平成二十八年東京都議会会議録第十七号

○議長(川井しげお君) 六十六番ほっち易隆君。
   〔六十六番ほっち易隆君登壇〕

○六十六番(ほっち易隆君) 私からは、人づくり、すなわち東京の教育について質問をいたします。
 人づくりなくしてまちづくりなし。私は、よい人をつくらなければ、よいまちはできないとの信念で教育問題に取り組んでまいりました。社会をつくる基盤は人づくりであり、教育のあり方は未来の社会を決める大変重要なものであります。
 そのため、教育においては、どのような家庭環境にあっても、全ての子供が等しく教育を受けられ、将来の目標を持てるよう取り組みを進めていくことが必要であると考えます。
 知事は、先日の東京都総合教育会議において、教育は将来への一番重要な投資であり、全ての子供たちに等しく教育を受ける機会を確保することが大切である旨述べられました。
 そこで、東京の子供たちを育む重要な教育について、どのような考えを持っているのか、都政のトップリーダーである知事の見解をお伺いいたします。
 次に、六年間の一貫した教育を行う中高一貫教育は、平成十七年度に都立校として初めて白鴎高等学校附属中学校が開校し、以後、十校の都立中高一貫教育校が順次設置されてきました。
 そして、平成二十二年度に開校した四校でも、ことし三月に卒業生を送り出したことから、全ての学校の進学実績が出そろいました。
 そこで、都立中高一貫教育校はどのような成果を上げ、都教育委員会はどのように評価をしているのか、また、今後どのように、中高一貫教育を進めていくのかお伺いをいたします。
 私は、以前から要望をさせていただいておりますが、シンボルとなる中高一貫教育校をぜひ、地元である足立区にある都立江北高校に設置していただきたく強く要望を申し上げまして、次の質問に移ります。
 次に、都立高校における学力向上について伺います。
 若者が夢と希望を持てる教育都市東京をつくるためには、知、徳、体に係る基礎的な力を全ての子供が習得できる取り組みの推進を図り、次代を担う人材をしっかり育てることが必要であります。
 ただ、こうした状況の中、一部の都立高校の生徒の中には、基礎学力の不足や学習意欲の面での課題が見られ、学業不振が中途退学等の原因につながっている場合があります。学業不振の生徒の多くは、自己有用感を持てず、学習に対する向上心も低いのではないかと考えます。
 生徒が将来、社会の中で自分の役割を果たしながら、自立して自分らしい生き方を実現していくことは重要であり、生徒一人一人がしっかりと学力を身につけることができるよう、指導の充実を図っていく必要があると考えます。
 そこで、都立高校における基礎学力の定着について、今後どのような取り組みを進めていくのか、都教育委員会の見解を伺います。
 次に、都立高校における新たな教科、探求と創造について伺います。
 現代の社会は、急速なグローバル化の進展により、我々の社会に多様性をもたらし、また、急速な情報化や技術革新などは、生活を質的に変化させてきました。
 このような時代だからこそ、変化を前向きに受けとめ、私たちの社会や生活を、人間ならではの感性を働かせてより豊かなものにしたり、現在では思いもつかない新しい未来の姿を構想し実現したりすることができる人材の育成が急務であると考えます。
 こうした中で、学校教育においても、これまでの教科の枠にとらわれず、新しい時代や社会を創造する有為な人材の育成が期待されるところであります。
 聞くところによれば、都教育委員会では、来年度から新たな教科、探求と創造の開発を行うということですが、この教科は生徒にどのような資質、能力を育成しようとしているのかお伺いをいたします。
 次に、道徳教育の充実についてお伺いをいたします。
 国が平成三十年度から小学校で、平成三十一年度から中学校で道徳の時間を特別の教科道徳とする中で、現在、東京都は全国に先駆けて先行実施に取り組んでいます。
 今回、道徳が教科化される背景の一つに、これまでの授業において狙いが曖昧で、単に子供が自分の経験を話したり、読み物の登場人物の気持ちを読み取ったりするだけの指導が行われるなど、授業に関する課題があるとのことです。
 このような状況に対し、特別の教科道徳では、いじめ問題の解決や異なる文化に対する受けとめ方など、答えが一つではない道徳性にかかわる問題について、一人一人の子供が自分自身の問題として捉え、その問題に向き合うように、考え、議論する道徳への質的転換が求められています。
 しかし、道徳科の内容の先行実施に取り組む中で、着実に取り組みを進めている学校がある一方で、特別の教科道徳の考え方の理解が深まらず、道徳科に対応した効果的な指導方法や新たに加わった指導内容の理解などについて、不安を持つ教員がいるとも聞いています。
