平成二十八年東京都議会会議録第十七号

○副議長(小磯善彦君) 九番塩村あやかさん。
   〔九番塩村あやか君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○九番(塩村あやか君) まず、動物愛護についてお伺いをいたします。
 私は動物愛護のボランティアとして長く活動してきたことが、都議会議員になる一つの大きなきっかけであることから、毎回一般質問で動物愛護を取り上げています。
 さて、一昨年は東京都にて、全国で初めて劣悪ペットショップへの行政処分が行われました。その際、都の対応がおくれにおくれ、各メディアで非難がされました。
 昨今また東京都内で動物虐待に当たる騒動が発生をし、テレビでも既に複数回報道され、東京都への批判が高まっています。
 ホームレスが多摩川の河川敷にログハウスをつくって不法占有をし、その中に二十匹近い犬を大変に不衛生な状態で押し込めており、近隣の住民や愛護団体より、虐待である、迷惑である、危険であると指摘がされている件です。
 私は依頼を受け、この数カ月、都に対しまして、動物愛護法に抵触をするため、しっかりと対応するようにと要望してきました。また、犬たちは狂犬病予防法による接種と登録が行われておらず、万が一にでも人間をかんだ場合の危険性を指摘してきました。
 都が解決できない理由を並べ続ける中、恐れていたことが発生をしました。相次いで近隣の方が犬にかまれ、咬傷事故となってしまいました。被害の届け出をしていない方も複数おり、実際には十人前後の方が被害に遭われています。
 咬傷事故が複数回発生し、そのときに狂犬病予防法第六条の五を適用すれば、ログハウスにも立ち入ることができ、犬たちを抑留という名目で保護をすることができたはずでした。しかし、都は複数回のチャンスがあったにもかかわらず、できていません。
 台湾にまで迫っている狂犬病が万一発生したらと思うと、今回の都の対応は許せるものではありません。人の命にかかわります。これは不作為であり、過日、知事と局長宛てに抗議文を提出させていただきました。
 飼い主のホームレスは、劣悪な環境下で、犬をおよそ二十頭近く飼育しています。さらに、テレビ報道もされましたが、感情に任せてパイプ状のもので犬や周りをたたいたりと、完全な虐待状態です。
 まず、この状態から何としても犬たちを救い出すことが必要です。
 適用できない法律ばかりを並べるのではなく、狂犬病予防法など条文が適用できる法律を使うべきです。
 市も国土交通省も狂犬病予防法に基づいた犬の抑留はできません。それを行使できるのは、動物愛護法も所管する東京都福祉保健局の健康安全部です。
 狂犬病予防法に記されている狂犬病予防員が、まさに私が情報を提供し、対応をお願いし続けてきた職員であることは本当に残念でなりません。これまでの都の対応に問題は一切なかったのかをお伺いいたします。
 また今後、さらなる被害者を出さないため、そして、虐待されている犬たちを一刻も早く救い出すため、都はどのように対応するのか、具体的な解決策をお伺いいたします。
 続きまして、ペット殺処分ゼロを公約に掲げた知事にお伺いをいたします。
 既に知事には要望を提出しましたが、真の殺処分ゼロを目指すためには、譲渡の拡大だけでは抜本的な解決にはなりません。セットで生体小売業への規制を考えなくては、殺処分は闇に潜るばかりです。
 二〇一二年の動愛法の改正により、終生飼養の義務化や自治体が業者からの引き取りを拒めることが明記されたことから、引き取り屋なる業種が暗躍を始めました。実際に一部の引き取り屋が死体遺棄事件を多く引き起こしたことは記憶に新しく、大きな社会問題となっています。
 この問題の根本には、ペットショップで陳列販売をする生体小売業にあると指摘がされています。日本のペット大量生産、大量販売、大量処分の悪循環が前回の法改正で断ち切れると期待がされていましたが、大量生産、大量販売はそのままにして引き取り拒否や終生飼養を義務づけたところで、結局は大量の闇処分を生み出してしまったにすぎません。
 東京都はペットショップの数が日本一です。つまり大量販売の中心地であるわけで、大量生産の現場に対する責任が生じていることは明らかです。だからこそ、真の殺処分ゼロにつながる動物取扱業の適正化を目指す施策を二〇二〇年までに条例化または実施する責務があると考えます。見解をお伺いいたします。
 原則として、行政殺処分のない多くの動物福祉先進国では、ペットショップでの生体販売に歯どめをかける八週齢規制や飼養施設規制、飼養管理基準など具体的な数値規制が導入をされています。
