平成二十八年東京都議会会議録第十七号

○副議長(小磯善彦君) 五十番西崎光子さん。
   〔五十番西崎光子君登壇〕

○五十番(西崎光子君) 都議会生活者ネットワークを代表して質問します。
 豊洲市場問題では、都庁の隠蔽体質が露呈し、都政への信頼が失墜する事態となりました。この一連の件で、意思決定過程の文書の作成や保存がされていないなど、公文書管理のずさんさが明るみになり、豊洲新市場整備方針など重要な文書や地下空間問題で、市場と日建設計の打ち合わせ記録がすぐに発見されなかったことは非常に問題です。
 大きな工事で行政が受託者と打ち合わせをするとき、記録をとらないことは考えられず、そうしたメモは組織的に使われるものであり、公文書としてきちんと管理しなければなりません。
 公文書管理と情報公開は車の両輪であり、民主主義の根幹にかかわるものです。
 国は、公文書が国民共有の知的資源であるという認識のもと、説明責任を全うすることを目的に、公文書管理法を制定しました。
 ところが、都は、情報公開条例においては、都民への説明責任を全うし、都民の都政への参加を進めることを目的としていますが、文書管理規則には目的規定もなく、発生した文書を効率的に管理するという視点しかありません。
 今回、このような事件を二度と起こさないためにも、公文書管理が重要であり、文書の作成や保存をきちんと行う必要があります。説明責任を果たすためには、意思決定過程の記録を残しておかなければなりませんが、文書を作成する義務はどのようになっているのか、都の見解を伺います。
 これまでの都の公文書管理には多くの課題がありました。そこで、公文書管理条例を制定し、公文書が市民の共有財産であり、説明責任を全うするという理念を示す必要があると考えますが、知事の見解を伺います。
 日本が障害者権利条約を批准して二年、この条約を具体的に生かしていくために、障害者差別解消法がことし四月に施行されました。これにあわせて世田谷区では、イエローリボンを配っています。
 障害のある人が日常生活や社会生活を送る上で障壁となる一切のバリアを取り除き、皆が一緒に社会参加できるよう、行政や事業者が合理的配慮を行っていかなければなりません。
 知事は所信表明で、社会全体で障害のある方々への理解を深め、差別をなくす取り組みを一層推進するための条例案について検討を開始すると述べています。
 そこで、どのような理念で取り組まれるのか、知事の見解を伺います。
 この夏、視察した兵庫県明石市では、先駆的な障害者施策を行っています。合理的配慮を提供するため、明石市障害者配慮条例をことし四月に施行しました。昨年には、手話言語・障害者コミュニケーション条例を施行しており、手話だけではなく、要約筆記や点字、音訳等、多様なコミュニケーション手段の利用促進を規定しています。
 具体的には、聴覚障害者向けのタブレットや音声を文字変換するシステムなどの設置、全小学校で手話体験教室の実施も目指しています。
 都は、東京二〇二〇大会に向けて、手話の一層の普及を図るなど、聴覚障害者のコミュニケーション支援を充実させる必要があると考えますが、見解を伺います。
 国に対して、手話言語法の制定を目指し、全国の首長が動き始めています。手話を広める知事の会も設立されており、パラリンピックが開催される東京都もぜひ参加するよう要望します。
 東京都は、全国に先駆けて制定した東京都男女平等参画基本条例に基づき、行動計画を策定し、男女平等参画社会の実現に向けて取り組みを進めてきました。
 このたび、女性活躍推進法に基づき都の計画を策定する必要性が生じたことに伴い、男女平等参画のための東京都行動計画と女性活躍推進計画を一体的に策定し、女性活躍推進計画とすると聞いています。
 女性活躍推進法は、第一条で、男女共同参画社会基本法にのっとるとされており、女性活躍が男女共同参画の理念のもとにあることを意味しています。
 都は、活躍推進計画と配偶者暴力対策基本計画の改定を合わせるとのことですが、男女平等参画の視点が低下するのではないかと危惧されます。
 新たな総合的な計画においても、条例の理念を踏まえ、男女平等参画の視点をしっかりと盛り込んでいくべきと考えますが、都の所見を伺います。
 小池知事は、多様性の社会、ダイバーシティー東京を目指しています。東京は約一千三百万人もの人々がおり、子供、若者、高齢者、女性、男性やLGBTなど、あらゆる人たちが生活しています。
 男女平等参画社会の実現に向けて、人権や多様性を尊重することについて、計画に位置づける必要性があると考えますが、都の見解を伺います。
 東京都地域防災計画の中で、災害対策や避難所運営に当たって、女性の視点で行うことが盛り込まれました。
