその質や技術の担保、人員の確保をしているのか、課題認識についても伺う。

回答
 多摩地域の行政解剖業務を委託している東京慈恵会医科大学及び杏林大学において行政解剖を行う者は、死体解剖保存法第2条第1項第1号に該当する死体の解剖に関し相当の学識技能を有する医師で厚生労働大臣が適当と認定した医師、又は同項第2号に該当する医学に関する大学の解剖学、病理学又は法医学の教授又は准教授です。
 解剖の質や技術の担保については、監察医務院において、検案・解剖実習に参加する機会を提供しているほか、両大学においても、日本法医学会の認定医の取得・更新に向け、指導医が検案や解剖の指導を行っています。
 また、行政解剖に携わる人材の確保については、平成28年度から、都と都内の大学医学部とが連携して、医学生等を対象に法医学への関心を高めるためのセミナーを開催するなどの取組を進めています。

質問事項
三の2 監察医務院との連携状況、技術や知見の共有などの現状と課題を伺う。

回答
 監察医務院では、監察医の養成及び補習教育を目的として、大学法医学教室や医療機関に所属する医師に対し、検案・解剖実習を行っており、東京慈恵会医科大学及び杏林大学の医師も当該実習に参加し、その後、大学に勤務しながら監察医務院の非常勤監察医として勤務する場合もあります。
 また、両大学と監察医務院が共同して学術研究や学会発表を行っており、検案及び解剖に関する技術や知見の共有を図っています。
 今後とも、両大学と監察医務院が連携しながら、多摩地域における検案及び解剖の質の維持・向上を図っていきます。

質問事項
四 民間高齢者施設有料老人ホームにおける事故対応と人権擁護について
1 都における指導監督のための組織体制について伺う。

回答
 有料老人ホームは老人福祉法第29条に基づく施設であり、都は、同法に基づき届出の指導や実地検査を行っています。
 また、都独自に有料老人ホームの設置運営に当たり事業者が遵守すべき事項を定めた「東京都有料老人ホーム設置運営指導指針」を策定し、この指針に基づく運営指導を行っています。
 都では、同法に基づく届出の指導及び指針に基づく運営指導を福祉保健局高齢社会対策部が行い、同法に基づく実地検査を指導監査部が担っており、両部が互いに連携し、適正な施設運営及びサービスの質の確保並びに入居者の保護を図っています。

質問事項
四の2 有料老人ホームにおける事故の状況について伺う。

回答
 「東京都有料老人ホーム設置運営指導指針」では、死亡等の重大な事故が発生した場合には、事故の状況や経緯、発生原因、再発防止策等を都に報告することを求めています。
 過去3年間の事故報告件数は、平成25年度が438件、平成26年度が441件、平成27年度が617件となっています。

質問事項
四の3 有料老人ホームにかかる利用者・親族等からの相談体制と相談内容について伺う。

回答
 都は、介護支援専門員や社会福祉士などの専門資格を有する職員を配置し、有料老人ホームの利用者やその家族等からの相談に対応しています。
 主な相談内容は、サービス内容や利用料金、職員の接遇に関することなどとなっています。

質問事項
四の4 有料老人ホームにおいて、人権擁護の観点も踏まえ、都ではどのような実地検査を実施しているのか伺う。

回答
 都が有料老人ホームに対して行う実地検査では、人権擁護の観点から、身体拘束の廃止や人権侵害の防止に向けた取組がなされているか等を重点項目に定め、確認を行っています。
 検査の結果、不適切な状況が認められた場合には、口頭指導や文書指摘を行い、是正・改善に向けた指導を行うほか、重大な法令違反や入居者の処遇に関し不当な行為等が認められる場合は改善に必要な措置を命じることとしています。

質問事項
四の5 有料老人ホームへの実地検査の実績について伺う。

回答
 過去3年間に実地検査を行った有料老人ホーム数は、平成25年度が26施設、平成26年度が37施設、平成27年度が45施設です。
 検査の結果、運営上問題があり文書指摘を行った施設数は、平成25年度が7施設、平成26年度が21施設、平成27年度が16施設であり、指摘の内容は、事故報告を適切に行うこと、人員基準を遵守した職員配置を行うこと等となっています。

質問事項
四の6 有料老人ホームへの実地検査のうち、利用者にかかわる事故対応についての実施実績、処分の有無について伺う。

回答
 有料老人ホームに対して行う実地検査では、利用者に係る事故対応について、施設所在地の区市町村に必要な報告がされているか、事故発生後の対応や再発防止策が適切に講じられているか等について、確認を行っています。
 実地検査を行った施設のうち、事故対応に関する文書指摘を行った施設数は、平成25年度が2施設、平成26年度が10施設、平成27年度が8施設です。
 これらの施設からは指摘事項に関する改善の報告があり、いずれの事項も是正されていることを確認したため、処分を行っていません。

質問事項
四の7 有料老人ホームへの実地検査のうち、利用者の人権にかかわるものについての内容別実施実績、成果と課題について伺う。

回答
 質問落ち

質問事項
五 教育政策について
1 東京都総合教育会議について
 ア 年度別の東京都総合教育会議の開催状況と、教育施策大綱の成果・課題について伺う。

回答
 東京都総合教育会議は、平成27年度に3回、平成28年度に2回開催しています。
 教育施策大綱として東京都の教育の根本的な方針を策定したことにより、教育政策に関する方向性をより明確にすることができたと考えます。
 今後、新たに策定した大綱を踏まえ、都教育委員会において東京都の教育の充実に向けた取組を進めていきます。

質問事項
五の1のイ 今年度における、知事の交代による教育施策大綱策定の変更についての検討状況及び学校における影響について伺う。

回答
 新たな教育施策大綱は、2回にわたる総合教育会議における協議やパブリックコメントを経て、平成29年1月に公表しました。
 大綱の策定に当たっては、教育の現状と課題を踏まえつつ、都教育委員会との協議を経て、東京の将来像と目指すべき子供たちの姿を示すとともに、教育施策を策定するための重要事項を定めています。
 今後、都教育委員会において大綱に基づく教育施策を実施していく際には、学校の状況を踏まえた取組を展開していきます。

質問事項
五の2 体育的活動における安全対策検討委員会の開催の目的、開催状況と審議の内容、成果と課題について伺う。また、審議において、学校保健安全法の精神・規定はどのように反映されたのか、具体的に伺う。

回答
 体育的活動における安全対策検討委員会は、授業や学校行事等における事故防止と危険回避に関する基本的な考え方を示すことを目的として平成27年1月7日に設置しました。
 本検討委員会では、学校保健安全法に示されている学校安全計画の策定等を踏まえ、特に、組み体操を中心に、内在する危険性、安全な指導法、指導体制など、事故防止に向けた計画等について、3回にわたり審議を重ねました。
 審議において、学校における児童・生徒等の安全の確保が一層図られるよう、組み体操や部活動等を実施する際の安全指導等の目標や計画の策定、児童・生徒の危険予測・回避能力の育成等についてまとめ、基本的な考え方を全公立学校に示しました。これを受け、各学校では体育祭の種目等を再点検し、安全対策の見直しを行いました。
 今後、他の体育的活動についても再点検や見直しを進め、学校の安全対策の更なる充実を図っていきます。

質問事項
五の3 いじめ問題対策委員会および同調査部会によるいじめ調査の進め方、対応状況について伺う。

回答
 「いじめ防止対策推進法」は、いじめにより子供の生命、心身又は財産に重大な被害が生じたり、不登校になったりしている疑いがあるときを「重大事態」と規定し、その場合に、学校又はその設置者の下に置かれた組織により、事実解明のための調査を行うものと定めています。
 平成27年度に、都立学校において発生した重大事態は2件で、そのうちの1件は、学校の調査の結果、いじめは確認されていません。
 また、もう1件は、都教育委員会が、附属機関である「いじめ問題対策委員会」に対して調査を依頼した事案であり、同対策委員会では、調査部会を設置し、現在調査を行っています。

質問事項
六 都営地下鉄における安全対策について
1 都営地下鉄のホーム上での列車との接触事故、転落事故について、直近の状況について伺う。

回答
 平成25年度から27年度までの3年間に、ホーム上で列車と接触した事故は10件、ホームから転落して列車と接触した事故は2件発生しており、この12件のうち10件は関係者が救急搬送されています。
 なお、列車との接触を伴わないホームからの転落は3年間で155件発生しています。

質問事項
六の2 都営地下鉄のホーム上での列車との接触事故及び転落事故の被害者に、高齢者、幼児・学童、身体障がい者がどの程度含まれているのか伺う。

回答
 平成25年度から27年度までの3年間に、ホーム上で又はホームから転落して列車と接触した事故12件の関係者には、高齢者、幼児・学童及び身体障害がい者は含まれていません。
 なお、列車との接触を伴わないホームからの転落については件数以外、関係者の詳細は記録していません。

質問事項
六の3 都営地下鉄におけるホームドアの整備状況、今後の見通しについて伺う。

回答
 都営地下鉄のホームドアの整備状況ですが、平成12年度に三田線全27駅、平成25年度までに大江戸線全38駅に整備しました。
 新宿線については、現在、ホームドア本体の設置に向けた関連工事を進めています。今後、平成29年度にホームドア本体を大島駅に先行的に設置し、試験、調整、取扱い訓練などを行います。その後、平成30年度より本八幡駅から順次隣接駅に設置し、平成31年秋までに全駅設置完了に向けて取り組んでいきます。
 また、浅草線については、東京2020年オリンピック・パラリンピック競技東京大会までに大門駅と泉岳寺駅に先行整備する計画であり、現在、車両の大規模改修を必要としない新技術を用いたホームドアの実証実験を実施するなど、ホームドア整備に向けた取組を行っており、全駅整備の早期実現を目指していきます。

質問事項
六の4 ホームドアの整備の際、ホームのかさ上げが必要になる場合があるが、かさ上げについての基本的な考え方、雨水対策を含む車椅子利用者等へのバリアフリー配慮について伺う。