 数値規制を設けることで、自治体による監視指導が格段に行いやすくなるという指摘も各方面からなされており、日本でも努力義務ではありますが、札幌市では八週齢規制にかかわる条例が可決され、埼玉県三郷市でも今定例会で上程が予定をされています。
 これら蛇口を閉める施策を国に先駆けて施行することができれば、東京から真の動物殺処分ゼロを推し進め、二年後に迫った動物愛護法の改正を東京から後押しすることができます。
 これまで訴えたように、殺処分ゼロは、闇処分も含めた真の殺処分ゼロにしなくては意味がありません。次期法改正について、東京都は国にどのような要望をしていくのか、お伺いいたします。
 動物愛護に関連をしまして、これまでも取り上げてきた動物愛護管理センターの新設についてお伺いいたします。
 都には現在、三つの愛護管理センターがありますが、老朽化が著しいため、センターの見直しが急務であり、何度も要望してまいりました。新設に向けて動いていることは大変に喜ばしい限りです。
 昨今は処分機を置かないセンターが称賛を浴びていますが、広域自治体では、新設をするセンターに処分機を置かなくても、そのほかのセンターで処分機を置いて処分をしているケースも多々見受けられます。
 東京都が本当に殺処分ゼロを目指すのであれば、新設をするセンターに処分機を設置しないことはもちろん、都のセンター全てに処分機がない状態にすることだと考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。
 続きまして、待機児童対策と女性の働き方についてお伺いいたします。
 待機児童対策は、女性の働き方を見てみると、保育所をふやす以外にもできることがあります。
 例えば、東京には、個人事業主やフリーランスや非正規雇用の女性が多くいます。作業などは家でできる人や、仕事があるときのみ託児の必要性がある人たちは意外と多いものです。
 私のもとには、そうした女性たちより、毎日預ける必要はないけれど、仕事が入ったときのみ預けることが難しいため、保育所に何とかして入れているといい、仕事が入った場合に単発で依頼するシッター代はとても高い上に仕事経費で認められない不合理があると訴えています。
 仕事のために駐車場代を経費で計上して確定申告をすることは認められているのに、なぜシッター代は計上することができないのでしょうか。これが税制上認められれば、保育所に預ける必要がなく、保育定員を埋めることがないため、待機児童対策にも強力に貢献ができるはずです。実際に、イギリスはシッター代を納税額から一部減らすことができます。
 待機児童が日本一多い東京都から、こうした時代に合わない税制の問題点はもちろん、働く女性の一層の活躍に向け、従来の価値観を転換し、働き方や規制の見直しなど、国に都の特性を踏まえた上で進言するべきだと考えますが、知事の見解をお伺いいたします。
 次に、待機児童解消の一助となる既存建物の活用についてお伺いをいたします。
 私の地元世田谷区は待機児童数がワーストと、保育所の絶対数が足りていません。そのため、まずはその数をふやす必要があります。
 認可保育所はもちろん、認証保育所の制度も待機児童解消に有効であることから、都内の基礎自治体は、既存建物を活用し、機動的な開所を目指しています。
 しかし、一枚の紙がないために、開所の基準を満たしているにもかかわらず断念をした事例も報告がされています。
 その紙とは建築物の検査済み証です。都道府県知事が認可をする認可保育所の開設に当たって、都は、要綱により検査済み証の提出を事業者に求めています。しかし、この検査済み証を紛失しているケースは、台帳記載事項証明書の提出でも認められることにはなっていますが、検査済み証自体を取得していないケースでは、それは存在いたしません。
 さきに都庁で開催されました待機児童解消に向けた緊急会議にて、世田谷区長や豊島区長が、そもそもこの検査済み証を取得していないケースも多いと指摘をしているとおり、平成十年では、四割弱の物件しか検査済み証を取得していません。つまり、保育所を開設するに当たり、障壁になっています。
 そのため、世田谷区を初めとした自治体や保育事業者より改善の声が長く上がっていました。現場の声を聞くことは重要であり、私もそうした皆様の声を受け、安全性の確保を大前提に、待機児童問題に機動的に対応できるよう要綱に明記するなど、検査済み証がない場合の代替措置を可及的速やかに講じるべきと要望しましたが、その後の都の対応をお伺いいたします。
 最後に、女性消防団員の入団促進についてお伺いをいたします。