 生活者ネットワークは、防災会議の女性委員をふやすことや、熊本の震災でも緊急に輸入された液体ミルクの供給など、女性の視点で支援を積極的に行うよう求めてきました。
 今回の総合的な計画でも、防災に関する分野の女性参画について盛り込んでいくべきと考えますが、都の見解を伺います。
 最後に、アスベスト被害者の救済について伺います。
 二〇〇六年、小池知事が環境大臣として提案した、石綿による健康被害の救済に関する法律が制定され、認定されれば、医療費などを受けることができます。しかし、労働者だけではなく、周辺住民など広範囲にリスクがあることや、発症までの期間が長いため、因果関係がわかりにくい問題があります。
 こうした中で、アスベスト救済法の認定患者について、国が調査をしています。この調査に基づく認定患者の都内における居住の状況を伺います。
 かつて都内にも多くのアスベスト関連工場がありました。周辺住民など、潜在的な患者も都内に多く存在すると考えられます。早期発見や治療の開始のための救済が必要です。
 労働災害補償の対象とならない都民に対して、アスベスト健康被害の不安解消のため、都はどのような対応を行っているのか伺います。
 アスベスト被害が認定されれば、患者は医療費などの助成が受けられますが、気づかない人が多い現状です。疑いのある市民が専門病院で胸部CT検査や問診を受けられるように、環境省は二〇一五年度から、石綿暴露者の健康管理に係る試行調査を進めています。
 この調査に自治体が名乗りを上げれば、検査費用が助成されるため、都は、この試行調査の対象自治体として積極的に名乗りを上げるよう要望し、質問を終わります。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 西崎光子議員の一般質問にお答えをさせていただきます。
 まず初めに、公文書管理条例の制定についてのご質問がございました。
 まず、豊洲市場の問題で大きく揺らぎました都民の皆様からの都政に対する信頼、これを回復するためには、まず一丁目一番地に当たります情報公開を徹底的に進めまして、都政を透明化していく、このことが最重要と考えております。
 また、情報公開の推進に当たりましては、その前提となります公文書の適正な管理を実現し、都庁の隅々にまで浸透させる必要がございます。
 ご指摘のように、今回の豊洲市場におけます文書管理の問題を受けまして、今後同じような事態が発生することがないように、まずは東京都文書管理規則を年度内に見直します。さらに、公文書の管理に関しましては、来年度早期の条例化を検討するように指示をしたところでございます。
 このような取り組みを通じまして、都民の皆様からの信頼を回復して、都民とともに進める都政、これを実現してまいりたいと考えております。
 二つ目に、障害者差別の解消に向けた条例についてのご質問がございました。
 女性も、男性も、子供も、高齢者も、障害のある方も、誰もが生き生き生活できる、そして活躍できる都市、そのようなダイバーシティーが私の目指す東京でございます。
 今回検討を開始する条例案でございますが、こうした考えに立ちまして、社会の全体で障害者への理解を深め、差別をなくす取り組みをより一層推進することを目的といたしております。
 この条例には、相談、紛争解決のための仕組みや意思疎通のための配慮などを盛り込む考えでございます。そして、一番重要な心のバリアフリーを一層進めまして、障害者の社会参加を後押ししたいと考えております。
 なお、ご質問の際に、アスベスト問題、私、当時、環境大臣としてしっかり取り組ませていただいた大きな課題でございました。お触れいただいたことに感謝を申し上げます。
 そして、その他のご質問に関しましては、関係局長からご答弁をさせていただきます。
   〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 文書を作成する義務についてですが、都では、情報公開条例において公文書の適正な管理の必要性を規定するとともに、都の内部における文書の発生から廃棄までを統一的なルールで統制するため、文書管理規則等を整備しております。
 この文書管理規則においては、決定すべき事案について、電子または書面による起案文書として作成することとし、必要に応じて、起案の理由や事案の経過等を明らかにする資料を作成し、添付するように規定しております。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 三点のご質問にお答えをいたします。
