平成二十八年東京都議会会議録第十七号

○副議長(小磯善彦君) 四十二番神野次郎君。
   〔四十二番神野次郎君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四十二番(神野次郎君) 本年四月に発表されたグローバル金融センターインデックスにおいて、東京は世界の金融都市として、一位のロンドン、二位のニューヨーク、三位のシンガポール、四位の香港に次いで五位という評価でした。世界で五位という評価は悪くないと感じるかもしれませんが、多くの金融機関がアジア、欧州、米国の三極体制をしいていることを考えますと、アジアで三位の地位に甘んじているのは問題といえます。
 知事は、東京をアジアで一番の金融都市とすることを目指す意向と聞いていますが、我が党が掲げる、東京を世界で一番の都市にという目標の実現のためにも、経済活動の血液ともいわれる金融業の復権は欠くことのできないものと考えます。
 金融業において最も大切なのは人材であり、国際金融都市としての成否は、世界中から優秀な人材が集まってくるか否かで決まるといえます。
 そこで大きな影響を持つのは、住環境、そして収入であると思います。住環境に関しましては、東京がシンガポールや香港に劣っているということはないと思いますが、収入面では大きく見劣りします。所得税率は、香港が最大一五%、シンガポールが最大二〇%であるのに対し、東京は最大四五%、さらに住民税も含むと五五%です。
 金融人材は高所得者が多く、低い税率を適用しても税収額はかなり得られるということを勘案して、移住してくる外国人などに限定して所得税を軽減するなどの対策により、シンガポールや香港に支払われている税収を東京に持ってくる発想が必要になると思います。
 雇用制度も賃金水準に影響を及ぼします。
 私が以前勤めていた外資系金融機関での話ですが、ある社員の採用条件はこのようなものでした。採用地はロンドンでもパリでも構わない、ただし、ロンドン採用ならパリ採用の一・五倍の報酬。多くの欧州大陸の国と同様、フランスでは採用した従業員を解雇するのが非常に難しいのに対し、英国では、一定のプロセスを経れば解雇が可能なため、ロンドンでの採用の方が報酬を高く設定できるからです。
 東京が香港やシンガポールと競合していくためには、以前、国で検討された雇用規制緩和特区のような制度の導入が必須と考えます。多くの国際金融機関が、過去に東京から香港やシンガポールに主要部署やアジアの本部機能を移転させておりますが、その理由には、税当局や金融監督当局に対する不満や不信があったと聞いています。
 都は、先月十一日に、金融の活性化などを検討する国際金融都市・東京のあり方懇談会の設置を発表しました。懇談会のメンバーは、金融界で有名な方も多く、さまざまな知見が得られることが期待できる一方、ほとんどのメンバーが現在も国内で当局の規制を受ける事業に携わっていることから、発言者が特定される場では本音が出にくいのではないかという懸念もあります。
 知事もメンバーとなっておりますこの懇談会において、ありきたりではない有益な意見を得るには工夫も必要と考えますが、知事は国際金融都市東京の実現に対して、どのような認識のもとで取り組まれるのかを伺います。
 次に、中小企業の支援について伺います。
 中小企業やベンチャー企業の資金調達に対する都の支援としては、融資制度を初めとしたさまざまな融資のメニューや各種補助金が用意されていますが、株式資本の調達に対する支援を望む声も多く聞かれます。融資は返済が必要ですし、補助金は収入とみなされるため、黒字企業では課税対象となります。
 一方で、株式発行の際に払い込まれる資金は返済の必要がなく、課税対象ともならないために、設備投資や研究開発に向ける資金として適しています。
 都のこれまでの施策では、補助金や融資の支援に比べ、株式による資金調達の支援については、やや慎重な姿勢を感じます。企業の規模やライフステージ、事業分野によって必要とする資金の種類はさまざまであることから、支援の多様化をさらに進める必要があると考えます。
 ベンチャー企業の株式への投資はリスクが高いものとなりますが、損失の発生をいたずらに恐れるのではなく、資金の一部でも回収できたり、利益が出て資金が増加した場合には、それをまた次の支援の原資とすることができるという考えで取り組むべきと考えます。
 先月十八日に都が設立を発表した中小企業連携促進ファンドには大きな期待を持っており、本年の第一回定例会においても、本ファンドについて質問させていただきました。その際には、将来の東京を支える企業の育成や新しい産業の創出という政策目的を常に意識し、思い切った投資によって中小企業の成長を後押しすべきという提言をいたしました。
 そこで、中小企業連携促進ファンドを含め、中小企業やベンチャー企業を支援するファンドへの取り組み状況について伺います。
 次に、東京都における死因究明体制について伺います。
 検案や解剖により、人の死因、そして死に至る経過を明らかにすることは、死者の尊厳や権利を守り、公衆衛生の向上や医学の進歩にも貢献するものです。死因が不明な死体を検案、解剖する監察医は、政令により、東京二十三区、大阪市、横浜市、名古屋市、神戸市の五つの地域に配置すると定められており、そのための組織として、都は東京都監察医務院を設置し、検案、解剖を実施しています。
 人口の高齢化や海外からの感染症の流入、危険ドラッグによる死亡者の増加などが進む中、監察医制度の重要性は、今後ますます高まっていくものと考えられます。東京都は、監察医制度をしっかり維持するとともに、二十三区だけでなく、都全域に展開していくべきと考えます。
 都は、平成二十三年度から継続して、国に対して、監察医制度を都全域へと適用するよう提案しており、さらに平成二十五年一月から、東京都医師会や学識経験者などから成る検討会において、主に多摩・島しょ地域における検案、解剖体制について協議をしてきたと聞いています。
 本年の第一回定例会では、我が党の栗山欽行議員の質問に対し、多摩・島しょ地域の死因究明体制の充実に向け、平成二十八年度から新たな取り組みを行う旨、答弁がありましたが、多摩・島しょ地域の検案体制の充実に向けた現在の都の取り組みについて伺います。
 私の地元の昭島市では、中神の獅子舞と拝島日吉神社の榊祭の二つが、東京都指定の無形民俗文化財となっております。拝島日吉神社の例大祭は一七六七年に始まり、本年で二百五十周年を迎えました。宵宮で高さ五メートル余りのサカキでつくったみこしが、深夜零時に神社を出発し、午前四時過ぎの宮入りまでまちを練り歩くことから、榊祭と呼ばれております。
 榊祭の宵宮でも本宮でも大きな役割を担っているのが、加美町、奈賀町、志茂町の三町が、それぞれ重松ばやし、神田ばやし、目黒ばやしを演じる三基の人形屋台と呼ばれる山車です。人形屋台は、三基とも単層一本柱後ろ立ち上げ方式の旧八王子型屋台という形式のものですが、人間と同じぐらいの大きさの和唐内、弁慶、スサノオノミコトの人形を立てますと、高さが八メートルにも及びます。大正四年までは、榊祭では、人形を上げた状態での運行を行っておりましたが、今から百年前の大正五年、一九一六年に奥多摩街道に電線がかかったことから、人形は取り外されることとなりました。
 こうした伝統ある祭りを古来からの姿に復活させ、地域に活力を与えるためにも、その支障となる電線、電柱をなくす無電柱化は重要であると考えます。
 しかしながら、都道である奥多摩街道の地下空間には、既に水道、ガス、下水管など数多くのライフラインがあり、無電柱化を実施する際の既設ライフラインの移設費用が課題の一つとなっております。このような道路の地下空間がふくそうした状況の場合でも、技術的な工夫を行い、コストを抑えた取り組みを進めることにより、無電柱化を推進すべきと考えます。
 そこで、無電柱化を推進するためのコスト縮減への取り組みについて伺います。
 我が党は、東京を世界で一番の都市にを政策の目標に掲げ、外国人に対して優しい多言語対応や生活基盤の充実等に関するさまざまな施策を提言しています。
 在京外国人生徒の都立高校への受け入れについても、その取り組みの一つとして、多摩地域の高校での受け入れ枠設置など、受け入れ体制の充実を求めてきました。
 都教育委員会は、平成二十九年度の生徒募集に当たり、多摩地区の都立高校として初めてとなる外国人の受け入れ枠を、府中西高校に設置しました。これまで二十三区内の都立高校に通うことでしか受けることのできなかった日本語指導を身近な学校で受けることが可能になったことは、多摩地域に住む外国人生徒に対する支援の大きな前進です。
 しかし、まだ解決すべき課題は残っています。例えば、これまでの設置校が大学進学を前提とする普通科高校が中心となっていることから、日本語の力が不十分な外国人生徒の卒業後の進路が狭まってしまうという課題などです。在京外国人生徒の進路希望はさまざまであり、日本人生徒と同様に、大学進学だけでなく、就職も視野に入れた高校選択も可能とすべきです。
 そこで、普通科以外の学科、例えば商業高校や工業高校においても外国人受け入れ枠を設置していくべきと考えますが、都教育委員会の見解を求め、私の質問を終えます。(拍手)
   〔知事小池百合子君登壇〕