 今後、特別の教科道徳が適正に実施されるようにするためには、教員の道徳科に対する理解を深めさせるとともに、一人一人の教員の道徳の指導力を向上させることが何よりも重要であります。
 そこで、道徳の時間の教科化に向けた教員の指導力向上を図るための都教育委員会のこれまでの取り組みと成果及び今後の進め方についてお伺いをいたします。
 次に、去る十一月二十五日の文教委員会において、我が党の議員から、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故により、福島県から避難し、横浜市の学校に転校した中学生が、転校直後からいじめを受けていた問題について、都議会自民党としての要望を伝えさせていただいたところであります。
 福島原子力発電所は東京電力の発電所であり、そこで発電された電力の多くは、東京都で消費されてきたものであります。福島県は東北電力の管轄ですので、福島県でこの事故により被災された方々からすれば、東京都など他の地域のために犠牲になったといいたいところではないかと思います。
 こうしたことから考えると、今回報道されているようないじめは、ふるさとを立ち退くことを余儀なくされ、全く異なる環境の中で不安を抱えながら生活している子供に対して生きる希望をも奪いかねない、極めて悪質で許しがたい行為であります。
 この機会に、改めて各学校において、東日本大震災の被災地から避難している子供たちがいじめを受けることのないようにする対策を徹底、強化することが必要であると考えますが、都教育委員会の取り組みについてお伺いをいたします。
 続いて、部活動振興の取り組みについてお伺いをいたします。
 私は中学校、高校、大学とバスケットボール部に所属をしていました。特に、都立高校時代の練習は、厳しく苦しいものでしたが、すぐれた指導者であり人格者でもある顧問の先生の指導のもと、目標に向かって仲間と励まし合い、協力し合って取り組むことを通して友情を深めたり、困難に立ち向かう精神力を身につけたりすることができました。まさに、生きる力の育成に大きく貢献できる活動であるといえます。
 そこで、さまざまな教育活動を通して、多くの生徒が次代を担う社会的に自立した人間へと成長していくために、また、多くの中学生に都立高校を選んでもらうためにも、都立高校における部活動の活性化を図る必要があると考えますが、都教育委員会の見解をお伺いいたします。
 次に、都の防災対策についてお伺いをいたします。
 ことし四月に発生した平成二十八年熊本地震は、震度七の揺れの連続発生などで大きな被害をもたらし、国や自治体の防災対策に多くの課題を突きつけました。
 このため、我が党は都に対し、東日本大震災と同様に被災地支援等の教訓を取りまとめ、都の防災対策に反映させるべき旨を提言してきており、今回、都が熊本地震の支援の教訓を取りまとめたことは、我が党の問題意識に応えたものと推察をしております。
 こうした教訓からは、危機管理体制の強化や、効果的な物資輸送体制の整備などの必要性が明らかとなりました。
 これらを踏まえ、都の防災対策を一層強化すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 また、島しょ地域でも特有のリスクを踏まえた防災対策が必要であります。大島では、前回の噴火から三十年、三宅島でも十六年が経過をしており、遠からず同規模の噴火が起こる可能性がある一方、噴火当時に比べると、高齢化やバスの減少など災害対応力の低下が懸念をされております。
 南海トラフ巨大地震の発生時には、津波により大きな被害が生じるとも想定されております。
 こうした状況を踏まえ、島しょ地域の防災対策を一層推進するためにも、東京都は、島しょ町村をしっかり支えていく必要があると考えますが、都の取り組みについてお伺いをいたします。
 さらに、都内で最近、大きな被害をもたらした災害としては、平成二十五年の大島における大規模な土砂災害が挙げられます。
 都はこれまでに、島民の安全を確保するため、住民避難につながる取り組みを強化し、砂防施設を整備するなど、ソフト、ハードの両面から緊急的な土砂災害対策を進めており、平成二十八年度末で完了すると聞いています。
 また、引き続き、今後の大島の本格的な復興に向けた対応も求められております。
 そこで、大島の土砂災害対策について、東京都の取り組み状況をお伺いし、私ほっち易隆の質問を終了させていただきます。
 ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) ほっち易隆議員の質問にお答えいたします。
 私に対しましては教育についての基本的な考え方についてのご質問がございました。
 いつの時代にありましても子供は社会の宝でございます。そして、人づくりである教育は未来への重要な投資である。まさに議員がご指摘されたとおりでございます。
 また、AIの時代ということもあり、知識をただ詰め込むというのではなく、知恵、そして考える力を育むことが重要と考えます。そして、次代を担う子供たちの教育の機会は平等であるべきでございます。経済格差が将来の希望の格差につながることがあってはなりません。
 そのためにも、誰もがみずから望む教育を受けられて、可能性を伸ばすことのできる仕組みが必要かと存じます。また、全ての子供が充実した幸せな人生を歩むための礎として、一人一人の子供に応じたきめの細かい教育によりまして、生きる基盤となります学力を身につけさせるとともに、新たな価値を創造する力も育むことは重要かと存じます。
 こうした考えに基づいて、今後、教育施策大綱を作成いたします。教育委員会と力を合わせて、輝く未来を創造する質の高い教育を、実現を目指してまいります。
 その他のご質問につきましては、教育長、関係局長からご答弁をいたさせます。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立中高一貫教育についてでございますが、中高一貫教育校は、社会のさまざまな分野でリーダーとなり得る人材を育成するため、六年間を通した教育課程の工夫により、探求型の学習や海外語学研修等の体験的学習を行い、思考力、判断力、表現力や主体的に行動する力を育むなど、生徒の資質、能力の伸長に努めてきております。
 このような取り組みにより、国際数学オリンピックなどで活躍する生徒や、海外の大学へ進学する生徒などを輩出しているほか、昨年度初めて実施された特定の研究分野等に卓越した能力を持つ生徒を選抜する難関国立大学の推薦入試において合格者を出すなどの成果も上げております。
 今後も、都教育委員会は、これらの成果等を踏まえ、各学校が実施する生徒の才能を見出し、伸長させる取り組みを支援し、中高一貫教育校の一層の充実を図ってまいります。
 次に、都立高校における基礎学力の定着についてでございますが、生徒一人一人が社会的、経済的に自立した人間として成長していくためには、国語や数学等における基礎的な学習内容を確実に身につけることが重要であります。
 そのため、各都立高校では、これまでも身につけるべき学力の到達目標の設定や学力の達成状況の把握等、組織的に生徒の学力向上に取り組んでまいりました。
 また、授業の内容が理解できない生徒に対して、放課後等に外部人材を活用し、義務教育段階の学習内容の学び直しを行う校内寺子屋を、今年度から都立高校十校に導入いたしました。
 今後、生徒が卒業後の具体的な目標が持てるよう、キャリア教育の一層の充実を図るとともに、ICT機器を活用した反復学習の強化等、基礎学力を身につける指導を徹底し、自立して社会で活躍できる人材を育成してまいります。
 次に、新たな教科、探求と創造についてでございますが、変化の激しい社会において、生徒がたくましく生き抜くためには、課題を発見し解決する力や、既存の概念にとらわれず、新たな価値を創造する力などを身につけることが重要であります。
 このため、都教育委員会は来年度、新たな教科、探求と創造の開発を検討してまいります。この教科では、生徒が外部専門家等の指導により、社会の諸課題について、みずからの調査や研究から解決策を見出したり、外国の生徒と地球規模の課題を討論することなどが考えられます。
 こうした学習を通して、生徒に一層高いレベルの思考力、判断力、表現力等を培い、将来、創造的な発想と積極果敢な行動力で社会を牽引できる人材を育成してまいります。
 次に、道徳に係る教員の指導力向上の取り組みについてでございますが、道徳の教科化を適切に進めるためには、教科化の背景や目的を理解し、子供たちに物事を多面的、多角的に考えさせることができる授業力を高めることが重要であります。
 そのため、都教育委員会は、平成二十六年度から三年間、道徳教育推進教師養成講座を開催するとともに、今年度は指導方法等を普及するため、授業力向上セミナーを実施いたしました。
 これらの講座やセミナーには、合わせて二千四百名以上の教員が受講し、参加後のアンケートでは、多くの参加者から道徳の教科化の背景や指導法についての理解が深まったなどの回答を得ております。