回答
 都営地下鉄ではこれまで、国が監修するバリアフリー整備ガイドライン旅客施設編に基づき、ホームドア整備にあわせてホームと車両扉の段差をできる限り解消する対策を講じてきました。
 具体的には、ホームドア設置済みの三田線及び大江戸線においては、車椅子スペースのある車両のドア位置のホーム上に、原則、固定式スロープを設置してきました。
 また、現在ホームドア整備を計画している新宿線では、車両の編成により、車椅子スペースの位置が異なることから、ホームドア整備にあわせて、ホーム端を全面的にかさ上げします。
 かさ上げに当たっては、上記ガイドラインに基づき、滑りにくい仕上げがなされた材料をホームに敷設するなど、滑り防止対策を講じることとしています。

質問事項
七 いわゆる「政党復活予算」について
1 「政党復活予算」がいつから、なぜ実施されてきたのか、歴代知事の下、終了は検討されなかったのか、経緯を伺う。

回答
 いわゆる「政党復活予算」がいつから実施されてきたのかについては、現存する過去の資料によれば、少なくとも昭和30年代にはこうした仕組みが存在していたことを確認しています。
 この制度は、予算編成権が知事に専属する中にあって、都民の代表である都議会の意思を予算案に反映させる仕組みとして、これまで続けられてきたものと認識しています。

質問事項
七の2 地方自治法は、予算編成権は知事に専属するとしているが、「政党復活予算」の慣行は法の趣旨に反しないのか、理由を含めて見解を伺う。

回答
 平成27昨年度までの予算編成では、知事による「予算原案」策定後、都議会各会派が知事に対し復活予算要望を行い、これを受けて知事が「復活予算案」を策定し、最終的にはこれらを踏まえた「予算案」を知事が議会に提出するという流れでした。
 このように、いわゆる「政党復活予算」は、知事の予算編成権の範囲内で行われていたものであり、地方自治法の趣旨に反するものではないと認識しています。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 中村ひろし

質問事項
一 重症心身障がい児者の支援について
二 自主避難者の住宅支援について

一 重症心身障がい児者の支援について
 重症心身障がい児者の支援について伺います。重い障がいのある方々が生活をしていくために、施設やサービスのより一層の充実を求める声があります。誰もが安心して暮らせる社会に向けて、より一層の支援を行うことが必要であり、以下質問します。
1 重症心身障がい児者について、都内にどのくらいの方がいるのか伺います。
2 支援する施設が足りないとの声がありますが、現状で都内にどのくらいの施設があり、定員は何人か伺います。また、どのくらいの方が入所施設に入れず待機しているのか伺います。
3 今後、施設の整備を促進する必要がありますが、都の取り組みを伺います。
4 地域で暮らしてほしいという家族の願いはあっても、介護負担が重い、仕事があって難しいとの声を聴きます。そこで、重症心身障がい児者や介護するご家族への在宅支援サービスを充実すべきと考えますが、都の見解を伺います。
5 親の高齢化に伴い、いわゆる「親亡き後」を心配する方が増えています。いずれ家族の高齢化や死亡により介護者が不在になることも想起されますが、こうした状況への都の対応を伺います。
6 医学の進歩により、今後、医療的ケア児が増えるとも言われています。今後の対応について伺います。
7 重症心身障がい児を受け入れる放課後等デイサービスがまだ十分ではないため、支援を行う必要がありますが、現状と対応を伺います。
8 相模原市で発生したやまゆり園での障がい者の殺人事件は、当事者、支援者含めて、関係者の方々に大きな衝撃を与えました。事件を受けて、都がどのような対応をしたのか伺います。また、障がい者への偏見をなくすため都民に対する普及啓発が必要ですが、見解を伺います。
9 知事は、所信表明で「社会全体で障がいのある方々への理解を深め、差別をなくす取組を一層推進するための条例案」の検討を開始すると述べました。どのような内容をお考えなのか伺います。また、条例には差別の禁止について盛り込むべきと考えますが見解を伺います。

二 自主避難者の住宅支援について
 東日本大震災から6年近くが経過しようとしていますが、都内には、福島県から福島第一原子力発電所の事故により避難された方々が大勢います。被災された方々への支援については引き続き行うことが必要です。2017年3月に、いわゆる福島県からの自主避難者に対する応急仮設住宅の提供が終了するとのことです。都市整備局が、住宅支援として、都営住宅の専用申し込み枠を確保し、募集を行っていることは承知していますが、資格要件があり、希望する避難者が全て入居できるわけではありません。住宅は生活の基本ですから、この枠に当てはまらない方でも困っている方はいます。避難者の方々に寄り添ったきめ細やかな支援を継続されることを求め、以下、質問します。
1 子ども被災者支援法の理念に基づく継続的な支援を行う必要がありますが、見解を伺います。
2 都営住宅の優先枠について、収入要件・世帯要件について撤廃するなど、希望する避難者が継続して居住できるようにすることが必要ですが、見解を伺います。
3 国家公務員住宅の居住を継続できるように国に求めることが必要ですが、見解を伺います。
4 雇用促進、民間賃貸住宅避難者への家賃補助を行い、都営住宅の家賃並みにすることが必要ですが、見解を伺います。
5 避難継続を希望する避難者全員について、2017年3月末に強制的に追い出してはなりません。住む場所がなくなり路頭に迷うことがないようにしなければなりません。見解を伺います。

平成28年第四回都議会定例会
中村ひろし議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 重症心身障がい児者の支援について
1 重症心身障がい児者について、都内にどのくらいの方がいるのか伺う。

回答
 平成27年9月の国の社会保障審議会資料によれば、全国の重症心身障害児(者)の推計値は約43,000人であり、全国人口に対する東京都人口の比率で計算すると、都内の重症心身障害児(者)は約4,300人と推計されます。

質問事項
一の2 支援する施設が足りないとの声があるが、現状で都内にどのくらいの施設があり、定員は何人なのか伺う。また、どのくらいの方が入所施設に入れず待機しているのか伺う。

回答
 都内の重症心身障害児(者)通所施設は、平成28年12月1日現在、医療型と地域施設活用型を合わせて46か所、定員は601人です。
 また、都内の重症心身障害児(者)入所施設は、平成28年12月1日現在、9か所、定員は1,135人であり、入所に係る待機者は、平成28年3月末現在で577人となっています。

質問事項
一の3 今後、施設の整備を促進すべきだが、都の取組を伺う。

回答
 都は、重症心身障害児(者)が地域で安心して暮らすことができるよう、「障害者・障害児地域生活支援3か年プラン」において、平成27年度からの3年間で130人分の定員増を目標に掲げ、整備費の特別助成を行うなど通所施設の設置を促進しています。
 社会福祉法人等が入所施設の整備を行う際には、障害者(児)施設整備費補助事業により支援しています。

質問事項
一の4 地域で暮らしてほしいという家族の願いはあっても、介護負担が重い、仕事があり難しいとの声を聴くが、重症心身障がい児者や介護するご家族への在宅支援サービスを充実すべきだが、都の見解を伺う。

回答
 都は、「障害者・障害児地域生活支援3か年プラン」を策定し、整備費の特別助成を行うなど、重症心身障害児(者)通所施設の設置を促進するほか、家族の病気等で一時的に家庭での療育が困難になった際に、施設等に短期間入所できるよう病床を確保しています。
 また、家族の休養と障害児(者)本人の健康の保持などを目的に、看護師が自宅を訪問し家族に代わってケアを行う「在宅レスパイト事業」を実施する区市町村を包括補助で支援しています。

質問事項
一の5 いずれ家族の高齢化や死亡により介護者が不在になることも想起されるが、こうした状況への都の対応を伺う。

回答
 都は、重症心身障害児(者)が、どんなに障害が重くても、必要とするサービスを利用しながら、地域で安心して暮らせるよう、日中活動の場や短期入所などの地域のサービス基盤の充実を図っています。
 また、重症心身障害児(者)の施設入所に当たっては、入所選考委員会を開催し、家庭の介護力や医療的ケアの状況に配慮しながら、必要な方が入所できるよう努めています。

質問事項
一の6 医学の進歩により、今後、医療的ケア児が増えるとも言われているが、今後の対応について伺う。

回答
 平成28年6月に改正児童福祉法が公布され、医療的ケアが必要な障害児の支援に当たって、地方公共団体は、保健、医療、福祉等の連携の促進に努めることとされました。
 都は、医療的ケアが必要な障害児が適切な支援を受けられるよう、関係機関の連携を強化するとともに、日中活動の場である通所施設や家族のレスパイトにも資する短期入所を整備し、受入れを促進するなど、在宅生活を支えるサービスの充実を図っていきます。

質問事項
一の7 重症心身障がい児を受け入れる放課後等デイサービスがまだ十分ではないため、支援を行うべきだが、現状と対応について伺う。

回答
 平成28年12月1日現在、重症心身障害児を対象とする都内の放課後等デイサービス事業所は29か所、定員は151人です。
 都は、年3回開催する、通所支援事業の開始を予定している事業者への説明会において、重症心身障害児を対象とする事業所の設置が一層進むよう、その必要性等について説明し、開設を働きかけています。

質問事項
一の8 相模原市で発生したやまゆり園での障がい者の殺人事件は、当事者、支援者含めて、関係者の方々に大きな衝撃を与えたが、都がどのような対応をしたのか伺う。また、障がい者への偏見をなくすため都民に対する普及啓発も必要だが、見解を伺う。

回答
 今回の事件を受け、都は、所管する全ての入所施設、通所施設、グループホーム等に対して、緊急時の職員体制の整備、施設設備の点検、危機管理マニュアルの策定など、安全管理を徹底するよう通知しました。
 また、都はこれまで、障害者への理解を促進するため、毎年12月の障害者週間等の機会を捉えて障害者による芸術・文化活動などを紹介するイベント等を開催するほか、様々な障害の特性や支援方法等を紹介する特設サイト「ハートシティ東京」を開設するなど、都民への普及啓発に努めてきました。
 さらに平成28年度は、障害者差別解消法の施行に合わせ、パンフレットや動画等を作成し、法の概要や障害者に配慮すべき事項等を都民に分かりやすく周知しています。
 今後も、様々な機会や媒体を活用し、障害者への理解促進に向けて広く都民への普及啓発を推進していきます。