○知事(小池百合子君) 神野次郎議員の一般質問にお答えをさせていただきます。
 一問、国際金融都市についてのご質問がございました。
 いうまでもなく、日本の成長のエンジンであります東京が国際的な都市間競争に打ち勝って、持続的発展を遂げていくためには、世界に目を向けた確固たる成長戦略が必要でございます。特に、経済の基盤を支える金融産業ですが、都市の魅力、そして競争力の維持に欠かせない重要な産業でございます。
 私は、東京をアジアナンバーワンの金融拠点として復活させるという目標に、今度こそラストチャンスだという覚悟で当たっていく所存でございます。
 ご指摘がありましたように、日本には金融系企業や人材が定着することを阻む、いわば見えない参入障壁が存在するといわれております。
 具体的には、英語によるビジネスの難しさ、それから世界標準からかけ離れた業界の慣行や規制、税制の存在、ご指摘のあったとおりでございます。
 こうした構造的、本質的な課題の解決に向けて、先月、金融界の第一線で活躍される経営者の皆様方から成る、国際金融都市・東京のあり方懇談会を立ち上げました。そして、今後一年ほどかけまして、それぞれのメンバーの問題意識を十分に本音も把握できるように、運営を工夫しながら、掘り下げた議論を行ってまいります。そして、金融の活性化に向けた抜本的な対策を取りまとめていきたい、このような考えでございます。
 そしてもう一つ、金融庁、そして民間の実務者によります海外金融系企業の誘致に関する検討会を設置いたしまして、企業誘致の加速に向けた当面の対策を今月中に取りまとめることといたしております。そして、速やかに実施をしてまいります。
 金融の活性化には、都だけではなくて、国、そして業界の取り組みは不可欠でございます。今後とも、これらの主体と、皆様方と連携をしながら、戦略的に国際金融都市東京を実現してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
   〔教育長中井敬三君登壇〕