 まず、聴覚障害者のコミュニケーション支援についてでありますが、都はこれまで、手話通訳者や要約筆記者の養成研修を行いますとともに、外国語手話の習得を支援するなど、聴覚障害者の意思疎通を支援する人材を育成してまいりました。
 また、聴覚障害に対する理解を促進し、手話人口の裾野を広げるため、手話をわかりやすく紹介したリーフレットを作成するほか、学生による手話パフォーマンスやワークショップなどを行うイベントを開催しております。
 さらに今年度からは、ICTを活用したモデル事業として、観光情報センターや消費生活総合センターなど都内六カ所にタブレット端末を配置し、遠隔手話通訳や音声を文字に変換するサービスを提供しております。
 今後も、二〇二〇年東京大会に向けまして、聴覚障害者のコミュニケーション支援の充実を図ってまいります。
 次に、石綿による健康被害の救済に関する法律の認定患者の都内における居住の状況についてでありますが、同法に基づき被認定者等に対する救済給付等を行う独立行政法人環境再生保全機構では、アスベストによる健康被害の実態把握のため、認定の申請、請求時に、出生時から申請時までの居住歴などについて任意のアンケートを実施しております。
 平成十八年度から平成二十六年度までのアンケートを取りまとめた報告書によりますと、申請時に居住歴が最も長い住所地が東京都であったと回答した方は、合計で四百八名でございまして、兵庫県、大阪府に次いで多くなっております。
 また、都内の住所地の内訳を見ますと、四十一の自治体にわたっており、その八割以上が特別区の区域となっております。
 最後に、アスベストに対する不安の解消に向けた対応についてでありますが、都では、アスベストに関するさまざまな疑問にお答えするため、アスベストの基礎知識や使用状況、健康への影響などをわかりやすくまとめた都民向けのアスベストQアンドAや保健所や企業の労働衛生部門などの相談担当者向けマニュアルを作成し、ホームページ等で広く情報提供をしております。
 また、健康安全研究センターや保健所におきまして健康相談を実施しており、相談内容に応じて医療機関への受診や定期的な胸部レントゲン検査を勧めるほか、アスベスト健康被害救済制度などの情報提供を行っております。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、アスベストによる健康影響に関する都民の不安解消に努めてまいります。
   〔生活文化局長中嶋正宏君登壇〕

○生活文化局長(中嶋正宏君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、男女平等参画推進総合計画の策定に当たっての考え方についてでございますが、都はこれまでも、男女平等参画のための東京都行動計画に基づき、さまざまな施策を進めてまいりました。男女間の実質的な機会の均等を確保し、男女平等参画社会を実現するためには、女性の活躍推進の観点が特に重要でございます。
 そこで、今回の行動計画の改定に当たりましては、その内容を、女性活躍推進計画と配偶者暴力対策基本計画の二つの計画といたしまして、そこに男女平等参画の基本的な考え方や従来の施策を全て盛り込んだ上で、両計画を合わせた全体を男女平等参画推進総合計画として策定する予定でございます。
 次に、人権や多様性の尊重について計画に位置づけることについてでございますが、都は、東京都男女平等参画基本条例におきまして、男女が性別により差別されることなく、その人権が尊重される社会を基本理念に掲げ、これまでも、その実現を目指して施策を推進してまいりました。
 今回の総合計画の策定に向け東京都男女平等参画審議会が取りまとめた中間のまとめでは、ひとり親家庭、高齢者、若年層などの中で、就業機会が不足していたり、地域とのつながりが乏しいなど困難な状況にある人に対して、人権や多様性の尊重の観点から支援が必要であると提言されております。
 計画の策定に当たりましては、こうした視点に基づく審議会の答申を踏まえ、検討を進めてまいります。
 最後に、防災に関する分野の女性参画についてでございますが、都はこれまでも、行動計画に基づき、防災分野における女性の参画促進に取り組んでまいりました。
 今回、審議会が取りまとめました中間のまとめでは、東日本大震災の際に、救援物資の配分や避難所の運営などで、男女のニーズの違いに応じた対応ができなかったとの課題が指摘されており、防災や復興に関する政策、方針決定過程の段階から、女性の参画を拡大すべきであると提言されております。
 都では、審議会の答申を踏まえ、今後の計画策定において、防災分野での女性の参画について検討を進めてまいります。

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