質問事項
一の9 知事は、所信表明で「社会全体で障がいのある方々への理解を深め、差別をなくす取組を一層推進するための条例案」の検討を開始すると述べたが、どのような内容を考えているのか伺う。また、条例には差別の禁止について盛り込むべきだが見解を伺う。

回答
 現在検討している条例案は、誰もが暮らしやすい共生社会の実現に向け、社会全体で障害者への理解を深め、差別を無くす取組を一層進めることを目的としています。
 条例には、障害者やその家族からの相談に応じ、差別に関する紛争の解決を図るための仕組みや、障害に応じた意思疎通のための配慮などを盛り込む予定であり、今後、障害者や事業者、学識経験者などで構成する会議を設置し、様々な立場の方からの意見を聴きながら検討を進めていきます。

質問事項
二 自主避難者の住宅支援について
1 子ども被災者支援法の理念に基づく継続的な支援を行うべきだが、見解を伺う。

回答
 都はこれまでも、子ども・被災者支援法の理念を踏まえ、福島県からの自主避難者を対象に、都営住宅の募集において、入居要件の緩和や当せん倍率の優遇措置を実施するとともに、都営住宅の専用枠300戸の公募や、東京都住宅供給公社の一般賃貸住宅への紹介やあっせん等を行ってきています。
 今後とも、避難者からの相談にきめ細かく対応し、支援を行っていきます。

質問事項
二の2 都営住宅の優先枠について、収入要件・世帯要件について撤廃するなど、希望する避難者が継続して居住できるようにすべきだが、見解を伺う。

回答
 避難指示区域外からの避難者への応急仮設住宅の無償提供終了に当たっては、福島県は、県への帰還を基本としながら、避難者の方々の意向を尊重し、県外での生活を希望する低所得の避難者に対する住宅支援として、民間賃貸住宅の家賃への支援を行っています。
 今回の都営住宅の専用枠は、民間賃貸住宅への入居制限を受けやすく、自力で住宅を確保することが困難な可能性がある、ひとり親世帯、高齢者世帯、心身障害者世帯等について、都として住宅支援が必要な世帯と考えて設けたものです。

質問事項
二の3 国家公務員住宅の居住を継続できるように国に求めることが必要だが、見解を伺う。

回答
 都は発災直後からこれまで、被災県からの応援要請に基づき、都営住宅や国家公務員宿舎等を活用し、希望する避難者全員に無償で応急仮設住宅を提供してきています。
 特に、国家公務員宿舎に居住する避難者の方へは、必要に応じて国への連絡調整等に努め、日常生活への支援などきめ細やかに対応しています。
 都としては、避難者への支援に係る国への要請は、災害救助法の趣旨を踏まえ、被災県である福島県を通じて行うべきものと考えており、福島県に対して、支援策の拡充について国と協議を進めるよう求めています。
 なお、福島県からは、国家公務員宿舎への避難者のうち、やむを得ない事情があると県が認めた方については、平成29年4月以降、県の管理の下、有償で最大2年間の継続居住を認めることにしたと聞いています。

質問事項
二の4 雇用促進、民間賃貸住宅避難者への家賃補助を行い、都営住宅の家賃並みにするべきだが、見解を伺う。

回答
 自主避難者への応急仮設住宅の供与終了に伴い、都は、福島県からの公営住宅等の確保等の要請を受け、都営住宅の専用枠300戸の公募を行いました。
 お尋ねの家賃補助については、福島県が、民間賃貸住宅等での避難生活を継続することが必要な世帯への支援策として行うこととしています。

質問事項
二の5 避難継続を希望する避難者全員について、2017年3月末に強制的に追い出してはならない。住む場所がなくなり路頭に迷うことがないようにすべきだが、見解を伺う。

回答
 都は既に、福島県からの自主避難者のうち、特に自力で住宅を確保することが困難な世帯を対象に、都営住宅の専用枠300戸の公募を行っています。今後も、平成29年4月以降の住宅が決まっていない自主避難者に対し、状況に応じたきめ細かい対応を行っていきます。
 具体的には、都営住宅の募集において、世帯の一部が都内に避難している場合に、収入を2分の1として扱うなどの特例措置や、当せん率が一般の5倍となる優遇措置を、引き続き実施していきます。
 また、東京都住宅供給公社の一般賃貸住宅への紹介やあっせん、UR賃貸住宅、民間賃貸住宅等の情報提供や、福島県が実施する民間賃貸住宅等の家賃補助の案内なども、継続して行っていきます。
 さらに、東京都住宅供給公社では、平成29年1月に、一般賃貸住宅について自主避難者専用の相談窓口を設置したほか、現在、自主避難者の方々を対象とした入居者の募集を行っています。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 今村るか

質問事項
一 障がい者施策について

一 障がい者施策について
 昨年4月に障害者差別解消法が施行され、8ヶ月が過ぎた。
 都は障がい者差別解消法ガイドブックを作成し、市区町村はじめ広く都民にも理解促進の取り組みなど進めてきた。
 そうした中で東京都に隣接する神奈川県相模原市に所在する重度障がい者入所施設「やまゆり園」にて死者19名負傷者27名の障がい者殺傷事件が発生した。
 改めて、障害者差別解消法が施行後の障がい者にかかわる都の取り組みについて伺う。
1 障害者差別解消法に関する事項について
 ア 東京都障害者差別解消支援地域協議会には国のモデルに挙げられている「公共交通機関」はじめ、「保健所・PTA・家族会」などが参加していない。障がい者団体からは公共交通機関の参加は社会参画・参加に不可欠であり疑問の声が上がっている。そこでその理由を伺う。
 イ これまで東京都の相談窓口に寄せられた相談件数と相談者の内訳について伺う。
 ウ 障害者差別解消法に基づき設置される市区町村障害者差別解消支援地域協議会は最も身近な生活の場である自治体になくてはならない。都内全市区町村での協議が進められ、東京都との連携も大変重要です。そこで市区町村の障害者差別解消支援地域協議会設置状況を伺う。
 エ 障害者差別解消法に基づく市区町村相談窓口の役割は障害者差別解消に取り組むために広く意見や情報などを聞くことのできる大変重要な役割を持っています。そこで市区町村相談窓口の対応状況・相談件数を伺う。
 オ 障害者差別解消法に基づく職員対応要領は法施行の4月前に作成されていることが必要です。そこで東京都ならびに都内市区町村の策定状況を伺う。
 カ 障害者差別解消法施行後、現在までの東京都の状況を鑑み、今後の取組について伺う。
 キ 都内市区町村の状況に対して、今後都はどのような取組・支援を行うのかを伺う。
 ク 民間事業者の現状に対し、都は今後どのような支援・取組を行うのかを伺う。
 ケ 障がい者差別解消に向けた取り組みは行政だけでは成り立たない。民間事業者の協力や都民の理解促進などに向けた普及啓発が重要。都は民間事業者や都民に対しどのような取組を行うのか伺う。
2 障がい者殺傷事件に関する事項について
 ア 障がい者殺傷事件は尊い命が、一度に多数失われてしまうという大きな衝撃とともに、犯人の障がい者に対する差別的意識についても社会に大きな衝撃を与えた。こうした事件を繰り返さず、障がいのある方もない方も共に生きる社会を都は率先して取り組まなくてはならないと考えます。
 そこでまず、障がい者への偏見をなくすため、都は都民に対し、どのように普及啓発を行っていくのか伺う。
 イ 障がい者殺傷事件ではマスコミなどでも措置入院等のあり方に様々な意見が交わされた。都は措置診察や措置入院における適切な精神医療の確保に努めなければならないが、今後の都の取り組みについて伺う。
 ウ 障がい者支援施設等は地域と共にあるべきと考えますが、今回の事件を機に改めて都が関わる障がい者施設の防犯対策について、どのように取り組むのかを伺う。
 3 障がい者入所施設について
 ア 障がい者が安心して生活するために支援施設は必要ですが、生きるための施設内において命が失われることは無くさなければならない。都内、都外には多くの障がい者入所施設があるが、都の関わりのある都立及び民間の障がい者支援施設における過去10年間の死亡・転倒、骨折等により入院が必要となった事故発生件数を伺う。
 イ 死亡事故等を起こした施設や運営団体への再発防止指導などはどのように行っているのか伺う。また、障がい者支援施設で死亡事故等を起こさないための今後の取組方針を伺う。

平成28年第四回都議会定例会
今村るか議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 障がい者施策について
1 障害者差別解消法に関する事項について
 ア 東京都障害者差別解消支援地域協議会には国のモデルに挙げられている「公共交通機関」などが参加していないが、その理由を伺う。

回答
 内閣府が策定した「障害者差別解消支援地域協議会設置の手引き」では、想定される地域協議会の構成機関を例示した上で、「これら参画機関等をすべてメンバーにしなければならないということではなく、それぞれ地域の実情に応じて構成を考えることが重要」としています。
 都では、この手引を参考に、様々な立場の方からの意見を十分に聴きながら差別の解消に向けた取組を推進するため、障害種別ごとの障害者団体、事業者団体、医療・福祉・教育等の関係機関の各代表者及び学識経験者で協議会を構成しています。
 また、今後審議の必要に応じて、関係分野の代表者等に参加を求めていきます。

質問事項
一の1のイ これまで東京都の相談窓口に寄せられた相談件数と相談者の内訳について伺う。

回答
 障害者差別解消法が施行された平成28年4月1日から同年11月末までの間に、東京都障害者権利擁護センターの窓口に寄せられた相談は合計107件です。
 相談者の内訳は、障害者本人が55件、障害者の関係者が10件、行政機関等が35件、民間事業者が3件などとなっています。