○教育長(中井敬三君) 都立高校の在京外国人受け入れ枠についてでございますが、都教育委員会は、都内に居住する外国人生徒に高等学校教育を受ける機会を提供するため、平成二十九年度の募集において府中西高校に受け入れ枠を新設し、募集人員を十八人ふやして、全体で百三十五人とするとともに、多摩地域の外国人生徒の通学条件の向上を図りました。
 一方で、これまでの在京外国人受け入れ枠は、大学進学を目指す普通科や国際学科の高校に設けてまいりましたが、対象生徒の卒業後の進路を見ますと、就職を希望する生徒や、進路未決定のまま卒業する生徒がいる実態もございます。
 このため、在京外国人生徒のより多様な進路選択が可能となるよう、これまで受け入れ枠を設置してきた学校の応募状況や進路希望の状況等を踏まえながら、専門高校も含めた受け入れ枠の設置について検討を行ってまいります。
   〔産業労働局長藤田裕司君登壇〕

○産業労働局長(藤田裕司君) 中小企業やベンチャー企業向けファンドについてでございますが、都では、平成二十四年度にものづくりベンチャー企業を支援するファンドを創設し、現在までに二十社に投資を行い、株式上場を果たす企業も出るなど、成果を上げているところでございます。
 また、今年度からの取り組みといたしまして、中小企業が大学や大企業、全国各地の企業等と連携して新たな分野に挑戦することを支援する中小企業連携促進ファンドを、先月に立ち上げたところでございます。都が出資をいたしました三十億円が呼び水となりまして、民間事業者等からの出資が集まり、現在、総額百五十五億円の規模のファンドとなってございます。このファンドでは、資金供給とともに、運営事業者による役員派遣など、手厚い経営支援もあわせて実施してまいります。
 今後とも、適切なリスク管理のもと、こうした手法を効果的に活用し、中小企業の成長や産業の新たな担い手の創出をしっかりと後押ししてまいります。
   〔福祉保健局長梶原洋君登壇〕

○福祉保健局長(梶原洋君) 多摩・島しょ地域の検案体制の充実についてお答えをいたします。
 都は、多摩地域の検案医を確保し、検案の精度向上を図るため、地元の大学法医学教室と協力し、症例検討等を取り入れた研修会を本年十月から開始いたしました。また、島しょ地域では、自治医科大学卒業医師や地域の医師を対象に、監察医務院による研修を行っております。
 さらに今後、新たな検案医を確保、育成するため、医学生等を対象に、法医学への関心を高めるためのセミナーを開催するほか、地域の医師に向けまして検案業務を紹介するリーフレット等を作成することとしております。また、区部の大学法医学教室にも、多摩地域の検案業務等への協力を依頼してまいります。
 今後とも、こうした取り組みを進め、多摩・島しょ地域における検案体制の充実を図ってまいります。
   〔建設局長西倉鉄也君登壇〕

○建設局長(西倉鉄也君) 無電柱化のコスト縮減への取り組みについてでございますが、限られた道路空間で無電柱化を実施していくためには、技術開発などをより一層推進することにより、整備費用の縮減を図ることが重要でございます。
 都道の無電柱化に際しましては、電線管理者が所有している管路等がある場合、それらの施設を電線共同溝の一部として活用することで、水道やガス管等の移設を極力減らし、コスト縮減や工期短縮を図っております。引き続き、このような既存ストックの有効活用に努めてまいります。
 また、東京電力やNTT等と検討会を設置し、電線共同溝のさらなるコンパクト化や、管路等に使用する材料の低コスト化などにつきまして検討してまいります。
 今後とも、関係事業者と連携しながら、コスト縮減による無電柱化の一層の推進に取り組んでまいります。

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