 今後、都教育委員会は、教科化への進捗状況を把握するとともに、都の道徳教育を牽引する拠点校百六校の成果の普及を進めるなど、授業力向上を一層支援してまいります。
 次に、いじめ防止対策の徹底、強化についてでございますが、被災地から避難している子供が東京の子供とともに学び、希望を持って未来を切り開けるよう、教育委員会や学校は全力で子供たちを支援しなければならないと考えております。
 都教育委員会は、これまでも避難している子供に対して、心理職を派遣するなど、学校における重点的な支援体制を確保してまいりましたが、今回の報道を受け、誤った認識や偏見を持たず、支え合って災害を乗り越えることの大切さを子供たちに指導するなど、改めて学校に対して、避難している子供をいじめから守る対策の強化を求めたところでございます。
 今後とも、区市町村教育委員会や学校と連携し、スクールカウンセラー等を含む全教職員により、被災地から避難している子供に対する支援体制を確立するなど、いじめ防止の取り組みの徹底に向け、指導、助言を引き続き行ってまいります。
 最後に、都立高校における部活動の活性化についてでございますが、部活動は、生徒にとって学校生活の大きな魅力の一つであるとともに、心身の健全な育成という面でも極めて有益な教育活動であります。
 そのため、これまで都教育委員会は、できる限り生徒の希望に応じた部活動を展開できるよう、全校対象に、外部指導員派遣事業を実施し、指導者不足の解消や生徒一人一人の技能の向上に努めてまいりました。
 また、部活動推進校を三十校指定し、部活動を振興する学校の裾野を広げるとともに、スポーツ強化校を二十三校指定して、全国大会等に出場し、将来トップアスリートを目指す選手を育成するなど、都立高校全体の部活動の活性化を図ってまいりました。
 今後とも、各都立高校が部活動の振興を通して、魅力ある学校づくりができるよう、一層の支援を行ってまいります。
   〔総務局長多羅尾光睦君登壇〕

○総務局長(多羅尾光睦君) 二つのご質問にお答えいたします。
 初めに、熊本地震の教訓を踏まえた都の取り組みについてですが、都はこれまで、区市町村等とともに、延べ千五百人以上の職員を派遣するなどの支援を行ってきておりまして、この経験から教訓を抽出、共有して、組織全体の取り組みに反映させることは、東京の防災力向上に極めて重要でございます。
 熊本地震では、発災直後の災害対策本部や避難所の混乱、支援物資の滞留など、首都直下地震においても起こり得る災害対応上の課題が明らかになりました。
 今後は、災害対策本部の機能強化、応援受け入れのルール、手順の明確化、実効性ある物資の受け入れ、輸送体制の整備、円滑な災害廃棄物処理体制の構築など、各局による取り組みの具体化と訓練等を通じた検証を重ね、全庁を挙げ、東京の災害対応力の一層の向上に努めてまいります。
 次に、島しょ地域の防災対策についてですが、島しょ地域は、島しょ特有の災害リスクがあり、地域特性を踏まえた対策が必要でございます。
 火山災害の警戒地域に指定された六島については、火山防災協議会において、島しょ町村や気象庁等国の機関、火山専門家等と連携し、要配慮者への支援や輸送力を踏まえた避難対応など、避難計画の策定に向けた検討を鋭意進めております。
 津波対策としては、都が提供した避難計画モデルを踏まえ、島しょ町村との連絡会等を通じ、各島の避難計画の策定を促しております。
 こうした計画の策定とあわせ、島しょ地域での訓練を継続的に実施し、計画の実効性を高めていくことにより、島しょ町村の防災対策を支えてまいります。
   〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 大島における土砂災害対策についてでございますが、島民の安全・安心を早期に確保するためには、ソフト、ハードの両面からスピード感を持って対策を進めることが重要でございます。
 ソフト対策では、平成二十七年六月に、島内全域で土砂災害警戒区域等を指定するとともに、町と連携してハザードマップを作成し、警戒避難体制を整備いたしました。
 また、ハード対策では、緊急的な対策として、被害が大きかった大金沢の神達地区におきまして、土砂を導く導流堤の整備や、斜面の崩壊を防ぐ山腹工事を進めており、今年度末までに完了させ、安全を確保いたします。
 これに引き続き、中長期対策といたしまして、大金沢のその他の地区におきましても、新たに砂防堰堤を整備するなど、安全性をさらに向上させてまいります。
 今後とも、大島町の復興に向け、土砂災害対策を全力で進めてまいります。

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