質問事項
一の1のウ 障害者差別解消法に基づき設置される市区町村の障害者差別解消支援地域協議会設置状況を伺う。

回答
 平成28年10月1日現在、20区市町が障害者差別解消支援地域協議会を設置済みであり、10区市が平成28年度中に設置を予定しています。

質問事項
一の1のエ 障害者差別解消法に基づく市区町村相談窓口の対応状況・相談件数を伺う。

回答
 都は内閣府からの調査依頼により、平成28年4月から同年9月までに区市町村に寄せられた「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」に関係する相談事例及び「合理的配慮の提供」の好事例のうち、広く情報共有することが望ましいもの等を取りまとめました。
 その内訳は、「不当な差別的取扱い」について35件、「合理的配慮の不提供」について42件、「合理的配慮の好事例」について48件となっています。

質問事項
一の1のオ 障害者差別解消法に基づく職員対応要領の策定状況を伺う。

回答
 都は、平成28年3月に職員対応要領を策定しました。
 区市町村は、平成28年10月1日現在、40区市町が職員対応要領を策定済みであり、9区市が平成28年度中に策定を予定しています。

質問事項
一の1のカ 障害者差別解消法施行後、現在までの東京都の状況を鑑み、今後の取組について伺う。

回答
 都は、障害者差別解消法施行後の状況を把握するため、平成28年10月から同年12月にかけて、都民を対象に、障害者に対する差別的取扱いの事例や合理的配慮の好事例の収集・調査を実施しました。
 今後、収集した事例は、都や区市町村における相談事例と集約し、障害者差別解消支援地域協議会等を活用して、関係機関との情報共有を図り、効果的な取組につなげていきます。
 また、社会全体で障害者への理解を深め、差別を無くす取組を一層推進するため、平成30年度の施行を目指し、相談・紛争解決の仕組みや、意思疎通のための配慮などを盛り込んだ新たな条例案の検討を進めていきます。

質問事項
一の1のキ 市区町村の状況に対して、今後都はどのような取組・支援を行うのか伺う。

回答
 都は、障害者の差別解消等に係る取組に関し区市町村と情報の共有や意見交換を行い、都内全体の権利擁護に関する取組を推進できるよう、平成28年度、都内を四つのブロックに分け、区市町村の担当者で構成する「障害者権利擁護区市町村連絡会」を設置し、これまで各ブロック2回開催しました。
 今後、連絡会を定期的に開催するほか、職員向けの研修を実施するなど、区市町村における障害者の権利擁護に関する取組を支援していきます。

質問事項
一の1のク 民間事業者の現状に対し、都は今後どのような支援・取組を行うのか伺う。

回答
 都は、平成28年6月、関係機関が連携協力し、障害者差別解消の取組を促進するため、障害者、民間事業者、医療・福祉・教育等の関係機関及び学識経験者からなる障害者差別解消支援地域協議会を設置しました。
 今後、協議会を活用し、差別事例や合理的配慮の好事例等の情報共有を図るとともに、普及啓発など差別解消のための効果的な取組について協議を行い、民間事業者を支援していきます。

質問事項
一の1のケ 障がい者差別解消に向けた取組は行政だけでは成り立たず、民間事業者の協力や都民の理解促進などに向けた普及啓発が重要だが、都は民間事業者や都民に対しどのような取組を行うのか伺う。

回答
 都はこれまで、障害者への理解を促進するため、毎年12月の障害者週間等の機会を捉えて、障害者による芸術・文化活動などを紹介するイベント等を開催するほか、様々な障害の特性や支援方法等を紹介する特設サイト「ハートシティ東京」を開設するなど、都民への普及啓発に努めてきました。
 また、平成28年度は、障害者差別解消法の施行に合わせ、パンフレットや動画等を作成し、法の概要や障害者に配慮すべき事項等を都民に分かりやすく周知しています。
 今後も、様々な機会や媒体を活用し、障害者への理解促進に向けて広く都民への普及啓発を推進していきます。

質問事項
一の2 障がい者殺傷事件に関する事項について
 ア 障がい者への偏見をなくすため、都は都民に対し、どのように普及啓発を行っていくのか伺う。

回答
 障害者への偏見や差別意識を無くし、障害のある人もない人も互いに尊重し、支え合う共生社会を実現するためには、広く都民に対して、障害や障害者への理解促進を図っていくことが必要です。
 そのため都は、様々な障害の特性や支援方法等を紹介する特設サイト「ハートシティ東京」を開設し、情報発信を行っているほか、障害者に配慮すべき事項等をまとめたパンフレットを作成し、広く都民に周知を図っています。
 また、「東京都人権施策推進指針」において障害者の人権を課題の一つに位置付け、平成28年度は障害者の人権をテーマに、「ヒューマンライツ・フェスタ東京2016」を開催しました。
 現在、社会全体で障害者への理解を深め、差別を無くす取組を一層進めるため、平成30年度の施行を目指し、新たな条例案について検討しており、今後とも、様々な機会や媒体を活用し、障害者への理解促進に向けて、広く都民への普及啓発を推進していきます。

質問事項
一の2のイ 都は措置診察や措置入院における適切な精神医療の確保に努めなければならないが、今後の都の取組について伺う。

回答
 精神保健福祉法に基づく措置入院は、本人の意に反して行われるものであることから、患者の人権に十分に配慮して、適切に行われることが必要です。
 このため都は、入院の必要性を判断する措置診察業務を行う精神保健指定医全員を対象に、毎年度、事例を基に措置入院の判定基準や診察のポイント等を解説する措置診察業務説明会を開催するとともに、精神保健福祉法に基づき、精神病床を有する全ての病院に対して、人権に配慮した患者の処遇等について実地指導を実施しています。
 今後も、適切な精神科医療の確保に向けて取り組んでいきます。

質問事項
一の2のウ 今回の事件を機に改めて障がい者施設の防犯対策について、どのように取り組むのか伺う。

回答
 障害者支援施設等は、地域に開かれた施設であることを基本としつつ、利用者が安心してサービスを受けられるよう、安全の確保が図られることが必要です。
 このため都は、これまで事業者説明会や施設開設時の現地確認など、様々な機会を捉え、施設等の安全確保について周知してきました。
 また、今回の事件を受け、都が所管する全ての入所施設、通所施設、グループホーム等に対して、緊急時の職員体制の整備、施設設備の点検、危機管理マニュアルの策定など、安全管理を徹底するよう通知しました。
 さらに、今後、防犯カメラの設置など施設等の防犯対策を支援していきます。

質問事項
一の3 障がい者入所施設について
 ア 都立及び民間の障がい者支援施設における過去10年間の死亡・転倒、骨折等により入院が必要となった事故発生件数を伺う。

回答
 現在、障害者支援施設からの事故報告については、文書の保存期限を1年と定めており、確認できる平成27年4月から平成28年11月までの誤嚥等による死亡事故件数は、都立施設では2件、民間施設では5件となっています。
 また、同期間において、転倒、骨折等により入院が必要となった事故件数は、都立施設では4件、民間施設では46件となっています。

質問事項
一の3のイ 死亡事故等を起こした施設や運営団体への再発防止指導などはどのように行っているのか伺う。また、障がい者支援施設で死亡事故等を起こさないための今後の取組方針を伺う。

回答
 都は、毎年度当初、所管する全ての入所施設、通所施設、グループホーム等に対して、事故等防止対策の徹底に関する注意喚起を実施しています。
 また、障害者総合支援法に基づく定期的な指導検査のほか、計画的に実地確認による運営指導を行い、利用者支援や施設運営の状況を把握しています。
 死亡事故等を起こした施設については、実地確認を行い、事故発生状況を把握するとともに、原因の分析や再発防止策の策定などの運営指導や改善状況の確認を実施しています。
 今後とも、利用者が安心して施設等を利用できるよう、事故防止対策を徹底していきます。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 畔上三和子