 地域防災のかなめである消防団は、まだまだ男性が多いという印象がありますが、東京特別区では、女性団員は全国最高の一七%です。私もそのうちの一人であり、日々活動する中で女性の視点が必要な場面があると日々実感をしています。
 ところで、現在、消防団は定員を満たしておらず、これまでに学生や女性団員の募集など、団員拡大のためにさまざまな広報活動をしていますが、これまで見落としている訴求層があります。それが単身の女性の層です。
 東京には、地方から上京してきたひとり暮らしの女性や若者が多くいますが、消防団は男性というイメージを持つ人がまだまだ多いのが実態です。
 そうした方々に東京の消防団は女性が多く活躍していることを知ってもらうことが大切です。
 消防団活動を通じて、自身で防災、減災対策を身につけてもらえる機会にもなる上、近所に知り合いなんていないと薄くなりがちな地域とのかかわりも濃くなるというメリットもあり、一層の地域防災と団機能の向上も望めます。
 活動自体も平日の夜や休日が多く、日中に勤めていても活動に参加をしやすいのが消防団の特徴でもあります。
 そこで、団活動のメリットを知ってもらい、若者や特に単身女性の入団の促進を行うべきだと考えますが、消防総監の所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 塩村あやか議員の一般質問にお答えをいたします。
 私からは四点お答えさせていただきます。
 まず、動物愛護に関する条例の制定についてのお尋ねがございました。
 ペットショップなどの動物取扱業には、現在、動物愛護管理法で、省令などによって定められました基準の遵守が義務づけられているところでございます。
 また、平成二十五年に施行されました改正法では、施行後五年を目途として、法の施行の状況について検討を加えまして、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることといたしております。
 都としての対応は、国の検討状況を踏まえて考えてまいりたいと、このように考えております。
 動物愛護管理法の改正に向けました国に対する要望についてでございます。
 動物取扱業者に法令遵守を徹底させて適正に監視指導を行うためには、犬や猫を飼育するケージの大きさなど、飼養の施設や飼養環境に関しまして、省令などにより具体的な基準を盛り込むことが必要と考えます。
 また、我が国の場合は、特にパピー、子犬とか子猫を好む傾向があるわけでございますけれども、そういった犬、猫を販売してはならない週齢、その期間、さらには親から離す時期などについても、改めて検討することが必要だと考えます。
 現在、国は販売規制の期間について調査を行っていると聞いておりますが、都といたしましては、法改正に向けた検討などの機会を捉えまして、国に対して必要な事項を要望していきたいと考えております。
 動物愛護相談センターのあり方についてのご質問でございます。
 私はかねてより、二〇二〇年東京大会までに動物の殺処分ゼロをぜひ実現したいと、このように語ってまいりました。
 現在、動物を負傷や感染症の苦痛から解放する場合には、麻酔薬の注射を用いているわけでございますが、まず、殺処分ゼロが実現いたしますと、そもそも炭酸ガスによる処分機を使うことはなくなると、このように考えます。
 その前に、意識を大きく変えて、そしてまた、意識啓発を行い、さらには高木自民党幹事長のように里親として猫を引き取っていただくというような流れが大きく出てくることを期待をするところでございまして、また、こうしたことも踏まえまして、動物愛護相談センターの今後の役割や機能についても検討を進めてまいります。
 さまざまな就業形態で働く女性の活躍についてお答えをしたいと思います。
 少子高齢化が急速に進展をして労働力人口の減少が見込まれる中でございますが、社会の活力を高めるためにも、女性の力を最大限引き出すことは不可欠でございます。それよりも何よりも、女性自身の自己実現ができる環境や意識の確立が重要と考えます。
 そこで、東京で働く女性の活躍を進めるには、待機児童を初めとする課題の解決とあわせまして、働き方改革を進めることは大きな鍵でございます。
 このため、待機児童解消に向けた障害となっておりますさまざまな規制などにつきましては、国家戦略特区のスキームも活用しながら、規制の改革、税制の改正を国に提案してまいりたいと思います。
 また、生活と仕事の両立が図られるように、今年度から長時間労働の削減、休暇の取得促進、そして多様なワークスタイルの導入など、働き方の改革に取り組む企業を都として支援をしているところでございます。
 こういったさまざまな取り組みを通じまして、女性が真に輝く社会の実現を目指してまいります。