質問事項
一 混合介護について

一 混合介護について
 知事は、今定例会の所信表明において「10月には、都庁内に東京特区推進共同事務局を立ち上げ、その具体策として、今後、介護サービスの充実や介護職員の待遇改善にもつながる混合介護の弾力化など検討を進める」と表明されました。
1 東京特区推進共同事務局を立ち上げ検討を進めるとした「混合介護の弾力化」とは、具体的にどういうことを考えているのですか。また、都民から「混合介護」の要望があるのですか。
 この間、混合介護については国の動きが加速しています。9月5日に公正取引委員会が介護分野に関する調査報告書を発表していますが、その中で「混合介護」が提案されていて、その具体例として、利用料金の自由化やホームヘルパーの指名料を徴収できるなどとしています。介護分野の規制を外し市場競争にゆだねれば介護サービスの供給量がふえ、介護の質、利用者の利便性、事業者の採算性も介護労働者の賃金まで上がると報告書ではその期待を書いています。
 また、10月6日、国の規制改革推進会議において混合介護の議論を深めるという発言を大田議長がしたと報道されています。
 本会議において知事は「さまざまな意見がある」としながらも「検討しモデル実施をすすめたい」と表明されました。
 介護の各区分に限度額が設けられている区分支給限度基準額に比べ利用額の割合についての都内要介護者の状況は、利用額の割合が3割から、一番多い介護5で7割弱となっています。制度はあるけれど負担できないから使えないというのが都内の要介護者の実態ではないでしょうか。
 昨年度東京都がおこなった福祉保健基礎調査では、高齢者の約4割が年収150万円未満、世帯の家計もほぼ毎月赤字、ときどき赤字をあわせると約4割にのぼりました。
2 介護保険の利用料負担に加えて新たなメニューを別料金で使えるようになるといっても、保険外部分は10割負担ですから、手が出せるのはごく一部ではありませんか。その点、都は、どのように考えますか、見解を伺います。
 広範な高齢者に貧困が広がる中で、国政・都政が責任をもって、誰もがお金の心配なく、必要な介護が受けられるようにすることこそ、求められているのだと考えます。先日公表された都民生活に関する世論調査でも、都政への要望のトップは、昨年よりも4ポイント増加して高齢者対策です。
3 都は、高齢者の生活実態、都民要望について、どう受け止めていますか。必要な介護は公的に保障し、可能な負担で利用できるようにする事が重要と思いますが、見解を伺います。
 この間の介護報酬の引下げ等で、介護の現場では職員の処遇改善も困難な中で、事業を継続できないなど深刻な事態が生まれています。また、東京都社会福祉協議会・東京都高齢者福祉施設協議会がおこなった介護保険制度改定にともなう利用者への影響調査報告では「削減と抑制を求めるだけでなく、負担を強いられた高齢者・家族をフォローする新たな施策も早急に検討すべきと考える」としています。
 そうしたなかで都が国と一緒になって介護分野の規制を外し市場競争にゆだねることは、介護の利用の格差を広げ、公的介護保険制度の充実を求める都民の願いにも逆行するものと言わざるを得ません。
4 混合介護の検討の撤回を求めますが、伺います。
 いま、安心して受けられる介護が切実に求められています。そのためには介護報酬を引き上げ介護施設整備と介護職の処遇改善に努めることと、負担可能な介護保険料・利用料に軽減をはかることです。しかし、安倍政権は、来年度から、高齢者の更なる介護負担増などを計画しています。厚生労働省の社会保障審議会は介護保険部会をひらき、介護保険制度の見直し案づくりに向け、意見が取りまとめられました。要介護1、2の人に対する生活援助サービスを保険対象からはずすことや、福祉用具貸与の全額自己負担化などについては、反対世論と運動に押されて見送りとなりました。しかし、自己負担の3割負担への引き上げなどサービス抑制に向けて負担増や給付減が検討されています。これ以上、公的介護サービスが縮減され、負担が重くなったら、高齢者をはじめ国民の暮らしに大打撃です。
5 介護の負担増・給付減政策を国民に押し付けることは、介護の公的制度を崩壊させることになると思いませんか。また、国に対し、介護保険制度の国民負担強化につながる見直しはやめるよう求めるべきではありませんか。

平成28年第四回都議会定例会
畔上三和子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 混合介護について
1 東京特区推進共同事務局を立ち上げ検討を進めるとした「混合介護の弾力化」とは、具体的にどういうことを考えているのか伺う。また、都民から「混合介護」の要望があるのか伺う。

回答
 「混合介護」の弾力化の具体例としては、現行の介護保険制度では認められていない、保険内サービスと保険外サービスの同時・一体的な提供や、公定価格以外の指名料の設定などが考えられます。
 「混合介護」に関しては、様々な意見があることは承知しており、具体的な内容については、広く関係者から意見を聴取しながら検討していきます。

質問事項
一の2 介護保険の利用料負担に加えて新たなメニューを別料金で使えるようになるといっても、保険外部分は10割負担であるから、手が出せるのはごく一部ではないか、都の見解を伺う。

回答
 「混合介護」の弾力化が認められることにより、事業者が創意工夫を行う幅が広がり、利用者の利便性やサービスの質の向上、ひいては介護職員の待遇改善にもつながることが期待されます。
 具体的な内容については、広く関係者から意見を聴取しながら検討していきます。

質問事項
一の3 都は、高齢者の生活実態、都民要望について、どう受け止めているか。必要な介護は公的に保障し、可能な負担で利用できるようにする事が重要だが、見解を伺う。

回答
 高齢者対策は、平成28年度の「都民生活に関する世論調査」において、東京都に特に力を入れて欲しい対策のトップに挙げられているなど、都政の重要な課題と認識しています。
 都は、高齢者の介護を社会全体で支え合う介護保険制度の安定的な運営に努めるとともに、高齢者ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいます。

質問事項
一の4 都が国と一緒になって介護分野の規制を外し市場競争にゆだねることは、介護の利用の格差を広げ、公的介護保険制度の充実を求める都民の願いにも逆行するものと言わざるを得ず、混合介護の検討の撤回を求めるが、見解を伺う。

回答
 「混合介護」の弾力化に当たっては、広く関係者から意見を聴取しながら検討を進めていきます。

質問事項
一の5 介護の負担増・給付減政策を国民に押し付けることは、介護の公的制度を崩壊させることにならないか。また、国に対し、介護保険制度の国民負担強化につながる見直しはやめるよう求めるべきだが、見解を伺う。

回答
 介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う社会保険制度であり、将来にわたり持続可能なものとしていく必要があります。
 都は国に対し、利用者負担の見直しに当たっては、低所得者に配慮するとともに、過度の負担が生じないようにすることを提案要求しています。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 大島よしえ

質問事項
一 東京都建築安全条例について

一 東京都建築安全条例について
1 共同住宅と呼ばれるアパート、マンションは、建築基準法では特殊建築物に位置づけられていて、住宅棟の一般的な建築物に比べて、防火対策などの規制が強化されています。ところが近年、「重層長屋」とよばれる、共同住宅と同規模な集合住宅が増えていますが、共同住宅とは違う規制がかけられています。重層長屋と共同住宅の定義はそれぞれどのようなものか。また規制の違いは何か伺います。
2 東京都建築安全条例では、民家で四方を囲まれている住宅地を分割する場合、道路に2メートル以上接していなければなりません。ところが道路から奥まったところにある敷地については、道路までの通路を確保するため、旗竿形状の路地状敷地が形成されます。共同住宅を含む特殊建築物は建築安全条例第10条で、「特殊建築物は路地状部分のみによって道路に接する敷地に建築してはならない」と明記され原則として路地状敷地には建てられませんが、そのように規制する理由について伺います。
3 一方、多数の人が住む重層長屋は、特殊建築物に含まれないと解釈され路地状敷地に建設可能となっていますが、その理由は何か伺います。
4 共同住宅を含む特殊建築物は、不特定多数の人が利用する建築物であるということから、建築基準法の耐火性能について厳しく規制されています。
 しかし、重層長屋は共同住宅に求められている2方向避難経路が不要であり、消防法により消防用設備を設置し、維持しなければならないというような規定はなく、戸建て住宅と同じ規制の扱いとなっています。
 重層長屋で火災が起きたらどうなるのか。路地状敷地に建てられた重層長屋は、路地状幅員が2メートル以上あれば建築可能なため、避難通路の幅が狭く、消防車も中まで入れず、火災が周辺に拡大する恐れがあります。路地状部分をはじめとする避難経路に入居者が集中した場合、逃げることも容易でない状況に陥ります。こうした長屋の火災などの安全性について、どのように認識していますか。対策はどのように確保するのか伺いたい。
5 路地状敷地が不動産業界でにわかに注目を集め、土地の有効活用ができると宣伝され、重層長屋の建設が増えています。都として都内に建築された路地状敷地における重層長屋の件数について把握していますか。
6 重層長屋が建築されることにより、防災問題、通風・採光など環境問題で近隣住民の不安や苦情が高まり、深刻な建築紛争が起きています。都は、都内における路地状敷地におけるこうした長屋についての周辺住民をはじめとした都民の声について、どのように把握しているか伺いたい。
7 現在、足立区西竹ノ塚で、同一敷地内に木造2階建て32戸と30戸のロフトつきの長屋が2棟建設されることになり、住民の間に不安が広がっています。敷地面積も1000平方メートル以上あるものを2つに分割し、高さも10メートル以内ぎりぎりに押さえて開発行為の届けも免れています。
 しかも、路地状敷地に入る道路幅員は、建築基準法第42条2項道路で、1.8メートル程度の狭さです。長屋建築敷地先から法第42条1項道路に接道するまでの「道」の両側を道路上に築造され、幅員4メートルを確保された状態の道路でなければならないのに、現況の長屋の建築敷地先だけを道路上に築造しても幅員4メートルを確保した状態にはならず、都建築安全条例4条に言う「道路」扱いにはならないと思いますがどうですか。
8 62戸もの重層長屋であっても、都の建築安全条例で言う特殊建築物とは異なり、規制の対象から外れています。災害時の避難や防犯、環境整備を考慮して長屋の建築できる住戸数の制限を都建築安全条例でするべきではないですか。
9 長屋と共同住宅はどちらも集合的に住む用途です。使用上は共同住宅と同じであるのに、建築安全条例で共同住宅に適用される防火規定や避難規定がなく、発災による地域への影響を低減させる規制も少ないのです。共用部の有無だけで長屋と、共同住宅の規制を変えたことが最大の原因になっているのではないでしょうか。同じ集合的に住む用途の重層長屋も都建築安全条例を見直し、重層長屋は特殊建築物に指定し、共同住宅と規制をそろえることを検討すべきではありませんか。

平成28年第四回都議会定例会
大島よしえ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 東京都建築安全条例について
1 近年、「重層長屋」とよばれる、共同住宅と同規模な集合住宅が増えているが、共同住宅とは違う規制がかけられている。重層長屋と共同住宅の定義はそれぞれどのようなものか伺う。また規制の違いは何か伺う。

回答
 日本建築行政会議による定義によれば、重層長屋を含む長屋は、「隣接する住戸間又は上下で重なり合う住戸間で内部での行き来ができない完全分離型の構造を有する建築物のうち、廊下・階段等を各住戸で共有しない形式のもの」、共同住宅は「隣接する住戸間又は上下で重なり合う住戸間で内部での行き来ができない完全分離型の構造を有する建築物のうち、廊下・階段等を各住戸で共有する形式のもの」です。
 東京都建築安全条例上の規制に関する違いは、敷地の接道条件などがあります。

質問事項
一の2 共同住宅を含む特殊建築物は建築安全条例上、原則として路地状敷地には建てられないが、そのように規制する理由を伺う。

回答
 東京都建築安全条例において、共同住宅を含む特殊建築物は、火災発生のおそれが大きく、廊下・階段等を各住戸で共有するため避難上の制約があることなど、安全上及び防火上の観点から、路地状敷地の建築制限をしています。

質問事項
一の3 多数の人が住む重層長屋は、特殊建築物に含まれないと解釈され、路地状敷地に建設可能となっているが、その理由を伺う。

回答
 長屋については、容易に各住戸の出入口から直接屋外へ出られることに加え、各戸の主要な出入口を道路又は道路に通ずる幅員2メートル以上の敷地内の通路に面するように規定することで、避難上の安全性が確保されることから、路地状敷地に建設可能となっています。

質問事項
一の4 重層長屋で火災が起きたらどうなるのか。路地状部分をはじめとする避難経路に入居者が集中した場合、逃げることも容易でない状況に陥るが、こうした長屋の火災などの安全性について、どのように認識しているのか伺う。対策はどのように確保するのか伺う。

回答
 長屋については、火災時などの避難上及び安全上の観点から、各戸の主要な出入口は、道路又は道路に通ずる幅員2メートル以上の敷地内の通路に面しなければならないこととしています。
 さらに、耐火建築物又は準耐火建築物でない場合については、主要な出入口が通路のみに面する住戸の数は3を超えることができないこととしていることに加え、一定規模以上のものは、路地状部分の長さに応じた幅員の制限を強化する規定を設けています。

質問事項
一の5 路地状敷地が不動産業界でにわかに注目を集め、土地の有効活用ができると宣伝され、重層長屋の建設が増えているが、都として都内に建築された路地状敷地における重層長屋の件数について把握しているのか伺う。

回答
 都内の路地状敷地に建築される一定規模以上の重層長屋の件数は、建築確認に関する区市等への調査を通じ把握しています。

質問事項
一の6 重層長屋が建築されることにより、防災問題、通風・採光など環境問題で近隣住民の不安や苦情が高まり、深刻な建築紛争が起きているが、都は、都内における路地状敷地におけるこうした長屋についての周辺住民をはじめとした都民の声について、どのように把握しているか伺う。

回答
 都は、区市との建築行政に関する連絡会議などを通じ、長屋についての情報を収集しています。

質問事項
一の7 足立区西竹ノ塚で、同一敷地内に木造2階建て32戸と30戸の長屋が2棟建設されることになり、住民の間に不安が広がっている。路地状敷地に入る道路幅員は、建築基準法第42条2項道路で、1.8メートル程度の狭さであり、現況の長屋の建築敷地先だけを道路上に築造しても幅員4メートルを確保した状態にはならず、都建築安全条例4条に言う「道路」扱いにはならないと思うが、見解を伺う。

回答
 当該道は、特定行政庁が建築基準法第42条第2項の規定に基づき指定したものであることから、東京都建築安全条例上の「道路」となります。

質問事項
一の8 62戸もの重層長屋であっても、都の建築安全条例で言う特殊建築物とは異なり、規制の対象から外れている。災害時の避難や防犯、環境整備を考慮して長屋の建築できる住戸数の制限を都建築安全条例でするべきだが、見解を伺う。

回答
 東京都建築安全条例では、火災時などの避難上及び安全上の観点から、主要な出入口が通路のみに面する住戸の数が3を超える場合は、少なくとも準耐火建築物としなければならないこととしています。
 さらに、耐火建築物及び準耐火建築物以外の建築物で、一定規模以上のものは、路地状部分の長さに応じた幅員の制限を強化する規定を設けています。

質問事項
一の9 同じ集合的に住む用途の重層長屋も都建築安全条例を見直し、重層長屋は特殊建築物に指定し、共同住宅と規制をそろえることを検討すべきだが、見解を伺う。

回答
 長屋については、火災時などの避難上及び安全上の観点から、各戸の主要な出入口は、道路又は道路に通ずる幅員2メートル以上の敷地内の通路に面しなければならないこととしているなど、長屋の特性に応じた規定を適切に設けているものと考えています。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 石毛しげる

質問事項
一 視覚障害者が渡ることが出来ない信号について
二 「ぼったくり」対策について
三 振込め詐欺対策について
四 人身安全関連事案等について

一 視覚障害者が渡ることが出来ない信号について
 交差点における誘導音は、交通量の多い道路の横断歩道では「ぴよぴよ」、少ない道路では「かっこう」の音をならし、混乱を避けている視覚障害者はその音を頼りに横断している。
1 警視庁管轄で都内には、こうした歩行者用信号の数はどれだけあり、そのうち視覚障害者用の誘導音付きはどれだけあるか。
2 誘導音がある交差点と無い交差点での視覚障害者の事故の事例の差はあるのか。
3 危険を回避するためにも更なる設置を望むものですが、今後の設置の推移と対策は。

二 「ぼったくり」対策について
1 私ども民進党は以前に歌舞伎町における「ぼったくり」をなくすように警視庁に対策を求め、13年には客引き防止の条例をつくり、駅周辺で不特定多数の人に声をかけて店に誘う行為などを禁止している。また、今年から店舗の公表や5万円以下の過料などの罰則規定の適用も始まり、ぼったくりが減少していると聞くが、現状はどうか。
2 他の地域でこうした取り組みがなされているか。
3 海外からの訪日外国人に対する周知を含む対策、さらには、オリンピックにむけての取り組みについて伺う。

三 振込め詐欺対策について
 警視庁の発表では11月までの都内の刑法犯罪認知数が昨年同期比で約9%減る一方で振り込め詐欺など特殊詐欺などの認知件数は5%増えたと指摘している。今年の一月から八月までに都内で1181件総額37億円の被害に至っている。「特殊詐欺根絶キャラバン隊2016」また、昨年一月には「犯行ツール対策センター」を立ち上げ、作業に当たっていますが十分とは言えない状態です。
 電話レンタル業者による回線貸し出しが犯罪に悪用されている例や前年度と比べ三倍以上に増え、被害額全体の12%をしめる、バイク便での現金詐取、特殊詐欺をめぐっては昨年、安全・安心まちづくり条例の改正により、賃貸契約に、アジト使用時解約できる特約を盛り込むことが定められていますが、手口が年々変化しその対応に迫られているため、効果に結びついていない現状がある。
 今ある喫緊の課題は何か、それに対してどのような対策を考えているのか。

四 人身安全関連事案等について
 今年11月21日に千葉市内の飲食店で女性に、千葉大医学部学生、医師による集団強姦事件や早稲田大学イベント企画サークル、京都大学のアメリカンフットボール部員による集団強姦は記憶に新しい事件である。こうした女性への性犯罪、弱者である小学生以下の子供への犯罪、ストーカー・DVなど高止まりで推移しているが、その対策について伺う。

平成28年第四回都議会定例会
石毛しげる議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 視覚障害者が渡ることが出来ない信号について
1 警視庁管轄で都内には、歩行者用信号の数はどれだけあり、そのうち視覚障害者用の誘導音付きはどれだけあるか伺う。

回答
 都内に、歩行者用灯器を設置した信号機は、平成27年度末現在で14,751か所あります。
 そのうち視覚障害者用の誘導音付きは2,233か所あります。

質問事項
一の2 誘導音がある交差点と無い交差点での視覚障害者の事故の事例の差はあるのか伺う。

回答
 平成27年中、信号機のある交差点における横断歩道を横断中の視覚障害者を当事者とする交通事故は3件発生しており、そのうち音響設備付信号機が設置されている交差点における交通事故は1件発生しています。

質問事項
一の3 危険を回避するためにも更なる誘導音付きの歩行者用信号の設置を望むが、今後の設置の推移と対策を伺う。

回答
 視覚障害者用誘導音付きの歩行者用信号については、区市町村が定めるバリアフリー基本構想に基づき、東京都公安委員会が交通安全特定事業計画を作成し、その生活関連経路上の横断歩道を中心に整備しているほか、視覚障害者の方々からの御意見・御要望を踏まえて、順次整備しています。
 平成28年度を含めた過去5年間の平均設置数は、設置予定を含み、年間約100か所であり、今後の設置の推移は同程度の規模となる見込みです。
 また、視覚障害者の方々からの「押ボタン箱が押しづらい」との御意見等を踏まえ、音響式信号機等の押ボタンに大型のタッチパネルを備え、これに触れるだけで感知する方式を開発し、平成28年2月から導入を始めています。

質問事項
二 「ぼったくり」対策について
1 13年には客引き防止の条例がつくられ、駅周辺で不特定多数の人に声かけて店に誘う行為などを禁止されている。また、今年から店舗の公表や5万円以下の過料などの罰則規定の適用も始まり、ぼったくりが減少していると聞くが、歌舞伎町の現状について伺う。

回答
 新宿歌舞伎町地区におけるぼったくりについては、平成27年春以降、キャバクラ等の社交飲食店における高額な料金請求や悪質な取立てに係るトラブルの増加がみられていましたが、警視庁本部の捜査員等を投入した集中的な取締りや、悪質店舗に対する営業停止等の行政処分のほか、自治体や地域住民等と連携した、ぼったくり・客引き撲滅のためのキャンペーンや合同パトロール等の取組、更には新宿区が平成28年4月に客引き等の防止に関する条例を改正したことにより、平成28年中のぼったくりに関連する110番件数が平成27年に比べて大幅に減少するなど、着実に成果を上げています。

質問事項
二の2 他の地域でこうした取組がなされているか伺う。

回答
 新宿区のほか都内12自治体で客引き等を規制する条例を制定するなど、各地域の実情に応じた取組がなされており、六本木や新橋等の盛り場がある港区でも、新宿区と同様に、店舗名等の公表や過料等を盛り込んだ客引き行為等の防止に関する条例を平成29年4月1日に施行する予定となっています。
 また、警視庁では、新橋地区や上野・湯島地区において、客引きが酔客を風俗店やマッサージ店に連れ込み、酔いつぶして現金を窃取したり、クレジットカードを無断で使用する事案が多発するなど、盛り場環境の悪化が認められたことから、集中的な取締りをはじめ、自治体や地域住民等と連携し、官民一体となった環境浄化対策を強化しています。