 その他のご質問に関しましては、関係局長からご答弁をいたします。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、多摩川河川敷の犬の飼い主への対応についてでありますが、動物愛護相談センターでは、お話の事案に対応するため、平成二十七年四月から現在まで、二十四回現地を巡回し、犬の飼養状況について確認をしております。
 また、飼い主に対しましては、狂犬病予防法に基づく登録や予防注射を行うこと、人への被害を防ぐため、放し飼いにしないことなどを十三回にわたって繰り返し指導しておりますが、現時点においても、こうした都の取り組みが課題解決に結びついていないという状況でございます。
 次に、本件への今後の対応についてでありますが、本件は河川敷に不法に建てられた家屋等で犬を多頭飼育し続け、放し飼いの犬が人をかんだ事案でございまして、これ以上の被害の発生を防ぐ必要がございます。
 このため、本年十一月からは、放し飼いの犬を確認した場合に、狂犬病予防法に基づき速やかに捕獲できるよう、職員体制を拡充し、巡回頻度をふやすなど対応を強化しております。
 本件を所管する部署は、狂犬病予防法や動物愛護管理法を所管する動物愛護相談センターに加え、河川を管轄する国土交通省、狂犬病予防法に基づく犬の登録等の事務を行う地元の市、咬傷事故等に対応する警察にまたがっており、現在、センターでは、関係者と協議を行い、早急に対策を講じる考えでございます。
 また今後、放し飼いの犬を捕獲するための巡回をさらにふやすため、職員の体制を一層強化してまいります。
 最後に、既存建物を活用した保育所整備についてでありますが、既存建物を活用して、保育所や認証保育所等を整備する場合、建物が建築当時の建築基準関係規定に適合していることを確認する必要があるため、都は事務取扱要綱等において、原則として、検査済み証の写しを提出すること、検査済み証を紛失している場合は、台帳記載事項証明書を提出することと規定しております。
 また、検査済み証の交付を受けていない建物を活用して保育所等を整備する必要がある場合には、建築当時の建築基準関係規定に適合していることを建築主事等が確認した文書を提出することとしております。
 既存建物を活用した保育所整備が進むよう、今月五日には、こうした取り扱いを区市町村へ文書で通知しておりまして、今後、事務取扱要綱等も改定してまいります。
   〔消防総監高橋淳君登壇〕

○消防総監(高橋淳君) 女性消防団員の入団促進についてでありますが、特別区消防団では、二千四百名を超える女性消防団員が活躍しており、特に防火防災訓練や、応急手当ての指導などにおいて重要な役割を担っております。
 このことから、東京消防庁では、広く都民に対して、ポスター、リーフレット、プロモーションビデオ、ホームページ等を活用し、女性消防団員の入団促進を図っております。
 今後とも、女性消防団員の活躍を紹介するなど、さらに、女性が消防団の活動を理解し、魅力を感じるような募集広報等の充実に努めてまいります。
   〔九番塩村あやか君登壇〕

○九番(塩村あやか君) 知事に再質問いたします。
 命の大量消費地である東京にて、真の殺処分ゼロにするための施策、または条例化の責務があるのかとお伺いさせていただきました。責務があるかについては答弁がありませんでしたので、再質問させてください。よろしくお願いいたします。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 条例とは、憲法九十四条及び地方自治法十四条に基づいて定めるものでございます。
 したがって、条例をつくらなければならない、つまり責務があるという場合には、例えば法令に条例を義務づけるなど法を執行するために必要な場合、あるいは義務を課して権利を制限する場合には定めなければならないという責務がございますが、この場合については、都の一つの施策の方向として、条例をやるかどうかという考え方に基づいて条例の可否というのは判断されるものというふうに考えております。
 先ほど知事が申し上げましたように、動物愛護に関する条例の制定については、現在、国が平成二十五年に施行された改正法で施行後五年を目途として検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしております。
 したがいまして、それを踏まえまして、都としての対応は、国の検討状況を踏まえて考えていくというふうに知事が答弁を申し上げたところでございます。

○議長(川井しげお君) 以上をもって質問は終わりました。

ページ先頭に戻る