質問事項
二の3 海外からの訪日外国人に対する周知を含む対策、さらには、オリンピックにむけての取組について伺う。

回答
 警視庁では、現在、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、盛り場の更なる浄化を効果的に推進するための行動計画として策定した「盛り場セーフティアクションプラン」に基づき、盛り場総合対策を推進中です。
 平成28年から新たな取組として、都内盛り場における環境浄化の気運を高めることを目的に、7月と12月の年2回、「盛り場一斉対策日」を設定し、都内各警察署において、悪質な客引き行為や違法風俗店等の取締りのほか、自治体や地域住民等と連携した客引き撲滅キャンペーン、官民合同パトロールなどを実施しており、キャンペーン等においては、訪日外国人等が悪質な客引きの被害にあわないよう、多言語表記による啓発チラシ等を配布して、注意喚起に努めています。
 今後も、盛り場を訪れる訪日外国人等が悪質な客引き被害などにあわないよう、多言語による被害防止のための広報啓発活動を強化するなど、健全で魅力あふれる盛り場環境を実現するため、諸対策を推進していきます。

質問事項
三 振込め詐欺対策について
 警視庁の発表では11月までの都内の刑法犯罪認知数が昨年同期比で約9%減る一方で振り込め詐欺など特殊詐欺などの認知件数は5%増えたと指摘しているが、今ある喫緊の課題は何か、それに対してどのような対策を考えているのか伺う。

回答
 振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺は、都民に犯罪被害への不安感を与える大きな要因となっており、その根絶が重要課題の一つとなっています。
 警視庁では、引き続き、特殊詐欺犯人を徹底的に検挙することはもちろんのこと、事業者と連携した被害防止対策、広報啓発などを推進するとともに、犯行使用電話を提供するレンタル電話事業者、アジトを提供する不動産業者、犯行に加担するバイク便業者など、犯行を助長する事業者の摘発を推進していきます。

質問事項
四 人身安全関連事案等について
 女性への性犯罪、弱者である小学生以下の子供への犯罪、ストーカー・DVなど高止まりで推移しているが、その対策について伺う。

回答
 警視庁では、都内における刑法犯認知件数が減少する一方で、子どもに対する犯罪や女性が被害者となる性犯罪の認知件数は増減を繰り返しながら推移し高止まり傾向となっている状況が認められることなどから、平成28年12月、有識者による「子ども・女性の安全対策に関する有識者研究会」を設置し、犯罪の被害実態、発生傾向等の分析を行い、効果的な対策を検討することとしました。
 今後、研究会において、分析結果を踏まえて、警察・他機関等において取り組むべき方策等について提言をいただく予定です。警視庁では、提言に基づいて更なる安全対策に取り組み、犯罪の起きにくい社会づくりを推進していきます。
 また、平成28年中のストーカー・DV事案に係る相談件数は、依然として増加傾向が続いています。
 このような事態に対処するため、警視庁では、平成27年4月に「人身安全関連事案総合対策本部」を組織として発足させ、ストーカー・DVをはじめとする人身安全関連事案に対応しています。
 引き続き、更なる体制の強化を図り、被害者の安全確保を最優先とした的確な対応が講じられるよう、東京都女性相談センターをはじめとする関係機関との連携を緊密に行い、人身安全関連事案への対処を推進していきます。

平成28年第四回都議会定例会
文書質問趣意書

提出者 清水ひで子

質問事項
一 八王子市川町の(仮称)スポーツパーク建設計画について

一 八王子市川町の(仮称)スポーツパーク建設計画について
 八王子市川町346番1他の約15.4ヘクタールに、「特定非営利活動法人 東京スポーツビジョン21」が事業主となって、(仮称)八王子スポーツパークの建設が計画されています。スポーツ施設建設は否定するものではありませんが、建設場所やその手法、住民合意に大きな問題があると考え、以下の点について質問します。
 この計画は、八王子市西部の川町地区で、市内に公的スポーツ施設が不足しているという理由で、山林を伐採し、谷戸を残土で埋立て、サッカー場2面、野球場1面、テニスコート3面、アーチェリー場等をつくるというものです。
 建設予定地の貴重な谷戸は、約55万の大量の建設残土で埋め立てられてしまうことになります。搬入で地域内に入ってくる車両は、10トントラックで12万台にも及び、1日あたり130台と予測されています。地域住民の生活環境悪化も強く懸念されています。
 川町周辺は、都立高尾陣場自然公園の一角にあり、豊かな緑に恵まれた地域です。地域住民は突然の(仮称)スポーツパーク建設に数多くの疑問を持ち、同時に、大切な緑の喪失と希少種とされている動植物の絶滅をまねく結果となる、この残土埋立ての方法による(仮称)スポーツパーク建設は、中止して欲しいと要望しています。
 東京の緑、特に多摩地域の緑は、減少の一途を辿っています。自然環境を保全する東京都の努力を求めて、以下、質問します。
 当初は計画地に、トラックターミナルが建設される予定だったのが、2014年から、スポーツ施設建設へと計画が変更になりました。事業主は、「特定非営利活動法人 東京スポーツビジョン21」と、都南建設株式会社、新開工業株式会社です。スポーツ施設建設は、谷戸埋立の建設残土受け入れは、新開工業株式会社が中心に事業にあたるとのことです。
 2012年9月に、事業主が行なった住民への説明によると、建設残土は「株式会社 建設資源広域利用センター」(UCR)から受け入れますが、事業主には1あたり1940円の受け入れ料がUCRから支払われる試算ですから、55万の受け入れとすると10億6700万円になります。
 トラックターミナルに比べて、住民が反対しづらいスポーツ施設建設を名目にした、残土処理の事業ではないか、と強い疑問の声があがっています。
1 説明会で、3社共同の事業体の1つである「特定非営利活動法人 東京スポーツビジョン21」の代表者は、自らの名前で書いた事業計画説明書では、工事代金(2億)は協力企業、協賛企業により無担保無利子にて協力をいただく予定です」としているにもかかわらず、説明会では「協力企業の自己資金2億円や土地購入費など、これまでのお金の流れについて全く関知していない」と発言するなど資金計画についての理解がうたがわれ、人材などに照らしてみても、当事者としての能力がはっきりせず、共同事業者としての実態そのものが疑われています。このような事業体が、15.4ヘクタールもの大規模な開発行為にあたることについて、東京都はどのような判断をお持ちですか。お答えください。
2 また本年10月23日の事業者開催の住民説明会において、事業主は住民に対し、「土砂搬入する財源は考えないで下さい。融資証明、残高証明を出すように八王子市から言われている」と事業者の資金計画について、誠実に説明しようとしていません。資金計画についても住民の問いに答えるべきと考えますが、東京都は、どのような見解をお持ちか、伺います。
3 土砂の搬入をする10トントラックが1日に130台も入って来れば、生活環境に大きな影響を及ぼします。1日に往復260台の通行になります。
 当該地には、現在、都道が存在していますが、幅員は広くありません。事業者は、この道路の拡幅と開発地域内に新たな道路をつくる予定にしていますが、これまで生活道路として、車両通行も限られた数だった川町に土砂を積載した大型ダンプが大量に入ってくれば、騒音、振動、空気の汚染などの環境悪化に加えて、交通事故の発生も心配されています。
 事業者は騒音、振動、大気汚染について、どのような対策を講じようとしているのですか。
 また都は、生活環境の変化について、どのような認識をお持ちか、お答えください。
4 八王子市市街化調整区域の保全にむけた適正な土地利用に関する条例は事業の60%は緑地を残さなければならない、としています。事業主は、八王子市の条例を遵守する、自然環境を破壊するものではない、と説明しています。しかし、限りない自然破壊につながる開発である懸念は拭いきれません。4割の面積の緑がなくなり、高さ38メートルにおよぶ建設残土で埋め立てられる事業によって、この地域に生息している多くの動植物の生息が危ぶまれる事態となります。
 特に、東京の区部では絶滅し、多摩地域の中でも、八王子市の当該事業予定地域でしか確認されていない、絶滅が危惧されているシダ類が生息していることは、重視されなくてはなりません。
 2014年9月、事業主が行なった住民説明会の資料によると、事業区域内の大径木は12種108本を確認、注目種とされている植物、鳥類、爬虫類、昆虫、魚類、底生動物は69種を確認、その他周辺区域には、1700種を超える動植物が生息していると報告されています。
 大規模な樹木の伐採と建設残土埋立で、これらの種が絶滅する事態を招きかねません。生物多様性の大事さが強調されている今日、東京都は、種の保存について、どのようなお考えを持って、開発に対応されるのでしょうか。お答えください。
5 埋立計画地域は、建設局が、土砂災害特別警戒区域と土砂災害警戒区域に指定している箇所が存在します。傾斜が急で、土砂崩壊が起こりやすい場所だからこその指定ですが、この地域の木々を切り、38メートルの高さで建設残土を積み上げる事業が行なわれることは、事業地域の安全性を大きく損なうものではないでしょうか。建設局が、土砂災害警戒区域、特別警戒区域に指定したのは、どのような判断に基づくものでしょうか。また、大量の建設残土の埋立で、地盤の安全性は確保されるのでしょうか。東日本大震災では、盛り土した地盤が崩壊していますし、都内でも荒川のスーパー堤防地域でも盛り土が崩れたりしています。土砂埋立の地盤は安全ではないと考えます。東京都のご見解を、それぞれお示しください。
6 事業区域内の周辺に、保安林があると聞いていますが、保安林は、どのようなものでしょうか。お答えください。
7 保安林又は保安林に隣接する土地で、木々を伐採し、大量の盛り土をする場合、保安林制度上どのような規制があるか、伺います。見解をお聞きします。
8 事業予定地内は、大沢川の源流です。樹林帯には、細い水流があり、下流に向かって水を集め、大沢川となります。この源流の谷戸を建設残土で埋め立てると、水源はどうなるのでしょうか。事業者は、管路を作るなどのことを提案しているようですが、水源が確保される保障は不透明です。
 大沢川の源流を保存することについて、いかがお考えでしょうか。お答えください。
9 水源の守られない場合、事業区域内の水生植物や動物が生息している湿地帯はなくなってしまいます。事業主は、この場所をビオトープとする、と説明しているようですが、自然の流水とは異なる流れになった場合、その保障はありません。この点についてのご見解もお聞きします。
10 都市整備局にお聞きします。都内では、水道管や下水道管の敷設工事で建設残土が発生しています。また、外かん道の建設や超高層ビル建設の開発行為で大量の建設発生土が出ています。
 都市整備局が把握している都内工事によって生じる建設発生土の実績をお示しください。
11 建設残土の発生を抑制しないと、残土処理の能力が限界を超えることが予測されます。現在でも、建設残土の再利用を名目に、八王子市をはじめとした多摩の山間部などで、谷戸の埋立工事が行なわれ、緑が失われています。都内で一団の緑の塊をなしている多摩地域の自然を守るのは、地球温暖化や大気汚染を防止し、都民生活の安らぎを守る都政の大事な仕事です。
 現在、リニア新幹線建設工事も浮上しているおり、さらに建設残土の発生量増加が懸念されていますから、発生抑制の対策を講じることが重要です。
 都は、建設残土の発生抑制に向けて、努力されるよう求めます。いかがでしょうか。
12 八王子市議会では、川町地域を中心とした市民の「自然と生活環境を守りたい」との願いを受けて、この4年余、(仮称)スポーツパーク建設計画が市政をめぐる重要な課題となっています。
 幅広い市民の運動と、議会では党派を超えて(仮称)スポーツパーク建設計画は、撤回、見直しをと求めています。
 この事業計画は、東京都自然環境保全審議会の審議にかかることが見込まれます。審議にあたっては八王子市議会を中心とした地元の意見や要望を踏まえた上で、生物多様性の保全に向けた最善の方策を検討されるよう求めるものです。お答えください。

平成28年第四回都議会定例会
清水ひで子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
一 八王子市川町の(仮称)スポーツパーク建設計画について
1 資金計画についての理解がうたがわれ、人材などに照らしてみても、当事者としての能力がはっきりせず、共同事業者としての実態そのものが疑われているような事業体が大規模な開発行為にあたることについて、都はどのような判断を持っているか伺う。

回答
 都市計画法では、開発行為を許可するに当たり、許可申請者に対し、当該開発行為を行うために必要な資力や信用があることを要件としており、施行規則において資金計画書や事業経歴書等の提出を定めています。
 したがって、本件区域の開発行為を所管する八王子市においても、事業者の資力や信用については、許可申請を受けた際にその審査において判断するものと認識しています。

質問事項
一の2 事業主は住民に対し、資金計画について、誠実に説明しようとしていない。資金計画についても住民の問いに答えるべきだが、都の見解を伺う。

回答
 都市計画法では、国土交通省の「開発許可制度の運用指針」において「許可権者は、申請者には、周辺住民等に対し開発許可手続きとは別に説明、調整を行うよう、指導することが望ましい」という記載があります。この趣旨を踏まえ、本件区域の開発行為を所管する八王子市が、事業者に対して、周辺住民等に対し事業に関する説明、調整を行うよう、適切に指導を行うものと認識しています。

質問事項
一の3 これまで生活道路として、車両通行も限られた数だった川町に土砂を積載した大型ダンプが大量に入ってくれば、環境悪化に加えて、交通事故の発生も心配されるが、事業者は騒音、振動、大気汚染について、どのような対策を講じようとしているのか伺う。また、生活環境の変化について、都の認識を伺う。

回答
 当該開発計画については、現時点で許可申請がされていないため、内容は把握していません。
 なお、車両通行に伴う騒音及び振動については、騒音規制法及び振動規制法に基づき市町村長が測定を行い、要請限度の超過により道路周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、所要の措置を講ずることとされています。

質問事項
一の4 事業主が行なった住民説明会の資料によると、事業区域内の大径木は12種108本を確認、注目種とされている植物、鳥類、爬虫類、昆虫、魚類、底生動物は69種を確認、その他周辺区域には、1700種を超える動植物が生息していると報告されているが、大規模な樹木の伐採と建設残土埋立で、これらの種が絶滅する事態を招きかねない。生物多様性の大事さが強調されている今日、都は、種の保存について、どのような考えを持って、開発に対応するのか伺う。

回答
 都は、東京における自然の保護と回復に関する条例(以下「自然保護条例」という。)に基づき、宅地の造成など土地の形質を変更することで自然環境に影響を及ぼす一定規模以上の開発行為について、知事の許可を必要とする開発許可の制度を設けて運用しています。
 開発許可制度では、事業者に一定の緑地面積の確保や、既存樹木等の保護の検討、動植物の生息又は生育についての適正な配慮などを求めており、事業者が許可を受けるためには、これらの要件を満たすことが条件となります。
 都は、この制度を適切に運用し、開発行為により損なわれる自然を最小限にとどめるほか、自然が損なわれるおそれがある場合には、その回復を図るよう開発事業者を指導することにより、自然環境の保全に努めています。

質問事項
一の5 埋立計画地域は、建設局が、土砂災害特別警戒区域と土砂災害警戒区域に指定している箇所が存在するが、土砂災害警戒区域、特別警戒区域に指定したのは、どのような判断に基づくものか。また、大量の建設残土の埋立で、地盤の安全性は確保されるのか。都の見解をそれぞれ伺う。

回答
 土砂災害警戒区域は、傾斜が30度以上で斜面の高さが5メートル以上の急傾斜地など一定の要件を満たし、かつ、住宅もしくは居室を有する建築物が立地している場合又は平地があり将来住宅等の立地の可能性がある場合において、警戒避難体制を整備すべき土地として指定します。
 このうち、斜面の崩壊等により建築物に著しい損壊を生じるおそれがある場合は、住宅分譲や要配慮者利用施設に係る開発行為の制限及び住宅等の構造を規制すべき土地として土砂災害特別警戒区域の指定をします。
 八王子市川町においても、現地調査等を行い、これらの要件を満たす箇所を土砂災害警戒区域等として指定したものです。
 また、当該建設計画における造成行為による地盤の安全性については、都市計画法や宅地造成等規制法等における許可が必要な場合には、それぞれの法令に基づく審査において確認することとなります。

質問事項
一の6 事業区域の周辺に保安林があるが、どのようなものなのか伺う。

回答
 保安林は、水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するため、森林法に基づき、農林水産大臣等によって指定される森林です。保安林に指定されている土地では、立木の伐採や土地の形質を変更する行為等が規制されます。

質問事項
一の7 保安林または保安林に隣接する土地で、木々を伐採し、大量の盛り土をする場合、保安林制度上どのような規制があるのか伺う。

回答
 保安林に指定されている土地については、立木の伐採、土石若しくは樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為等が規制されています。保安林に指定されていない土地については、保安林の規制は適用されません。

質問事項
一の8 事業予定地内は、大沢川の源流であり、この源流の谷戸を建設残土で埋め立てると、水源はどうなるのか。大沢川の源流を保存することについて、都の見解を伺う。

回答
 当該開発計画については、現時点で許可申請がされていないため、内容は把握していません。
 なお、自然保護条例施行規則第52条では、土地の造成、土地の形質の変更が必要最小限であり、かつ地形に順応した開発計画であることなどを開発許可の要件として規定しています。
 都はこの規定に基づき、原則として、水源域の形質の変更を避けるよう求めており、やむを得ず変更する場合には、周辺の自然環境を考慮の上、水道(みずみち)の確保など十分な配慮を行うよう指導しています。

質問事項
一の9 水源の守られない場合、事業区域内の水生植物や動物が生息している湿地帯はなくなってしまう。事業主は、この場所をビオトープとすると説明しているようだが、自然の流水とは異なる流れになった場合、その保障はない。この点について都の見解を伺う。

回答
 当該開発計画については、現時点で許可申請がされていないため、内容は把握していません。
 なお、自然保護条例に基づく開発許可では、原則として、行為地の面積が1ヘクタール以上の場合、事業者に自然環境調査を実施させるとともに、調査で把握された動植物については、その生息又は生育について適正な配慮がなされた自然環境保全計画書の提出を求めています。
 また、保全計画において、事業者が希少植物を移植して保全に取り組む場合には、許可条件としてモニタリング調査を事業者に義務付けることとして、希少植物の保護にも努めています。

質問事項
一の10 外かん道の建設や超高層ビル建設の開発行為で大量の建設発生土が出ているが、都市整備局が把握している都内工事によって生じる建設発生土の実績を伺う。

回答
 都が把握している、都内工事によって生じる建設発生土の実績については、平成24年度で約920万立方メートルです。

質問事項
一の11 都は、建設残土の発生抑制に向けて、努力すべきだが、都の見解を伺う。

回答
 都は、建設残土の発生抑制のため、「東京都建設リサイクル推進計画」に基づき「東京都建設リサイクルガイドライン」を定め、自ら努めるとともに、建設工事において発生する土砂の再使用などに取り組むよう各事業者に求めています。

質問事項
一の12 八王子市議会では、党派を超えて(仮称)スポーツパーク建設計画は、撤回、見直しをと求めている。東京都自然環境保全審議会の審議にあたり、八王子市議会を中心とした地元の意見や要望を踏まえた上で、生物多様性の保全に向けた最善の方策を検討されるよう求めるが、見解を伺う。

回答
 都は、3ヘクタール以上の開発行為に対する許可を行う場合には、自然保護条例に基づき、あらかじめ自然環境保全審議会の意見を聴くこととしています。審議会では、自然環境に関する各分野の専門的な視点から審議を行うほか、当該開発行為が行われる区市町村に対して自然環境保全計画書案に関する意見照会を行うなど、地元の意見も参考にしながら審議を行うこととしています。

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